説明

シート切断方法

【課題】切断後のシートの必要部分と不要部分とを容易に分離することができ、吸着手段等を利用して必要部分を無理なく持ち上げて取り出すことが可能なシート切断方法を提供する。
【解決手段】シート切断方法においては、シートSを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行われた後に、その本切断より一辺側において捨て切断が行なわれる。それゆえ、本切断によって切り離されたシート片T,T・・を持ち上げる際に、捨て切断と本切断間の不要シート片(W,W・・)が上側へ変形してシート片T,T・・を持ち上げ易くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの切断方法に関するものであり、詳しくは、積層チップコンデンサーや積層チップインダクタ等に利用されるセラミックグリーンシートを多数の小形矩形状のチップに切断するためのシート切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックグリーンシート等を利用したコンデンサ等の電子部品の製造においては、大型の矩形状のシートが多数の小形矩形状のチップに切断されて利用に供される。かかるシートの切断方法としては、サーボモーターによって切断刃を上下動させる切断機構がシートを設置するためのシート載置台の上方に設けられたシート切断装置を利用して、切断刃を上下動させるとともに、その上下動毎に、ワーク載置台の水平移動を実行し、所定回数だけ一定方向のシートの切断を繰り返した後に、ワーク載置台を90度回転させて、再度、切断刃の上下動およびワーク載置台の水平移動を繰り返すことによって、大型の矩形状のシートを多数の小形矩形状のチップに切断するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−113520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したように大型のシートを所定位置で順次切断し、製品となる部分(必要部分)と製品外周の不要部分とに分離する場合には、切削刃に厚みがあるので、切断済みの切断溝(スリット)を押し狭めるようにして次の切断が行われ、切断面同士が密着してしまうことが明らかになった。そのような状態で、吸着手段等を利用して必要部分を持ち上げてシート載置台の加工テーブル上から取り出そうとすると、切断面同士の密着力が必要部分を持ち上げる力に対する抵抗力となってしまうため、必要部分が持ち上げにくくなる事態が発生する。その結果、切断後のシート片を吸着手段等で持ち上げて取り出す際に吸引力が弱いと取り出しミスを起こし易く、吸引力を強くするとシート片を変形させる等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上記従来のシート切断方法の問題点を解消し、切断後のシートの必要部分と不要部分とを容易に分離することができ、吸着手段等を利用して必要部分を無理なく持ち上げて取り出すことが可能なシート切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の内、請求項1に記載された発明の構成は、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断した後、他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断して複数のシート片を切り離す本切断を行うようにしたシート切断方法において、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行う際に、その本切断より一辺側において捨て切断を行い、本切断によって切り離されたシート片を持ち上げる際に捨て切断と本切断間の不要シート片が上側へ変形してシート片を持ち上げ易くしたことにある。なお、本発明のシート切断方法により切断されるシートは、セラミックグリーンシート等の薄板状のシートである。
【0007】
請求項2に記載された発明の構成は、請求項1に記載の発明において、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行う際に、その本切断より一辺側と他辺側とにおいて夫々捨て切断を行うようにしたことにある。
【0008】
請求項3に記載された発明の構成は、請求項1に記載の発明において、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断と他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断との夫々の後に、それらの本切断より一辺側において捨て切断を行うようにしたことにある。
【0009】
請求項4に記載された発明の構成は、請求項3に記載の発明において、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断と他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断との夫々の後に、それらの本切断より一辺側と他辺側とにおいて夫々捨て切断を行うようにしたことにある。
【0010】
請求項5に記載された発明の構成は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、捨て切断はシートの厚みの一部を残す不完全切断であることにある。
【0011】
請求項6に記載された発明の構成は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、捨て切断と本切断の間隔は本切断の間隔より小さくしてあることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のシート切断方法は、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行う際に、その本切断より一辺側において捨て切断を行い、本切断によって切り離されたシート片を持ち上げる際に捨て切断と本切断間の不要シート片が上側へ変形してシート片を持ち上げ易くしたので、本切断によって切り離されたシート片とシート縁部の不要部分が分離し易くなり、シート片を小さい力で確実に取り出すことができ、シート片の品質を維持しながらシート片取出し作業の作業性を向上できる。
【0013】
請求項2のシート切断方法は、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行う際に、その本切断より一辺側と他辺側とにおいて夫々捨て切断を行うようにしたので、シート片を持ち上げる際に本切断領域の両側において捨て切断と本切断の不要シート片が上側へ変形してシート片を持ち上げ易くなり、シート片を小さい力で確実に取り出すことができてシート片取出し作業の作業性を良くできる。
【0014】
請求項3のシート切断方法は、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断と他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断との夫々の後に、それらの本切断により一辺側において捨て切断を行うようにしたので、本切断によってシート片が夫々の一辺側のシート縁部へ強く押圧される場合でも、捨て切断と本切断間の不要シート片が上側へ変形してシート片を持ち上げ易くなり、総てのシート片を小さい力で確実に取り出すことができる。
【0015】
請求項4のシート切断方法は、シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行った後と他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行った後との夫々において、それらの本切断より一辺側と他辺側とにおいて夫々捨て切断を行うようにしたので、本切断によって切り離された総てのシート片の全周においてシート片とシート縁部の不要部分が分離し易くなり、総てのシート片を小さい力で確実に取り出すことができてシート片取出し作業の作業性を良くできる。
【0016】
請求項5のシート切断方法は、捨て切断をシートの厚みの一部を残す不完全切断にしているので、捨て切断と本切断間の不要シート片をシート縁部に連結しておくことができ、これらの不要シート片がシート屑片になって周辺に飛散して種々のトラブルを起こすのを防止できる。
【0017】
請求項6のシート切断方法は、捨て切断と本切断の間隔を本切断の間隔より小さくしているので、不要なシート縁部の幅が小さい場合にも実施でき、シートを大きくすることなく捨て切断することができて実用的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係るシート切断方法の一実施形態について、図面にしたがって詳細に説明する。図1,図2は、それぞれ、本発明に係るシート切断方法に用いるシート切断装置の正面図、右側面図であり、シート切断装置1は、シートを切断するためのシート切断機構を設けたシート切断ステーションS1、および、切断されたセラミックグリーンシートを取り出すためのシート排出装置を設けたシート片排出ステーションS2が設けられている。
【0019】
シート切断ステーションS1には、切断するシート(セラミックグリーンシート)を載置するためのシート載置台11と、シート載置台11に載置されたシートを切断するためのシート切断機21とからなるシート切断機構が設けられている。シート載置台11は、移動台12の上方に回転テーブル13を設置したものであり、基台2に平行に配設されたガイドレール14,14上に設置されている。そして、図示しない直線駆動装置によりボールネジが回転することによって、ガイドレール14,14に沿って、シート切断ステーションS1とシート片排出ステーションS2との間を往復動するようになっている。また、図示しない回転駆動装置によって、回転テーブル13が鉛直軸を中心として90度以上の角度で回転するようになっている。なお、回転駆動装置としては、たとえば、図1の符号12の部分を回転駆動モータの本体として構成し、回転駆動装置の上部に回転テーブル13を設置するようにしても良い。
【0020】
一方、シート切断機21は、基台2に立設された支柱(図示せず)に支承されている。そして、カッターホルダ22内に刃先を下方に向けて装着された切断刃23を、図示しないボールねじのモータによる回転作動によって、鉛直方向に上下動させることができるようになっている。
【0021】
また、図2の如く、シート片排出ステーションS2においては、ガイドレール14,14を跨ぐように、一対の支持フレーム32,32が立設されており、それらの支持フレーム32,32には、架台33が懸架されている。また、架台33には、直線作動機である1本のロッドレスシリンダ34と1本のガイドレール38が水平に設置されており、そのガイドレール38によって案内されている一対の摺動子38aに移動体37の鉛直部39が固着されている。移動体37の鉛直部39には、ロッドレスシリンダ34の水平移動可能な移動子35が取付ネジによって一体に連結されている。なお、ロッドレスシリンダ34とガイドレール38の代わりにガイド付ロッドレスシリンダを設置し、直線移動されるガイド付ロッドレスシリンダの移動子に移動体を取り付けるようにしても良い。
【0022】
移動体37は、平板状の鉛直部39の下端に平板状の水平部40が外側へ突出するように連設されている。そして、鉛直部39と水平部40に、三角形状の補強板41が鉛直状に溶接されている。また、水平部40には、シリンダ42および2つのブッシュ43a,43bが一列に設置されており、シリンダ42のピストンロッド44、および、各ブッシュ43a,43bを貫通した2つのガイドバー45,45が、水平部40の下面から下方に突出した状態になっている。そして、それらのシリンダ42のピストンロッド44、および、ガイドバー45,45の下端に昇降体36が取り付けられている。
【0023】
昇降体36は、吸着手段(吸着体)46,46・・を4×4の格子状に配列させた四角形状の支持板47と、その支持板47より上方に位置する四角形状の固着板48とを、4本の支持ピン47aを介して上下に平行に設置したものであり、その固定板48の上面に、水平部40の下面から突出したシリンダ42のピストンロッド44、およびガイドバー45,45が固着されている。加えて、片方の支持フレーム32のシート切断ステーションS1に対して外側の位置には、切断されたシートを載置するためのシート排出台49が設置されている。
【0024】
以下、上記の如く構成されたシート切断装置1を用いたシートの切断方法の一例について説明する。切断されるシートSは、所定の大きさの矩形に切断され、予め、所定のパターンをもって電気的要素を構成する材料膜(たとえば、内部電極)が印刷等により形成されている。また、シートSの四隅際には、位置決め用のアライメントマーク(図示せず)が印刷されている。そして、かかるシートSは、矩形状に形成された金枠3上に載置され、金枠3に設けられた固定手段5,5・・(貼付テープ等)によって四隅を固定された状態で、シート載置台11の回転テーブル13上まで搬送される(図1参照)。なお、金枠3に対するシートSの固定は、シートSの四隅のみではなく、シートSの4辺全周を貼付テープで貼り付けて固定するようにしても良い。また、図1では、回転テーブル13上に切断刃23が当接するのを防ぐための薄いゴムシート13aを貼り付けてあるが、そのような薄いゴムシートの貼り付けを省いても良い。金枠3には、予め位置決め孔4,4が穿設されており、それらの位置決め孔4,4に、回転テーブル13上に突設された位置決めピン(図示せず)を嵌合させて、金枠3を一方向に押し付けることによって、所定の位置に設置される。しかる後、シート切断機21に設けられたCCDカメラ(図示せず)を用いて、シートSに付されたアライメントマークを基準として、回転テーブル13が適宜Y方向への移動、回転を実行することによって、シートSが正確に位置決めされる。
【0025】
そのようにシートSが位置決めされた後には、シート切断機21の駆動装置(図示せず)によりカッターホルダ22が上下に復動することによって、切断刃23によるシートSの高速切断が行われる。図3は、1枚の矩形状のシートから4×4=16個の矩形状チップTを切り出す際におけるシートの切断の手順を示したものである。シートSの切断においては、カッターホルダ22が1回上下動する毎にシート載置台11を直線駆動装置によって一定の方向に所定のピッチずつ移動させる作動を繰り返す(8回繰り返す)ことによって、図3(a)の如く、シートSに、まず、X軸方向に沿った複数本のスリットa〜hが順次形成される(本切断)。なお、図4は、スリットa〜hを形成したシートSの断面を示したものである。図4に示すようにスリットa〜hを形成すると、切断刃23の厚みによりスリットa,b間のシート片(チップT)がスリットa側へ押されてスリットaの両側面が圧着され、以下同様にスリットb〜gの両側面が圧着された状態となる。また、図4および図6では、説明の関係上、スリット幅を大きく表示しているが、実際には接触する程度に小さい幅である。また、スリットa,b間、スリットc,d間、スリットe,f間、スリットg,h間は、矩形状チップTとして切り出される部分であり、スリットb,c間、スリットd,e間、スリットf,g間は、矩形状チップを構成しない不要な部分である。
【0026】
上記したようにX軸方向に沿って複数本のスリットa〜hが形成された後には、回転駆動装置(図示せず)によってシート載置台11の回転テーブル13が90度正回転する。そして、上記したスリットa〜hの形成と同様に、カッターホルダ22が1回上下動する毎にシート載置台11を一定の方向に所定のピッチずつ移動させる作動を繰り返す(8回繰り返す)ことによって、図3(b)の如く、シートSに、Y軸方向に沿った複数本のスリット(イ)〜(チ)が形成される(本切断)。スリット(イ)〜(チ)を形成すると、前記スリットa〜gと同様に、切断刃23の厚みによってスリット(イ)〜(ト)の両側面が圧着された状態になる。かかるY軸方向に沿ったスリット(イ)〜(チ)の形成によって、シートSが、多数の小型矩形状のチップ(シート片とも示す)T,T・・に切断される。なお、スリット(イ)、(ロ)間、スリット(ハ)、(ニ)間、スリット(ホ)、(ヘ)間、スリット(ト)、(チ)間は、矩形状チップT,T・・として切り出される部分であり、スリット(ロ)、(ハ)間、スリット(ニ)、(ホ)間、スリット(へ)、(ト)間は、矩形状チップT,T・・を構成しない不要な部分である。
【0027】
シートSが、多数の小型矩形状のチップT,T・・に切断された後には、シート載置台11を所定の位置まで移動させた状態でカッターホルダ22が上下動することによって、すでに形成されているスリット(イ)の外側、および、スリット(チ)の外側に、それぞれ、スリット(リ)、(ヌ)が形成される(捨て切断)。なお、スリット(リ)、(ヌ)は、シートSを完全に切断しても良いが、完全に切断することなく、シートSの厚みの一部を残すように形成すると、捨て切断による不要シート片が飛散するのを防止できて好ましい。なお、図6は、スリット(イ)〜(ヌ)を形成した後のシートSの断面を示したものである。
【0028】
その後、回転駆動装置(図示せず)によってシート載置台11の回転テーブル13が90度逆回転する。そして、前記スリット(リ)、(ヌ)の形成と同様に、シート載置台11を所定の位置まで移動させた状態でカッターホルダ22が上下動することによって、すでに形成されているスリットaの外側、および、スリットhの外側に、それぞれ、スリットi,jが形成される(捨て切断、図5参照)。なお、前記スリットi,jの形成は、スリット(イ)〜(チ)の形成に先立って、スリットa〜hの形成に引き続いて形成しても良い。また、スリットi,jは、スリット(リ)、(ヌ)と同様に、シートSを完全に切断しても良いが、好ましくは完全に切断することなく、シートSの厚みの一部を残すように形成される。かかるスリット(リ)、(ヌ)の形成によって、シートSの切断作業を完了する。
【0029】
そして、シートSが多数の小型矩形状のチップT,T・・に切断された後には、シート載置台11が、テーブル移動機構によってシート片排出ステーションS2まで搬送される。シート載置台11が、シート片排出ステーションS2まで搬送されると、片側(図3における左側)の上方で待機していた昇降体36がシリンダー42の空気圧作動によって下降する。そして、各吸着手段46,46・・の下端が切断された小型矩形状のチップに接すると、各吸着手段46,46・・が各チップT,T・・を吸引することによって把持する。各吸着手段46,46・・が各チップT,T・・を把持すると、昇降体36が上昇を開始すると同時に、ロッドレスシリンダ34の空気圧駆動によって、移動体37が反対側(図3における右側)へ移動する。そして、移動を終了すると同時に、昇降体36が下降を開始し、各吸着手段46,46・・に把持された各チップT,T・・がシート排出台49の上面と接した時点で下降を停止し、その位置で、吸着手段46,46・・が吸引を停止することによって、各チップT,T・・の把持を解除する。かかる吸着手段46,46・・による各チップT,T・・の把持の解除によって、切断されたシートSの排出動作を完了する。
【0030】
シート切断装置1を用いた上記のシート切断方法は、シートSを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行った後、その本切断より一辺側において捨て切断を行い、本切断によって切り離されたシート片T,T・・を持ち上げる際に捨て切断と本切断間の不要シート片(図5、図6におけるW,W・・)が上側へ変形して(傾いて)シート片T,T・・を持ち上げ易くしたので、本切断によって切り離されたシート片T,T・・とシート縁部の不要部分が分離し易くなり、シート片T,T・・を小さい力で確実に取り出すことができてシート片取出し作業の作業性を向上できる。また、吸着手段46により吸着力を弱くできるので、シート片Tに対して吸着力が変形させる問題を解消でき、シート片Tの品質を維持できる。
【0031】
また、上記したシート切断方法は、シートSを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行った後、その本切断より一辺側と他辺側とにおいて夫々捨て切断を行うようにしたので、シート片T,T・・を持ち上げる際に本切断領域の両側において捨て切断と本切断の不要シート片(図5におけるW,W・・)が上側へ変形してシート片T,T・・を持ち上げ易くなり、シート片T,T・・を小さい力で確実に取り出すことができてシート片取出し作業の作業性を良くできる。なお、前記一辺側における捨て切断、一辺側と他辺側における捨て切断は、本切断を行う際に、その本切断の前または途中に行うようにしても良い。
【0032】
さらに、上記したシート切断方法は、シートSを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断と他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断との夫々の後に、それらの本切断により一辺側において捨て切断を行うようにしたので、本切断によってシート片T,T・・が夫々の一辺側のシート縁部へ強く押圧される場合でも、捨て切断と本切断間の不要シート片(図5におけるW,W・・)が上側へ変形してシート片T,T・・を持ち上げ易くなり、総てのシート片T,T・・を小さい力で確実に取り出すことができる。
【0033】
加えて、上記したシート切断方法は、シートSを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行った後と他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行った後との夫々において、それらの本切断より一辺側と他辺側とにおいて夫々捨て切断を行うようにしたので、本切断によって切り離された総てのシート片T,T・・の全周においてシート片T,T・・とシート縁部の不要部分(図5におけるW,W・・)が分離し易くなり、総てのシート片T,T・・を小さい力で確実に取り出すことができてシート片取出し作業の作業性を良くできる。
【0034】
また、上記したシート切断方法は、捨て切断をシートSの厚みの一部を残す不完全切断にしているので、捨て切断と本切断間の不要シート片(図5におけるW,W・・)をシート縁部に連結しておくことができ、これらの不要シート片(W,W・・)がシート屑片になって周辺に飛散して種々のトラブルを起こすのを防止できる。
【0035】
さらに、上記したシート切断方法は、捨て切断と本切断の間隔を本切断の間隔より小さくしているので、不要なシート縁部の幅が小さい場合にも実施でき、シートSを大きくすることなく捨て切断することができて実用的である。
【0036】
なお、本発明のシート切断方法の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、切断に用いるシート切断装置等の形状・構造、捨て切断の方法や順序、本切断の方法や順序等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。たとえば、捨て切断の本数は、各1本のみではなく、必要に応じて増やし、2本以上にしても良い。また、本切断は、最も外側の切断のみ完全切断にして他の中間の切断を不完全切断にするようにしても良く、この場合には、スリット間における不要な部分が飛散するのを防止できる。
【0037】
たとえば、シートの一番外側に形成されるスリット(捨て切断によるスリット、上記実施形態におけるスリットi,jおよびスリット(リ)、(ヌ))は、シートの厚みの一部を残す不完全切断に限定されず、シートを完全に切断したものとすることも可能である。また、シートの一番外側に形成されるスリット以外のスリットの形成は、シートの片側から順々に行う必要はなく、必要に応じて、適宜順序を変更することができる。なお、本発明のシート切断方法によるシートの切断は、単層のシートの切断に限定されず、複数枚が積層された積層シートの切断でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】シート切断装置の正面図である。
【図2】シート切断装置の右側面図である。
【図3】シートを切断する様子を示す説明図である((a)はX軸方向に沿ったスリットが形成された状態を示したものであり、(a)はX軸方向、Y軸方向に沿ったスリットが形成された状態を示したものである)。
【図4】X軸方向に沿ったスリットが形成された後のシートの断面(図3(a)におけるA−A断面)を示す説明図である。
【図5】シートが切断された状態を示す説明図である
【図6】切断後のシートの断面(図5におけるB−B断面)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・シート切断装置、11・・シート載置台、21・・シート切断機、23・・切断刃、46・・吸着手段、S・・シート、a〜j・・スリット、(イ)〜(ヌ)・・スリット、T・・矩形状チップ(必要部分)、W・・シート残部(不要部分)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断した後、他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断して複数のシート片を切り離す本切断を行うようにしたシート切断方法において、
シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行う際に、その本切断より一辺側において捨て切断を行い、本切断によって切り離されたシート片を持ち上げる際に捨て切断と本切断間の不要シート片が上側へ変形してシート片を持ち上げ易くしたシート切断方法。
【請求項2】
シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断を行う際に、その本切断より一辺側と他辺側とにおいて夫々捨て切断を行うようにした請求項1に記載のシート切断方法。
【請求項3】
シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断と他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断との夫々の後に、それらの本切断より一辺側において捨て切断を行うようにした請求項1に記載のシート切断方法。
【請求項4】
シートを一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断と他の一辺側から向かい合う他辺側へ向けて所定位置で順次平行に切断する本切断との夫々の後に、それらの本切断より一辺側と他辺側とにおいて夫々捨て切断を行うようにした請求項3に記載のシート切断方法。
【請求項5】
捨て切断はシートの厚みの一部を残す不完全切断である請求項1〜4のいずれかに記載のシート切断方法。
【請求項6】
捨て切断と本切断の間隔は本切断の間隔より小さくしてある請求項1〜4のいずれかに記載のシート切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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