説明

ジャイロスコープシステムによる測定方法

ジャイロスコープシステムには、少なくとも1個の振動ジャイロスコープが含まれる。第1の角度測定手段は、測定軸に沿う第1の角度値を与えるように設計されており、第2の角度測定手段は、上記測定軸に沿う第2の角度値を与えるように設計されている。第1の角度値は、現在の振動位置で振動する第1の角度測定手段によって与えられる。同時に、第2の角度値は、第2の角度測定手段によって与えられる。そこから、第1及び第2の角度値の比較に基づいて、修正された第2の角度値が推論される。次に、第1の角度測定手段の振動位置が、現在の位置から他の位置に変化される。その後、第1の角度値が、第1の角度測定手段によって与えられ、同時に、第2の角度値が、第2の角度測定手段によって与えられる。そして、そこから、第1及び第2の角度値の比較に基づいて、修正された第1の角度値が推論される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、コリオリの力に基づく振動ジャイロスコープに関するものであり、特に、このタイプのジャイロスコープによって与えられる回転角度値の精度に関する。
【0002】
上述の振動ジャイロスコープは、従来、例えば、参照方向である地理的な北(方位)に対する角度測定を与えるように設計されているジャイロコンパス等のナビゲーションの慣性システムに使用されている。
【0003】
例えば、半球形共振器ジャイロスコープ(HRG:Hemispherical Resonance Gyroscope)タイプや一般にタイプIと呼ばれているコリオリ振動ジャイロスコープ(CVG)タイプにおける軸対称のジャイロスコープは、出力信号を入力側にフィードバックしない開ループで作動し、測定電極に対するジャイロスコープの振動位置を表す角度の測定に基づく絶対回転角の測定を行う。
【0004】
尚、上記タイプIは、IEEE/ION(PLANS電気電子学会/航法研究所、2006、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)、P.586−593,アンドレイ M Shkel著に、タイプI及びタイプIIとして記載されているマイクロ振動ジャイロスコープのうちの一つである。
【0005】
また、上記軸対称のジャイロスコープは、特に、フランス特許第2,755,227で述べられているように、先行命令で振動位置を監視する閉ループにおいても使用することが可能である。
【0006】
この場合、ジャイロスコープの振動位置は固定位置に保持される。そして、測定量は、先行命令から推論される。この先行命令は、ジャイロスコープの振動位置を固定位置に保持させるためには、ジャイロスコープに適用することが必要不可欠となるものである。
【0007】
このタイプの操作は、「ジャイロフィードバック」と呼ばれている。この物理的測定にて得られた値は、角度に相当するのではなく、回転速度に相当するものとなっている。
【0008】
これらの振動ジャイロスコープによって得られる測定量は、本質的に、測定電極に対する振動位置の関数である誤差によって損なわれる。これらの誤差は、それゆえ、振動位置に伴って変化する。
【0009】
これらの誤差は、測定された値の精度を低下させることになる。したがって、このタイプのジャイロスコープの性能を向上させるためにはこれらの誤差の抑制方法を探すことが有用となる。
【0010】
閉ループ操作又はジャイロスコープの操作に関連して、欧州特許公開公報「EP 1 752 733」には、そのような測定装置の性能を向上させるべく、測定値に影響する誤差を抑制することを目的とする方法が開示されている。
【0011】
このために、90°離れたレートジャイロにおける2つの振動位置における誤差の対称性が、誤差を低減するための開始位置として使用されている。すなわち、この開始位置は、90°離れた2つの振動位置の間のレートジャイロの振動位置の変化を定めることにより発生する誤差の平均値をとったものとなっている。
【0012】
1つの振動位置から他の振動位置へ切り替わる期間において、上記の公報においては、振動位置が変化の過程にあるときには、第1のレートジャイロの代わりに回転速度を与えるために、閉じたジャイロ用の回路からなる第2のジャイロスコープを用いることを提案している。しかしながら、この第2のジャイロスコープでは、回転速度の適切な測定量を与えることはできない。
【0013】
すなわち、レートジャイロによって与えられた測定量は、開回路で操作するジャイロスコープにて与えられた測定量に比較して、精度が悪化していることに注意すべきである。レートジャイロによって与えられた測定量は、本質的に、変化に伴う不明確さに連携しており、回転速度を得るためには先行命令を適用しなければならないためである。
【0014】
本発明は、これらの障害を克服することを目的としている。
【0015】
本発明の実施の形態は、タイプ1のジャイロスコープに関するものである。
【0016】
本発明は、その状況を改善することを目的としている。
【0017】
本発明の第1の形態は、ジャイロスコープシステムによる測定方法を提供するものであり、ジャイロスコープシステムは、少なくとも、その振動位置を複数の振動位置の中で変化させ、かつ該複数の振動位置における1つの振動位置での、測定軸に沿う第1の測定角度を与えるように設計された第1の零基準角度を有する第1の角度測定手段としての振動ジャイロスコープと、上記測定軸に沿う第2の測定角度を与えるように設計された第2の零基準角度を有する第2の角度測定手段とを含んでいる。
【0018】
上記測定方法は、第1の角度測定手段における振動位置の変化を実行するために以下のステップを含んでいる。
(a)上記複数の振動位置における現在の振動位置にて振動する第1の角度測定手段によって第1の角度値を与えると同時に、第2の角度測定手段によって第2の角度値を与えると共に、
与えられた第1及び第2の角度値の比較に基づいて第2の零基準角度を適用することによって、修正された第2の角度値を推論する第1期間、
(b)第1の角度測定手段の振動位置を、現在の振動位置から上記複数の振動位置における他の振動位置へ変化させる第2期間、
(c)第1の角度測定手段によって第1の角度値を与えると同時に、第2の角度測定手段によって第2の角度値を与えると共に、
与えられた第1及び第2の角度値の比較に基づいて、第1の零基準角度を適用することによって、修正された第1の角度値を推論する第3期間。
【0019】
測定に際して、第1の角度測定手段として使用されている振動ジャイロスコープの振動位置は、適切な角度測定値を与えている間においては回転している。
【0020】
まず、このようなシステムでは、第1及び第2の角度測定手段は、角度値を与える。そして、第1の角度測定手段又は第2の角度測定手段によってそれぞれ与えられた角度値は、第2の角度測定手段又は第1の角度測定手段によってそれぞれ与えられた角度値に好適に適用される。
【0021】
この結果、第1の角度測定手段の第1の零基準角度又は第2の角度測定手段の第2の零基準角度は、それぞれ第2の角度測定手段の第2の零基準角度又は第1の角度測定手段の第1の零基準角度に適用される。
【0022】
これによって、振動ジャイロスコープの振動位置を変化させるプロセスを通して、互いに整合性のとれた角度値が与えられる。測定された角度値が第1の角度測定手段によって与えられたのか又は第2の角度測定手段によって与えられたのかどうかについて、これらの角度値が、それぞれ使用されている零基準角度に対して好適に修正される。
【0023】
その結果、振動ジャイロスコープの振動位置において、互いに整合性の取れた角度値を与えている間、振動ジャイロスコープの各振動位置に連携する各誤差を平均化させることができる振動ジャイロスコープの振動位置の変化を行わせることができる。
【0024】
従来技術のシステムによって与えられた測定値では、そのような整合性は提供することができないことに注意すべきである。これは、回転速度の測定に関連することだからである。
【0025】
このような処理によって、振動ジャイロスコープの振動位置に関連する第1の角度測定手段の測定誤差は、振動ジャイロスコープにおける異なった振動位置において好適に平均化される。角度測定量が、第1の位置で振動する第1角度測定手段によって与えられ、そこで、振動ジャイロスコープにおける振動位置の変化が第1の振動位置から第2の振動位置へ行われ、そこで、第2の角度測定手段によって角度測定量が好適に与えられる。続いて、第1及び第2の角度測定手段の各種の零基準角度に関連するこれらの角度値の修正が与えられる。
【0026】
第2の角度測定手段は、どのような角度測定手段であってもよいことに注意すべきである。
【0027】
そのような状況では、振動ジャイロスコープによって与えられた角度測定量は、ときには第1の振動位置に関連する誤差によって損なわれた状態で与えられると共に、ときには第2の振動位置に関連する誤差によって損なわれた状態で与えられることがある。
【0028】
振動ジャイロスコープを構成することにより提供される振動位置の個数については、制限はない。
【0029】
本発明の一形態では、振動位置の各変化において、適切で整合性の取れた角度測定値を得るためにステップ(a)から(c)が繰り返されることが好ましい。
【0030】
この結果、ジャイロスコープシステムでは、以下の角度値を与えることができる。
【0031】
ステップ(a)の前及びその間、並びにステップ(c)の後では、第1の角度測定手段によって与えられた角度値。
【0032】
ステップ(b)とステップ(c)との間では、第2の角度測定手段によって与えられた角度値。
【0033】
(a)から(c)へのステップに基づく第1の角度測定手段の振動位置の変化は、何度か連続して繰り返される。
【0034】
さらに、振動ジャイロスコープがK個の連続する振動位置で振動することができる場合においては、そのような振動位置の変化は、振動位置iから振動位置i+1への推移が許される。ここで、iは1からK−1までである。
【0035】
ステップ(a)から(c)への各繰り返しにおいては、ステップ(a)の第1の振動位置は、最後に実行されたステップ(c)で振動する振動ジャイロスコープの振動位置に相当する。そして、第2の振動位置は、考えられる複数の振動位置におけるそれに続く振動位置に相当する。
【0036】
ジャイロスコープシステムは、N個の振動ジャイロスコープを含むことができる。ここで、Nは、3以上の整数である。この場合、N個のジャイロスコープは、複数の振動位置におけるそれぞれのジャイロスコープの振動位置に変化し、かつ上記複数の振動位置の各振動位置において、それぞれの測定軸に沿うそれぞれの角度値の測定を与えるように設計されている。
【0037】
第1の角度測定手段は、そのとき、N個の振動ジャイロスコープのうちのいずれか1つに相当することができ、第2の角度測定手段は、システムのN−1個の他のジャイロスコープに基づくいずれかの組み合わせに相当することができると共に、第1の角度測定手段の測定軸に沿った第2の零基準角度に対する角度測定を与えるように設計されている。
【0038】
そのような振動ジャイロスコープシステムの構築において、本発明では、これら様々の振動ジャイロスコープの全て又はいくつかを交互に適用することが好ましい。第1の角度測定手段は、後述するように、考えられる測定システムの様々の振動ジャイロスコープに対応することが可能であるためである。
【0039】
Nが3の場合には、3個の振動ジャイロスコープは、2つずつが互いに同一平面上に存在しかつ非共通の直線からなる測定軸を持つことができる。
【0040】
この場合、第1の測定軸に沿う角度値を決定する第1の対の異なる直線の組み合わせと、第2の測定軸に沿う角度値を決定する第2の対の異なる直線の組み合わせとを定義することできる。
【0041】
本発明の一形態に基づく測定方法は、互いに対となる直線の組み合わせに適用することができる。
【0042】
少なくとも2つの測定軸は、実質的に垂直であるとすることができる。
【0043】
また、Nが3であるときには、3個のジャイロスコープは、それぞれの測定軸の間の角度が実質的に120°に等しくなるように、同じ平面上に位置しているとすることができる。
【0044】
Nが4であるときには、4個のジャイロスコープは、それぞれの測定軸が、正三角錐の中心から各頂点に向かう方向(four trisector of space)に向くように、空間に位置しているとすることができる。
【0045】
Nが4であるときには、4個のジャイロスコープは、3つずつでは同一平面上にはなく、かつ2つずつでは非共通の直線からなる測定軸を有している。
【0046】
そのとき、第1の測定軸に沿う角度値を決定する第1の対の異なる直線の組み合わせと、第2の測定軸に沿う角度値を決定する第2の対の異なる直線の組み合わせと、第3の測定軸に沿う角度値を決定する第3の対の異なる直線の組み合わせとを定義することができる。
【0047】
そのときには、本発明の一形態に基づく測定方法のステップでは、各々の類似する直線の組み合わせを適用することができる。
【0048】
複数の振動位置における各振動位置は、また、360度を整数にて区分した角度値にて連続して分割される。
【0049】
複数の振動位置における各振動位置は、0と2πラジアンとの間で使用される振動位置を割り当てるように決定することができる。
【0050】
測定システムが、4つのジャイロスコープA,B,C,Dを含み、かつそれぞれの測定軸が、実質的に正三角錐の中心から各頂点に向かう方向(four trisector of space)に向くように位置しているときには、それぞれa,b,c,dで示される4つの測定量に基づく類似する直線の組み合わせは、3つの実質的に垂直な測定軸に再構成されるように使用される。具体的には、以下である。
【0051】
第1の測定軸x:a+bと−(c+d)
第2の測定軸y:b+cと−(a+d)
第3の測定軸z:a+cと−(b+d)
振動位置を変化させる指示は、各々の振動ジャイロスコープで連続して実行される。
【0052】
4つの振動ジャイロスコープは、以下の方程式に基づいて設計されている。
【0053】
a+b+c+d=0
複数の振動位置における振動位置は、360度を整数にて区分した角度値にて連続して分割される。
【0054】
また、複数の振動位置における振動位置は、すでに旋回した振動位置に注意を払いながら、0から360度の間で使用される振動位置を分配するように、リアルタイムで決定される。
【0055】
また、第1及び/又は第2の修正された角度値を、倍率(a scale factor)に気を配ることによって得ることができる。
【0056】
また、本発明の第2の形態は、本発明の第1の形態において、手順を果たすように設計されたジャイロスコープの測定システムを提供する。
【0057】
上記ジャイロスコープの測定システムは、
その振動位置を複数の振動位置の中で変化させ、かつ該複数の振動位置における1つの振動位置での、測定軸に沿う第1の測定角度を与えるように設計された第1の零基準角度を有する第1の角度測定手段としての振動ジャイロスコープと、
複数の振動位置における1つの振動位置に変化し、該複数の振動位置における1つの振動位置での、上記測定軸に沿う第2の測定角度を与えるように設計された第2の零基準角度を有する第2の角度測定手段とを含んでいる。
【0058】
上記ジャイロスコープの測定システムは、さらに、
一定時間内に得られた第1及び第2の角度値の比較に基づいて、第2の零基準角度を適用することによって修正された第2の角度値を与えるように設計された、該第2の角度値を修正するユニットと、
他の一定時間内に得られた第1及び第2の角度値の比較に基づいて、第1の零基準角度を適用することによって、修正された第1の角度値を与えるように設計された、該第1の角度値を修正するユニットと、
を含み、
上記第1及び第2の角度値を修正するユニットは、少なくとも第1の角度測定手段の振動位置が変化する間に使用される。
【0059】
角度値は、第1の角度測定手段の振動位置が変化する間に、第1の角度測定手段と第2の角度測定手段とによって、交互に与えられることが好ましい。
【0060】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に示す記載によって明白になるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【0061】
図1は、本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムによる測定方法のメインステップを示している。
【0062】
図2は、本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムによって与えられた測定値の変化を示している。
【0063】
図3は、本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムを示している。
【0064】
図1は、本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムによる測定方法の主たるステップを示している。
【0065】
ステップ11において、ある時間T1では、第1及び第2の角度測定手段は、同時に、第1及び第2の角度値をそれぞれ与える。そのとき、これら2つのタイプの角度値に基づいて、連携する零基準角度に関連する第1の角度値と整合性をとるように、第2の角度値及び対応する零基準角度を修正することができる。
【0066】
このように、第1及び第2の角度測定手段によって与えられた値との間の角度の連続性は保障されている。そのとき、測定システムが整合性のとれた値、例えば、第2の角度測定手段によってなされた修正された角度値を与えるように、第1の角度測定手段を構成する振動ジャイロスコープの振動位置の変化をもたらすことができる。ステップ12では、振動位置の変化が振動ジャイロスコープ上で実行される。
【0067】
この変化によって、ある時間内において第2の角度測定手段から角度値が継続して与えられるか、又は異なる振動位置においてそのときに振動する第1の角度測定手段からの新たな角度値が与えられる。本発明においては、修正された第2の値を与えることができる時間については、制限されることはない。
【0068】
ステップ13では、第1及び第2の角度値は、最後の変化の間に指示された振動位置において振動する第1の角度測定手段によって与えられた第1の角度値を修正できるように、第1及び第2の角度値が、再度、同時に、考慮される。
【0069】
図2は、本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムによって与えられた測定値の変化を示している。
【0070】
角度値の変化は、測定方法のステップの間に経過された時間の関数として説明される。
【0071】
ここで、時間Tの前では、角度値は第1の角度測定手段によって与えられる。そのとき、時間Tと時間Tとの間においては、第1の角度測定手段によって与えられた角度値、及び第2の角度測定手段によって与えられた角度値は、第2の角度測定手段によって与えられた値に基づいて与えられた修正された第2の角度値を得るために考慮される。
【0072】
それゆえ、この期間は、システムによって、時間内にシステムによって与えられた角度値の整合性に使用される回復時間に相当している。
【0073】
この回復期間が経過したときに、第1の角度測定手段の振動位置の変化が指示される。
【0074】
実際の測定システムでは、そのときには、修正された第2の角度値を与える。
【0075】
図3は、本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムを示している。
【0076】
このシステムは、
第1の角度値を与える振動ジャイロスコープ31と、
第2の角度値を与える第2の角度測定手段32と、
ある時間内に得られた第1及び第2の角度値との比較に基づいて、第2の零基準角度を適用することによって、修正された第2の角度値を与えるように設計された、該第2の角度値を修正するユニットと、
他の時間内に得られた第1及び第2の角度値との比較に基づいて、第1の零基準角度を適用することによって、修正された第1の角度値を与えるように設計された、該第1の角度値を修正するユニットと、
を含んでいる。
【0077】
第1及び第2の角度値を修正するユニットは、少なくとも第1の角度測定手段の振動位置の変化の間において使用される。
【0078】
振動ジャイロスコープにおける複数の振動位置は、K個の異なった位置に相当している。整数Kは、最適な効果を達成するように選択することができる。ここで、本実施の形態の測定方法を適用することによる、種々の振動位置に連携する誤差を平均することによって与えられる性能改善は、K個の振動位置に亘る振動位置の絶え間ない変化にて結合される全体の測定期間を幾つかの測定時間に分割するだけ、精度の低下を招き得ることに注意すべきである。
【0079】
システムの性能は、回復持続時間と振動位置の2つ変化の間で過ぎ去る時間との比を調整することによって改善される。その改善においては、種々の振動位置に連携する誤差を平均化することにより与えられる性能改善と、切り替え時において回復持続時間内における第1及び第2の角度値に存在するノイズに連携する誤差が導入されるという事実に連携する性能低下との間の兼ね合いを決定することが問題となる。
【0080】
ジャイロスコープの測定システムは、N個の振動ジャイロスコープを含むことができる。Nは3以上の整数である。N個の振動ジャイロスコープは、複数の振動位置における各振動ジャイロスコープの振動位置に変化するように設計され、かつ上記複数の振動位置におけるそれぞれの振動位置での各測定軸に沿う角度値の各測定量を与えるように設計されている。この場合、第1の角度測定手段は、N個の振動ジャイロスコープのいずれか1つに相当することができる。その間、第2の角度測定手段自体は、システムのN−1個の他の振動ジャイロスコープに基づくいくつかのジャイロスコープに相当することができる。また、第1の角度測定手段は、第1の角度測定手段の測定軸に沿う角度測定量を与えるように設計され、かつ第2の零基準角度に関係している。
【0081】
本発明では、実施の形態に限定されることなく、いくらかの異なった構成が例示として与えられる。
【0082】
例えば、Nが3であるときには、3個の振動ジャイロスコープは2つずつが互いに同一平面上に存在しかつ非共通の直線からなる測定軸を持つことができる。
【0083】
Nが3であるときには、3個の振動ジャイロスコープは同じ平面内に位置し、その平面においては、それぞれの測定軸は、実質的に120度に等しい角度を形成している。
【0084】
Nが4であるときには、4個の振動ジャイロスコープは、それぞれの測定軸が、正三角錐の中心から各頂点に向かう方向に向くように、空間に位置している。
【0085】
Nが4であるときには、4個の振動ジャイロスコープは、3つずつでは同一平面上にはなく(noncoplanar)、かつ2つずつでは非共通の直線(noncolinear)からなる測定軸を持っている。
【0086】
本発明の実施の形態においては、また、第2の角度測定手段は、複数の振動ジャイロスコープを含み、少なくとも1個の振動ジャイロスコープは振動位置に変化し、かつ角度値の測定を与えるように設計されているとすることができる。この少なくとも1個の振動ジャイロスコープが与える角度測定量は、望ましい測定軸に沿う角度値の第2の測定量に相当するように第2の角度測定手段における他のジャイロスコープによって与えられた角度値の線形な組み合わせであるとすることができる。
【0087】
この場合、さらに、該測定方法においては、追加のステップを実行するようにすることができる。例えば、第2の角度測定手段における1つ以上の振動ジャイロスコープの振動位置を、現在の振動位置から複数の振動位置における他の振動位置へと変化させることができる。
【0088】
第2の角度測定手段は、さらに、互いに振動位置を変化するように設計された振動ジャイロスコープからなるとすることができる。
【0089】
第1の角度測定手段が振動ジャイロスコープであり、かつ第2の角度測定手段もまた振動ジャイロスコープであるとき、2つの振動ジャイロスコープはそれらの振動軸は共通の線として与えられる。
【0090】
以下の節では、本願発明の、方位測定の参照を与える慣性ユニットにおける振動ジャイロスコープの校正(calibration)について説明する。
【0091】
この目的を達成するために、少なくとも4個の同一直線上にはないジャイロスコープシステムでは、第4の振動ジャイロスコープの校正をしている間に、これら4個の振動ジャイロスコープのうちの3個によって与えられる測定量を使用する。
【0092】
校正ステップでは、校正の間に振動ジャイロスコープの振動位置を変化させる。このように、少なくとも4個の振動ジャイロスコープのうちの1個が校正ステップにある間においては、少なくとも3個の他の振動ジャイロスコープによって与えられる測定量が、方位測定の参照を与えるために使用される。
【0093】
さらに、正確には、校正操作は、種々の位置での振動、及び校正されるべき振動ジャイロスコープからの相当する測定量を取ることを含んでいる。そのとき、3個の他のジャイロスコープによって測定されるこれらの測定量から、支持部(bearer)の真の回転が十分に低減される。
【0094】
本発明の実施の形態では、この操作は、全ての振動ジャイロスコープのために連続して繰り返される。
【0095】
3個の振動ジャイロスコープは、従来の3つの直角線に基づいて方位測量され、4個の振動ジャイロスコープは、正三角錐の中心から各頂点に向かう方向(the trisector)に向く直線に基づいて方位測定される。
【0096】
ここで、振動ジャイロスコープの構成は、以下の方法によって、さらに確実にされる。
【0097】
校正中におけるジャイロスコープの測定量と、3個の他の振動ジャイロスコープを含む第2の角度測定手段の測定量との間に、異なるDが計算される。この計算されたDは、校正されるべき振動ジャイロスコープの振動位置を変化させる指示が適用されるときに、実行される。
【0098】
Dは、位置変化を生成するために使用される倍率が、それ自体、正確に知られていない場合でさえも、正確に知られるように回転された振動による角度である。校正中においてジャイロスコープによって測定されたこの明瞭な回転は、ナビゲーションの計算から減じることができる。
【0099】
この計算は、また、振動が与えられた位置から離れた位置においてその期間内に実行される。このように、変化位置への指示を適用することによって、振動位置は、k個の位置に分割され、値Dはこれらk個の位置の各々のために記録される。このように、ジャイロスコープの測定誤差は、振動位置の関数として知られており、更新された誤差動向の調和のとれたモデルとなる。
【0100】
この処置は、同じ3個のジャイロスコープがいつもナビゲーション、誤差モデルに関する更新を介して紹介された修正、及び、ナビゲーションに使用されるジャイロスコープで回避される一時的な切り替えに使用されることを意味する。
【0101】
与えられた振動位置を乱す支持物が実質的に動く場合には、動向モデルの更新を中止し、後に延期することが好ましい。
【0102】
本発明の原則を、内部ユニット、及び該内部ユニットの振動ジャイロスコープの校正に適用することにより、ユニットの使用において、どんなときにも分かりやすい方法で校正を実行することができる。実際、そのようなジャイロスコープシステムは、振動ジャイロスコープの1つが校正ステップにある場合でさえも、方向参照を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムによる測定方法のメインステップを示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムによって与えられた測定値の変化を示す図である。
【図3】本発明の実施の一形態を示すものであって、ジャイロスコープシステムの構成を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、その振動位置を複数の振動位置の中で変化させ、かつ該複数の振動位置の1つの振動位置での、測定軸に沿う第1の測定角度を与えるように設計された第1の零基準角度を有する第1の角度測定手段としての振動ジャイロスコープと、
上記測定軸に沿う第2の測定角度を与えるように設計された第2の零基準角度を有する第2の角度測定手段とを含むジャイロスコープシステムによる測定方法であって、
上記第1の角度測定手段における振動位置の変化を実行するために、
(a)上記複数の振動位置における現在の振動位置にて振動する第1の角度測定手段によって第1の角度値を与えると同時に、第2の角度測定手段によって第2の角度値を与えると共に、
与えられた第1及び第2の角度値の比較に基づいて第2の零基準角度を適用することによって、修正された第2の角度値を推論する第1期間、
(b)第1の角度測定手段の振動位置を、現在の振動位置から上記複数の振動位置における他の振動位置へ変化させる第2期間、
(c)第1の角度測定手段によって第1の角度値を与えると同時に、第2の角度測定手段によって第2の角度値を与えると共に、
与えられた第1及び第2の角度値の比較に基づいて、第1の零基準角度を適用することによって、修正された第1の角度値を推論する第3期間、
を含むジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項2】
前記ジャイロスコープシステムは、
前記ステップ(a)の前及びその間、並びにステップ(c)の後では、第1の角度測定手段によって角度値を与えると共に、
前記ステップ(b)とステップ(c)との間では、第2の角度測定手段によって角度値を与える請求項1記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)から(c)に基づく第1の角度測定手段の振動位置の変化は、連続して数回繰り返される請求項1又は2記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項4】
前記ジャイロスコープシステムは、3以上の整数であるN個の振動ジャイロスコープを含み、
上記N個のジャイロスコープは、複数の振動位置におけるそれぞれのジャイロスコープ振動位置に変化するように設計され、かつ上記複数の振動位置の各振動位置において、それぞれの測定軸に沿うそれぞれの角度値の測定を与えるように設計されており、
第1の角度測定手段は、N個の振動ジャイロスコープのうちのいずれか1つに相当することができ、
第2の角度測定手段は、システムのN−1個における他のジャイロスコープのうちのいずれかに相当することができると共に、第1の角度測定手段の測定軸に沿った第2の零基準角度に対する角度測定量を与えるように設計されている請求項1記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項5】
少なくとも2つの前記測定軸は、垂直である請求項4記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項6】
前記Nは3であると共に、
3個の振動ジャイロスコープは、2つずつが互いに同一平面上に存在しかつ非共通の直線からなる測定軸を持っている請求項4記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項7】
前記Nは3であると共に、
3個の振動ジャイロスコープは、それぞれの測定軸の間の角度が実質的に120°に等しくなるように、同じ平面上に位置している請求項4記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項8】
前記Nは4であると共に、
4個の振動ジャイロスコープは、それぞれの測定軸が、正三角錐の中心から各頂点に向かう方向に向くように、空間に位置している請求項4記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項9】
前記Nは4であると共に、
4個の振動ジャイロスコープは、3つずつでは同一平面上にはなく、かつ2つずつでは非共通の直線からなる測定軸を有している請求項4記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項10】
前記複数の振動位置における各振動位置は、360度を整数にて区分した角度値にて連続的に分割されている請求項1〜9のいずれか1項に記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項11】
前記複数の振動位置における各振動位置は、0と2πラジアンとの間で使用される振動位置を割り当てるように決定されている請求項1〜10のいずれか1項に記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項12】
第1及び第2の修正された角度値、又は第1若しくは第2のいずれか一方の修正された角度値を、倍率より得る請求項1〜11のいずれか1項に記載のジャイロスコープシステムによる測定方法。
【請求項13】
その振動位置を複数の振動位置の中で変化させ、かつ該複数の振動位置における1つの振動位置での、測定軸に沿う第1の測定角度を与えるように設計された第1の零基準角度を有する第1の角度測定手段としての振動ジャイロスコープと、
複数の振動位置における1つの振動位置に変化し、該複数の振動位置における1つの振動位置での、上記測定軸に沿う第2の測定角度を与えるように設計された第2の零基準角度を有する第2の角度測定手段とを含み、
さらに、
一定時間内に得られた第1及び第2の角度値の比較に基づいて、第2の零基準角度を適用することによって修正された第2の角度値を与えるように設計された、該第2の角度値を修正するユニットと、
他の一定時間内に得られた第1及び第2の角度値の比較に基づいて、第1の零基準角度を適用することによって、修正された第1の角度値を与えるように設計された、該第1の角度値を修正するユニットと、
を含み、
上記第1及び第2の角度値を修正するユニットは、少なくとも第1の角度測定手段の振動位置が変化する間に使用されるジャイロスコープの測定システム。
【請求項14】
前記角度値は、第1の角度測定手段の振動位置が変化する間に、第1の角度測定手段と第2の角度測定手段とによって、交互に与えられる請求項13記載のジャイロスコープの測定システム。
【請求項15】
3以上の整数からなるN個の振動ジャイロスコープを含み、
N個の振動ジャイロスコープは、複数の振動位置における各振動ジャイロスコープの振動位置に変化するように設計され、かつ上記複数の振動位置におけるそれぞれの振動位置での各測定軸に沿う角度値の各測定量を与えるように設計されており、
上記N個の振動ジャイロスコープのいずれか1つが第1の角度測定手段に相当し、
システムのN−1個の他の振動ジャイロスコープに基づくいくつかのジャイロスコープが第2の角度測定手段に相当し、
上記第1の角度測定手段は、第1の角度測定手段の測定軸に沿った第2の零基準角度に対する角度測定量を与えるように設計されている請求項13又は14記載のジャイロスコープの測定システム。
【請求項16】
前記Nは3であると共に、
3個の振動ジャイロスコープは、2つずつが互いに同一平面上に存在しかつ非共通の直線からなる測定軸を持っている請求項15記載のジャイロスコープの測定システム。
【請求項17】
前記Nは3であると共に、
3個の振動ジャイロスコープは、それぞれの測定軸の間の角度が実質的に120°に等しくなるように、同じ平面上に位置している請求項15記載のジャイロスコープの測定システム。
【請求項18】
前記Nは4であると共に、
4個の振動ジャイロスコープは、それぞれの測定軸が、正三角錐の中心から各頂点に向かう方向に向くように、空間に位置している請求項15記載のジャイロスコープの測定システム。
【請求項19】
前記Nは4であると共に、
4個の振動ジャイロスコープは、3つずつでは同一平面上にはなく、かつ2つずつでは非共通の直線からなる測定軸を有している請求項15記載のジャイロスコープの測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−506991(P2011−506991A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538781(P2010−538781)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068123
【国際公開番号】WO2009/083519
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(506010150)サジェム デファンス セキュリテ (14)
【Fターム(参考)】