説明

スイッチング電源装置

【課題】インテリジェント性が高く、比較的低コストの汎用デジタルプロセッサを用いて、出力電圧の分解能が高く高速応答可能なデジタル制御のスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】直流の入力電圧をパルス幅変調信号に対応したタイミングでスイッチング動作し交流電圧を発生させるスイッチング素子TR1を有するインバータ回路12と、その交流電圧を整流平滑して出力電圧を得る整流平滑回路14を備える。スイッチング周波数を設定し、のこぎり波電圧を発生するのこぎり波発生回路46を備える。出力電圧を出力電圧デジタル値に変換するアナログ/デジタル変換回路26と、出力電圧デジタル値を基に所定の演算処理を行なうことにより出力電圧を制御するための制御パルス発生手段42と、制御パルス電圧を平滑するパルス平滑化回路44を備える。平滑化電圧とのこぎり波電圧とを比較して、スイッチング素子TR1の駆動パルス幅を決定する比較回路20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルス幅変調(PWM)信号によりスイッチング動作の制御を行って直流電圧を所望の電圧に変換して、電子機器に供給するためのスイッチング電源装置に関し、特にデジタル制御により出力電圧を制御するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアナログ制御により出力電圧制御を行うスイッチング電源装置としては、例えば図6に示す回路のものがある。このスイッチング電源装置10は、直流の入力電源Einが接続されスイッチング動作を行うインバータ回路12と、そのスイッチング動作によって発生した交流電圧を整流平滑して出力電圧Voutを得る整流平滑回路14を有し、出力電圧Vout端子が、負荷22に接続されている。出力電圧Voutは、出力電圧Voutと所定の基準電圧Vrefとの差分を増幅した制御電圧Vcを出力するアナログ式誤差増幅回路16に接続されている。さらに、スイッチング素子TR1のスイッチング周波数を決定するのこぎり波電圧Viを生成するのこぎり波発生回路18を備え、制御電圧Vcとのこぎり波電圧Viを比較して、スイッチング素子駆動パルスVgを発生する比較回路20を備えている。比較回路20の出力は、スイッチング素子TR1の制御端子であるゲートに接続されている。
【0003】
インバータ回路12は、入力電源Einと直列にトランスT1の1次側巻線T1aとスイッチング素子TR1が接続され、スイッチング素子TR1のオン・オフ動作によってトランスT1の2次側巻線T1bに交流電圧Vbを発生させる。なお、トランスT1の各巻線の極性等は、周知のシングルフォワード方式に構成されている。
【0004】
トランスT1の2次側巻線T1bには、整流平滑回路14が接続されており、スイッチング素子TR1がオンのときに導通してパルス電流を流すフォワード側整流素子TR2と、フォワード側整流素子TR2と相補的にオン・オフするフライホイール側整流素子TR3と、スイッチ素子TR1のオン・オフ動作に同期をとって各整流素子TR2,TR3を駆動する同期整流駆動回路14a、およびチョークコイルLoとコンデンサCoの平滑回路により構成されている。そして、整流平滑回路14は、2次側巻線T1bに誘起された電圧を整流平滑して出力電圧Voutを出力する。コンデンサCoの両端には、負荷22が接続され、その出力電圧Voutが供給されている。
【0005】
アナログ式誤差増幅回路16は、反転入力端子に出力電圧アナログ信号が入力されるオペアンプOP1と、その非反転入力に接続される所定の基準電圧Vrefと、利得調整及び位相補償のための帰還素子Zfとを備え、制御電圧Vcを出力する反転増幅回路である。そして、アナログ式誤差増幅回路16により、出力電圧アナログ信号と基準電圧Vrefとの差分が増幅され、出力電圧アナログ信号が基準電圧Vrefよりも高くなった場合には、制御電圧Vcがリニア(連続的)に低下し、逆の場合には制御電圧Vcがリニア(連続的)に上昇する。
【0006】
のこぎり波発生回路18は、電圧一定の直流電源Vcc1と、一端が直流電源Vcc1に接続された充電抵抗R1と、その充電抵抗R1のもう一端とグランド間に接続されたタイマーコンデンサC1と、タイマーコンデンサC1の両端に接続されたリセット素子S3と、リセット素子S3を制御する発振器24とを備えており、タイマーコンデンサC1の両端に発生する電圧Viが出力される。
【0007】
発振器24は、インパルス状のトリガパルスを発生する。このトリガパルスは周期一定の繰り返しパルスであって、スイッチング素子TR1のスイッチング周波数と、スイッチング素子TR1のターンオンのタイミングを決定するものである。また、リセット素子S3は、トリガパルスが入力されるとタイマーコンデンサC1の両端を短絡し、瞬時に開放状態となり、次のトリガパルスが入力されるまではその開放状態を継続する機能を有している。
【0008】
このように構成されたのこぎり波発生回路18は、以下ように動作する。発振器24からトリガパルスが入力され、リセット素子S3がタイマーコンデンサC1の両端を短絡し、電荷が放電されてVi≒0となる。さらに、リセット素子S3は瞬時に開放状態となり、充電抵抗R1を介して供給される充電電流がタイマーコンデンサC1に流れ込み、Viが上昇する。このとき、充電抵抗R1とタイマーコンデンサC1の直列回路が有する時定数はトリガパルスの周期に比べて十分大きな値に設定されているので、Viはほぼ一定の傾きをもって直線的に上昇する。その後、次のトリガパルスが入力されるとリセット素子S3が短絡し、上記の動作を繰り返す。このような動作によって、タイマーコンデンサC1の両端にのこぎり波電圧Viを発生させている。
【0009】
比較回路20は、非反転入力に制御電圧Vcが入力され、反転入力にはのこぎり波電圧Viが入力され、スイッチング素子駆動パルスVgを出力する比較器CP1から成る。すなわち、制御電圧Vcがのこぎり波電圧Viよりも高い場合にはハイ(以下、H)レベル電圧を、逆の場合にはロウ(以下、L)レベル電圧をそれぞれ出力する。これにより、比較器CP1がHレベル電圧を出力している期間はスイッチング素子TR1をオンし、Lレベル電圧を出力している期間はスイッチング素子TR1をオフする駆動を行なっている。
【0010】
次に、上記のように構成されたスイッチング電源10が理想的に動作した場合の、出力電圧Voutの電圧制御について説明する。スイッチング電源10は、出力電圧Voutがアナログ式誤差増幅回路16内の基準電圧Vrefと等しくなるようスイッチング素子TR1の駆動パルスVgのオン・デューティを調整する制御(パルス幅変調制御)がなされ、出力電圧Voutは一定に保たれる。スイッチング電源装置10が理想的な動作をした場合、出力電圧Voutは式(1)のように決定される。
【数1】

【0011】
ここで、N1:トランスT1の一次側巻数、N2:トランスT1の2次側巻数、duty:スイッチング素子TR1のオン・デューティ、である。
【0012】
式(1)から分かるように、入力電圧Vinが変化しても、それに応じてオン・デューティdutyを反比例に変化させれば、出力電圧Voutが一定となる。具体的には、図7のタイムチャートに示すように、入力電圧Vinが低い期間1は、制御電圧Vcを高めにしてスイッチング周期Tにおいて、オン・デューティを図7のduty1のように大きくし、逆に、期間2のように入力電源電圧Vinが高いときは、制御電圧Vcを低めにしてオン・デューティを図7のduty2のように小さくし、常にオン・デューティdutyと入力電圧Vinの積が一定になるように制御がなされている。
【0013】
このように、出力電圧Voutをアナログ信号処理のみを用いて制御電圧Vcに変換するいわゆるアナログ制御は、リニア(連続的)に変化する信号を扱うため、出力電圧Voutの分解能は、理想的には無限小となり、基本的に制御素子の出力誤差の範囲の精度で制御することができる。
【0014】
一方、スイッチング電源のパルス幅変調制御をデジタルプロセッサ等を用いてデジタル信号処理によって行う、いわゆるデジタル制御が近年提案されている。以下に、デジタル制御を用いたスイッチング電源装置30を、図8を基に説明する。ここで、上記スイッチング電源10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。スイッチング電源装置30は、入力電源Einが接続されスイッチング動作を行うインバータ回路12と、そのスイッチング動作によって発生した交流電圧を整流平滑して出力電圧Voutを得る整流平滑回路14を備えている。さらに、出力電圧Voutが信号入力されるアナログ/デジタル変換回路26(以下、A/D変換回路)と、演算部28aとデジタルPWM手段28bを備え、出力電圧デジタル値から所定のスイッチング素子駆動パルスVgを生成する制御パルス発生手段28により構成されている。
【0015】
以下、各回路ブロック毎に詳細に説明する。インバータ回路12、整流平滑回路14は、上記スイッチング電源10と同様であるため説明を省略する。A/D変換回路26は、出力電圧Voutが入力され、その出力電圧アナログ値を出力電圧デジタル値に変換して出力する。制御パルス発生手段28は、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP)であって、演算部28aとデジタルPWM手段28bを備えている。演算部28aは、A/D変換回路26から得た出力電圧デジタル値と所定のデジタル値の目標値Cとの差分を比較演算し、後述するデジタルPWM手段28bに向けてセット値Bを出力する。
【0016】
次に、デジタルPWM手段28bについて図9を基に説明する。デジタルPWM手段28bは、クロック信号を発生するクロック回路b1と、カウンタb2,b3と、出力波形生成部b4で構成されている。図10のタイムチャートに示すように、カウンタb2,b3の初期値は共にゼロであって、クロック回路b1のクロック信号に同期してカウントアップ動作を行う。カウンタb2は、セット値Aが与えられ、カウント数がセット値Aに達するとカウント数はゼロにリセットされ、再びゼロからカウントアップ動作を開始し、この一連の動作を繰り返す。カウンタb3は、セット値Aよりも少ないセット値Bが与えられ、カウント数がセット値Bに達するとカウント数はゼロにリセットされカウントアップが停止する。そして、カウンタb2がリセットされるとそれに同期して再びゼロからカウントアップ動作を開始し、この一連の動作を繰り返す。出力波形生成部b4は、カウンタb2,b3の動作をモニタし、カウンタb3がカウントアップしているときはHレベル電圧を、カウンタb3のカウントアップが停止しているときはLレベル電圧を出力して、パルス幅変調された波形を出力する。例えば、クロック回路b1のクロック周波数をFck、セット値A=1000、セット値B=500とすると、出力波形生成部は、周期T=1000/Fck、時比率(オン・デューティ)0.5の矩形波を出力し、デジタル的に制御されたパルス幅の設定が成され、これを制御してパルス幅変調が行われる。
【0017】
上記の機能を備えたデジタルPWM手段28bはスイッチング電源装置30において、セット値Aをある一定値に固定的に設定することによってスイッチング周波数を決定し、演算部28aから得られたセット値Bによって時比率を変化させることによって、所定のスイッチング素子駆動パルスVgを生成する役割を果たしている。そして、スイッチング素子駆動パルスVgがHレベル電圧を出力している期間はスイッチング素子TR1をオンし、Lレベル電圧を出力している期間はスイッチング素子TR1をオフする駆動を行なっている。
【0018】
次に、上記のように構成されたスイッチング電源装置30が理想的に動作した場合の、出力電圧Voutの電圧制御について説明する。スイッチング電源装置30は、出力電圧デジタル値が制御パルス発生手段28内の目標値Cと等しくなるようスイッチング素子TR1の駆動パルスVgのオン・デューティdutyを調整する制御(PWM制御)がなされ、出力電圧Voutは一定に保たれる。スイッチング電源装置30が理想的な動作をした場合、上記スイッチング電源10と同様に出力電圧Voutは式(1)のように決定される。
【0019】
式(1)から分かるように、入力電圧Vinが変化しても、オン・デューティdutyを反比例の関係に変化させれば、出力電圧Voutが一定となる。具体的には、入力電圧Vinが低い期間は、演算部28aの演算処理によってセット値Bは大きな値が出力されてオン・デューティdutyを大きくし、逆に、入力電源電圧Vinが高い期間は、セット値Bは小さな値が出力されてオン・デューティdutyを小さくし、常にオン・デューティdutyと入力電圧Vinの積が一定になるように制御がなされている。
【0020】
このように、出力電圧Voutをデジタル演算処理によってスイッチング素子駆動パルスVgを生成するいわゆるデジタル制御は、制御用のソフト面の変更だけで、出力電圧Voutの挙動を自在に変更可能なインテリジェント性を備えているという特徴がある。例えば、制御パルス発生手段28内の目標値Cの設定値を適宜変更することによって、出力電圧Voutの設定値の変更、電源投入時の出力電圧Voutの立ち上がり時間や立ち上がりの傾きの変更など、負荷が正常に動作するための最適な環境を容易に作り出すことができる。
【0021】
また、特許文献1に開示されているように、従来のスイッチング電源装置30の制御パルス発生手段28内の演算部やデジタルPWM手段に相当する機能の一部を汎用的なデジタルプロセッサを用いて構成することで、低コスト化を図ることができる制御回路が提案されている。
【特許文献1】特開2007−166865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、従来のアナログ制御のスイッチング電源装置10においては、前述したデジタル制御の特徴であるインテリジェント性に欠け、例えば出力電圧Voutの挙動等を変更する場合には、スイッチング電源装置内部の部品変更といったハード面の変更を余儀なくされ、再評価やその他管理の面で煩雑さがある。また、種々の信号処理の回路をディスクリート部品で構成して行う場合が多く、部品点数の増大によってスイッチング電源装置の小型を妨げる要因の一つになっている。
【0023】
また、従来のデジタル制御のスイッチング電源装置30においては、狙いの出力電圧Voutに設定するために所定の分解能を得るため、あるいは、入力電圧Vinの変動等の外乱に対して高速応答が可能なフィードバック制御特性を得るため、高速で高価なデジタルプロセッサが必要になるという問題がある。
【0024】
まず、出力電圧制御における分解能の問題点について、以下に説明する。PWM制御によって出力電圧制御を行う場合、図8に示すスイッチング電源装置30においては、スイッチング素子駆動パルスVgのオン・デューティdutyの分解能が、出力電圧Voutの分解能となる。例えば、式(1)の関係を充足するよう制御し、かつ出力電圧Voutを出力電圧のa%刻みで可変設定する場合、オン・デューティdutyを式(2)に示すΔdutyという刻みで変化させなければならず、そこに必要な分解能Rdutyは、式(3)で表される。
【0025】
【数2】

【数3】

【0026】
具体的な数値を例に上げると、入力電圧Vin=48V、出力電圧Vout=3.3V、トランスT1の1次側巻線N1=6ターン、トランスT1の2次側巻線N2=1ターンのスイッチング電源装置30において、出力電圧Voutの刻みをアナログ制御のスイッチング電源装置に遜色の無い値としたいとすると、a=0.1%が必要と考えられ、このとき、式(3)より、必要な分解能は、Rduty≒2424となる。
【0027】
近年の汎用的なスイッチング電源装置は、磁性部品等の小型化等の観点から、スイッチング周波数500kHz以上に設定される場合が多い。例えばスイッチング電源装置30のスイッチング周波数が500kHzである場合、デジタルPWM手段28bのカウンタb2は分解能Rdutyを考慮してセット値Aを2424以上に設定しなければならない。また、このセット値Aはスイッチング周波数を決定するものであるので、クロック回路b1のクロック周波数Fckは、スイッチング周波数の500kHzにセット値Aの2424を乗じた値である1.212GHz以上のクロック周波数を必要とし、非常に高速で動作可能な高性能なデジタルプロセッサが必要になる。
【0028】
次に、フィードバック制御の高速応答性に関する問題について説明する。例えば入力電圧Vinが急激に上昇する外乱が発生した場合、出力電圧Voutを一定値に保持するため、図7のタイムチャートのよう入力電圧Vinの上昇に応じてスイッチング素子駆動パルスVgのオン・デューティdutyを小さくする制御がなされるが、その応答速度が問題になる。具体的には、スイッチング電源装置30において、デジタルプロセッサでの各種の処理を考慮すると、出力電圧VoutのA/D変換回路26で50クロック、制御パルス発生回路28による演算処理及びデジタルPWM処理で200クロック、合計250クロック程度の処理工数が発生する。ここで、アナログ制御のスイッチング電源装置と同等の応答性を得るべく、これらの処理をスイッチング動作の一周期内で完了させるためには、デジタルプロセッサのクロック周波数は、処理工数250クロックにスイッチング周波数500kHzを乗じた値である125MHz以上のクロック周波数が必要となる。また、デジタルプロセッサは、フィードバック制御以外にもいろいろな演算処理等を行うため、実際には125MHzを超えるクロック周波数を必要とし、高速で高性能なデジタルプロセッサが必要となる。
【0029】
このように、アナログ制御のスイッチング電源装置と同等のスイッチング周波数、出力電圧分解能や高速応答性を得るためには、スイッチング電源回路のスイッチング周波数に対して数桁以上大きなクロック周波数を備えた高速処理が可能なデジタルプロセッサが必要である。しかし、そのような高速で高性能なデジタルプロセッサは非常に高価なものであるため、汎用的なスイッチング電源装置に採用することができず、インテリジェント性の高いデジタル制御のスイッチング電源装置が一般的に普及することを妨げる要因の一つとなっている。
【0030】
また、特許文献1に開示されたスイッチング電源装置にあっては、ダウンカウンタ、D/Aコンバータ、ラッチレジスタ、アップカウンタ、デジタルコンパレータなどの多くの機能ブロックあるいは周辺回路が必要であるため、高速で高性能なデジタルプロセッサを使用した場合ほどではないが比較的高価なものであり、またスイッチング電源装置の小型化を妨げるものである。
【0031】
この発明は上記背景技術に鑑みて成されたもので、インテリジェント性が高く、比較的低コストの汎用デジタルプロセッサを用いてアナログ制御と同等レベルの出力電圧の分解能と高速応答性を実現可能なデジタル制御のスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
この発明は、直流の入力電圧を所定スイッチング周波数のパルス幅変調信号に対応したタイミングでスイッチング動作し、交流電圧を発生させるスイッチング素子を有するインバータ回路と、その交流電圧を整流平滑して出力電圧を得る整流平滑回路を備えたスイッチング電源装置であって、前記スイッチング周波数を設定しのこぎり波電圧を発生するのこぎり波発生回路と、前記出力電圧を出力電圧デジタル値に変換するアナログ/デジタル変換回路と、前記出力電圧デジタル値を基に所定の演算処理を行なうことにより前記出力電圧を制御するための制御パルス電圧を発生させる制御パルス発生手段と、その制御パルス電圧を平滑化して平滑化電圧を生成するパルス平滑化回路と、その平滑化電圧と前記のこぎり波電圧とを比較して前記スイッチング素子の駆動パルス幅を決定する比較回路とを備えたスイッチング電源装置である。
【0033】
前記整流平滑回路は、前記スイッチング素子と同期してオン・オフ動作するスイッチ素子からなる同期整流回路を備えたものである。
【0034】
さらに、前記のこぎり波発生回路は、のこぎり波電圧の上昇部分を入力電圧に比例した傾きに生成するものである。
【0035】
前記制御パルス発生手段は、前記出力電圧デジタル値と所定の目標値とを比較演算する演算部と、前記演算部に接続され、前記出力電圧デジタル値がその目標値よりも高いときはロウレベル電圧パルスを発生し、目標値よりも低いときはハイレベル電圧パルスを発生し、電圧パルスを発生しないとき、もしくは目標値と等しいときはその出力端を高インピーダンスに開放するパルス電圧生成部とを備えたものである。
【0036】
また、前記制御パルス発生手段は、前記出力電圧デジタル値と所定の目標値とを比較演算する演算部と、前記演算部に接続され、パルス幅変調された制御信号を出力するパルス電圧生成部を備え、前記パルス電圧生成部は、前記出力電圧デジタル値がその目標値よりも高いときはハイレベル電圧を発生する時比率を増加させ、目標値よりも低いときはハイレベル電圧を発生する時比率を減少させた前記制御信号を出力するパルス電圧生成部を備えたものである。
【0037】
さらに、前記パルス平滑化回路は、前記平滑化電圧を所定の設定電圧付近で変動させる平滑化電圧変動幅圧縮回路を備えたものでも良い。
【発明の効果】
【0038】
この発明によるスイッチング電源装置によれば、インテリジェント性の高いデジタル制御のスイッチング電源装置を、低速クロックで低コストのデジタルプロセッサで実現するものである。特に、スイッチング素子駆動パルスのデューティの分解能を悪化させず、十分な出力電圧精度を得ることができ、アナログ制御のスイッチング電源装置と同等以上の高速応答性を備え、かつ安価で小型のスイッチング電源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、この発明のスイッチング電源装置の一実施形態について、図1、図2を基に説明する。ここで、上記スイッチング電源10,30と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のスイッチング電源装置40は、直流の入力電源Einが接続されスイッチング動作を行うインバータ回路12と、そのスイッチング動作によって発生した交流電圧を整流平滑して出力電圧Voutを得る整流平滑回路14を備えている。出力電圧Vout端子には、出力電圧Voutが信号入力されるアナログ/デジタル変換回路26(以下、A/D変換回路)が接続され、出力電圧Voutをデジタル値化したA/D変換回路26の出力が、制御パルス発生手段42に接続されている。制御パルス発生手段42は、演算部42aとパルス電圧生成部42bを備え、A/D変換回路26の出力である出力電圧デジタル値から所定の制御パルス電圧Vaを生成する。制御パルス発生手段42の出力である制御パルス電圧Vaは、制御パルス電圧Vaを平滑化した平滑化電圧Vsを出力するパルス平滑化回路44に接続されている。
【0040】
さらに、スイッチング素子TR1のスイッチング周波数を決定するとともに入力電圧Vinに応じた傾きを有するのこぎり波電圧Viを生成するのこぎり波発生回路46が設けられている。そして、平滑化電圧Vsとのこぎり波電圧Viを比較して、スイッチング素子駆動パルスVgを発生する比較回路20を備え、比較回路20の出力が、インバータ回路12のスイッチング素子TR1のゲート等の制御端子に接続されている。
【0041】
このスイッチング電源装置40の各機能ブロックを、周知のシングルフォワード方式の回路構成に展開した電源回路について、図2を基に説明する。なお、インバータ回路12、整流平滑回路14、A/D変換回路26、比較回路20は、上述のスイッチング電源10,30と同様であるため説明を省略する。
【0042】
制御パルス発生手段42は、上述のスイッチング電源装置30の制御パルス発生手段28と異なり、演算部42aとパルス電圧生成部42bを備えている。演算部42aは、A/D変換回路26から得た出力電圧デジタル値と所定のデジタル値の目標値Cとの差分を比較演算し、パルス電圧生成部42bに向けて演算結果を出力する。その演算結果を受けるパルス電圧生成部42bは、直流電源Vcc2に接続され直列に接続されたスイッチ素子S1,S2を備え、スイッチ素子S1,S2の中点が出力端子42cに接続されている。
【0043】
パルス電圧生成部42bは、演算部42aからの制御により、スイッチ素子S1,S2がオン・オフするもので、A/D変換回路26の出力が目標値Cと等しい場合は、スイッチ素子S1,S2がともにオフ状態にある。また、A/D変換回路26の出力が目標値Cよりも低い場合は、スイッチ素子S1が一定時間オンし、スイッチ素子S2はオフ状態のままとなる。逆に、A/D変換回路26の出力が目標値Cよりも高い場合は、スイッチ素子S2が一定時間オンし、スイッチ素子S1はオフ状態のままとなる。これにより、パルス電圧生成部42bは、その出力端子42cに、出力電圧VoutがA/D変換されたデジタル値が、その目標値Cよりも高いときはLレベル電圧パルスを発生させ、目標値Cよりも低いときはHレベル電圧パルスを発生させ、電圧パルスを発生しないとき、もしくは目標値Cと等しいときはその出力端42cを高インピーダンスに開放する動作を行う。従って、出力端子42cの制御パルス電圧Vaは、Hレベル電圧が直流電源のVcc2電位、Lレベル電圧がゼロ電位、スイッチ素子S1,S2を開放した状態では、次に述べるパルス平滑化回路44のコンデンサC2の充電電位となる。
【0044】
パルス平滑化回路44は、抵抗R2とコンデンサC2によりいわゆる積分回路を構成している。この積分回路は、制御パルス電圧Vaを平滑化し、所定の直流電圧である平滑化電圧Vsを出力する。パルス平滑化回路44は、制御パルス電圧Vaを長い期間Hレベルとすると平滑化電圧Vsが上昇し、逆に長い期間Lレベルとすると,平滑化電圧Vsが低下するように動作する。抵抗R2とコンデンサC2は、後述するように、出力電圧Voutの分解能を決定する。
【0045】
のこぎり波電圧Viを発生するのこぎり波発生回路46は、上述のスイッチング電源装置10ののこぎり波発生回路18と異なり、充電抵抗R1のタイマーコンデンサC1との接続点と反対側の一端は、入力電源Einが供給する入力電圧Vinに接続されている。
【0046】
のこぎり波発生回路46は、以下の動作を行う。発振器24からトリガパルスが出力されると、リセット素子S3がタイマーコンデンサC1の両端を短絡してVi≒0となる。さらに、リセット素子S3は瞬時に開放状態となり、充電抵抗R1を介して供給される充電電流がタイマーコンデンサC1に流れ込み、Viが上昇する。このとき、充電抵抗R1とタイマーコンデンサC1の直列回路が有する時定数はトリガパルスの周期に比べて十分大きな値に設定されているので、充電抵抗R1を介してタイマーコンデンサC1に流入する電流は、入力電圧Vinに比例した略一定電流となるので、Viは入力電圧Vinに比例した傾きをもって直線的に上昇する。さらに発振器24から次のトリガパルスが出力されると、リセット素子S3が再度C1の両端を短絡し、上記の一連の動作を繰り返す。このような動作によって、タイマーコンデンサC1の両端に、入力電圧Vinに比例した傾きを有するのこぎり波電圧Viを発生させている。
【0047】
次に、上記のように構成されたスイッチング電源装置40が理想的に動作した場合の、出力電圧Voutの電圧制御について説明する。スイッチング電源装置40は、出力電圧デジタル値が制御パルス発生手段42内の目標値Cと等しくなるように、演算部42aが出力端子42cからLレベル電圧パルス、もしくはHレベル電圧パルスを発生させ、平滑化電圧Vsを調整する。平滑化電圧Vsを調整することで、スイッチング素子TR1の駆動パルスVgのオン・デューティdutyを調整する制御(パルス幅変調制御)がなされ、出力電圧Voutは目標値Cの電圧に保たれる。スイッチング電源装置40が理想的な動作をした場合、上記スイッチング電源10と同様に出力電圧Voutは式(1)のように決定される。
【0048】
式(1)から分かるように、入力電源電圧Vinが変化しても、オン・デューティdutyを反比例の関係に変化させれば、出力電圧Voutが目標値Cの電圧となる。具体的には、入力電圧Vinが高くなると、それに比例してのこぎり波電圧Viの傾きが大きくなり、短時間で平滑化電圧Vsに達してスイッチング素子TR1をターンオフさせるので、オン・デューティが短くなる。それでも出力電圧Voutが目標値Cの電圧にできない場合には、制御パルス発生手段42の働きによってオン・デューティdutyを調整し、出力電圧Voutが精度よく目標値Cの電圧に制御される。
【0049】
次に、スイッチング電源装置40の出力電圧制御の分解能について説明する。スイッチング電源装置40では、平滑化電圧Vsによってスイッチング素子TR1のターンオフのタイミングを制御していることから、抵抗R2とコンデンサC2によって平滑化される平滑化電圧Vsの分解能がオン・デューティdutyの分解能を決定する。
【0050】
例えば、演算部42aが出力電圧Voutを上昇させるべきと判断したとき、出力端42cにはHレベル電圧であるVcc2が供給される。出力端42bにVcc2の供給が開始される直前の平滑化電圧VsをVs、Vcc2が供給されている時間をts1とすると、ts1経過直後の平滑化電圧Vsは、式(4)で表され、ts1が小さいと仮定すると、Vsは大きく変化することは無いので、近似的に式(5)で計算される。
【0051】
【数4】

【数5】

【0052】
また、演算部42aが出力電圧Voutを低下させるべきと判断したとき、出力端42cはLレベル電圧であるゼロ電位に短絡される。出力端42bがゼロ電位に短絡される直前の平滑化電圧VsをVs、その短絡される時間をts2とすると、ts2経過直後の平均化電圧Vsは、式(6)で表され、ts2が小さいと仮定すると、Vsは大きく変化することは無いので、近似的に式(7)で計算される。
【0053】
【数6】

【数7】

【0054】
式(5)、式(7)に示されるように、平滑化電圧Vsの変化量は、R2,C2,ts1,ts2の値で決定される。ts1,ts2は、使用するデジタルプロセッサの処理速度によってその最小値が決定されるが、抵抗R2,コンデンサC2の値を適宜設定することで平滑化電圧Vsをリニア(連続的)に変化させることができ、結果、制御パルス発生手段42に用いるデジタルプロセッサのクロック周波数が低速であっても、上記背景技術と比較して、相対的に高い分解能を得ることができる。つまり、平滑化電圧Vsの分解能、すなわちオン・デューティdutyの分解能は、従来のスイッチング電源30のようにデジタルプロセッサのクロック周波数の影響を受けることがない。このように、低速クロックで低コストのデジタルプロセッサを使用して高い分解能を得ることを可能にしている。
【0055】
次に、スイッチング電源装置40のフィードバック制御の高速応答性について説明する。
スイッチング電源装置40では、入力電圧Vinに応答するのこぎり波発生回路46を使用することによってさらに高速応答性の実現を図っている。のこぎり波発生回路46のように入力電圧Vinに比例した傾きを有するのこぎり波電圧Viを比較器20に入力する手法は、入力電圧Vinの急峻な変動に対して高速に応答して出力電圧Voutを安定化するフィードフォワード制御方式として、例えば、本願発明者による特願2006−313089号に記載されたアナログ制御のスイッチング電源装置に用いられるものと同様のものである。
【0056】
特にこの手法は、負荷電流によらず式(1)に基づいてパルス幅変調制御されるスイッチング電源装置の場合に特に効果的である。例えば、整流平滑回路14がダイオードで構成した整流回路を備えたものである場合は、所定の負荷電流以下になるとチョークコイルLoの電流が連続しないいわゆる電流不連続動作モードとなり、式(1)が成り立たなくなり、制御モードが非線形に変化する。一方、整流平滑回路14がMOS型FETからなる同期整流回路を備えたものである場合は、負荷電流によらず常にチョークコイルLoの電流が連続するいわゆる電流連続動作モードとなり、式(1)が成り立つ。したがって、同期整流回路を採用することによって負荷電流が変化する全範囲においてスムーズな制御動作が可能となり、出力電圧Voutが一層安定なスイッチング電源装置を実現することができる。さらに、上記パルス平滑化回路44の周波数応答特性を適宜調整することで容易に応答性の設定ができる。具体的には、抵抗R2とコンデンサC2の積で求められる時定数τを、所望の分解能が得られる範囲内で極力小さな値に設定すれば、従来のアナログ制御のスイッチング電源装置30と同等の高速応答を得ることが可能である。
【0057】
このように、周知の入力電圧Vinの変動に応答したのこぎり波電圧Viを生成するのこぎり波電圧発生回路とMOS型FETを用いた同期整流回路とを、デジタル制御のスイッチング電源装置に適用することによって、低速クロックで低コストのデジタルプロセッサを使用してアナログ制御のスイッチング電源装置と同等以上の高速応答性を得ることができ、引いてはデジタル制御のスイッチング電源装置の低コスト化、小型化に寄与するものである。
【0058】
次に、この実施形態のスイッチング電源装置40の変形例について、図3を基に説明する。スイッチング電源装置40の入力電圧Vinの変動に応答したのこぎり波電圧Viを生成するのこぎり波電圧発生回路46は、入力電圧Vinに比例した傾きを有するのこぎり波電圧を発生するものであれば良い。従って、例えば図3に示すように、発振器24をデジタルPWM手段54aにより構成してもよい。デジタルPWM手段54aは、単に500kHz程度のスイッチング周波数を決定できればよいので、低速クロックで低コストの汎用デジタルプロセッサを使用すればよい。
【0059】
また、充電抵抗R1を、入力電圧Vinに比例した電流を供給する電流源J1に置き換え、より精度の高いのこぎり波電圧Viを生成可能にしてもよい。
【0060】
さらに、タイマーコンデンサC1とのこぎり波電圧出力端54bの間に、入力電圧に比例した電圧が発生する電圧発生素子Rbを挿入してもよい。これによって、入力電圧Vinに応じた直流電圧がのこぎり波電圧Viに重畳され、比較器CP1の遅れ時間分が入力電圧Vinに応じて補正され、出力電圧制御におけるフィードフォワード制御による応答特性を改善することができる。
【0061】
次に、この実施形態のスイッチング電源装置40の他の変形例について、図4を基に説明する。ここでは、スイッチング電源装置40に使用する制御パルス発生手段42を、図4に示す制御パルス発生手段56に置き換えたものである。すなわち、前述のパルス発生手段42による制御パルス電圧Vaの生成は、デジタルプロセッサのCPUの演算処理とパルス電圧生成部42bによって行うものであったが、ここでは、それに代えてパルス電圧生成部としてデジタルプロセッサのデジタルPWM手段56bを用いたものである。この場合、一旦デジタルPWM手段56bの所定のカウンタ値をセットすれば、それに対して演算部56bの出力のセット値Bにより、演算部56bとは独立にパルス出力が行われるので、制御パルス発生手段56に用いたデジタルプロセッサのCPUの負担を軽減することができ、その分他の演算処理の処理スピードが速くなるという効果がある。
【0062】
また、デジタルPWM手段56bは、低速で低コストのデジタルプロセッサで構成すればよい。例えば、クロック周波数10MHzの低速のデジタルプロセッサで構成するデジタルPWM手段56bを用いて上述の分解能Rduty=2424を得るためには、デジタルPWM手段56bは4.13kHzの周波数で動作させればよい。これは、スイッチング電源装置40は、平滑化電圧Vsを高速に変化させなくても、スイッチング電源装置が、十分な高速応答性を備えるためである。
【0063】
ここで、図に示すスイッチング電源装置40のパルス発生手段42においては、出力電圧が目標値と等しいときはその出力端42cを高インピーダンスに開放するため、後段のパルス平滑化回路44のコンデンサC2は比較的小さな値でも平滑化可能であり小型外形のチップ部品でコンパクトに構成できるものである。一方、デジタルPWM手段56bのように出力端56cがHレベル電圧またはLレベル電圧の状態にしかなり得ないものであっても、4.13kHz程度の周波数のパルス電圧を平滑化するのであれば、抵抗R2、コンデンサC2は例えば1mm×0.5mm程度の小型外形のチップ部品を用いて十分にコンパクトに構成することができ、同時に実用性十分な応答性も得ることができる。
【0064】
次に、この実施形態のスイッチング電源装置40のさらに他の変形例について、図5を基に説明する。この実施形態では、スイッチング電源装置40に使用するパルス平滑化回路44に代えて、出力電圧Voutの設定の分解能をより向上させることが可能なパルス平滑化回路50を備えている。ここで、上記スイッチング電源40と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。パルス平滑化回路50は、抵抗R2とコンデンサC2からなるいわゆる積分回路と、直流電源電圧Vcc2に接続された分圧抵抗R3,R4の直列回路からなる平滑化電圧変動幅圧縮回路50aを有し、分圧抵抗R3,R4の中点はR2,C2から成る積分回路の出力に接続され、分圧抵抗R3,R4による出力である平滑化電圧Vsが比較回路20に入力している。
【0065】
通常、スイッチング電源装置は、出力電圧Voutを目標電圧と一致させるように安定化制御の動作を行う。目標電圧が固定値である場合、目標電圧付近におけるオン・デューティdutyの分解能が高ければよく、目標電圧から大きく離れた電圧においては、相対的に高い分解能を必要としない。特に、上記実施形態のスイッチング電源装置40は、入力電圧Vinの変動に応答したのこぎり波電圧Viを生成するのこぎり波電圧発生回路46とMOS型FETを用いた同期整流回路を有する整流平滑回路14とを備えているため、平滑化電圧Vsは、入力電圧Vinや負荷電流によらずほぼ一定の値に制御すれば目標の出力電圧Voutを得ることができる。したがって、その一定の電圧値付近で平滑化電圧Vsを細かく変化させることができる分解能があればよい。
【0066】
パルス平滑化回路44では、制御パルス電圧Vaの変化によって平滑化電圧Vsを0〜Vcc2の範囲で変化させていた。一方、パルス平滑化回路50は、平滑化電圧Vsの変化可能な範囲を所定の電圧幅に圧縮したものであって、その変動の上限値Vsmax、下限値Vsminは、それぞれ式(8)、式(9)で表される。なお、上限値Vsmaxは制御パルス発生手段42の出力端42cに常時Hレベル電圧(Vcc2)が発生している状態であり、下限値Vsminは出力端42cに常時Lレベル電圧(ゼロ電圧)が発生している状態である。
【0067】
【数8】

【数9】

【0068】
式(8)、式(9)に示されるように、制御パルス電圧VaのHレベルとLレベルの時比率が最小から最大に変化するとき、平滑化電圧Vsは、その変化幅が小さくなり、かつ、その上限値と下限値の間をリニア(連続的)に変化する。従って、目標の出力電圧Voutを得ることができる平滑化電圧Vs値付近の分解能が向上する。例えば、上限値Vsmin=0.25Vcc2、下限値Vsmax=0.75Vcc2となるように各抵抗値を設定した場合には、分解能は2倍に向上することになる。このように構成することにより、より低速クロックで低コストのデジタルプロセッサを使用して高い分解能を得ることが可能になる。
【0069】
即ち、このパルス平滑化回路50は、平滑化電圧Vsの変動可能範囲の上限値が、前段の制御パルス電圧VaのHレベル電圧値よりも低く、その下限値は前段の制御パルスVaのLレベル電圧値よりも高く制限される。そして、平滑化電圧Vsは、制御パルス発生手段42の出力端の電気的状態の変化に応じて、その前記上限値と前記下限値の間を連続的に変化する構成とされている。
【0070】
なお本発明は、上記実施形態に限定するものではなく、パルス幅変調による制御を行うインバータ回路12であれば、プッシュプル方式、ブリッジ方式、フライバック方式、各種チョッパ方式等にも適用可能である。また、スイッチング素子TR1もMOS型FETに限定するものではなく、バイポーラトランジスタやIGBT等のようにパルス信号によって駆動可能な半導体素子であればよい。
【0071】
また、パルス平滑化回路44は、1つの抵抗R2と1つのコンデンサC2で構成した1次フィルターの構成に限定するものではなく、2次あるいはそれ以上の多次フィルターの構成であってもよい。また、パッシブフィルターかアクティブフィルターかも問わない。その平滑化の周波数特性は、スイッチング電源装置40aが使用される環境(入力条件、負荷条件等)に合わせて適宜最適なものに設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明のスイッチング電源装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】この発明のスイッチング電源装置の一実施形態の概略回路図である。
【図3】この発明のスイッチング電源装置ののこぎり波発生回路の他の実施形態を示す回路図である。
【図4】この発明のスイッチング電源装置の制御パルス発生手段の他の実施形態を示す回路図である。
【図5】この発明のスイッチング電源装置の平滑化電圧変動幅圧縮回路の一実施形態を示す回路図である。
【図6】従来のアナログ制御のスイッチング電源装置を示す概略回路図である。
【図7】この発明のスイッチング電源装置の制御パルス発生手段の他の実施形態を示すタイミングチャートである。
【図8】従来のデジタル制御のスイッチング電源装置を示す概略回路図である。
【図9】一般的なデジタルPWM手段の機能ブロック図である。
【図10】一般的なデジタルPWM手段の実際の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0073】
12 インバータ回路
14 整流平滑回路
20 比較回路
26 アナログ/デジタル変換回路
40 スイッチング電源装置
42,56 制御パルス発生手段
46,54 のこぎり波発生回路
46,54 のこぎり波発生回路
54a デジタルPWM手段
44,50 パルス平滑化回路
50a 平滑化電圧変動幅圧縮回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の入力電圧を所定スイッチング周波数のパルス幅変調信号に対応したタイミングでスイッチング動作し、交流電圧を発生させるスイッチング素子を有するインバータ回路と、その交流電圧を整流平滑して出力電圧を得る整流平滑回路を備えたスイッチング電源装置において、
前記スイッチング周波数を設定しのこぎり波電圧を発生するのこぎり波発生回路と、前記出力電圧を出力電圧デジタル値に変換するアナログ/デジタル変換回路と、前記出力電圧デジタル値を基に所定の演算処理を行なうことにより前記出力電圧を制御するための制御パルス電圧を発生させる制御パルス発生手段と、その制御パルス電圧を平滑化して平滑化電圧を生成するパルス平滑化回路と、その平滑化電圧と前記のこぎり波電圧とを比較して前記スイッチング素子の駆動パルス幅を決定する比較回路とを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記整流平滑回路は、前記スイッチング素子と同期してオン・オフ動作するスイッチ素子からなる同期整流回路を備えたことを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記のこぎり波発生回路は、のこぎり波電圧の上昇部分を入力電圧に比例した傾きに生成することを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記制御パルス発生手段は、前記出力電圧デジタル値と所定の目標値とを比較演算する演算部と、前記演算部に接続され、前記出力電圧デジタル値がその目標値よりも高いときはロウレベル電圧パルスを発生し、目標値よりも低いときはハイレベル電圧パルスを発生し、電圧パルスを発生しないとき、もしくは目標値と等しいときはその出力端を高インピーダンスに開放するパルス電圧生成部を備えたことを特徴とする請求項1,2または3記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記制御パルス発生手段は、前記出力電圧デジタル値と所定の目標値とを比較演算する演算部と、前記演算部に接続され、パルス幅変調された制御パルス電圧を出力するパルス電圧生成部を備え、前記パルス電圧生成部は、前記出力電圧デジタル値がその目標値よりも高いときはハイレベル電圧を発生する時比率を増加させ、目標値よりも低いときはハイレベル電圧を発生する時比率を減少させた前記制御パルス電圧を出力することを特徴とする請求項1,2又は3記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記パルス平滑化回路は、前記平滑化電圧を所定の設定電圧付近で変動させる平滑化電圧変動幅圧縮回路を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載のスイッチング電源装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−95091(P2009−95091A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261256(P2007−261256)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】