説明

シート運搬品

【課題】燻蒸シート等のシートを容易に運搬でき、かつシートの残量が少なくなっても運搬時にその形状が崩れ難く、シートの取扱い性に優れたシート運搬品を提供する。
【解決手段】シートを巻き回したロール巻きシート2と、ロール巻きシート2を収納して運搬するシート運搬具3とを備え、シート運搬具3が、ロール巻きシート2をその軸方向を水平にして回動可能に支持するシート支持部材10と、ロール巻きシート2を支持したシート支持部材10を収納する収納本体20と、収納本体20の外面に設けられた肩掛けベルトと、を有するシート運搬品1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート運搬品に関する。
【背景技術】
【0002】
松くい虫による松の集団枯死を防ぐ方法として、枯死した松を伐倒し、その伐倒材を燻蒸して該伐倒材に残った松くい虫を駆除する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。通常、大きなサイズ(例えば、幅4m×長さ30m程度)の燻蒸シートを松の伐採現場まで運び、該燻蒸シートを随時適度な大きさ(4m程度の正方形)に切り取って伐倒材を覆った後、その中に薬剤を注入することにより燻蒸駆除が行われる。そのため、運搬の際の燻蒸シートは非常に大きく、従来は燻蒸シートを短手方向(幅2m)に半折りして紙管に巻き回したものを肩に担いで運んでいた。しかし、紙管に巻き回した燻蒸シートは15kg程度と重く、前述のような方法では運搬時および燻蒸駆除の施工時における燻蒸シートの取扱い性が悪かった。
【0003】
そこで、燻蒸シートを容易に運搬して取扱い性を改善する方法として、燻蒸シートを折り畳んで収納できるシート運搬具を使用して燻蒸シートを伐採現場まで運搬した後、該シート運搬具から燻蒸シートを引き出して、適度な大きさに切り取って使用する方法が示されている(特許文献3、4)。前記シート運搬具を使用する施工方法によれば、燻蒸シートの運搬が容易で、かつ簡便な作業で松くい虫の燻蒸駆除を実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−25347号公報
【特許文献2】特開2003−23947号公報
【特許文献3】特開2010−22299号公報
【特許文献4】特開2010−23892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3、4に記載の方法では、燻蒸駆除の実施によって燻蒸シートの残量が少なくなった時に、重力および運搬時の振動等によって運搬具内で燻蒸シートが動き、該燻蒸シートの折り畳み形状が崩れやすくなる。つまり、燻蒸駆除の初期では運搬具内に燻蒸シートが密な状態で収納されているため、運搬具内に隙間があまりなく、振動等によっても燻蒸シートが動き難く折り畳み形状が崩れ難い。しかし、燻蒸シートの残量が少なくなるに従って、運搬具内に収納されている燻蒸シートと運搬具の間に隙間ができるため、振動等により燻蒸シートが動いて折り畳み形状が崩れやすくなる。これを防止するために、運搬具にシートを保持するための特別な構造を設けると、構造が複雑となり作業者が運搬具を使いこなすのに時間がかかる。
一方、運搬具内で燻蒸シートの折り畳み形状が崩れるのを抑制する方法としては、燻蒸シートの滑り性を低くする方法が考えられる。しかし、振動等の影響下でも折り畳み形状を維持できる程度に燻蒸シートの滑り性を低下させると、シート同士のブロッキングによって施工時に燻蒸シートを引き出すことが難しくなる。
【0006】
本発明は、燻蒸シート等のシートを容易に運搬でき、かつシートの残量が少なくなっても運搬時にその形状が崩れ難く、シートの取扱い性に優れたシート運搬品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]シートを巻き回したロール巻きシートと、前記ロール巻きシートを収納して運搬するシート運搬具とを備えたシート運搬品であって、
前記シート運搬具が、前記ロール巻きシートをその軸方向を水平にして回動可能に支持するシート支持部材と、前記ロール巻きシートを支持したシート支持部材を収納する収納本体と、前記収納本体の外面に設けられた肩掛けベルトと、を有することを特徴とするシート運搬品。
[2]前記シート運搬具が、前記収納本体を地面に固定する固定部材を有する、前記[1]に記載のシート運搬品。
[3]前記ロール巻きシートが、紙管にシートが巻き回されたロール巻きシートであり、前記紙管の両端が前記シート支持部材に支持される前記[1]または[2]に記載のシート運搬品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート運搬品は、燻蒸シート等のシートを容易に運搬でき、かつシートの残量が少なくなっても運搬時にその形状が崩れ難く、シートの取扱い性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のシート運搬品の一例を示した斜視図である。
【図2】図1のシート運搬品の背面を下にしたときの斜視図である。
【図3】図1のシート運搬品のシート支持部材の斜視図である。
【図4】図3のシート支持部材の正面図(A)、および直線I−I’における断面図(B)である。
【図5】シート支持部材でロール巻きシートを支持した様子を示した正面図(A)および断面図(B)である。
【図6】シート支持部材でロール巻きシートを支持した様子を示した正面図(A)および断面図(B)である。
【図7】図1のシート運搬品からシートを引き出した様子を示した斜視図である。
【図8】シートを折り畳んで紙管に巻き回してロール巻きシートを作成する工程を示した斜視図である。
【図9】シートを折り畳んで紙管に巻き回してロール巻きシートを作成する工程を示した斜視図である。
【図10】本発明のシート運搬品のシート支持部材の他の例を示した断面図(A)、および正面図(B)、(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシート運搬品は、特に松くい虫の燻蒸駆除の施工に有効な運搬品である。以下、本発明のシート運搬品の一例を示して詳細に説明する。
本実施形態のシート運搬品1は、図1、図2および図6に示すように、紙管2aにシート2bを巻き回したロール巻きシート2と、ロール巻きシート2を収納して運搬するシート運搬具3とを備えている。
シート運搬具3は、ロール巻きシート2をその軸方向を水平にして回動可能に支持するシート支持部材10と、ロール巻きシート2を支持したシート支持部材10を収納する収納本体20と、収納本体20の外面に設けられた一対の肩掛けベルト30と、を有している。
【0011】
シート支持部材10は、収納本体20内で、ロール巻きシート2をその軸方向を水平にして回動可能に支持する部材である。
シート支持部材10は、図1、図3および図4に示すように、平板11と、平板11から各々垂直に立ち上がり、互いに向かい合うように設けられた側板12、13とを有する。
【0012】
平板11の形状は、この例では矩形状である。ただし、平板11の形状は、支持するロール巻きシート2を安定に支持できる形状であれば矩形状には限定されない。
側板12、13の形状は、この例では、平板11から立ち上がる矩形状の部分と、その部分の上側に位置する半円形状の部分とからなる形状である。ただし、側板12、13の形状は、支持するロール巻きシート2を安定に支持できる形状であれば前記形状には限定されない。
【0013】
側板12と側板13には、それらのそれぞれ内側の面から突き出すように、下側支持部14、15が形成されている。
下側支持部14、15の形状は、この例では下向きに凸の半円環状である。シート支持部材10では、図5に示すように、下側支持部14、15のそれぞれの凹状の部分に、ロール巻きシート2の紙管2aの両端部分を嵌め込むことができるようになっている。また、図6に示すように、下側支持部14、15に嵌め込まれた紙管2aの両端部分の上側に、上向きに凸の半円環状の上側支持部16、17を設置できるようになっている。
このように、シート支持部材10は、下側支持部14、15と上側支持部16、17によって、紙管2aの両端部分を上下から挟んだ状態で、ロール巻きシート2を回動可動に水平に支持できるようになっている。下側支持部14、15および上側支持部16、17の形状は、ロール巻きシート2を回動可動に支持できる形状であれば、半円環状には限定されない。
【0014】
シート支持部材10の長さa(図3)は、運搬するロール巻きシート2の長さに応じて設定すればよく、50〜120cmが好ましい。シート支持部材10の長さaが下限値以上であれば、より大きなサイズのシート2bの運搬が容易になる。また、シート支持部材10の長さaが上限値以下であれば、収納本体20の大きさをより小さくできるため、シート運搬品1の運搬が容易になるうえ、シート2bの取り扱い性も向上する。
シート支持部材10の幅b(図3)は、長さaと同様の理由で、25〜60cmが好ましい。
シート支持部材10の高さc(図4(A))は、長さaと同様の理由で、25〜60cmが好ましい。
【0015】
収納本体20は、ロール巻きシート2を回動可能に支持したシート支持部材10を収納する役割を果たす。
収納本体20は、図1に示すように、上部に開口が形成された収納部21と、収納部21の上部の開口を開閉自在に閉じるカバー22を有する。カバー22は、収納本体20の背面20b側から前面20a側に閉じるように設けられている。
【0016】
収納本体20の形状は、シート支持部材10の形状に応じて適宜選択すればよく、この例では、側面20cの形状および断面形状がシート支持部材10の側板12、13と同様の形状となった筒状である。
収納部21およびカバー22の材質は、リュックサック等に通常使用されるものを使用することができ、例えば、ナイロン等が挙げられる。
【0017】
また、収納本体20は、図1に示すように、収納したシート支持部材10に支持されたロール巻きシート2が振動等により回動してシート2bが収納本体20内で乱れるのを制止するシート制止部材23を有している。
この例のシート制止部材23は、収納本体20の前面20a側から背面20b側に向かう制止ベルト23aと、収納本体20の背面20b側から前面20a側に向かう制止ベルト23bとを有しており、制止ベルト23aと制止ベルト23bとを着脱自在に接着固定することで、シート2bの残量に応じてロール巻きシート2を押さえて制止できるようになっている。制止ベルト23aと制止ベルト23bを接着固定する機構は、特に限定されず、例えば、マジックテープ(登録商標)によるもの等が挙げられる。
シート制止部材23の数は特に限定されず、煩雑な作業を避ける点から、ロール巻きシート2を安定に制止できる範囲内でできるだけ少なくすることが好ましい。
【0018】
シート運搬品1では、図7に示すように、収納本体20内に、ロール巻きシート2を支持したシート支持部材10を収納した状態で、ロール巻きシート2を回動させて、シート2bを収納本体20の上部の開口から外部に引き出せるようになっている。
収納本体20には、シート2bを切断するカッターが備えられていることが好ましい。
【0019】
また、収納本体20には、図2に示すように、カバー22で収納本体20を閉じた状態で、収納部21とカバー22を固定するベルト固定具25が設けられていることが好ましい。これにより、運搬時の振動等によって、収納本体20からシート支持部材10やロール巻きシート2が飛び出すことを防止できる。
ベルト固定具25の形態は、特に限定されず、この例では、雄部25aと雌部25bとを装着することにより固定する簡便な固定具である。このような固定具は、ファスナーやマジックテープ(登録商標)に比べて、土等の付着による固定性能の低下を防ぐ点で有利である。
ベルト固定具25の数は特に限定されず、装着の際の混乱および煩雑な作業を避ける点から、収納部21とカバー22を安定に固定できる範囲内でできるだけ少なくすることが好ましい。
【0020】
収納本体20の底面20dには、図2に示すように、一対の肩掛けベルト30が設けられている。つまり、シート運搬具品1は、肩掛けベルト30により、収納本体20の底面20dを背負い面として背中に背負って運搬できるようになっている。
肩掛けベルト30の形態は、収納本体20を背負える形態であれば特に限定されず、リュックサック等に通常使用される肩掛けベルトを使用できる。
また、本実施形態のシート運搬品1は、両肩用に一対の肩掛けベルト30が設けられているが、この形態には限定されず、片肩用に肩掛けベルト30が1つだけ設けられていてもよい。
肩掛けベルト30の材質は、リュックサック等に通常使用されるものが使用でき、例えば、ナイロン等が挙げられる。
【0021】
また、シート運搬品1は、図3に示すように、シート支持部材10の平板11の両端側に、貫通孔18がそれぞれ形成されている。収納本体10の底面20dには、図2に示すように、シート支持部材10の貫通孔18に対応する位置に、それぞれ貫通孔24が形成されている。シート運搬品1では、収納本体20の底面20dを下にして地面に置いた状態で、シート支持部材10の貫通孔18と、それに対応する収納本体20の貫通孔24に、収納本体20を地面に固定する固定部材40の挿通部41を挿通して地面に突き刺せるようになっている。これにより、シート運搬品1を置く場所が急な斜面であっても、シート運搬品1が転がり落ちたり滑り落ちたりすることを防いで安定に地面に固定できる。
【0022】
紙管2aは、シート2bを巻き回す芯となる部材である。紙管2aの断面形状は、ロール巻きシート2を回動させやすい点から、円形状が好ましい。
【0023】
シート2bの種類および形状は特に限定されない。シート運搬品1は、特に松くい虫の燻蒸の際に伐倒現場まで運搬する燻蒸シート等のように、大きなサイズの帯状のシートの運搬に好適である。ここで、帯状のシートとは、幅に対して5倍以上の長さを有するシート(例えば幅4m×長さ30m程度のシート)を意味する。このような帯状のシート2bを紙管2aに巻き回してロール巻きシート2とし、シート支持部材10に支持した状態で収納本体20に収納して運搬することにより、ロール巻きシート2を型崩れさせずに容易に運搬できる。ただし、シート2bは帯状には限定されず、例えば、正方形であってもよい。
【0024】
ロール巻きシート2においてシート2bを巻き回す方法としては、以下に示す方法(1)または方法(2)が好ましい。
(1)図8(A)に示すように、帯状のシート2bを、その長手方向に沿ってガゼット折りにし、さらにそれを長手方向に沿ってに半折し、図8(B)に示すように、その折り畳んだ状態のシート2bを長手方向に紙管2aに巻き回してロール巻きシート2とする方法。ここで、前記ガゼット折りでは、シート2bの短手方向の両方の端縁2cが、シート2bを短手方向に二等分する中央部分2dに向かってそれぞれ折り返されて揃えられ、かつ前記両方の端縁2cと前記中央部分2dの中間に位置する中間部分2e(折り返されて形成された山折部分)が内部側に折り返されて前記中央部分2dで揃えられる。
(2)図9(A)に示すように、帯状のシート2bを、その長手方向に沿って半折し、さらに直線x、y、zに沿って順に折り畳み、図9(B)に示すように、その折り畳んだ状態のシート2bを長手方向に紙管2aに巻き回してロール巻きシート2とする方法。
【0025】
方法(1)または方法(2)によりシート2bを巻き回してロール巻きシート2とすれば、より幅の長いシートの運搬が容易になり、またシートを引き出して所望の大きさに切断すること等の作業が容易になり取り扱い性が向上する。例えば、幅4m×長さ30mのシート2bを方法(1)または方法(2)によってロール巻きシート2とした場合、ロール巻きシート2におけるシート2aの軸方向の長さは50cmとなる。
ロール巻きシート2におけるシート2aの軸方向の長さは、シートの取り扱い性の点から、30〜110cmが好ましい。
なお、シート2bを巻き回す方法は、前記方法(1)および方法(2)には限定されない。例えば、充分に幅の短いシートであれば、そのまま紙管2aに巻き回してもよい。
【0026】
シート2bには、使用する際の大きさに切断するのを補助するミシン目加工が施されていることが好ましい。方法(1)、(2)のようにシート2bを巻き回した場合、引き出したシート2bは複数枚のシートが重なった状態であるが、シート2bにミシン目加工が施されていれば所望の大きさに切断することが容易になる。
【0027】
以下、シート運搬品1を使用した松くい虫の燻蒸駆除の施工を例にして、シート運搬品1の作用を説明する。
シート運搬品1を使用した松くい虫の燻蒸駆除の施工方法としては、例えば、以下に示す工程(I)〜(IV)を有する方法が挙げられる。
工程(I):図1に示すように、シート2b(松くい虫燻蒸シート)を巻き回したロール巻きシート2を、シート支持部材10により支持した状態で収納本体20内に収納して運搬する工程。
工程(II):図7に示すように、シート2bを収納本体20から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程。
工程(III):収納本体20から引き出したシート2bの未使用部分を収納本体20内に再収納する工程。
工程(IV):シート2bで覆われた前記伐倒材に薬剤を注入して燻蒸駆除する工程。
【0028】
松くい虫の燻蒸駆除では、シート2bとして、通常、厚さ0.05〜0.10mm、幅4m×長さ30m程度の帯状の松くい虫燻蒸シート(以下、単に「燻蒸シート」という。)が使用される。このシート2bを伐倒現場まで運搬し、該伐倒現場で随時必要な分だけ切断して使用する。
燻蒸シートは、松くい虫の燻蒸駆除に通常使用されるシートを使用でき、燻蒸処理後に燻蒸シートを回収する必要がなく環境面に優れる点から、生分解性の燻蒸シートが好ましい。生分解性の燻蒸シートとしては、例えば、特開2003−231820号公報、特開2003−284478号公報、特開2003−292641号公報、特開2003−320620号公報、特開2004−10693号公報、特開2005−73581号公報、特開2005−103872号公報、特開2005−154456号公報、特開2005−287458号公報、特開2006−213830号公報、特開2006−246786号公報等に記載の燻蒸シートが挙げられる。
【0029】
工程(I)では、シート2bを巻き回したロール巻きシート2をシート支持部材10で支持した状態で収納本体20内に収納して運搬する。
ロール巻きシート2は、前記方法(1)または方法(2)によって、シート2bを折り畳んだ後に紙管2aに巻き回して作成することが好ましい。
【0030】
次いで、図5に示すように、ロール巻きシート2の紙管2aの両端部分をシート支持部材10の下側支持部14、15に嵌め込み、図6に示すように、下側支持部14、15に嵌め込んだ紙管2aの両端部分の上側に上側支持部16、17を設置して、ロール巻きシート2を回動可能に支持する。そして、ロール巻きシート2を支持したシート支持部材10を収納本体20内に収納する。収納本体20内では、図1に示すように、シート制止部材23によりロール巻きシート2を押さえることが好ましい。これにより、運搬中の振動等によりロール巻きシート2が回動して収納本体20内でシート2bが乱れることを防ぐことが容易になる。
ロール巻きシート2をシート支持部材10で支持した状態で収納本体20内に収納する方法は前記方法には限定されず、シート支持部材10が収納本体20内に収納された状態でロール巻きシート2をシート支持部材10に設置する方法でもよい。
【0031】
その後、カバー22を収納本体20の前面20a側へと垂らし、図2に示すように、収納本体20を背面20bが下になるようにシート運搬品1を回転させ、ベルト固定具25によりカバー22を閉じた状態で固定する。そして、肩掛けベルト30によりシート運搬品1を背負って伐倒現場まで運搬する。
【0032】
シート2bを松の伐倒現場まで運搬した後、工程(II)では、シート2bを収納本体20から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して伐倒材を覆う。
運搬後、図1に示すように、収納本体20の底面20dを下にしてシート運搬品1を置き、カバー22を開く。このとき、シート支持部材10の貫通孔18と、収納本体20の貫通孔20に、固定部材40の挿通部41を挿通して地面に突き刺し、収納本体20を地面に固定することが好ましい。松くい虫の燻蒸駆除は山の斜面で施工させることが多いが、これにより急な斜面で燻蒸駆除を施工する場合でもシート運搬品1が転げ落ちたり、滑り落ちたりすることを防ぐことができ、施工がより容易になる。
【0033】
次いで、シート制止部材23を外し、図7に示すように、ロール巻きシート2を回動させてシート2bを収納本体20から引き出す。そして、引き出したシート2bを伐倒材に被せ、該伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断し、拡げて伐倒材を覆う。工程(II)では、収納本体20から引き出したシート2bを必要な部分に切り取った後に伐倒材に被せて伐倒材を覆ってもよい。ただし、計測等を行わずに燻蒸駆除に必要な分だけシート2bを切断することが容易である点から、前述のように伐倒材に被せた後にシート2bを切断する方が好ましい。
【0034】
工程(III)では、収納本体20から引き出したシート2bのうち、未使用の部分を収納本体20内に再収納する。
工程(II)では、収納本体20からシート2bを必要以上に引き出す必要がなく、シート2bを引き出した状態でも残りのロール巻きシート2には型崩れが起きていないため、ロール巻きシート2を反対に回動させるだけで、シート2bの未使用部分を再度巻き回して容易に収納できる。その後、再度シート制止部材23によりロール巻きシート2を押さえることが好ましい。
【0035】
工程(IV)では、シート2bで覆われた伐倒材に薬剤を注入し、松くい虫を燻蒸駆除する。
使用する薬剤としては、松くい虫の燻蒸駆除に通常使用される薬剤を使用でき、例えば、NCS(商品名、ヤシマ産業(株)製)等が挙げられる。
薬剤を伐倒材に注入する方法は、燻蒸駆除が充分に行えるものであれば特に限定されず、薬剤が拡散することを防ぎやすい点から、伐倒材を覆ったシート2bをめくり上げて伐倒材の上部に薬剤を撒いた後、直ぐに燻蒸シート2bで該伐倒材を密封する方法が好ましい。
【0036】
伐倒材の密封方法は特に限定されず、伐倒材を覆ったシート2bの裾の部分に土等を被せる方法等が挙げられる。その後、2週間程度放置することにより燻蒸駆除が完了する。シート2bとして生分解性の燻蒸シートを使用している場合は、シート2bの回収等の後処理は必要ない。
【0037】
なお、工程(III)については、工程(II)でシート2bの必要な部分を切断した後に行えばよく、工程(IV)の前に行ってもよく、工程(IV)で薬剤を注入して伐倒材を密封した後に行ってもよい。
【0038】
特許文献3および4のような従来のシート運搬品では、前述したように、シートの残量が少なくなった時に、運搬時の振動等によってシートが型崩れすることがある。これに対し、本発明のシート運搬品は、シートをロール状に巻き回した状態でその軸方向を水平にして収納して運搬するので、シートの残量が少なくなっても振動等によりシートが型崩れし難い。また、本発明のシート運搬品は背負って容易に運搬でき、さらにシート運搬品の収納本体内でロール巻きシートを回動させてシートを引き出して使用できるため、シートの取り扱い性にも優れている。
【0039】
なお、本発明のシート運搬品は、前述したシート運搬品1には限定されない。例えば、シート運搬品1は、1本のロール巻きシート2を収納して運搬する運搬品であったが、2本以上のロール巻きシートを運搬できるシート運搬品としてもよい。
また、シート支持部材の形態も、ロール巻きシートをその軸方向を水平にして回動可能に支持できる形態であれば前記シート支持部材10には限定されない。例えば、図10(A)に示すように、側板12および側板13に、それぞれ挿入軸19を挿入し、さらにその挿入軸19をロール巻きシート2の紙管2a内に挿入して、ロール巻きシート2を回動可能に支持するシート支持部材10Aであってもよい。また、図10(B)に示すように、収納本体20の貫通孔24に挿通して地面に突き刺し、収納本体20を地面に固定する固定部材42が平板11の底面に設けられたシート支持部材10Bであってもよい。また、図10(C)に示すように、平板が平板11aと平板11bの2枚に分かれているシート支持部材10Cであってもよい。
【0040】
また、シート運搬品1では、肩掛けベルト30が収納本体20の底面に設けられていたが、収納本体20の背面20bに肩掛けベルトが設けられたシート運搬品でもよい。
また、収納本体を地面に固定する固定部材は、前述したシート運搬品1のように、シート支持部材10と収納本体20を両方同時に固定するものには限定されず、収納本体のみを固定するものでもよい。また、収納本体を地面に固定する固定部材を有していないシート運搬品でもよい。
【0041】
また、前記ロール巻きシート2は、シート2bを紙管2aに巻き回したものであったが、紙管を使用せずにシートのみを巻き回してロール巻きシートとしたものであってもよい。この場合、シート支持部材としては、前記シート支持部材10A等が使用できる。ロール巻きシート2は、シート2bの残量が少なくなっても安定に支持しやすい点から、紙管2aにシート2bが巻き回されている形態の方が好ましい。
また、紙管2aの代わりに、内部に空洞を有しない棒状の軸部材を使用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 シート運搬品
2 ロール巻きシート
2a 紙管
2b シート
3 シート運搬具
10 シート支持部材
20 収納本体
30 肩掛けベルト
40 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを巻き回したロール巻きシートと、前記ロール巻きシートを収納して運搬するシート運搬具とを備えたシート運搬品であって、
前記シート運搬具が、前記ロール巻きシートをその軸方向を水平にして回動可能に支持するシート支持部材と、前記ロール巻きシートを支持したシート支持部材を収納する収納本体と、前記収納本体の外面に設けられた肩掛けベルトと、を有することを特徴とするシート運搬品。
【請求項2】
前記シート運搬具が、前記収納本体を地面に固定する固定部材を有する、請求項1に記載のシート運搬品。
【請求項3】
前記ロール巻きシートが、紙管にシートが巻き回されたロール巻きシートであり、前記紙管の両端が前記シート支持部材に支持される請求項1または2に記載のシート運搬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−20819(P2012−20819A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158636(P2010−158636)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】