説明

シーケンス試験装置及びシーケンス試験方法

【課題】被試験端末のレイテンシをユーザに容易に識別させることができるシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法を提供する。
【解決手段】シーケンス試験装置40は、基準レイテンシを設定するレイテンシ設定部41と、被試験端末としてのノードA10、ノードB20、ノードC30の実レイテンシを取得する実レイテンシ取得部43と、基準レイテンシと実レイテンシとの差分を示す差分レイテンシを算出する差分算出部45と、差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値を設定するしきい値設定部46と、差分レイテンシを識別表示する表示条件を設定する表示条件設定部48と、しきい値に基づいて差分レイテンシを識別表示する表示部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーケンス試験装置及びシーケンス試験方法に関し、例えば、携帯電話、モバイル端末等の通信端末を所定の通信プロトコルに基づいたシーケンスで試験するシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の通信端末を新たに開発した場合、この開発した通信端末が実際に使用される環境で正常に動作するか否かを試験する必要がある。しかしながら、この新規に開発された通信端末と既に稼働中の実際の基地局との間で各種の試験用の通信情報を送受信して、この新規に開発された通信端末が正常に動作するか否かを試験することは非常に困難である。
【0003】
そこで、新規に開発された通信端末を、実際の基地局の機能を有する擬似基地局装置に接続して、通信端末と擬似基地局装置との間で各種の通信情報を送受信して、新規に開発された通信端末が正常に動作するか否かの試験を実施する試験装置が知られている。この種の試験装置における機能の1つとして、被試験端末としての通信端末と擬似基地局装置との間で送受信される各種の通信情報のログ情報を取得してトレース情報として表示器に表示するトレース機能がある。このトレース機能を利用して、通信情報の詳細な時系列的な複数のログ情報をトレース情報として表示出力することによって、被試験端末が正常に動作しなかった場合における異常の発生要因の究明が容易になる。
【0004】
一般に、被試験端末に対する試験項目は多岐に亘るので、被試験端末と擬似基地局装置との間で試験用に送受信される通信情報は膨大な数になり、この通信情報のログ情報も膨大な数となる。しかしながら、従来の試験装置では、試験用に送受信される通信情報の膨大なログ情報を時系列的に出力するのみであるので、被試験端末が正常に動作しなかった場合における異常とみなされるログ情報を簡単に特定できないという課題があった。
【0005】
この課題を解決するものとして、例えば、特許文献1に開示された擬似基地局装置が知られている。この擬似基地局装置は、少なくとも一部のログ情報に含まれる抽出情報を指定する抽出情報指定手段と、指定された抽出情報を有するログ情報をトレース情報から抽出するログ情報抽出手段と、表示器に表示されたトレース情報を構成する複数のログ情報のうちログ情報抽出手段で抽出されたログ情報に対してフィルタマーカを付加するフィルタマーカ表示手段と、を備えている。この構成により、従来の擬似基地局装置は、表示器に表示されたトレース情報を構成する複数のログ情報の中から異常のログ情報を容易に特定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−174173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたものでは、異常のログ情報を容易に特定することができるものの、被試験端末がメッセージを受信してからそのメッセージに関する処理を完了するまでの時間であるレイテンシをユーザに容易に識別させることはできず、その改善が求められていた。
【0008】
具体的には、特許文献1に開示されたものは、例えば、図10に示すように通信結果を表示する。すなわち、図10において、ノードA、ノードB及びノードCの間において送受信されたメッセージであるMsg1〜6が送信時刻に対応して表示されているが、この表示では、どのノードの、どのメッセージの送出に時間を要したかをユーザに容易に識別させることができないという課題があった。その対策として、例えば、図11に示すように、メッセージの表示間隔を送信時刻の間隔に比例させて表示させることもできるが、表示画面に無駄な領域が発生してしまい、膨大な数となる通信情報の表示には適さないという課題があった。
【0009】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、被試験端末のレイテンシをユーザに容易に識別させることができるシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係るシーケンス試験装置は、予め定められた通信プロトコルのメッセージを送受信するシーケンスを実行する通信手段(10、20、30)に対して試験を行うシーケンス試験装置(40)であって、前記各通信手段がメッセージを受信してから前記メッセージに関する処理を完了するまでの時間であるレイテンシの理想値を前記通信手段ごとに基準レイテンシとして設定するレイテンシ設定手段(41)と、前記各通信手段の通信時における実際のレイテンシである実レイテンシを前記通信手段ごとに取得する実レイテンシ取得手段(43)と、前記基準レイテンシと前記実レイテンシとの差分を示す差分レイテンシを算出する差分算出手段(45)と、前記差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値を設定するしきい値設定手段(46)と、前記しきい値に基づいて前記差分レイテンシを識別表示する表示手段(50)と、を備えた構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の請求項1に係るシーケンス試験装置は、差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値に基づいて差分レイテンシを識別表示するので、被試験端末としての通信手段のレイテンシをユーザに容易に識別させることができる。
【0012】
本発明の請求項2に係るシーケンス試験装置は、前記差分レイテンシを識別表示する表示条件を設定する表示条件設定手段(48)を備え、前記表示条件設定手段は、予め定められたアイコンによる識別表示又は予め定められた表示色による識別表示の表示条件を設定するものであり、前記表示手段は、前記表示条件設定手段によって設定された表示条件に基づいて前記差分レイテンシを識別表示するものである構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の請求項2に係るシーケンス試験装置は、アイコン又は表示色による識別表示の表示条件を設定することができる。その結果、本発明の請求項2に係るシーケンス試験装置は、被試験端末としての通信手段のレイテンシをユーザに容易に識別させることができる。
【0014】
本発明の請求項3に係るシーケンス試験方法は、予め定められた通信プロトコルのメッセージを送受信するシーケンスを実行する通信手段に対して試験を行うシーケンス試験方法であって、前記各通信手段がメッセージを受信してから前記メッセージに関する処理を完了するまでの時間であるレイテンシの理想値を前記通信手段ごとに基準レイテンシとして設定するレイテンシ設定ステップと、前記各通信手段の通信時における実際のレイテンシである実レイテンシを前記通信手段ごとに取得する実レイテンシ取得ステップと、前記基準レイテンシと前記実レイテンシとの差分を示す差分レイテンシを算出する差分算出ステップと、前記差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値を設定するしきい値設定ステップと、前記しきい値に基づいて前記差分レイテンシを識別表示する表示ステップと、を含む構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項3に係るシーケンス試験方法は、差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値に基づいて差分レイテンシを識別表示するので、被試験端末としての通信手段のレイテンシをユーザに容易に識別させることができる。
【0016】
本発明の請求項4に係るシーケンス試験方法は、前記差分レイテンシを識別表示する表示条件を設定する表示条件設定ステップを含み、前記表示条件設定ステップは、予め定められたアイコンによる識別表示又は予め定められた表示色による識別表示の表示条件を設定するものであり、前記表示ステップにおいて、前記表示条件設定ステップで設定された表示条件に基づいて前記差分レイテンシを識別表示する構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項4に係るシーケンス試験方法は、アイコン又は表示色による識別表示の表示条件を設定することができる。その結果、本発明の請求項4に係るシーケンス試験装置は、被試験端末としての通信手段のレイテンシをユーザに容易に識別させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、被試験端末のレイテンシをユーザに容易に識別させることができるという効果を有するシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムのブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムの表示条件の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムの第1の識別表示例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムの第2の識別表示例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムの表示条件の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムの第3の識別表示例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムの第4の識別表示例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムの第5の識別表示例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態の他の態様におけるシーケンス試験システムのブロック構成図である。
【図10】従来のシーケンス試験結果を示す図である。
【図11】従来のシーケンス試験においてメッセージの表示間隔を送信時刻の間隔に比例させて表示させた場合の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明のシーケンス試験装置を、複数のノードを含むシーケンス試験システムに適用した例を挙げて説明する。このシーケンス試験システムは、例えば、携帯電話、モバイル端末等の通信端末を所定の通信プロトコルに基づいたシーケンスで通信試験することができるものである。本実施形態では、シーケンス試験システムが、有線の通信ネットワークに接続された複数のノードに対して通信プロトコルに基づいたシーケンスで通信試験を行うものとして説明する。
【0021】
まず、本実施形態におけるシーケンス試験システムの構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態におけるシーケンス試験システム100は、被試験装置に対して試験を行うためのノードA10と、被試験装置としてのノードB20及びノードC30を備えている。なお、ノードA10、ノードB20、ノードC30は、図示を省略したが、各ノード全体の動作を制御するCPU及びこのCPUを機能させるためのプログラムを記憶するROM、RAM等で構成された制御回路を備えている。
【0023】
ノードA10とノードB20との間には、通信ケーブル12が接続されている。ノードB20とノードC30との間には、両者間の通信信号を取り出すタップ60が設けてある。ノードB20とタップ60との間には通信ケーブル13、タップ60とノードC30との間には通信ケーブル14が接続されている。ここで、ノードA10、ノードB20及びノードC30は、本発明に係る通信手段を構成する。
【0024】
ノードA10は、シーケンス試験装置40、通信装置11を備えている。シーケンス試験装置40は、レイテンシ設定部41、レイテンシ記憶部42、実レイテンシ取得部43、実レイテンシ記憶部44、差分算出部45、しきい値設定部46、しきい値記憶部47、表示条件設定部48、表示処理部49、表示部50を備えている。このシーケンス試験装置40は、通信装置11、ノードB20及びノードC30に対して所定の通信プロトコルに基づいたシーケンス試験を行うものである。
【0025】
レイテンシ設定部41は、あるメッセージを受信してからそのメッセージに関する処理を完了するまでの時間であるレイテンシの理想値をノードごとにユーザが設定するため操作するものである。以下、レイテンシ設定部41によってノードごとに設定されたレイテンシを基準レイテンシという。なお、レイテンシ設定部41は、本発明に係る基準レイテンシ設定手段を構成する。
【0026】
レイテンシ記憶部42は、例えばハードディスクドライブで構成され、ユーザが設定した基準レイテンシのデータを記憶するようになっている。
【0027】
実レイテンシ取得部43は、通信装置11を介して、ノードA10とノードB20との間のメッセージをログ情報として取得し、取得したログ情報からノードA10及びノードB20の通信時における実際のレイテンシである実レイテンシのデータを取得するようになっている。このログ情報は、通信装置11又はノードB20が送信時に作成したタイムスタンプ情報を含む。また、実レイテンシ取得部43は、タップ60を介して、ノードB20とノードC30との間のメッセージをログ情報として取得し、取得したログ情報からノードB20及びノードC30の実レイテンシのデータを取得するようになっている。このログ情報は、ノードB20又はノードC30が送信時に作成したタイムスタンプ情報を含む。なお、実レイテンシ取得部43は、本発明に係る実レイテンシ取得手段を構成する。
【0028】
実レイテンシ記憶部44は、例えばハードディスクドライブで構成され、実レイテンシ取得部43が取得したログ情報及び実レイテンシのデータを記憶するようになっている。
【0029】
差分算出部45は、レイテンシ記憶部42から基準レイテンシのデータを読み出すとともに、実レイテンシ記憶部44からログ情報及び実レイテンシのデータを読み出して、基準レイテンシと実レイテンシとの差分(以下「差分レイテンシ」という。)を算出するようになっている。また、差分算出部45は、ログ情報及び差分レイテンシのデータを表示処理部49に出力するようになっている。なお、差分算出部45は、本発明に係る差分算出手段を構成する。
【0030】
しきい値設定部46は、差分算出部45が算出した差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値を設定するためユーザが操作するものである。なお、しきい値設定部46は、本発明に係るしきい値設定手段を構成する。
【0031】
しきい値記憶部47は、例えばハードディスクドライブで構成され、しきい値設定部46によって設定されたしきい値のデータを記憶するようになっている。
【0032】
表示条件設定部48は、差分レイテンシを複数の段階に分類して表示部50に表示するための表示条件を設定するためユーザが操作するものである。例えば、表示条件設定部48は、図2に示すような表示条件を設定するものである。図2は、差分レイテンシを5段階で分類するしきい値の例と、各しきい値に対応させて個数の異なる砂時計のアイコンを表示させる表示例を示している。すなわち、差分レイテンシが、0秒以上0.5秒未満のときは砂時計のアイコン表示はせず、0.5秒以上1秒未満のときは1個の砂時計のアイコン、1秒以上10秒未満のときは2個の砂時計のアイコン、10秒以上60秒未満のときは3個の砂時計のアイコン、60秒以上のときは4個の砂時計のアイコンを表示する表示設定が行われている。
【0033】
図1に戻り、表示処理部49は、差分算出部45からログ情報及び実レイテンシのデータを受け取り、しきい値設定部46によって設定されたしきい値と、表示条件設定部48によって設定された表示条件とに基づいて、ログ情報及び実レイテンシのデータを識別表示する処理を行って、その信号を表示部50に出力するようになっている。
【0034】
表示部50は、例えば液晶ディスプレイで構成され、ノードA10、ノードB20及びノードC30のログ情報及び実レイテンシのデータを識別表示するようになっている。なお、表示部50は、本発明に係る表示手段を構成する。
【0035】
通信装置11は、予め設定された通信試験プログラムに基づいてノードB20と通信するようになっている。また、通信装置11は、ノードA10とノードB20との間のログ情報を取得し、取得したログ情報を実レイテンシ取得部43に出力するようになっている。
【0036】
なお、前述したレイテンシ設定部41、しきい値設定部46及び表示条件設定部48は、例えば、各設定値を設定するためのキーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等で構成され、各設定値を設定するための設定画面を表示部50に表示するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態におけるシーケンス試験システム100の動作について説明する。
【0038】
レイテンシ設定部41をユーザが操作することにより、基準レイテンシが設定される(レイテンシ設定ステップ)。例えば、データの転送要求のリクエストメッセージを受信してから、そのリクエストメッセージの結果が送信されるまでの時間が基準レイテンシとして設定される。レイテンシ設定部41によって設定された基準レイテンシのデータは、レイテンシ記憶部42によって記憶される。
【0039】
また、しきい値設定部46をユーザが操作することにより、差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値が設定される(しきい値設定ステップ)。しきい値設定部46によって設定されたしきい値のデータは、しきい値記憶部47によって記憶される。
【0040】
また、表示条件設定部48をユーザが操作することにより、差分レイテンシを複数の段階に分類して表示部50に表示するための表示条件が設定される(表示条件設定ステップ)。
【0041】
通信装置11を備えたノードA10、ノードB20及びノードC30は、それぞれ、予め定められた通信プロトコルに基づいてメッセージの送受信を行う。このメッセージの送受信中において、通信装置11はノードA10とノードB20との間のメッセージをログ情報として取得して実レイテンシ取得部43に出力し、タップ60はノードB20とノードC30との間のメッセージをログ情報として取得して実レイテンシ取得部43に出力する。
【0042】
実レイテンシ取得部43は、ノードA10とノードB20との間のログ情報からノードA10及びノードB20の実レイテンシのデータを取得する(実レイテンシ取得ステップ)。また、実レイテンシ取得部43は、ノードB20とノードC30との間のログ情報からノードB20及びノードC30の実レイテンシのデータを取得する(実レイテンシ取得ステップ)。
【0043】
実レイテンシ記憶部44は、実レイテンシ取得部43が取得したログ情報及び実レイテンシのデータを記憶する。
【0044】
差分算出部45は、レイテンシ記憶部42から基準レイテンシのデータを読み出す。また、差分算出部45は、実レイテンシ記憶部44からログ情報及び実レイテンシのデータを読み出す。さらに、差分算出部45は、基準レイテンシと実レイテンシとの差分である差分レイテンシをノードごとに算出する(差分算出ステップ)。そして、差分算出部45は、ログ情報及び差分レイテンシのデータを表示処理部49に出力する。
【0045】
表示処理部49は、差分算出部45からログ情報及び差分レイテンシのデータを入力する。また、表示処理部49は、しきい値設定部46によって設定されたしきい値のデータをしきい値記憶部47から読み出す。また、表示処理部49は、表示条件設定部48によって設定された表示条件を読み出す。そして、表示処理部49は、しきい値のデータ及び表示条件に基づいてログ情報及び実レイテンシのデータを識別表示する処理を行って、その信号を表示部50に出力する。
【0046】
表示部50は、ログ情報及び実レイテンシのデータを識別表示する(表示ステップ)。
【0047】
次に、差分レイテンシの表示例について説明する。なお、説明を簡単にするため、各メッセージ(図中"Msg"で示す。)の送信時刻と受信時刻は等しいものとする。
【0048】
(第1の識別表示例)
第1の識別表示例を図3に示す。この識別表示例は、図2に示した表示条件に基づくものであって、ノードA10、ノードB20及びノードC30が通信試験において送受信するメッセージを表示部50の画面に表示した一例を示している。図3において、画面左側には各メッセージの送信時刻を示す送信時刻表示エリア51が設けられ、画面右側には各ノードにおける差分レイテンシを示す差分レイテンシ表示エリア52が設けられている。また、ノードA10、ノードB20及びノードC30に設定された基準レイテンシ(図中"L"で示す。)は、それぞれ、0.1秒、0.1秒及び0.3秒とする。
【0049】
まず、図3に示すように、ノードA10は、送信時刻"0.000"秒において、Msg1をノードB20に送信する。
【0050】
ノードB20は、受信したMsg1に応答してMsg2をノードC30に送信する。ノードB20において、Msg2を送信した送信時刻は"0.500"秒であり、実レイテンシは0.5秒である。ノードB20の基準レイテンシは0.1秒であるので差分レイテンシは0.4秒である。この場合、図2に示した表示条件により、砂時計のアイコンは表示されない。
【0051】
ノードC30は、受信したMsg2に応答してMsg3をノードB20に送信する。ノードC30において、Msg3を送信した送信時刻は"1.003"秒であり、実レイテンシは0.503秒である。ノードC30の基準レイテンシは0.3秒であるので差分レイテンシは0.203秒である。この場合、図2に示した表示条件により、砂時計のアイコンは表示されない。
【0052】
ノードB20は、受信したMsg3に応答してMsg4をノードA10に送信する。ノードB20において、Msg4を送信した送信時刻は"10.002"秒であり、実レイテンシは8.999秒である。ノードB20の基準レイテンシは0.1秒であるので差分レイテンシは8.899秒である。この場合、図2に示した表示条件により、送信時刻表示エリア51に砂時計のアイコンが2個表示される。
【0053】
ノードA10は、受信したMsg4に応答してMsg5をノードB20に送信する。ノードA10において、Msg5を送信した送信時刻は"11.006"秒であり、実レイテンシは1.004秒である。ノードA10の基準レイテンシは0.1秒であるので差分レイテンシは0.904秒である。この場合、図2に示した表示条件により、送信時刻表示エリア51に砂時計のアイコンが1個表示される。
【0054】
ノードB20は、受信したMsg5に応答してMsg6をノードA10に送信する。ノードB20において、Msg5を送信した送信時刻は"30.002"秒であり、実レイテンシは18.996秒である。ノードB20の基準レイテンシは0.1秒であるので差分レイテンシは18.896秒である。この場合、図2に示した表示条件により、送信時刻表示エリア51に砂時計のアイコンが3個表示される。
【0055】
以上のように、第1の識別表示例においてシーケンス試験装置40は、しきい値に応じて定めた砂時計のアイコンの個数により、どのノードの、どのメッセージの送出に時間を要したかをユーザに容易に識別させることができる。
【0056】
(第2の識別表示例)
第2の識別表示例を図4に示す。この識別表示例は、第1の識別表示例(図3参照)と同様の通信試験を行って、差分レイテンシが10秒以上60秒未満のもののみを表示部50の画面に表示させたものである。この結果は、表示条件設定部48での表示条件の設定において実現することができるようになっている。すなわち、表示条件設定部48は、ユーザが所望する表示条件に該当するメッセージのみを選択して表示部50に表示させるフィルタ機能を備えるものである。
【0057】
以上のように、第2の識別表示例においてシーケンス試験装置40は、表示条件設定部48のフィルタ機能により、ユーザが所望する表示条件に該当するメッセージのみをユーザに容易に識別させることができる。
【0058】
(第3の識別表示例)
第3の識別表示例は、図5に示すような表示条件に基づくものである。図5は、差分レイテンシを5段階で分類するしきい値の例と、各しきい値に対応させた色による表示例を示している。すなわち、差分レイテンシが、0秒以上0.5秒未満のときは白色、0.5秒以上1秒未満のときは黄色、1秒以上10秒未満のときは緑色、10秒以上60秒未満のときは青色、60秒以上のときは黒色を用いて表示する表示設定が行われる。
【0059】
具体的には、図6に示すように試験結果が表示部50に表示される。すなわち、図6において、Msg1とMsg2との間の差分レイテンシは0.901秒であるので、表示部50は、Msg1を受信してMsg2を送信したノードB20の位置に黄色の矩形アイコン53aを表示する。
【0060】
また、Msg2とMsg3との間の差分レイテンシは0.199秒であるので、表示部50は、Msg2を受信してMsg3を送信したノードC30の位置に白色の矩形アイコン53bを表示する。
【0061】
また、Msg3とMsg4との間の差分レイテンシは8.403秒であるので、表示部50は、Msg3を受信してMsg4を送信したノードB20の位置に緑色の矩形アイコン53cを表示する。
【0062】
また、Msg4とMsg5との間の差分レイテンシは19.897秒であるので、表示部50は、Msg4を受信してMsg5を送信したノードA10の位置に青色の矩形アイコン53dを表示する。
【0063】
以上のように、第3の識別表示例においてシーケンス試験装置40は、しきい値に応じて定めた矩形アイコンの色により、どのノードの、どのメッセージの送出に時間を要したかをユーザに容易に識別させることができる。
【0064】
(第4の識別表示例)
図7に示すように、第4の識別表示例は、図5に示した表示条件に基づくものであって、表示部50の画面左側に設けた矩形アイコン表示エリア54に矩形アイコンを表示させるものである。この矩形アイコン表示エリア54の表示は、表示条件設定部48での表示条件の設定において実現することができるようになっている。
【0065】
例えば、図7において、Msg1とMsg2との間の差分レイテンシは0.901秒であるので、表示部50は、Msg1の表示位置とMsg2の表示位置との間に対応する矩形アイコン表示エリア54内に黄色の矩形アイコン53aを表示する。
【0066】
以上のように、第4の識別表示例においてシーケンス試験装置40は、しきい値に応じて定めた色の矩形アイコンを矩形アイコン表示エリア54に表示させることにより、どのノードの、どのメッセージの送出に時間を要したかをユーザに容易に識別させることができる。
【0067】
(第5の識別表示例)
図8に示すように、第5の識別表示例は、図5に示した表示条件に基づくものであって、表示部50の画面上に表示されるメッセージの方向を示す矢印に矩形アイコン55a〜55dを重ねて表示させるものである。この表示は、表示条件設定部48での表示条件の設定において実現することができるようになっている。
【0068】
例えば、図8において、Msg3とMsg4との間の差分レイテンシは8.403秒であるので、表示部50は、Msg4の方向を示す矢印に緑色の矩形アイコン55cを重ねて表示する。
【0069】
以上のように、第5の識別表示例においてシーケンス試験装置40は、しきい値に応じて定めた色の矩形アイコンをメッセージの方向を示す矢印に重ねて表示させることにより、どのノードの、どのメッセージの送出に時間を要したかをユーザに容易に識別させることができる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態におけるシーケンス試験装置40は、差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値に基づいて差分レイテンシを識別表示するので、被試験端末のレイテンシをユーザに容易に識別させることができる。
【0071】
なお、前述の実施の形態において、シーケンス試験装置40をノードA10の内部に設ける構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シーケンス試験装置40とノードA10とを別体とし、シーケンス試験装置40が、ノードA10とノードB20との間のログ情報を取得できる構成とすれば前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0072】
(他の態様1)
本発明は前述の実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。例えば、前述の実施形態では、有線の通信ネットワークに接続された複数のノードに対してシーケンス試験を行う構成としたが、これに限定されない。例えば、図9に示すような構成でシーケンス試験を行うこともできる。
【0073】
図9に示したシーケンス試験システム200は、ノードA70、ノードB80を備えている。ノードA70は、シーケンス試験装置40、通信装置71を備えている。なお、シーケンス試験装置40の構成説明は既に述べたので省略する。また、ノードA70、ノードB80は、本発明に係る通信手段を構成する。
【0074】
通信装置71とノードB80とは、互いにRF信号で無線通信する構成を有し、それぞれ、アンテナ72及び81を備えている。なお、アンテナ72、81の代わりに、通信装置71とノードB80との間を同軸ケーブルで接続し、RF信号をやりとりする構成であってもよい。この構成例の場合、具体的には、通信装置71は、移動体通信システムの基地局を模擬する擬似基地局である。また、試験対象であるノードB80は、移動体通信システムの移動体通信端末であり、例えば、携帯電話やモバイル端末である。
【0075】
前述の構成により、シーケンス試験システム200は、ノードB80に対し、無線通信の通信プロトコルに基づいたシーケンス試験を行ってログ情報を取得する構成とすることにより、差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値に基づいて差分レイテンシを識別表示することができる。したがって、シーケンス試験システム200は、被試験端末のレイテンシをユーザに容易に識別させる。
【0076】
(他の態様2)
また、前述の実施形態では、本発明に係る通信手段としてノードA10、ノードB20及びノードC30を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、所定のシーケンスで動作するものに適用することができる。例えば、本発明は、3GPP(Third Generation Partnership Project)の規格に基づいた多階層のプロトコルスタックの各階層(物理層、媒体アクセス制御層、無線リンク制御層等)を通信手段として、各層間の通信においても適用することができ、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係るシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法は、被試験端末のレイテンシをユーザに容易に識別させることができるという効果を有し、携帯電話、モバイル端末等の通信端末を所定の通信プロトコルに基づいたシーケンスで試験するシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法等として有用である。
【符号の説明】
【0078】
10、70 ノードA(通信手段)
11、71 通信装置
12、13、14 通信ケーブル
20、80 ノードB(通信手段)
30 ノードC
40 シーケンス試験装置
41 レイテンシ設定部(レイテンシ設定手段)
42 レイテンシ記憶部
43 実レイテンシ取得部(実レイテンシ取得手段)
44 実レイテンシ記憶部
45 差分算出部(差分算出手段)
46 しきい値設定部(しきい値設定手段)
47 しきい値記憶部
48 表示条件設定部(表示条件設定手段)
49 表示処理部
50 表示部(表示手段)
51 送信時刻表示エリア
52 差分レイテンシ表示エリア
53a〜53d、55a〜55d 矩形アイコン
54 矩形アイコン表示エリア
60 タップ
72、81 アンテナ
100、200 シーケンス試験システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた通信プロトコルのメッセージを送受信するシーケンスを実行する通信手段(10、20、30)に対して試験を行うシーケンス試験装置(40)であって、
前記各通信手段がメッセージを受信してから前記メッセージに関する処理を完了するまでの時間であるレイテンシの理想値を前記通信手段ごとに基準レイテンシとして設定するレイテンシ設定手段(41)と、
前記各通信手段の通信時における実際のレイテンシである実レイテンシを前記通信手段ごとに取得する実レイテンシ取得手段(43)と、
前記基準レイテンシと前記実レイテンシとの差分を示す差分レイテンシを算出する差分算出手段(45)と、
前記差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値を設定するしきい値設定手段(46)と、
前記しきい値に基づいて前記差分レイテンシを識別表示する表示手段(50)と、を備えたことを特徴とするシーケンス試験装置。
【請求項2】
前記差分レイテンシを識別表示する表示条件を設定する表示条件設定手段(48)を備え、
前記表示条件設定手段は、予め定められたアイコンによる識別表示又は予め定められた表示色による識別表示の表示条件を設定するものであり、
前記表示手段は、前記表示条件設定手段によって設定された表示条件に基づいて前記差分レイテンシを識別表示するものであることを特徴とする請求項1に記載のシーケンス試験装置。
【請求項3】
予め定められた通信プロトコルのメッセージを送受信するシーケンスを実行する通信手段に対して試験を行うシーケンス試験方法であって、
前記各通信手段がメッセージを受信してから前記メッセージに関する処理を完了するまでの時間であるレイテンシの理想値を前記通信手段ごとに基準レイテンシとして設定するレイテンシ設定ステップと、
前記各通信手段の通信時における実際のレイテンシである実レイテンシを前記通信手段ごとに取得する実レイテンシ取得ステップと、
前記基準レイテンシと前記実レイテンシとの差分を示す差分レイテンシを算出する差分算出ステップと、
前記差分レイテンシを複数の段階に分類するしきい値を設定するしきい値設定ステップと、
前記しきい値に基づいて前記差分レイテンシを識別表示する表示ステップと、を含むことを特徴とするシーケンス試験方法。
【請求項4】
前記差分レイテンシを識別表示する表示条件を設定する表示条件設定ステップを含み、
前記表示条件設定ステップは、予め定められたアイコンによる識別表示又は予め定められた表示色による識別表示の表示条件を設定するものであり、
前記表示ステップにおいて、前記表示条件設定ステップで設定された表示条件に基づいて前記差分レイテンシを識別表示することを特徴とする請求項3に記載のシーケンス試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−259076(P2011−259076A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130038(P2010−130038)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】