説明

サツマイモの水分測定方法および装置

【課題】焼酎の製造現場において,簡易に短時間でサツマイモの水分が測定できる測定方法および測定装置を提供する。
【解決手段】2個の平行な電極11を用いて試験体の静電容量を測定し,事前に調べた試験体の検量データから水分を求める測定装置において,2個の電極11を試験体に刺して測定し,前記電極の少なくとも一方は,電極11の根元側に,絶縁層12を介在させて外部導電体13を被覆し,同軸ケーブルのような構造にすることで,根元部分を非検出部位にしていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,2個の平行な電極を用いて試験体の静電容量を測定し,事前に調べた試験体の検量データから水分を求める測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
南九州の特産品である芋焼酎は,サツマイモを主原料として製造される。サツマイモに含まれるデンプンを,微生物の発酵作用でアルコールにすることで製造する。
【0003】
焼酎製造におけるアルコール収量は,原料と製造管理(発酵,蒸留等)によって左右される。そして,芋焼酎の主原料であるサツマイモは品種や産地(土壌),天候,栽培技術等によってそのデンプン価(デンプンと糖の総量)が増減する。
【0004】
そのため製造現場では,アルコール収量の変動が原料によるものか,製造管理によるものか把握することが重要であるため,原料のデンプン価測定が必要となっている。また,そのデンプン価も原料全体の平均的な値を得るためには,ある程度多くのサンプルを測定する必要がある。
【0005】
サツマイモのデンプン価は,サツマイモに含まれる水分と密接に関係していることから,日本醸造協会発行の“第四回改正国税庁所定分析法注解”にはデンプン価と水分の換算表が規定されている。つまり,水分を測定すればデンプン価を把握することが可能となる。
【0006】
サツマイモの水分を求める方法は,浸漬法,加熱乾燥法等がある。
【0007】
浸漬法は,水中に浸漬させ試験体の正確な比重を測定し,そこから水分を算出する方法である。
【0008】
加熱乾燥法は,サンプルを細かく切断し,加熱することで水分を蒸散し,乾燥前後の重量差から水分を求める方法である。
【0009】
また,一般的な水分の測定方法として,電気特性を利用した手法がいくつか提案されている。
【0010】
例えば,板状の電極2個を用い,試験体を挟み込んで電極間の静電容量を測定する方法が提案されている。(特許文献1参照)
【0011】
また,試験体に電極を刺したり,埋没させたりして測定する方法として,土壌に棒状の電極を刺したり(特許文献2参照),液体に浸積したりして(特許文献3参照)静電容量を測定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−207474号公報
【特許文献2】特開昭58−18156号公報
【特許文献3】特開平6−201634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
浸漬法は,主にジャガイモなどで用いられる手法であるが,サツマイモの場合は空隙が多く存在することから,減圧脱気といった特別な操作が必要とされる。多くの原料を一度に測定できるメリットはあるが,取り扱いの困難さから一般に利用されていない。
【0014】
加熱乾燥法は,焼酎製造現場では一般的に用いられている方法であるが,手間がかかり,結果が得られるまで数時間かかることから,多くのサンプルを測定できず,原料全体から数個程度しか測定できない。このため焼酎製造現場ではデンプン価が十分把握できているとはいえず,原料に対するアルコール収量の予測や管理が十分でないのが現状である。
【0015】
板状の電極2個を用いて試験体を挟み,誘電率を測定する方法は,形状の整った試験体には有効であるが,形状が歪なサツマイモではそのまま測定するには向いていない。仮に,製造現場において,サツマイモの形状を一定の大きさに揃えてから測定に供することは考えられるが,測定の手間を増大させることにつながり,適切な手段とはいえない。
【0016】
電極を刺したり埋没させたりして測定する方法は,いずれの場合も規定の位置まで電極を埋没させるか,電極全体を試験体に埋没させることで,センシング量を一定にし,正確な測定値を得る構造になっている。サツマイモを対象とした場合,その堅さと表面形状の歪さから,電極を毎回一定の深さに刺して埋没させることは通常困難であり,同様の方法では測定値がばらつく。
【0017】
この様に現在提案されている様々な手法では,焼酎の製造現場において,アルコール収量を予測できるだけの水分測定を実現できていない。
【0018】
本発明は,上記課題に鑑みてなされたもので,簡易に短時間で試験体の水分が測定でき,アルコール収量が予測可能な測定方法および測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
課題を解決する手段は,2個の平行な電極を用いて試験体の静電容量を測定し,事前に調べた試験体の検量データから水分を求める測定装置において,2個の電極を試験体に刺して測定し,前記電極の少なくとも一方は,電極の根元側に,絶縁層を介在させて外部導電体を被覆し,同軸ケーブルのような構造にすることで,根元部分を非検出部位にしていることを特徴とする試験体の水分測定方法である。
【0020】
前記電極が,太さが1.5mm以上2mm以下の針形状のもので,その間隔は中心位置で5mm以上15mm以下であり,試験体に刺し込む最大の長さは10mm以上20mm以下であることを特徴とする試験体の水分測定方法である。
【0021】
前記試験体がサツマイモ等の根菜類であることを特徴とする試験体の水分測定方法である。
【0022】
2個の平行な電極を用いて試験体の静電容量を測定し,事前に調べた試験体の検量データから水分を求める測定装置において,2個の電極を試験体に刺して測定し,前記電極の少なくとも一方は,電極の根元側に,絶縁層を介在させて外部導電体を被覆し,同軸ケーブルのような構造にすることで,根元部分を非検出部位にしていることを特徴とし,前記電極は,太さが1.5mm以上2mm以下の針形状のもので,その間隔は中心位置で5mm以上15mm以下であり,試験体に刺し込む最大の長さは10mm以上20mm以下であることを特徴とする試験体の水分測定装置である。
【0023】
短時間で試験体の水分を測定するためには,試験体の電気特性を利用して静電容量を測定し,水分を求める手法が適している。また形状が歪なサツマイモのような試験体を対象とした場合,平板状の電極を表面に当てて測定するのではなく,電極を試験体内に埋没させ静電容量を求める方法が適している。
【0024】
しかし,サツマイモのような堅く歪な試験体を対象とした場合,電極を毎回一定の深さに刺すことは通常困難であり,測定値がばらつく原因となる。
【0025】
堅い試験体にも容易に刺すことが可能な形状としては,先端が鋭く電極全体の体積が小さな針形状の電極が適している。また,測定値は刺し込み深さにほぼ比例して大きくなるため,毎回一定の深さに刺さなければならない。
【0026】
本発明の電極は針形状で,電極の根元側に絶縁層を介在させ,外部導電体を被覆し同軸ケーブルのような構造にしており,根元部分を非検出部位にしている特徴がある。
【0027】
静電容量を測定する際には,2個の電極間に電気力線が発生しているが,外部導電体は通常電気的グランドに接続されることで,その部分に発生している電気力線を遮蔽し,外部導電体の内部の電極に電気力線が到達しないようにする効果があり,その結果として非検出部位とすることができる。
【0028】
また非検出部位を作り出すための構造が電極そのものと一体化しており,電極の刺し易さ,メンテナンス性を損なわない効果がある。
【0029】
この構造により,非検出部位まで電極が試験体に刺し込まれていれば,電極が斜めに刺さっても,電極の先端の検出部位は試験体の中にすべて埋没しており,刺し込み深さを意識することなく測定を行うことが可能となる。
【0030】
電極の素材は,導電性を有し,腐食しづらく,堅いことが求められる。鉄,ステンレス,アルミなどの金属およびそれらをCVDやPVDやメッキ等により表面処理したものが利用可能である。
【0031】
前記絶縁体は,エポキシ樹脂やフェノール樹脂やメラミン樹脂などが挙げられる。
【0032】
外部導電体の素材は,針電極と同じく導電性を有し,腐食しづらいことが求められる。鉄,ステンレス,アルミなどの導電性金属およびそれらをCVDやPVDやメッキ等により表面処理したものが利用可能である。
【0033】
前述の電極は,コンデンサを形成することから,その長さが長くなるほど,またその間隔が狭くなるほど,測定感度を向上させることができる。しかし,電極を長くすると反りが発生し易く,電極の間隔を一定にすることができない。また,針が太すぎたり,電極の間隔が狭かったりすると試験体に割れが生じてしまい,正確に測定することができない。
【0034】
実験により針電極は,最大太さが1.5mm以上2mm以下で,その間隔は中心位置で5mm以上15mm以下で,試験体に刺し込む最大の長さは10mm以上20mm以下であるとき,電極の反りがなく,試験体の割れも発生しないことを確認した。
【0035】
静電容量の測定には,市販のLCRメータを使用したり,自作の測定回路を用意して測定しても良い。
【0036】
特に測定回路を省スペースで作成することにより,装置全体を片手に持てるほど小型化することができ,可搬性,取り扱い性に優れた測定装置とすることができる。
【0037】
また測定装置には,表示装置を具備することで,測定結果をその場で確認することが可能となる。タッチパネル機能を有する表示装置を用いれば,操作のための入力装置であるボタンやスイッチを削減できるメリットがある。
【0038】
また測定装置には,記録装置を具備することで,測定結果をその場で保存することが可能となる。記録装置にはフラッシュメモリを用いた記録媒体であるUSBメモリ,SDカードなどが適している。また,記録装置には一般的なパソコンで用いられているFAT(ファット)ファイルシステムを実装することで,記録した測定データ類を直ちにパソコンで閲覧,処理することを可能にする。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したとおり,本発明により,電極の刺し込み深さによるバラツキをキャンセルすることができ,計測精度を向上させることが可能となる。また,本技術を用いた水分測定装置により,従来の測定方法と比較して測定時間を大幅に短縮できる。そのため,多数の試験体を測定することが可能となり,原料全体の平均値を適切に把握することができ,焼酎製造の現場などでは,アルコール収量を高い精度で予測することが可能となる。アルコール収量の予測値と実収量に大きな差があった場合は,その原因が製造工程にあるとの推察も可能である。また,可搬性に優れた測定装置を作成することで,焼酎製造現場での測定はもちろんのこと,畑での簡便な測定も可能にし,農作物などの生育管理にも貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
2個の電極の反りと,試験体への影響を調べるために,2個の電極の太さと間隔と試験体に刺し込む長さをパラメータとして,実際のサツマイモに針電極11を刺して検証した。
【0042】
針電極11の素材は,湿潤環境下の連続測定で錆などの腐食が発生しづらいこと,反りが発生しないように堅いことなどの条件からステンレスを使用した。
【0043】
針電極は,静電容量の測定に使用する図3に示すセンサモジュール20と同様の固定方法で,2個の針電極11を平行に,かつ同じ長さ筐体から突出するように固定した。針電極11の太さは1mm,1.5mm,2mm,2.5mmとした。針電極11の突出長さは10mm,15mm,20mm,25mmとした。2本の針電極の間隔は5mm,10mm,15mmとした。試験体には30mm角の立方体に整形したサツマイモを用いた。
【0044】
太さ,長さ,間隔それぞれの組み合わせで5個の試験体に針電極11を刺して実験した。反りについては,X線装置を用いて,試験体に針電極11が刺さった状態で確認した。また目視により試験体への影響を確認した。結果を図1に示す。
【0045】
図中の”数字”は,針電極11の根元と先端の間隔の差(単位mm)を試験体5個で平均した値である。”○”はX線装置の測定分解能である0.1mm以下の場合で,反りが発生していない状態を示している。”割れ”は試験体の針電極間に亀裂等が確認されたことを示している。
【0046】
このことより,反りもなく,割れもないということを満足する条件は,太さが1.5mm〜2mm,刺し込む長さは10mm〜20mm,間隔は5mm〜15mmであった。
【実施例2】
【0047】
非検出部位付き針電極10を図2に示し説明する。針電極11の素材はステンレスで太さは1.5mmを用いた。針電極11の先端から10mmを残してその他の部分にエポキシ接着剤の絶縁層12を施し,外形1.8mm,内径1.6mmのステンレス製パイプを外部導電体13として被覆し,非検出部位付き針電極10を作成した。
【0048】
前記針電極を具備するセンサモジュール20を図3に示し説明する。使用する2本の針電極のうち,1本は非検出部位付き針電極10とし,もう1本は非検出部位を持たない太さ1.5mmのステンレス製の針電極11とした。2本の針電極は,どちらも筐体から20mm突出するように絶縁体の固定治具21により平行に固定した。針電極の間隔は5mmとした。
【0049】
針電極1本につき2本の同軸ケーブル22を接続し,測定器との接続のためにBNCコネクタ231〜234に接続した。4本の同軸ケーブル22は,針電極側に最も近い位置で外部導体同士を結線し,非検出部位付き針電極10の外部導電体13に接続した。筐体は上記の部材が入る大きさのプラスチックケースを用いた。
【実施例3】
【0050】
非検出部位の効果を確認するため,図4に示すように,測定装置としてLCRメータ31(横河ヒューレットパッカード製 HP4285A)を用い,実施例2のセンサモジュール20を接続して,1個のサツマイモを試験体33として測定した。
【0051】
LCRメータ31とセンサモジュール20は,対応するBNCコネクタ同士(231と311,232と312,233と313,234と314)を同軸ケーブル32で接続した。試験体33はサツマイモを30mm角の立方体に成形したものを用いた。30mm角より小さくなると,針電極周辺に形成される電気力線が試験体33の外側の空気層も多く測定してしまい,測定誤差が大きくなる。LCRメータ31の測定条件は,測定周波数1MHz,印加電圧 1Vで試験した。試験体33に針電極を刺したときの測定結果を図5に示す。横軸は刺し込み深さ,縦軸は静電容量である。
【0052】
針電極を試験体33に徐々に刺し込むと,刺した針電極の長さの分だけ静電容量の値が増加する。A点は非検出部位が試験体33に刺さりはじめる位置である。非検出部位にさしかかると,それ以後は針電極を刺し込んでも,測定値はほとんど変化しない。つまり非検出部位においては,外部導電体13の遮蔽効果により,電気力線が内部の針電極11に到達しないため測定値に影響を及ぼさない結果が得られた。
【0053】
このことから,針電極の先端10mm部分のみで測定していることが確認でき,刺し込み深さによる測定値のバラツキを軽減することが可能となった。
【実施例4】
【0054】
実施例3の測定方法で,200個のサツマイモを試験体33として測定し,水分との相関を確認した。
【0055】
試験体33は,1個のサツマイモのほぼ中央部分から30mm角の立方体を1つ切りだして供した。測定が終了した試験体は,直ちに包丁で数mm角に細断し,そのうちの3g程度を乾燥器で80℃で3時間乾燥させ,乾燥前後の重量差から水分を求めた。
【0056】
試験体200個の静電容量の測定値と水分のグラフを図6に示す。横軸に静電容量,縦軸に水分を示している。これを基に1次近似で検量データを作成した。検量データは,xを静電容量,yを水分として,y=0.0272x+51.695のようになった。
【実施例5】
【0057】
LCRメータ31に相当する測定回路40を作成し,これに電極を一体化させた測定装置50を作成した。測定装置のブロック図を図7に示し説明する。
【0058】
発振器41は,試験体の計測に必要な1MHzの正弦波と90度位相差のある方形波を出力する機能を有する。I−Vコンバータ42は,試験体に流れる電流を電圧に変換する機能を有し,自動平衡ブリッジ回路を形成する。位相検波器43は,計測された値から容量成分と抵抗成分を分離する機能を有する。LPF44は,位相検波出力を積分し,DC出力得る機能を有する。A/D45は,DCに変換されたアナログ信号を,デジタル値に変換する機能を有する。
【0059】
本装置はタッチパネル機能を具備した表示装置47を備え,測定した値の表示のほか,装置のコントロールを行うための入力装置としての機能を有する。また記録装置48を備えており,測定値の記録をリアルタイムで行うことが可能となっている。記録装置はSDカードを用い,一般的なパソコンで採用されているFATファイルシステムを実装している。
【0060】
上記機能はマイコン46により制御され,得られた静電容量は表示装置47に表示され,記録装置48に記録される。発振器41は非検出部位のない針電極11に,I−Vコンバータ42は非検出部位付き針電極10に接続される。
【0061】
この装置は,内部電源と外部電源の2種類の方法で駆動させることができる。電池491は乾電池等を用いる。電源コネクタ492には商用電源のAC100Vからの電力を接続する。これらの入力は,電源回路493により電圧を調整し内部回路を駆動する。
【0062】
測定装置の外観図を図8に示し説明する。
【0063】
測定装置51は直方体の形状で,実施例2のセンサモジュールと同じ大きさ,同じ構造,同じ取付方で非検出部位付き針電極10と非検出部位のない針電極11の合計2本を具備している。表示装置52はタッチパネル機能を有しており,測定結果を表示するほか,時間設定や測定条件など,測定装置51の各種設定を行うことが可能である。SDカード53はFATファイルシステムにより,パソコンで閲覧や処理が可能な形で測定データが記録される。
【0064】
電源アダプタ58を電源コネクタ54に接続して,商用電源での駆動を可能にしている。
内部電源として,電池57を実装できるようにしている。電源スイッチ55により,本体の電源をオンオフする。測定ボタン56は,測定装置51を片手で持ったとき,ちょうど親指がおかれる位置付近に配置した。これにより片手でサツマイモを持ち,もう一方の手で測定器を持ち測定した場合,自然に測定ボタンを押すことができ,持ち直しなどが発生せず,測定がスムーズに進む。装置未使用時における針電極の保護と,使用者の受傷防止のために電極キャップ59を用意した。
【実施例6】
【0065】
実際の焼酎製造現場で焼酎製造に供するサツマイモを測定し,製造後のアルコール収量との相関を確認する実験を行った。また,通常製造現場で行っているサツマイモのデンプン価の測定値との比較を行った。
【0066】
対象とした焼酎工場では,1日の仕込み(焼酎タンク1本分)に500kg入りの原料袋約30袋を使用する。試験体のサツマイモは1つの原料袋から3個を抽出し,30袋分合計90個用意した。4日間の実験で,デンプン価の代表値と,アルコール収量の相関を確認するデータを4つ得た。
【0067】
実施例5で作成した測定装置51を用いて測定した。試験体のサツマイモは30mm角に切りださずそのまま供し,サツマイモの中央付近側面に針電極を刺して測定した。
【0068】
試験体のサツマイモ90個分の静電容量を平均し,実施例4で求めた検量線により代表水分値とし,日本醸造協会発行の“第四回改正国税庁所定分析法注解”に記載されているデンプン価と水分の換算表によりデンプン価に変換した。得られた4日分の4つのデータを図9にプロットした(●マーク)。
【0069】
また,比較対象として焼酎製造現場で日常行われている加熱乾燥法により求めた4日分のデンプン価も図9にプロットした(□マーク)。現場では通常1回の仕込みで3個程度のサンプルを測定している。
【0070】
試作した測定装置51で得られたデータは,アルコール収量が少ないときにはデンプン価も少なく,アルコール収量が多いときにはデンプン価も多く測定されており,ほぼ線形近似が可能な結果が得られた。
【0071】
製造現場で求めたデンプン価においても,B点以外のデータではデンプン価がやや低く得られているものの,同様の傾向が確認できる。しかし,中にはB点のように,アルコール収量が高いにもかかわらず,デンプン価が低くなっている場合も存在する。これは,選択したサンプルが全体を代表する値から大きくはずれたものであったか,測定ミスがあった等の理由が考えられる。
【0072】
この様に,従来の測定方法ではサンプル数が多く取れないため,測定した値が原料のデンプン価を代表していないことがあり,アルコール収量の変動が原料によるものか,製造管理によるものか明確にすることができない。
【0073】
一方,測定時間が短くサンプル数を多く取ることが可能な本装置では,仕込みに用いたサツマイモのデンプン価をより平均的に求められ,本装置の有効性を示す結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】針電極の反りとサツマイモの割れについての実験結果の説明図
【図2】非検出部位付き針電極の説明図
【図3】針電極を具備したセンサモジュールの説明図
【図4】LCRメータを用いた測定方法の説明図
【図5】非検出部位付き針電極の効果の説明図
【図6】サツマイモ200個を測定して求めた静電容量と水分の検量データの説明図
【図7】作成した測定装置の構成の説明図
【図8】作成した測定装置の外観の説明図
【図9】アルコール収量と測定値との相関の説明図
【符号の説明】
【0075】
10 非検出部位付き針電極
11 針電極
12 絶縁層
13 外部導電体
20 センサモジュール
21 固定治具
22 同軸ケーブル
23 BNCコネクタ
231 Hc端子
232 Hp端子
233 Lp端子
234 Lc端子
31 LCRメータ
311 Hc端子
312 Hp端子
313 Lp端子
314 Lc端子
32 同軸ケーブル
33 試験体
40 測定回路
41 発振器
42 I−Vコンバータ
43 位相検波器
44 LPF
45 A/D
46 マイコン
47 表示装置
48 記録装置
491 電池
492 電源コネクタ
493 電源回路
50 測定装置
51 測定装置
52 表示装置
53 SDカード
54 電源コネクタ
55 電源スイッチ
56 測定ボタン
57 電池
58 電源アダプタ
59 電極キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の平行な電極を用いて試験体の静電容量を測定し,事前に調べた試験体の検量データから水分を求める測定装置において,2個の電極を試験体に刺して測定し,前記電極の少なくとも一方は,電極の根元側に,絶縁層を介在させて外部導電体を被覆し,同軸ケーブルのような構造にすることで,根元部分を非検出部位にしていることを特徴とする試験体の水分測定方法
【請求項2】
前記電極は,太さが1.5mm以上2mm以下の針形状のもので,その間隔は中心位置で5mm以上15mm以下であり,試験体に刺し込む最大の長さは10mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1記載の試験体の水分測定方法
【請求項3】
前記試験体がサツマイモ等の根菜類であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の試験体の水分測定方法
【請求項4】
2個の平行な電極を用いて試験体の静電容量を測定し,事前に調べた試験体の検量データから水分を求める測定装置において,2個の電極を試験体に刺して測定し,前記電極の少なくとも一方は,電極の根元側に,絶縁層を介在させて外部導電体を被覆し,同軸ケーブルのような構造にすることで,根元部分を非検出部位にしていることを特徴とし,前記電極は,太さが1.5mm以上2mm以下の針形状のもので,その間隔は中心位置で5mm以上15mm以下であり,試験体に刺し込む最大の長さは10mm以上20mm以下であることを特徴とするの試験体の水分測定装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145478(P2012−145478A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4736(P2011−4736)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 鹿児島県工業技術センター主催「平成22年度鹿児島県工業技術センター研究成果発表会(平成22年7月15日開催)」
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【出願人】(511011621)株式会社A・R・P (1)
【出願人】(301017765)田苑酒造株式会社 (3)
【Fターム(参考)】