説明

シリコンの機械加工により排出されたスラリー中に含まれる懸濁流体を分離及び回収する方法

排出スラリー中に含まれた固体成分から懸濁流体を完全に分離する方法であって、排出スラリーは、研磨剤又は研磨剤以外であり、固体成分は、単結晶若しくは多結晶シリコンの材料、又は石英若しくは他のセラミック材料の切断操作又は他の機械的操作から生じ、又は、このような懸濁液の先の遠心分離により得られたスラッジ中に含まれる。向流型の1つ又はそれ以上の段階を介してスラリー中に含まれた全固体成分を即座に分離するステップを含み、前記段階が、溶媒又は溶媒の混合物を用いた懸濁流体の抽出、溶媒を用いて希釈された懸濁液の沈殿、懸濁液及び溶媒の混合物により構成された上澄みのオーバーフローによる回収を含む。オーバーフローによる最後の回収で残された残留相が、存在する全ての固体のろ過によって最終的に分離され、一方、オーバーフローによる第1の回収から得られた溶媒及び懸濁流体の混合物から、懸濁流体が、蒸留によって回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンの機械加工により排出されたスラリー中に含まれる懸濁流体を分離及び回収する方法に関する。さらに具体的には、本発明は、実行に必須の装置を備え、研磨剤又は研磨剤以外であって、単結晶若しくは多結晶シリコン材料、又は石英若しくは他のセラミック材料の切断操作又は他の機械加工から生じる排出懇濁液中に含まれる固体成分又は例えば排出懇濁液などの先に行われた遠心分離から得られるようなスラッジ中に含まれる固体成分から懇濁液を完全に分離するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、太陽光発電エネルギーの分野及び電子分野での応用のための部品の製造において、円形(“ウェハー”)若しくは方形のいずれかの薄いシリコン薄片が使用され、これが、単結晶シリコンインゴット(半導体)又は多結晶シリコン“ブリック”(太陽光分野での応用)をその軸と垂直に切断することにより得られる。
【0003】
通常、この“スライス”操作が、ワイヤーソー又はカッターを用いて実行され、かなりの長さ及び適当な機械的耐性を有し、ローラー及びスプールのシステムにおいて巻かれた金属ワイヤーが、切断しようとする部分において、移動中にインゴットの長さ方向と垂直にインゴットと接触される。同時に、研磨グレイン又は粒子を含むスラリー(研磨スラリー)が、カッターワイヤーとインゴット又は“ブリック”との間の接触領域に送り込まれる。
【0004】
シリコン,石英又は他のセラミック材料をワイヤーソーで切断するために使用される従来の研磨スラリーは、特にポリエチレングリコール,PEGである高分子量の水溶性有機液体又は鉱油のような冷却流体,潤滑液又は懇濁液から構成され、通常シリコンカーバイド(SiC)である適当な硬さの研磨粒子が懇濁される。
【0005】
アルミナ(Al)のようなシリコンカーバイドとは異なる研磨剤を使用して準備された他の研磨懇濁液が、“バックラッピング”として知られている薄片の最終的な厚みの減少又はラッピングのような切断とは異なる他のシリコン機械加工操作に使用される。基本的に、互いに反対方向に回転し重なることが可能である2つの完全に平面でかつ円形である水平な鋳鉄板により構成されたラッピングマシーンを用いた切断後に、このような操作が、実行される。切断操作により生じるシリコン薄片が、これらの板の間に配置され、研磨粒子のスラリーが、そこに送り込まれる。通常、このスラリーが、懇濁液、通常アルミナにより形成される適当な研磨剤、及び商用の懇濁添加材の混合物により構成される。
【0006】
上記の機械加工操作、即ち、切断、ラッピング及びバックラッピングの間に、研磨グレインの一部が、そのプロセスを機能させるために有用なそれらの特性を失い、同時に、研磨スラリーが、シリコンインゴット又はシリコン薄片から生じるシリコン微粒子、及びカッターワイヤー又はラッピングマシーン板から生じる鉄微粒子で満たされるようになる。
【0007】
微粒子の量が増加するにつれ、研磨スラリーが、その機械的特性を失い、スラリーが、機能しなくなり、廃棄され、新たな研磨スラリーと交換されなければならない程度にまで、スライス操作の効率及び生成品の品質が低下する。排出スラリーが、再利用可能な要素、即ち、所定の閾値以上のサイズを有する研磨粒子及びスラリー自体に使用された懇濁液を回収するために送られる。後者(PEGのような有機液体又は鉱油をベースとする)が、金属残留物及びシリコンの懇濁微粒子から並びに再利用可能でない研磨グレインから効果的に精製された場合、そのプロセス内において完全に再生可能となるが、これは、このプロセスの過程において、これが、それ自体の特性を変化させないまま保つためである。
【0008】
この回収に対する従来の試みが、第一に、ろ過又は遠心分離により懇濁液をその中に含まれる固体から分離し、次に、切断操作に必要な最小サイズに維持された研磨グレインを回収する。しかしながら、排出懇濁液の高い粘度並びにシリコン、研磨剤及び鉄の微粒子の存在により、特に、油ベースのスラリーの場合において、ろ過を安価な方法で実施することが極めて困難となり、時には、不可能となる。一方、遠心分離からなる代替の操作では、かなりの量の懇濁液を含んだままのある濃縮生成品(通常、“スラッジ”と呼ばれる)が得られるだけである。
【0009】
排出研磨スラリー中に存在する固体及び懇濁液についてさらに詳細に検討すると、電子及び太陽光発電用途でのシリコンの機械加工に使用される懇濁液は、油ベース、又はPEGベースである(PEGは、異なる分子量を有する)。懇濁化剤として使用された油が、C10−C24の直鎖を有する鉱油、又はC18−C26の芳香族鎖を有する合成油であってよく、少量の添加剤がこれに加えられ、これらの添加剤が、各用途に対して固有のものであり、この微粒子から懇濁化剤を分離及び回収するためにスラリーを処理する時には不明である独自の形式(proprietary formulation)を有する。研磨微粒子並びにシリコン及び他の金属の微粒子と組み合わせて用いられるこれらの添加剤を、直接的にろ過することは出来ず、又は、少なくとも、極めて困難となりうる。
【0010】
通常、上記の排出スラリーの固体部分を表す粉末が、以下の成分により構成される。
・シリコンカーバイド(SiC)、又は例えばダイアモンド若しくはアルミナ(Al)のような他の研磨剤であって、5μm以上のグレインサイズを有し、単結晶又は多結晶シリコンのインゴット又は薄片の機械加工操作において研磨剤として再利用可能である;
・シリコンカーバイド(SiC)又は微粒子と呼ばれる他の研磨剤であって、5μm以下のグレインサイズを有し、上記の機械加工操作において研磨剤として再利用可能ではない;
・シリコン廃棄物(Si)であって、シリコンインゴットの機械加工により生じ、通常、5μm以下のサイズを有する;
・鉄廃棄物(Fe)であって、シリコン機械加工に使用されるツール(カッティングワイヤー又はラッピング板)から生じ、通常、5μm以下のサイズを有する。
【0011】
シリコン薄片への機械加工操作から生じる研磨スラリーの処理に関する特許文献において、すでにいくつの技術が提案されているが、これらは、いずれも、主に、液体成分の回収に加え、排出スラリー内に存在する固体のサイズ及び化学特性による分離を目的とするものである。実質的には、この理由により、認められうるように、使用されるすべてのプロセスが、かなり複雑なものとなる。
【0012】
油ベースの研磨スラリーの場合及び水溶性有機液体ベースのスラリーの場合の両方において、提案された技術が、以下の基本操作と様々に組み合わされる:
a)追加的な操作においてこれを処理することが可能となるように、特に、溶媒を用いた希釈又は加熱により、予め排出スラリーの粘度を下げるステップ、
b)遠心分離又はハイドロサイクロン(遠心力の作用を活用した、液体に取り込まれた固体粒子のスタティックセパレータ)にスラリーを通すことなどの、湿式のサイズーソートにより、再生可能な研磨グレインを分離するステップ、
c)スラリーの基本的な(basic)懇濁液と混和性のある溶媒を用いて排出スラリーを処理することにより、再生可能な研磨グレインを分離するステップ、
d)研磨グレイン分離により生じる液相をろ過するステップ、
e)溶媒の液体混合物を蒸留し、ろ液を構成する液体を冷却するステップ、
f)再生可能な研磨グレインを乾燥するステップ。
【0013】
従来の解決策のいくつかの例を参照し、以下において明らかにされるような、使用されている最新の技術は、全て、以下の2つの共存する主要な目的を有しており、常に、それらの濃縮生成品からというよりはむしろ、排出スラリーから開始して実施される:
1.未だ再利用可能な研磨剤の部分を、もはや再利用可能ではない研磨剤の部分から分離しかつシリコン及び金属のような加工廃棄物から分離する
2.懇濁液及び排出スラリーの粘度を下げるため又は再生可能な研磨剤を分離するために使用された溶媒を回収する
【0014】
特許文献1(信越半導体会社)には、油ベースタイプの排出研磨スラリーを再利用するためのシステムであって、その粘度を下げるために、水が、第一に、排出スラリーに追加され、次に、結果として生じる混合物が、ハイドロサイクロンに供給され、再利用可能な研磨グレインが分離されるシステムが説明されている。周知のように、ハイドロサイクロン内において、処理される供給物は、高速で、上端から、接線方向に装置内に供給され、遠心力が、重い粒子をコンテナの外壁に追いやる。らせん状に移動し、その後、重い粒子が、コンテナの円錐形の底部内に集められ(アンダーフロー)、一方、浄化された液体が、中央のダクトから上端にて出てくる(オーバーフロー)。上記の文献において提案された解決策では、油の懇濁液、水及びハイドロサイクロンを通過することによって分離されていない全てのそれらの固体粒子を含むハイドロサイクロンオーバーフローが、次に、遠心分離によって3相に分けられる。この操作が、切断プロセスにおいて再利用される油性相、排出スラリーを希釈化する予備段階において再利用される水、及び、廃棄物処理プラントに送られる廃棄される固体を含む残留懇濁液を生じる。
【0015】
上記文献の教示によると、これが回収され、再利用されるにつれ、不要な微粉が、研磨スラリー中に増加する傾向がある。同じことが、切断プロセスに戻りシステム内に蓄積された微量の固体微粒子を必然的に含む遠心分離操作により回収された油性スラリーにもあてはまる。
【0016】
大量の溶媒を使用するが、本発明のプロセスとは異なる手段及び目的を有するプロセスが、上記のものを改善する方法に係る特許文献2(Fraunhofer−Gesellschaft zur Forderung der angewandten Forschung e.V.)に説明されている。操作段階は、特許文献1に説明されたものと実質的に同じであるが、排出スラリー(油ベースの研磨スラリーの前記ケースでは水である)の粘度を下げるために準備段階で加えられる補助的なプロセス流体が、この場合において選択され、これが、研磨スラリーの懇濁液と混和性を有する。従って、油ベースの研磨スラリーの場合には、希釈液が、脂溶性溶媒(n−へキサン又はn−ヘプタンなど)の中から選択され、一方、水溶性ベースのスラリーの場合には、両親媒性溶媒(アセトンなど)が使用される。
【0017】
この場合、加えられる液体が、懇濁流体と混和性を有するため、懇濁流体及び溶媒を回収するために、再利用可能な研磨グレインを分離した後に得られる懇濁液が、必須である懸濁微粒子のろ過後に、蒸留処理されなければならない。しかしながら、このような方法では、蒸留が、低沸点成分、即ち、溶媒を分離する。回収された懇濁液内に残る回収可能な研磨剤の分離後に、微粒子が、懇濁液中に残されたままであり、後者が、再利用される場合に、これらが、徐々に増加する。
【0018】
特許文献3(信越半導体会社)では、上記の2つと類似であるが、水溶性ベースのスラリーの場合での使用を主に目的とする排出研磨スラリーの分離及び再利用の方法が説明されている。この場合においても、第1の操作は、水を用いた処理対象の懇濁液の希釈化により構成され、その粘度を下げることを目的とする。次に、混合物が、湿式のサイズ−ソートによって処理され、再利用可能な研磨グレインが分離され、この場合においても、好ましい装置は、ハイドロサイクロンである。
【0019】
上記2つのシステムと最も異なるプロセスの部分は、ハイドロサイクロンのオーバーフローから得られた液体の懇濁液の回収及び分離処理に関する。懇濁固体の分離を促進するために、この液体の懇濁液に、凝固剤が加えられ、次に、全部が蒸留され、これから最も軽い留分である水が回収され、排出スラリーの初期希釈のために再利用される。
【0020】
水溶性スラリー、懇濁固体及び凝固剤の混合物が、好ましくは遠心分離により固体−液体分離処理にさらされ、一方では、廃棄される固体残留物を得て、他方では、水溶性スラリーを得る。これが、スラリーの粘度を調節するための分散剤の追加を含むさらなる処理の後に、切断プロセスにおいて再利用されることが可能である。
【0021】
回収された懸濁流体の純度を考慮し、これが再び切断プロセスに供給され、上記の前2つのプロセス対する同じ考察が、この場合にも適用可能である。
【0022】
特許文献4(Elektroschmelzwerk Kempten)は、今までに検討されているプロセスとは全く異なる回収方式を備えた排出研磨スラリーの処理を提案している。この場合、第1段階において、真空下での蒸発又は噴霧乾燥などを用いて全ての固体成分が乾燥され、ある程度まで排出スラリーを加熱するステップを含む。大部分が研磨スラリーの懸濁流体により構成された蒸発した液体が、液化され、切断プロセスにおいて再利用されることが可能である。
【0023】
排出スラリー内に懸濁された固体を完全に乾燥し、循環的に、懸濁流体を蒸発させ、再凝縮させる技術的な提案において、その分解を促進することが可能である熱応力に懸濁液がさらされる。懸濁液が油である場合、凝縮物の構造が、新たな油のそれと異なることがあり、一方、懸濁液が、ポリエチレングリコール(PEG)である場合、高分子量のPEGは、蒸発に必要な温度が高く、その構造が損傷することなく蒸発されることが出来ないため、このプロセスが、上手くいかないものとなりうる。
【0024】
特許文献5(MEMC Electronic Materials and Garbo Servizi)では、水溶性ベースタイプの排出研磨スラリーを再生することを目的とした方法であって、排出研磨剤が、その粘度を下げるために第一に加熱され、次に、ろ過による初期分離にさらされる方法が説明されている。これが、微量の微粉末を含む切断液、及び少量の切断液に加えて排出スラリー内に懸濁されたほぼ全ての固体を含む湿式粉体の凝集体により大部分が構成された精製液を生じる。次に、湿式粉体が、水で希釈され、ハイドロサイクロンを用いて分離され、大きなサイズの少量のグレイン(アンダーフロー)及び少量の懸濁流体と混合された水中に懸濁された微粒子により構成された“オーバーフロー”留分を生成する。ハイドロサイクロンの上端からの“オーバーフロー”留分がろ過され、ハイドロサイクロン分離プロセスの前に湿式粉体を希釈する働きを行う水溶液流を回収する。
【0025】
特許文献5(MEMC Electronic Materials and Garbo Servizi)では、水溶性ベースタイプの排出研磨スラリーを再生することを目的とした方法であって、排出研磨剤が、その粘度を下げるために第一に加熱され、次に、ろ過による初期分離にさらされる方法が説明されている。これが、微量の微粉末を含む切断液、及び少量の切断液に加えて排出スラリー内に懸濁されたほぼ全ての固体を含む湿式粉体の凝集体により大部分が構成された精製液を生じる。次に、湿式粉体が、水で希釈され、ハイドロサイクロンを用いて分離され、基本的に再利用可能なグレインを含む大きなサイズの少量のグレイン(アンダーフロー)及び少量の懸濁流体と混合された水中に懸濁された微粒子(再利用不可能な研磨剤、シリコン粉末及び金属粉末)により構成された“オーバーフロー”留分を生じる。研磨グレインを含む留分が、オーブン乾燥され、一方、ハイドロサイクロンの上端からの“オーバーフロー”留分がろ過され、ハイドロサイクロン分離プロセスの前に湿式粉体を希釈する働きを行う水溶液流を回収し、基本的にシリコン粉末及び金属により構成された固体残留物を得る。
【0026】
熱い排出スラリーの第1ろ過により回収された懸濁液が、さらなるろ過操作によりさらに微量の粉末が除かれ、その後、これが、切断プロセスに送られる。
【0027】
その粘度を下げるために、予め排出スラリーを加熱する必要があるということに加え、試験中におけるこのプロセスの無視できない欠点が、ハイドロサイクロンにおける分離プロセスを実行するために、第1ろ過により得られた湿式粉末に多量の水を加える必要があるということである。さらに、第1ろ過後にも固体中にこれが残されたままであるため、少量の切断液が失われ、この結果、懸濁流体の回収率が減少することにも留意しなければならない。
【0028】
水溶性液体ベース(特に、ポリエチレングリコール,PEG)を有する排出研磨スラリーを処理するために提案された他のプロセスが、特許文献6(MEMC Electronic Materials and Garbo Servizi)に説明されており、排出スラリーが、第一に、ろ過を用いて、固体留分と完全に固体を欠くものではない液体留分(懸濁流体)とに分離される。残存する懸濁液量を含むろ過ケークが、水で洗浄され、次に、シリコン微粒子の溶解を生じさせこれらを除去するために、水酸化ナトリウム溶液で処理される。次に、金属粉末の溶解を生じさせこれらを除去するために、上記操作により得られたろ液が、酸浸出剤で処理され、再利用可能な及び再利用不可能な研磨剤量のグレインのみの混合物を、後続の固体留分の洗浄から得る。懸濁剤の回収率が、第1ろ過における懸濁剤の一部の損失により悪影響を受ける。
【0029】
最後に、また、特許文献7(SiC Holding GmbH)は、排出研磨スラリーの全ての再利用可能な成分を回収することを目的としたプロセスに関するものであり、特に、PEGベースの懸濁流体が回収されるだけでなく、適当なサイズの研磨シリコンカーバイドグレインも回収され、一方、シリコン及び鉄微粒子が廃棄される。記載されているプロセスは、遠心分離による第1の固体−液体分離を含み、ここから、濃縮(thickened)留分が、直列に接続されたハイドロサイクロンのバッテリーを備えた研磨グレインの回収のための部分、及びグレインをろ過しかつ化学的に処理するための後続の装置に送られ、一方、微粒子及び懸濁流体の多くを含む液体留分が、後者の回収のための部分において処理される。提案された解決策の一つに従い、ろ過、アルカリ溶液の精製溶液への追加、精密ろ過、得られた精製液の中和、プロセスに追加された少量の水の蒸留、再利用のための無水PEGのろ過及び回収という後続の操作を介して、このような回収が実行される。懸濁剤の回収のための同じ文献において提案されている代替の解決策が、アルカリ溶液を含む処理及び後続する中和処理の代わりに、カチオン樹脂上での処理、その後のアニオン樹脂上での処理を含む。
【0030】
説明されているプロセスは、排出スラリーの再利用可能な成分の全てを完全に回収することを目的としており、まさしくこの理由のために、必要な装置という観点から極めて複雑であるように見える。
【0031】
一般的に、懸濁流体を回収することにあるこの目的に関し、上記の全ての従来技術のプロセスでは、多かれ少なかれ際立った方式で、以下の欠点を含むいくつもの欠点に悩まされてきた。
・特に懸濁流体であるスラリー成分の回収率が低いこと;
・プロセスが複雑であること、要求される操作が極めて多いこと、又は、他には、処理に必要な時間が長いこと;
・分離のために加えられる溶媒の消費が多いこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】欧州特許出願公開第786317号明細書
【特許文献2】国際公開第01/43933号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0791385号明細書
【特許文献4】米国特許第6010010号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0968801号明細書
【特許文献6】国際公開第02/096611号
【特許文献7】国際公開第2006/137098号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
上記を考慮し、本発明は、シリコンの機械加工により又は石英若しくはセラミック材料への他の同様な作業手法により生じた排出スラリーの処理のためのプロセスを提供することを目的とし、これにより、新たなスラリーの準備段階においてそれを再利用するために、安価かつ順応性のある方法で、スラリー中に含まれる懸濁液を、回収することが可能となる。このようなプロセスが、上記の懸濁流体を分離するための複雑なプロセスに対する単純かつ便利な代替手段を示しうる。このプロセスが、有利に、研磨剤の又は研磨剤以外の排出スラリー、及びまた前記スラリーから得られた遠心分離機で分離した物質のうち緻密度の濃い方又は濃縮生成品(即ち、スラッジ)、即ち、前処理段階により得られたそれらの生成品に適応可能となるべきであり、通常、例えば最大40%ものかなりの量の懸濁流体がいまだなお存在する。
【0034】
本発明と結び付けられる予備的研究の枠組みにおいて、シリコンの機械加工から生じる排出スラリーに含まれる固体の走査型電子顕微鏡(SEM)検査により、通常1−2μm以下の直径を有する小さなシリコン粒子の存在が確認されていることが報告されており、この小さなシリコン粒子が、シリコンカーバイドのような大きな研磨粒子を囲み、後者が存在する場合には、3から40μmの直径を有する。
【0035】
従って、大きな直径の粒子が、基本的に、多彩な形状を有しかつ直径5μm以上のシリコンカーバイドにより構成され、さらに、粒子凝集体の存在が、時に、指摘されている。比較すると、シリコン粒子が、さらにいっそう球状であり、2から5μmのサイズを有する凝集体を生じさせる。
【0036】
また、例えば、油ベースの懸濁液であって、上記の固体の混合物を含む懸濁液が、油自体と混和性のある溶媒で処理される場合、固体分に関してさらに希釈されており、開始時の値よりも検出可能な低い粘度を有する新たな懸濁液が得られることが報告されている。この粘度が、使用される溶媒及び溶媒に対する懸濁流体の希釈率に応じて変化する。この希釈された懸濁液が、自由に沈殿する(自由沈殿)ままとなっている場合、粒子沈殿の平衡速度(終端速度)は、ストークスの法則によって与えられる。後者は、レイノルズ数<0,1に対して有効である(本ケースであり、沈殿の間の液体が、ゼロに等しい速度を有する):
【数1】

式中において、uは終端速度であり、Dは沈殿の間に沈殿する固体粒子の直径であり、ρ及びρは、各々が、固体の密度及び液体の密度であり(この場合において、混合物油/PEG/溶媒の密度)、gは重力加速度であり、μは、油/PEG/溶媒の混合物の粘度である。最後に、Kは、球形の粒子の直径Dを考慮した係数であり、通常、このような係数は、シリカ粒子に対して1であり、シリコンカーバイド粒子に対して0.81である。
【0037】
ストークスの法則を考慮すると、次のことが観察されうる:
a)等しい容量の固体及び等しい容量の油/PEG/溶媒の混合物に対する平衡及び終端速度が、粒子直径の2乗に比例する;従って、大きな粒子が、早く沈殿する傾向がある;
b)油/PEG/溶媒の混合物の等しい希釈物において、項(ρ−ρ)、及び、従って終端速度が、シリコン粒子に対するもの(2,3g/cm)よりも、シリコンカーバイド粒子(3,2g/cm)に対するもののほうが大きくなる;
c)最後に、溶媒の選択が、それらの生成品の中からなされなければならず、その分子が、油及びPEGとの必須の親和性を有する一方、同時に、可能な限り最低密度及び粘度をも有する。
【0038】
このような観察結果を根拠とし、本発明は、単純かつ経済的に都合のよい手段を用いて、懸濁液中に存在する全ての固体からの懸濁流体の完全な分離を実行することを目的とし、ろ過が可能ではない場合において、油又はPEGにより構成された排出スラリーの懸濁流体が、適当な溶媒で抽出されることにより、懸濁液に含まれた全ての固体成分から即座に分離される。次に、固体成分が、化学種によって分離され、必要ならば、さらなる専用のプロセスによってサイズーソートされる。本発明に従い、適当な溶媒による懸濁液の抽出の一つ以上の連続的なステップを用いて、懸濁流体の分離が実施され、向流的に(counter−current)実施され、各々の後に、適当な期間の間の懸濁液の沈殿、及び懸濁流体及び溶媒の混合物により構成された上澄み(surnatant)のオーバーフローによる回収が続く。最大量の懸濁流体を有する、オーバーフローによる第1の回収で抽出された懸濁流体が、蒸留による懸濁流体の回収に送られ、一方、懸濁流体の極めて少量の残留物を有する、溶媒中に分散された固体粉末により構成された最後の沈殿槽内に残されたスラリーが、存在する全ての固体の分離のために、さらなる量の溶媒で希釈され、抽出後の最後のろ過にさらされる。ろ過の結果として生じるケークが、洗浄され、この結果、溶媒及び最後の微量の懸濁流体が回収され、次に、ろ過ケークが乾燥される。
【0039】
この結果、排出スラリー又はその濃縮スラッジを提案されたプロセスで処理することにより得られた生成品が、以下である:
a)再利用に送られる、99%より多い回収率を有するスラリーの基本的な懸濁流体;
b)スラリーの全ての固体成分を含む乾燥粉末;この粉末のその構成要素への可能な化学分離又はサイズーソートが、本発明の範囲を逸脱しない技術を用いて実施されうる。
【課題を解決するための手段】
【0040】
従って、本発明は、特に、シリコン材料、又は石英若しくは他のセラミック材料の切断操作又は他の機械加工により生じた、研磨剤又は研磨剤以外の、排出スラリー中に含まれた、又は、前記排出スラリーの濃縮留分内に含まれた、懸濁液を分離及び回収するための方法を提供し、このプロセスは、以下の操作を含む:
a)懸濁液と混和性を有する溶媒の混合物又は溶媒を用いた希釈化による、前記排出スラリー/濃縮留分からの懸濁液の抽出;
b)液体−固体分離による先の操作の結果として生じる希釈された懸濁液の処理;
c)溶媒又は溶媒の混合物を含む懸濁液の混合物により構成され、先の操作から得られた上澄みの回収;
前記連続する第一段階の操作a)−c)は、任意に、さらに1又は2回の段階だけ、向流的に、繰り返される。
d)懸濁液の回収を伴う、蒸留による第一段階の操作c)から得られた上澄みからの溶媒又は溶媒の混合物の分離;前記可能なさらなる段階の各々の操作c)から得られた上澄みが、先の段階の抽出操作a)に供給される;
e)排出スラリー/濃縮留分にもともと存在していた実質的に全ての固体を含むろ過ケークを生じさせるための、前記溶媒又は溶媒の混合物を含む最終段階の回収の操作c)からの残留相の希釈化及び得られた希釈化懸濁液のろ過。
【0041】
好ましくは、操作e)のろ過の後に、以下の操作が実施される:
f)微量の懸濁液を含む溶媒の混合物又は溶媒の回収を伴う、ろ過ケークの洗浄;
g)先の操作の結果として生じるろ過ケークの乾燥。
【0042】
向流的に供給される段階におけるプロセスのスキームに従う、特許請求の範囲に記載され、以下において報告されるプロセスの特定の例示的な実施形態を参照することでさらに明確となるように、操作e)のろ過により得られた液体の流れが、最終段階の抽出操作a)に供給される。
【0043】
液体−固体分離の操作b)が、密度差による分離手段、特に、遠心分離プロセスによって実施され、この遠心分離プロセスが、一方では、固体粒子の全量を含む濃縮生成品を、他方では、溶媒中で(又は溶媒の混合物中で)希釈化された懸濁液により構成された液相を提供する。しかしながら、このような密度差による分離が、好ましくは、全粒子の沈殿を得るために必要かつ十分な時間の間だけ実行される沈殿(sedimentation)又は沈殿(settling)の操作を通して実現される。この操作の後に、先の操作により得られた上澄みの回収の前記操作c)が続き、この操作c)が、懸濁液及び溶媒の混合物のオーバーフローによる回収の操作により構成される。
【0044】
提案されたプロセスにおいて、操作a)、b)c)が、最大2度まで繰り返され、沈殿を使用する好ましい解決策に従い、抽出−沈殿及びオーバーフローによる回収の全部で3つの操作をもたらす。抽出−沈殿−オーバーフローによる回収の繰り返しの操作の数が、その中に含まれる粉末から分離される懸濁流体の特性に応じて、また、懸濁流体の抽出のために使用される溶媒に応じて選択される。しかしながら、結局は、このような操作が何度繰り返されるかを示すパラメータは、オーバーフローによる最後の回収後に得られる懸濁液のろ過性であり、溶媒、粉末、最少量の懸濁剤によって構成される。
【0045】
本発明によるプロセスにおいて、全てのシリコンカーバイド粒子、シリコン微粒子、及び“摩耗材料(実質的には鉄)”微粒子に、それらのサイズによらず、完全な沈殿のために必要な時間を提供するように、沈殿時間が設定される。完全な沈殿が生じるために実験的に設定された時間が、1から24時間であり、1:3から1:20の懸濁液に対する溶媒の希釈比を使用する。
【0046】
溶媒を用いた希釈後の、排出スラリーのろ過性の特に有利な条件において(例えばPEG又は油である懸濁流体の特性及び懸濁液中の粒子のサイズに依存する)、密度差による液体−固体分離が、ろ過による液体−固体分離によって置換されうる。このろ過が、例えば、圧ろ器において、1ステップのみで実施され、また、ろ過ケークを洗浄し、懸濁流体を完全に回収し、最後にケークを乾燥させることが可能である。
【0047】
提案されたプロセスの溶媒を用いた抽出の操作a)において、溶媒又は溶媒の混合物の排出スラリー/濃縮留分に対する希釈比が、通常、2:1から10:1v/vの間に含まれ、好ましくは1:7と等しい。溶媒との混合に続く沈殿操作b)が、1から7時間の間の持続時間を有し、好ましくは、約4時間の持続時間である。
【0048】
以下においてさらに明確となるように、懸濁流体の抽出のための溶媒が、好ましくは、塩化メチレン(ジクロロメタン,DCMとしても知られている)であり、PEGベースの懸濁流体の処理及び油ベースの懸濁流体の処理の両方に適している。懸濁流体が油である場合、また、溶媒が、ペルクロロエチレン及びn−ヘキサンから選択されてよく、一方、懸濁流体が、ポリエチレングリコールである場合、溶媒に対する2つの追加的な好ましい選択肢は、エチルアセテート及び2−ブタノールである。
【0049】
1つのみの溶媒の代替案として、溶媒の混合物が、有利に使用されてよく、特に、塩化メチレンとトルエンの混合物であり、これらの特徴が以下において報告され、また、シクロヘキサンと塩化メチレンの混合物についても報告される。
【0050】
抽出、沈殿、及びオーバーフローによる回収の1つ、2つ、又は3つの段階を用いて実現される本発明によるプロセスにおいて、最後のオーバーフローによる回収が、反応器内に、低容量の残留懸濁流体を有し、固体を極めて多く含む溶媒−固体スラリーを残す;このスラリーが、いくらかの新しい溶媒と混合され、次に、存在する全固体のろ過による最終的な分離段階に供給される。
【0051】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によると、新たな溶媒を用いた最終段階の回収の操作c)から生じる残留相の前記の希釈化e)が実施され、溶媒(又は溶媒混合物)の排出スラリー/濃縮留分に対する希釈比が、2:1から10:1v/vの間に含まれ、好ましい比は、約7:1である。
【0052】
ろ過の後で、ケーク洗浄が実施され、溶媒及び最後の微量の懸濁流体が、回収され、最後に、ろ過ケークが、乾燥される。好ましくは、ろ過ケークの洗浄の前記操作f)が、プロセスに供給された排出スラリーの容積の約0.5倍に等しい量の溶媒(又は溶媒混合物)を用いて実施される。
【0053】
上記記載から明らかになるように、提案されたプロセスの目的は、一方で、精製された懸濁液を得て、他方では、懸濁液の残留物が全く存在しない乾燥粉末の状態の出発排出スラリー/濃縮スラッジ内に存在する全ての固体を得るために、全ての懸濁固体を完全に分離することである。これらの目的は、本発明に従う段階でのプロセスを使用することによって達成され、抽出−沈殿−オーバーフローによる回収の段階の数、及び各沈殿に対して加えられる溶媒の量が、排出スラリー/濃縮スラッジ中に存在する懸濁流体の特性及びオーバーフローによる最後の回収から生じる懸濁液のろ過性に応じて変化する。
【0054】
従って、極めて順応性のあるプロセスが生じ、液体−固体抽出の段階の数が、懸濁流体の粘度及び物理的−化学的特性、並びにスラリーのろ過性に応じて変化しうる。
【0055】
提案されたプロセスが、排出スラリーに加えて、周知のように、かなりの量の懸濁流体を含む半導体産業の機械加工操作及び太陽光発電エネルギー産業の類似の操作から生じる、例えば、遠心分離によって得られた各濃縮留分(スラッジ)に対して、同じように適応されてよい。
【0056】
さらに、シリコンへの機械加工操作が、切断ワイヤーに追加された研磨剤の使用を含まないが、いまだ油又はPEGベースの回収対象の冷却流体の存在下で実施されるこれらの場合に、このプロセスが適応されてもよい。この場合、回収される懸濁液から生じるスラリーの固体が、シリコン微粒子及び金属微粒子(切断ツールから生じる)によって構成されうる。
【0057】
実際には、その中に含まれる固体から懸濁流体を分離する目的で、提案された技術で上手く処理され、その結果、新たなスラリーの準備のためにそれを回収しうるスラリー/濃縮留分の概要は、以下の表に示される。
【0058】
【表1】

【0059】
スラリー中に含まれる固体から懸濁液を分離するために使用される溶媒の選択のために、以下の表に説明されるような各溶媒の特徴が考慮される。
【表2】

【0060】
上記に示されたデータに基づき、選択の基準が、以下の目的によって与えられる:
a)油ベース及びPEGベースのスラリーの両方からの懸濁流体抽出用として同一の溶媒を使用するために、溶媒が、油のような非極性液体及びPEGのような極性液体の両方との親和性を有さなければならない;
b)低可燃性の指数及び低毒性を有する溶媒が好ましい;
c)低沸点及び他の溶媒と等しい又は他の溶媒以下の蒸発時の潜熱を有する溶媒が好ましい。
【0061】
油ベース及びPEGベースのスラリーの両方を、同一の溶媒、同一のプロセス/装置で処理する目的で、他の入手可能な溶媒の特性の分析が、溶媒としての塩化メチレン(DCM)の使用の利便性を証明しており、一方、PEGをベースとしたスラリーの1つの処理に対し、(ただ一つの溶媒として)使用可能な溶媒が、DCMに加え、エチルアセテート及び2ブタノールである。油ベースのスラリーの1つの処理に対し及び1つのみの溶媒を使用する場合、使用可能な溶媒が、塩化メチレンに加え、ペルクロロエチレン及びn−ヘキサンである。
【0062】
1つのみの溶媒の代替物として、2つ又はそれ以上の適切にドーズされた溶媒の混合物を使用することの選択により(共−溶媒の技術)、懸濁流体自体の特性に基づいて懸濁流体の抽出のために使用される溶媒の特性を上手く調節することが可能となり、この結果、1つのみの純溶媒の使用に関して、懸濁流体抽出を改善する。純粋な塩化メチレンの使用の代替物が、例えば、シクロヘキサン及びDCMの混合物又はトルエン及びDCMの混合物である。
【0063】
共−溶媒の使用が、いくつかのさらなる貯蔵タンクを要求するという欠点を有するが、必要な溶媒の体積に関しても抽出−沈殿プロセスの優れた性能を提供する。
【0064】
以下の表に説明されている純溶媒の物理的特性の分析から開始することで、混合物中のトルエン及び塩化メチレンを使用することによって得られうる利点を証明することが可能である。
【0065】
【表3】

【0066】
例えば、1:3.7の体積比で2つの上記溶媒を混合することによって、以下の表に従う純粋なDCMについて異なる物理的特性を有する混合物が得られる:
−蒸発熱:84.45kcal/kgまで増加
−表面張力:トルエンと同様
−双極子モーメント:0.6−0.5(改善された)まで減少;混合物が、純粋なDCMよりも小さい極性であるが、例えばヘキサンよりも大きな極性である
−誘電率:DCMのそれに対して減少
−混合物の期待粘度:0.7cps。
【0067】
2つの溶媒は、混和性であり、従って、混合物におけるそれらの使用が、単純な蒸発に代え、排出時に3−4トレイを及び濃縮時において5−6トレイを有する蒸留塔を必要とする。
【0068】
混合物の可燃性が関係する限りにおいて、塩化メチレン中の放出された蒸気の濃縮の結果として、純粋なトルエンの可燃性が低下する。
【0069】
一般的に、純溶媒に代わる溶媒の混合物の使用を選択することで、処理される排出スラリーの特性に応じた抽出−沈殿プロセス及びろ過を最適化することが可能となる。
【0070】
本発明の特有の特徴が、その利点及び関連する操作の方式と同様に、単に例示目的のために示された以下の詳細な記載を参照してさらに明らかとなる。同様なことが、添付した図面にも示されている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の好ましい実施形態による、排出スラリー中に含まれる懸濁液を分離及び回収するためのプロセスの全体のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
A.懸濁液の向流抽出
図1のブロック図に示されているように、本発明によるプロセスが、向流での、抽出−沈殿−オーバーフローによる回収のn段階(nは1から3の範囲にある)で実施される。この場合、実施例では、全3段階について言及する。
【0073】
第1段階
抽出I,反応器R01:
排出スラリーが、反応器R02のオーバーフローによる回収によって生じる混合物と反応器R01で混合され、希釈比が、体積比で、排出スラリーの体積:溶媒の体積−1:2から1:10の範囲であり、排出スラリーを特徴づける懸濁液のタイプ及び使用される溶媒のタイプによって決まる。
【0074】
実施例の記載において、希釈比1:7を使用する好ましい解決策が考えられる。
【0075】
沈殿I,反応器R01:
1:7でそのように希釈された懸濁液が、懸濁液中の全固体粒子が、終端平衡速度に達し、懸濁液及び溶媒の混合物のオーバーフローによる回収が生じるレベル以下のゾーンに達することが出来るような時間の間、沈殿のためにそのままにされる。沈殿時間が、懸濁液(油又はPEGのいずれか)及び使用される溶媒(例えば、DCM、又は共−溶媒のヘキサン o 混合物)に応じて変化し、1時間から7時間の間であってよく、通常、約4時間である。
【0076】
オーバーフローによる回収I,反応器01:
この操作が、反応器R01中に沈殿した希釈化懸濁液の上澄みを回収するステップにより構成され;上澄みが、収集タンク(懸濁液+溶媒)D1に供給され、次に、99%以上の収率を有して作動する、蒸留による懸濁液から溶媒を分離するための分離システムに供給される。
【0077】
第1のオーバーフローによる回収を形成する液体中に存在する懸濁剤の量が、約6−7%である。
【0078】
回収されたクリアな相の体積が、反応器R01に供給された排出スラリーの体積の7倍と等しい。
【0079】
第2段階
抽出II,反応器R02:
オーバーフローIによる回収で残されたスラリーの残りが(その体積は、抽出Iのための反応器中に取り込まれた排出スラリーの体積と等しい)、反応器R02に送られ、次に、同じく、体積比で約1:7と等しい希釈比で、オーバーフローIII(反応器R03)による回収から生じる溶媒−懸濁液混合物と混合される。
【0080】
沈殿II,反応器R02:
そのように1:7で希釈化された懸濁液が、1時間から7時間の間に含まれる時間の間、沈殿のためにそのままにされ、通常、約4時間である。
【0081】
オーバーフローIIによる回収,反応器R02:
この操作が、反応器R02中に沈殿した希釈化懸濁液の上澄みを回収するステップにより構成され;上澄みが、収集タンクD2に供給され、次に、反応器R01中の沈殿に供給される。
【0082】
オーバーフローによる第1の回収を形成する液体中に存在する懸濁剤の量が、約2−3%である。
【0083】
回収されたクリアな相の体積が、反応器R01に供給された排出スラリーの体積の7倍と等しい。
【0084】
第3段階
抽出III,反応器R03:
オーバーフローIIによる回収で残されたスラリーの残りが(その体積は、抽出Iのための反応器中に取り込まれた排出スラリーの体積と等しい)、反応器R03に送られ、次に、同じく、体積比で約1:7と等しい一定の希釈比で、ろ過操作から生じる溶媒−懸濁液混合物と混合される。
【0085】
沈殿III,反応器R03:
懸濁液中の固体粒子が、終端平衡速度に達し、オーバーフローIIIによる回収が生じるレベル以下のゾーンに達することが出来るような時間の間、そのように再懸濁された固体が、沈殿のためにそのままにされる。沈殿時間が、1時間から7時間の間であってよく、通常、約4時間である。
【0086】
オーバーフローIIIによる回収,反応器R03:
この操作が、反応器R03中に沈殿した希釈化懸濁液の上澄みを回収するステップにより構成され;上澄みが、収集タンクD3に供給され、次に、反応器R02中の沈殿に供給される。
【0087】
オーバーフローによる第1の回収を形成する液体中に存在する懸濁剤の量が、約0.5%である。
【0088】
回収されたクリアな相の体積が、反応器R01に供給された排出スラリーの体積の7倍と等しい。
【0089】
B)ろ過
溶媒中に分散した固体粒子により構成され、0.5−1%以下の懸濁液の残留率を有する反応器R03中に残された懸濁液が、タンクD04に送られ、その体積の約7倍と等しい純溶媒量で混合され、次に、ろ過操作に送られる。出発懸濁液の極度の希釈により懸濁液が低粘度となる結果として、後者が、かなり急速である。
【0090】
次に、ろ過ケークが、少量の純溶媒で洗浄される(約0.5V);この操作により、固体に関して、懸濁剤の残留物含有量が、約数十ppmに至る。
【0091】
最後に、ケークの洗浄に使用される溶媒が、それ自体の抽出から生じる液体に追加され、次に、反応器R03中の抽出に送られる。
【0092】
排出懸濁液中に存在する懸濁液の回収の最終的な収率が、99%以上になることが想定される。
【0093】
固体留分:
ろ過ケークが、出発排出スラリー/濃縮スラッジ中に存在する全ての固体成分により構成され、洗浄溶媒の残りが存在する結果として濡れる。
【0094】
従って、この理由のため、ろ過ケークが、乾燥操作に送られ、固体構成物質を形成する乾燥粉末がこれから得られ、一方、溶媒蒸気が、濃縮及び回収に送られる。
【0095】
液体留分:
液体留分が、0.5%以下の懸濁剤の残留物含有量で、基本的に溶媒から構成され、ろ過から、この留分が、タンクD5に送られ、ここから、反応器R03に沈殿のために送られる。
【0096】
本発明は、そのいくつかの具体的な実施形態を特に参照して開示されているが、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を逸脱することなく修正及び変更が当業者によりなされうると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出スラリー中に含まれる又は前記排出スラリーの濃縮留分中に含まれる懸濁液を分離及び回収するための方法であって、
前記排出スラリーは、研磨剤又は研磨剤以外であり、
前記排出スラリーは、シリコン材料、又は石英若しくは他のセラミック材料の切断操作又は他の機械加工により生じ、
前記方法が、
a)前記懸濁液と混和性を有する溶媒の混合物又は溶媒を用いた希釈化による、前記排出スラリー/濃縮留分から前記懸濁液を抽出するステップ;
b)液体−固体分離による先の操作の結果として生じる希釈された懸濁液を処理するステップ;
c)前記溶媒又は前記溶媒の混合物を含む前記懸濁液の混合物により構成され、先の操作から得られた上澄みを回収するステップ;
を含み、
前記連続する第1段階の操作a)−c)は、任意に、さらに1又は2回の段階だけ、向流的に、繰り返され、
さらに、
d)前記懸濁液の回収を伴う、蒸留による第1段階の前記操作c)から得られる前記上澄みから前記溶媒又は溶媒の混合物を分離するステップであって、前記可能なさらなる段階の各々の前記操作c)から得られた前記上澄みが、先の段階の抽出操作a)に供給されるステップ;
e)前記排出スラリー/濃縮留分に最初から存在していた実質的に全ての固体を含むろ過ケークを生じさせるために、前記溶媒又は前記溶媒の混合物を用いて最終段階の回収の前記操作c)からの残留相を希釈化し、得られた希釈された前記懸濁液をろ過するステップ;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記操作e)のろ過するステップの後に、
f)微量の懸濁液を含む前記溶媒の混合物又は前記溶媒の回収を伴う、ろ過ケークを洗浄するステップ;
g)先の操作の結果として生じる前記ろ過ケークを乾燥するステップ;
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記操作e)のろ過するステップにより得られる液相が、最終段階の前記操作a)の抽出するステップに供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記操作b)の液体−固体分離が、密度差による分離であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記操作b)の密度差による分離が、遠心分離であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記操作b)の密度差による分離が、沈殿であり、先の操作により得られた前記操作c)の上澄みを回収するステップが、オーバーフローによる回収であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記操作b)の液体−固体分離が、ろ過であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記操作a)において、前記排出スラリー/濃縮留分に対する前記溶媒又は前記溶媒の混合物の希釈比が、2:1から10:1v/vの間に含まれることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記希釈比が、約7:1v/vであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、塩化メチレンであることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記懸濁液が、油であり、
前記溶媒が、塩化メチレン、ペルクロロエチレン及びn−ヘキサンから選択されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記懸濁液が、ポリエチレングリコールであり、
前記溶媒が、塩化メチレン、エチルアセテート及び2−ブタノールから選択されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒又は前記溶媒の混合物が、塩化メチレン及びトルエンの混合物、又は、シクロヘキサン及び塩化メチレンの混合物であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記操作b)の沈殿が、1から7時間の間に含まれる持続時間を有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記操作b)の沈殿が、約4時間の持続時間を有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒又は前記溶媒の混合物を用いた最終段階の回収の前記操作c)から生じる残留相を希釈化する前記ステップe)が、2:1から10:1v/vの間に含まれる前記排出スラリー/濃縮留分に対する前記溶媒又は前記溶媒の混合物の希釈比で、実行されることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記希釈比が、約7:1v/vであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ろ過ケークを洗浄する前記操作f)が、本方法に供給された前記排出スラリーの体積の約0.5倍に等しい量の前記溶媒又は前記溶媒の混合物を用いて実施されることを特徴とする請求項2から17のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−509187(P2011−509187A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540229(P2010−540229)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/IT2008/000789
【国際公開番号】WO2009/084068
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(510178138)
【Fターム(参考)】