説明

サーマルプリンタ及びサーマルプリント方法

【課題】 サーマルヘッドによる記録紙の搬送負荷変動に起因して発生する濃度むらの発生を抑える。
【解決手段】余剰エリア印画熱エネルギ演算部23により、記録エリアを印画するときの1ライン分の記録エリア最大印画熱エネルギEpmaxから記録エリア内の1ライン分の印画熱エネルギEpiを引いて、この差ESiを余剰エリア印画熱エネルギとする。この余剰エリア印画熱エネルギESiを余剰エリアに位置する発熱素子数で割って、共通印画熱エネルギを求める。そして、この共通印画熱エネルギを発生するための仮想画像データを求める。この仮想画像データと記録エリアの画像データに基づき記録紙2に印画する。各ラインの総印画熱エネルギが常に一定になり、各ライン記録時の印画熱エネルギ変動がなくなる。印画熱エネルギ変動に起因する搬送負荷変動が抑えられて、濃度むらの発生がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙にサーマルヘッドを用いて画像を熱記録するサーマルプリンタ及びサーマルプリント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱発色層を備えた感熱記録紙をサーマルヘッドで加熱して画像を発色記録する感熱プリンタが知られている。サーマルヘッドには、多数の発熱素子が主走査方向に沿ってライン状に配列されている。感熱プリンタは、サーマルヘッドと感熱記録紙とを副走査方向に相対移動させながら、画像を1ラインずつ記録する。各発熱素子は、1ライン分の画像データに基づいて駆動され、感熱記録紙に対して印画熱エネルギを与える。
【0003】
感熱記録紙とサーマルヘッドとの間の摩擦係数は、前記印画熱エネルギによって変動する。すなわち、印画熱エネルギが大きいと、発熱素子の温度が上昇して摩擦係数が低くなり、他方、印画熱エネルギが小さいと、発熱素子の温度が下がって摩擦係数が大きくなる。したがって、原画の濃度が急変する部分では、印画熱エネルギの変動が大きいため、摩擦係数の変動も大きくなる。摩擦係数が変動すると、感熱記録紙の搬送負荷が変動するので、感熱記録紙の搬送ピッチが変化してしまう。これにより、単位面積あたりに与えられる印画熱エネルギが変化して濃度むらが発生してしまうという問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるように、上記濃度変化に起因する負荷変動が生じても濃度むらを発生させない感熱プリンタが記載されている。この感熱プリンタでは、各ライン毎にサーマルヘッドの負荷量を求めるとともに、記録すべきラインの負荷量と隣接するラインの負荷量との差から負荷変動量を求め、その負荷変動量に基づいて記録すべきラインの印画熱エネルギを補正している。そのため、搬送負荷変動により感熱記録紙の搬送ピッチが変化した場合でも、その変化に応じて印画熱エネルギも補正されるから、濃度むらの発生が防止される。
【特許文献1】特開2002−67370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように搬送負荷変動に基づき印画熱エネルギを補正する場合には、感熱記録紙に対する各発熱素子の動摩擦係数と印画熱エネルギとの関係や、感熱記録紙に対する各発熱素子の押圧分布状態を精度よく把握しておく必要がある。このため、各プリンタを実際に動作させて各種データを取得する必要があり、データ取得に手間を要するという問題がある。しかも、このようにして取得したデータを用いて印画熱エネルギを補正しても、記録紙に対して直接に作用させるものではなく、印画熱エネルギの補正という形で搬送負荷変動を抑えているため、充分な補正が行えないという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、記録紙の搬送負荷変動に起因して発生する濃度むらの発生を抑えるようにしたサーマルプリンタ及びサーマルプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、主走査方向に沿って複数の発熱素子が配列されたサーマルヘッドを用いて画像データに応じて各発熱素子を発熱させて、前記主走査方向に交差する副走査方向に記録紙を送って画像を記録紙に1ラインずつ記録するサーマルプリント方法において、前記記録紙を主走査方向において記録エリアと余剰エリアとに分け、前記記録エリアに対応する発熱素子を駆動して画像を記録するとともに、前記余剰エリアに対応する発熱素子を駆動して、各ラインの総印画熱エネルギを一定にすることを特徴とする。なお、前記記録エリアに対する各ライン分の印画熱エネルギを求め、1ライン分の基準印画熱エネルギから前記各ライン分の印画熱エネルギを引いてこの値を前記余剰エリアに対する印画熱エネルギとすることが好ましい。また、前記基準印画熱エネルギは、記録エリアに対する1ライン分の最大総印画熱エネルギであることが好ましい。また、本発明は、主走査方向に沿って複数の発熱素子が配列されたサーマルヘッドを用いて画像データに応じて各発熱素子を発熱させて、前記主走査方向に交差する副走査方向に記録紙を送って画像を記録紙に1ラインずつ記録するサーマルプリンタにおいて、前記記録紙を主走査方向において記録エリアと余剰エリアとに分け、前記記録エリアに対する各ライン分の印画熱エネルギを求め、1ライン分の基準印画熱エネルギから前記各ライン分の印画熱エネルギを引いてこの値を前記余剰エリアに対する印画熱エネルギとして、画像を記録するサーマルヘッド駆動部と、前記余剰エリアを記録エリアから切り離すカッタとを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のサーマルプリント方法は、画像が記録される記録エリアに対面する第1グループと、前記画像が記録されない余剰エリアに対面する第2グループとに、発熱素子を分け、1ラインの画像データに基づいて、前記第1グループを駆動して記録エリアに1ラインを記録し、第1グループが発生する第1印画熱エネルギと前記第2グループが発生する第2印画熱エネルギの合計である総印画熱エネルギが各ラインでほぼ同じになるように、前記第2グループを駆動することを特徴とする。なお、前記総印画熱エネルギは、前記第1印画熱エネルギの最大値以上であることが好ましい。また、前記第2印画熱エネルギを第2グループの発熱素子の個数で割って共通印画熱エネルギを求め、前記共通印画熱エネルギを発生するための仮想画像データを求め、この仮想画像データに応じて前記第2グループの発熱素子を駆動することが好ましい。また、前記余剰エリアは前記記録エリアの両側に位置することが好ましい。さらに、前記余剰エリアを前記記録エリアから切り離すことが好ましい。
また、本発明のサーマルプリンタは、画像が記録される記録エリアに対面する第1グループの発熱素子が発生する第1印画熱エネルギを1ラインごとに算出する第1演算部と、
前記画像が記録されない余剰エリアに対面する第2グループの発熱素子が発生する第2印画熱エネルギを1ライン毎に算出し、前記第1印画熱エネルギと前記第2印画熱エネルギと合計した総印画熱エネルギが各ラインでほぼ同じになるようにする第2演算部と、前記第1グループを前記第1ライン分の画像データで駆動し、前記第2印画熱エネルギを発生するように前記第2グループを駆動するサーマルヘッド駆動部とを備えることを特徴とする。なお、前記総印画熱エネルギは、前記第1印画熱エネルギの最大値以上であることが好ましい。また、前記第2印画熱エネルギを第2グループの発熱素子の個数で割って共通印画熱エネルギを求め、この共通印画熱エネルギから仮想画像データを求める第3演算部を有し、前記サーマルヘッド駆動部は前記仮想画像データに応じて前記第2グループを駆動することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録紙を主走査方向において記録エリアと余剰エリアとに分け、前記記録エリアに対応する発熱素子を駆動して画像を記録するとともに、前記余剰エリアに対応する発熱素子を駆動して、各ラインの総印画熱エネルギを一定にするから、各ライン記録時において、常に、総印画熱エネルギが一定になることにより、記録紙とサーマルヘッドとの搬送負荷変動がほぼ無くなる。したがって、簡単な構成で搬送負荷の変動が抑えられ、これに起因する濃度むらや色むらの発生を抑えることができる。同様にして、画像が記録される記録エリアに対面する第1グループと、前記画像が記録されない余剰エリアに対面する第2グループとに、発熱素子を分け、1ラインの画像データに基づいて、前記第1グループを駆動して記録エリアに1ラインを記録し、第1グループが発生する第1印画熱エネルギと前記第2グループが発生する第2印画熱エネルギの合計である総印画熱エネルギが各ラインでほぼ同じになるように、前記第2グループを駆動することにより、記録紙とサーマルヘッドとの搬送負荷変動をほぼ無くすことができ、搬送負荷変動に起因する濃度むらや色むらの発生が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明を実施したカラー感熱プリンタの要部を示す概略図である。このカラー感熱プリンタでは、図示しない記録紙ロールから給紙された長尺のカラー感熱記録紙(以下、単に記録紙という。)2が用いられる。記録紙2は、搬送ローラ対3によって給紙方向とこの給紙方向とは反対の印画方向とに送られる。搬送ローラ対3は、パルスモータからなる搬送モータ4で駆動されるキャプスタンローラ3aと、このキャプスタンローラ3aに圧接する位置と離れる位置との間で移動自在とされたピンチローラ3bとから構成されている。搬送モータ4はドライバ4aを介しコントローラ10により制御される。
【0011】
記録紙2は、周知のように、支持体上にシアン感熱発色層、マゼンタ感熱発色層、イエロー感熱発色層、及び保護層が順次層設されている。感熱層として最上層となるイエロー感熱発色層は熱感度が最も高く、小さな熱エネルギでイエローに発色する。最下層となるシアン感熱発色層は熱感度が最も低く、大きな熱エネルギでシアンに発色する。また、イエロー感熱発色層は、420nmの青紫光が照射されたときに、発色能力が消失する。マゼンタ感熱発色層は、イエロー感熱発色層とシアン感熱発色層との中間程度の熱エネルギでマゼンタに発色し、365nmの近紫外線が照射されたときに発色能力が消失する。
【0012】
搬送ローラ対3の給紙方向の下流側には、サーマルヘッド6が配置されている。サーマルヘッド6は、多数の発熱素子がライン状に配列された発熱素子アレイ6aを備えており、プリンタ内に固定されている。
【0013】
サーマルヘッド6に対面する位置には、記録紙2を挟み込むようにプラテンローラ7が配置されている。プラテンローラ7は、上下方向で移動自在とされており、図示しないバネによって、サーマルヘッド6に圧接する方向に付勢されている。
【0014】
サーマルヘッド6は、記録紙2が搬送ローラ対3によって印画方向に搬送される際に、発熱素子アレイ6aの各発熱素子を所定の温度に発熱させ、記録紙2の各感熱発色層を発色させる。プラテンローラ7は、給紙時及び排紙時にはカムやソレノイド等を用いた図示しないシフト機構によって下降され、これにより、サーマルヘッド6との間に記録紙2の通過用の隙間が形成される。
【0015】
サーマルヘッド6の給紙方向の下流側には、記録紙2に対面して光定着器11が配置されている。この光定着器11は、イエロー定着ランプ12とマゼンタ定着ランプ13と、リフレクタ14とからなる。イエロー定着ランプ12は、発光ピークが420nmの青紫光を放出し、マゼンタ定着ランプ13は発光ピークが365nmの紫外線を放出する。これらの定着ランプ12,13からの定着光の照射により、記録紙2のイエロー感熱発色層及びマゼンタ感熱発色層は加熱されても発色しないように定着される。
【0016】
光定着器11の給紙方向の下流側には、カッタ16、スリッタ17及び排出ローラ対18が設けられている。カッタ16は、フルカラー画像を未記録エリアから切り離す。また、スリッタ17は、カッタ16で切り離された記録紙2の両側の余剰エリアを切り離す。これにより、余剰エリアが切り落とされたシート状の記録紙2は、排出ローラ対18によって図示しない排出口からプリンタ外部へ排出される。
【0017】
コントローラ10は各部を制御して、イエロー、マゼンタ、シアンの各色感熱発色層を面順次で記録する。さらに、各色記録時に各ラインの印画熱エネルギを求め、この印画熱エネルギに基づき余剰エリアに対面する各発熱素子を駆動させて、各ラインの印画熱エネルギをほぼ均一に保つ。
【0018】
このため、コントローラ10には、フレームメモリ21、第1ラインメモリ22、余剰エリア印画熱エネルギ演算部23、第2ラインメモリ24、通電時間演算制御部25が設けられている。
【0019】
フレームメモリ21に書き込まれた画像データは1ラインずつ第1ラインメモリ22に送られる。第1ラインメモリ22は複数ライン例えば5ライン分の画像データを記憶する。ラインメモリ22に入力された画像データは1ラインずつ余剰エリア印画熱エネルギ演算部23に送られる。
【0020】
余剰エリア印画熱エネルギ演算部23は、第1演算部23a、第2演算部23b、第3演算部23cを備える。第1演算部23aは、記録エリアに対面する第1グループの発熱素子が発生する第1印画熱エネルギEpiを1ライン毎に算出する。第2演算部23bは、記録エリアPAを印画するときの1ライン分の記録エリア最大印画熱エネルギEpmax(基準印画熱エネルギ)から前記第iライン分の第1印画熱エネルギEpiを引いて、この差Esiをこのラインの余剰エリア印画熱エネルギ(第2印画熱エネルギ)とする。第3演算部23cは、第2印画熱エネルギを余剰エリアに位置する発熱素子数で割り、この値に基づき仮想画像データを例えばルックアップテーブルメモリを用いて求める。そして、この仮想画像データと本来の記録エリアの画像データとを第2ラインメモリ24に書き込む。
【0021】
次に、第2ラインメモリ24の画像データを読み取って、通電時間演算制御部25に送り、ここで画像データの階調数に応じて各発熱素子の通電時間が算出される。この通電時間データは、サーマルヘッド6のヘッド駆動部に送られる。ヘッド駆動部は、通電時間制御データで各発熱素子を発熱させる。この発熱素子の駆動に同期させて、ドライバ4a及び搬送モータ4を介して搬送ローラ対3が回転制御され、記録紙2に1ラインずつ画像が記録される。したがって、前記第2演算部23bによって、1ラインの画像データに基づいて、第1グループが発生する第1印画熱エネルギと前記第2グループが発生する第2印画熱エネルギの合計である総印画熱エネルギが各ラインでほぼ同じになるように第2印画熱エネルギを求めるから、簡単な構成で搬送負荷の変動が抑えられ、これに起因する濃度むらや色むらの発生が抑えられる。
【0022】
次に、上記実施形態の作用について説明する。図1に示すように、印画に際しては、搬送ローラ対3により記録紙2が印画方向に送られる。そして、記録紙2の記録エリアの先端がサーマルヘッド6に到達したことが検出されると、発熱素子アレイ6aが発熱され、イエロー感熱発色層にイエロー画像が1ライン記録される。以下、記録紙2の送りに同期してイエロー画像が1ラインずつ記録される。
【0023】
このライン記録に際して、余剰エリア印画熱エネルギ演算部23は、記録エリアPAを1ラインずつ印画するときの記録エリア最大印画熱エネルギEpmaxから記録エリア内の第iライン分の印画熱エネルギEpiを引いて、この差Esiを第iライン分の余剰エリア印画熱エネルギとして求める。次に、この余剰エリア印画熱エネルギを余剰エリアに位置する発熱素子数で割って共通印画熱エネルギを求め、この共通印画熱エネルギを発生するための仮想画像データを求める。そして、この仮想画像データと本来の記録エリアの画像データとが第2ラインメモリ24に書き込まれる。次に、この第2ラインメモリ24の画像データを読み取って、通電時間演算制御部25に送り、ここで画像データの階調数に応じて各発熱素子の通電時間が算出される。この通電時間データは、サーマルヘッド6のヘッド駆動部に送られ、このヘッド駆動部により、通電時間制御データにより各発熱素子が発熱される。そして、この発熱素子の駆動に同期させて、ドライバ4a及び搬送モータ4を介して搬送ローラ対3が回転制御され、記録紙2に1ラインずつ画像が記録される。このように、各ラインを記録する際のサーマルヘッド6による総印画熱エネルギは常に一定した値になるので、印画熱エネルギ変動に基づく動摩擦係数の変動や搬送負荷の変動が発生することがなく、常に一定したピッチで記録紙が送られることになり、搬送速度変動に基づく濃度むらが発生することがなくなる。
【0024】
イエロー画像の全ラインの記録を終了すると、記録紙2の印画方向の送りが停止され、次に記録紙2が給紙方向に送られる。この給紙方向への記録紙送り時には、プラテンローラ7は、図示しないシフト機構によってサーマルヘッド6から離れた退避位置に退避する。この給紙方向への搬送と同時に、光定着器11のイエロー定着ランプ12が点灯し、記録紙2の記録エリア内のイエロー感熱発色層を定着する。記録エリアに対して光定着を終了すると、搬送モータ4が停止する。この後、記録紙2が印画方向に送られて、イエロー記録と同様にしてマゼンタ記録及びマゼンタ感熱発色層の定着が行われ、さらに、シアン記録が行われる。このマゼンタ記録及びシアン記録においても、イエロー印画と同じように、余剰エリア印画熱エネルギが求められ、この印画熱エネルギに基づき余剰エリアに対応する各発熱素子が駆動される。したがって、各ライン記録時の総印画熱エネルギが常に一定になり、各ラインをプリントする際に、搬送負荷変動が発生せず濃度むらの無い各色記録が行われる。
【0025】
三色面順次記録が終了すると、図3(A)に示すように、カッタ16(図1参照)により第1切断線C1で記録紙2が切断され、先端余白部2aが記録紙2から切り離される。次に、(B)に示すように、スリッタ17により第2切断線C2で記録紙2が切断され、余剰エリアSAからなる両側縁の余剰部2b,2cが記録紙2から切り離される。このスリッタ17による切り離しの途中で、(C)に示すように、図1に示すカッタ16により第3切断線C3で記録紙2が切断され、記録エリアPAを有するプリントP1が得られる。その後、スリッタ17により第2切断線C2に沿った切り離しが続行され、(D)に示すように、記録紙2の両側縁の余剰部2b,2cが記録エリアPAを有するプリントP1の部分から切り離される。このカラープリントP1は、常に各ラインの印画熱エネルギが同じにされて印画が行われるためプリント中に搬送負荷変動が発生することがなく、搬送負荷変動に基づく濃度むらの発生がなくなる。また、各色ともに各ラインの記録位置が同じになるので、色むらの発生もなくなる。
【0026】
なお、カッタ16により記録紙2を幅方向の切断線C1,C2で切断し、スリッタ17により記録紙2を記録紙送り方向の切断線C3で切断するようにしたが、余白部2aや余剰部2b,2cを切り落とすことが可能であれば、カッタ16やスリッタ17などの種別やその切断順序は問わない。また、カッタ16はプリンタに内蔵させる他に、プリンタとは別個に設けたカッタ16により余剰エリアSAからなる余剰部2b,2cを切り取るようにしてもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、1ヘッド3パス方式のカラー感熱プリンタを例にとって説明したが、図4に示すような3ヘッド1パス方式のカラー感熱プリンタに本発明を実施してもよい。なお、上記実施形態と同一構成部材には同一符号が付してある。また、符号44はイエロー定着器、45はマゼンタ定着器を示している。この場合にも、各色のプリントステージ41〜43において、記録エリアPAを印画するときの記録エリア最大印画熱エネルギEpmaxから記録エリア内の1ライン分の印画熱エネルギEpiを引いて、この差Esiを余剰エリア印画熱エネルギとし、この余剰エリア印画熱エネルギを余剰エリアSAに位置する発熱素子数で割って、この割った値を共通印画熱エネルギとし、この共通印画熱エネルギに基づき余剰エリアSAに対面する各発熱素子の仮想画像データを求める。そして、これら各発熱素子に対する画像データに基づき記録エリアPA及び余剰エリアSAに対し画像を記録する。この場合にも、各色の各ライン記録時に印画総エネルギをほぼ一定にすることができ、搬送負荷変動が発生することがなく、これに起因する濃度むらを無くすことができる。
【0028】
また、上記実施形態では、記録エリアPAを印画するときの1ライン分の記録エリア最大印画熱エネルギEpmaxから記録エリア内の1ライン分の印画熱エネルギEpiを引いて、この差Esiを余剰エリア印画熱エネルギとしたが、記録エリア印画熱エネルギの最大値以上であればよく、最大印画熱エネルギEpmaxに限定されない。ただし、記録エリア最大印画熱エネルギを用いることにより、効率よく1ライン分の総印画熱エネルギ量を規定することができる。
【0029】
また、上記実施形態では、記録紙2の余剰エリアSAをスリッタ17により切り離すようにしたが、これに代えて、予め余剰エリアSAは発色層を持たず熱を加えても発色しないように構成してもよい。また、発色層を持たせない代わりに、イエロー定着ランプ12及びマゼンタ定着ランプ13を用いて、イエロー及びマゼンタが発色することがないように余剰エリアSAを光定着しておき、シアンが発色することがない熱エネルギで余剰エリアに熱を加えてもよい。これらの場合には、スリッタ17が不要になり、構成が簡単になる。
【0030】
また、上記実施形態は、カラー感熱プリンタについて説明したが、各ラインの印画熱エネルギの変動量により搬送負荷変動が発生する他のプリンタ、例えばイエロー、マゼンタ、シアンのカラーインクシートを用いる昇華型、熱溶融型の熱転写プリンタに本発明を実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のカラー感熱プリンタを示す概略図である。
【図2】サーマルヘッドの発熱素子アレイと記録紙の記録エリア及び余剰エリアとの関係を示す説明図である。
【図3】記録紙から先端余白部及び両側縁の余剰部を切り離す手順の一例を示す説明図である。
【図4】1パス3ヘッド方式のカラー感熱プリンタを示す別の実施形態の概略図である。
【符号の説明】
【0032】
2 記録紙
3 搬送ローラ対
4 搬送モータ
6 サーマルヘッド
6a 発熱素子アレイ
7 プラテンローラ
10 コントローラ
11 光定着器
23 余剰エリア印画熱エネルギ演算部
30〜32 プラテンローラ
36〜38 搬送ローラ対



【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に沿って複数の発熱素子が配列されたサーマルヘッドを用いて画像データに応じて各発熱素子を発熱させて、前記主走査方向に交差する副走査方向に記録紙を送って画像を記録紙に1ラインずつ記録するサーマルプリント方法において、
前記記録紙を主走査方向において記録エリアと余剰エリアとに分け、前記記録エリアに対応する発熱素子を駆動して画像を記録するとともに、前記余剰エリアに対応する発熱素子を駆動して、各ラインの総印画熱エネルギを一定にすることを特徴とするサーマルプリント方法。
【請求項2】
前記記録エリアに対する各ライン分の印画熱エネルギを求め、1ライン分の基準印画熱エネルギから前記各ライン分の印画熱エネルギを引いてこの差を前記余剰エリアに対する印画熱エネルギとすることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリント方法。
【請求項3】
前記基準印画熱エネルギは、記録エリアに対する1ライン分の総印画熱エネルギの最大値以上であることを特徴とする請求項2記載のサーマルプリント方法。
【請求項4】
主走査方向に沿って複数の発熱素子が配列されたサーマルヘッドを用いて画像データに応じて各発熱素子を発熱させて、前記主走査方向に交差する副走査方向に記録紙を送って画像を記録紙に1ラインずつ記録するサーマルプリンタにおいて、
前記記録紙を主走査方向において記録エリアと余剰エリアとに分け、前記記録エリアに対する各ライン分の印画熱エネルギを求め、1ライン分の基準印画熱エネルギから前記各ライン分の印画熱エネルギを引いてこの差を前記余剰エリアに対する印画熱エネルギとして、画像を記録するサーマルヘッド駆動部と、
前記余剰エリアを記録エリアから切り離すカッタとを備えたことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記基準印画熱エネルギは、記録エリアに対する1ライン分の総印画熱エネルギの最大値以上であることを特徴とする請求項4記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
主走査方向に沿って複数の発熱素子が配列されたサーマルヘッドを用いて画像データに応じて各発熱素子を発熱させて、前記主走査方向に交差する副走査方向に記録紙を送って画像を記録紙に1ラインずつ記録するサーマルプリント方法において、
前記画像が記録される記録エリアに対面する第1グループと、前記画像が記録されない余剰エリアに対面する第2グループとに、前記発熱素子を分け、
1ラインの画像データに基づいて、前記第1グループを駆動して記録エリアに1ラインを記録し、第1グループが発生する第1印画熱エネルギと前記第2グループが発生する第2印画熱エネルギの合計である総印画熱エネルギが各ラインでほぼ同じになるように、前記第2グループを駆動することを特徴とするサーマルプリント方法。
【請求項7】
前記総印画熱エネルギは、前記第1印画熱エネルギの最大値以上であることを特徴とする請求項6記載のサーマルプリント方法。
【請求項8】
前記第2印画熱エネルギを第2グループの発熱素子の個数で割って共通印画熱エネルギを求め、前記共通印画熱エネルギを発生するための仮想画像データを求め、この仮想画像データに応じて前記第2グループの発熱素子を駆動することを特徴とする請求項6または7記載のサーマルプリント方法。
【請求項9】
前記余剰エリアは前記記録エリアの両側に位置することを特徴とする請求項6ないし8いずれか1項記載のサーマルプリント方法。
【請求項10】
前記余剰エリアを前記記録エリアから切り離すことを特徴とする請求項6ないし9いずれか1項記載のサーマルプリント方法。
【請求項11】
主走査方向に沿って複数の発熱素子が配列されたサーマルヘッドを用いて画像データに応じて各発熱素子を発熱させて、前記主走査方向に交差する副走査方向に記録紙を送って画像を記録紙に1ラインずつ記録するサーマルプリンタにおいて、
前記画像が記録される記録エリアに対面する第1グループの発熱素子が発生する第1印画熱エネルギを1ラインごとに算出する第1演算部と、
前記画像が記録されない余剰エリアに対面する第2グループの発熱素子が発生する第2印画熱エネルギを1ライン毎に算出し、前記第1印画熱エネルギと前記第2印画熱エネルギと合計した総印画熱エネルギが各ラインでほぼ同じになるようにする第2演算部と、
前記第1グループを前記第1ライン分の画像データで駆動し、前記第2印画熱エネルギを発生するように前記第2グループを駆動するサーマルヘッド駆動部とを備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項12】
前記総印画熱エネルギは、前記第1印画熱エネルギの最大値以上であることを特徴とする請求項11記載のサーマルプリンタ。
【請求項13】
前記第2印画熱エネルギを第2グループの発熱素子の個数で割って共通印画熱エネルギを求め、この共通印画熱エネルギから仮想画像データを求める第3演算部を有し、前記サーマルヘッド駆動部は前記仮想画像データに応じて前記第2グループを駆動することを特徴とする請求項11または12記載のサーマルプリンタ。
【請求項14】
前記余剰エリアは前記記録エリアの両側に位置することを特徴とする請求項11ないし13いずれか1項記載のサーマルプリンタ。
【請求項15】
前記余剰エリアを前記記録エリアから切り離すことを特徴とする請求項11ないし14いずれか1項記載のサーマルプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−116952(P2006−116952A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275119(P2005−275119)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】