説明

シート状接着剤及びウエハ加工用テープ

【課題】材料の保管が容易で生産効率が高く、接着力の経時劣化が少なく保管が容易なシート状接着剤、及び、このシート状接着剤を使用して作製したウエハ加工用テープを提供する。
【解決手段】シート状接着剤12は、熱や高エネルギー線で硬化する硬化樹脂とエポキシを硬化させるエポキシ硬化剤とを含み、前記硬化樹脂の一部又は全部はキレート変性エポキシ樹脂であり、前記硬化樹脂成分中に前記キレート変性エポキシ樹脂が10質量%以上含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状接着剤及びウエハ加工用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハを半導体チップ単位に切断分離(ダイシング)する工程、分離された半導体チップをピックアップする工程、さらにピックアップされた半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するダイボンディング(マウント)工程が実施される。
【0003】
近年、上記半導体装置の製造工程に使用されるウエハ加工用テープとして、例えば、基材フィルム上に粘着剤層が設けられたウエハ加工用テープや、粘着剤層の上にさらにシート状接着剤が積層された構造を有するウエハ加工用テープ(ダイシングダイボンドフィルム:DDF)が提案され、既に実用化されている。
【0004】
また、ダイボンディング(マウント)工程における半導体チップとリードフレームやパッケージ基板等との間の接着力を向上させるために、ウエハ加工用テープのシート状接着剤の組成物としてシランカップリング剤を添加する方法が開示されている(特許文献1を参照)。しかしながら、シランカップリング剤は低分子量であるため、時間が経過するとシート状接着剤の表面に存在したシランカップリング剤がシート状接着剤の内部に入り込み、シート状接着剤の表面の接着力を低下させる現象(以下、ブリードアウトと呼ぶ)が発生してしまうという問題があった。
【0005】
上記の問題を解決するために、シランカップリング剤同士を反応させた上で、ウエハ加工用テープのシート状接着剤の組成物として添加する方法も開示されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3620156号公報
【特許文献2】特許第4165065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2で示したシランカップリング剤同士を反応させた材料であっても、シランカップリング剤は水分と反応して劣化してしまうため、シート状接着剤の製造前の段階で材料としてのシランカップリング剤を厳しい条件で保管しなければならず、シート状接着剤やウエハ加工用テープの生産効率を低下させてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、材料の保管が容易で生産効率が高く、接着力の経時劣化が少なく保管が容易なシート状接着剤、及び、このシート状接着剤を使用して作製したウエハ加工用テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討した結果、キレート変性エポキシ樹脂をシート状接着剤組成物として含むことにより、材料の保管が容易で生産効率が高く、接着力の経時劣化が少なく保管が容易なシート状接着剤及びウエハ加工用テープを作製することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の第1の態様に係るシート状接着剤は、硬化樹脂成分として、熱や高エネルギー線で硬化する硬化樹脂とエポキシを硬化させるエポキシ硬化剤とを含み、前記硬化樹脂の一部又は全部はキレート変性エポキシ樹脂であり、前記硬化樹脂成分中に前記キレート変性エポキシ樹脂が10質量%以上含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様に係るシート状接着剤は、上記の本発明の第1の態様に係るシート状接着剤において、前記硬化樹脂成分100質量部に対して、アクリル樹脂共重合体130〜270質量部を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の態様に係るウエハ加工用テープは、基材フィルムの上に粘着剤層が積層された粘着フィルムの上に、本発明の第1または第2の態様に係るシート状接着剤が、前記粘着フィルムの前記粘着剤層に積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、材料の保管が容易で生産効率が高く、接着力の経時劣化が少なく保管が容易なシート状接着剤を作製できる。また、このシート状接着剤を使用してウエハ加工用テープを作製することにより、材料の保管が容易で生産効率が高く、接着力の経時劣化が少なく保管が容易なウエハ加工用テープを作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート状接着剤12を用いた接着フィルムを示す断面図である。
【図2】発明の一実施形態に係るウエハ加工用テープを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシート状接着剤12を用いた接着フィルム20を示す断面図である。
図1に示すように、接着フィルム20は、離型フィルム11上に本発明によるシート状接着剤12が積層された構成を有している。なお、離型フィルム11が設けられている面とは反対のシート状接着剤12の面上に、更に、離型フィルム11とは別の離型フィルムを積層した構成の接着フィルムで、ロール状に巻いたものであってもよい。また、上記のシート状接着剤12は、使用工程や装置にあわせて予め所定形状に切断(プリカット)されていてもよい。
【0016】
次に、本発明によるシート状接着剤12と、基材フィルムの上に粘着剤層が積層された粘着フィルムの粘着剤層とを貼り合わせたウエハ加工用テープ(ダイシングダイボンディングフィルム)について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るウエハ加工用テープ10を示す断面図である。
【0017】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るウエハ加工用テープ10は、フィルム状の基材フィルム13aとその上に形成された粘着剤層13bとからなる粘着フィルム13と、この粘着フィルム13上に積層されたシート状接着剤12とを有する。このように、ウエハ加工用テープ10では、基材フィルム13aと粘着剤層13bとシート状接着剤12とがこの順に形成されている。
【0018】
なお、粘着剤層13bは一層の粘着剤層により構成されていてもよいし、二層以上の粘着剤層が積層されたもので構成されていてもよい。また、図2においては、さらに、シート状接着剤12の上に、離型フィルム11が設けられている様子のウエハ加工用テープ10を示している。
【0019】
粘着フィルム13及びシート状接着剤12は、使用工程や装置にあわせて予め所定形状に切断(プリカット)されていてもよい。本発明のウエハ加工用テープ10は、半導体ウエハ1枚分ごとに切断された形態と、これが複数形成された長尺のフィルムをロール状に巻き取った形態とを含む。
【0020】
以下、本実施形態の接着フィルム20及びウエハ加工用テープ10の各構成要素について詳細に説明する。
【0021】
(離型フィルム)
離型フィルム11は、シート状接着剤12の取り扱い性を良くする目的で用いられる。
【0022】
離型フィルム11としては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ピニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。
【0023】
離型フィルム11の表面張力は、40mN/m以下であることが好ましく、35mN/m以下であることがより好ましい。このような表面張力の低い離型フィルム11は、材質を適宜に選択して得ることが可能であり、またフィルムの表面にシリコーン樹脂等を塗布して離型処理を施すことで得ることもできる。
離型フィルム11の膜厚は、通常は5〜300μm、好ましくは10〜200μm、特に好ましくは20〜150μm程度である。
【0024】
(シート状接着剤)
シート状接着剤12は、半導体ウエハ等が貼合されダイシングされた後、半導体チップをピックアップする際に、半導体チップ裏面に付着しており、チップを基板やリードフレームに固定する際の接着剤として使用されるものである。
【0025】
シート状接着剤12は、熱や高エネルギー線で硬化する硬化樹脂を含み、この硬化樹脂の一部又は全部はキレート変性エポキシ樹脂からなっている。すなわち、この硬化樹脂は、キレート変性エポキシ樹脂のみであってもよいし、キレート変性エポキシ樹脂及びキレート変性されていないエポキシ樹脂を含む他の硬化樹脂であってもよい。
【0026】
キレート変性エポキシ樹脂は、金属酸化物および/又は金属水酸化物を含むキレート成分と分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ成分を反応させて得られるものであればよい。
【0027】
金属酸化物および/又は金属水酸化物としては酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カドミウム、酸化鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、リン酸等が好ましく用いられる。
【0028】
エポキシ成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどの単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノールなどの多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物などの多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物等が好ましく用いられる。
【0029】
キレート変性エポキシ樹脂以外に任意で用いられる硬化樹脂としては、キレート変性していないエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等やその混合物又は変性物が挙げられるが、特に、耐熱性、作業性、信頼性に優れる点で、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0030】
また、シート状接着剤12は、少なくともキレート変性エポキシ樹脂を硬化させるエポキシ硬化剤が含まれている。なお、キレート変性エポキシ樹脂以外に任意で用いられる硬化樹脂として、キレート変性されていないエポキシ樹脂を含む場合は、このエポキシ樹脂についてもエポキシ硬化剤を使用することが好ましい。エポキシ硬化剤として、たとえば、フェノール系樹脂を使用できる。フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物等が特に制限されることなく用いられる。これらのフェノール系樹脂に含まれるフェノール性水酸基は、エポキシ樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成できる。
【0031】
フェノール系樹脂には、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、p−クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ポリパラビニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、あるいはこれらの変性物等が好ましく用いられる。
【0032】
その他、硬化剤として、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を使用することもできる。この硬化剤は、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応するタイプの硬化剤である。
【0033】
活性化方法としては、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法、室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法、モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤により高温で溶出して硬化反応を開始する方法、マイクロカプセルによる方法等が存在する。
【0034】
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤としては、各種のオニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。
【0035】
また、助剤として硬化促進剤等を使用することもできる。本発明に用いることができる硬化促進剤としては特に制限が無く、例えば、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩などを用いることができる。本発明において好ましく使用されるイミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用することもできる。イミダゾール類は、例えば、四国化成工業(株)から、2MZ,2E4MZ,2PZ−CN,2PZ−CNS,2PHZという商品名で市販されている。
【0036】
上記キレート変性エポキシ樹脂と任意で用いられる硬化樹脂とエポキシ硬化剤とを、本明細書では硬化樹脂成分といい、シート状接着剤12は、この硬化樹脂成分中に、キレート変性エポキシ樹脂を10質量%以上含んでいる。10質量%より少ないと接着力が不足し、パッケージクラックが生じやすい。
【0037】
また、シート状接着剤12は、ポリマーを含有することが好ましく、ポリマーとしてはフェノキシ樹脂、アクリル共重合体等を用いることが出来る。柔軟性に優れる点でアクリル共重合体を用いることが好ましく、更にはガラス転移温度(Tg)が、−10℃以上30℃以下であるものが好ましい。ガラス転移温度が−10℃を下回るとフィルム化が困難になり、30℃を超える場合にはフィルム可とう性が低下してしまう。
【0038】
アクリル共重合体の重合方法は特に制限が無く、例えば、パール重合、溶液重合、懸濁重合等が挙げられ、これらの方法により共重合体が得られる。耐熱性が優れるため懸濁重合が好ましく、このようなアクリル共重合体としては、例えば、SG−708−6(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0039】
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、5万以上、特に20万〜100万の範囲にあるのが好ましい。分子量が低すぎるとフィルム形成が不十分となり、高すぎると他の成分との相溶性が悪くなり、結果としてフィルム形成が妨げられる。
【0040】
また、上記硬化樹脂成分100質量部に対して、アクリル樹脂共重合体130〜270質量部を含むことが好ましい。アクリル樹脂共重合体が130質量部よりも少ないと硬化収縮量が多くなるためパッケージクラックが生じやすく、270質量部より多いと接着力が低下しパッケージクラックが生じやすい。
【0041】
また、シート状接着剤12には、他の成分として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、メラミン樹脂等やその混合物を使用することができる。
【0042】
また、シート状接着剤12には、フィラーを配合してもよい。フィラーとしては、結晶シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーがあげられる。硬化性保護膜形成層に無機フィラーを添加することにより、硬化後の接着剤の硬度を向上させることができる。また、硬化後の接着剤の熱膨張係数を半導体ウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって半導体ウエハの反りを低減することができる。フィラーとしてはシリカが好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプのが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、無定型タイプのものいずれも使用可能であるが、特に最密充填の可能な球形のフィラーが好ましい。
【0043】
シート状接着剤12は、キレート変性エポキシ樹脂を含んでいることから、良好な接着力を有するため、カップリング剤を用いる必要がない。しかしながら、カップリング剤は、少量であれば、吸水による材料としての劣化や、シート状接着剤12のブリードアウト現象による経時劣化による影響が少ないことから、劣化しなかった場合のさらなる接着力の向上のために、少量のカップリング剤を配合することもできる。この場合、シランカップリング剤は、他の組成物合計100質量部に対し0.1質量部以下であることが好ましい。カップリング剤としてはシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
また、ワニス化の溶剤は、比較的低沸点の、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−エトキシエタノール、トルエン、ブチルセロソルブ、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノールなどを用いるのが好ましい。また、塗膜性を向上するなどの目的で、高沸点溶剤を加えても良い。高沸点溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
シート状接着剤12の厚さは適宜設定してよいが、5〜100μm程度が好ましい。
【0045】
シート状接着剤12の破断強度を高めるには、ポリマーを多くし、フィラーを少なくし、エポキシ樹脂(固形)を少なくすることが有効である。また、シート状接着剤12の離型フィルム11からの剥離力を下げるには、ポリマーを少なくし、エポキシ樹脂(液状)を少なくすることが有効である。
【0046】
(粘着フィルム)
粘着フィルム13としては、特に制限はなく、半導体ウエハをダイシングする際には半導体ウエハが剥離しないように十分な粘着力を有し、ダイシング後に半導体チップをピックアップする際には容易にシート状接着剤12から剥離できるよう低い粘着力を示すものであればよい。例えば、基材フィルム13aの上に粘着剤層13bを設けたものを好適に使用できる。
【0047】
粘着フィルム13の基材フィルム13aとしては、従来公知のものであれば特に制限することなく使用することができるが、後述の粘着剤層13bとして放射線硬化性の材料を使用する場合には、放射線透過性を有するものを使用することが好ましい。
例えば、その材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物を列挙することができる。また、基材フィルム13aはこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層又は複層化されたものでもよい。
基材フィルム13aの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、50〜200μmが好ましい。
【0048】
粘着フィルム13の粘着剤層13bに使用される樹脂としては、特に限定されるものではなく、粘着剤に使用される公知の塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。
粘着剤層13bの樹脂には、アクリル系粘着剤、放射線重合性化合物、光重合開始剤、硬化剤等を適宜配合して粘着剤を調製することが好ましい。粘着剤層13bの厚さは特に限定されるものではなく適宜に設定してよいが、5〜30μmが好ましい。
【0049】
放射線重合性化合物を粘着剤層13bに配合して放射線硬化によりシート状接着剤12から剥離しやすくすることができる。その放射線重合性化合物は、例えば光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分量化合物が用いられる。
具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等が適用可能である。
【0050】
また、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
粘着剤層13bには、上記の樹脂から選ばれる2種以上が混合されたものでもよい。
【0051】
光重合開始剤を使用する場合、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。これら光重合開始剤の配合量はアクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0052】
(実施例)
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
(シート状接着剤の作製方法)
下記の表1に示す配合のシート状接着剤組成物1A〜1Hにメチルエチルケトンを加えて攪拌混合して接着剤ワニスを作製した。作製したシート状接着剤組成物1A〜1Hの接着剤ワニスを離型フィルム11上に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させ、それぞれシート状接着剤12を作製した。次に、離型フィルム11をシート状接着剤12から剥離し、下記の表2に示す実施例1〜5及び下記の表3に示す比較例1〜3におけるシート状接着剤を作製した。
【0054】
【表1】

【0055】
尚、上記の表1において、各成分の配合割合の単位は質量部である。また、エポキシ樹脂(1)は、EP−49−23((株)ADEKA製商品名、キレート変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量175g/eq)であり、エポキシ樹脂(2)は、RE303S(日本化薬(株)製商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量165g/eq)である。フェノール樹脂は、ミレックスXLC−LL(三井化学(株)製商品名、水酸基当量175g/eq、吸水率1.8%、350℃における加熱重量減少率4%)である。硬化促進剤は、キュアゾール2PZ(四国化成(株)製商品名、2−フェニルイミダゾール)である。アクリル樹脂は、SG−708−6(ナガセケムテックス(株)製商品名、重量平均分子量70万、ガラス転移温度6℃)である。シランカップリング剤は、Z−6044(東レ・ダウコーニング(株)製商品名、3−グリシドキシプロピルメチルメトキシシラン)である。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
実施例1〜5及び比較例1〜3について、それぞれバージン材料信頼性の評価、劣化材料信頼性の評価、及びシート状接着剤劣化後信頼性の評価を行った。表2及び表3に、バージン材料信頼性の評価、劣化材料信頼性の評価、及びシート状接着剤劣化後信頼性の評価を示す。
【0059】
<バージン材料信頼性の評価>
バージン材料信頼性の評価には、バージン配合材料を用い上述のシート状接着剤の作製方法に従って作製した実施例1〜5に係るシート状接着剤及び比較例1〜3に係るシート状接着剤を用いて、シリコンチップ上にアルミ配線を形成した模擬素子を、シート状接着剤を介して銀メッキされたFR4基板上にダイボンディングし、175℃、70kgf/cm2、成形時間120秒の条件で、1.0mm厚のBGAパッケージ20個を成形し、180℃、4時間ポストキュアしたものを評価パッケージとして用いた。バージン材料信頼性の評価は、得られたパッケージを、予め260℃に調整したハンダ浴に10秒間浸けた後、超音波探査装置(日立建機(株)製 Hyper)を用いて、透過法にてパッケージクラックの有無を評価した。表2及び表3の不良パッケージの個数は、20個の評価パッケージ中のクラックのあったパッケージの個数を示したものであり、不良パッケージの割合は、20個の評価パッケージ中の不良パケージの個数の割合(%)を示したのである。
【0060】
<劣化材料信頼性の評価>
劣化材料信頼性の評価は、予め30℃、85%RHの条件下にて、168時間処理した配合材料を用いて、上述のシート状接着剤の作製方法に従って作製した実施例1〜5に係るシート状接着剤及び比較例1〜3に係るシート状接着剤を用いて、上述のバージン材料信頼性の評価と同様に評価を行った。
【0061】
<シート状接着剤劣化後信頼性の評価>
シート状接着剤劣化後信頼性の評価は、バージン配合材料を用いて上述のシート状接着剤の作製方法に従って作製した実施例1〜5に係るシート状接着剤及び比較例1〜3に係るシート状接着剤を、30℃、85%RHの条件下にて、168時間処理した後のシート状接着剤を用いて、上述のバージン材料信頼性の評価と同様に評価を行った。
【0062】
表2に示すように、実施例1〜5に係るシート状接着剤を用いたパッケージは、キレート変性エポキシ樹脂を使用し、かつ、硬化樹脂成分(エポキシ樹脂とフェノール樹脂)100質量%に対するキレート変性エポキシ樹脂の配合割合が10質量%以下であるため、バージン材料信頼性の評価、劣化材料信頼性の評価、及びシート状接着剤劣化後信頼性の評価のいずれにおいても、パケージクラックはなく、良好な結果となった。
【0063】
実施例3に係るシート状接着剤を用いたパッケージは、シランカップリング剤が含まれているが、他の組成物100質量部に対するシランカップリング剤の配合割合が0.1質量部であるために、劣化材料信頼性の評価及びシート状接着剤劣化後信頼性の評価において、シランカップリング剤の劣化による影響はなく、良好な結果となった。
【0064】
表3に示すように、比較例1に係るシート状接着剤を用いたパッケージは、キレート変性エポキシ樹脂を使用していないために、シート状接着剤12の接着力(密着力)が低下し、バージン材料信頼性の評価において、35%のパッケージでクラックが発生した結果となった。また、劣化材料信頼性の評価及びシート状接着剤劣化後信頼性の評価においても、それぞれ、35%のパッケージ及び40%のパッケージでクラックが発生した結果となった。即ち、比較例1に係るシート状接着剤を用いたパッケージは、キレート変性エポキシ樹脂を使用していないために、シート状接着剤12の接着力(密着力)が低下し、バージン材料信頼性、劣化材料信頼性、及びシート状接着剤劣化後信頼性に劣る結果となった。
【0065】
比較例2に係るシート状接着剤を用いたパッケージは、キレート変性エポキシ樹脂を使用しているが、硬化樹脂成分中のキレート変性エポキシ樹脂成分を規定する上記の10質量%以上の範囲外の5質量%であるために、シート状接着剤12の接着力(密着力)が低下し、バージン材料信頼性の評価において、30%のパッケージでクラックが発生した結果となった。また、劣化材料信頼性の評価及びシート状接着剤劣化後信頼性の評価においても、それぞれ、25%のパッケージ及び30%のパッケージでクラックが発生した結果となった。即ち、比較例2に係るシート状接着剤を用いたパッケージは、キレート変性エポキシ樹脂を使用しているが、硬化樹脂成分中のキレート変性エポキシ樹脂成分を規定する上記の10質量%以上の範囲外の5重量%であるために、シート状接着剤12の接着力(密着力)が低下し、バージン材料信頼性、劣化材料信頼性、及びシート状接着剤劣化後信頼性に劣る結果となった。尚、キレート変性エポキシ樹脂を使用しているために、配合材料の保管時間経過に伴う配合材料の劣化や、作製したシート状接着剤の保管時間経過に伴うブリードアウト等によるシート状接着剤の劣化が生じないため、劣化材料信頼性及びシート状接着剤劣化後信頼性は、バージン材料信頼性に比較して低下することはなかった。
【0066】
比較例3に係るシート状接着剤を用いたパッケージは、キレート変性エポキシ樹脂を使用しているが、シランカップリング剤の配合割合が多く0.3質量部であるために、バージン材料信頼性の評価においてパッケージクラックは発生しなかった。しかし、シランカップリング剤の材料劣化やブリードアウトによりシート状接着剤12の接着力(密着力)が低下し、劣化材料信頼性の評価及びシート状接着剤劣化後信頼性の評価において、それぞれ、30%のパッケージ及び20%のパッケージでクラックが発生し、劣化材料信頼性及びシート状接着剤劣化後信頼性に劣る結果となった。
【0067】
なお、実施例1のアクリル樹脂共重合体の配合割合を、それぞれ280重量部、120重量部として、実施例1と同様に、シート状接着剤を作成し、それぞれバージン材料信頼性の評価、劣化材料信頼性の評価、及びシート状接着剤劣化後信頼性の評価を行った。アクリル樹脂共重合体の配合割が280重量部と多い場合は、接着力が低下するため、バージン材料信頼性の評価において不良パッケージの個数が1個であった。また、アクリル樹脂共重合体の配合割が120重量部と少ない場合は、硬化収縮量が多くなるため、バージン材料信頼性の評価において不良パッケージの個数が2個であった。しかしながら、両者とも、シランカップリング剤に替えてキレート変性エポキシを所定量用いているため、材料劣化やシート状接着剤の劣化に起因する経年による不良パッケージの増加は見られなかった。
【0068】
表2及び表3に示した結果より、キレート変性エポキシ樹脂を硬化樹脂成分中に10質量%以上含むことにより、シート状接着剤12の接着力を向上させることができる。また、厳しい環境下において保管されたシート状接着剤12の配合材料(シート状接着剤組成物)を使用して接着フィルム20を作製しても、シート状接着剤12の接着力は低下することなく、配合材料の保管が容易である。また、作製した接着フィルム20を厳しい環境下において保管した後においても、シート状接着剤12の接着力は低下することなく、作製した接着フィルム20の保管が容易である。即ち、シート状接着剤12の接着力に優れ、かつ、配合材料の保管が容易で生産効率の高い接着フィルム20を作製できるとともに、作製された接着フィルム20の保管も容易である。また、ウエハ加工用テープ10は、上記の本実施形態に係る接着フィルム20を使用して作製することから、シート状接着剤12の接着力に優れ、かつ、配合材料の保管が容易な生産効率の高いウエハ加工用テープ10を作製できるとともに、作製されたウエハ加工用テープ10の保管も容易である。
【符号の説明】
【0069】
10:ウエハ加工用テープ
11:離型フィルム
12:シート状接着剤
13:粘着フィルム
13a:基材フィルム
13b:粘着剤層
20:接着フィルム





【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化樹脂成分として、熱や高エネルギー線で硬化する硬化樹脂とエポキシを硬化させるエポキシ硬化剤とを含み、
前記硬化樹脂の一部又は全部はキレート変性エポキシ樹脂であり、
前記硬化樹脂成分中に前記キレート変性エポキシ樹脂が10質量%以上含むことを特徴とするシート状接着剤。
【請求項2】
前記硬化樹脂成分100質量部に対して、アクリル樹脂共重合体130〜270質量部を含むことを特徴とする請求項1に記載のシート状接着剤。
【請求項3】
基材フィルムの上に粘着剤層が積層された粘着フィルムの上に、請求項1又は2に記載のシート状接着剤が、前記粘着フィルムの前記粘着剤層に積層されていることを特徴とするウエハ加工用テープ。






【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−68710(P2011−68710A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218719(P2009−218719)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】