説明

シュガーレスハードグミキャンディ及びその製造方法

【課題】生産性が良好であり、シュガーレスでありながら、ハードな食感を持ったグミキャンディ(ハードグミキャンディ)及び乾燥工程を経ずに前記ハードグミキャンディを製造する方法を提供すること。
【解決手段】固形分として、パラチニットを20〜40重量%、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、還元澱粉加水分解物より選ばれる糖アルコールのうち1種類乃至2種類以上を40〜60重量%、グリセリンを1〜10重量%、セルロースを0.2〜2重量%含むシュガーレスハードグミキャンディであって、前記パラチニット、前記糖アルコール、前記グリセリン及び前記セルロースを含有する濃縮グミキャンディ液を自然冷却させた後に、乾燥させずに得られることを特徴とするシュガーレスハードグミキャンディ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミキャンディを製造する際に従来必要であった乾燥工程を経ることなく製造する事が出来るシュガーレスハードグミキャンディとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは、菓子の中でも幅広い人々に認知されており、噛み応えのある食感と味付けを楽しむ菓子として親しまれている。近年、硬くても弾力ある食感が好まれるようになってきた。HARIBO社製のグミキャンディ(「Happy Cola」(登録商標)や「Gold Bear」(商品名))に代表されるように、チューイング性を兼ね備えたハードグミキャンディに関しては長年親しまれてきている。本件出願人も、水飴のDE値を規定し、ブルーム値220以上のアルカリ処理ゼラチンを含み、水分値が13〜17%であることを特徴とするハードグミキャンディ(特許文献1)、水飴のDE値を規定し、ブルーム値220以上の酸処理処理ゼラチンを含み、水分値が13〜17%であることを特徴とするハードグミキャンディ(特許文献2)を提案している。
【0003】
通常グミキャンディは、砂糖や水飴等の糖類を煮詰めたものに、ゼラチンやその他酸味料や香料、果汁等を添加した後、コーンスターチ等で作られたモールドに充填・成形し、最終的に目的の水分値まで乾燥させる工程を経て作られる。
【0004】
この時、最終的にグミキャンディの水分値は20%以下に調整されるが、これは水分値が20%以下のグミキャンディであれば、一般的に水分活性が0.600未満に抑えられる為である。一般流通菓子の場合、製品の日持ちと水分活性は密接な関係があり、水分活性を0.700未満に抑えれば、一般細菌、食中毒菌、酵母菌、カビ、好塩性細菌の増殖を防止することは可能であるが、耐乾性カビや耐浸透圧性酵母、Aspergills ecbinulatus、Monascus bisporusといった種類のカビの増殖を防止するためには、水分活性を0.600未満に抑える必要がある(非特許文献1)。
【0005】
しかし、一般に溶液時のグミキャンディは水分値が20%以下の場合、粘度が非常に高く、モールドに充填する際に充填量が安定しない、テーリングが起こって外観を損なう等の問題が発生してしまう。そのため、通常グミキャンディを生産する場合、グミキャンディは溶液時の水分値を20%以上に調整してからモールドに充填し、その後乾燥工程を設ける事で最終的にグミキャンディの水分値を20%以下に調整する。ここで、グミキャンディにハードな食感を付与しようとする場合は、グミキャンディの最終水分値をさらに低くする必要があり、特にハードな食感のグミキャンディは最終水分値を16%以下に調節する。こういったハードな食感を持つグミキャンディはソフトな食感を持つグミキャンディに比べて溶液時の粘度も高く、溶液時の水分値を30%程度に調整する事も珍しくないため、通常にグミキャンディに比べ、非常に長い乾燥工程を必要としていた。
【0006】
この乾燥工程は20℃〜50℃で24時間〜72時間行うのが一般的であるが、乾燥工程を行うにあたって、専用の設備やスペースが必要となる、また、乾燥工程を挟む為、連続生産が出来ずに最終製品を得るまでに長い時間がかかる等の問題により、乾燥工程はグミキャンディの生産量の限界を決める最も大きな原因であった。
【0007】
また一方で、近年、消費者の間でシュガーレスや低う蝕に対するニーズが非常に高まってきており、そういったニーズを受け、グミキャンディの分野でも、これまでにいくつかの提案がなされている。ここで、厚生労働省の栄養表示基準によると、シュガーレスの定義としては、糖アルコールを除き単糖と二糖を含む糖類を100g中0.5g未満含むものを指す。
【0008】
デキストリンと難消化性デキストリンの両方を配合した低甘味のグミキャンディに関するもの(特許文献3)、還元麦芽糖水飴、ソルビトール及び分枝オリゴ糖アルコールを含む水飴、砂糖を含まないグミキャンディに、さらにトレハロース、マルトース又は乳糖を含有することで食感と歯切れを従来のものと同様にしたグミキャンディに関するもの(特許文献4)、ミント系フレーバーを用いたグミキャンディにおいて、糖アルコールの種類、有機酸の種類及びこれらの配合量を特定し、良好なテクスチャーを付与したもの(特許文献5)、シュガーレスのゼラチンゲルの離水を抑える為に、糖アルコールの組成を限定し、6ヶ月以上の長期保存を可能にしたシュガーレス可食性ゼラチンゲルに関するもの(特許文献6)が挙げられるが、これらはどれもシュガーレスもしくは低糖のグミキャンディではあるが、近年好まれているようなハードな食感を楽しめるようなものではなかった。
【0009】
このように、シュガーレスのグミキャンディにおいては、使用可能な糖質が限られていることから、食感のコントロールが難しく、例えば、特許文献1、特許文献2に記載のハードグミキャンディのような、単糖類、二糖類等の糖類を主成分として含有するグミキャンディのようにチューイング性があり、噛み応えのある弾力に富んだ食感をもつシュガーレスのグミキャンディは未だ提案されていない。
また、ハードな食感を持つグミキャンディの製造に伴う長時間の乾燥工程に関する問題も解決されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−213368号公報
【特許文献2】特開2010−046025号公報
【特許文献3】特開2000−116343号公報
【特許文献4】特許第3630900号公報
【特許文献5】特許第3127322号公報
【特許文献6】特開平8−9901号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】食品包装便覧 日本包装技術協会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、生産性が良好であり、シュガーレスでありながら、ハードな食感を持ったグミキャンディ(ハードグミキャンディ)を提供することを目的とする。
また、本発明は、乾燥工程を経ずに前記ハードグミキャンディを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、以上の問題を解決すべく、研究・実験を重ねた結果、グミキャンディの組成を限定することで、シュガーレスでありながら、溶液時のグミキャンディの水分値が低い場合にもグミキャンディ溶液の粘度を低く抑えることが出来、その為容易に成形が可能で、また、低い水分値で成形する為、従来のグミキャンディ生産時の問題であった乾燥工程が不要になり、且つ、シュガーレスでありながら、ハードな食感を持ったグミキャンディを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕固形分として、
パラチニットを20〜40重量%、
ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、還元澱粉加水分解物より選ばれる糖アルコールのうち1種類乃至2種類以上を40〜60重量%、
グリセリンを1〜10重量%、
及びセルロースを0.2〜2重量%含むシュガーレスハードグミキャンディであって、
前記パラチニット、前記糖アルコール、前記グリセリン及び前記セルロースを含有する濃縮グミキャンディ液を自然冷却させた後に、乾燥させずに得られることを特徴とするシュガーレスハードグミキャンディ、
〔2〕溶解時の溶液粘度が4.0Pa・s以下である前記〔1〕に記載のシュガーレスハードグミキャンディ、
〔3〕ゲル強度が30×106〜34×106kg/m2・sであり、かつ粘着性が8×106〜12×106kg/m2・sである前記〔1〕又は〔2〕に記載のシュガーレスハードグミキャンディ、
〔4〕パラチニット、糖アルコール、グリセリン及びセルロースを含有し、水分値が16%以下である濃縮グミキャンディ液を調製する工程、
得られた濃縮グミキャンディ液をモールドに充填する工程、
及びモールドに充填した濃縮グミキャンディ液を自然冷却した後に、乾燥工程を経ずにシュガーレスハードグミキャンディをモールドから取り出す工程を有することを特徴とする、前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載のシュガーレスハードグミキャンディの製造方法
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、シュガーレスでありながら、糖を含有した従来のグミキャンディと同様の噛み心地やチューイング性を備え、ハードな食感をも持ったハードグミキャンディを提供することが出来る。
また、本発明のハードグミキャンディは、従来の糖を含有した従来のグミキャンディと比べると、乾燥工程を経ることなく製造することができるため、生産性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明において、固形分含有量とは、シュガーレスハードグミキャンディから水分を除いた固形分全量中における各成分の含有量をいう。
【0017】
本発明で使用するパラチニットとは、化学式C244822で示される糖アルコールであり、別に、還元パラチノース、イソマルト等の名称で呼ばれている甘味料である。
本発明のシュガーレスハードグミキャンディ中における、パラチニットの固形分含有量は20〜40重量%である。パラチニットの固形分含有量が20重量%未満の場合、シュガーレスハードグミキャンディの弾力性が非常に弱く、シュガーレスハードグミキャンディの食感として満足出来ないものになり、40重量%より多い場合、シュガーレスハードグミキャンディ生地の粘性が非常に高くなり、シュガーレスハードグミキャンディのモールドへの充填及び成形が困難になってしまう。
【0018】
本発明で使用する糖アルコールは、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、還元澱粉加水分解物より選ばれる糖アルコールのうち1種類乃至2種類以上である。還元澱粉加水分解物とは、還元澱粉糖化物ともいい、澱粉を加水分解したあとに水素を加えて還元したものであり、例えば、高糖化還元水飴、低糖化還元水飴等が含まれる
前記糖アルコールの固形分含有量は40〜60重量%である。糖アルコールの固形分含有量が40重量%未満の場合、シュガーレスハードグミキャンディの弾力が失われ、60重量%より多い場合、付着性の強いヌガーの様な食感となってしまう。
【0019】
本発明に用いるグリセリンは、グリセロールもしくは1,2,3−プロパントリオールとも呼ばれる、無色透明の粘性液体である。
グリセリンの固形分含有量は、1〜10重量%である。グリセリンの固形分含有量が1重量%未満では、シュガーレスハードグミキャンディ生地の粘性が高くなり、シュガーレスハードグミキャンディのモールドへの充填及び成形が困難になってしまい、また、10重量%よりも多いと、シュガーレスハードグミキャンディが適度な弾力を失った食感で、且つ、べたついたものになってしまう。
【0020】
本発明に用いられるセルロースとしては、口当たりの観点から、特に粒子の細かい微結晶タイプのセルロースが好ましく、また、セルロースを化学的に修飾したカルボキシメチルセルロース(CMC)やヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等も用いることが出来る。
セルロースの固形分含有量は、0.2〜2重量%である。セルロースの固形分含有量が0.2重量%未満の場合、シュガーレスハードグミキャンディがべたついたものとなり、また、2重量%よりも多いと、シュガーレスハードグミキャンディの弾力が失われ、また、口溶けも悪く、美味しさを損なうものとなる。
【0021】
本発明のシュガーレスハードグミキャンディにおいては、前記の成分の他にシュガーレスハードグミキャンディの食感形成に必要なものとして、ゼラチンを含有する。ゼラチンの原料としては、牛骨ゼラチン、豚皮ゼラチン、魚ゼラチン等を使用することができる。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理の仕方によって食感に変化を与えることができ、これらいずれのゼラチンを用いても構わない。また、ゼラチンのブルーム(bloom)値については、200〜300が好ましい。
ゼラチンの固形分含有量は、5〜15重量%の範囲内であることが好ましい。
【0022】
また、前記ゼラチン以外にも、ペクチン、アラビアガム、カラギーナン、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、プルラン、ジェランガム等のゲル化剤を本発明のシュガーレスハードグミキャンディに添加する事も可能だが、こういったゲル化剤を添加するとグミキャンディ生地の粘性が上昇する傾向が強いため、シュガーレスハードグミキャンディの溶液時粘度が4.0Pa・s以下となるような範囲での添加量にする必要がある。具体的には、ゲル化剤の固形分含有量は、0.1〜1重量%の範囲内であることが好ましい。
【0023】
また、本発明のシュガーレスハードグミキャンディには、その他にも所望により香料、酸味料、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビア、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、着色料、油脂、乳化剤、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、乳製品、果汁等の任意成分を添加することも可能であり、この時、糖類が100g中0.5g未満になるような範囲で、任意成分を必要に応じて添加することで、シュガーレスハードグミキャンディの嗜好性の幅を広げることができる。
【0024】
また、本発明のシュガーレスハードグミキャンディの水分値は10〜16重量%である。前記水分値は、減圧乾燥法によって測定することができる。
【0025】
現在、糖を含有した従来型のグミキャンディは、グミキャンディ溶液を、デポジッターを用いてコーンスターチ等のモールドに充填し成形して製造するのが一般的であるが、充填するグミキャンディ溶液の物性(製造時の溶液時粘度)によってその生産効率は様々である。本発明において、シュガーレスハードグミキャンディの溶液時粘度が4.0Pa・s以下であれば、テーリングもなく、効率的にモールドに充填することが出来る。シュガーレスハードグミキャンディの溶液時粘度が4.0Pa・sよりも高い場合、シュガーレスハードグミキャンディの溶液をモールドに充填出来なかったり、また、充填出来たとしてもテーリングが発生して生産効率が下がったり等の問題が発生すると同時に、著しくその商品価値を損なってしまう。
【0026】
本発明のシュガーレスハードグミキャンディにおけるゲル強度は、30〜34×106kg/m2・sであることが好ましい。ゲル強度が、30×106kg/m2・s以下になると、食感が軟らかくなり十分な噛み応えが得られず、34×106kg/m2・s以上になるとシュガーレスハードグミキャンディが硬くなりすぎて心地よい食感にならない。
【0027】
また、本発明のシュガーレスハードグミキャンディにおける粘着性は、8〜12×106kg/m2・sであることが好ましい。粘着性が8×106kg/m2・s以下になると、弾力がなくなり、さくい食感となる。12×106kg/m2・s以上になると粘着性が上がり、歯付きがする。
【0028】
前記ゲル強度及び粘着性とは、以下のようにして求められる。テクスチャー・アナライザー(「Texture Analyzer TA.XT.plus」、Stable Micro Systems社製)を使用し、貫入距離200%、測定速度1mm/sec、測定温度20℃で直径2mmの円柱プローブを用いて測定を行った。測定値として得られる「ゲル強度」によりグミの硬さの指標を明らかにすることが可能であり、測定値として得られる「粘着性」によりチューイング性の指標を示すことが可能である。
【0029】
本発明のシュガーレスハードグミキャンディは、前記パラチニット、前記糖アルコール、前記グリセリン及び前記セルロースを含有する濃縮グミキャンディ液を自然冷却させた後に、乾燥させずに得られる点にも特徴がある。
【0030】
前記「濃縮グミキャンディ液」とは、前記パラチニット、前記糖アルコール、前記グリセリン及び前記セルロースとゼラチンとを含み、所定の水分値に濃縮させた加熱溶解液をいう。
【0031】
前記「自然冷却」とは、加熱等の特別な手法によらず放熱させることを意味する。この自然冷却することによってゼラチンが固まってグミキャンディ独特の食感を奏するようになる。具体的には、充填した濃縮グミキャンディ液を室温下で静置しておけばよい。
【0032】
前記「乾燥させずに得られる」とは前記自然冷却させた後に、加熱乾燥、エージング等の乾燥処理を施さないことを意味する。
【0033】
本発明のシュガーレスハードグミキャンディは、前記の組成を有することで、濃縮グミキャンディ液を自然冷却させた後に、乾燥させることを必要としない点で、乾燥工程を必須とする従来のハードグミキャンディと比べて、短時間で、しかも乾燥に必要な設備を必要としないため、生産性に優れたものである。
【0034】
本発明のシュガーレスハードグミキャンディの製造方法としては、
パラチニット、糖アルコール、グリセリン及びセルロースを含有し、水分値が16%以下である濃縮グミキャンディ液を調製する工程、
得られた濃縮グミキャンディ液をモールドに充填する工程、
及びモールドに充填した濃縮グミキャンディ液を自然冷却した後に、乾燥工程を経ずにシュガーレスハードグミキャンディをモールドから取り出す工程
を有することを特徴とする。
【0035】
具体的には、以下のようにしてシュガーレスハードグミキャンディを作ることが出来る。
まず、ゼラチンを水に膨潤させて60℃に保温し、溶解しておく。別に、パラチニット、ソルビトール等の糖アルコール、セルロース及びグリセリンを混合して溶解して糖液を作製する。
【0036】
次いで、糖液を濃縮する。この濃縮には、加熱濃縮を用いればよい。濃縮の際の条件については、通常のグミキャンディを製造する場合と同じであればよく、特に限定はない。
【0037】
次いで、濃縮した糖液を、先に保温しておいたゼラチン溶液と攪拌混合して、濃縮グミキャンディ液を作製する。この混合の際、香料や色素、酸味料等を加えておくのが一般的である。
なお、前記のようにして得られる濃縮グミキャンディ液のpHは、3.0〜3.4に調整することで得られるグミキャンディの食感を良好にすることができる。pHの調整には、食品用のpH調整剤を用いればよい。
【0038】
前記濃縮グミキャンディ液は、最終的に水分値が16%以下に調節されていればよい。本発明では濃縮グミキャンディ液の水分値が16%以下に調節されている点に一つの特徴がある。通常、グミキャンディを得るためには、濃縮グミキャンディ液の水分値が16%以上に設定しないと、粘度が高くなり、所望のモールドへの濃縮グミキャンディ液の充填操作が行うことな困難である。これに対して、本発明では、上記のような各成分を含有することで、濃縮グミキャンディ液の水分値を16%以下という、最終製品の水分値と同等になるように低く設定している場合でも、モールドへの充填が行うことができ、しかも、乾燥工程を必要とせず、濃縮グミキャンディ液を自然冷却するだけで最終製品が得られるという利点がある。
【0039】
次いで、コーンスターチ等のモールド中に前記濃縮グミキャンディ液を充填し、充填した濃縮グミキャンディ液が自然冷却された後に、乾燥工程を経ずに前記モールドから取り出すことでシュガーレスハードグミキャンディを得ることがきる。
【0040】
本発明において「自然冷却」は、具体的には、充填した濃縮グミキャンディ液を室温下で静置しておけばよい。
静置する時間については、シュガーレスハードグミキャンディの大きさや形状により一概に限定できないが、1〜2時間であればよい。
【0041】
得られたシュガーレスハードグミキャンディは、オイリング、糖衣処理等の後処理を施してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、「%」は重量%を示す。
【0043】
(実施例1)
表1に示す組成でパラチニット、ソルビトールをBrix95.0°になるまで濃縮した後、80℃以下まで冷却し、水で膨潤したゼラチン溶液(250bloomゼラチン:水=1.0:1.2、溶解温度60℃以下)とグリセリン、セルロースを混合した後、酸味料としてクエン酸、香料としてレモン香料を添加して水分値15%の濃縮グミキャンディ液を調製した。
次に、得られた濃縮グミキャンディ液を直径1.0mm・高さ0.8mmの円柱状の型を抜いたコーンスターチモールドに単重3.5gになるように充填した。
次に、充填した濃縮グミキャンディ液を20℃、1時間で自然冷却させた後に、そのまま乾燥工程を経ずに前記モールドから取り出し、目的のシュガーレスハードグミキャンディを得た。
なお、表中の組成は、仕上がり製品中の重量%とした。また、ゼラチンの量は、固形含有分を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例2)
実施例2として、表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にしてシュガーレスハードグミキャンディの製造を行った。
【0046】
(比較例1〜6)
比較例1〜6として、表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にしてシュガーレスハードグミキャンディの製造を行った。
【0047】
実施例1〜2、比較例1〜6で得られたシュガーレスハードグミキャンディの食感について、硬さ及びチューイング性について15名のパネラーによる官能試験を行った。なお、試験は以下の評価基準で判断し、最も評価の多かったものを採用した。結果を表2に示す。
【0048】
<食感の官能評価>
[シュガーレスハードグミキャンディの硬さに対する評価]
A:硬すぎる
B:硬すぎることのない心地よい硬さ
C:硬すぎることもなく軟らかすぎることもない
D:やや軟らかい
E:軟らかすぎる
【0049】
[シュガーレスハードグミキャンディのチューイング性(粘着性)に関する評価]
A:粘性が高すぎて歯につく
B:歯につかず、心地よい粘性
C:粘性が高すぎることもなく低すぎることもない
D:粘性がやや低い
E:粘性が低すぎてサクい
F:表面が結晶化してサクい

なお、前記硬さ及び前記チューイング性については、いずれも「B」の評価であるものを合格品とした。
【0050】
【表2】

【0051】
上記シュガーレスハードグミキャンディの物性を調査するために、テクスチャー・アナライザー(「Texture Analyzer TA.XT.plus」、Stable Micro Systems社製)を使用し、貫入距離200%、測定速度1mm/sec、測定温度20℃で直径2mmの円柱プローブを用いて測定を行った。測定値として得られる「ゲル強度」によりグミの硬さの指標を明らかにすることが可能であり、測定値として得られる「粘着性」によりチューイング性の指標を示すことが可能である。具体的な測定については測定装置に添付のマニュアルに準じた。また、シュガーレスハードグミキャンディ溶液時粘度に関しては、B型粘度計(VISCOMETER TVB−10 東機産業社製)を用いて、70℃における粘度を測定した。それぞれの測定結果を、表3に示す。
なお、ゲル強度は30×106〜34×106kg/m2・s、かつ粘着性が8×106〜12×106kg/m2・sを合格品とする。
【0052】
【表3】

【0053】
表1〜3の結果より、実施例1〜2で得られたシュガーレスハードグミキャンディは、比較例1〜6のものに比べて、硬さ、チューイング性に優れたものであることがわかる。
また、実施例1〜2で得られたシュガーレスハードグミキャンディのゲル強度は32×106、34×106kg/m2・s、かつ粘着性が8×106、10×106kg/m2・sであり、いずれもゲル強度、粘着性の点で好ましい範囲内であることがわかった。
【0054】
実施例1において、ソルビトールのかわりに、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、還元澱粉加水分解物に変えた場合でも、上記のように優れた物性を示した。
【0055】
また、実施例1〜2で得られたシュガーレスハードグミキャンディは、糖類を含むグミキャンディである参考例1(「Happy Cola」/HARIBO社製)に比べても遜色のない硬さとチューイング性を有していることがわかる。
【0056】
また、シュガーレスハードグミキャンディの溶液時粘度が4.0Pa・s以下であれば、テーリングもなく、効率的にスターチモールドへ充填することが出来たが、シュガーレスハードグミキャンディの溶液時粘度が4.0Pa・sよりも高い場合、シュガーレスハードグミキャンディの溶液をスターチモールドへ充填出来なかったり、また、充填出来たとしてもテーリングが発生したり等の問題により、成形が困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、従来必要であったグミキャンディの乾燥工程を経ることなく製造することが出来、すぐにでもハードな食感を楽しめる、シュガーレスでありながら、尚且つ、ハードな食感を持ったグミキャンディを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分として、
パラチニットを20〜40重量%、
ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、還元澱粉加水分解物より選ばれる糖アルコールのうち1種類乃至2種類以上を40〜60重量%、
グリセリンを1〜10重量%、
及びセルロースを0.2〜2重量%含むシュガーレスハードグミキャンディであって、
前記パラチニット、前記糖アルコール、前記グリセリン及び前記セルロースを含有する濃縮グミキャンディ液を自然冷却させた後に、乾燥させずに得られることを特徴とするシュガーレスハードグミキャンディ。
【請求項2】
溶解時の溶液粘度が4.0Pa・s以下である請求項1に記載のシュガーレスハードグミキャンディ。
【請求項3】
ゲル強度が30×106〜34×106kg/m2・sであり、かつ粘着性が8×106〜12×106kg/m2・sである請求項1又は2に記載のシュガーレスハードグミキャンディ。
【請求項4】
パラチニット、糖アルコール、グリセリン及びセルロースを含有し、水分値が16%以下である濃縮グミキャンディ液を調製する工程、
得られた濃縮グミキャンディ液をモールドに充填する工程、
及びモールドに充填した濃縮グミキャンディ液を自然冷却した後に、乾燥工程を経ずにシュガーレスハードグミキャンディをモールドから取り出す工程を有することを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載のシュガーレスハードグミキャンディの製造方法。