説明

ジェルシート

【課題】利用者にジェルシートの利用可能時間を客観的にかつ視覚的に提供すること。
【解決手段】
基材となるシート状不織布と前記基材一方側に設けられた含水ジェル層と前記含水ジェルを覆うフィルム層とを順に設けてなるジェルシートにおいて、含水によって反射率の変化する変色材又は含水によって透明に変化する変色材を配置したことを特徴とするジェルシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の額や皮膚に一時的に貼付し、冷却したりや眠気を防止したりするジェルシートに関するものであり、特に、含水ジェルを用いたジェルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布の上に含水ジェルを塗工した冷却性シートや眠気覚ましシートが用いられている。これらを使用する時にはジェルシートに設けられた保護用の剥離シートをはがし、ジェルシートを額や身体に貼付して使用する。ジェルシートは体温や大気によって暖められ、含水ジェル中の水分が気化する際の気化熱によって冷却作用を生じたり、眠気覚まし作用を発揮したりする。
【0003】
このようなジェルシートは広く用いられており、風邪などの発熱時に額に貼って利用したり、体の炎症部位に貼って利用したり、勉強時間に眠気を覚ますために利用したりすることができ、これらは簡単に冷却感や眠気覚ましの清涼感を得られるために広く用いられている。
【0004】
しかし、従来のジェルシートでは上記のように冷却効果等を有するものの、冷却効果や眠気覚まし効果が発現する時間は限られている。そして、ジェルシートの利用者は、使用継続の判断を効果が発現するか否かの感覚で判断したり、利用開始からの時間で判断したり、外観で判断したりといった程度の判断によって利用継続の判断を行なわざるを得なかった。そのため冷却効果や眠気覚ましの持続効果が発現しなくなってもジェルシートが利用されていたり、逆に効果が発現できる持続状態でもジェルシートが廃棄されていたり、ジェルシートが利用可能な持続時間を過ぎてしまい、乾燥しすぎて額から剥がれやすくなってしまう場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開2006‐87785
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、利用者にジェルシートの利用可能時間を客観的かつ視覚的に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため請求項1記載の発明にあっては、基材となるシート状不織布と前記基材一方側に設けられた含水ジェル層と前記含水ジェルを覆うフィルムとを順に設けてなるジェルシートにおいて、含水によって色が変化する変色材を配置してなる。
【0008】
請求項2記載の発明にあっては、変色材は含水によって、反射率、屈折率、透明度のうちの少なくとも1つが変化する隠蔽層を有してなる。
【0009】
請求項3記載の発明にあっては、変色材は少なくとも着色層と前記着色層を覆う前記隠蔽層からなる層構造を有してなる。
【0010】
請求項4記載の発明にあっては、前記隠蔽層は、厚み、素材、粒径、粒子数を調整してなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、利用者にジェルシートの利用可能時間を客観的かつ視覚的に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図に従って説明する。図1は本発明のジェルシートの透明フィルムを除いた平面図を示し、図2は本発明のジェルシートの底面図を示す。又図3は本発明のジェルシートの側面図であり、図4は本発明に用いられる変色材4の構成図である。図5は本発明ジェルシートの別構成の側面図を示す。
【0013】
(第一の実施形態)
図1から図3に示すように、本発明のジェルシートは全体が薄いシート状であり、全体が手の平に載る程度の大きさである。そして、乾燥を防ぐためにアルミ蒸着された袋などに封入されている。
【0014】
ジェルシート5は積層構成となっており、基材となるシート状不織布1と基材一方側に設けられたメントールを含んだ含水ジェル層2と含水ジェルを覆う透明フィルム3とを順に設けている。そして、含水ジェルに接して変色材4が配置されている。
【0015】
ジェルシート5の短手方向長さ(幅D)は20〜50ミリメートル程度、長手方向長さが100〜130ミリメートル程度に設定してある。
【0016】
基材となるシート状不織布1も同様に、短手方向長さ(幅)が20〜50ミリメートル、長手方向長さが100〜130ミリメートル程度であり、厚みは0.5〜1ミリメートル程度に設定された矩形形状のベース材である。
【0017】
また、外側から変色材4の色の変化を観測する構成の場合には、不織布の色は白または、薄い色(水色、薄い黄緑、薄いピンクなど)が望ましく、含水ジェル2や変色材4の色や形が不織布側から透過して見える色、透過して見える目付けが望ましい。本発明では目付け200g/m2以下の不織布を用いた。
【0018】
内側から変色材4の色の変化を観測する構成の場合には、不織布の色は白や薄い色に限らず様々な色(例えば黒、赤、肌色など)を用いることができる。
【0019】
本発明で用いられる含水ジェル2は、短手方向長さ(幅d)が18〜48ミリメートル、長手方向長さが80〜128ミリメートル程度で、不織布のベース材の周囲に各1〜10ミリメートル程度で余白を残してシート状不織布1の中央上に設けられている。また、含水ジェルの厚みは1〜5ミリメートルに設定されている。本実施例では含水ジェル2は1枚当たり5g〜15g程度で、含水ジェル2は高吸水性樹脂にメントールなどを配合した粘性を有する弱酸性のジェルである。
【0020】
また、含水ジェル層2には変色材4が接する構成となっている。変色材4は、(1)不織布1と含水ジェル2の間や、(2)含水ジェル2の内部や(3)含水ジェル2の上部に、1個から数10個程度配置することができる。なお、変色材4は含水ジェルに直接、接しなくても間接的に介在物を介して接しても、微小な空隙を有して構成することも可能である。
【0021】
変色材4は1mmから30mm程度にカットされた市販されている水変色性のシートと同等のシートで、着色層10と着色層10を覆う隠蔽層20からなる層構造のシートで、変色材4は含水によって隠蔽層20の反射率や屈折率や透明度が変化し、下層の着色層を可視化できるシートである。(図4)
【0022】
変色材4に用いられる隠蔽層20はバインダー樹脂に分散させた粒子状物質21を支持体となる着色層の上に形成してある。隠蔽層20を構成する粒子状物質としては、シリカ、珪酸、ベーマイト、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムオキサイド、炭酸カルシウムなどの物質やその化合物などを用いることができる。この構成の変色材4は、多孔質である粒子状物質が水分に接することでの反射率や屈折率が変化し、下層の着色層が可視化できたり、粒子状物質が水分に接することで半透明化または透明化し下層の着色層が可視化できたりする。一般的には乾燥した状態で隠蔽層の色は白色であり、含水状態では透明化する。
【0023】
隠蔽層20を構成する粒子状物質21は、厚み、粒子の種類(素材)、粒子の形状、粒子径、粒子数などを調整することによって水分量による隠蔽層の変化の割合を調整することが可能である。したがって、ジェルシートの持続時間に合わせた変色材4の色の変化をコントロールすることができる。
【0024】
外側から変色材4の色の変化を観測する構成の場合には、変色材4の隠蔽層20が外側(不織布側)になるように配置し、内側から変色材4の色の変化を観測する構成の場合には、変色材4の隠蔽層20が内側(含水ジェル側)になるように配置する。また、外側に加え内側から変色材4の色の変化を観測する構成の場合には、変色材4の隠蔽層20が外側(不織布側)に配置した物と変色材4の隠蔽層20が内側(含水ジェル側)に配置した物の両方をそれぞれ配置する。
【0025】
加えて、着色層10の表裏両面又は全体を着色部とし、それぞれの表裏面を覆うように隠蔽層20を設け、含水ジェル2に接するように変色材4を配置した場合でも、外側に加え内側から変色材4の色の変化を観測することが可能である。(図5)その場合には変色材4の方向性を気にせずに、変色片4を散布して配置できるので生産性に優れたジェルシートとすることができる。そして、含水ジェル2は透明なため(1)不織布1と含水ジェル2の間や、(2)含水ジェル2の内部や(3)含水ジェル2の上部に設けた場合のいずれの位置でも内側外側の両側から変色材4の色の変化を観測することができる。
【0026】
また、本発明では隠蔽層20として粒子状物質を用いた例を示したが、それに代えて曇りガラス状の微細な凹凸を持つシートを隠蔽層20として用いることも可能である。
【0027】
加えて、変色材4はカットされた小さなシートだけでなく、小さな粒子を用いることができる。例えば、10マイクロメートル〜3ミリメートル程度の粒子状の固形物(A:隠蔽層と着色層、またはB:隠蔽層のみ)や、ゲル状物(A:隠蔽層と着色層、またはB:隠蔽層のみ)、液体(隠蔽層のみ)を用いることができる。配置する場所と個数は、(1)不織布1と含水ジェル2の間や、(2)含水ジェル2の内部や、(3)含水ジェル2の上部に含水ジェルに接するように1個〜数億個配置することも可能である。
【0028】
透明フィルム3は、含水ジェルを乾燥や埃から保護し、不必要な部位に含水ジェル2が接着しないように保護している薄い透明フィルム3で、ジェルシートを使用する場合にはベースとなる不織布1および含水ジェル層2から剥離される。
【0029】
透明フィルム3は、含水ジェルの全表面と不織布の含水ジェルに覆われていない部分(周縁部)を覆っている(図3参照)。そして、剥離作業が行い易いように網目状のエンボス加工が施してある。そして、透明フィルムは含水ジェルの側面までを覆う構成となっているため、使用時にジェルシート周縁にジェルがはみ出し難く、ジェルで周囲を汚したり、手を汚したりせずに済む。
【0030】
なお、本実施例では、変色材4は着色層10を有している例で説明したが、変色材4は隠蔽層20と不織布1の色を利用することによって、変色材4に用いる着色層を省略することも可能である。
【0031】
また、変色材4の形状は様々な形状(円形、矩形、三角、星型、ハート型、顔型、月型など)とすることができ目的に合わせて様々な形状を選択することができる。
【0032】
以上の構成からなる本発明のジェルシートを使用するときには、パッケージからジェルシートを取り出し、ベースとなる不織布1および含水ジェル層2から透明フィルム3を剥離する。そして露出した含水ジェルを額や皮膚に貼り付ける。
【0033】
ジェルシートは含水ジェルが粘着性を有しておりそれ自体で皮膚などに貼付することができ、いちいち固定用のテープ等を準備する必要もなく、冷却感がほしい時や眠気を防止したいときにすぐに貼り付けて利用できる。
【0034】
加えてメントールを配合した場合にはメントールによる冷却感や眠気覚まし効果も期待できる。そして冷却効果や眠気覚まし効果が所定時間(例えば10時間)持続することとなる。その持続時間中に含水ジェルに含まれている水分は体温や外気温などによって気化し続けることになる。
【0035】
すなわち、ジェルシート5は使用開始時に水分量が一番多く含まれ、一定の効果が終了する持続時間後の所定時間に水分量が少なくなり、さらに一定の効果が得られなくなった後でも水分量がさらに減少して乾燥状態に近くなる。
【0036】
本発明では、含水によって色が変化する変色材4を含水ジェル2に接して配置してあるので、使用開始時から持続時間後(約10時間後)にかけて、変色材4も水分量が変化することとなる。よって、変色材4は使用開始時点や持続時間中では水分によって隠蔽層20の反射率や屈折率が小さく着色層10が透視でき、又は水分によって隠蔽層20の透明度が上がっているため着色層が透視でき、内側や外側から変色材4の色や形を見ることができる。
そして、変色材4の色の変化を内側から観測する構成の場合には、変色材4の色や形を内側(含水ジェル2側)から観測することができる。
【0037】
また、不織布1の色が白または、薄い色(水色、薄い黄緑、薄いピンクなど)で、含水ジェル2や変色材4の色や形が不織布側から透過して見える色、または不織布が透過して見える目付けである場合であって、外側から変色材4の色の変化を観測する構成の場合には、額や肌に貼り付けた状態であっても使用開始時点や持続時間中に外側(不織布1側)から、変色材4の色や形を観測することができる。
【0038】
そして、持続時間後(開始から約10時間後)には含水ジェル2の水分量が少なくなり、変色材4も水分が減少する。そのために変色材4の隠蔽層20も水分が少なくなり、隠蔽層20の反射率や屈折率が大きくなり又は透明度が下がり、隠蔽層20が白くなる。よって隠蔽層側から着色層10が透視できなくなる。よって内側から変色材4の色の変化を観測する構成の場合も、外側から変色材4の色の変化を観測する構成の場合も、内側外側から色の変化を観測する構成の場合にも、変色材4の色や形を見ることができなくなる。
【0039】
また、隠蔽層20は、厚み、素材、粒径、粒子数を調整することで、水分量に対する透明度、反射率または屈折率を調整することが可能なため、持続時間に合わせた変色材4の色の変化をコントロールすることができる。
【0040】
よって、ジェルシートにおいて持続時間中には変色材4の色や形を表示して利用可能な状態であることを示すことができるし、持続時間経過後には変色材4の色や形が表示されないため持続時間が経過したことを視覚的に示すことができ、利用者にとって大変便利なジェルシート5の提供が可能となった。よって、この構成を利用して冷却シート、眠気覚ましシート、シップなどで持続時間の観測が可能となり、実用性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】は本発明のジェルシートの平面図(フィルムを除く)を示す。
【図2】は本発明のジェルシートの底面図を示す。
【図3】は本発明のジェルシートの側面図を示す。
【図4】は本発明のジェルシートに用いる着色材の側面図を示す。
【図5】本発明ジェルシートの別構成の側面図を示す
【符号の説明】
【0042】
1
不織布
2
含水ジェル
3
透明フィルム
4
変色材
5
ジェルシート
10
着色層
20
隠蔽層
21
粒子状物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材となるシート状不織布と前記基材一方側に設けられた含水ジェル層と前記含水ジェルを覆うフィルムとを順に設けてなるジェルシートにおいて、含水によって色が変化する変色材を配置したことを特徴とするジェルシート。
【請求項2】
前記変色材は含水によって、反射率、屈折率、透明度のうちの少なくとも1つが変化する隠蔽層を有することを特徴とする請求項1に記載ジェルシート。
【請求項3】
前記変色材は少なくとも着色層と前記着色層を覆う前記隠蔽層からなる層構造であることを特徴とする請求項1に記載のジェルシート。
【請求項4】
前記隠蔽層は、厚み、素材、粒径、粒子数を調整してなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のジェルシート。























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−102890(P2013−102890A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247998(P2011−247998)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(391001457)アイリスオーヤマ株式会社 (146)
【Fターム(参考)】