説明

シュレッダ

【課題】簡易な構成で消費電力を少なくすることができるシュレッダを提供することを課題とする。
【解決手段】商用電源を第2の所定電源に変換するインバータ12と、その変換された第2の所定電源によって駆動する誘導電動機14と、該誘導電動機14の駆動により紙束を細断する細断機構15と、該誘導電動機14の回転数を検出する回転数検出手段16と、該インバータ12と該誘導電動機14との間の周波数と電流とを検出する検出器13と、該細断機構15の負荷運転時における該誘導電動機14の回転数が、該細断機構15の無負荷運転時における該誘導電動機14の回転数と比較して低下した場合でも、該細断機構15の無負荷運転時における該誘導電動機14の回転数となるような周波数の中から、該検出器13で検出する電流を最小とする周波数を選定し、その選定した周波数となるように該インバータ12を制御する制御装置17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙束を細断するシュレッダに関し、詳しくはインバータを使用して紙束を細断するシュレッダに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシュレッダは、例えば特許文献1に開示された技術が知られている。この技術では、細断機構の駆動用の三相誘導電動機と、該三相誘導電動機の入力側に接続されて商用電源からの電力を三相として上記三相誘導電動機へ供給するベクトル制御インバータと、該ベクトル制御インバータの出力電圧と出力電流を検出する検出装置と、該検出装置から検出電圧と検出電流を受けて上記三相誘導電動機の負荷トルクを算出し該負荷トルクに対して最適な速度とトルクとの関係を有する特性曲線をもつように、周波数と電圧を選定して前記周波数と電圧とを上記ベクトル制御インバータへ指令する制御装置とを有している。
【0003】
このため、所定の負荷のときは、三相誘導電動機が設計点近傍で運転できるので、その効率は非常に良く、電力の無駄が無い。また、負荷が変動したときには、上記検出装置により負荷トルクを算出し、制御装置では、その負荷トルクに応じた運転条件が設計点近傍に設定されるように、複数の特性曲線のうちから最適なものを選定し、その特性曲線のもとで運転されるように周波数と電圧を決めてこれをベクトル制御インバータへ指令する。かくして、どのような負荷のもとでも設計点で、すなわち、きわめて効率の良い条件下で運転され、電力の無駄が少なく、大幅に節電される。
【特許文献1】特開2002−215643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したシュレッダではベクトル制御インバータの出力電圧と出力電流を検出する検出装置を必要とし構成が複雑であった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、簡易な構成で消費電力を少なくすることができるシュレッダを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりのシュレッダである。
請求項1に記載のシュレッダは、商用電源を第2の所定電源に変換するインバータと、その変換された第2の所定電源によって駆動する誘導電動機と、前記誘導電動機の駆動により紙束を細断する細断機構と、前記誘導電動機の回転数を検出する回転数検出器と、前記インバータと前記誘導電動機との間の周波数と電流とを検出する検出手段と、前記細断機構の負荷運転時における前記誘導電動機の回転数が、前記細断機構の無負荷運転時における前記誘導電動機の回転数と比較して低下した場合でも、前記細断機構の無負荷運転時における前記誘導電動機の回転数となるような周波数の中から、前記検出器で検出する電流を最小とする周波数を選定し、その選定した周波数となるように前記インバータを制御する制御装置とを備えている構成である。この構成によれば、制御手段は負荷によって誘導電動機の回転数が低下した場合でも、低下した回転数を補うような周波数を選定することができる。また選定した周波数は誘導電動機で消費する電流を少なくするような周波数である。そのため制御手段はこの選定した周波数によってインバータを制御することができる。したがって誘導電動機は消費電力を低減した運転をすることができる。
【0007】
また本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりのシュレッダである。
請求項2に記載のシュレッダは、請求項1に記載のシュレッダであって、前記商用電源と前記インバータとの間には、前記商用電源を第1の所定電源に変換する昇圧回路を備え、その第1の所定電源を前記インバータへ供給する構成である。この構成によれば、商用電源を昇圧しその昇圧した電源を誘導電動機へ供給することができる。そのため昇圧しない場合と比較すると昇圧した場合の方が誘導電動機で使用する電流を低減させることができるため抵抗損を低下させ負荷で使用する消費電力を削減できる。また昇圧回路には半導体素子を使用しているため、変圧器などで昇圧する場合と比較すると設置スペースを削減でき、発熱量も抑えることができる。
また、例えば、一般的なAC100Vの商用電源を昇圧回路によって約2倍に昇圧させたような場合、AC200Vの商用電源でなければ一度で細断できなかったような書類(の枚数を、導入容易なAC100Vの商用電源を使わざるを得ないようなシュレッダの設置環境であっても、一度で細断することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。なお特許請求の範囲に記載の「誘導電動機」は、以下の実施の形態に記載の「三相誘導電動機14」に相当する。
図1は、本発明のシュレッダの一実施形態を表す電気的構成図である。図1に示すように、商用電源を第1の所定電源に変換する昇圧回路11へ供給し、この昇圧回路11で昇圧された第1の所定電源をインバータ12へ供給し、このインバータ12で第1の所定電源を第2の所定電源に変換し、このインバータ12で変換された第2の所定電源を三相誘導電動機14へ供給し、三相誘導電動機14を駆動させている。ここで商用電源とは、例えば、単相交流100V−50Hzの家庭用コンセント電源である。また昇圧回路11とは、例えば半導体素子によって交流を直流へ整流してさらに昇圧させる回路であり、一般的なものを使用しているため詳細説明は省略する。また第1の所定電源とは、例えば、直流280Vに昇圧された電源である。また第2の所定電源とは、例えば、3相交流200V−所定の周波数の電源である。この所定の周波数については後述する。
【0009】
また、この三相誘導電動機14の駆動に伴って細断機構15も駆動し紙束の細断が可能となっている。この細断機構15とは、汎用シュレッダに用いられている細断機構(例えば、外周部に複数の切断刃を有する2つの円筒状の双方回転刃であり、これら双方回転刃は互いに噛合うように逆方向に回転可能で、この回転させた状態で細断挿入口(図示しない)から挿入された紙束をその噛合い部位に挿入して紙束を細断する機構)であるため詳細説明は省略する。また、この三相誘導電動機14の回転軸(図示しない)の回転数を検出可能な回転数検出手段を備えている。回転数検出手段の代表例は、回転数検出用のセンサであり、例えば、パルスジェネレータ、タコジェネレータまたはエンコーダなどである。また、回転数検出手段は、回転数を検出するためのセンサを備えることなしに、制御装置が、その出力電流、その出力電圧及び制御対象たるモータの特性から、モータ回転数(の推定値)を演算して算出する方式のものであってもよい。
またインバータ12と三相誘導電動機14との間の周波数と電流とを検出する検出器13を備えている。なお、以下においてこの検出器13で検出した周波数と電流とをそれぞれ1次周波数と1次電流と記す。また、これら検出した回転数と1次周波数と1次電流とに基づいて上述した所定の周波数となるように、インバータ12を制御する制御手段17を備えている。
【0010】
続いて、制御手段17が実施する制御について説明する。
紙束の細断を希望する利用者(以下、「利用者」と記す)は、シュレッダのスイッチをONにして三相誘導電動機14を駆動させ細断機構を運転させる。この状態では、紙束は未だ細断されていない状態であるため、三相誘導電動機14は無負荷運転である。そして利用者は紙束を細断挿入口へ挿入し紙束を細断させていく。この状態になると、紙束は細断されていくため、三相誘導電動機14は負荷運転である。そのため三相誘導電動機14の回転軸の回転数は、無負荷運転時の回転数と比較して低下する。制御手段17は回転数検出器16から回転数の低下を検出すると、無負荷運転時の回転数に戻そうとするため、その回転数に戻すための必要な周波数を算出する。
【0011】
ここで制御手段17は、無負荷運転時の回転数に戻すための周波数を複数算出することができる。そして制御手段17は、その算出された複数の周波数の中から1次電流を最小にすることができる周波数を選定する。その周波数を選定するために制御手段17は、回転数検出器16からの三相誘導電動機14の回転数と検出器13からの1次周波数と1次電流に基づいて、三相誘導電動機14の2次電流を算出する。この2次電流とは、三相誘導電動機14の回転子に流れる電流である。そして制御手段17は、1次電流によって固定子に生じる1次磁束と算出する2次電流との位相差が90°となるように1次周波数を算出する。このようにして1次周波数を算出すると、回転子に生ずるトルクが最大となるため、結果として1次電流は最小となる周波数を算出できることになる。この算出された周波数が所定の周波数である。
【0012】
やがて紙束の細断が完了すると、三相誘導電動機14は無負荷運転となる。そのため紙束が無くなったことにより三相誘導電動機14の回転軸の回転数は、先ほどの負荷運転時の回転数と比較して増加する。制御手段17は回転数検出器16から回転数の増加を検出すると、負荷運転前の無負荷運転時の周波数に戻すようにインバータ12を制御する。なお、制御手段17は予め無負荷運転時の周波数を記憶している。
【0013】
このようにして制御手段17は、紙束の細断中によって細断機構15の回転数が減少しても、減少した回転数を補うように且つ回転数を補っても電流の使用を少なくするようにインバータ12を制御させることができる。そのため利用者はシュレッダ使用時に、紙詰まり等のトラブルが発生することがないため、安定して紙束を細断することができる。また1次電流を低減させることができるため負荷で使用する消費電力を削減できる。したがって細断コストを抑えることができる。
【0014】
また、このように昇圧回路11を設けて、商用電源よりも三相誘導電動機14で使用する電圧を昇圧させるため、昇圧しない場合と比較すると昇圧した場合の方が三相誘導電動機14で使用する1次電流を低減させることができるため抵抗損を低下させ三相誘導電動機14で使用する消費電力を削減できる。ここで抵抗損とは、インバータ12と三相誘導電動機14とを接続しているケーブルで消費される抵抗損、または三相誘導電動機14の銅損などである。また昇圧回路11には半導体素子を使用しているため、変圧器などで昇圧する場合と比較すると設置スペースを削減でき、発熱量も抑えることができる。
また、一般的なAC100Vの商用電源を昇圧回路によって約2倍以上に昇圧させたような場合、AC200Vの商用電源でなければ一度で細断できなかったような(機密)書類の枚数を、AC200Vの商用電源に比べればはるかに導入が容易なAC100Vの商用電源を使わざるを得ないようなシュレッダの設置環境であっても、昇圧させた電圧に応じて楽に一度で細断することが可能となった。
【0015】
本発明のシュレッダは、本実施の形態で説明した構成、数値(例、電圧値)、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のシュレッダの一実施形態を表す電気的構成図である。
【符号の説明】
【0017】
11 昇圧回路
12 インバータ
13 検出器(周波数・電流)
14 三相誘導電動機
15 細断機構
16 回転数検出器
17 制御手段





【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を第2の所定電源に変換するインバータと、
その変換された第2の所定電源によって駆動する誘導電動機と、
前記誘導電動機の駆動により紙束を細断する細断機構と、
前記誘導電動機の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記インバータと前記誘導電動機との間の周波数と電流とを検出する検出器と、
前記細断機構の負荷運転時における前記誘導電動機の回転数が、前記細断機構の無負荷運転時における前記誘導電動機の回転数と比較して低下した場合でも、前記細断機構の無負荷運転時における前記誘導電動機の回転数となるような周波数の中から、前記検出器で検出する電流を最小とする周波数を選定し、その選定した周波数となるように前記インバータを制御する、制御装置と、
を備えていることを特徴とするシュレッダ。
【請求項2】
請求項1に記載のシュレッダであって、
前記商用電源と前記インバータとの間には、前記商用電源を第1の所定電源に変換する昇圧回路を備え、その第1の所定電源を前記インバータへ供給することを特徴とする、シュレッダ。






【図1】
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【公開番号】特開2006−67725(P2006−67725A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248412(P2004−248412)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000155193)株式会社明光商会 (11)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【出願人】(391006348)株式会社タイテック (79)
【出願人】(000170347)合資会社オリエンタル (21)
【Fターム(参考)】