説明

シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、シート情報の誤検知の発生が少ないシート搬送装置を提供することである。
【解決手段】シートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送されるシートに押されて待機位置から移動するレバー40と、前記レバー40の位置に応じた信号を形成するフォトインタラプタ41であって、前記待機位置から所定位置までの第1移動域内を前記レバー40が移動するときに第1の信号を形成し、前記所定位置を超えた第2移動域内を前記レバー40が移動するときに第2の信号を形成するフォトインタラプタ41と、前記第1移動域内に前記レバー40があるときには前記レバー40に付勢力を与えず、前記第2移動域内に前記レバー40があるときにシートに押されて移動する方向とは反対への付勢力を前記レバー40に付与する付勢バネ43と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置及びシート搬送装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置で使用されるシートの種類は多岐に渡ってきている。また、ユーザ毎に画像形成装置を使用する環境も異なる上、近年、エコロジーの流れの中で、一度使用したシートの裏面を再利用するケースも常識化してきている。そのため、シートの搬送性に対する外乱要因は、極めて多くなってきている。この理由から、シート搬送中におけるジャム発生の可能性を完全に排除することは難しく、ジャム発生率を抑制する観点と同時に、「ジャムが発生した場合のダメージをいかに回避するか」という観点が重要になってきている。
【0003】
つまり、ジャムが発生してしまったとき、画像形成装置の動作を、容易に復旧可能な状態で安全に停止させることが求められる。ジャムからの復旧作業や製品性能に対して影響を与え得る代表的なジャムとして、搬送路内でシートがアコーディオン状の多重たわみを形成して詰まるジャム(以下、「アコーディオンジャム」と呼ぶ)がある。このアコーディオンジャムの発生要因としては、何らかの原因でシート先端が下流側の搬送ローラにスムーズに進入できなかったケースや、シート先端が搬送パスの段差類に引っ掛かるケースなどがある。アコーディオンジャムが発生すると、そのジャムしたシートが、搬送パスを形成するガイド類をはじめとした隣接する部品類に大きなストレスを与えてしまう問題が生じる。また、そのジャムしたシートを搬送している搬送ローラは、ジャムを検知して駆動が停止されるまでの間、シートを押し込もうとし続けるため、シートが搬送ローラに巻き込まれる問題も生じ得る。特に、その搬送ローラが定着ローラであった場合、一度シートが巻き込まれると、シート上のトナー像が熱で溶かされてシート面同士を接着し、処理が非常に難しいレベルのジャムシートの状態に陥り得る。
【0004】
ここで、搬送されるシートに押されて回動するセンサレバーの位置に基づいて、搬送中のシートのループ状態をモニターし、シートのジャムに繋がる過剰なループの成長を検知する技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の検知機構では、センサレバーの回動量に応じて2段階に出力が変化するようになっている。通常のシートの搬送時は、そのシートに押されてセンサレバーは小さい角度だけ回動し、2つあるセンサのうちの片方の出力だけがONとなる。一方、シートの先端が搬送ガイドに引っかかるなどして搬送が妨げられ、過度にループが成長してきた場合やアコーディオンジャムが発生した場合には、センサレバーがシートに押されて前記角度より大きく回動し、2つのセンサの出力ともONになる。
【0005】
また、搬送されるシートに押されて回動するセンサレバーの位置に応じて、シートの厚さ(シートの強度)を検知する技術が知られている(特許文献2参照)。通常の厚さのシートの搬送時は、そのシートに押されてセンサレバーは小さい角度だけ回動する。一方、通常の厚さより厚いシートの搬送時には、センサレバーがシートに押されて前記角度より大きく回動し、センサレバーが大きく回動したことがセンサによって検知される。そして、そのセンサからの出力に基づいてシートの厚さを認識している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−057892号公報
【特許文献2】特開平10−236691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなシートに関する情報(シート情報)を得るための上記従来の技術は、シートに押されたときのセンサレバーの移動量と、センサレバーをシートに当接する方向に付勢する付勢力の相対関係が、そのセンサレバーの可動範囲において、ほぼリニアな関係を有しているため、次のような課題がある。
【0008】
例えば、シート先端がセンサレバーよりも搬送方向下流側の搬送ローラに進入する時や、シート後端がセンサレバーよりも上流側の搬送ローラを抜ける時に、そのショックがシート面を伝わって伝播することがある。この現象に伴い、センサレバーがシート面に弾かれ、実際にはシートがループ過多でないにもかかわらずセンサレバーがシートに押されて大きく回動したり、厚いシートでないにもかかわらず、センサレバーがシートに押されて大きく回動したりして、シート情報の誤検知をしてしまう虞がある。
【0009】
また、シートがカールしているケースでも、そのシートの先後端がセンサレバーを通過する際に、そのシートの先後端でセンサレバーが弾かれて、同様に大きく回動し、シート情報の誤検知をしてしまう虞がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、シート情報の誤検知の発生が少ないシート搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、シートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送されるシートに押されて待機位置から移動するレバーと、前記レバーの位置に応じた信号を形成する検知手段であって、前記待機位置から所定位置までの第1移動域内を前記レバーが移動するときに第1の信号を形成し、前記所定位置を超えた第2移動域内を前記レバーが移動するときに第2の信号を形成する検知手段と、前記第1移動域内に前記レバーがあるときには前記レバーに付勢力を与えず、前記第2移動域内に前記レバーがあるときにシートに押されて移動する方向とは反対への付勢力を前記レバーに付与する付勢手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、付勢手段が、シートに押されて移動する移動部材を所定の位置で係止する。そのため、付勢手段の付勢力(係止力)以上の力が移動部材に作用しない限り、移動部材が所定の位置を超えて移動しない。従って、誤検知の発生が少ないシート搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態における定着排出センサの斜視図
【図2】(a)は第1実施形態における定着排出センサの動作位置(待機位置)の説明図、(b)は第1実施形態における定着排出センサの動作位置(境界位置)の説明図、(c)は第1実施形態における定着排出センサの動作位置(退避位置)の説明図
【図3】(a)は第1実施形態における定着排出センサの動作(片面シート先端検知)の説明図、(b)は第1実施形態における定着排出センサの動作(片面通紙中)の説明図、(c)は第1実施形態における定着排出センサの動作(片面JAM時)の説明図、(d)は第1実施形態における定着排出センサの動作(両面シート先端検知)の説明図、(e)は第1実施形態における定着排出センサの動作(両面通紙中)の説明図、(f)は第1実施形態における定着排出センサの動作(両面JAM時)の説明図
【図4】第1実施形態における定着排出センサの移動量と付勢力の関係グラフ
【図5】(a)は第1実施形態における通常搬送時の定着排出センサの出力波形を示す図、(b)は第1実施形態におけるジャム発生時の定着排出センサの出力波形を示す図
【図6】(a)は変形例における定着排出センサの動作位置(待機位置)の説明図、(b)は変形例における定着排出センサの動作位置(境界位置)の説明図、(c)は変形例における定着排出センサの動作位置(退避位置)の説明図
【図7】第2実施形態におけるシート検知センサ周辺の概略断面図
【図8】(a)は第2実施形態におけるシート検知センサの動作位置(待機位置)の説明図、(b)は第2実施形態におけるシート検知センサの動作位置(第一境界位置)の説明図、(c)は第2実施形態におけるシート検知センサの動作位置(第二境界位置)の説明図、(d)は第2実施形態におけるシート検知センサの動作位置(退避位置)の説明図
【図9】(a)は第2実施形態におけるシート検知センサのシート先端検知動作の説明図、(b)は第2実施形態におけるシート検知センサの薄紙時の動作の説明図、(c)は第2実施形態におけるシート検知センサの厚紙時の動作の説明図、(d)は第2実施形態におけるシート検知センサの超厚紙時の動作の説明図
【図10】第2実施形態におけるシート検知センサの移動量と付勢力の関係グラフ
【図11】前記センサを有する画像形成装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1〜図5および図11を用いて、第1実施形態に係るシート搬送装置及びこのシート搬送装置を有する画像形成装置について説明する。
【0016】
まず、図11を用いて、シート搬送装置を有する画像形成装置について説明する。図11は、画像形成装置の概略断面図である。ここでは、画像形成装置として電子写真プリンタを例示している。
【0017】
図11に示すように、プリンタ本体1の上部には、シート上に、イエロー・マゼンタ・シアン・ブラック(以下、省略してY,M,C,Kとする)のトナーを用いたカラー画像を形成する為の画像形成部が配置されている。画像形成部は、以下に説明する、像担持体としての感光ドラムやこれに作用するプロセス手段などからなる。
【0018】
PC等の外部機器から送信されてきた印刷データは、プリンタ本体1を制御する制御手段としてのコントローラ310で受信され、書き込み画像データとしてレーザスキャナ10へ出力される。レーザスキャナ10は、Y,M,C,Kの各ステーションの感光ドラム12上へとレーザを照射し、書き込み画像データに従った光像(潜像)を描く。ここでは、一つのレーザスキャナでY,M,C,K,の全ステーションへのレーザ照射を行う構成を採用している。
【0019】
画像形成部は、Y,M,C,Kの各ステーションに対応して、一次画像を形成する為のプロセスカートリッジ(図中Y,M,C,Kで示す)が着脱可能に配置される。プロセスカートリッジは、感光ドラム12と、これに作用するプロセス手段としての帯電器13、現像器14、クリーナ(不図示)が一体に構成されている。
【0020】
帯電器13は、感光ドラム12の表面に均一な帯電を施すための帯電手段である。現像器14は、帯電器13により帯電された感光ドラム12の表面に前記レーザスキャナ10が光像を描く事で作成された静電潜像を、中間転写ベルト34へと転写すべきトナー像へと現像するための現像手段である。クリーナ(不図示)は、トナー像を転写した後、感光ドラム12に残留したトナーを除去するためのクリーニング手段である。
【0021】
各感光ドラム12の対向位置には、各感光ドラム12の表面に現像されたトナー像を中間転写ベルト34に重ね合わせるように転写するための一次転写ローラ33が配置されている(一次転写部)。
【0022】
中間転写ベルト34に転写されたトナー像(一次画像)は、中間転写ベルト34の駆動ローラを兼ねる二次転写ローラ31と、この二次転写ローラ31と対向する二次転写対向ローラ24とによって、シート上へ転写される(二次転写部)。二次転写部でシートへ転写されずに中間転写ベルト34上に残留したトナーは、中間転写ベルトクリーナ18によって回収される。
【0023】
給送部(給送手段)20は、シート搬送方向の最上流に位置し、プリンタ本体1の下部に設けられている。給送トレイ21に積載収納されているシートは、給送部20によって一枚ずつ給送されると、搬送パス22を通り、搬送ローラ39を介して下流側へと搬送される。
【0024】
搬送パス22には、給送されたシートを前記画像形成部に搬送するレジストローラ23があり、ここでシートの斜行補正と、画像形成部での画像書き込みとシート搬送のタイミング合わせが行われる。
【0025】
画像形成部の下流側には、シート上のトナー像を定着するための定着ローラ(定着手段)25が設けられている。
【0026】
定着ローラ25の下流には、シートをプリンタ本体1から排出するための排出ローラ(排出手段)26へと続く排出搬送パス26aが設けられている。排出搬送パス26aは、画像が定着されたシートを案内する第1の搬送パスである。
【0027】
更に、定着ローラ25の下流には、前記排出搬送パス26aから分岐した反転パス35aが設けられている。反転パス35aは、排出搬送パス26aから分岐し、画像が定着されたシートを案内する第2の搬送パスである。反転パス35aは、両面プリント時にシートの搬送方向を反転させるための反転ローラ(反転搬送手段)35を有している。
【0028】
いずれの搬送パスへとシートを導くかは、反転フラッパ(切り替え部材)36の位置を切り替えることで選択可能になっている。片面プリントモードでのシート、および両面プリントモードでの2面目画像形成終了されたシートに関しては、シートは反転フラッパ36によって排出搬送パス26aへと導かれ、排出ローラ26によって機外へ排出される。排出されたシートは、プリンタ本体1の上部に設けられた排出トレイ27に積載される。一方、両面プリントモードでの1面目画像形成終了されたシートに関しては、反転フラッパ36によって反転パス35aへと導かれた後、反転ローラ35によって搬送方向を反転され、再び画像形成部へ戻る為の両面搬送パス28へと搬送される。両面搬送パス28には、反転ローラ35によって反転搬送されてきたシートを画像形成部へと再給送するための両面搬送ローラ(再給送手段)29が設けられている。
【0029】
給送部20から給送されたシートを搬送する搬送ローラ39、レジストローラ23や定着ローラ25などによってシートを搬送する搬送手段が構成される。
【0030】
また、上述したプリンタには、シートの搬送制御に利用する目的で、搬送されるシートの有無を検知するためのシート検知装置としての搬送センサ37が設けられている。ここでは、搬送センサ37は、定着ローラ25よりもシート搬送方向下流側で、かつ、反転フラッパ36による搬送パスの分岐部35bよりも上流の搬送パス内に設けられている。以下、この搬送センサ37を「定着排出センサ」という。
【0031】
図1で示したように定着排出センサ37は、搬送されるシートに押されて移動するセンサレバー(移動部材)40と、前記センサレバー40の位置を検知するためのフォトインタラプタ(検知手段)41と、を有している。
【0032】
定着排出センサ37は、2つの異なる機能を有している。一つ目の機能は、搬送されてくるシートの先端・後端の通過タイミングを検知することである。画像形成装置のコントローラ310は、この検知情報を用いて搬送遅延・滞留に起因するシートジャムを検知して、画像形成装置のシート搬送動作を停止させたり、両面プリント時に反転ローラ35の回転方向を切り替えるタイミングを決定したりする。
【0033】
二つ目の機能は、何らかの要因によって定着ローラ25の下流でシートの搬送が滞り、そのシートのループ量が大きくなったり、シートがアコーデオン状に折れ曲がったりした場合に、これを検知する。コントローラ310は、この検知情報を用いて、画像形成装置のシート搬送動作を停止させる。
【0034】
ここで、本発明によれば二つ目の機能の精度を向上できる。また、両面プリント時にシートが反転パス35aへと導かれる過程において、定着排出センサのセンサレバーがシート面に押されて、ループ過多でないのにループ過多であると誤検知することが抑制できる。
【0035】
図1〜図4を用いて、本実施形態における定着排出センサ37の詳細な構成を説明する。図1は定着排出センサ37の斜視図であり、図2は定着排出センサ37の動作位置の説明図である。センサレバー40は、センサレバー40の軸方向の両端側において、定着ローラ25の下流の搬送パスをなすガイド44に揺動可能に支持されている。センサレバー40は、搬送されるシートに押されて回動移動する。一端がセンサレバー40のバネ掛け部42bに、他端がガイド44に接続された初期付勢バネ42によって、センサレバー40は搬送中のシートと当接する方向へ付勢されている。センサレバー40には、シートと当接するレバー部40aのほかに、フォトインタラプタ41を遮光する為のセンサフラグ40bが設けられている。センサレバー40の回動量に応じて、センサフラグ40bによるフォトインタラプタ41の発光部・受光部間の遮光/非遮光状態が切り替わる。
【0036】
定着排出センサ部にシートが無い状態では発光部・受光部間は非遮光状態(フォトインタラプタ41の出力はOFF信号)となっている。この状態のセンサレバー40の位置を「待機位置」とする。センサレバー40は、センサレバー40に働く重力モーメントおよび初期付勢バネ42の付勢力によって待機位置に付勢されて停止される。
【0037】
そして、センサレバー40がシートに押されて待機位置から第1所定量だけ回動すると、フォトインタラプタ41の発光部・受光部間が遮光状態(フォトインタラプタ41の出力はON信号)に変化する。この時のセンサレバー40の位置を第一検知ポイントとここでは呼ぶ。
【0038】
そして、更にセンサレバー40がシートに押されて第一検知ポイントから第2所定量回動するとフォトインタラプタ41の発光部・受光部間が再び透過状態(フォトインタラプタ41の出力はOFF信号)に変化する。この時のセンサレバー40の位置を第二検知ポイントとここでは呼ぶ。
【0039】
また、センサレバー40には、付勢手段を構成するバネユニットとしての付勢バネ43が、所定の与圧を発生するよう圧縮された状態で組み込まれている。即ち、付勢バネ43は、両端がセンサレバー40に接した状態で圧縮されている。
【0040】
シートに押されて、センサレバー40は付勢バネ43と一体的に待機位置(図2(a)参照)から所定の位置まで回動する。そしてセンサレバー40が所定の位置に達すると、付勢バネ43がガイド44に設けられ、位置が固定されている係止部(当接部)44aに接触し、付勢バネ43によってセンサレバー40のそれ以上の回動に対して負荷が加わる(図2(b)参照)。以下では、付勢バネ43がセンサレバー40と一体的に回動してきて係止部44aに接するときのセンサレバー40の位置(上記の「所定の位置」)を、下記の第一移動域と第二移動域の境界であるという意味において、「境界位置」とする。
【0041】
境界位置に到達したセンサレバー40のレバー部40aが、シートに、付勢バネ43の与圧として設定された弾性力(弾性的係止力)未満の力で押されている限り、付勢バネ43は与圧圧縮状態のままである。つまり付勢バネ43はそれ以上に圧縮されないため、センサレバー40は境界位置を超えての回動が規制される。
【0042】
一方、センサレバー40のレバー部40aが、シートによって、付勢バネ43によって設定された弾性的係止力以上の力で押されると、付勢バネ43は与圧圧縮状態よりも更に圧縮される。このため、付勢バネ43は、センサレバー40に、前記待機位置に向かう方向の弾性的付勢力を印加することになる。そしてセンサレバー40は、この弾性的付勢力に抗し、境界位置を越えて更に回動する。なお、センサレバー40が動作可能な最大回動位置を「退避位置」と、ここでは呼ぶ(図2(c)参照)。
【0043】
前述した第一検知ポイントは待機位置と境界位置の間に設定され、第二検知ポイントは境界位置と退避位置の間に設定される。つまり、センサレバー40は、待機位置と境界位置(所定位置)間の区域(第1移動域)内を移動するときにフォトインタラプタ41の出力を変化させる。また、センサレバー40は、境界位置(所定位置)と退避位置間の区域(第2移動域)内を移動するときにもフォトインタラプタ41の出力を変化させる。即ち、検知手段としてのフォトインタラプタ41は、第1移動域内の第一検知ポイントをセンサレバー40が移動するときに、第1の信号として、ON信号へ変化する信号を形成する。また、フォトインタラプタ41は、第2移動域内の第二検知ポイントをセンサレバー40が移動するときに、第2の信号としてOFF信号へ変化する信号を形成する。また、付勢バネ43は、第1移動域内にセンサレバー40があるときには、センサレバー40には、シートに押されて移動する方向と反対方向への弾性的付勢力を付与しない。センサレバー40が第1移動域内に位置しているときには、センサレバー40は、センサレバー40の自重による重力モーメントおよび初期付勢バネ42のバネ力によって待機位置へ付勢されている。また、付勢バネ43は、第2移動域内にセンサレバー40があるときに、シートに押されて移動する方向とは反対方向にセンサレバー40を付勢する。
【0044】
上述したセンサレバー40の回動量と、初期付勢バネ42及びレバー40の重量に起因する重力モーメント及び付勢バネ43によってセンサレバー40に与えられる付勢力の関係をグラフに示すと、図4に示すようになる。
【0045】
次に、図3を用いて、実際のシートの挙動とあわせて、定着排出センサ37の動作を説明する。シートが排出搬送パス26aへ向かう場合の定着排出センサ37の動作を図3(a)〜図3(c)に、シートが反転パス35aに向かう場合の定着排出センサ37の動作を図3(d)〜図3(f)に示す。
【0046】
正常なシート搬送動作においては、センサレバー40は待機位置と境界位置の間で動作する。シートSが定着排出センサ部へ搬送されてくると、シート先端がセンサレバー40のレバー部40aを押して、センサフラグ40bがフォトインタラプタ41を非遮光状態から遮光状態に変化するため、定着排出センサ37は、シートが搬送されて来たことを検知するためのシート先端検知信号を発生する(図3(a),図3(d)参照)。
【0047】
シートが同センサ部を通過している間は、センサレバー40が第一検知ポイントを超えて回動した状態であって、かつ第二検知ポイントまでは回動していない状態にある。このとき、センサレバー40は境界位置に到達していないこともあるし、到達していることもある(図3(b),図3(e)参照)。図3(b)では、付勢バネ43が係止部44aに当接しない状態でセンサレバー40を押しながらシートが搬送されている様子を例示的に示している。図3(e)では、付勢バネ43が係止部44aに接するまでセンサレバー40を押しながらシートが搬送されている様子を例示的に示している。
【0048】
シートが正常に搬送されてセンサ部を通過し終えると、センサレバー40(センサフラグ40b)は待機位置に戻る。この待機位置に戻る際、フォトインタラプタ41が遮光状態から非遮光状態と変化することで、定着排出センサ37は、シートの後端がセンサ部を通過し終えたタイミングを検知するためのシート後端検知信号を発生する。
【0049】
なお、上記の定着排出センサ37からの信号に基づいて画像形成装置のコントローラ310が画像形成装置の所定の動作を制御する。なお、コントローラ310は、ROM、RAMを備え、定着排出センサ37などからの信号が入力される。コントローラ310は、例えば、定着排出センサ37から入力された信号に基づいて搬送遅延や滞留などのジャムを判断して、画像形成装置の搬送動作を停止させる。
【0050】
例えば、定着排出センサ37からの信号に基づいてシートの先端の到達を検知してから、正常な搬送においてそのシートの後端がセンサ37を通過するであろう所定時間(正常搬送シート検出時間)を経過後にも、シートの後端の通過を検知しない場合には、シートが搬送路内に滞留したジャムが発生したと、コントローラ310は判断する。そして、コントローラ310は画像形成装置のシート搬送動作を停止させる。また、両面プリント時には、コントローラ310は、定着排出センサ37からの信号に基づいて、搬送されるシートの後端位置を認識し、それに応じて反転ローラ35の回転方向を切り替えるように画像形成装置のシート搬送動作を制御する。
【0051】
一方、定着排出センサ37の下流において、例えばシートSの搬送が妨げられる状況が生じた場合、上流側からは定着ローラ25によってシートSが送り込まれるため、定着排出センサ近傍のエリアにおいて、シートSのループは成長する。このループが大きくなるに従い、定着排出センサのセンサレバー40はシート面に押されて回動し、やがて境界位置で係止される。その後もループが成長し続け、あるいはアコーデオン状に折り曲がって、センサレバー40のレバー部40aに対するシートSの付勢力が付勢バネ43による弾性的係止力を含んだ閾値98を超えると、センサレバー40は境界位置を越えて回動し、やがて第二検知ポイントに到達する(図3(c),図3(f)参照)。正常搬送シート検出時間に達する前であっても、センサレバー40がこの境界位置を超えて回動した際、フォトインタラプタ41が遮光状態から非遮光状態に切り替わるため、コントローラ310は、シートのジャムが発生したことを検知する。そして、この第2の種類のジャム発生時も、コントローラ310は画像形成装置のシート搬送動作を停止させる。
【0052】
なお、ここではセンサレバー40が待機位置から境界位置までの移動域内に位置しているときに、センサレバー40にセンサレバー40の自重および初期付勢バネ42のバネ力が作用してセンサレバー40が待機位置へ付勢される形態を例示した。しかし、センサレバー40が待機位置から境界位置までの移動域内に位置しているとき、センサレバー40の自重のみでセンサレバー40が待機位置へ付勢される構成にしてもよい。いうまでもなく、このように構成した場合も、センサレバー40が待機位置から境界位置までの移動域内に位置しているときには付勢手段を構成する付勢バネ43のバネ力はセンサレバー40に作用せず、センサレバー40が境界位置を超えて移動すると付勢バネ43の付勢力がセンサレバー40に作用するように構成する。
【0053】
次に、画像形成装置の搬送制御の観点から、コントローラ310による定着排出センサ37の出力のモニター方法を説明する。
【0054】
先述の通り、本実施形態では、一つのフォトインタラプタ41のON/OFFを用いて、第一検知ポイントと第二検知ポイントの2段階の検知を行う構成を採用している。そこで、センサ出力信号の誤判定を防止する目的で、画像形成装置のコントローラ310で定着排出センサの出力をモニターするタイミングを管理することによって、第一検知ポイントと第二検知ポイントのいずれの出力であるかを切り分けている。
【0055】
図5に、コントローラ310でのセンサ出力モニター状況と、センサ出力波形の例を示す。コントローラ310は、定着部より上流の搬送センサ311にシートが到達したことをトリガとし、所定時間後から定着排出センサのモニターを開始する。そして、定着排出センサ37の出力がONに切り替わると、それをシート先端の検知(第一検知ポイント)とコントローラ310は判断する。これと同時に、ジャム検知を目的とした第一検知ポイントと第二検知ポイントの同時モニターをコントローラ310が開始する。
【0056】
搬送中にシートのループ過多、アコーデオン状の折れ曲がりが発生した場合には、先述の通り、第二検知ポイント以上にセンサレバー40が回動して、正常搬送シート検出時間に達する前に定着排出センサの出力はOFFとなる。
【0057】
また、シート先端が定着排出センサに到達したものの、搬送中に定着ローラ(定着回転体)に巻き付いて引き戻されたケースについても、正常搬送シート検出時間に達する前にセンサレバー40は待機位置へと戻るため、同様に定着排出センサの出力はOFFとなる。これらのケースでは、定着排出センサの出力信号は図5(b)に示すようになる。
【0058】
このように、シートのループ過多・定着巻き付きのモニター中に定着排出センサの出力がOFFした場合、コントローラ310はジャムを報知して画像形成動作を停止させる。言い換えると、コントローラ310は、搬送されるシートが定着排出センサに対向した箇所に存在しているはずである時間帯に定着排出センサからの出力がOFFになったら、ジャムが発生したと判断して画像形成動作を停止させる。
【0059】
なお、ここではいずれのケースのジャムが発生したかの識別は行っていない。本実施形態では、コントローラ310は、通紙中のシートの搬送方向における長さを認識しており、シートの後端が定着排出センサを抜ける理論タイミングの所定時間手前(ここでは、搬送距離換算で20mm手前に設定)まで、ループ過多・定着巻き付きのモニターを継続する。つまり、定着排出センサ37でシートの先端を検知してから、シートの搬送方向での長さから20mmを減じた値を搬送速度で割った時間が経過するまで、コントローラ310はループ過多・定着巻き付きのモニターを継続する。その後はシート後端検知(第一検知ポイント)のモニターに移行し、定着排出センサの出力がOFFすると、そこでシートの後端が定着排出センサ37を通過し終えたと判断する。通紙中のシートの長さは、操作部からの入力に基づいてコントローラ310が認識する。なお、搬送路中に設けられた長さ検知手段によって長さを検知し、それに基づいてコントローラ310がシートの長さを認識するようにしてもよい。なお、通常のシート搬送時の定着排出センサの出力信号は、図5(a)に示すようになる。
【0060】
ところで、上記の実施形態では、定着巻き付き検知の点を考慮して、図5(b)の短パルス状信号のOFFにより(即ち、シート先端検知から所定時間経過前に、図3(c)、(f)の状態となったのち、さらにセンサレバー40が待機位置に戻った時)、装置を停止するもの例示している。しかし、アコーディオンジャムの検知を考慮して、図5(b)の短パルス状信号の発生前の最初のOFF信号により(即ち図3(c)、(f)の状態での信号により)、装置を停止するように構成してもよい。
【0061】
本実施形態によれば、付勢バネ43が、シートに押されて移動するセンサレバー40を所定の位置で係止する。そのため、所定の位置にて、付勢バネ43の付勢力(弾性的係止力)以上の力がセンサレバー40に作用しない限り、センサレバー40が所定の位置を超えて移動せず、フォトインタラプタ41の出力変化も生じない。従って、誤検知の発生が少ないシート搬送装置を提供することができる。
【0062】
ところで、上述の実施形態では、センサレバー40を境界位置に係止するために、付勢バネ43のバネ力を用いる構成を例示した。しかしながら、本発明はバネ力を用いてセンサレバーに境界位置で弾性的係止力を与え、境界位置を超えたら弾性的付勢力を与える構成に限定されるものではない。境界位置を超えたセンサレバーに対して力を付与可能なものであれば、他の手段を用いても構わない。以下では図6を用いて、錘部材の重量を利用してセンサレバー40に対して境界位置で力を付与する構成を変形例として示す。
【0063】
軸方向の両端が装置フレームに揺動可能に設けられた負荷レバー60は、センサフラグ40bの端部と当接可能な係止部60aと、錘(錘部材)61が固定された加重部60bとを有する。ここで、シートが搬送されていないときには、錘61の重量により、負荷レバー60は固定位置に設けられた突き当て部62に突き当たった待機位置に位置している(図6(a)参照)。シートが搬送されていないときには、負荷レバー60はセンサレバー40から離れている。
【0064】
待機位置からセンサレバー40を回動させていくと、やがてセンサフラグ40bが負荷レバー60の係止部60aと当接する境界位置に達する(図6(b)参照)。境界位置においては、錘61の重量に起因する力が、センサフラグ40bと係止部60aの接触部に作用する。そのため、搬送されるシートからセンサレバー40に加わるセンサレバー40を回動させようとする力が、錘61の重量による付勢力以下である場合、センサレバー40の回動は、待機位置と境界位置の間に規制される。しかし、センサレバー40を回動させようとする力が、錘61の重量による付勢力を上回る場合は、センサフラグ40bが負荷レバー60を押して回動させるため、センサレバー40は境界位置を超えた退避位置まで回動可能となる(図6(c)参照)。
【0065】
なお、この変形例では、上述の実施形態で付勢力の切り換えを付勢バネで行っていたのに対して負荷レバー60の錘61を使っている点が異なり、その他の点は前述の実施形態と同様である。つまりシートに過多なループが形成されたり、アコーデオン状に折れ曲がったりしたことを、センサレバー40が境界位置を超えて回動したことをフォトインタラプタで検知することでコントローラ310が認識する。
【0066】
なお、この変形例では、センサレバー40が待機位置から境界位置までの移動域内に位置しているときには、センサレバー40にはセンサレバー40の自重および初期付勢バネ42の付勢力が作用して待機位置へセンサレバー40は付勢される。しかし、センサレバー40が待機位置から境界位置までの移動域内に位置しているとき、センサレバー40の自重のみで待機位置へ付勢する構成にしてもよい。いうまでもなく、このように構成した場合も、センサレバー40が待機位置から境界位置までの移動域内に位置しているときには付勢手段を構成する負荷レバー60はセンサレバー40に作用せず、センサレバー40が境界位置を超えて移動すると負荷レバー60の付勢力がセンサレバー40に作用するように構成する。
【0067】
上述した本実施形態によれば、所定の閾値を超える力がセンサレバーに作用して初めてループ過多を検知するようにできる。そのため、シート先後端がセンサレバーを通過する時や、シート先後端が搬送ローラのニップを通過する時のショックによって、センサレバーが弾かれ、ループ過多を誤検知するという従来技術では発生する恐れのあった問題が解消される。そして、ジャムシートの状態が、処理が非常に難しいレベルにまで悪化する前に、その前兆を検知して画像形成装置の動作を停止させることができる。
【0068】
また本実施形態によれば、搬送パス上でセンサレバーを配置できる場所の制約が少ない。従来の技術では、シートのコシの強さの違いや、シート先後端のカール状態など、シートの種類に起因する物性差の影響を受け易いため、それらの影響が顕著となる搬送パスの屈曲部には配置することが難しかった。また、従来の技術では、シートの搬送姿勢の影響も受け易いため、例えば搬送パスの分岐部35b付近のように、どちらの搬送パスへ搬送されるかによってシートの搬送姿勢が変化する箇所にも配置することが難しかった。本実施形態によれば、搬送中のシートの挙動バラツキが原因で、センサレバーが突発的にループ過多検知位置まで動いてしまう問題に対しても、十分なマージンを確保することができる。これにより、搬送パスの屈曲部や、両面反転部のパス分岐点近傍など、シートの挙動バラツキが大きいために、従来技術ではループ量検知センサを配置することが難しかったエリアに対しても、配置することが可能となる。このように本実施形態によれば、誤検知のリスクを軽減しながらも、搬送パス上におけるセンサレバーの配置場所に関する制約が少ない。
【0069】
また本実施形態では、一つのフォトインタラプタで第一検知ポイントと第二検知ポイントの2段階検知を行う構成を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第一検知ポイントでセンサレバーによって信号が変化するフォトインタラプタと、第2検知ポイントでセンサレバーによって信号が変化する別のフォトインタラプタの2つのフォトインタラプタを用いて構成しても構わない。フォトインタラプタを2つ設けることにより、第一検知ポイントの出力であるか第二検知ポイントの出力であるかが識別可能になる。したがって、上述した実施形態で言えば、ジャム発生時に、それが搬送滞留に伴うループ過多に起因するものか、定着ローラにシートが引込まれたことに起因するものかを判別することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、搬送中のシートのループ量検知を、非常にシンプルな構成で、高精度かつ安定的に行うことが可能となる。また、その適用範囲や応用方法も幅広く、多くの可能性を持っている。
【0071】
〔第2実施形態〕
前述した第1実施形態では、シートのたるみ状態(ループ量)を検知する機能を有するシート搬送装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の機能に対して応用することも可能である。その一例として、シートのコシの強さ(シートの坪量)を検知する用途に適用する実施形態を、図7〜図10を用いて説明する。なお、画像形成装置の概略構成は、図11に示した第1実施形態の構成と同様であるため、第2実施形態においても共通する要素は同じ符号で説明する。
【0072】
本実施形態では、レジストローラ23とその上流の搬送ローラ39の間の屈曲した搬送パス(以下、「屈曲パス」という)に、シート検知装置としてのシート検知センサ38が設けられている。シート検知センサ38は、シートによるコシの強さの違いを検知して、シートの坪量を識別する方式を採用している。以下に、その詳細を説明する。
【0073】
図7にシート検知センサ周辺の概略断面図を示す。図8にシート検知センサの動作位相説明図を示す。前記シート検知センサ38は、搬送されるシートに押されて移動するシート検知レバー(移動部材)50と、前記シート検知レバー50を検知するための複数のフォトインタラプタ(検知手段)54a,54bと、を有している。更に、搬送ローラ39とレジストローラ23の間は搬送パスが屈曲パスになっている。この屈曲パスの内側には、画像形成装置のフレームに対して揺動可能に支持された搬送内ガイド51が配置されている。搬送内ガイド51には、該搬送内ガイド自身の揺動中心近傍に回動中心を持つシート検知レバー50が、該搬送内ガイド自身とは独立して揺動可能に軸支されている。シート検知レバー50は軸方向における両端側で搬送内ガイド51に軸支えられている。シート検知レバー50は、初期付勢バネ(不図示)によって、搬送中のシートと当接する方向(搬送パスに対して突出する方向)へ付勢されている。シート検知レバー50は、シート面によってレバー部50aが押し込まれた際には、搬送内ガイド51の内部へ退避することができる。このシート検知レバー50が搬送パス側へ突出した状態を、「待機位置」とする(図8(a)参照)。
【0074】
また、搬送内ガイド51の近傍には、第一付勢バネ52と、第二付勢バネ53が設けられている。第一付勢バネ52は、搬送内ガイド51と画像形成装置本体のフレームとの間で所定の与圧がかかるように組み込まれている。即ち、第一付勢バネ52は、一端が搬送内ガイド51に他端が画像形成装置本体のフレームに接した状態で圧縮されている。第二付勢バネ53は、搬送内ガイド51との対向する装置本体フレーム側に所定の与圧がかかった状態で組み込まれている。即ち、第二付勢バネ53は、両端が画像形成装置本体のフレームに接した状態で圧縮されている。
【0075】
また、第一付勢バネ52と搬送内ガイド51とで構成されるバネユニットは、シートに押されて移動するシート検知レバー50が第1の位置(図8(b)第一境界位置)に移動したときシート検知レバー50と接することでシート検知レバー50を弾性的に係止する。
【0076】
第1の付勢手段を構成する第一付勢バネ52は、第一境界位置でシート検知レバー50に弾性的係止力を付与する。第一付勢バネ52は、シート検知レバー50が第一境界位置を超えて移動する際に第1の付勢力をシート検知レバー50に付与する。また、第二付勢バネ53は、第1の付勢力以上の力でシートに押されて移動するシート検知レバー50が第1の位置とは異なる第2の位置(図8(c)に第二境界位置)に移動したときシート検知レバー50を付勢する搬送内ガイド51の係止部51bと接することでシート検知レバー50に弾性的係止力を付与する。第2の付勢手段を構成する第二付勢バネ53は、第二境界位置を超えてシート検知レバー50が移動する際に、シート検知レバー50の移動を規制する第2の付勢力をシート検知レバー50に付与する。
【0077】
搬送内ガイド51は、第一付勢バネ52の作用により、その可動範囲の中で搬送パス側へ突き当て付勢された状態で組み付けられている(図8(a)(b)参照)。図8(b)に示す姿勢にある搬送内ガイド51に突き当たった状態のシート検知レバー50の位置を「第一境界位置」とする。
【0078】
シート検知レバー50を待機位置へ付勢する初期付勢バネの圧は、第一付勢バネ52の圧よりも十分小さく設定されている。まず、シートの先端に押されてシート検知レバー50が搬送内ガイド51内へ退避して搬送内ガイド51に突き当たる。更にシート面に押されるシート検知レバー50によって搬送内ガイド51が押されて、そのシート検知レバー50が搬送内ガイド51を押力が第一付勢バネ52の与圧を超えると、第一付勢バネ52は圧縮され、搬送内ガイド51は、シート検知レバー50と共に搬送パスから退避する方向へ揺動する。
【0079】
搬送内ガイド51には、第二付勢バネ53に対向する位置に、係止部51aが設けられている。搬送内ガイド51が第一付勢バネ52の第1の付勢力以上の力で押されて揺動すると、やがて、係止部51aが第二付勢バネ53に当接する。そして、第二付勢バネ53の与圧の作用により、搬送内ガイド51は第二付勢バネ53により係止される(図8(c)参照)。シート検知レバー50が図8(c)に示す姿勢にある状態を「第二境界位置」とする。シート検知レバー50を介して搬送内ガイド51を押圧するシート面の当接力が、第一付勢バネ52と第二付勢バネ53の付勢力の合算値を上回ると、第二付勢バネ53が縮む。これにより、シートに押されて、搬送内ガイド51とともにシート検知レバー50は可動領域の端にあたる「退避位置」まで揺動する(図8(d)参照)。
【0080】
シート検知レバー50には、シートと当接するレバー部50aのほかに、複数のフォトインタラプタ(検知手段)54a,54bを遮光するためのセンサフラグ50bが設けられている。このシート検知レバー50は、その回動量に応じて、センサフラグ50bによるフォトインタラプタ54a,54bの発光部・受光部間の遮光/非遮光が切り替わる。このシート検知レバー50の回動量とフォトインタラプタ54a,54bの発光部・受光部間の遮光/非遮光状態の関係は、図8に示す通りである。
【0081】
具体的には、シート検知センサ部にシートが無い状態(図8(a)に示す待機位置)ではフォトインタラプタ54aの発光部・受光部間とフォトインタラプタ54bの発光部・受光部間も非遮光状態(フォトインタラプタ54a、54bの出力はOFF信号)となっている。そして、シート検知レバー50がシートに押されて待機位置から所定量だけ回動すると、第二フォトインタラプタ54bの発光部・受光部間が非遮光状態(OFF信号)のまま、第一フォトインタラプタ54aの発光部・受光部間のみが遮光状態(ON信号)に変化する。これを第一検知ポイントと定義する。
【0082】
ここで、シート検知レバー50に対するシートの押圧力が第一付勢バネ52の第1の付勢力未満の場合は、シート検知レバー50は搬送内ガイド51に係止され、第一付勢バネ52の付勢力により移動が規制される。このシート検知レバー50に対するシートの押圧力が第一付勢バネ52の第1の付勢力以上の場合、第一付勢バネ52の付勢力による移動規制が解除され、シート検知レバー50はシートに押されて更に回動する。このように、シート検知レバー50がシートに押されて第一境界位置から更に所定量だけ回動すると、第一フォトインタラプタ54aの発光部・受光部と第二フォトインタラプタ54bの発光部・受光部が共に遮光状態(ON信号)となる。これを第二検知ポイントと定義する。
【0083】
ここで、シート検知レバー50に対するシートの押圧力が第一付勢バネ52の第1の付勢力及び第二付勢バネ53の第2の付勢力未満の場合は、搬送内ガイド51の係止部51aが第二付勢バネ53に係止され、その付勢力によりシート検知レバー50の移動が規制される。このシート検知レバー50に対するシートの押圧力が第一付勢バネ52の第1の付勢力及び第二付勢バネ53の第2の付勢力以上の場合、その付勢力による移動規制が解除され、シート検知レバー50はシートに押されて更に回動する。このように、シート検知レバー50がシートに押されて第二境界位置から更に回動すると、第二フォトインタラプタ54bの発光部・受光部間が遮光状態(ON信号)のまま、第一フォトインタラプタ54aの発光部・受光部間のみが非遮光状態(OFF信号)に変化する。これを第三検知ポイントと定義する。そして、シート検知レバー50及び搬送内ガイド51は、第一付勢バネ52及び第二付勢バネの付勢力以上のシートの押圧力に押されて移動し、図8(d)に示す退避位置に至る。
【0084】
このように、複数の境界位置、複数の検知ポイントを設けることで、前述した実施形態に比べて、更に細かく段階的にシートの検知が行える。具体的には、前述したように、3段階でセンサ出力が変化する。各検知ポイントの相対位置は、待機位置→第一検知ポイント→第一境界位置→第二検知ポイント→第二境界位置→第三検知ポイント→退避位置、の関係にある。各位置の相関及びシート検知レバーの移動量と付勢力の関係を、図10に示す。
【0085】
次に、シート検知センサ38のシート搬送中の動作について、図9(a)〜図9(d)を用いて説明する。搬送ローラ39によって搬送されてきたシートSの先端は、まずシート検知レバー50を、第一検知ポイントを超える位置まで回動させる。第一検知ポイントの検知タイミングは、搬送後半において、停止しているレジストローラ23に対してシート先端を突き当てて斜行補正を行う際に、シートSにどの程度のループを形成させるかを制御する為に使用する。なお、このシートのループのための搬送制御については、本発明の本質ではないため、説明を省略する。
【0086】
シート先端がレジストローラ手前の屈曲パスに進入すると、シートSは自身の剛性の作用により、搬送パスの内側であるシート検知レバー50及び搬送内ガイド51側へと接触する。シート先端がレジストローラ23に到達するまでの間に、シート面がシート検知レバー50及び搬送内ガイド51に対して与える力の最大値は、シートのコシの強さ(坪量)に依存する。シートSの坪量が100g/m未満の比較的コシの弱い薄紙や普通紙である場合、そのシートSがシート検知レバー50及び搬送内ガイド51に当接する力は、搬送内ガイド51を第一境界位置に係止している力よりも小さい。そのため、シート先端がレジストローラ23に到達するまでの間では第一検知ポイントの検知出力しか得られない。一方、シートSの坪量が100〜180g/m程度の厚紙の場合、そのシートSがシート検知レバー50及び搬送内ガイド51に当接する力が、第一境界位置の弾性力(弾性的係止力)よりも大きく、第二境界位置の弾性力(弾性的係止力)よりも小さくなるように、各バネ力が調整されている。そのため、シート先端がレジストローラ23に到達するまでの間に、第二検知ポイントの検知出力が得られる。更に、シートSの坪量が180g/mを超える超厚紙の場合は、そのシートSがシート検知レバー50及び搬送内ガイド51に当接する力が、第二検知ポイントの弾性力(弾性的係止力)を上回るよう設定されている。そのため、シート先端がレジストローラ23に到達するまでの間に第三検知ポイントの検知出力が得られる。画像形成装置のコントローラ310は、シート検知レバー50がシートの先端を検知したことをトリガに、シート先端がレジストローラ23に到達する予定時間までの間、シート検知センサ38の出力をモニターし続ける。そして、第一検知ポイント、第二検知ポイント、第三検知ポイントのいずれの出力が得られたかに基づいて、搬送中のシートの坪量を画像形成装置のコントローラ310が判別する。
【0087】
本実施形態によれば、前述した実施形態と同様に、係止バネ52,53が、シートに押されて移動するシート検知レバー50及び搬送内ガイド51を所定の位置で係止する。そのため、所定の位置にて、係止バネ52,53の付勢力(係止力)以上の力がシート検知レバー50及び搬送内ガイド51に作用しない限り、シート検知レバー50及び搬送内ガイド51が所定の位置を超えて移動せず、フォトインタラプタ54a,54bの出力変化も生じない。従って、誤検知の発生が少ないシート搬送装置を提供することができる。
【0088】
なお、本第2実施形態では、シートの先端の到達の検知とシートの坪量の判別を行うものとして説明した。しかし、本第2実施形態として説明したシート検知レバー50および搬送内ガイド51と同様な構成を用いて、第1実施形態のようにシートの到達等と、ループ過多による不良と、を検知するように構成してもよい。即ち、例えば、待機位置から第一境界位置までの間を移動中のシート検知レバー50によって出力が変化するフォトインタラプタからの信号によってシートの到達を検知する。更に、第一係止バネ52の付勢力に抗して第一境界位置を超えて移動中のシート検知レバー50によって出力が変化するフォトインタラプタからのフォトインタラプタの信号によってループ過多を検知するように第一付勢バネ52のバネ力やシート検知レバー50の配置を設定する。
【0089】
また、シート検知レバー50及び搬送内ガイド51の付勢力が、シート検知レバー50及び搬送内ガイド51の可動範囲の途中で段階的に切り替わる構成により、シート検知センサ38に力センサとして機能を持たせることができる。この機能を用いることにより、上述したように、搬送中のシートのコシの強さを検知して、そのシートの種類(シートの坪量)を判別することもできる。
【0090】
また、本実施形態によれば、搬送中のシートの坪量の検知を、非常にシンプルな構成で、高精度かつ安定的に行うことが可能となる。また、その適用範囲や応用方法も幅広く、多くの可能性を持っている。
【0091】
〔他の実施形態〕
前述した実施形態では、第1実施形態で1つのフォトインタラプタ、第2実施形態で2つのフォトインタラプタを用いた構成を例示したが、このフォトインタラプタの使用個数はこれに限定されるものではない。同様に、第1実施形態では1つの付勢バネを用いた1つの境界位置、第2実施形態では2つの付勢バネを用いた2つの境界位置を例示したが、付勢バネ(付勢手段)の使用個数及び境界位置は、これらに限定されるものではない。これらは必要に応じて適宜設定すれば良い。
【0092】
また前述した実施形態では、定着ローラの下流の搬送パスの分岐部35bにおける搬送センサ、あるいは、屈曲した搬送パスにおける搬送センサに対して本発明を適用した構成を例示したが、これに限定されるものではない。搬送パス内における任意の場所の搬送センサに対して適用することも可能である。
【0093】
また、前述した実施形態では、検知手段としてフォトインタラプタを例示したが、本発明は検知手段の種類によって制約を受けるものではない。例えば、可変抵抗や接点スイッチ、反射型の光学センサなど、他の検知手段でも代用可能である。
【0094】
また前述した実施形態では、色の異なる4つの画像形成ステーション(Y,M,C,K)を備えた画像形成装置を例示しているが、この色や数はこれらに限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
【0095】
また前述した実施形態では、露光手段としてレーザースキャナを使用したが、これに限定されるものではなく、例えばLEDアレイ等を使用しても良い。
【0096】
また前述した実施形態では、画像形成装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジとして、感光ドラムと、該感光ドラムに作用するプロセス手段としての帯電手段,現像手段,クリーニング手段を一体に有するプロセスカートリッジを例示した。しかし、プロセスカートリッジは、これに限定されるものではない。感光ドラムの他に、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうち、いずれか1つを一体に有するプロセスカートリッジであっても良い。
【0097】
また前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置におけるシート検知装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0098】
また前述した実施形態では、画像形成装置が一体に有するシート搬送装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像形成装置に対して着脱可能なシート処理装置が有するシート搬送装置であっても良く、該シート搬送装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0099】
また前述した実施形態では、記録対象としての記録紙等のシートを搬送する搬送パスにおけるシート検知装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、読取対象としての原稿等のシートを搬送するシート搬送装置に適用しても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 …プリンタ本体
20 …給送部
23 …レジストローラ
25 …定着ローラ
37 …定着排出センサ
38 …シート検知センサ
40 …センサレバー
40a …レバー部
40b …センサフラグ
41 …フォトインタラプタ
42 …付勢バネ
43 …付勢バネ
44 …ガイド
44a …係止部
50 …シート検知レバー
50a …レバー部
50b …センサフラグ
51 …搬送内ガイド
51a …係止部
52 …第一係止バネ
53 …第二係止バネ
54a,54b …フォトインタラプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されるシートに押されて待機位置から移動するレバーと、
前記レバーの位置に応じた信号を形成する検知手段であって、前記待機位置から所定位置までの第1移動域内を前記レバーが移動するときに第1の信号を形成し、前記所定位置を超えた第2移動域内を前記レバーが移動するときに第2の信号を形成する検知手段と、
前記第1移動域内に前記レバーがあるときには前記レバーに付勢力を与えず、前記第2移動域内に前記レバーがあるときにシートに押されて移動する方向とは反対への付勢力を前記レバーに付与する付勢手段と、
を有することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、バネ力を前記付勢力として前記レバーに付与するバネユニットを有することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記装置は前記バネユニットの移動を規制する係止部を備えており、
前記バネユニットは前記レバーに取り付けられ、
前記待機位置から前記所定位置に前記レバーが移動すると前記係止部に前記バネユニットが当接することで、前記レバーに前記バネユニットの前記バネ力が付与されることを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記待機位置から前記所定位置に前記レバーが移動すると前記レバーが前記バネユニットに当接することで、前記レバーに前記バネユニットの前記バネ力が付与されることを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記付勢手段は、可動な錘部材を備え、
前記待機位置から前記所定位置まで前記レバーが移動すると前記レバーが前記錘部材に当接して、前記レバーに前記錘部材の重力が作用することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記第1の信号が所定時間以上継続したことに応じて前記搬送手段の搬送動作を停止させ、前記第1の信号が発生してから前記所定時間が経過する前に、前記第2の信号が発生したことに応じて前記搬送手段の搬送動作を停止させる制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記検知手段からの信号に基づいて、搬送されるシートの種類を検知する制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
シートを案内する第1の搬送パスと、
前記第1の搬送パスから分岐する第2の搬送パスと、を有し、
前記レバーは、前記第1の搬送パスと前記第2の搬送パスの分岐部に設けられ、前記第1の搬送パスによって案内されるシートと前記第2の搬送パスによって案内されるシートによって押されて移動することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって画像が形成されるシートを搬送する請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記シート搬送装置は、前記画像形成部によって形成された画像をシートに定着する定着手段を備え、
前記レバーは、前記定着手段よりも搬送方向における下流に設けられることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
画像が定着されたシートを排出手段へ案内する第1の搬送パスと、
前記第1の搬送パスから分岐し、画像が定着されたシートを反転搬送する反転搬送手段へ案内する第2の搬送パスと、を有し、
前記レバーは、前記第1の搬送パスと前記第2の搬送パスの分岐部に設けられ、
前記第1の搬送パスによって案内されるシートと前記第2の搬送パスによって案内されるシートによって押されて前記レバーは移動することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−30973(P2012−30973A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129709(P2011−129709)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【特許番号】特許第4841014号(P4841014)
【特許公報発行日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】