説明

サーマルプロテクタ、電動機保護装置、水中ポンプ装置、及びマンホールポンプ装置

【課題】組み込み式のサーマルプロテクタを備え、該サーマルプロテクタが作動して電動機の主回路が遮断された場合、そのことを外部に通報することができるサーマルプロテクタ、電動機保護装置、水中ポンプ装置、及びマンホールポンプ装置を提供すること。
【解決手段】 電動機に組み込まれる該電動機に流れる電流値の過大や周囲温度の上昇に感応し、温度が所定の温度に達したら作動して開となる主接点(固定接点13、13、可動接点15、15)を具備するサーマルプロテクタ10を備え、該サーマルプロテクタの主接点が開となったら電動機の主コイルMCに通電する主回路を遮断するように構成した電動機保護装置であって、サーマルプロテクタ10の主接点が開となると閉となる補助接点(固定接点21、21、可動接点15、15)を備え、該補助接点の閉により電動機の主回路が遮断されたことを外部に通報する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を過熱・焼損から保護するサーマルプロテクタ、及び該サーマルプロテクタを組み込んだ電動機保護装置に関し、特に下水の圧送設備として用いられているマンホール式下水中継ポンプ装置(以下「マンホールポンプ装置」と言う)用水中ポンプや、その他一般汚水・下水の揚水に用いられる水中ポンプに係るもので、ポンプを駆動する電動機の過熱・焼損防止のために用いられるサーマルプロテクタ、該サーマルプロテクタを組み込んだ電動機保護装置、ポンプ駆動電動機の保護装置に該電動機保護装置を用いて水中ポンプ装置、及び該水中ポンプ装置を用いるマンホールポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマンホール装置用水中ポンプやその他一般の汚水用水中ポンプには、ポンプを駆動する電動機内には、特許文献1に示すような組み込み式のサーマルプロテクタが組み込まれている。図1は組み込み式のサーマルプロテクタの構成例を示す図で、図2は該サーマルプロテクタを組み込んだ電動機の回路図である。サーマルプロテクタ100は固定接点103を備え筒状ケース101の底部に植設された固定接点板104、及び固定接点103に対向接離する可動接点105を備え、調節ねじ106の頭部にバネ107で押し当て支持された皿形バイメタル102から成る主プロテクト110と、皿形バイメタル102の近傍に設けた抵抗器(ヒータ)112を備えている。該抵抗器(ヒータ)112と該皿形バイメタル102は図2に示すように固定接点103、103と可動接点105、105を介して直列に接続されている。また、筒状ケース101の開放端を包被するカバー108を良熱伝導度の取付具109で固定した構成である。
【0003】
図2において、MCは単相誘導電動機の主コイル、SCは補助コイル、Cは始動用コンデンサであり、GSは単相誘導電動機の始動用スイッチ、一般には回転数が一定数に達すると動作する遠心力スイッチが用いられている。TR、TSは電源に接続される電動機の接続端子である。端子TRと主コイルMCの間にサーマルプロテクタ100が直列に接続されている。単相誘導電動機が過負荷或いは回転子拘束などで過電流が流れると抵抗器(ヒータ)112が発熱し、この発熱により皿形バイメタル102を加熱する。そして温度が所定の温度(例えば160℃)に達すると皿形が反転して可動接点105、105と固定接点103、103とが開離し、主コイルMCに流れる電流を遮断する。これにより、単相誘導電動機が保護される。
【0004】
サーマルプロテクタ100を用いた電動機保護装置は、比較的安価で、しかも電動機内の温度と運転電流に感応して接点を開路するので、マンホールポンプ装置用水中ポンプやその他一般の汚水用水中ポンプでしばしば問題となる異物の絡み付きによる電動機の拘束や過電流といったトラブルを応答良く検知し、電動機を保護することができるという特徴がある。
【0005】
しかしながら、図1に示すような組み込み式のサーマルプロテクタ100を用いた電動機保護装置は電動機の内部で作動し、一定の保護機能を実現するが、その動作状態に外部に通報する手段が無く、ユーザからは、「何故かポンプが動いていない」、「ポンプが停止していたが、いつのまにか復帰してまた運転していた」といった管理不能に対する問題点を指摘される事例が多々あった。図1の構造から明らかであるが、組み込み式のサーマルプロテクタ100は電動機の過熱或いは過電流を検知し、電動機主回路を開路するが、電動機停止によって内部温度が低下すると皿形バイメタル102の可動接点105と固定接点103は閉じて自然復帰する。設置条件によっては、使用者がサーマルプロテクタ100の動作に気付くことなく、接点の開閉を繰り返し、やがてはサーマルプロテクタ100の接点自体が焼きついてしまう事例が多数あった。
【0006】
図3は特許文献2に開示されている埋め込み式のサーマルプロテクタの構造を示す図で、図4は該埋め込み式のサーマルプロテクタを備えた電動機の回路図である。図3に示すように、埋め込み式のサーマルプロテクタ200は、ガラス管210内に、先端部に固定側接点202が設けられた固定側内部リード線201からなる固定電極体203と、可動側接点204を有する熱応動素子205、補助板206、及び可動側内部リード線207からなる可動電極体208とが相対向してガラスビート209によって支持されている。また、固定側内部リード線201には固定側外部リード線211が接続され、可動側内部リード線207には可動側外部リード線212が接続されている。
【0007】
図4において、MCU、MCV、MCWはそれぞれ3相誘導電動機のU相、V相、W相の固定子コイルであり、200U、200Wはそれぞれ3相誘導電動機のU相コイルMCU、W相コイルMCWに埋め込まれた埋め込み式のサーマルプロテクタである。勿論、埋め込み式のサーマルプロテクタ200はU相コイルMCU、V相コイルMCV、W相コイルMCWの3つのコイルに埋め込まれる場合もある。TU、TV、TWは3相誘導電動機の電源接続用端子を示している。
【0008】
上記埋め込み式のサーマルプロテクタ200は電動機の固定子コイルの温度のみに感応するので、図1に示す保護装置のように、ヒータが組み込まれていないので、電動機の拘束時のような急激な温度上昇には追従することができない。埋め込み式サーマルプロテクタは、制御盤に組み込まれた保護リレーの動作を補完するもので、運転電流値が低いにもかかわらず、電動機温度が上昇する事例(始動反復回復が多く熱が蓄積する場合や、周囲環境温度が高すぎる場合)に対する保護装置である。
【0009】
埋め込み式サーマルプロテクタを使用する保護装置では、埋め込み式サーマルプロテクタが動作した時点で制御盤の保護リレーが作動するので、人為的に保護リレーの解除を解かなければ復帰しない。また、電動機内の過熱を信号として制御盤に送られるので、ユーザに問題点を知らせることができる。
【特許文献1】特開平7−262895号公報
【特許文献2】特開平11−250789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1に示す構成の組み込み式のサーマルプロテクタ、及び図3に示す構成の埋め込み式のサーマルプロテクタにはそれぞれ長所があり、使用現場によっては図1に示す構成のサーマルプロテクタを組み込んだ電動機において、サーマルプロテクタの作動を外部に知らせること、即ちサーマルプロテクタが作動したことを外部に通報してくれという要望があった。しかしながら、従来構成の組み込み式のサーマルプロテクタでは、この要望に対応することができなかった。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、組み込み式のサーマルプロテクタを備え、該サーマルプロテクタが作動して電動機の主回路が遮断された場合、そのことを外部に通報することができるサーマルプロテクタ、通報手段を備えた電動機保護装置、水中ポンプ装置、及びマンホールポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、電動機に組み込まれる該電動機に流れる電流値の過大や周囲温度の上昇に感応し、温度が所定の温度に達したら作動して開となる主接点を具備するサーマルプロテクタであって、前記主接点が開となると閉又は開となる補助接点を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、電動機に組み込まれる該電動機に流れる電流値の過大や周囲温度の上昇に感応し、温度が所定の温度に達したら作動して開となる主接点を具備するサーマルプロテクタを備え、該サーマルプロテクタの主接点が開となったら前記電動機の主回路を遮断するように構成した電動機保護装置であって、前記サーマルプロテクタの主接点が開となると閉又は開となる補助接点を備え、該補助接点の閉又は開により前記電動機の主回路が遮断されたことを外部に通報する通報手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、水中ポンプ、該水中ポンプを駆動する電動機、及び制御盤を備えた水中ポンプ装置において、前記電動機の保護装置に請求項2に記載の電動機保護装置を用い、前記通報手段は前記制御盤に通報信号を送るように構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の水中ポンプ装置において、前記制御盤に保護継電器を設け、前記通報手段からの通報信号により前記保護継電器を作動させ、前記サーマルプロテクタが自然復帰してその主接点が閉じても前記保護継電器が作動中は前記電動機の再始動不能とし、該保護継電器がリセットされ不作動となった場合再始動可能に構成したポンプ再始動規制手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、マンホールと、該マンホール内に配置した水中ポンプを具備する水中ポンプ装置とを備えたマンホール装置において、前記水中ポンプ装置に請求項3又は請求項4に記載の水中ポンプ装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、サーマルプロテクタに主接点が開となると閉又は開となる補助接点を備えたので、該補助接点を介して主接点が開放されたことを外部に通報することが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、サーマルプロテクタの補助接点の閉又は開により電動機の主回路が遮断されたことを通報手段で通報するので、電動機の主回路が遮断されたことを知ることができ、適切な対策をとることが可能となり、サーマルプロテクタの主接点の開閉の繰り返しにより、該主接点が焼きつき電動機が焼損する等の事故を未然に防止できる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、水中ポンプを駆動する電動機の保護装置に請求項2に記載の電動機保護装置を用いたので、水中ポンプの過負荷、水中ポンプへの異物の絡み付きによる電動機回転子の拘束による過電流にサーマルプロテクタが感応して主回路が遮断された場合、この主回路の遮断を速やかに知ることができ、これら過負荷の原因やポンプに絡み付いた異物の除去等適切な対策をとることが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、通報手段からの通報信号により制御盤に設けた保護継電器を作動させ、サーマルプロテクタが自然復帰してその主接点が閉じても保護継電器が作動中は電動機の再始動不能とし、該保護継電器がリセットされ不作動となった場合再始動可能に構成したポンプ再始動規制手段を設けたので、ユーザが知らないうちにサーマルプロテクタの主接点の開閉の繰り返しにより、該主接点が焼け付き電動機が焼損する等の事故がなくなる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、マンホールポンプ装置の水中ポンプ装置に請求項3又は請求項4に記載の水中ポンプ装置を用いたので、マンホールポンプ装置でよく発生する水中ポンプへの異物の絡みによる電動機回転子の拘束による過電流にサーマルプロテクタが感応して主回路が遮断されたことを速やかに知ることができ、これらに対する適切な対策をとることが可能になる。また、サーマルプロテクタの主接点の開閉の繰り返しにより、該主接点が焼き付くことがなく、電動機が損傷する等の事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図5は本発明に係る電動機保護装置に用いるサーマルプロテクタの構成を示す図であり、図6は該サーマルプロテクタを組み込んだ電動機の回路図である。サーマルプロテクタ10は図5に示すように、固定接点13を備え筒状ケース11の底部に植設された固定接点板14、及び固定接点13に対向接離する可動接点15を備え、調節ねじ16の頭部にバネ17で押し当て支持された皿形バイメタル12から成る主プロテクタ30と、皿形バイメタル12の近傍に設けた抵抗器(ヒータ)22を備えている。
【0023】
筒状ケース11の底部開口には端子支持部材20が嵌合し、該端子支持部材20に固定接点21を備えた固定接点板19が植設された構成である。端子支持部材20の開口部はカバー18で閉塞されている。固定接点21は前記固定接点13から所定間隔離れて対向して配置され、図6に示すように、皿形バイメタル12の可動接点15、15は通常は実線で示すように固定接点13、13に当接しており、皿形バイメタル12が加熱され点線で示すように反転すると可動接点15、15が固定接点21、21に当接するようになっている。
【0024】
図6において、図2と同様、MCは単相誘導電動機の主コイル、SCは補助コイル、Cは始動用コンデンサであり、GSは単相誘導電動機の始動用スイッチ、一般には回転数が一定数に達すると動作する遠心力スイッチが用いられている。TR、TSは電源に接続される電動機の接続端子である。端子TRと主コイルMCの間にサーマルプロテクタ10が直列に接続されている。また、固定接点21、21は端子P1、P2に接続されている。
【0025】
電動機が過負荷或いは回転子拘束などで過電流が流れると、この過電流は抵抗器(ヒータ)22にも流れるから、抵抗器(ヒータ)22は通常の負荷電流以上に発熱し、この発熱により皿形バイメタル12を加熱する。温度が所定の温度(例えば160℃)に達すると皿形が反転して可動接点15、15と固定接点13、13とが開離し、主コイルMCに流れる電流を遮断し、単相誘導電動機を保護する。
【0026】
上記皿形バイメタル12が反転して可動接点15、15が固定接点13、13から開離すると同時に、該可動接点15、15は固定接点21、21に当接する。ここで、可動接点15、15と固定接点13、13を主接点とし、可動接点15、15と固定接点21,21を補助接点とすると、主接点は電動機の主回路を遮断する作用を奏し、補助接点には主接点が開離して主回路が遮断されたことを外部(例えば制御盤)に通報させる機能を奏させることができる。
【0027】
図5に示す構成のサーマルプロテクタ10を水中ポンプ装置のポンプを駆動する電動機に組み込んで図6に示すように電動機回路を構成した場合、水中ポンプ装置を下水の圧送設備、マンホールポンプ装置、その他一般汚水・下水の揚水に用いられる水中ポンプ装置に使用した場合、電動機が過負荷或いはポンプに異物が絡まる等して回転子拘束等で過電流が流れると、皿形バイメタル12が発熱し、温度が所定の温度(例えば160℃)に達すると皿形が反転して可動接点15、15と固定接点13、13とが開離し、主コイルMCに流れる電流は遮断、電動機の主回路が遮断される。この主回路が遮断されたことを補助接点である可動接点15、15と固定接点21,21の当接を介して外部、例えば制御盤に通報する。これにより主回路が遮断されることを外部で知ることができる。これにより主回路が遮断された原因の調査、及び原因の除去等の対策をとることが可能となる。
【0028】
なお、図示は省略するが水中ポンプ装置の制御盤に保護継電器を設け、前記補助接点である可動接点15、15と固定接点21,21を介して主回路が遮断されたとの通報があった場合、該通報信号で保護継電器を作動させると共に、該保護継電器が一度作動したら、リセットされるまで作動状態を保持する保持回路を設け、更に該保護継電器の動作により電動機の端子TR、TSに電力を供給する電磁開閉器MSWを開放するように構成するポンプ再始動規制手段を設ける。これにより、保護継電器がリセットされるまで、電磁開閉器MSWは開放された状態となるから、皿形バイメタル12の加熱反転により主回路が遮断された後、皿形バイメタル12が自然に冷却されて復帰することにより、再び電動機に過電流が流れ、この繰り返しにより、皿形バイメタル12の主接点の焼き付きによる電動機の焼損等の事故を防止できる。
【0029】
図7は上記水中ポンプの構造を示す縦断面図である。図示するように、水中ポンプはホンプ部40と、電動機部60と、該ホンプ部40と電動機部60の間に配置されたメカニカルシール部50からなる構成である。ホンプ部40は吸込口42と吐出口43が形成されたポンプケーシング41と、該ポンプケーシング41内にポンプ主軸46の先端に固定され回転自在に配置された羽根車44とを具備する構成である。羽根車44の回転により発生する負圧により、吸込口42から吸込まれた水は、羽根車44の遠心力で昇圧され、吐出口43を通って該吐出口43に接続された吐出口管45から吐き出される。
【0030】
電動機部60はモータケーシング61と、該モータケーシング61内に嵌挿された固定子62と、該固定子62の中央部にモータ主軸64に固定され回転自在に配置された回転子63とを具備する構成である。また、メカニカルシール部50はシールケーシング51を備え、該シールケーシング51内にポンプ主軸46が貫通しており、該ポンプ主軸46を外周に接してメカニカルシール52が配置された構成である。ポンプ主軸46とモータ主軸64は端部で連結され、軸受53、軸受65で回転自在に支持されている。なお、ポンプケーシング41、シールケーシング51、及びモータケーシング61は一体的に連結されている。シールケーシング51内はメカニカルシール52でポンプ側と電動機側に機密状態で区分されている。
【0031】
モータケーシング61の反ポンプ側端部はカバー66で閉塞されており、該カバー66内に図5に示す構成のサーマルプロテクタ10が組み込まれている。67は信号ケーブルであり、該信号ケーブルの芯線先端はサーマルプロテクタ10の固定接点21、21に接続されている端子P1、P2(図6参照)に接続され、他端は制御盤(図示せず)に接続されている。該信号ケーブル67を通してサーマルプロテクタ10の主接点が開離され主回路が遮断されたことを通報する通報信号を制御盤に送る。68は電力供給ケーブルであり、該サーマルプロテクタ10の先端は端子TR、TSに接続され、電動機部60に電力を供給するようになっている。電動機部60の固定子62に駆動電力が供給され、回転子63が回転するとその回転力はモータ主軸64からポンプ主軸46に伝達され、羽根車44が回転する。
【0032】
上記構造の水中ポンプにおいても、電動機の回路構成は図6に示すようになっており、ポンプの過負荷や羽根車44に異物が絡まる等して拘束され等して、電動機部60の回転子63が拘束される固定子62に過電流が流れる。この過電流が皿形バイメタル12を通って流れ、加熱する。温度が所定の温度(例えば160℃)に達すると皿形が反転して可動接点15、15と固定接点13、13とが開離し、主コイルMCに流れる電流は遮断される。この遮断は補助接点である可動接点15、15と固定接点21,21を介して外部、制御盤に通報する。これにより主回路が遮断されることを制御盤で知ることができる。これにより主回路が遮断された原因の調査、及び原因の除去等の対策をとることが可能となる。
【0033】
また、制御盤に上記のように、制御盤に保護継電器、リセットされるまで作動状態を保持する保持回路を設け、サーマルプロテクタ10から主回路が遮断されたこの通報信号により、該保護継電器を作動させ、電動機に電力を供給する電磁開閉器MSWを開放するように構成する。これにより、保護継電器がリセットされるまで、電磁開閉器MSWは開放された状態となるから、皿形バイメタル12の加熱反転により主回路が遮断された後、皿形バイメタル12が自然に冷却されて復帰することにより、再び電動機に過電流が流れ、この繰り返しにより、皿形バイメタル12の主接点が焼損する等の事故を防止できる。
【0034】
図7に示す構成の水中ポンプを図示しないマンホール内に設置し、電動機部60に図5に示す構成のサーマルプロテクタ10を組み込み、電動機回路を図6に示すように構成し、主接点(固定接点13、13と可動接点15、15)の開離による主回路の遮断を補助接点(固定接点21、21と可動接点15、15)の閉で制御盤に通報するようしてマンホールポンプ装置を構成することにより、上記と同じ作用効果が得られる。また、このマンホールポンプ装置の制御盤に保護継電器を設け、上記のように構成したポンプ再始動規制手段を設けることにより、皿形バイメタル12の主接点の焼き付きによる電動機の焼損等の事故を防止できる。
【0035】
なお、上記実施形態例ではサーマルプロテクタは温度が所定の温度に達したら作動して開となる主接点(固定接点13、13と、可動接点15、15から構成される)と、常時は開で主接点が開となったら反対に閉となる補助接点(固定接点21、21と、可動接点15、15から構成される)とを具備する構成としたが、補助接点は主接点と同様、常時は閉で主接点が開となった時開となる構成でもよい。
【0036】
この場合は、例えば図9に示すように、主接点となる皿形バイメタル12、補助接点となる帯状の導体板24を備え、該導体板24は皿形バイメタル12と連動して変形するように絶縁材23を介在させて皿形バイメタル12に取り付けられている。皿形バイメタル12には可動接点15、15が取り付けられ、導体板24の両端にも可動接点25、25が設けられている。可動接点15、15に対向して固定接点13,13が設けられ、可動接点25、25に対向して固定接点26、26が設けられている(図8参照)。なお、図9(b)は(a)のA−A断面図、図9(a)は平面図、図9(c)は(a)のB−B断面図である。
【0037】
上記のような構成された皿形バイメタル12と導体板24において、常時は皿形バイメタル12の可動接点15、15は固定接点13、13に接触して閉じ、導体板24の可動接点25、25も固定接点26、26に接触し閉じている。この状態から皿形バイメタル12が加熱され、所定温度に達すると、図9(b)の点線に示すように反転し、可動接点15、15は固定接点13、13より開離する。この皿形バイメタル12の反転に連動して導体板24も変形し、可動接点25、25が固定接点26、26より開離するようになっている。
【0038】
上記構成の皿形バイメタル12と導体板24を使用して図8に示すように電動機回路を構成する。電動機が過負荷或いは回転子拘束などで過電流が流れると、この過電流により抵抗器(ヒータ)22が定格負荷電流以上に発熱し、皿形バイメタル12を加熱する。温度が所定の温度(例えば160℃)に達すると皿形が反転して可動接点15、15と固定接点13、13とが開離すると同時に、導体板24も皿形バイメタル12に連動して変形し、可動接点25、25も固定接点26、26から開離する。これにより主コイルMCに流れる電流を遮断すると共に、該電流が遮断されたことを可動接点25、25と固定接点26、26が開離し、電動機回路が遮断されたことを外部に通報する。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態例ではポンプを駆動する電動機を単相誘導電動機で説明したが、三相誘導電動機でもよいことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来の組み込み式のサーマルプロテクタの構成を示す図である。
【図2】従来の組み込み式のサーマルプロテクタを組み込んだ電動機の回路構成を示す図である。
【図3】従来の埋め込み式のサーマルプロテクタの構成を示す図である。
【図4】従来の埋め込み式のサーマルプロテクタを埋め込んだ電動機の回路構成を示す図である。
【図5】本発明に係る組み込み式のサーマルプロテクタの構成を示す図である。
【図6】本発明に係る組み込み式のサーマルプロテクタを組み込んだ電動機の回路構成を示す図である。
【図7】本発明に係る水中ポンプの構造を示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る組み込み式のサーマルプロテクタを組み込んだ電動機の回路構成を示す図である。
【図9】本発明に係る組み込み式のサーマルプロテクタの皿形バイメタルの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 サーマルプロテクタ
11 筒状ケース
12 皿形バイメタル
13 固定接点
14 固定接点板
15 可動接点
16 調節ねじ
17 バネ
18 カバー
19 固定接点板
20 端子支持部材
21 固定接点
22 抵抗器(ヒータ)
23 絶縁材
24 導体板
25 可動接点
26 固定接点
30 主プロテクタ
40 ポンプ部
41 ポンプケーシング
42 吸込口
43 吐出口
44 羽根車
45 吐出口管
46 ポンプ主軸
50 メカニカルシール部
51 シールケーシング
52 メカニカルシール
53 軸受
60 電動機部
61 モータケーシング
62 固定子
63 回転子
64 モータ主軸
65 軸受
66 カバー
67 信号ケーブル
68 電力供給ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に組み込まれる該電動機に流れる電流値の過大や周囲温度の上昇に感応し、温度が所定の温度に達したら作動して開となる主接点を具備するサーマルプロテクタであって、
前記主接点が開となると閉又は開となる補助接点を備えたことを特徴とするサーマルプロテクタ。
【請求項2】
電動機に組み込まれる該電動機に流れる電流値の過大や周囲温度の上昇に感応し、温度が所定の温度に達したら作動して開となる主接点を具備するサーマルプロテクタを備え、該サーマルプロテクタの主接点が開となったら前記電動機の主回路を遮断するように構成した電動機保護装置であって、
前記サーマルプロテクタの主接点が開となると閉又は開となる補助接点を備え、該補助接点の閉又は開により前記電動機の主回路が遮断されたことを外部に通報する通報手段を備えたことを特徴とする電動機保護装置。
【請求項3】
水中ポンプ、該水中ポンプを駆動する電動機、及び制御盤を備えた水中ポンプ装置において、
前記電動機の保護装置に請求項2に記載の電動機保護装置を用い、前記通報手段は前記制御盤に通報信号を送るように構成したことを特徴とする水中ポンプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水中ポンプ装置において、
前記制御盤に保護継電器を設け、
前記通報手段からの通報信号により前記保護継電器を作動させ、前記サーマルプロテクタが自然復帰してその主接点が閉じても前記保護継電器が作動中は前記電動機の再始動不能とし、該保護継電器がリセットされ不作動となった場合再始動可能に構成したポンプ再始動規制手段を設けたことを特徴とする水中ポンプ装置。
【請求項5】
マンホールと、該マンホール内に配置した水中ポンプを具備する水中ポンプ装置とを備えたマンホール装置において、
前記水中ポンプ装置に請求項3又は請求項4に記載の水中ポンプ装置を用いたことを特徴とするマンホールポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−28736(P2007−28736A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204698(P2005−204698)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】