説明

サンダル形トレーニング用具

【課題】手軽に、舞踊に必要な美しい姿勢を作るために必要な重心の感覚、及び下半身の腱及び筋肉群の強化を行うことができるトレーニング用具の提供。
【解決手段】サンダル形トレーニング用具1は、台部2とストラップ部3とからなる。台部2の接地面24と、接足裏面21中の後部領域21Bとは平行かつ鉛直方向に重なる領域を有しており、装着時に踵で地面を踏む際にも安定して踏むことができ、体の重心を意識した美しい立ち姿勢を身につけることができる。また前部領域21Fは爪先方向に下るように傾斜しており、装着して歩行、運動を行うことにより効果的に足裏の腱、筋肉群を鍛えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレエ、ダンスその他の舞踊において美しい姿勢をつくるのに必要なバランス感覚、及び下半身の筋力を鍛えるためのサンダル形トレーニング用具に関する。
【背景技術】
【0002】
バレエや社交ダンスなどの舞踊において、美しく舞うための基本として、正しい姿勢を身に着けることが極めて重要である。例えばバレエにおける基本動作である「プリエ」や「ルルヴェ」にしても、その前段階としての基本の立ち姿勢と足の位置を身につけていなければ正しい動作を行うことができない。
【0003】
基本の立ち姿勢を身につけるためには、重心を意識することが重要であり、踵の中心でしっかり床を踏むことを意識的に行うことが有効である。
【0004】
また舞踊における美しい姿勢の実現のためには、普段の日常生活ではあまり使わない筋肉、特に下半身の踵から膝裏、臀部にかけての後半身内側の腱及び筋肉(アキレス腱、下腿三頭筋、半腱様筋、大臀筋など)が重心を支える役割を果たすために、これらの腱及び筋肉群の強化が欠かせない。そのため、こうした腱及び筋肉群を効果的に鍛えるトレーニング用具が望まれていた。
【0005】
ここで、こうした姿勢や動作を身につけるためのトレーニング用具としては、例えば特許文献1にあるように、トゥで立つ練習を容易にするためのトレーニング用具や、特許文献2、特許文献3あるいは特許文献4のように、社交ダンスにおける正しい姿勢を身につけるための矯正装置は提案されていた。しかし特許文献1はトゥで立つ練習を補助するためのものであり、基本姿勢を身につけるための重心の意識や、特定筋肉群の強化といった目的に沿うものではなかった。また特許文献2ないし特許文献4に開示されている矯正装置も、特定の姿勢についての矯正装置であり、自らの重心の意識を高めるためには寄与することはなく、また筋力強化とも無縁であった。
【0006】
また負荷を調節しやすく乗降し易い下肢用筋力訓練機といったものも提案されていたが(特許文献5)、かかる大掛かりな装置では手軽にトレーニングを行うことは困難である。
【特許文献1】特開平6−142250
【特許文献2】特開平9−192279
【特許文献3】特開2002−28269
【特許文献4】特開2004−166929
【特許文献5】特開2007−448
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、バレエ、その他舞踊をたしなむ人が、手軽に、舞踊に必要な美しい姿勢を作ることができるために必要な重心の感覚、及び下半身の腱及び筋肉群の強化を行うことができるトレーニング用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は下記手段によって解決される。
【0009】
(1)硬質部材からなる台部と足甲を固定するストラップ部とを有するサンダル形トレーニング用具であって、前記台部の接地面は平面であり、前記台部の接足裏面は、装着時に概ね踵に接する領域であって、前記接地面と平行であり、鉛直方向において前記接地面と重なる領域を有する後部領域と、装着時に概ね土踏まず部及び趾の付け根部に接する領域であって、爪先方向に向かって下がる前部領域とが連続して形成されていることを特徴とする、サンダル形トレーニング用具(請求項1)。
【0010】
(2)前記前部領域と前記後部領域との連続部分は、面取りされていることを特徴とする、(1)に記載のサンダル形トレーニング用具(請求項2)。
【0011】
(3)前記前部領域が凹凸を有さない平滑面であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のサンダル形トレーニング用具(請求項3)。
【0012】
(4)前記台部の爪先側先端部の小趾側角が、母趾側角と比べて大きく削られていることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載のサンダル形トレーニング用具(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるサンダル形トレーニング用具によれば、踵が高い履物のように構成されており、爪先方向に向かって下りの傾斜がついており、かつソール部分のうち装着時に踵に相当する部分は、地面と平行になるため、装着者は、踵の中心でしっかりと地面を踏むことを余儀なくされる。その結果、身体の重心を意識した立ち姿勢を自然と身につけることができる。更に爪先方向に向かって付いている下りの傾斜及びストラップ部によって、装着者は足先を伸ばす体勢をとることになり、バレエその他の舞踊において求められる、足をすらりと長く見せる姿勢を身につけることができる。
【0014】
また、接足裏面の前部領域と後部領域との連続部分を面取りしておけば、装着時においても痛みを感じることが少ない。
【0015】
更に、傾斜が付いている前部領域を平滑面に構成することにより、足裏の前半部で踏ん張ることができなくなるため、上述した踵の中心で地面を踏むことをより強く意識させることができる。
【0016】
そして、上述した足先を伸ばす姿勢は、特にバレエにおける基本動作である「タンジュ」(足先を地面に這わせながら前方に出し、内から外へ(アン・ドゥオール)と円弧を描くように動かすこと)において重要であるところ、足趾、特に小趾を曲げるようにすることでより美しい脚のラインを作ることができる。そこで本発明に係るサンダル形トレーニング用具において小趾に相当する部位を多く削っておくことにより、バレエのバーレッスンなどにおいて活用することができる。
【0017】
なお、「硬質部材」とは、例えばポリウレタンなどの可塑性、弾力性を有しない合成樹脂を適用することができる。また「ストラップ部」は、足甲を固定するためのものであるから、装着の際に足甲を傷つけないよう一定程度の太さと弾力性を有していることが望ましく、例えば天然ゴム素材を採用することができる。
【0018】
また「台部」とは、通常の履物におけるソール部分に相当し、表面は装着者の足裏に接し、裏面は地面に接する。台部は装着時に足裏全体に接するように構成しても良いが、通常の履物と異なり、爪先部分は直に地面に触れるような程度の大きさであっても良い。この場合、踵で自重を支える感覚を養いながら、同時に足先においても接地している感覚を身につけることができる。
【0019】
「台部の接地面は平面」とは、厳密な幾何学上の平面を意味するものではなく、上述したトレーニングを行うのに適した安定性を実現できる程度に平らであれば良い。すなわち、裏面全体が必ずしも接地している必要はなく、踵から鉛直に体重をかける際にグラつきを生じない形状であれば良い。
【0020】
「接足裏面」とは、履物におけるソール部分の上面であり、装着時に装着者の足裏が接する側の面をいう。当然ながら人によって足の形状は様々であるから、接足裏面全体に足裏が接する必要はなく、また足裏全体が接足裏面に接する必要もない。
【0021】
「概ね踵に接する」とは、上述したトレーニングを実施するにあたって装着者の踵が戴置されることを意味し、踵及びその近傍の身体部位が当たることを意味する。「接地面と平行」とは、厳密に幾何学上の平行を意味するものではなく、戴置した踵から鉛直方向に自重をかけた際にグラつきや滑りが生じない程度に地面及び接地面と平行であれば良い。「鉛直方向において前記接地面と重なる領域を有する」とは、サンダル形トレーニング用具を接足裏面側、つまり装着時における上側からみた際に、接地面と重なる部分があることを意味し、これにより、装着時に踵から鉛直方向に体重をかけた場合であっても、接地面で負荷を支え、装着者がバランスを崩して転倒することがない。
【0022】
「凹凸を有さない平滑面」とは、本トレーニング用具の用途に鑑み、踵部分以外の足裏、例えば土踏まず付近で踏ん張ることにより効果の達成を得られなくなることを防止するため、傾斜を有している前部領域については少なくとも不要に摩擦を生じたり足裏が引っ掛かったりすることのない程度に滑らかな表面とすることを意味している。すなわち、製造工程において生じる多少の凹凸もないことを意味するのではなく、傾斜面の滑り止め防止など意図的に凹凸を設けていないことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の具体的実施形態を図示しつつ示す。
【0024】
図1は、本発明の一実施例にかかるサンダル形トレーニング用具1の斜視図である。サンダル形トレーニング用具としての特性から、右、左各々用に一つ、一組として用いることを想定している。但し必ずしも常に左右同時に装着する必要はなく、トレーニングの行い方によってはいずれか一方の足のみに装着して行っても良い。例えばバレエにおけるバーレッスンなどの場合、一方の足のみに装着してもよく、更にはもう一方の足は何らかの台の上に載って行ってもよい。ここでは、左足用のみを図示して説明する。
【0025】
サンダル形トレーニング用具1は、台部2とストラップ部3とから構成されている。本実施例においては、ストラップ部3は一本の帯状部材から構成されており、その両端3F、3Fは、台部の側面において接着固定されている。台部2の側面には、両端3F,3Fが接着固定された部位よりも後ろ側(踵方向)にストラップ部3を挿通させるための孔2Sが設けられており、ストラップ部3はその孔2Sに挿通され、図1に示されたように二本の帯状部材が前面で互いに重なり合いつつ交差するような状態で台部2に固定されている。
【0026】
ストラップ部3は、天然ゴム素材からなり、弾性を有している。そのため装着時には足甲を締め付け固定することになり、装着して運動している際の装着ズレを防止し、ケガを未然に防ぐことができる。もちろん、ストラップ部3の形状は本実施例に限られることはなく、例えば一本の帯状部材を台部2の上方を横切らせるように配し、両端を接着固定させるようにしてもよい。あるいは複数本の帯状部材を台部2の上方を横切らせるように配し、かつ装着時足甲に当接する部分を人工皮革で被覆させるようにしても良い。この場合、足甲の固定によっても当接部分が過度に締め付けられることがなく、装着者が痛みを感じにくい。また両端3F,3Fの固定手段は接着に限らず、縫合、融着等適宜採用することができる。更に、ストラップ部3の素材も天然ゴムに限られるものではなく、他の弾性部材、例えばラテックス、各種合成樹脂等であっても良く、更には弾性を有しない部材を用いても良い。要は足甲を固定することができれば良い。
【0027】
台部2は、硬質部材であるポリウレタン素材からなる。耐久性、耐摩耗性に優れているという特性を有する一方でトレーニング用具としての適切な重量である他、装着者が踵において自重を支えるにあたって、圧力による変形を生じない。もっとも素材はポリウレタンに限られるものではなく、本発明の目的に沿う程度の硬質性を有している素材であれば、適宜採択可能である。
【0028】
次に、図2、図3、及び図4を用いつつ、台部2の形状的特徴について具体的に説明する。図2は、サンダル形トレーニング用具1の一対の正面図であり、図3はサンダル形トレーニング用具1の左足用の側面図であり、図4はサンダル形トレーニング用具(右足用)を装着した状態の側面図である。
【0029】
図1にも表れていたように、接足裏面21は、主として装着時に踵に接する領域である後部領域21Bと、主として装着時に土踏まず部及び趾の付け根部に接する領域である前部領域21Fとが連続して構成されている。図1及び図2においては、便宜上両者を区別するために点線を付しているが、実際には両領域は連続的に構成され、かつ境界部分は面取りされている。
【0030】
図3に示されているように、後部領域21Bは、接地面24と略平行になるように構成されている。ここで接地面24は側面図上は直線としてしか表示されないが、トレーニングを行うのに適した安定性を実現できる程度に平らに構成されている。また後部領域21Bのうち爪先に近い領域(図3において斜線を施した領域)は、接地面24と鉛直方向において重なっている。このため図4のように装着した際に、装着者が踵から鉛直方向に体重をかけた場合にあってもバランスを崩すことがなく、しっかりと地面を踏む感触を身につけることができる。
【0031】
前部領域21Fは、図3に表れているように、踵方向から爪先方向に向かって下りの傾斜が施されている。またこの前部領域21Fには、滑り止め等が施されていない平滑面として構成されている。このため、図4に示すような装着状態にあっても、土踏まず部分あるいは足の前後方向の中央当りや、足趾の付け根付近において踏ん張ったり無用な力みを加えることができず、踵での重心保持を一層意識して身につけることができる。
【0032】
前部領域21Fの先端部分はいずれも角を丸めるよう加工がなされているが、ここで母趾側角22に比べて、小趾側角23をより大きく削るようにしている。これにより、特にバレエのレッスンにおける足の基本動作であるタンジュにおいて、足先まで伸ばす際に、小趾を丸める動作を行う際に本トレーニング用具が邪魔になることがない。
【0033】
なお、このサンダル形トレーニング用具1の使用方法の例としては、以下を挙げることができる。
【0034】
(1)両足に装着した状態での歩行訓練。まっすぐ立つこと、膝が曲がった歩き方にならないことを意識する訓練を行うことができる。特に歩行の際、後ろ側の足を伸ばすことが自然と意識され、また踵を床につけて歩くことが意識されるため、美しい歩行姿勢を身につけることができる。
【0035】
(2)両足に装着した状態での更なる負荷。例えば前屈運動や足を交差させた状態での歩行。これにより膝裏の筋肉の伸縮を促し、普段の運動では鍛えることが難しい足裏の筋肉群や腱を効果的に鍛えることができる。
【0036】
(3)バレエのバーレッスンにおけるトレーニング。バーを両手で持ち、5番ポジションで両踵を床につけた状態で立ち、タンジュを行う。膝裏の筋肉が一層鍛えられる上、足先まで伸ばした状態を意識することができ、美しい脚のラインを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施例にかかるサンダル形トレーニング用具(左足用)の斜視図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるサンダル形トレーニング用具の正面図である。
【図3】本発明の一実施例にかかるサンダル形トレーニング用具(左足用)の側面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかるサンダル形トレーニング用具の装着状態を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 サンダル形トレーニング用具
2 台部
2S 孔
21 接足裏面
21F 前部領域
21B 後部領域
22 母趾側角
23 小趾側角
24 接地面
3 ストラップ部
3F 両端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質部材からなる台部と足甲を固定するストラップ部とを有するサンダル形トレーニング用具であって、
前記台部の接地面は平面であり、
前記台部の接足裏面は、
装着時に概ね踵に接する領域であって、前記接地面と平行であり、鉛直方向において前記接地面と重なる領域を有する後部領域と、装着時に概ね土踏まず部及び趾の付け根部に接する領域であって、爪先方向に向かって下がる前部領域とが連続して形成されている
ことを特徴とする、サンダル形トレーニング用具。
【請求項2】
前記前部領域と前記後部領域との連続部分は、面取りされていることを特徴とする、請求項1に記載のサンダル形トレーニング用具。
【請求項3】
前記前部領域が凹凸を有さない平滑面であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のサンダル形トレーニング用具。
【請求項4】
前記台部の爪先側先端部の小趾側角が、母趾側角と比べて大きく削られていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のサンダル形トレーニング用具

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−272366(P2008−272366A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122541(P2007−122541)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000109288)チャコット株式会社 (7)