説明

ジッタ伝達特性試験装置及びジッタ伝達特性試験方法

【課題】本発明は、測定対象100が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しているか否かの判定時間を短縮することのできるジッタ伝達特性試験装置及びジッタ伝達特性試験方法の提供を目的とする。
【解決手段】本願発明のジッタ伝達特性試験装置101は、指定された周波数F,F,F,F及びFの正弦波成分が含まれる合成正弦波Mfを用いて測定対象100のジッタ伝達特性Tの測定を行うジッタ伝達特性測定部13と、ジッタ伝達特性測定部13がジッタ伝達特性Tの測定を行う度に、ジッタ伝達特性測定部13が測定した周波数F,F,F,F及びFの正弦波成分とは異なる周波数F,F,F及びFの正弦波成分Mfを指定する正弦波指定部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッタ伝達特性試験装置及びジッタ伝達特性試験方法に関し、特に複数の周波数の正弦波成分についてのジッタ伝達特性を同時に測定するジッタ伝達特性試験装置及びジッタ伝達特性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ伝送中継器等の測定対象のジッタ伝達特性を試験するジッタ伝達特性試験装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。図5に、特許文献1のジッタ伝達特性試験装置の構成を示す。特許文献1のジッタ伝達特性試験装置90は、ジッタ発生部92と、変調信号発生部91と、データ信号発生部93と、演算処理部99と、クロック再生部95と、位相検波部96と、振幅検出部97と、を備え、以下のように動作する。
【0003】
ジッタ発生部92は、入力された変調用信号Mmによって位相変調された変調クロック信号Cmを出力する。変調信号発生部91は、振幅Amが既知で周波数fの正弦波の変調用信号Mmを生成してジッタ発生部92に出力する。データ信号発生部93は、ジッタ発生部92から出力された変調クロック信号Cmに同期したデータ信号Dm(例えば擬似ランダム信号)を生成して測定対象100に与える。なお、変調信号発生部91は後述する演算処理部99の指示にしたがって変調用信号Mmの周波数fを可変できるように構成されている。
【0004】
クロック再生部95は、測定対象100が読み取ったデータ信号Dmを受けてそのクロック成分である再生クロック信号Cmを再生し、位相検波部96に出力する。位相検波部96は、再生クロック信号Cmに対する位相検波処理を行い、その検波処理で得られた信号Mmを振幅検出部97に与える、振幅検出部97は信号Mmを検波してその振幅Amを求め、演算処理部99に与える。演算処理部99では、振幅検出部97で得られた振幅Amと変調用信号Mmの既知の振幅Amとの比Am/Amを求め、その対数値をジッタ周波数fにおける測定対象100のジッタ伝達量Tmとして求める。その演算が終了すると変調用信号Mmの周波数fを別の周波数に変えさせ、上記同様にジッタ伝達量Tmを求める。
【0005】
上記のように、特許文献1のジッタ伝達特性試験装置90は、変調用信号Mmの周波数fを変更しながらジッタ伝達量Tmを求めることで、所望の周波数範囲でジッタ伝達量Tmがどのように変化するかを表すジッタ伝達特性を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−220163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
測定対象のジッタ伝達特性の規格がジッタ伝達特性マスクとして定められている場合、所望の周波数範囲のうちのいずれかの周波数において測定対象100のジッタ伝達特性が予め定められたジッタ伝達特性マスクよりも大きいとき、測定対象100は予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合していないと扱われる。ジッタ伝達特性は周波数依存性を有し、ある周波数fにおいては測定対象100のジッタ伝達特性が予め定められた規格よりも小さいが、ある周波数fにおいては測定対象100のジッタ伝達特性が予め定められた規格よりも大きくなる場合がある。このため、測定対象100が予め定められたジッタ伝達特性に適合しているか否かを試験するためには、複数の周波数fを用いてジッタ伝達量Tmを測定する必要がある。
【0008】
しかし、特許文献1のジッタ伝達特性試験装置90は、変調用信号Mmの1つの正弦波信号を変更しながらジッタ伝達量Tmを求めるため、複数の周波数fにおけるジッタ伝達量Tmを求めようとすると測定する周波数fの数だけ繰り返して測定を行う必要がある。このため、測定対象100が予め定められたジッタ伝達特性に適合しているか否かを試験するためには時間を要していた。
【0009】
そこで、本発明は、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しているか否かの判定時間を短縮することのできるジッタ伝達特性試験装置及びジッタ伝達特性試験方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、指定された複数の周波数の正弦波成分が含まれる合成正弦波を用いて測定対象(100)のジッタ伝達特性の測定を行うジッタ伝達特性測定部(13)と、前記ジッタ伝達特性測定部が測定を行う度に、前記ジッタ伝達特性測定部が測定した複数の周波数の正弦波成分とは周波数が異なる複数の周波数の正弦波成分を指定する正弦波指定部(12)と、を備える。
【0011】
本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、ジッタ伝達特性測定部を備えるため、複数の周波数の正弦波成分についてのジッタ伝達特性の測定を同時に行うことができる。本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、正弦波指定部を備えるため、予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しにくい周波数の正弦波成分についてのジッタ伝達特性の測定を優先して行うことができる。したがって、本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しているか否かの判定時間を短縮することができる。
【0012】
本願発明のジッタ伝達特性試験装置では、前記正弦波指定部は、ジッタ伝達特性を測定する予め定められた正弦波成分のうち、前記ジッタ伝達特性測定部に指定した正弦波成分以外の正弦波成分を順次指定してもよい。
規格によって測定すべき正弦波成分が既知である場合、本発明により、測定対象が規格に適合しているか否かを判定することができる。
【0013】
本願発明のジッタ伝達特性試験装置では、前記正弦波指定部は、ジッタ伝達特性を測定する正弦波成分のうち、予め定められたジッタ伝達特性マスクが略一定値から減衰し始めるカットオフ周波数付近の周波数の正弦波成分を優先的に指定してもよい。
ジッタ伝達特性マスクが略一定値から減衰し始めるカットオフ周波数付近の周波数では、予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しない測定対象が多い。そのため、本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合していないことを少ない測定回数で判定することができる。
【0014】
本願発明のジッタ伝達特性試験装置では、前記カットオフ周波数付近の周波数は、前記カットオフ周波数を中心に±3ディケード以内の周波数であってもよい。
本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しにくい周波数についてのジッタ伝達特性の測定を優先して行うことができる。これにより、本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合していないことを少ない測定回数で判定することができる。
【0015】
本願発明のジッタ伝達特性試験装置では、前記正弦波指定部は、前記ジッタ伝達特性測定部に指定した正弦波成分の周波数を補間する複数の周波数の正弦波成分を順次指定してもよい。
本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、ジッタ伝達特性の概要を判定した後に、詳細を判定することができる。これにより、本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合していることを確認することができる。
【0016】
本願発明のジッタ伝達特性試験装置では、前記ジッタ伝達特性測定部の測定するジッタ伝達特性が、予め定められたジッタ伝達特性マスクを超えたか否かを判定する判定部(15)をさらに備えてもよい。
測定対象のジッタ伝達特性マスクが予め定められている場合、本願発明のジッタ伝達特性試験装置は、判定部を備えるため、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しているか否かを判定することができる。
【0017】
本願発明のジッタ伝達特性試験装置では、前記ジッタ伝達特性測定部は、前記正弦波指定部の指定する複数の周波数の正弦波成分が含まれる合成正弦波を生成する合成正弦波発生部(21)と、前記合成正弦波発生部からの合成正弦波で位相変調された変調クロック信号を出力するジッタ発生部(22)と、前記ジッタ発生部からの変調クロック信号に同期したデータ信号を生成して前記測定対象に出力するデータ信号発生部(23)と、前記測定対象の出力するデータ信号からクロックを再生するクロック再生部(25)と、前記クロック再生部からの再生クロック信号の位相検波を行う位相検波部(26)と、前記位相検波部の検波する位相変化に含まれる正弦波成分を検出する振幅検出部(27)と、前記振幅検出部の検出する正弦波成分の振幅と前記正弦波指定部の指定する正弦波成分の振幅との比を、周波数ごとに求める演算処理部(29)と、を備えてもよい。
本発明により、ジッタ伝達特性測定部は、複数の周波数の正弦波成分についてのジッタ伝達特性の測定を同時に行うことができる。
【0018】
上記目的を達成するために、本願発明のジッタ伝達特性試験方法は、異なる複数の周波数の正弦波成分が含まれる合成正弦波を発生させ、前記合成正弦波を用いて測定対象のジッタ伝達特性の測定を行うジッタ伝達特性測定手順(S101)を繰り返し有し、前記ジッタ伝達特性測定手順を実行する度に、前記合成正弦波に含まれる複数の正弦波成分の周波数を順次変更する。
【0019】
ジッタ伝達特性測定手順において合成正弦波を用いて測定対象のジッタ伝達特性の測定を行うため、複数の周波数の正弦波成分についてのジッタ伝達特性の測定を同時に行うことができる。ジッタ伝達特性測定手順において合成正弦波に含まれる正弦波成分の周波数を順次変更するため、予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しにくい周波数の正弦波成分についてのジッタ伝達特性の測定を優先して行うことができる。したがって、本願発明のジッタ伝達特性試験方法は、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しているか否かの判定時間を短縮することができる。
【0020】
本願発明のジッタ伝達特性試験方法では、前記ジッタ伝達特性測定手順において、ジッタ伝達特性を測定する予め定められた正弦波成分のうち、すでに前記合成正弦波に用いた正弦波成分以外の正弦波成分が含まれる合成正弦波を順次発生させてもよい。
規格によって測定すべき正弦波成分が既知である場合、本発明により、測定対象が規格に適合しているか否かを判定することができる。
【0021】
本願発明のジッタ伝達特性試験方法では、前記ジッタ伝達特性測定手順において、ジッタ伝達特性を測定する正弦波成分のうち、予め定められたジッタ伝達特性マスクが略一定値から減衰し始めるカットオフ周波数付近の周波数を含む複数の周波数の正弦波成分を指定してもよい。
ジッタ伝達特性マスクが略一定値から減衰し始めるカットオフ周波数付近の周波数では、予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しない測定対象が多い。そのため、本発明により、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合していないことを少ない測定回数で判定することができる。
【0022】
本願発明のジッタ伝達特性試験方法では、前記カットオフ周波数付近の周波数は、前記カットオフ周波数を中心に±3ディケード以内の周波数であってもよい。
本発明により、予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しにくい周波数の正弦波成分についてのジッタ伝達特性の測定を優先して行うことができる。これにより、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合していないことを少ない測定回数で判定することができる。
【0023】
本願発明のジッタ伝達特性試験方法では、前記ジッタ伝達特性測定手順において、前記ジッタ伝達特性測定手順を実行する度に、前記合成正弦波に含まれる複数の正弦波成分の周波数を順次補間するように変更してもよい。
本発明により、ジッタ伝達特性の概要を判定した後に、詳細を判定することができる。これにより、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合していることを確認することができる。
【0024】
本願発明のジッタ伝達特性試験方法では、前記ジッタ伝達特性測定手順において測定した前記複数の周波数の正弦波成分についてのいずれかのジッタ伝達特性が、予め定められたジッタ伝達特性マスクを超えたか否かを判定する判定手順(S102)を、前記ジッタ伝達特性測定手順の後にさらに有してもよい。
測定対象のジッタ伝達特性マスクが予め定められている場合、判定手順を実行することで、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しているか否かを判定することができる。
【0025】
本願発明のジッタ伝達特性試験方法では、前記ジッタ伝達特性測定手順において、前記合成正弦波で位相変調された変調クロック信号に同期したデータ信号を前記測定対象に出力し、前記測定対象の出力するデータ信号からクロックを再生して位相検波を行い、検波した位相変化に含まれる正弦波成分の振幅と前記合成正弦波に含まれる正弦波成分の振幅との比を、周波数ごとに求めてもよい。
本発明により、ジッタ伝達特性測定手順において、複数の周波数の正弦波成分についてのジッタ伝達特性の測定を同時に行うことができる。
【0026】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、測定対象が予め定められたジッタ伝達特性マスクに適合しているか否かの判定時間を短縮することのできるジッタ伝達特性試験装置及びジッタ伝達特性試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係るジッタ伝達特性試験装置の一例を示す。
【図2】ジッタ伝達特性の一例を示す。
【図3】本実施形態に係るジッタ伝達特性試験方法の一例を示す。
【図4】正弦波成分の一例を示す。
【図5】特許文献1のジッタ伝達特性試験装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0030】
図1に、本実施形態に係るジッタ伝達特性試験装置の一例を示す。本実施形態に係るジッタ伝達特性試験装置101は、データ信号Dfを測定対象100に出力し、測定対象100の出力するデータ信号Dbを取得することで、測定対象100のジッタ伝達特性の試験を行う。ジッタ伝達特性試験装置101は、例えば、規格設定部11と、正弦波指定部12と、ジッタ伝達特性測定部13と、判定部15と、結果表示部16と、を備える。
【0031】
規格設定部11は、予め定められたジッタ伝達特性マスクTを設定する。正弦波指定部12は、ジッタ伝達特性測定部13が測定を行う度に、ジッタ伝達特性測定部13が測定した複数の正弦波成分の周波数とは周波数が異なる複数の周波数の正弦波成分を指定する。例えば、正弦波指定部12は、ジッタ伝達特性マスクTによって定められる周波数f及び振幅Afを保持しており、規格設定部11からジッタ伝達特性マスクTを取得すると、ジッタ伝達特性マスクTによって定められる範囲の周波数成分(=測定ポイント)を抽出する。そして、抽出した測定ポイントのなかから任意の複数の周波数f及び振幅Afを選択してジッタ伝達特性測定部13に出力する。
【0032】
ジッタ伝達特性測定部13は、指定された複数の周波数の正弦波成分が含まれる合成正弦波Mfを用いて測定対象100のジッタ伝達特性Tの測定を行う。判定部15は、ジッタ伝達特性測定部13の測定するジッタ伝達特性Tが、予め定められたジッタ伝達特性マスクTを超えたか否かを判定する。結果表示部16は、ジッタ伝達特性T及びジッタ伝達特性マスクTを表示するとともに、判定部15の判定結果を表示する。
【0033】
図2に、ジッタ伝達特性の一例を示す。破線がジッタ伝達特性マスクTを示し、実線がジッタ伝達特性Tを示す。ジッタ伝達特性マスクTは、最低の周波数Fから最高の周波数Fまでの周波数を有する。このジッタ伝達特性マスクTに対して、ジッタ伝達特性測定部13は、例えば、複数の周波数F,F,F,F,F,F,F,F,F及びFのジッタ伝達特性Tを測定する。
【0034】
例えば、1度目の測定では、正弦波指定部12が周波数F,F,F,F及びFの正弦波成分を指定し、ジッタ伝達特性測定部13が周波数F,F,F,F及びFの合成正弦波Mfを用いて測定対象100のジッタ伝達特性Tの測定を行う。本実施形態では、周波数F,F及びFでのジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えている。この場合、判定部15は、周波数F,F及びFでのジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えている旨判定する。そして、結果表示部16は、周波数F,F,F,F及びFのジッタ伝達特性T及びジッタ伝達特性マスクTを表示するとともに、F,F及びFでのジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えている旨表示する。
【0035】
正弦波指定部12が任意の複数の周波数の正弦波成分を指定することができるため、ジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えやすい正弦波成分から順にジッタ伝達特性Tを測定することができる。これにより、ジッタ伝達特性試験装置101は、測定対象100が予め定められたジッタ伝達特性マスクTに適合しているか否かの判定時間を短縮することができる。
【0036】
ここで、ジッタ伝達特性マスクTは、周波数Fからカットオフ周波数Fではほぼ一定値となっており、カットオフ周波数Fから周波数Fまでは徐々に減衰している。この場合、ジッタ伝達特性Tはカットオフ周波数Fの周辺でジッタ伝達特性マスクTを超えることが多い。そこで、正弦波指定部12は、ジッタ伝達特性Tを測定する正弦波成分のうち、ジッタ伝達特性マスクTが略一定値から減衰し始めるカットオフ周波数F付近の周波数を優先的に指定する。ここで、カットオフ周波数F付近の周波数は、例えば、カットオフ周波数Fを中心に±3ディケード以内の周波数であることが好ましく、さらにカットオフ周波数Fを中心に±1ディケード以内の周波数であることが好ましい。例えば、カットオフ周波数Fを中心に±1ディケード以内に周波数F及びFが存在する場合、正弦波指定部12は、周波数Fの正弦波成分を1度目の測定で指定する。
【0037】
また、正弦波指定部12は、ジッタ伝達特性測定部13に指定した正弦波成分の周波数を補間する複数の周波数の正弦波成分を順次指定することが好ましい。例えば、段落0034で説明した1度目の測定後の2度目の測定では、正弦波指定部12が周波数F,F,F及びFの正弦波成分を指定し、ジッタ伝達特性測定部13が周波数F,F,F及びFの合成正弦波Mfを用いて測定対象100のジッタ伝達特性Tの測定を行う。本実施形態では、周波数F及びFでのジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えている。この場合、判定部15は、周波数F及びFでのジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えている旨判定する。そして、結果表示部16は、周波数F,F,F及びFのジッタ伝達特性T及びジッタ伝達特性マスクTを表示するとともに、F及びFでのジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えている旨表示する。
【0038】
このように、ジッタ伝達特性測定部13が測定を行う度に、正弦波指定部12は、ジッタ伝達特性測定部13が測定した複数の正弦波成分の周波数とは異なる複数の周波数の正弦波成分を指定する。ジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えやすい正弦波成分から順にジッタ伝達特性Tを測定することで、ジッタ伝達特性試験装置101は、測定対象100が予め定められたジッタ伝達特性マスクTに適合しているか否かの判定時間を短縮することができる。
【0039】
ジッタ伝達特性測定部13は、合成正弦波発生部21と、ジッタ発生部22と、データ信号発生部23と、クロック再生部25と、位相検波部26と、振幅検出部27と、演算処理部29と、発振器28と、を備える。
【0040】
図3に、本実施形態に係るジッタ伝達特性試験方法の一例を示す。本実施形態に係るジッタ伝達特性試験方法は、ジッタ伝達特性測定手順S101と、判定手順S102と、を順に繰り返す。ジッタ伝達特性測定手順S101は、合成正弦波の発生手順S201と、ジッタ伝達特性の測定手順S202と、正弦波成分の変更手順S203と、を順に有する。
【0041】
図3に示す合成正弦波の発生手順S201では、異なる複数の周波数の正弦波成分が含まれる合成正弦波を発生させる。周波数f及び振幅Afの正弦波成分であれば、周波数fは、例えば周波数F,F,F,F及びFである。そして、合成正弦波発生部21が、正弦波指定部12の指定する周波数f及び振幅Afの正弦波成分が含まれる合成正弦波Mfを生成する。
【0042】
ここで、合成正弦波の発生手順S201では、ジッタ伝達特性を測定する周波数F〜Fの正弦波成分のうち、ジッタ伝達特性マスクTが略一定値から減衰し始めるカットオフ周波数F付近の周波数の正弦波成分を指定することが好ましい。この場合、カットオフ周波数F付近の周波数は、例えば、カットオフ周波数Fを中心に±3ディケード以内の周波数であり、さらに±1ディケード以内の周波数であることが好ましい。例えば、カットオフ周波数Fを中心に±1ディケード以内に周波数F及びFが存在する場合、周波数Fの正弦波成分を1度目の測定で指定する。
【0043】
図3に示すジッタ伝達特性の測定手順S202では、合成正弦波Mfを用いて測定対象100のジッタ伝達特性Tの測定を行う。例えば、発振器28が基準クロック信号Coを出力する。ジッタ発生部22が、基準クロック信号Coを合成正弦波発生部21からの合成正弦波Mfで位相変調する。これにより、ジッタ発生部22は、合成正弦波発生部21からの合成正弦波Mfで位相変調された変調クロック信号Cfを出力する。データ信号発生部23は、ジッタ発生部22からの変調クロック信号Cfに同期したデータ信号Dfを生成して測定対象100に出力する。クロック再生部25は、測定対象100の出力するデータ信号Dbからクロックを再生して再生クロック信号Cbを出力する。位相検波部26は、発振器28からの基準クロック信号Coが入力され、クロック再生部25からの再生クロック信号Cbの位相検波を行い、基準クロック信号Coに対する再生クロック信号Cbの位相変化を表す信号Mbを出力する。振幅検出部27は、位相検波部26の検波する位相変化を表す信号Mbに含まれる周波数f及び振幅Abの正弦波成分を検出する。演算処理部29は、振幅検出部27の検出する正弦波成分の振幅Abと正弦波指定部12の指定する正弦波成分の振幅Afとの比(Ab/Af)を、周波数fごとに求める。これにより、周波数fにおけるジッタ伝達特性Tを求めることができる。例えば、振幅Abと振幅Afとの比(Ab/Af)の対数をとることで、ジッタ伝達特性Tを算出することができる。
【0044】
図4に、正弦波成分の一例を示す。ジッタ伝達特性マスクTの正弦波成分すなわち周波数f及び振幅Afは、規格設定部11の設定するジッタ伝達特性マスクTによって予め定められている。例えば、周波数Fであれば振幅Af、周波数Fであれば振幅Af、周波数Fであれば振幅Af、周波数Fであれば振幅Af、カットオフ周波数Fであれば振幅Af、周波数Fであれば振幅Af、周波数Fであれば振幅Af、周波数Fであれば振幅Af、周波数Fであれば振幅Af、周波数Fであれば振幅Afである。ジッタ伝達特性マスクTが異なれば、これら振幅Af〜Afも異なる。
【0045】
合成正弦波Mfが周波数F,F,F,F及びFの合成正弦波である場合、信号Mbには、周波数Fで振幅Abの正弦波成分、周波数Fで振幅Abの正弦波成分、周波数Fで振幅Abの正弦波成分、周波数Fで振幅Abの正弦波成分、周波数Fで振幅Abの正弦波成分が含まれる。この場合、演算処理部29は、周波数Fの振幅の比(Ab/Af)、周波数Fの振幅の比(Ab/Af)、周波数Fの振幅の比(Ab/Af)、周波数Fの振幅の比(Ab/Af)及び周波数Fの振幅の比(Ab/Af)を求める。これにより、演算処理部29は、周波数F,F,F,F及びFにおけるジッタ伝達特性Tを求めることができる。
【0046】
図3に示す判定手順S102では、ジッタ伝達特性測定手順S101において測定した複数の周波数の正弦波成分についてのいずれかのジッタ伝達特性Tが、予め定められたジッタ伝達特性マスクTを超えたか否かを判定する。例えば、周波数Fにおけるジッタ伝達特性Tが周波数Fにおけるジッタ伝達特性マスクTを超えたか否かを判定する。周波数F,F,F及びFについても同様に判定する。本実施形態では、周波数F,F及びFにおいてジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えている。この場合、測定対象100が予め定められたジッタ伝達特性マスクTに適合していないことを、1度の測定で判定することができる。そして、ジッタ伝達特性試験装置101は、本実施形態に係るジッタ伝達特性試験方法の実行を終了する。
【0047】
判定手順S102において、周波数F,F,F,F及びFのいずれもジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えていない場合は、正弦波成分の変更手順S203に移行する。正弦波成分の変更手順S203では、合成正弦波の発生手順S201で発生させた合成正弦波Mfに含まれる複数の正弦波成分の周波数を順次変更する。
【0048】
このとき、ジッタ伝達特性測定手順S101を実行する度に、合成正弦波Mfに含まれる複数の正弦波成分の周波数を順次補間するように変更してもよい。例えば、正弦波指定部12は、ジッタ伝達特性を測定する予め定められた周波数F〜Fの正弦波成分のうち、ジッタ伝達特性測定部13に指定した周波数F,F,F,F及びFを補間する周波数F,F,F及びFの正弦波成分を指定する。そして、合成正弦波の発生手順S201に移行する。
【0049】
合成正弦波の発生手順S201では、周波数F,F,F及びFの正弦波成分が含まれる合成正弦波Mfを発生させる。そして、ジッタ伝達特性の測定手順S202に移行する。ジッタ伝達特性の測定手順S202では、周波数F,F,F及びFの合成正弦波Mfを用いて測定対象100のジッタ伝達特性Tの測定を行う。これにより、演算処理部29は、周波数F,F,F及びFにおけるジッタ伝達特性Tを求めることができる。
【0050】
このように、ジッタ伝達特性測定手順S101において測定した複数の周波数の正弦波成分についてのいずれのジッタ伝達特性Tもジッタ伝達特性マスクTを超えていない場合は、合成正弦波Mfに含まれる正弦波成分の周波数を順次変更しながらジッタ伝達特性測定手順S101を繰り返して実行する。
【0051】
ジッタ伝達特性測定手順S101において正弦波指定部12が任意の複数の周波数の正弦波成分を指定することができるため、ジッタ伝達特性Tがジッタ伝達特性マスクTを超えやすい正弦波成分から順にジッタ伝達特性Tを測定することができる。このため、ジッタ伝達特性測定手順S101及び判定手順S102を繰返し実行することで、ジッタ伝達特性試験装置101は、測定対象100が予め定められたジッタ伝達特性マスクTに適合しているか否かの判定時間を短縮することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、正弦波指定部12の一例として、1度目の測定では図2に示す周波数F,F,F,F及びFの正弦波成分を指定し、2度目の測定では図2に示す周波数F,F,F及びFの正弦波成分を指定したが、これに限定されるものではない。
【0053】
例えば、正弦波指定部12は、1度目の測定ではカットオフ周波数Fの周辺の周波数範囲、例えば周波数F〜周波数Fの範囲の正弦波成分を指定し、その後にその他の周波数範囲の正弦波成分を指定してもよい。その他の周波数範囲は、例えば、2度目の測定では周波数F〜周波数Fの範囲内の正弦波成分を指定し、3度目の測定では周波数F〜周波数Fの範囲内の正弦波成分を指定する。これにより、測定対象100が予め定められたジッタ伝達特性マスクTに適合していないことを、少ない回数の測定で判定することができる。
【0054】
例えば、正弦波指定部12は、1度目の測定では1ディケードにつき1つの周波数の正弦波成分を指定していき、全ディケードでの正弦波成分を指定し終わった後に、既に指定した周波数を補間するように指定してもよい。これにより、測定対象100のジッタ伝達特性Tの概要を、少ない回数の測定で把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
11:規格設定部
12:正弦波指定部
13:ジッタ伝達特性測定部
15:判定部
16:結果表示部
21:合成正弦波発生部
22:ジッタ発生部
23:データ信号発生部
25:クロック再生部
26:位相検波部
27:振幅検出部
28:発振器
29:演算処理部
90:ジッタ伝達特性試験装置
91:変調信号発生部
92:ジッタ発生部
93:データ信号発生部
95:クロック再生部
96:位相検波部
97:振幅検出部
99:演算処理部
100:測定対象
101:ジッタ伝達特性試験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された複数の周波数の正弦波成分が含まれる合成正弦波を用いて測定対象(100)のジッタ伝達特性の測定を行うジッタ伝達特性測定部(13)と、
前記ジッタ伝達特性測定部が測定を行う度に、前記ジッタ伝達特性測定部が測定した複数の周波数の正弦波成分とは周波数が異なる複数の周波数の正弦波成分を指定する正弦波指定部(12)と、
を備えるジッタ伝達特性試験装置。
【請求項2】
前記正弦波指定部は、ジッタ伝達特性を測定する予め定められた正弦波成分のうち、前記ジッタ伝達特性測定部に指定した正弦波成分以外の正弦波成分を順次指定することを特徴とする請求項1に記載のジッタ伝達特性試験装置。
【請求項3】
前記正弦波指定部は、ジッタ伝達特性を測定する正弦波成分のうち、予め定められたジッタ伝達特性マスクが略一定値から減衰し始めるカットオフ周波数付近の周波数の正弦波成分を優先的に指定することを特徴とする請求項2に記載のジッタ伝達特性試験装置。
【請求項4】
前記カットオフ周波数付近の周波数は、前記カットオフ周波数を中心に±3ディケード以内の周波数であることを特徴とする請求項3に記載のジッタ伝達特性試験装置。
【請求項5】
前記正弦波指定部は、前記ジッタ伝達特性測定部に指定した正弦波成分の周波数を補間する複数の周波数の正弦波成分を順次指定することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のジッタ伝達特性試験装置。
【請求項6】
前記ジッタ伝達特性測定部の測定するジッタ伝達特性が、予め定められたジッタ伝達特性マスクを超えたか否かを判定する判定部(15)をさらに備えることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のジッタ伝達特性試験装置。
【請求項7】
前記ジッタ伝達特性測定部は、
前記正弦波指定部の指定する複数の周波数の正弦波成分が含まれる合成正弦波を生成する合成正弦波発生部(21)と、
前記合成正弦波発生部からの合成正弦波で位相変調された変調クロック信号を出力するジッタ発生部(22)と、
前記ジッタ発生部からの変調クロック信号に同期したデータ信号を生成して前記測定対象に出力するデータ信号発生部(23)と、
前記測定対象の出力するデータ信号からクロックを再生するクロック再生部(25)と、
前記クロック再生部からの再生クロック信号の位相検波を行う位相検波部(26)と、
前記位相検波部の検波する位相変化に含まれる正弦波成分を検出する振幅検出部(27)と、
前記振幅検出部の検出する正弦波成分の振幅と前記正弦波指定部の指定する正弦波成分の振幅との比を、周波数ごとに求める演算処理部(29)と、
を備えることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のジッタ伝達特性試験装置。
【請求項8】
異なる複数の周波数の正弦波成分が含まれる合成正弦波を発生させ、前記合成正弦波を用いて測定対象のジッタ伝達特性の測定を行うジッタ伝達特性測定手順(S101)を繰り返し有し、
前記ジッタ伝達特性測定手順を実行する度に、前記合成正弦波に含まれる複数の正弦波成分の周波数を順次変更するジッタ伝達特性試験方法。
【請求項9】
前記ジッタ伝達特性測定手順において、ジッタ伝達特性を測定する予め定められた正弦波成分のうち、すでに前記合成正弦波に用いた正弦波成分以外の正弦波成分が含まれる合成正弦波を順次発生させることを特徴とする請求項8に記載のジッタ伝達特性試験方法。
【請求項10】
前記ジッタ伝達特性測定手順において、ジッタ伝達特性を測定する正弦波成分のうち、予め定められたジッタ伝達特性マスクが略一定値から減衰し始めるカットオフ周波数付近の周波数を含む複数の周波数の正弦波成分を指定することを特徴とする請求項9に記載のジッタ伝達特性試験方法。
【請求項11】
前記カットオフ周波数付近の周波数は、前記カットオフ周波数を中心に±3ディケード以内の周波数であることを特徴とする請求項10に記載のジッタ伝達特性試験方法。
【請求項12】
前記ジッタ伝達特性測定手順において、前記ジッタ伝達特性測定手順を実行する度に、前記合成正弦波に含まれる複数の正弦波成分の周波数を順次補間するように変更することを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のジッタ伝達特性試験方法。
【請求項13】
前記ジッタ伝達特性測定手順において測定した前記複数の周波数の正弦波成分についてのいずれかのジッタ伝達特性が、予め定められたジッタ伝達特性マスクを超えたか否かを判定する判定手順(S102)を、前記ジッタ伝達特性測定手順の後にさらに有する
ことを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載のジッタ伝達特性試験方法。
【請求項14】
前記ジッタ伝達特性測定手順において、前記合成正弦波で位相変調された変調クロック信号に同期したデータ信号を前記測定対象に出力し、前記測定対象の出力するデータ信号からクロックを再生して位相検波を行い、検波した位相変化に含まれる正弦波成分の振幅と前記合成正弦波に含まれる正弦波成分の振幅との比を、周波数ごとに求める
ことを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載のジッタ伝達特性試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−196718(P2011−196718A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61287(P2010−61287)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】