説明

シート切断装置のワーク載置台

【課題】 加工テーブルのシート載置側以外への加熱手段からの熱の伝導を抑制することができるシート切断装置のワーク載置台を提供するものである。
【解決手段】 水平方向前後に移動可能な送りテーブル上に設けられた旋回用駆動モータに冷却機構と断熱部材とを介して加工テーブルを設ける。加工テーブルは、セラミックグリーンシートを保温または加熱するヒーターを備えている。冷却機構6は、冷媒通路形成部材16に形成された冷媒通路17から構成さている。冷媒通路17に冷却用の空気を流すことでヒーターによる熱が旋回用駆動モータ等に伝導することを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セラミックグリーンシート等の柔軟なシートを切断するシート切断装置のワーク載置台に係るものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下型(ワーク載置台)の取付ベース(加工テーブル)の中間部に断熱部材を配設し、上部に加熱手段としてのヒーターを埋設し、取付ベース上面に固定された積層シートを載置する下型をヒーターにより予め加熱できるように構成されたものが開示されている。また、特許文献2には、ワーク載置台に載置した積層体(シート)を切断刃を昇降させて切断する切断装置が開示されている。ワーク載置台は、一軸方向に移動するスライドテーブル(送りテーブル)上に旋回用駆動モータであるθ軸モータにより90°旋回可能に切断テーブル(加工テーブル)を配置して構成されている。また、切断テーブルは加熱手段としてのヒーターを備えており、予め加熱された積層体と同程度までヒーターにより加熱されるようになっており、加熱された状態で切断テーブル上にはシートが吸着載置される。また、特許文献3には、ターンテーブル(加工テーブル)の下方に配置され、ターンテーブルに回動可能に連繋されるダイレクトドライブモータ(旋回用駆動モータ)を移動台(送りテーブル)上に設け、ダイレクトドライブモータの外周を取り囲むスラスト軸受(テーブル支持手段)によりターンテーブルを移動台に対して支持するものが開示されている。
【特許文献1】特開2004−230641号公報
【特許文献2】特開平6−8195号公報
【特許文献3】特開2000−158261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、加工テーブルの下部にヒーターからの熱が伝わらないように断熱部材を設けているが、加工テーブルを高温に加熱するほど加工テーブルの下部への伝熱を小さくするためには厚い断熱部材を配置することになる。そのために、断熱部材の取付スペースが大きくなり、ワーク載置台を大きくする問題がある。また、特許文献2には断熱部材についての記載はないが、特許文献1のような断熱部材を特許文献2に採用し、加工テーブルのヒーターと旋回用駆動モータとの間に断熱部材を介装した場合において、加工テーブルを高温に加熱する場合や断熱部材の厚さを十分に厚くできない場合、断熱部材を介して旋回用駆動モータや送りテーブル等に伝わるヒーターからの熱により、旋回用駆動モータの温度が上昇し旋回用駆動モータの動作温度を超えてしまう問題や、加工テーブルがモータ旋回軸線方向に大きく伸びていくことになり、所定の温度で設定されたグリーンシートを切断する際の切断刃の切込み深さが変化し、精度が低下する問題がある。また、特許文献3には断熱部材及びヒーターについての記載はないが、仮に断熱部材を備えヒーターにより加工テーブルを加熱するものとすると、ヒーターにより高温に加工テーブルが熱せられる場合、熱が加工テーブル支持手段に伝導していくことにより、加工テーブル支持手段が熱膨張によりモータ旋回軸線方向へ伸びていき、切断刃と加工テーブル上面との距離が変化し、精度が低下する問題がある。
この発明は、ワーク載置台に厚い断熱部材を設けることなく、加工テーブルのシート載置側以外への加熱手段からの熱の伝導を抑制することができるシート切断装置のワーク載置台を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のシート切断装置のワーク載置台は、加熱手段によって加熱される加工テーブルを、旋回用駆動モータによって旋回させるように構成したシート切断装置のワーク載置台において、加工テーブルと旋回用駆動モータとの間に冷却機構を備えたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、加工テーブルと旋回用駆動モータとの間に冷媒通路形成部材を備え、該冷媒通路形成部材に冷却媒体を流すための冷媒通路を形成して冷却機構としたことを特徴とする。
【0006】
更に、加工テーブルの下面に断熱部材を装着し、冷媒通路を冷媒通路形成部材の上面に形成し、冷媒通路を覆うように冷媒通路形成部材の上面に前記断熱部材を取付けたことを特徴とする。
【0007】
また、シートを切断する切断刃の刃厚方向に水平移動可能に送りテーブルを設け、送りテーブル上に旋回用駆動モータと加工テーブルとをモータ旋回軸線と加工テーブル旋回軸線が一致するように配置し、送りテーブル上に冷却機構と送りテーブルとの間で旋回用駆動モータの周囲となるように配置され、少なくとも加工テーブル旋回軸線と直交し送りテーブルの水平移動方向に伸びる軸線上に位置する加工テーブルの縁部分を支持する加工テーブル支持手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願の発明によれば、加工テーブルと旋回用駆動モータとの間に冷却機構を備えたことにより、ワーク載置台の外部に空冷機構を備える場合のように空冷機構の設置スペースを必要としないのでシート切断装置を大きくすることがない。また、外部からワーク載置台に空気を吹き付けて冷却するものではないので、加工テーブルのワーク載置側を冷やすことがなく、ワークの保温または加熱の効率が良い。また、加工テーブルと旋回用駆動モータとの間に備えた冷媒通路形成部材の冷媒通路に冷却媒体を流すように構成したので簡易な構成で熱の伝導を抑える効果がある。また、加工テーブル下面に装着した断熱部材を冷媒通路形成部材に冷媒通路形成部材上面に形成した冷媒通路を覆うように取付けたので、断熱部材を厚くすることなく断熱効果を高くすることができる。また、断熱効果が高くなることで、加熱手段からの熱による旋回用駆動モータの温度が作動温度を超えることを防止する効果がある。また、冷却機構を介して加工テーブル支持手段を加工テーブルに設けてあるので加工テーブル支持手段への伝熱も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の一実施形態を示す図1〜図3のシート切断装置のワーク載置台について説明する。図1はシート切断装置1の概要を示す説明図であり、2はワーク載置台であり、3は切断刃昇降部である。ワーク載置台2は、送りテーブル4と旋回用駆動モータ5と冷却機構6と加工テーブル7とから構成されている。送りテーブル4は、支持板8上に並設されたガイドレール9により水平方向前後(図1において紙面に対して垂直な方向)に図示しない送りねじ機構で所定ピッチずつ移動されるように案内されている。その送りテーブル4には、旋回軸線A1が送りテーブル4のテーブル面4aに対して直交するように旋回用駆動モータ5が配置されている。旋回用駆動モータ5の上面には冷却機構6を介してモータ旋回軸線A1と加工テーブル旋回軸線A2が一致するように加工テーブル7が固定されており、旋回用駆動モータ5によって冷却機構6と一体に加工テーブル7を旋回軸線A1回りに90°旋回割出可能としている。加工テーブル7上には、セラミックグリーンシートWが吸着保持される。
【0010】
切断刃昇降部3は、カッタホルダ10に着脱可能に保持された切断刃であるカッター11を送りモータ12を駆動することでカッター用送りねじ機構13を介して昇降するようになっている。カッター11は、水平方向左右に伸び、即ち送りテーブル4の水平移動方向と刃厚方向とが一致されており、送りテーブル4の前後動によりセラミックグリーンシートWに所定ピッチで切れ目を入れ、加工テーブル7を90°旋回してセラミックグリーンシートWに所定ピッチで前記切れ目に対して直交する切れ目を入れ、セラミックグリーンシートWを小さな矩形片に切断(もしくはハーフカット)するようになっている。
【0011】
加工テーブル7には、吸着保持したセラミックグリーンシートWを加熱または保温するため加工テーブル7を加熱する加熱手段としてのヒーター14が設けられている。加工テーブル7の下面全面には、該ヒーター14からの熱の伝導を抑えるための断熱部材15が固着されている。更にこの断熱部材15の下面に冷却機構6が設けられている。図2に示すように、冷媒通路形成部材16の上面の略全面に上方に開口した溝を形成して冷媒通路17としたものであり、冷媒通路形成部材16の上面を断熱部材15の下面に取付けて塞いでいる。冷媒通路形成部材16の一側面18には冷媒通路17の一端及び他端に夫々連通する片側配管用の流体通過孔19,19が隣接して穿設されている。一端の流体通過孔19には図示しない冷媒供給源に接続されている。本実施形態では、冷却媒体として冷却流体である冷却用の空気を冷媒供給源である圧空源から供給するようになっており、他端の流体通過孔19から冷媒通路17を流れた冷却用の空気が排出されるようになっている。冷却媒体として空気を使用すれば、漏れが生じてもシート切断装置への影響がない。尚、冷却媒体としては、その他の気体や冷却水や冷却油等の液体であっても良い。
【0012】
送りテーブル4の上面には、加工テーブル旋回軸線A2と直交し送りテーブル4が移動する水平方向前後に伸びる軸線上に位置する、即ち図1、図3に示すように送りテーブル4の前後の端部分中央に支持部材20が立設してある。また、冷媒通路形成部材16の各4辺の縁部分の中央下面には被支持体21が設けられており、加工テーブル7が90°旋回し、図1、図3に示すように支持部材20と対応する位置となった被支持体21が支持部材20に支持されるようになっており、支持部材20と被支持体21とで加工テーブル支持手段22を構成している。
【0013】
セラミックグリーンシートWの加工時には、ヒーター14により加工テーブル7が加熱され、セラミックグリーンシートWが保温された状態で切断される。このとき、冷却機構6に冷却用の空気が供給され、断熱部材15及び冷媒通路形成部材16が冷却されることで断熱部材15を介して旋回用駆動モータ5や加工テーブル支持手段22等への熱の伝導が抑えられ、熱による伸びが防止される。ところで、加工テーブル支持手段22と旋回用駆動モータ5は夫々材質が異なっており、ワーク載置台2が冷却機構6を備えていない場合、加工テーブル7が高温に熱せられた状態では、加工テーブル7からの熱が断熱部材15を介して旋回用駆動モータ5と加工テーブル支持手段22とに徐々に伝わり昇温することとなり、夫々を熱膨張させる。このとき加工テーブル支持手段22と旋回用駆動モータ5の夫々を構成する材質の線膨張率の違いによって旋回用駆動モータ5が大きく伸び、支持部材20と被支持体21との間に間隙が形成される場合がある。この状態で加工テーブル7の前端及び後端部分に位置するセラミックグリーンシートWの切断を行うと、切断の際の力により加工テーブル7が傾き、切断精度が低下する。しかし、上述のように冷却機構6により冷却することで熱による伸びが抑制されるので該隙間が形成されることがなく、精度を向上することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明のシート切断装置のワーク載置台を示す正面説明図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 シート切断装置
2 ワーク載置台
4 送りテーブル
5 旋回用駆動モータ
6 冷却機構
7 加工テーブル
11 カッター(切断刃)
14 ヒーター(加熱手段)
15 断熱部材
16 冷媒通路形成部材
17 冷媒通路
22 加工テーブル支持手段
A1 モータ旋回軸線
A2 加工テーブル旋回軸線
W セラミックグリーンシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段によって加熱される加工テーブルを、旋回用駆動モータによって旋回させるように構成したシート切断装置のワーク載置台において、加工テーブルと旋回用駆動モータとの間に冷却機構を備えたことを特徴とするシート切断装置のワーク載置台。
【請求項2】
加工テーブルと旋回用駆動モータとの間に冷媒通路形成部材を備え、該冷媒通路形成部材に冷却媒体を流すための冷媒通路を形成して冷却機構としたことを特徴とする請求項1記載のシート切断装置のワーク載置台。
【請求項3】
加工テーブルの下面に断熱部材を装着し、冷媒通路を冷媒通路形成部材の上面に形成し、冷媒通路を覆うように冷媒通路形成部材の上面に前記断熱部材を取付けたことを特徴とする請求項2記載のシート切断装置のワーク載置台。
【請求項4】
シートを切断する切断刃の刃厚方向に水平移動可能に送りテーブルを設け、送りテーブル上に旋回用駆動モータと加工テーブルとをモータ旋回軸線と加工テーブル旋回軸線が一致するように配置し、送りテーブル上に冷却機構と送りテーブルとの間で旋回用駆動モータの周囲となるように配置され、少なくとも加工テーブル旋回軸線と直交し送りテーブルの水平移動方向に伸びる軸線上に位置する加工テーブルの縁部分を支持する加工テーブル支持手段を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のシート切断装置のワーク載置台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−320973(P2006−320973A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143615(P2005−143615)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】