説明

スキャナヘッド及び当該スキャナヘッドを用いた加工機器

本発明は、フォーカシングされたレーザビームを用いて被加工物を加工するためのスキャナヘッドに関する。第1の方向に沿って回転可能に支承された第1の構成ユニットを、第1の方向から有利には該第1の方向に対して垂直な第2の方向にレーザビームを偏向するために有しており、第1の構成ユニットに取り付けられていて、第2の方向に沿って回転可能に支承された第2の構成ユニットを有しており、該第2の構成ユニットは、第1の軸AScを中心にして傾動可能なスキャナミラーを有している。第1の構成ユニット内には、適応的なビーム偏向ユニット、殊に、適応的なミラーが設けられており、その際、1つ又は複数のスキャナヘッドが、第2の構成ユニット内に第1の軸に対して垂直な第2の軸BScを中心にして回転可能又は傾動可能に設けられており、スキャナヘッド内に、ビーム拡張要素及びフォーカシング要素を備えた光学装置が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカシングされたレーザビームを用いて被加工物を加工するためのスキャナヘッドであって、第1の方向に沿って回転可能に支承された第1の構成ユニットを、第1の方向から有利には該第1の方向に対して垂直な第2の方向にレーザビームを偏向するために有しており、第1の構成ユニットに取り付けられていて、第2の方向に沿って回転可能に支承された第2の構成ユニットを有しており、該第2の構成ユニットは、第1の軸を中心にして傾動可能なスキャナミラーを有しているスキャナヘッド、及び当該スキャナヘッドを用いた加工機器に関する。
【0002】
本願出願の意味でのスキャナヘッドとは、SD(ステルスダイシング)レーザ加工装置又は産業ロボット(ハンドとして)で、第1及び第2の方向を中心にして回転可能に支承することができる構成群のことであり、その際、スキャナヘッドには、一般的にコリメートされたレーザビームが供給される。
【0003】
そのようなスキャナヘッドは、EP l 228 835に記載されている。レーザビームは、そこでは、第2の方向を中心にしてスキャナミラーを回転することによって、乃至、スキャナミラーを傾動することによって、湾曲した(球殻状)2次元の作業領域を形成するために、種々のレンズを用いて焦点にフォーカシング(合焦)される。レンズを動かすことによって、焦点位置を空間内で変えることができ、その結果、作業領域が作業空間に拡張される。
【0004】
DE 100 27 148 A1からは、ビーム路内に調整可能な可動スキャナミラーが設けられている被加工物の加工用の装置が公知である。可動スキャナミラーとは、そこでは、可動の、例えば、カルダン懸架を備えたスキャナミラーのことである。ミラーは、相互に垂直方向の2つの軸を中心にしてミラーを傾けることによって位置調整することができる。
【0005】
そこに記載されたスキャナヘッド、及び、それ以外の通常のスキャナ装置の欠点は、フォーカシングされたレーザビームの入射方向が、スキャナの作業領域に対してほぼ垂直方向に配向されている点にある。それにより、スキャナは、主として平面の加工用に適しており、従って、空間での加工のためには、たいてい、被加工物を付加的に軸運動させる必要がある。
【0006】
それに対して、本発明の課題は、冒頭に記載した形式のスキャナヘッドを改良して、焦点位置を空間内でほぼ自由に配向することができ、従って、作業空間の焦点位置に、できる限り簡単且つ迅速に達することができるようにすることにある。
【0007】
この課題は、本発明によると、第1の構成ユニット内に、適応的なビーム偏向ユニット、殊に、適応的なミラーが設けられており、1つ又は複数のスキャナヘッドが、第2の構成ユニット内に第1の軸に対して垂直な第2の軸を中心にして回転可能又は傾動可能に設けられており、スキャナヘッド内に、ビーム拡張要素及びフォーカシング要素を備えた光学装置が設けられていることにより解決される。
【0008】
適合的なビーム偏向ユニットによって、大きな角度(ほぼ90°)でのビーム偏向が、ビーム方向でのレーザビームの焦点の変更と組み合わされる。適合的なビーム偏向ユニットとして使われる適合ミラーは、出願人のEP l 424 584 A1から公知であり、当該内容が本願出願で参照されている。そこに記載されている適合ミラーは、非球面状であり、非球面形状によって、偏向の際に結像誤差が低減されるので、大きな角度(約90°)でのビーム偏向のために利用される。択一的に、但し、有利ではないが、EP l 424 584 A1に従来技術として記載されている、球面状の偏向ミラーと、付加的な偏向ミラーとの組合せを、適合的なビーム偏向ユニットとして使用してもよい。
【0009】
適合的なビーム偏向ユニットによって、上述のように、ビーム方向で、レーザビームの焦点位置を変えることができる。これにより、先ず(焦点調整せずに)球殻の一部分を形成する、スキャナの作業領域に、ビーム方向での適切な空間的な拡がりを形成することができ、即ち、作業領域から作業空間が形成される。更に、ビーム方向内で焦点位置を調整することによって、スキャナミラーの(ほぼ)球面状の作業領域を、平坦な作業領域に変形することができる。このことは、スキャナ領域内では通常のことである(F/θ乃至プレインフィールド対物レンズ(Planfeldobjektiv)参照)。適合光学系を用いると、EP l 228 835に記述された装置では必要であるような、ビーム方向での焦点調整用のシフト軸を必要としない。その他に、本発明のスキャナヘッドでは、スキャナヘッドの配向用の第2の構成ユニットの回転運動を、スキャナミラーの回転運動から切り離すことができる。と言うのは、これらの回転運動は、技術的に統合するのが難しいからである。
【0010】
第1の軸を中心にして傾動可能且つ第2の軸を中心にして回動可能なスキャナミラーを使用する他に、各々唯一の軸を中心にして傾動可能な、別個の2つのスキャナミラーをスキャナヘッド内に使用してもよい。EP l 228 835に対して、別の回動乃至傾動軸を設けることによって、作業領域用の配向軸と、高速のスキャナ軸を分離することができる。2つの軸に沿って傾動するためのスキャナミラーの懸架は、例えば、出願人のDE 102 52 443 A1又はDE 202 12 155 U1に記載されているようにして行うとよい。
【0011】
レーザビームの通常の入力データで、リモートウェルディングを可能にする、満足しうる光学特性を得るために、フォーカシング要素、殊に、楕円ミラー又は集光レンズを備えたレーザビームのフォーカシングの他に、レーザビームを拡げる光学装置が設けられている。この課題は、有利には、放物線状ミラー又は拡散レンズとして構成されたビーム拡張要素によって達成される。用途に応じて、光学装置を完全に反射性の要素又は完全に透過性の要素から構成すると有利である。前者の場合、光学装置は、有利には、放物線状ミラー及び楕円状ミラーを有しており、後者の場合、有利には、拡散レンズ及び集光レンズを有している。反射要素と透過性要素とを組み合わせて使用する光学装置も、殊に、熱効果によって生じる焦点位置のずれを補償するために、有利である。ビーム拡張及びフォーカシングの機能は、各々個別光学要素によって、それら各々の機能を最適化する、複数の光学要素の組合せとして構成するとよい。これらの実施例は全て、有利には、YAGレーザ又はCOレーザで駆動される加工機器と組み合わせて使用するとよい。
【0012】
フォーカシング光学要素によって、レーザビームは、焦点上にフォーカシングされる。レーザビームは、レーザビームの周囲に、上述のように、適合的なビーム偏向ユニットを用いて、作業空間を形成するために、単数乃至複数のスキャナミラーを用いて作業領域の方に偏向される。直交座標型ロボットの直交座標基本軸(X,Y,Z)に沿ってスキャナヘッドを動かす場合、スキャナの(限定された)作業空間が、基本機器の作業空間に拡張され、しかも、自由に空間内で配向可能である。殊に、例えば、スキャナヘッドを直交座標型ロボットと組み合わせる、乃至、直交座標型ロボットと共に動かすと、自動車のボディを5つの側から加工することができる。
【0013】
1実施例では、光学装置は、第2の構成ユニット内に設けられている。この際、単数乃至複数のスキャナミラー及び光学装置は、第2の構成ユニットの別個の2つの構成群内に設けることができ、その際、単数乃至複数のスキャナミラーは、例えば、別個のスキャナユニット内に設けられており、このスキャナユニットは、光学装置を有する構成群にフランジ結合されている。
【0014】
択一的に、単数乃至複数のスキャナミラー及び光学装置を、第2の構成ユニットによって形成された共通の構成群内に統合することができる。こうすることによって、特に小型の構成形式が可能となる。
【0015】
別の実施例では、単数乃至複数のスキャナミラーが、第2の構成ユニット内に、第2の方向に対して離心的に設けられている。この際、レーザビームは、例えば、光学装置の反射光学要素を用いて、第2の方向からスキャナミラーの方に偏向することができ、それは、スキャナミラーを第2の構成ユニット内で離心的に配設することによって可能となる。第2の方向を中心にして第2の構成ユニットを回転させる際に、スキャナミラーは、円弧を描き、それにより、スキャナの作業領域の任意の空間配向を達成することができる。
【0016】
別の実施例では、第1の方向から第2の方向へのレーザビームの偏向は、適応的なビーム偏向ユニットによっても、ビーム拡張要素によっても、又は、フォーカシング要素によっても行われる。フォーカシング乃至ビーム拡張要素は、この場合、反射的に構成されていて、第1の構成ユニット内に設けられている。有利には、光学装置の別の要素も、第1の構成ユニット内に設けられており、その際、第1の構成ユニットは、有利に透過性に構成されている。この装置構成により、スキャナヘッドの小型の構成形式が達成され、それによると、殊に第2の構成ユニットの長さを短縮することができる。それにより、回動半径を小さくすることができ、その結果、位置精度が向上する。更に、スキャナミラーは、この場合、小さな寸法にすることができる。
【0017】
有利な実施例では、スキャナヘッドは、第1の軸を中心にして傾かない状態でスキャナミラー上へのレーザビームの入射角が、偏向に関する特定の溶接過程での要件を満たすために、45°からシフトされているように構成されている。しかし、この構成は、スキャナミラーの制御の際に高いコストを生じる(変換)。
【0018】
本発明は、更に、直交基本軸に沿ってスキャナヘッドをシフトするためのユニットと、第1及び第2の方向に沿ってスキャナヘッドを回転可能に支承するためのアングルギア(Winkelgetriebe)を有する、上述のようなスキャナヘッドを用いて被加工物を3次元加工するための加工機械で実施される。殊に、出願人の3D加工機器に3つの直交基本軸(X,Y,Z)を用いる際に、TLC(薄膜クロマトグラフィ)タイプのB/C軸運動の方式が、スキャナヘッドの位置決めのために利用することができる。
【0019】
以下、本発明について、図示の実施例を用いて詳細に説明する。 図面:
図1は、反射光学装置にフランジ結合されたスキャナユニットを有するスキャナヘッドの第1の実施例の長手方向略図を示し、
図2は、小型の構造形式でのスキャナヘッドの第2の実施例の同様の図、
図3は、スキャナミラーで非直角ビーム偏向するスキャナヘッドの第3の実施例の各光学構成要素を略示し、
図4は、透過性光学装置を備えたスキャナヘッドの第4の実施例の長手方向略図を示し、
図5は、適応的なミラーが凹レンズと集光レンズとの間のビーム路内に設けられている透過性光学装置を備えたスキャナヘッドの第5の実施例を同様に示した図、
図6は、適応化ミラーの後ろ側のビーム路内に放物線状ミラーと集光レンズを備えたスキャナヘッドの第6の実施例を同様に示した図、
図7は、放物線状ミラーと集光レンズとの間のビーム路内に適応化ミラーを備えたスキャナヘッドの第7の実施例を同様に示した図、
図8は、凹レンズと楕円状ミラーとの間のビーム路内に適応化ミラーを備えたスキャナヘッドの第8の実施例を同様に示した図、
図9は、適応化ミラーの前側のビーム路内に凹レンズと楕円状ミラーを備えたスキャナヘッドの第9の実施例を同様に示した図である。
【0020】
図1は、スキャナヘッド1.1を示し、該スキャナヘッド1.1は、第1の、垂直方向Cに沿って回転可能に支承されている第1の構成ユニット1、並びに、第1の構成ユニット2に取り付けられていて、場合によっては、第2の、水平方向Bを中心にして支承されている第2の構成ユニット3とから構成されている。第2の構成ユニット3は、光学装置6のケーシングにフランジ結合されているスキャナミラー5を備えたスキャナユニット4を有している。スキャナヘッド1.1は、部分的にしか図1に示されていない加工機器に取り付けられており、当該加工機器の3つの直交基本軸X,Y,Zが図1に示されている。
【0021】
ほぼコリメートされたレーザビーム7aは、スキャナヘッド1.1内の第1の構成ユニット2に入射し、第1の構成ユニット2のところで、適応的な偏向ミラー8に入射し、この偏向ミラー8は、レーザビーム7aを垂直方向Cから水平方向Bに偏向する。それと同時に、偏向ミラー8は、レーザビームの焦点位置をビーム方向に変えるように作用し、即ち、コリメートされたレーザビーム7aから、適応的なミラー8の調整に応じて、コリメートされた、集束された又は拡散されたレーザビーム7bが形成される。このために、偏向ミラー8は、例えば、図示していないピエゾ素子を介して、又は、ミラーの裏側に冷却水を用いて加圧することによって変形可能である(冒頭に記載したEP l 424 584 AIに詳細に説明されている)。適応的なミラー8を用いて、典型的に、最小の約±4000mmの焦点距離を達成することができる。水平方向に配向されたレーザビーム7bは、その後、第2の構成ユニット3内に入射し、当該第2の構成ユニット3で、先ず、ビームを拡張する放物線状ミラー9に入射し、当該放物線状ミラー9は、ビーム路内で後続する楕円状ミラー10と共に光学装置6を構成する。この際、楕円状ミラー10の焦点距離(有効焦点距離約800mm)は、当該楕円状ミラー10がフォーカシング作用を有していて、集束されたレーザビーム7cを形成するように選定されている。後続して、フォーカシングされたレーザビーム7cは、スキャナミラー5に入射し、当該スキャナミラー5で、レーザビーム7cは、スキャナヘッド1.1から出射される前にもう一度偏向され、焦点11で、図示していない被加工物上に照射される。スキャナミラー5は、第1の軸AScを中心に傾けることができ、並びに、第1の軸に対して垂直な第2の軸BScを中心にして回動可能である。択一的に、スキャナヘッド1.1内に、各々相互に垂直方向の各軸を中心にして傾けることができる2つのスキャナミラーを設けてもよい。2つの軸ASc/BScを中心にしてスキャナミラー5が傾ける、乃至回動することによって、焦点11内で、ほぼ湾曲した作業領域12が形成される。適応的な偏向ミラー8を用いて焦点位置を適切に変えることによって、先ず、球殻の一部分を形成する、球状の作業領域12に、ビーム方向内の適切な、空間的な拡がりを形成することができ、この拡がりは、Z軸に沿ってΔZ=約±150mm〜約200mmの高さを有している。焦点位置をZ方向にずらすことによって、スキャナミラー5のほぼ球状の作業領域から、約350mmの平坦な作業領域13を350mm(X/Y)上に形成することもでき、このことは、スキャナにとって通常である(プレインフィールド対物レンズ(Planfeldobjektiv)参照)。
【0022】
作業領域13の簡単化された空間的な配向のために、スキャナミラー5は、方向Bを中心にして離心的に設けられており、その結果、このスキャナミラー5は、B方向を中心にした約600〜700mmの小さな回動半径で回動することができる。この付加的なフレキシビリティは、レーザビーム7bが、光学装置6を用いて、B方向に対して平行にずらされていることによって達成され、その結果、スキャナミラー5及び第2の構成ユニット3は、空間的に離れた軸B乃至BScを中心にして回動可能である。
【0023】
放物線状ミラー9上の入射角α及び楕円状ミラー10上の入射角βは、幾何的な要件に依存しているので、はっきりと詳しく特定できない。スキャナミラー5上へのレーザビーム7bの入射角γだけがほぼ45°に調整され、それは、スキャナミラー5を簡単に制御して行われる。
【0024】
図2は、スキャナヘッド1.2の構造形式を示し、このスキャナヘッド1.2が、図1のスキャナヘッド1.1に対して異なる点は、放物線ミラー9及び楕円状ミラー10が、スキャナミラー5と一緒に共通の構造群内に設けられている点にあり、この構造群は、第2の構成ユニット3によって形成されている。こうすることにより、図1に比較して一層小型の構造を達成することができる。
【0025】
図3には、図を簡単にするために、スキャナヘッド1.3の別の構造形式の光学コンポーネントしか示しておらず、このスキャナヘッドでは、適合的な偏向ミラー8にフォーカシングされるレーザビーム7bの、放物線状ミラー9、楕円状ミラー10乃至スキャナミラー5への入射角α、β、γは、45°とは異なるように選定されている。殊に、この構造形式は、従って、図1及び図2に示した構造形式と、スキャナミラー5で90°の偏向は行われない点で異なっている。これにより、所定の溶接処理の際に、レーザビーム7bを有利に偏光させることができる。殊に、3つの入射角α、β、γは、焦点11でレーザビーム7bの所望の偏光特性が得られるように選定することができる。
【0026】
図1〜図3に示されたスキャナヘッド1.1〜1.3の構造形式は、反射光学系としての光学装置6を示す。用途例に応じて、この反射光学系を透過性の光学系によって代替することができる(これは、図4に示されたスキャナヘッド1.4と同様である)。そこに示された、凹レンズ光学装置9’及びビーム路内に後続する集光レンズ10’は、第2の構造ユニット3内に設けられている。この構造形式では、第2の軸BSc(この軸を中心にして、スキャナミラー5が回転可能である)がは、第2の方向Bと一致し、この第2の方向Bと一致する(この方向を中心にして第2の構造ユニット3’’が回転可能に支承されている。それ以外では、図4のスキャナヘッド1.4〜4の構造は、図1に図示されたスキャナヘッド1.1の構造に相応している。
【0027】
図5には、図4と同様に、透過性の光学装置6を有するスキャナヘッド1.5が示されている。図4とは異なり、ここでは、凹レンズ9’は、ビーム路内で、第1の構造ユニット2内の適合化ミラー8の前に設けられており、これに反して、ビーム路内に後続する集光レンズ10’は、第2の構造ユニット3内に設けられている。これにより、適合的なミラー8が、拡散ビーム路内に設けられており、それにより、場合によっては、スキャナヘッド1.5の小型の構造を達成することができる。
【0028】
図1〜図5に示されたスキャナヘッド1.1〜1.5の構造形式では、レーザビーム7aの、第1の方向Cから第2の方向Bへの90°偏向が、専ら適合化ミラー8によって行われる。図6〜図9に示されているような択一的な構造形式では、ビーム偏向は、適合化ミラー8を用いた偏向と、光学装置6の反射光学要素を用いた偏向との組合せによって達成することができる。
【0029】
図6は、第1の方向Cから第2の方向Bへの偏向のために、適合的なミラー8と放物線状ミラー9を使用するスキャナミラー1.6の構造形式を示す。第2の方向Bに沿って経過するレーザビーム7bは、集光レンズ10’によってフォーカシングされ、集束ビームとしてスキャナミラー5に入射する。放物線状ミラー9及び集光レンズ10’は、第1の構造ユニット2内に設けられている。これにより、第2の構造ユニット3は、水平方向に、図1〜図5の構造形式とは異なり、短く構成することができ、それにより、スキャナヘッド1.6の回動の半径は短くなり、スキャナミラー5を小さな寸法にすることができる。更に、反射要素(放物線状ミラー9)を透過性の要素(集光レンズ10’)と組み合わせることによって、熱作用による焦点位置のずれを少なくとも部分的に補償することができる。
【0030】
図7に示されたスキャナヘッド1.7の構造形式が、図6の構造形式と異なる点は、適合化ミラー8の構成と、放物線状ミラー9の構成とが交換されている点にしかない。こうすることによって、適合化ミラー8は、ビーム路内で、放物線状ミラー9と集光レンズ10’との間に設けられている。
【0031】
図8に示されたスキャナヘッド1.8の構造形式では、ビーム路内の第1の構造ユニット2内に、第1の方向に沿って先ず、レーザビーム7aを有する凹レンズ9’が設けられている。拡げられたレーザビーム7aは、適合化ミラー8及び楕円状ミラー10で偏向されてフォーカシングされ、その結果、第2の方向Bに沿って経過する集束レーザビーム7cとして第2の構成ユニット3内に入射する。
【0032】
スキャナヘッド1.9の別の構造形式が、図8に示した構造形式と異なる点は、単に、適合化ミラー8の位置と楕円状ミラー10の位置とが第1の構成ユニット2内で交換されている点にあり、その結果、適合化ミラー8は、ビーム路内で凹レンズ9"及び楕円状レンズ10の後ろ側に位置しており、その結果、拡げられた、集束レーザビームが、このミラー内に入射する。
【0033】
適合化ミラー8及び楕円状レンズ10乃至放物線状ミラー9の相互に相対的且つ図6〜図9の入射レーザビーム7aに対する位置は、各々、両要素の組合せによって、90°偏向が達成されるように選定されている。図1〜図9に示された構造形式は全て、有利には、適切な加工レーザ、殊に、CO2レーザ又はYAGレーザを用いて駆動することができる。
【0034】
スキャナヘッド1.1〜1.9の図示の構造形式では、ビーム方向内での焦点位置は、適合化ミラー8によって変えることができる。この焦点位置は、焦点11を中心にして変えられ、この焦点は、スキャナヘッド1.1〜1.9の定格焦点距離内に位置しており、この定格焦点距離は、光学装置6のフォーカシングレンズ要素10"乃至ミラー要素10によって決められる。光学装置6を用いた定格焦点距離の決定により、適合化ミラー8の圧力印加によって、単に、小さな屈折率(大きな(正又は負の)焦点距離に相応して)を達成すれば充分であるようになる。適合化ミラー8によって、更に、例えば、レンズ又はミラーのシフトによって達成されるよりも一層早く、Z方向に焦点位置を変えることができる。と言うのは、これは、その質量に基づいて、通常、高速でシフトすることができるからである。
【0035】
図1〜図9に示されたスキャナヘッド1.1〜1.9の構造形式は、各々特に有利に、被加工物の3次元可能用の加工機器、殊に、TLC機器又は産業ロボットに、当該加工機器が、スキャナヘッド1.1〜1.9を直交基本軸に沿ってシフトするためのユニットと、スキャナヘッド1.1〜1.9の、第1及び第2の方向B,Cに沿った回転可能な支承のためのアングル歯車、並びに、レーザビームの形成用のビーム源を有している場合に、機能ユニットとして取り付けることができる。そのような加工機器を用いて、スキャナヘッド1.1〜1.9の構造形式を使用して、例えば、自動車のボディを5つの側から加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】反射光学装置にフランジ結合されたスキャナユニットを有するスキャナヘッドの第1の実施例の長手方向略図
【図2】小型の構造形式でのスキャナヘッドの第2の実施例の同様の図
【図3】スキャナミラーで非直角ビーム偏向するスキャナヘッドの第3の実施例の各光学構成要素の略図
【図4】透過性光学装置を備えたスキャナヘッドの第4の実施例の長手方向略図
【図5】適応的なミラーが凹レンズと集光レンズとの間のビーム路内に設けられている透過性光学装置を備えたスキャナヘッドの第5の実施例を同様に示した図
【図6】適応化ミラーの後ろ側のビーム路内に放物線状ミラーと集光レンズを備えたスキャナヘッドの第6の実施例を同様に示した図
【図7】放物線状ミラーと集光レンズとの間のビーム路内に適応化ミラーを備えたスキャナヘッドの第7の実施例を同様に示した図
【図8】凹レンズと楕円状ミラーとの間のビーム路内に適応化ミラーを備えたスキャナヘッドの第8の実施例を同様に示した図
【図9】適応化ミラーの前側のビーム路内に凹レンズと楕円状ミラーを備えたスキャナヘッドの第9の実施例を同様に示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカシングされたレーザビーム(7c)を用いて被加工物を加工するためのスキャナヘッド(1.1〜1.9)であって、
第1の方向(C)に沿って回転可能に支承された第1の構成ユニット(2)を、第1の方向(C)から有利には該第1の方向(C)に対して垂直な第2の方向(B)に前記レーザビーム(7c)を偏向するために有しており、
前記第1の構成ユニット(2)に取り付けられていて、前記第2の方向(B)に沿って回転可能に支承された第2の構成ユニット(3)を有しており、該第2の構成ユニット(3)は、第1の軸(ASc)を中心にして傾動可能なスキャナミラー(5)を有しているスキャナヘッドにおいて、
第1の構成ユニット(2)内に、適応的なビーム偏向ユニット、殊に、適応的なミラー(8)が設けられており、
1つ又は複数のスキャナヘッド(5)が、第2の構成ユニット(3)内に第1の軸に対して垂直な第2の軸(BSc)を中心にして回転可能又は傾動可能に設けられており、
スキャナヘッド(1.1〜1.9)内に、ビーム拡張要素(9,9’)及びフォーカシング要素(10,10’)を備えた光学装置(6)が設けられていることを特徴とするスキャナヘッド。
【請求項2】
光学装置(6)は、ビーム拡張要素として放物線状ミラー(9)又は凹レンズ(9’)を有している請求項1記載のスキャナヘッド。
【請求項3】
光学装置(6)は、フォーカシング要素として楕円状ミラー(10)又は集光レンズ(10’)を有している請求項1又は2記載のスキャナヘッド。
【請求項4】
光学装置(6)は、第2の構成ユニット(3)内に設けられている請求項1から3迄の何れか1記載のスキャナヘッド。
【請求項5】
1つ又は複数のスキャナミラー(5)及び光学装置(6)は、第2の別個の構成群内に設けられている請求項4記載のスキャナヘッド。
【請求項6】
1つ又は複数のスキャナミラー(5)及び光学装置(6)は、共通の構成群内に統合されており、該構成群は、第2の構成ユニット(3’)によって構成されている請求項4記載のスキャナヘッド。
【請求項7】
1つ又は複数のスキャナミラー(5)は、第2の構成ユニット(3)内に第2の方向(B)に対して離心して設けられている請求項1から6迄の何れか1記載のスキャナヘッド。
【請求項8】
レーザビーム(7a)の、第1の方向(c)からの偏向は、第2の方向(B)において、適応的なビーム偏向ユニットによってもビーム拡張要素(9)又はフォーカシング要素(10)によっても行われる請求項1から3迄の何れか1記載のスキャナヘッド。
【請求項9】
光学装置(6)は、第1の構成ユニット(2)内に設けられている請求項8記載のスキャナヘッド。
【請求項10】
ビーム拡張要素(9’)は、透過要素であり、フォーカシング要素(10)は、反射要素であり、又は、前記ビーム拡張要素(9’)は、前記反射要素であり、前記フォーカシング要素(10)は、前記透過要素である請求項1から9迄の何れか1記載のスキャナヘッド。
【請求項11】
スキャナヘッドは、レーザビームの、スキャナミラー(5)への入射角(y)が、第1の軸(ASc)を中心にして45°の非傾動状態にシフトされるように構成されている請求項1から10迄の何れか1記載のスキャナヘッド。
【請求項12】
請求項1から11迄の何れか1記載のスキャナヘッド(1.1〜1.9)を用いて被加工物を3次元加工するための加工機械において、直交基本軸(X,Y,Z)に沿ってスキャナヘッド(1.1〜1.9)をシフトするためのユニットと、第1及び第2の方向(B,C)に沿って前記スキャナヘッド(1.1〜1.9)を回転可能に支承するためのアングルギア(Winkelgetriebe)を有することを特徴とする加工機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−520995(P2009−520995A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546140(P2008−546140)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013987
【国際公開番号】WO2007/079760
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(502300646)トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (76)
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann−Maus−Strasse 2,D−71254 Ditzingen,Germany
【Fターム(参考)】