説明

スイッチ装置

【課題】フェイルセーフ性の向上を図ったスイッチ装置を提供する。
【解決手段】スイッチ装置10は、複数のスイッチ操作部1〜5のそれぞれの操作信号に応答して制御信号が生成される制御部7と、制御部7からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行うスイッチング素子Tr1〜Tr4と、スイッチング素子Tr1〜Tr4により点灯制御される複数の光源8〜14とを備えている。制御部7は、特定の周波数帯のみを透過させるフィルタ部30を備えている。スイッチング素子Tr1〜Tr4は、フィルタ部30からの制御信号の有無により光源8〜14の消灯又は点灯を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイルセーフ機能を有する各種の電子機器における入力操作部として好適なスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に適用されるフェイルセーフ機能を有する従来の車載機器の一例としては、例えば光源の調光制御を行うメータ装置を備えたメータ調光装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に記載された従来のメータ調光装置は、出力信号線により調光装置とメータ装置の制御部とを電気的に接続している。この制御部は、所定の調光制御によりメータ装置の光源の調光制御を行う構成となっており、調光装置の出力信号に異常が発生した場合や出力信号線に断線が発生した場合は、メータ装置の制御部において所定の調光制御を行うことで、メータ装置の光源を発光させてメータ装置の照明を続行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−181762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の従来のメータ調光装置は、調光装置や出力信号線に生じた異常を検出してフェイルセーフを図っているが、メータ装置の制御部に異常を生じた場合の対策については講じられていない。
【0006】
本発明の目的は、フェイルセーフ性の向上を図ったスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、複数のスイッチ操作部と、前記複数のスイッチ操作部のそれぞれの操作信号に応答して制御信号が生成される制御部と、前記複数のスイッチ操作部に対応して設けられ、前記制御部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行うスイッチング素子と、前記複数のスイッチ操作部に対応して設けられ、前記スイッチング素子により点灯制御される複数の光源とを備えており、前記制御部は、特定の周波数帯のみを通過させるフィルタ部を備え、前記スイッチング素子は、前記フィルタ部からの制御信号の有無により前記光源の消灯又は点灯を切り替えることを特徴とするスイッチ装置にある。
【0008】
[2]上記[1]記載の前記制御部は、前記フィルタ部を介してハイレベル及びローレベルの信号を繰り返す制御信号を前記スイッチング素子に出力しない状態で、前記スイッチング素子をオンするとともに、前記光源を点灯するように構成されたことを特徴としている。
【0009】
[3]上記[1]又は[2]記載の前記フィルタ部は、ハイパスフィルタであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の故障時においてスイッチ操作部に対応して設けられた光源を全灯させることでスイッチ操作が可能となり、装置の故障に対するフェイルセーフ機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に好適な実施の形態に係るクルーズコントロールスイッチの操作部を示す概略平面図であり、(a)は操作部の第1の表示状態を示す図であり、(b)は第2の表示状態を示す図、(c)は第3の表示状態を示す図であり、(d)は第4の表示状態を示す図である。
【図2】図1に示すスイッチ装置の概略電気構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】
(スイッチ装置の外観構成)
図1及び図2において、全体を示す符号10は、この実施の形態に係る典型的なスイッチ装置を模式的に示している。図示例によるスイッチ装置10は、例えば自車と先行車との車間距離を制御する車間制御や車速を設定速度に維持する定速走行制御のオンオフを行うために自動車の運転席周辺に装備されたクルーズコントロールスイッチとして例示されている。
【0014】
このスイッチ装置10は、図1及び図2に示すように、押圧操作する操作部を有する第1〜第5の5つのスイッチ1〜5を備えている。第1のスイッチ1は、車間制御や定速走行制御をオン状態又はオフ状態に切り替える機能を有するメインスイッチである(以下、「メインスイッチ1」ともいう。)。第2のスイッチ2は、操作回数に応じて設定速度が1段階だけ速くなる機能と、設定速度が取得された後に定速走行制御を開始する機能とを有するセットスイッチである。
【0015】
第3のスイッチ3は、操作回数に応じて設定速度が1段階だけ遅くなる機能と、定速走行制御を一時的に解除した後に定速走行制御を再開する機能とを有するリジュームスイッチである。第4のスイッチ4は、車間制御や定速走行制御を一時的に解除する機能を有するキャンセルスイッチである。そして、第5のスイッチ5は、定速走行制御内で車間距離を設定する機能を有するディスタンススイッチである。
【0016】
この5つのスイッチ1〜5における操作部の操作面には、図1及び図2に示すように、「ON−OFF」、「SET」、「+」、「−」、「DIST」、「CANCEL」、「RES」等のスイッチ機能を表す表示が形成されている。その操作面の裏面には、「ON−OFF」等の表示に対応して光源が配置されており、その光源の点灯により表示が操作面に現れるように構成されている。この「ON−OFF」等の表示は、入力操作を必要とするスイッチに対応する光源を操作手順に従い点灯させるとともに、入力操作を必要としないスイッチに対応する光源を操作手順に従い消灯させることで、図1(a)〜図1(d)に示す操作手順で手動操作を案内する案内手段として機能するようになっている。
【0017】
なお、スイッチ装置10の配置や表示などの形態としては、図示例に限定されるものではなく、他の様々な形態を採用できることは勿論である。
【0018】
(スイッチ装置の回路構成)
このスイッチ装置10は、図2に示すように、直列接続された抵抗R1〜R3と、一端が抵抗R1〜R3に対応付けて接続された第1〜第4の4つのスイッチ1〜4と、この4つのスイッチ1〜4の他端に共通接続された第5のスイッチ5とにより操作信号回路を構成している。この5つのスイッチ1〜5の両端は、ECU(Electronic Control Unit)として構成されたクルーズ制御部(クルーズコントローラ)6の3つのポートに接続されている。
【0019】
このクルーズ制御部6は、スイッチ1〜5からの操作信号に基づき車間距離制御と定速走行制御とを行うように構成されている。このスイッチ1〜5のうち、メインスイッチ1をオン状態にすると、バッテリー電源VBの所定の電圧がクルーズ制御部6に入力され、スイッチ装置10の入力状態が検出される。
【0020】
このクルーズ制御部6には、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)として構成された照明制御部7が接続されている。この照明制御部7には、スイッチ1〜5のそれぞれに対応する光源である発光ダイオード(以下、「LED」という。)8〜14を点灯又は消灯させるスイッチング部20が接続されている。
【0021】
この照明制御部7は、図1(a)〜図1(d)に示す操作手順によりスイッチ1〜5を手動操作することで、スイッチング部20をオン状態又はオフ状態にする制御信号をスイッチング部20へ出力するように構成されている。それと同時に、手動操作状態をLED9〜14の点灯又は消灯により報知するようになっている。
【0022】
このメインスイッチ1に対応するLED8の一端は、図2に示すように、バッテリー電源VBのプラス端子に接続されており、LED8以外のスイッチ2〜5に対応するLED9〜14の一端は、スイッチング部20を介してバッテリー電源VBのプラス端子に接続されている。このLED8〜14の他端は、抵抗R4〜R10を介して接地されている。
【0023】
このスイッチング部20は、図2に示すように、PNP型のトランジスタからなる第1〜第4の4のスイッチング素子Tr1〜Tr4により構成されている。このスイッチング素子Tr1〜Tr4のエミッタが、バッテリー電源VBのプラス端子に接続されている。そのコレクタは、メインスイッチ1を除くスイッチ2〜5に対応するLED9〜14の一端に接続されている。そのベースは、抵抗R11〜R14を介して照明制御部7に接続されている。その抵抗R11〜R14とスイッチング素子Tr1〜Tr4との間の信号経路は、抵抗R19〜R22を介して接地されている。ベースとエミッタとの間には、ベース電圧安定化用の抵抗R15〜R18が接続されている。
【0024】
このスイッチング素子Tr1〜Tr4がオン状態である場合は、バッテリー電源VBからの駆動電流がスイッチ2〜5に対応するLED9〜14へ供給されており、そのLED9〜14が点灯する。このスイッチング素子Tr1〜Tr4がオフ状態である場合には、バッテリー電源VBからの駆動電流の供給が遮断されており、スイッチ2〜5に対応するLED9〜14は消灯する。メインスイッチ1に対応するLED8は、スイッチング素子Tr1〜Tr4のオン又はオフにかかわらず、メインスイッチ1のオン操作又はオフ操作に基づきバッテリー電源VBからの駆動電流が供給されて点灯又は消滅する。
【0025】
(スイッチ装置のフェイルセーフ機能)
この実施の形態に係るスイッチ装置10の基本の構成は、例えばクルーズ制御部6、クルーズ制御部6からの信号経路や照明制御部7などに異常等が生じた場合は、フェイルセーフ制御を行うように構成したことにある。図示例によれば、照明制御部7とスイッチング部20との間の信号経路には、特定の周波数帯のみを通過させるフィルタ部30が接続されている。
【0026】
このフィルタ部30は、図2に示すように、照明制御部7から入力された制御信号の低周波成分を除去して制御信号の高周波成分のみを通過させるハイパスフィルタ(HPF)31〜34を備えている。このHPF31〜34のそれぞれは、抵抗R11〜R14を介してスイッチング素子Tr1〜Tr4のベースに接続した構成となっている。
【0027】
なお、HPF31〜34に代えて、特定の周波数帯のみを通過させるバンドパスフィルタを用いる構成を採用することができる。
【0028】
この照明制御部7は、H(ハイ)レベル及びL(ロー)レベルの信号を繰り返すパルスや正弦波などの波形を有する信号を制御信号として生成するように構成されている。照明制御部7の制御信号がHレベル及びLレベルの信号を繰り返す制御信号である場合には、HPF31〜34が照明制御部7からの制御信号を通過させる。照明制御部7の制御信号がHレベルやLレベルの一定の信号である場合は、一定のレベルの制御信号はHPF31〜34を通過しない。
【0029】
この照明制御部7の制御信号がHPF31〜34を介してスイッチング素子Tr1〜Tr4のベースに印加することで、スイッチング素子Tr1〜Tr4がオフ状態になる。この場合には、スイッチ2〜5に対応するLED9〜14は消灯状態になる。これとは逆に、照明制御部7の制御信号が出力されていない場合には、スイッチング素子Tr1〜Tr4がオン状態になり、スイッチ2〜5に対応するLED9〜14は点灯状態になる。
【0030】
このように、メインスイッチ1を含むスイッチ2〜5の操作信号回路とは独立して、HPF31〜34からの制御信号の有無によりメインスイッチ1に対応するLED8以外のスイッチ2〜5に対応するLED9〜14がオンオフ制御される。
【0031】
ところで、このクルーズ制御部6、クルーズ制御部6からの信号経路や照明制御部7などの故障の一例として、例えばフィルタ部30が存在しない回路構成において照明制御部7のポートの制御が不能になると、照明制御部7の制御信号がHレベル信号で出力固定されるH固定、又はLレベル信号で出力固定されるL固定になってしまう場合がある。この制御信号が正常に出力されない場合は、スイッチング素子Tr1〜Tr4が意図しない動作内容で駆動してしまうこととなり、例えば選択操作していないスイッチに対応する光源を点灯させたり、あるいは選択操作していたスイッチに対応する光源を消灯させたりする現象が起きる。
【0032】
これに対して、この実施の形態に係るフィルタ部30は、照明制御部7などの故障時においては照明制御部7からの信号を通過しない状態になるため、照明制御部7の制御信号がスイッチング部20には出力されない。この場合は、スイッチング素子Tr1〜Tr4のベースの電位が下がることで、スイッチング素子Tr1〜Tr4がオン状態に切り替わる。スイッチング素子Tr1〜Tr4がオンになったことに伴い、バッテリー電源VBからの駆動電流がスイッチ2〜5に対応するLED9〜14へ供給されて、全てのLED9〜14が全点灯する。これにより、スイッチ装置10の故障時において全てのLED8〜14が全点灯状態になる。
【0033】
(実施の形態の効果)
上記のように構成されたスイッチ装置10によれば、スイッチ1〜5の操作信号回路とは独立して、照明制御部7とフィルタ部30とによりスイッチング部20をオン状態にする機能を有する構成を採用することで、上記効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0034】
スイッチ装置10の故障時において、スイッチ1〜5の操作面を照明する光源が全消灯状態となることを回避することができるようになり、スイッチ装置10の故障に対するフェイルセーフ機能を確保することが可能となる。
【0035】
照明制御部7が故障したとしても、あるいは照明制御部7の出力が不安定になったとしても、全てのLED8〜14が全点灯のモード状態になる。これにより、照明制御部7の故障時において全てのクルーズコントロールスイッチを視認することができるので、スイッチ操作が可能となり、装置の故障に対するフェイルセーフ機能を向上させることができる。
【0036】
スイッチ装置10が故障であることを運転者に報知することができるので、スイッチ装置10の故障に対して即座に対応することができる。それに加えて、スイッチ装置10の故障に対する情報に基づく対応処理を運転者に正確に指示することも可能となる。
【0037】
スイッチ装置10の適用対象としては、例えば自動車の運転席周辺に装備される空調、オーディオやカーナビゲーション等の各種の電子機器における入力操作部に好適に用いられるとともに、携帯電話機や通信機器等の各種の電子機器の入力操作部として好適に用いることができる。
【0038】
以上の説明から明らかなように、本発明は、上記実施の形態、変形例及び図示例に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲内で様々に設計変更が可能である。本発明にあっては、例えばクルーズ制御部6及び照明制御部7の各構成要素は、CPU、メモリ、各構成要素を実現する制御プログラム、制御プログラムを格納する記憶ユニット、外部接続用インターフェースを中心にハードウェアとソフトウェアの任意の組合せによって実現される。その方法や装置としては、従来周知の各種の方法や装置を使用することができることは当業者には理解されるところであり、上記実施の形態、変形例及び図示例に特定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1〜5…スイッチ、6…クルーズ制御部、7…照明制御部、8〜14…LED、10…スイッチ装置、20…スイッチング部、30…フィルタ部、31〜34…HPF、R1〜R22…抵抗、Tr1〜Tr4…スイッチング素子、VB…バッテリー電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチ操作部と、
前記複数のスイッチ操作部のそれぞれの操作信号に応答して制御信号が生成される制御部と、
前記複数のスイッチ操作部に対応して設けられ、前記制御部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行うスイッチング素子と、
前記複数のスイッチ操作部に対応して設けられ、前記スイッチング素子により点灯制御される複数の光源とを備えており、
前記制御部は、特定の周波数帯のみを通過させるフィルタ部を備え、
前記スイッチング素子は、前記フィルタ部からの制御信号の有無により前記光源の消灯又は点灯を切り替えることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記フィルタ部を介してハイレベル及びローレベルの信号を繰り返す制御信号を前記スイッチング素子に出力しない状態で、前記スイッチング素子をオンするとともに、前記光源を点灯するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記フィルタ部は、ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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