説明

サーペンタイン型熱交換器

【課題】サーペンタイン型熱交換器において、小型化及び高効率化を実現する。
【解決手段】サーペンタイン型熱交換器100は、プレス成形された二枚のチューブシート11を貼り合わせて構成され、サーペンタイン状に折り返されるチューブ1と、折り返されたチューブ1によって挟まれた空間に配置されるコルゲートフィン2と、を備える。チューブ1の折り返し部の内部には、一方のチューブシート11から突出し、他方のチューブシート11に当接する複数の凸部8が間隔をおいて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーペンタイン型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置のエバポレータ又はコンデンサとして利用される熱交換器として、特許文献1に開示されるサーペンタイン型熱交換器が知られている。
【0003】
サーペンタイン型熱交換器は、内部に媒体の通路が形成されたチューブをサーペンタイン(蛇行)状に折り返し、折り返されたチューブで挟まれた空間にフィンを配置した構成である。
【0004】
サーペンタイン型熱交換器は、チューブの長さ、折り曲げる位置・回数を変更することで、様々な大きさ、すなわち、様々な容量の熱交換器を製造することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−27484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーペンタイン型熱交換器において小型化及び高効率化を実現するためには、チューブを薄肉化して折り曲げ部の曲率半径を小さくし、フィンを配置できない折り曲げ部内側の空間を小さくして、なるべく多くのフィンを配置する必要がある。
【0007】
しかしながら、サーペンタイン型熱交換器に用いられるチューブは、押し出し成形によって成形されるので、薄肉化が難しかった。
【0008】
また、チューブに形成される媒体の通路は、図6に示すように、平行な複数の通路となる。このような流路構成では、ある通路を流れる媒体が他の通路を流れる媒体と混じることがないので、通路間で温度差が生じ、熱交換器の高効率化が難しかった。
【0009】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、サーペンタイン型熱交換器において、小型化及び高効率化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様によれば、サーペンタイン型熱交換器であって、プレス成形された二枚のチューブシートを貼り合わせて構成され、サーペンタイン状に折り返されるチューブと、前記折り返されたチューブによって挟まれた空間に配置されるフィンと、を備え、前記チューブの折り返し部の内部には、一方のチューブシートから突出し、他方のチューブシートに当接する複数の凸部が間隔をおいて形成される、ことを特徴とするサーペンタイン型熱交換器が提供される。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、プレス成形されたチューブシートを重ね合わせ、これを折り返すことでサーペンタイン状のチューブが構成される。チューブの肉厚を押し出し成形によって製造されるチューブに比べて薄くできるので、折り曲げ部の曲率半径を小さくすることができる。これにより、フィンを設置できない折り曲げ部内側の空間を小さくすることができ、より多くのフィンを配置して熱交換器の小型化及び高効率化を実現することができる。
【0012】
また、チューブ内を流れる媒体は、凸部間の隙間を介して絶えず混合されながら流れるので、これによっても熱交換器の高効率化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るサーペンタイン型熱交換器の全体構成図である。
【図2A】チューブを折り返し部で短手方向にカットした図である。
【図2B】チューブを直線部で短手方向にカットした図である。
【図2C】チューブの折り返し部及び直線部を長手方向にカットした図である。
【図3】チューブの断面図である。
【図4A】製造方法を説明する図である。
【図4B】製造方法を説明する図である。
【図4C】製造方法を説明する図である。
【図4D】製造方法を説明する図である。
【図4E】製造方法を説明する図である。
【図4F】製造方法を説明する図である。
【図4G】製造方法を説明する図である。
【図4H】製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の第2実施形態のチューブの断面図である。
【図6】従来のチューブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るサーペンタイン型熱交換器(以下、「熱交換器」という。)100の全体構成図である。
【0016】
熱交換器100は、チューブ1と、コルゲートフィン2と、入口アダプタ3と、出口アダプタ4と、入口パイプ5と、出口パイプ6と、を備える。
【0017】
チューブ1は、プレス成形によって凹溝7及び凹溝7内に突出する円錐台形状の複数の凸部8(図2A〜図2C及び図3参照)が形成されたチューブシート11(図4A参照)を重ね合わせ、サーペンタイン(蛇行)状に折り返すことで構成される。なお、以下の説明では、チューブ1の折り返された部分を「折り返し部」と表現し、折り返されていない部分を「直線部」と表現する。
【0018】
図2Aから図2Cは、それぞれ、チューブ1を折り返し部で短手方向にカットした図、チューブ1を直線部で短手方向にカットした図、チューブ1の折り返し部及び直線部を長手方向にカットした図である。図3はチューブ1の断面図である。
【0019】
これらの図に示されるように、一方のチューブシート11の凸部8は、他方のチューブシート11の凸部8と付き合わされ、チューブ1の内部にチューブ1の厚さ方向に延びる柱を形成する。凸部8は、チューブシート11の面方向(媒体の流れ方向及びそれに直交する方向)に間隔をおいて形成され、直線部を補強するとともに、チューブ1が折り返し部において潰れて通路断面積が小さくなるのを防止する。凸部8は千鳥に配置され、媒体の通路を閉塞することはない。
【0020】
チューブ1の折り返し部においては、チューブシート11のタブ12がチューブ1の折り返し方向に折り曲げられて、チューブシート11同士がかしめ加工されている。
【0021】
コルゲートフィン2は、金属板を波状に折り曲げて構成されるフィンである。コルゲートフィン2は、折り返されたチューブ1によって形成される複数のU字状の空間にそれぞれ配置され、上端及び下端がチューブ1に接触する。
【0022】
入口アダプタ3及び入口パイプ5はチューブ1の一方の端部に接続される。出口アダプタ4及び出口パイプ6はチューブ1の他方の端部に接続される。
【0023】
第1実施形態に係る熱交換器100は以上のように構成され、入口パイプ5から入口アダプタ3に流入する媒体は、蛇行するチューブ1内を通って図中下側から上側に流れ、その過程で、コルゲートフィン2を通過する空気と熱交換を行う。熱交換後の媒体は出口アダプタ4へと送られ、出口パイプ6から排出される。
【0024】
続いて、図4A〜図4Hを参照しながら、第1実施形態に係る熱交換器100の製造方法について説明する。
【0025】
まず、チューブシート11をプレス加工によって製造する(図4A)。チューブシート11は、長手方向に延びる凹溝7を中央に有し、凹溝7の底部からは複数の凸部8がチューブシート11の面方向に間隔をおいて突出する。凸部8の高さは凹溝7の深さに等しい。また、折り返し部となる部位の両側にはタブ12が形成される。
【0026】
次に、チューブシート11を二枚用意し、凹溝7が内側になるようにこれらを重ね合わせ、チューブ1に構成する(図4B)。このとき、一方のチューブシート11の凸部8及びタブ12の位置が他方のチューブシート11の凸部8及びタブ12の位置と一致するように、二枚のチューブシート11の位置が合わされる。凹溝7が重ね合わされることによって、チューブ1の内部に媒体の通路が形成され、また、凸部8が付き合わされることによって、チューブ1の内部に厚さ方向に延びる柱が形成される。
【0027】
次に、タブ12を折り曲げてチューブシート11同士をかしめ加工する(図4C)。タブ12を折り曲げる方向は、チューブ1が折り返される方向と同一である。
【0028】
次に、チューブ1を複数箇所で折り返し、サーペンタイン形状にする(図4D)。折り返しは、治具を折り返す部位に当接させながら、当該部位の両側に力を掛けることによって行われる。当該部位においては、タブ12によってチューブシート11同士がかしめ加工されているので、折り返された後でも二枚のチューブシート11は密着状態を維持し、チューブ1の側面に隙間が生じることはない。
【0029】
次に、チューブ1の一方の端部に入口アダプタ3を接続し、他方の端部に出口アダプタ4を接続する(図4E)。入口アダプタ3及び出口アダプタ4は、いずれも円筒形状であり、端面に入口パイプ5又は出口パイプ6が接続される開口を有し、側面にチューブ1の端部が接続されるスリット状開口を有する。
【0030】
次に、折り返されたチューブ1の間の空間に、コルゲートフィン2を挿入し、配置する(図4F)。
【0031】
次に、入口アダプタ3に入口パイプ5を接続し、出口アダプタ4に出口パイプ6を接続する(図4G)。
【0032】
最後に、全体が炉の中に配置され、各部品をロウ付けによって結合する(図4H)。
【0033】
続いて、第1実施形態の作用効果について説明する。
【0034】
第1実施形態によれば、プレス成形されたチューブシート11を重ね合わせ、これを複数箇所で折り返すことでサーペンタイン状のチューブ1が構成される。チューブ1の肉厚を押し出し成形によって製造されるチューブに比べて薄くできるので、折り曲げ部の曲率半径を小さくすることができる。これにより、コルゲートフィン2を設置できない折り曲げ部内側の空間を小さくすることができ、より多くのコルゲートフィン2を配置して熱交換器100の小型化及び高効率化を実現することができる。
【0035】
また、チューブ1の肉厚が薄くなると、折り曲げ部においてチューブ1が潰れる可能性があるが、第1実施形態ではチューブシート11から突出する凸部8によってチューブ1の内部に柱が形成されるので、チューブ1が折り曲げ部において潰れて通路断面積が小さくなることもない。
【0036】
また、チューブ1内を流れる媒体は、凸部8(柱)間の隙間を介して絶えず混合されながら流れるので、これによっても熱交換器100の高効率化が実現される。
【0037】
また、折り返し部においては、タブ12によってチューブシート11同士をかしめ加工するようにしたので、チューブ1を折り返す際に、チューブシート11とチューブシート11とが離れてしまうことはなく、チューブ1の側面に隙間が生じるのを防止することができる。
【0038】
また、チューブシート11に形成した凸部8の形状を円錐台形状にしたので、直線部におけるチューブ1の強度を確保しつつ、折り曲げ部における折り曲げやすさを確保することができる。
【0039】
<第2実施形態>
第2実施形態は、チューブ1の内部に形成される柱の形成方法が第1実施形態と異なる。
【0040】
第1実施形態では、チューブ1を構成する二枚のチューブシート11の両方に凸部8を形成し、これらを付き合わせることで柱を形成したが、第2実施形態では、凸部8が形成されるのは一方のチューブシート11のみで、他方のチューブシート11には形成されない。第2実施形態では、一方のチューブシート11に形成される凸部8を他方のチューブシート11の平坦面に付き合わせることで、チューブ1の内部に柱が形成される。
【0041】
図5は、第2実施形態のチューブ1の断面図である。凸部8が形成されるのは一方のチューブシート11のみであり、他方のチューブシート11には形成されない。このような構成で、チューブ1の内部に柱を形成するようにしてもよい。この構成によれば、凸部8の位置合わせが不要であり、製造工程を簡略化することが可能である。
【0042】
その他の構成は第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例を示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0044】
例えば、上記実施形態では、チューブ2の全体に凸部8を形成しているが、凸部8は少なくとも折り曲げ部に設けられていればよい。凸部8がなくても直線部の強度を確保できる場合は、直線部の凸部8は不要である。
【0045】
また、凸部8の形状は円錐台形状ではなく、円柱形状、角柱形状(三角柱形状、四角柱形状等)であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 チューブ
2 コルゲートフィン
8 凸部
11 チューブシート
12 タブ
100 サーペンタイン型熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーペンタイン型熱交換器であって、
プレス成形された二枚のチューブシートを貼り合わせて構成され、サーペンタイン状に折り返されるチューブと、
前記折り返されたチューブによって挟まれた空間に配置されるフィンと、
を備え、
前記チューブの折り返し部の内部には、一方のチューブシートから突出し、他方のチューブシートに当接する複数の凸部が間隔をおいて形成される、
ことを特徴とするサーペンタイン型熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載のサーペンタイン型熱交換器であって、
前記チューブの直線部の内部にも前記凸部が形成される、
ことを特徴とするサーペンタイン型熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサーペンタイン型熱交換器であって、
前記凸部は、前記他方のチューブシートから突出する別の凸部と付き合わされる、
ことを特徴とするサーペンタイン型熱交換器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のサーペンタイン型熱交換器であって、
前記凸部は、前記一方のチューブシートにのみ形成される、
ことを特徴とするサーペンタイン型熱交換器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のサーペンタイン型熱交換器であって、
前記凸部は、千鳥に配置される、
ことを特徴とするサーペンタイン型熱交換器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のサーペンタイン型熱交換器であって、
前記凸部は、円錐台形状、円柱形状又は角柱形状である、
ことを特徴とするサーペンタイン型熱交換器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載のサーペンタイン型熱交換器であって、
前記チューブの前記折り返し部において、前記一方のチューブシートと前記他方のチューブシートとが両側においてかしめ加工される、
ことを特徴とするサーペンタイン型熱交換器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2753(P2013−2753A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135178(P2011−135178)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】