説明

スイッチング電源装置

【課題】使用条件によらず、トランスの三次巻線の発生電圧を利用して出力電圧に略比例した補助平滑電圧を正確に生成することが可能なフライバック方式のスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】三次巻線16cに発生する電圧を整流して補助整流電圧を出力する補助整流回路28を備える。補助整流電圧を平滑し、制御回路24に補助平滑電圧を供給する補助平滑コンデンサ30を有する。補助整流回路28は、三次巻線16cのプラス側端子34にアノード端子が接続された第一のダイオード36と、第一のダイオード36のカソード端子に一端が接続された充電抵抗38と、タイマコンデンサ40を備える。三次巻線16cのプラス側端子34の電圧に基づいて、タイマコンデンサ40の放電を制御する放電制御回路44を備える。充電抵抗38及びタイマコンデンサ40は、三次巻線16cのプラス端子34に高周波振動電圧が重畳した所定の一定電圧が発生したとき、所定の一定電圧を超えないように時定数が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フライバック方式のスイッチング電源装置に関し、特に、トランスに設けた三次巻線に発生する電圧を整流平滑して制御用の直流電圧を生成する回路を備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スイッチング電源装置では、トランスの一次巻線及び二次巻線を介して負荷に直流の出力電圧Voを供給するとともに、トランスに三次巻線を設け、その三次巻線に発生する電圧から所定の直流電圧を生成し、当該電源装置の制御に利用する構成が用いられている。例えば、フライバック方式のスイッチング電源装置の場合、出力整流素子がオンする期間中に、各巻線に出力電圧Voに略比例した一定電圧が発生する。このときトランスの三次巻線に発生する当該一定電圧をVsとすると、一定電圧Vsをピークホールド式の補助整流平滑回路を介して取り出すことによって、出力電圧Voに略比例した補助平滑電圧Vsを得ることができる。そして、この補助平滑電圧Vsは、主スイッチング素子をオン・オフ駆動する制御回路の動作用電源にとして用いられたり、また、出力電圧Voの状態を示す出力電圧信号として過電流保護や過電圧保護等の各種制御に利用されたりする。
【0003】
しかし、出力整流素子が高速にターン・オンすると、トランスの漏れインダクタンスやや回路配線の寄生インダクタンスに起因して、高周波振動電圧が発生する。特に、負荷に大きな出力電流を供給しているときほど顕著である。そして、三次巻線に発生する電圧は、一定電圧Vsにこの高周波振動電圧が重畳した電圧となるため、補助整流平滑回路は高周波振動電圧のピーク値(一定電圧Vsよりも高い値)をホールドしてしまい、補助平滑電圧が出力電圧Voに略比例した補助平滑電圧Vsにならないという問題があった。
【0004】
上記の問題を解決するため、従来のフライバック方式のスイッチング電源装置では、補助整流ダイオードと補助平滑コンデンサを直列接続したピークホールド式の補助整流平滑回路を構成し、さらに、補助整流ダイオードと直列にダンプ抵抗を挿入することによって高周波振動電圧自体を吸収していた。
【0005】
また、特許文献1に示すように、トランスの三次巻線に補助整流ダイオードと補助平滑コンデンサを直列接続したピークホールド式の補助整流平滑回路が接続され、さらに、補助整流ダイオードと直列に定電流回路が挿入され、三次巻線から補助平滑コンデンサに供給される電流を基準値以下に制限することによって、高周波振動電圧の影響を小さくするフライバック方式のDC−DCコンバータがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−109543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のスイッチング電源装置の場合、高周波振動電圧自体を吸収可能な大きな抵抗値のダンプ抵抗を設けると、ダンプ抵抗と補助平滑コンデンサで決まる時定数が非常に大きくなり、例えば、出力電流が比較的小さく、且つ、出力整流素子が短いオン幅で動作しているときに、補助平滑電圧が低下してしまい、出力電圧Voに略比例した補助平滑電圧Vsを得ることができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1記載のDC−DCコンバータの場合、定電流回路の両端に発生する電圧を正確に制御することが困難なため、補助平滑コンデンサに接続された制御回路の消費電流や高周波振動電圧の振幅が変化すると、必ずしも出力電圧Voに略比例した補助平滑電圧Vsを得ることができないという問題があった。
【0009】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、入力電圧や出力電流等の使用条件によらず、トランスの三次巻線の発生電圧を利用して出力電圧に略比例した補助平滑電圧を正確に生成することが可能なフライバック方式のスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、直流入力電源と直列接続されオン・オフ動作によって入力電圧を断続し交流電圧を発生させる主スイッチング素子と、前記交流電圧が印加される一次巻線と、それに磁気結合した二次巻線及び三次巻線が設けられたトランスと、一端が前記二次巻線の一端に接続され、前記主スイッチング素子と相補的にオン・オフすることによって、前記主スイッチング素子がオフの期間中に前記二次巻線に発生する電圧を整流する出力整流素子と、前記二次巻線の他の一端と前記出力整流素子の他の一端との間に接続され、前記出力整流素子が整流した整流電圧を平滑して直流の出力電圧を生成し、当該出力電圧を負荷に供給する出力平滑コンデンサと、前記出力電圧に基づいてパルス幅変調を行い、前記主スイッチング素子のオン・オフの時比率を制御して出力電圧を所定電圧に安定化する制御回路と、前記三次巻線の両端に接続され、前記三次巻線に発生する電圧を整流して補助整流電圧を出力する補助整流回路と、前記補助整流電圧を平滑し、前記制御回路に補助平滑電圧を供給する補助平滑コンデンサとを備えたフライバック方式のスイッチング電源装置であって、
前記三次巻線は、グランドに接続され前記出力整流素子がオンの期間に低電位となるマイナス側端子と、前記出力整流素子がオンの期間に高電位となるプラス側端子とを備え、前記補助整流回路は、前記三次巻線の前記プラス側端子にアノード端子が接続された第一のダイオードと、前記第一のダイオードのカソード端子に一端が接続された充電抵抗と、前記充電抵抗の他の一端とグランドとの間に接続されたタイマコンデンサと、コレクタ端子が前記第一のダイオードのカソード端子に接続され、エミッタ端子が前記補助平滑コンデンサに接続され、ベース端子が前記充電抵抗と前記タイマコンデンサの接続点に接続された前記NPN型の補助整流トランジスタと、前記三次巻線のプラス側端子の電圧に基づいて前記タイマコンデンサの放電を制御する放電制御回路とを備え、
前記放電制御回路は、前記出力整流素子のオフ期間中に前記タイマコンデンサの両端を短絡して充電電圧を放電し、前記出力整流素子のオン期間は前記タイマコンデンサの両端を開放する短絡開放手段と、前記タイマコンデンサの充電電圧が上昇して前記三次巻線のプラス側端子の電圧に達すると、前記タイマコンデンサの充電電圧が前記三次巻線のプラス端子の電圧を超えないように当該充電電圧を制限する電圧制限手段とを備え、
前記充電抵抗及び前記タイマコンデンサは、前記出力整流素子のオン期間に、前記三次巻線のプラス端子に高周波振動電圧が重畳した所定の一定電圧が発生したとき、前記タイマコンデンサの充電電圧が、前記所定の一定電圧を超えないように時定数が設定されたスイッチング電源装置である。
【0011】
また、このスイッチング電源装置は、前記補助整流トランジスタのエミッタ端子は、第二のダイオードを介して前記補助平滑コンデンサに接続され、前記第二のダイオードは、前記補助トランジスタのエミッタ端子にアノード端子が接続され、前記補助平滑コンデンサにカソード端子が接続された構成であってもよい。また、前記補助整流トランジスタのエミッタ端子から前記補助平滑コンデンサへの電流経路に、電流制限用の抵抗が設けてもよい。
【0012】
また、前記補助整流トランジスタがN−chのMOS型FETに置き換えられ、当該補助整流トランジスタは、ドレイン端子が前記第一のダイオードのカソード端子に接続され、ソース端子が第二のダイオードを介して前記補助平滑コンデンサに接続され、ゲート端子が前記充電抵抗と前記タイマコンデンサの接続点に接続され、前記第二のダイオードは、前記補助トランジスタのソース端子にアノード端子が接続され、前記補助平滑コンデンサにカソード端子が接続された構成であってもよい。また、前記補助整流トランジスタのソース端子から前記補助平滑コンデンサへの電流経路に、電流制限用の抵抗が設けてもよい。
【0013】
また、前記放電制御回路の前記短絡開放手段及び前記電圧制限手段が、前記三次巻線のプラス側端子に一端が接続された抵抗と、当該抵抗の他の一端にカソード端子が接続され、グランドにアノード端子が接続された第三のダイオードと、前記充電抵抗と前記タイマコンデンサとの接続点にエミッタ端子が接続され、グランドにコレクタ端子が接続され、前記第三のダイオードのカソード端子にベース端子が接続されたPNP型のトランジスタとで構成されている。
【0014】
また、前記放電制御回路の前記短絡開放手段及び前記電圧制限手段が、前記充電抵抗と前記タイマコンデンサの接続点にカソード端子が接続され、グランドにアノード端子が接続された第三のダイオードと、前記三次巻線のプラス側端子に一端が接続された抵抗と、
当該抵抗の他の一端にカソード端子が接続され、前記充電抵抗と前記タイマコンデンサとの接続点にアノード端子が接続された第四のダイオードとで構成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明のスイッチング電源装置は、三次巻線のプラス側端子側にコレクタ端子が接続され補助平滑コンデンサにエミッタ端子が接続された補助整流トランジスタを備え、ベース端子に接続されたタイマコンデンサの充電と放電を制御することによって、補助平滑コンデンサに高周波振動電圧が通過するのを防止し、入力電圧や出力電流等の使用条件によらず、出力電圧に略比例した補助平滑電圧を正確に生成することができる。従って、この補助平滑電圧を利用すれば、制御回路に安定な電源を供給することができる。また、出力電圧の状態を正確に検知し、その情報に応じて保護回路の動作特性を補正することによって、スイッチング電源装置の安全性をより高めることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態を示す回路図である。
【図2】第一の実施形態の動作を説明するタームチャートである。
【図3】図2に示す期間Bにおける詳細な動作を説明するタイムチャートである。
【図4】図2に示す期間Bにおいて、時定数特性の設定が不適切な場合の動作を示したタイムチャートである。
【図5】この発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態を示す回路図である。
【図6】この発明のスイッチング電源装置の第三の実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態について、図1〜図4に基づいて説明する。第一の実施形態のスイッチング電源装置10は、図1に示すように、直流入力電源12の両端に、主スイッチング素子14とトランス16の一次巻線16aの直列回路が接続され、主スイッチング素子14がオン・オフすることによって、一次巻線16aに交流電圧を発生させる。
【0018】
また、トランス16には、一次巻線16aと磁気結合した二次巻線16bと三次巻線16cが設けられており、各巻線同士の磁気結合の極性はドットで示した通りである。
【0019】
二次巻線16bのドットが付されていない一端に、主トランジスタ14と相補的にオン・オフするダイオードである出力整流素子18のアノード端子が接続されている。すなわち、出力整流素子18は、主スイッチング素子14がオフの期間中に二次巻線16bに発生する電圧を整流する。
【0020】
二次巻線16bのドットが付された一端と出力整流素子18のカソード端子の間には出力平滑コンデンサ20が接続され、出力整流素子18が整流した整流電圧を平滑して直流の出力電圧Voを生成し、負荷22に出力電圧Voと出力電流Ioを供給する。
【0021】
主スイッチング素子14は、制御回路24によって駆動される。制御回路24は、出力電圧Voに基づいてパルス幅変調を行い、主スイッチング素子14のオン・オフの時比率を制御して出力電圧を所定電圧Voに安定化する。また、直流入力電源12と制御回路24の電源ライン24aの間に起動抵抗26が設けられ、制御回路24は、入力投入時に起動抵抗26を介して起動電圧の供給を受ける。
【0022】
また、トランス16の三次巻線16cに両端には、三次巻線16cに発生する矩形波状の電圧を整流して補助整流電圧を出力する補助整流回路28と、補助整流電圧を平滑して直流の補助平滑電圧を生成する補助平滑コンデンサ30とが設けられ、制御回路24が起動した後、制御回路24の電源ライン24aに電圧を供給する。
【0023】
三次巻線16cは、ドットが付されたマイナス側端子32がグランドに接続されている。そして、ドットが付されていないプラス側端子34には、出力整流素子18のオン期間に、出力電圧Voに略比例した一定電圧が正方向に発生し、主スイッチング素子14のオン期間に、入力全圧に略比例した負方向の一定電圧が発生する。以下、プラス側端子電圧をV1、出力電圧Voに比例した一定電圧をVsと称す。なお、プラス側端子電圧V1は、一定電圧Vsに、トランスの漏れインダクタンスや回路配線の寄生インダクタンスに起因する高周波振動電圧が重畳した波形となるが、詳細は後で説明する。
【0024】
補助整流回路28は、プラス側端子34にアノード端子が接続された第一のダイオード36と、第一のダイオード36のカソード端子に一端が接続された充電抵抗38と、充電抵抗38の他の一端とグランドの間に接続されたタイマコンデンサ40を備えている。また、NPN型の補助整流トランジスタ42が設けられ、そのコレクタ端子が第一のダイオード36のカソード端子に接続され、エミッタ端子が補助平滑コンデンサ30に接続され、ベース端子が充電抵抗38とタイマコンデンサ40の接続点に接続されている。以下、補助平滑コンデンサ30の補助平滑電圧をV2、タイマコンデンサ40の充電電圧をV3と称す。
【0025】
また、補助整流回路28は、プラス側端子電圧V1に基づいてタイマコンデンサ40の放電を制御する放電制御回路44を備えている。放電制御回路44は、出力整流素子18のオフ期間中にタイマコンデンサ40の両端を短絡して充電電圧V3を放電し、出力整流素子18のオン期間は前記タイマコンデンサ40の両端を開放する短絡開放手段44aと、充電電圧V3が上昇してプラス側端子電圧V1に達すると、充電電圧V3がプラス側端子電圧V1を超えないように制限する電圧制限手段44bとで構成されている。
【0026】
また、充電抵抗38とタイマコンデンサ40は、出力整流素子18のオン期間に、高周波振動電圧が重畳したプラス側端子電圧V1が発生しても、タイマコンデンサ40の充電電圧V3が、一定電圧Vsを超えない程度に大きな時定数が設定されている。
【0027】
次に、スイッチング電源装置10の動作について、図2のタイムチャートに基づいて説明する。なお、説明の便宜のため、各ダイオード18,36の順方向電圧、補助整流トランジスタ42のベース閾値電圧がゼロボルトであると仮定して説明する。
【0028】
スイッチング電源装置10は、主スイッチング素子14が制御回路24からの駆動パルスを受けて一定周期でオン・オフし、それに同期して出力整流素子18が相補的にオン・オフする。三次巻線16cのプラス側端子電圧V1は、図2に示すように、出力整流素子18がオンしている期間A1は、出力電圧Voに略比例した一定電圧Vsに高周波振動電圧が重畳した正方向の電圧となる。一方、出力整流素子18がオフしている期間A2は、入力電圧に略比例した負方向の一定電圧となる。
【0029】
期間A2は、短絡開放手段44aがタイマコンデンサ40の両端を短絡状態にするので、図3に示すように、タイマコンデンサ40の充電電圧V3はゼロボルトである。
【0030】
その後、期間A1に入ると、プラス側端子電圧V1が正電圧に反転したこと検知して、短絡開放手段44aはタイマコンデンサ40の短絡を瞬時に開放する。そして、タイマコンデンサ40は、プラス側端子電圧V1によって充電抵抗38を介して充電され、充電電圧V3は、タイマコンデンサ40と充電抵抗38で決定される時定数特性に基づいて指数関数的に上昇する。従って、充電電圧V3は、プラス側端子電圧V1よりも遅れて上昇することになる。
【0031】
充電電圧V3が上昇すると、図3に示すように、プラス側端子電圧V1の高周波振動電圧のアンダーシュート部分に達する。充電電圧V3がプラス側端子電圧V1に達すると、電圧制限手段44bは、タイマコンデンサ40から電荷を引き抜き、充電電圧V3がプラス側端子電圧V1を超えないように制限する動作を行う。そして、充電電圧V3は、高周波振動電圧のアンダーシュート部分の波形に沿って低下する。
【0032】
プラス側端子電圧V1は、アンダーシュートの最下点に達すると一転して上昇を開始する。そして、プラス側端子電圧V1の上昇に伴って、充電電圧V3はタイマコンデンサ40と充電抵抗38で決定される時定数特性に基づいて緩やかに上昇を開始する。同時に、電圧制限手段44bは、タイマコンデンサ40の電荷を引き抜く動作を停止する。
【0033】
高周波振動電圧のアンダーシュートが発生する毎にこのような動作を繰り返すと、やがて高周波振動電圧が減衰し、充電電圧V3は一定電圧Vsに収束する。高周波振動電圧のアンダーシュートが発生している期間、充電電圧V3は、図3に示すようなノコギリ波状の電圧波形になる。
【0034】
このとき、充電電圧V3のノコギリ波状部分のピーク値は、タイマコンデンサ40と充電抵抗38の時定数特性によって、一定電圧Vsを超えないように制限されている。従って、補助整流トランジスタ42は、コレクタ端子に高周波振動電圧が重畳したプラス側端子電圧V1が入力されても、エミッタ端子から一定電圧Vsを超える電圧を出力することがない。
【0035】
補助平滑電圧V2は、充電電圧V3を補助整流トランジスタ42と補助平滑コンデンサ30でピークホールドした電圧に相当する直流電圧となる。よって、出力電圧Voに略比例した直流電圧Vsを得ることができる。また、タイマコンデンサ40と充電抵抗38の時定数特性を、充電電圧V3のノコギリ波状部分のピーク値が一定電圧Vsになるように設定すれば、出力整流素子18が短いオン幅で動作したときでも補助平滑電圧V2が低下することなく、ほぼ出力電圧Voに比例した安定な電圧Vsを出力することが可能になる。
【0036】
なお、図4は、タイマコンデンサ40と充電抵抗38の時定数特性の設定が不適切な場合の動作を示したタイムチャートである。図4の場合、時定数が小さすぎて充電電圧V3の上昇を制限する能力が不十分なため、ノコギリ波状のピーク値が一定電圧Vsを超え、補助平滑電圧V2が一定電圧Vsよりも高くなり、出力電圧Voに比例した直流電圧Vsを得ることができない。従って、タイマコンデンサ40と充電抵抗38の時定数特性は、高周波振動電圧の振幅や周波数のばらつきも考慮し、このような不具合が生じない程度に大きな時定数に設定することが望ましい。
【0037】
次に、本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態について、図5に基づいて説明する。ここで、上記スイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
第二の実施形態のスイッチング電源装置50は、上記スイッチング電源装置10の放電制御回路44に代えて放電制御回路52が設けられ、さらに、補助整流トランジスタ42のエミッタ端子と補助コンデンサ30との接続点に第二のダイオード54及び電流制限抵抗55の直列回路が挿入されている。その他の構成は、スイッチング電源装置10と同様である。
【0039】
放電制御回路52は、三次巻線16cのプラス側端子34に一端が接続された抵抗56と、抵抗56の他の一端にカソード端子が接続され、グランドにアノード端子が接続された第三のダイオード58を備えている。また、充電抵抗38とタイマコンデンサ40の接続点にエミッタ端子が接続され、グランドにコレクタ端子が接続され、第三のダイオード58のカソード端子にベース端子が接続されたPNP型のトランジスタ60を備えている。
【0040】
放電制御回路52は、上記の放電制御回路44と同様の機能を有しており、抵抗56、トランジスタ60及び第三のダイオード58が複合して、短絡開放手段44aと電圧制限手段44bの機能を実現する。
【0041】
第二のダイオード54は、アノード端子が補助整流トランジスタ42のエミッタ端子に接続され、カソード端子が電流制限抵抗55を介して補助コンデンサ30に接続されている。第二のダイオード54は、補助整流トランジスタ42のベース・エミッタ間に、定格を超える高電圧が印加されるおそれがある場合に、補助整流トランジスタ42を保護するためのダイオードである。従って、第二のダイオード54は必要がなければ短絡除去してもよい。
【0042】
また、電流制限抵抗55は、上述した補助整流トランジスタ42の整流動作に影響を与えない程度に小さな抵抗値に設定され、三次巻線16のプラス側端子34、第一のダイオード36、補助トランジスタ42、第二のダイオード54、補助平滑コンデンサ30の経路で流れる繰り返しサージ電流のピーク値を制限し、各素子に加わる電流ストレスを緩和する働きをする。従って、電流制限抵抗55は必要がなければ短絡除去してもよい。
【0043】
スイッチング電源装置50の動作は、各ダイオードの順方向電圧、各トランジスタのベース閾値電圧がゼロボルトであると仮定することによって、スイッチング電源装置10と同様に、図2、図3のタイムチャートで表すことができる。
【0044】
期間A2は、プラス側端子電圧V1が負電圧となるので、第三のダイオード58がオンする。そして、トランジスタ60のベース端子の電位がグランド電位に低下することによってトランジスタ60がオンし、タイマコンデンサ40の両端を短絡状態にする。従って、期間A2は、図3に示すように、タイマコンデンサ40の充電電圧V3がゼロボルトになる。
【0045】
その後、期間A1に入ると、プラス側端子電圧V1が正電圧に反転し、第三のダイオード58がオフし、さらにトランジスタ60がオフすることによってタイマコンデンサ40の短絡が瞬時に開放される。そして、タイマコンデンサ40は、プラス側端子電圧V1によって充電抵抗38を介して充電され、充電電圧V3は、タイマコンデンサ40と充電抵抗38で決定される時定数特性に基づいて指数関数的に上昇する。従って、充電電圧V3は、プラス側端子電圧V1よりも遅れて上昇することになる。
【0046】
充電電圧V3が上昇すると、図3に示すように、プラス側端子電圧V1の高周波振動電圧のアンダーシュート部分に達する。充電電圧V3がプラス側端子電圧V1に達すると、タイマコンデンサ40の電荷が、トランジスタ60のエミッタ端子、ベース端子、抵抗56、三次巻線16cを通る経路で引き抜かれ、充電電圧V3がプラス側端子電圧V1を超えないように制限される。そして、充電電圧V3は、高周波振動電圧のアンダーシュート部分の波形に沿って低下する。
【0047】
プラス側端子電圧V1は、アンダーシュートの最下点に達すると一転して上昇を開始する。そして、プラス側端子電圧V1の上昇に伴って、充電電圧V3はタイマコンデンサ40と充電抵抗38で決定される時定数特性に基づいて緩やかに上昇を開始する。同時に、トランジスタ60のエミッタ端子からベース端子への電荷の引き抜き経路が遮断される。
【0048】
高周波振動電圧のアンダーシュートが発生する毎にこのような動作を繰り返すと、やがて高周波振動電圧が減衰し、充電電圧V3は一定電圧Vsに収束する。高周波振動電圧のアンダーシュートが発生している期間、充電電圧V3は、図3に示すようなノコギリ波状の電圧波形になる。
【0049】
この充電電圧V3によって補助整流トランジスタ42のベース端子を駆動し、補助平滑電圧V2として直流電圧Vsを得る動作は、スイッチング電源装置10の場合と同様である。
【0050】
このように、スイッチング電源装置50によれば、上述したスイッチング電源装置10と同様の優れた動作を、簡単な回路構成で実現することができる。
【0051】
次に、本発明のスイッチング電源装置の第三の実施形態について、図6に基づいて説明する。ここで、上記スイッチング電源装置10,50と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
第三の実施形態のスイッチング電源装置70は、上記スイッチング電源装置10の放電制御回路44に代えて放電制御回路72が設けられ、また、補助整流トランジスタ42に代えてN−ChのMOS型トランジスタである補助整流トランジスタ74が設けられ、さらに、そのソース端子と補助コンデンサ30との接続点に第二のダイオード54が挿入されたものである。その他の構成は、スイッチング電源装置10と同様である。
【0053】
放電制御回路72は、三次巻線16cのプラス側端子34に一端が接続された抵抗56と、抵抗56の他の一端にカソード端子が接続され、充電抵抗38とタイマコンデンサ40の接続点にアノード端子が接続された第四のダイオード56を備えている。また、充電抵抗38とタイマコンデンサ40の接続点にカソード端子が接続され、グランドにアノード端子が接続された第三のダイオード58を備えている。
【0054】
放電制御回路72は、上記の放電制御回路44と同様の機能を有しており、抵抗56、第三のダイオード58及び第四のダイオード76が複合して、短絡開放手段44aの電圧制限手段44b機能を実現する。
【0055】
第二のダイオード54は、アノード端子が補助整流トランジスタ74のソース端子に接続され、カソード端子が補助コンデンサ30に接続されている。第二のダイオード54は、補助整流トランジスタ74のゲート・ソース間に定格を超える高電圧が印加されるおそれがある場合に、補助整流トランジスタ74を保護すると共に、補助整流トランジスタ74のソース端子からドレイン端子の向きに存在する寄生ダイオードに電流が流れるのを防止するためのダイオードである。
【0056】
スイッチング電源装置70の動作は、各ダイオードの順方向電圧、補助整流トランジスタ74のゲート閾値電圧がゼロボルトであると仮定することによって、スイッチング電源装置10,50と同様に、図2、図3のタイムチャートで表すことができる。
【0057】
期間A2は、プラス側端子電圧V1が負電圧となるので、第三のダイオード58がオンし、タイマコンデンサ40の両端を短絡状態にする。従って、期間A2は、図3に示すように、タイマコンデンサ40の充電電圧V3がゼロボルトになる。
【0058】
その後、期間A1に入ると、プラス側端子電圧V1が正電圧に反転し、第三、第四のダイオード58,76がオフし、タイマコンデンサ40の短絡が瞬時に開放される。そして、タイマコンデンサ40は、プラス側端子電圧V1によって充電抵抗38を介して充電され、充電電圧V3は、タイマコンデンサ40と充電抵抗38で決定される時定数特性に基づいて指数関数的に上昇する。従って、充電電圧V3は、プラス側端子電圧V1よりも遅れて上昇することになる。
【0059】
充電電圧V3が上昇すると、図3に示すように、プラス側端子電圧V1の高周波振動電圧のアンダーシュート部分に達する。充電電圧V3がプラス側端子電圧V1に達すると、タイマコンデンサ40の電荷が、第四のダイオード76、抵抗56、三次巻線16cを通る経路で引き抜かれ、充電電圧V3がプラス側端子電圧V1を超えないように制限される。そして、充電電圧V3は、高周波振動電圧のアンダーシュート部分の波形に沿って低下する。
【0060】
プラス側端子電圧V1は、アンダーシュートの最下点に達すると一転して上昇を開始する。そして、プラス側端子電圧V1の上昇に伴って、充電電圧V3はタイマコンデンサ40と充電抵抗38で決定される時定数特性に基づいて緩やかに上昇を開始する。同時に、第四のダイオード76がオフし電荷の引き抜き経路が遮断される。
【0061】
高周波振動電圧のアンダーシュートが発生する毎にこのような動作を繰り返すと、やがて高周波振動電圧が減衰し、充電電圧V3は一定電圧Vsに収束する。高周波振動電圧のアンダーシュートが発生している期間、充電電圧V3は、図3に示すようなノコギリ波状の電圧波形になる。
【0062】
この充電電圧V3によって補助整流トランジスタ74のベース端子を駆動し、補助平滑電圧V2として直流電圧Vsを得る動作は、スイッチング電源装置10,50の場合と同様である。
【0063】
このように、スイッチング電源装置70によれば、上述したスイッチング電源装置10,70と同様の優れた動作を、簡単な回路構成で実現することができる。また、補助整流トランジスタ74はN−ChのMOS型トランジスタであるため、充電抵抗38を介してゲート端子に流れ込む電流が、NPN型トランジスタのときに比べてほとんど無視できるほどに小さい。従って、タイマコンデンサ40と充電抵抗38の時定数特性のばらつきが小さくなるので、出力電圧Voに略比例した補助平滑電圧Vsをより正確に生成することができる。
【0064】
なお、この発明のスイッチング電源装置は上記実施形態に限定されるものではなく、上述した動作妨げない範囲で、例えば、三次巻線、各ダイオード又は補助整流トランジスタと並列にEMI対策用のコンデンサやスナバ回路を接続する等してもよい。
【0065】
また、第三のダイオードに代えて、一定電圧Vs以上のツェナー電圧を有するツェナーダイオードを同一の向きに接続してもよい。それによって、スイッチング電源装置に何らかの故障が発生したときでも、補助平滑電圧V2が当該ツェナー電圧以上に上昇するのを制限し、電源ライン24aへの過電圧印加によって制御回路24が故障するのを容易に防止することができる。
【符号の説明】
【0066】
10,50,70 スイッチング電源装置
14 主スイッチング素子
16 トランス
16a 一次巻線
16b 二次巻線
16c 三次巻線
18 出力整流素子
20 出力平滑コンデンサ
24 制御回路
28 補助整流回路
32 マイナス側端子
34 プラス側端子
36 第一のダイオード
38 充電抵抗
40 タイマコンデンサ
42 補助整流トランジスタ
44,52,72 放電制御回路
44a 短絡開放手段
44b 電圧制限手段
54 第二のダイオード
55 電流制限抵抗
56 抵抗
58 第三のダイオード
60 トランジスタ
74 補助整流トランジスタ
76 第四のダイオード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力電源と直列接続されオン・オフ動作によって入力電圧を断続し交流電圧を発生させる主スイッチング素子と、
前記交流電圧が印加される一次巻線と、それに磁気結合した二次巻線及び三次巻線が設けられたトランスと、
一端が前記二次巻線の一端に接続され、前記主スイッチング素子と相補的にオン・オフすることによって、前記主スイッチング素子がオフの期間中に前記二次巻線に発生する電圧を整流する出力整流素子と、
前記二次巻線の他の一端と前記出力整流素子の他の一端との間に接続され、前記出力整流素子が整流した整流電圧を平滑して直流の出力電圧を生成し、当該出力電圧を負荷に供給する出力平滑コンデンサと、
前記出力電圧に基づいてパルス幅変調を行い、前記主スイッチング素子のオン・オフの時比率を制御して出力電圧を所定電圧に安定化する制御回路と、
前記三次巻線の両端に接続され、前記三次巻線に発生する電圧を整流して補助整流電圧を出力する補助整流回路と、
前記補助整流電圧を平滑し、前記制御回路に補助平滑電圧を供給する補助平滑コンデンサとを備えたフライバック方式のスイッチング電源装置において、
前記三次巻線は、グランドに接続され前記出力整流素子がオンの期間に低電位となるマイナス側端子と、前記出力整流素子がオンの期間に高電位となるプラス側端子とを備え、
前記補助整流回路は、
前記三次巻線の前記プラス側端子にアノード端子が接続された第一のダイオードと、
前記第一のダイオードのカソード端子に一端が接続された充電抵抗と、
前記充電抵抗の他の一端とグランドとの間に接続されたタイマコンデンサと、
コレクタ端子が前記第一のダイオードのカソード端子に接続され、エミッタ端子が前記補助平滑コンデンサに接続され、ベース端子が前記充電抵抗と前記タイマコンデンサの接続点に接続された前記NPN型の補助整流トランジスタと、
前記三次巻線のプラス側端子の電圧に基づいて前記タイマコンデンサの放電を制御する放電制御回路とを備え、
前記放電制御回路は、
前記出力整流素子のオフ期間中に前記タイマコンデンサの両端を短絡して充電電圧を放電し、前記出力整流素子のオン期間は前記タイマコンデンサの両端を開放する短絡開放手段と、
前記タイマコンデンサの充電電圧が上昇して前記三次巻線のプラス側端子の電圧に達すると、前記タイマコンデンサの充電電圧が前記三次巻線のプラス端子の電圧を超えないように当該充電電圧を制限する電圧制限手段とを備え、
前記充電抵抗及び前記タイマコンデンサは、前記出力整流素子のオン期間に、前記三次巻線のプラス端子に高周波振動電圧が重畳した所定の一定電圧が発生したとき、前記タイマコンデンサの充電電圧が、前記所定の一定電圧を超えないように時定数が設定されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記補助整流トランジスタのエミッタ端子は、第二のダイオードを介して前記補助平滑コンデンサに接続され、
前記第二のダイオードは、前記補助整流トランジスタのエミッタ端子にアノード端子が接続され、前記補助平滑コンデンサにカソード端子が接続された請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記補助整流トランジスタのエミッタ端子から前記補助平滑コンデンサへの電流経路に、電流制限用の抵抗が設けられた請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記補助整流トランジスタがN−chのMOS型FETに置き換えられ、
当該補助整流トランジスタは、ドレイン端子が前記第一のダイオードのカソード端子に接続され、ソース端子が第二のダイオードを介して前記補助平滑コンデンサに接続され、ゲート端子が前記充電抵抗と前記タイマコンデンサの接続点に接続され、
前記第二のダイオードは、前記補助整流トランジスタのソース端子にアノード端子が接続され、前記補助平滑コンデンサにカソード端子が接続された請求校1記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記補助整流トランジスタのソース端子から前記補助平滑コンデンサへの電流経路に、電流制限用の抵抗が設けられた請求項4記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記放電制御回路の前記短絡開放手段及び前記電圧制限手段が、
前記三次巻線のプラス側端子に一端が接続された抵抗と、
当該抵抗の他の一端にカソード端子が接続され、グランドにアノード端子が接続された第三のダイオードと、
前記充電抵抗と前記タイマコンデンサとの接続点にエミッタ端子が接続され、グランドにコレクタ端子が接続され、前記第三のダイオードのカソード端子にベース端子が接続されたPNP型のトランジスタとで構成された請求項1又は4記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記放電制御回路の前記短絡開放手段及び前記電圧制限手段が、
前記充電抵抗と前記タイマコンデンサの接続点にカソード端子が接続され、グランドにアノード端子が接続された第三のダイオードと、
前記三次巻線のプラス側端子に一端が接続された抵抗と、
当該抵抗の他の一端にカソード端子が接続され、前記充電抵抗と前記タイマコンデンサとの接続点にアノード端子が接続された第四のダイオードとで構成された請求項1又は4記載のスイッチング電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−273432(P2010−273432A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122092(P2009−122092)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】