説明

スキャフォールド材料及び生体用材料

【課題】容易に取り付けることができるスキャフォールド材料の提供。
【解決手段】細胞を誘導する細胞誘導部22と、外力によって変形され、前記外力が解除されると元の形状に戻るように変形する可変部21(例えば、コイルスプリング)とを備えたスキャフォールド材料2であって、前記外力が解除されると元の形状に戻ろうとする復元力を発生し、前記復元力で前記可変部21が再変形することで固定対象物に固定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯根、人工骨、補綴、皮膚端子等の硬組織又は軟組織の細胞を誘導するスキャフォールド材料及びそれを用いた生体用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
先天的な異常・欠損又は事故或いは病気により失った身体組織の修復、治療あるいは体組織の破壊を抑制するため、人工的に製造された生体用材料(インプラント材料)を体内に埋め込むあるいは体表面に密着させる治療が行われている。このような生体用材料では、前記生体用材料の全部又は一部に生体内の細胞を誘導し、増殖させるためのスキャフォールド(足場)を備えている。
【0003】
従来、スキャフォールド(足場)として、細胞を誘導、増殖させるため、金属多孔質体、チタン等の生体適合性の高い金属の線材を絡合した不織布状のものが用いられている。これ以外にも、例えば特開2011−15959号公報には、生体適合性の高い線材をコイル状に形成し集積したものが記載されており、特開2007−277718では、チタンの薄板をアルカリ水溶液に浸漬させることで、細胞を誘導、増殖させる網目状の浸食層を備えた足場が開示している。
【0004】
このような足場を設けることで、多くの細胞を効率よく誘導し、さらに増殖することで前記身体組織と前記生体用材料とが細胞組織で接続される。これにより、前記生体用材料を前記身体組織に強固に固定できる。又は、前記生体用材料と前記身体組織との隙間から雑菌等の異物が入らないように封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−15959号公報
【特許文献2】特開2007−277718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属多孔質体や金属の線を絡合して形成した不織布状のスキャフォールドは、硬質で変形しにくく、不織布とするためには絡合が必要であるために、生体又は生体用材料に取り付ける足場材料として形成する際には形成時に所望の形状としておく必要がある。また、樹脂製のスキャフォールドの場合も同様であり、ポリ乳酸等の生体内分解吸収性樹脂は硬質であり、変形が難しく、前もって所定の形状としておく必要がある。
【0007】
そのため、例えば細胞誘導部が形成された人工歯根などの生体用材料に用いる場合に、生体用材料に人体に埋め込まれる埋設部を有し、このスキャフォールドを当該埋設部の細胞誘導部とするには、チタン線材が配置された状態の生体用材料を焼成する必要がある。このような焼成が必要な場合には、所望の形状としておくことのみならず、焼成による変形などの悪影響を生体用材料に与える恐れもある。
【0008】
そこで本発明は、容易に取り付けることができるスキャフォールド材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、細胞を誘導する細胞誘導部と、外力によって変形され、前記外力が解除されると元の形状に戻るように変形する可変部とを備えたスキャフォールド材料であって、前記外力が解除されると元の形状に戻ろうとする復元力を発生し、前記復元力で前記可変部が再変形することで固定対象物に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明によると、前記可変部が外力により変形し、前記復元力により固定対象物に固定されるので、スキャフォールド材料を固定対象物に取り付けるときに、焼結や溶接等が不要であり、取り付けが容易である。
【0011】
(2)本発明の前記可変部と前記細胞誘導部との少なくとも一方が前記復元力で固定対象物を押圧する場合、固定対象物の取り付けがさらに容易である。
【0012】
(3)本発明の前記可変部が前記細胞誘導部の一部又は全部を兼ねる場合、別の部材として製造する場合に比べて製造工程を減らすことができ、製造が容易である。
【0013】
(4)本発明の外観形状がリング状である場合、形状が簡単であり製造が容易である。
【0014】
(5)本発明の前記可変部がコイルスプリングである場合、形状が簡単で製造が容易である。
【0015】
(6)本発明の前記コイルスプリングのらせん内部に細胞を誘導する材料が配置されている場合、製造が容易である。
【0016】
(7)本発明が人体に埋め込まれる埋込部を有し、請求項1から請求項6のいずれかに記載のスキャフォールド材料を用いた生体用材料であって、前記埋込部は、前記復元力によって前記スキャフォールド材料が固定される取付部を備えている場合、スキャフォールド材料を生体用材料に容易に取り付けることができる。
【0017】
(8)本発明の前記取付部が前記スキャフォールド材料が外力により変形されたときだけ通過可能な抜止部を備えている場合、前記スキャフォールド材料を生体用材料に容易に取り付けることができるとともに、前記スキャフォールド材料が脱落するのを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかるスキャフォールド材料が用いられた人工歯根についての正面図である。
【図2】本発明のスキャフォールド材料の一例である、図1に示す人工歯根に取り付けられるスキャフォールド材料の平面図。
【図3】図2に示すスキャフォールド材料をIII-III線で切断した断面図
【図4】(A)図2のスキャフォールド材料の平面図である。(B)図2のスキャフォールド材料を変形した状態の平面図である。(C)図2のスキャフォールド材料を図1に示す人工歯根の第2抜止部を通過させているときの平面図である。(D)図2のスキャフォールド材料が取り付けられた人工歯根の断面図である。
【図5】(A)本発明のスキャフォールド材料の他の例の断面図である。(B)本発明のスキャフォールド材料の更に他の例の断面図である。
【図6】本発明の更に他のスキャフォールド材料の平面図である
【図7】(A)本発明にかかるスキャフォールド材料の他の例の平面図である。(B)図7(A)のスキャフォールド材料を変形した状態平面図である。
【図8】蛇腹形状のスキャフォールド材料の他の例の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる生体用材料の一例である人工歯根の正面図である。なお、図1に示す人工歯根1では、口腔内に突出する義歯部Itの一部を示している。
【0020】
人工歯根1は、欠落した歯の代わりである歯冠Itを顎骨に固定する固定具であり、体液に対する高い耐食性を有し、また、生体に対する毒性が極めて低いことからチタン、またはチタン合金で形成されることが好ましい。
【0021】
図1に示すように、人工歯根1は、人体(顎骨及び歯肉内)に埋め込まれる埋込部11と、歯冠Itを保持する保持部12と、後述するスキャフォールド材料2が取り付けられる取付部13とを備えている。なお、図1に示すように、取付部13は埋込部11の一部に形成されている。
【0022】
埋込部11は円柱状の部材の表面に雄ねじ111が形成されており、一方の端部(図中下端)が細く形成されている。また、埋込部11の他方の端部(図中上端)に、スキャフォールド材料2が取り付けられるための取付部13が形成されている。
【0023】
保持部12は、埋込部11の他方の端部側に形成されている。なお、保持部12は取付部13の後述する第2抜止部132と一体に形成されており、埋込部11の中心軸と同軸の凹穴121を備えている。図1に示すように歯冠Itは突出部It1を備えており、突出部It1を凹穴121に挿入し、さらに、突出部It1と凹穴121とを接着等の従来よく知られた方法で固定している。
【0024】
取付部13は雄ねじ111の端部と近接して配置され、雄ねじ111の外径よりも大きな外径を有するフランジ状の第1抜止部131と、第1抜止部131の雄ねじ11と反対側に、第1抜止部131と間隔を開けて配置され、第1抜止部131と同径の第2抜止部132と、第1抜止部131と第2抜止部132との間のスキャフォールド材料2が係止される係止部133とを備えている。
【0025】
図1に示すように、第1抜止部131及び第2抜止部132の外径は係止部133の外径よりも大きいので、スキャフォールド材料2を係止部133に係止したとき、スキャフォールド材料2が軸方向に移動する(人工歯根1から抜ける)のを抑制することができる。
【0026】
次にスキャフォールド材料2について図面を参照して説明する。図2は、本発明のスキャフォールド材料の一例であって、図1に示す人工歯根に取り付けられるスキャフォールド材料の上面図であり、図3は図2に示すスキャフォールド材料をIII-III線で切断した断面図である。
【0027】
スキャフォールド材料2は、生体内の細胞を誘導し、増殖させるものであるので、生体親和性が高いものが好ましい。また、スキャフォールド材料2は、詳しくは後述するが、材料の特性、または材料の特性と構造との組み合わせの特性により、外力が作用することで変形し、外力が解除されると元に戻ろうとする復元力が作用するものであれば、その材料が特に限定されることはない。かかる材料としては、生体に用いることができ、用いられる用途に応じて適宜公知の材料から選ばれればよく、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス、ポリ乳酸、フッ素樹脂に加え、ウレタン材料、シリコン、コラーゲン等を挙げることができる。特に、スキャフォールド材料が金属材料を用いたものであることが、前もって形状が形成されていても、生体または生体用材料への取付が容易であるので、その効果が大きい。なお、復元力とは、外力に対して反発する力によって、元の形状に戻ろうとする力であり、例えば弾性力を挙げることができる。以下の説明では、復元力は弾性力として説明するが、それに限定されるものではない。例えば、小さな温度変化で元の形状に戻る形状記憶合金等で生体親和性の高いものがあれば利用することも可能である。
【0028】
図2、図3に示すように、スキャフォールド材料2は、コイルバネ状の可変部21を備えている。さらに、スキャフォールド材料2は可変部21の両端を接合し、リング状の外径を有している。コイルバネ状の可変部21は、ピッチが狭くなっており、取付部13に増殖可能な細胞が接触するようにスキャフォールド材料2が配されていると、細胞誘導部22に生体内の細胞を誘導し、歯肉などの増殖させることができる。すなわち、図2、図3に示すスキャフォールド材料2では、可変部21が細胞誘導部22を兼ねている。なお、スキャフォールド材料2では、コイルの外面のみならず内側面においても細胞が誘導されており、コイル全体が可変部21であり、また細胞誘導部22としても作用する。
【0029】
ここで、スキャフォールド材料2を人工歯根1に取り付ける手順について説明する。図4はスキャフォールド材料を人工歯根に取り付ける手順を示す概略図である。図4(A)はスキャフォールド材料の平面図であり、図4(B)はスキャフォールド材料を拡張させて変形した状態の平面図であり、図4(C)はスキャフォールド材料を第2抜止部132を通過させているときの平面図であり、図4(D)はスキャフォールド材料が取り付けられた人工歯根の横断面図である。なお、図示している通り、変形前のスキャフォールド材料の内径をr1、拡張時のスキャフォールド材料の内径をr2、人工歯根1の第2抜止部132の外径をR1及び係止部133の外径をR2とする。
【0030】
図4(A)の状態のスキャフォールド材料2は内径r1であり、R1>r1であることから、このままでは第2抜止部132を通過することができず、係止部133に取り付けることができない。そこで図4(B)に示すように、スキャフォールド材料2に外向きの力を作用させる。このように力を作用させることで、弾性を有するコイル状に形成されている可変部21が拡径する弾性変形をする。スキャフォールド材料2は、コイルバネをリング状に形成されているものであるので、外向きの力が作用すると、コイルが伸長する。これにより、スキャフォールド材料2は内径r2(>r1)に拡開される。
【0031】
可変部21はコイルスプリングで構成されているので、外力が大きければ変形量も大きくなる。スキャフォールド材料2では、第2抜止部132を通過できればよいので、スキャフォールド材料2に作用させる力は、内径r2が第2抜止部132の外径R1よりも大きくなる程度の力でよい。内径r2が第2抜止部132の外径よりも大きくなるようにスキャフォールド材料2を拡開した後、スキャフォールド材料2を第2抜止部132の外側を通過させる(図4(C)参照)。
【0032】
スキャフォールド材料2が第2抜止部132を通過し、人工歯根1の軸方向に係止部133と重なったとき、スキャフォールド材料2に作用させている外力が解除される。これにより、コイルバネである可変部21は変形によって蓄積していた弾性エネルギが開放され、可変部21は元の形状に戻るような復元力が発生することとなる。これにより、拡開されていたスキャフォールド材料2は、内径r2からr1に戻るように変形し、係止部133と係合して、人工歯根1に固定される(図4(D))。
【0033】
図4(D)に示す人工歯根1では、係止部133の外径R2がスキャフォールド材料2の元の形状の内径r1よりも大きく、スキャフォールド材料2は、元の形状に戻る前に、係止部133と接触する。これにより、スキャフォールド材料2は弾性力(復元力)によって人工歯根1の係止部133を内側方向に押圧して、スキャフォールド材料2は固定対象物である人工歯根1の取付部13に固定されることとなる。
【0034】
なお、係止部133の外径R2が、スキャフォールド材料2の内径r1と同じ又は内径r1よりも小さい場合もある。この場合について、説明すると、スキャフォールド材料2は第2抜止部132を通過したときに、弾性力(復元力)によって元の形状に戻ろうと変形する。これにより、スキャフォールド材料2の内径は、第2抜止部132の外径R1よりも小さくなり、外部からの力が作用したときを除き、第2抜止部132を超えて移動するのを抑制することができる。このことから、スキャフォールド材料2が係止部133を締め付けなくても、スキャフォールド材料2は取付部13に抜け止めされた状態で固定される。
【0035】
また、スキャフォールド材料2は素材や形状によって、復元力で元の形状に完全には戻らない場合もある。すなわち、復元力が作用する範囲で、スキャフォールド材料2が元の形状に戻る途中で変形が終了してしまうことがある。変形が終了する場合も考えて、スキャフォールド材料2を拡開したときの内径r2は、第2抜止部132を通過できる程度に押さえておくことが好ましい。このように、拡開の大きさを決定することで、スキャフォールド材料2の元に戻ろうとする変形が途中で止まっても、スキャフォールド材料2の内径は第2抜止部132の外径R1よりも小さくなるので、第2抜止部132を通過して抜けるのを抑制することが可能であり、取付部13にしっかり取り付けられる。
【0036】
なお、係止部133の外径R2がスキャフォールド材料2の変形前の内径r1よりも大きい場合、スキャフォールド材料2が元の形状に戻らなくても、スキャフォールド材料2が係止部133を締め付けることもある。この場合もスキャフォールド材料2はしっかり取り付けられる。
【0037】
このように、スキャフォールド材料2は、形状が簡単であり製造が簡単である。また、生体用材料である人工歯根1に変形させて取り付けるので、焼成や溶接等の工程が不要である。このことから、スキャフォールド材料2や人工歯根1は熱によって変形したり、脆くなるなどの劣化を抑制することができ、また、熱に弱い材料を採用することもできる。
【0038】
本発明にかかるスキャフォールド材料の他の例について図面を参照して説明する。図5(A)、(B)はスキャフォールド材料の他の例の断面図である。図5(A)に示す、スキャフォールド材料2Aは、コイル状の可変部21aの螺旋内部に小径のコイル23が挿入されている。コイル23は、スキャフォールド材料2Aの細胞誘導部22aの内腔に細胞をさらに誘導するための材料である。つまり、コイル23はスキャフォールド材料2Aの単位体積当たりの断面積を大きくし、螺旋の内部に細胞を誘導することができる。
【0039】
なお、図5(A)に示すスキャフォールド材料2Aでは、可変部21aの螺旋内部に配置するコイル23は1個であるが、2個以上、配置されているものであってもよい。また、このコイル23は可変部21aと同様に変形可能な材料である。
【0040】
また、図5(B)に示すように、スキャフォールド材料2Bは、スキャフォールド材料2Bの細胞誘導部22bの細胞の誘導を補助する誘導補助材料24が配置されることもできる。このように、誘導補助材料24が配置されていることで、細胞がスキャフォールド材料に誘導される量を増やし、人工歯根と生体組織との定着を向上することができる。
【0041】
なお、誘導補助材料24として単位体積当たりの断面積が大きく、スキャフォールド材料2Bの変形に合わせて変形可能な、例えば、不織布や織物を採用することができる。また、スキャフォールド材料2Bの変形に対応するため、束ねた線材を、一部が欠落した環状(例えば、C形状)に形成したものを挙げることができる。
【0042】
本発明にかかるスキャフォールド材料のさらに他の例について図面を参照して説明する。図6は本発明にかかるスキャフォールド材料の平面図である。図6に示すスキャフォールド材料2Cは、周方向に等間隔に配置された4個の可変部21cと、隣り合う可変部321cの間に配置された細胞誘導部22cとを備えている。
【0043】
細胞誘導部22cは、誘導補助材料24と同様に、不織布や織物、束ねた線材等を用いることが可能である。このように、スキャフォールド材料2Cの可変部21cの一部を細胞誘導部22cとすることで、生体用材料への固定がさらに容易となる。なお、細胞誘導部22cの少なくとも一つを剛性体として形成し、スキャフォールド材料2Cの拡開するときに力を作用するための剛性部として形成してもよい。このように、剛性部を備えることで、スキャフォールド材料2Cの取り扱いが容易になる。
【0044】
本発明にかかるスキャフォールド材料の他の例について図面を参照して説明する。図7(A)、(B)は本発明にかかるスキャフォールド材料の他の例の平面図である。スキャフォールド材料3は、蛇腹形状を有しリング状に形成された可変部31を備えている。なお、可変部31は細胞誘導部32も兼ねている。
【0045】
図7(A)に示すように、蛇腹形状の可変部31が縮んでいる状態のとき、人工歯根1の第2抜止部132を通過できない。そこで、図7(B)に示すように、外側に向かって力を作用することで、蛇腹形状の可変部31が広がり、スキャフォールド材料3が拡開する。この状態で、第2抜止部132を通過させ、スキャフォールド材料3が係止部133と軸方向に重なったときに力を解除することで、スキャフォールド材料3が、係止部133を押圧して係止され、生体用材料に固定される。図7に示すスキャフォールド材料3では、形状が簡単であるとともに、人工歯根1に取り付けるのが容易である。
【0046】
また、本発明における蛇腹形状の実施形態については、図8に示すように、略リング状の中心軸方向に向けて蛇腹の折り返しが設けられた形状としてもよい。蛇腹形状であるスキャフォールド材料4は、線材41により形成され、蛇腹の折り返し部42が、2つの平行な想像円C1、C2に交互に接するように設けられて、概略形状として筒状となっている。スキャフォールド材料4は、可変部43の両側における直線部44a、44bの成す角が大小変化することにより、概略筒状の径が拡径・縮径するように変形することができる。この変形により、スキャフォールド材料4は、固定対象物に固定することができる。スキャフォールド材料4は、直線部44a、44bにより形成される間隙が細胞誘導可能な間隙となることで、細胞誘導部を有することができるが、別体で細胞誘導部を備えてもよい。また、スキャフォールド材料4は、中心軸方向に複数重ねてもよく、径方向に複数重ねてもよい。このように本発明のスキャフォールド材料を複数重ねることにより、固定対象物に固定されたスキャフォールド材料間に細胞誘導可能な間隙を形成することができるので、前記スキャフォールド材料が用いられた生体用材料をより有用とすることができる。
【0047】
本発明のスキャフォールド材料は、上述の図1から図8の実施形態においては、外力により拡張させた後に復元力により収縮させて対象物に固定させているが、このような外力についての復元力に限定されるものではなく、形状を縮小させる外力を施した後に外力を解除して拡張させて、対象物に固定してもよい。このような場合において、例えば、上述の図1から図8の実施形態のスキャフォールド材料を、一旦縮小させて管内に挿入し、該スキャフォールド材料の外力が解除されて、管内の周回り方向の溝内に該スキャフォールド材料の拡張する復元力によって嵌着されて固定されてもよい。
【0048】
本発明のスキャフォールド材料は、生体用材料が上記の人工歯根に用いられる場合に用途が限られるものではなく、ろう孔を介して経管栄養摂取に用いられる医療用チューブの、図1のスキャフォールド材料を外嵌させて固定して、外部の雑菌が体内に入ったりするのを抑制する皮膚端子として用いることもできる。また、本発明は、金属またはセラミックス製の人工骨の外周に外嵌させてもよい。また、本発明のスキャフォールド材料を円板状等の板状として、外力により一旦収縮させたのちに、骨の孔部に挿入し外力を解除して拡張させ、該孔部を塞ぐ補綴として用いることもできる。
本発明のスキャフォールド材料は、上記固定対象物に固定対象物が限定されるものではなく、本発明の機能を発揮できるものであれば特に限定されるものではない。
【0049】
また、本発明のスキャフォールド材料は、形状が特に限定されるものではなく、上述のリング状、円筒状、板状、多角形状、波形状などの三次元形状を用いることができる。また、前記スキャフォールド材料は、細胞誘導可能な材料として、不織布状、網状、コイル状、蛇腹状などの種々の形状を有することができるが、特に、これらのスキャフォールド材料が、細胞が侵入できる間隙を有する可変部が前記スキャフォールド材料の一部又は全部を兼ねることが好ましい。このような可変部としては、コイルバネ状体、伸縮可能な網状体若しくは編組状体、または蛇腹体、波状体、ジグザグ形状体であってもよい。また、これらのスキャフォールド材料は、複数を並列させてもよく、大径のコイル状のスキャフォールド材料の中に小径のスキャフォールド材料を入れたり、編み状のスキャフォールド材料を積層させるなど、重ねて用いても良い。
【0050】
本発明のスキャフォールド材料は、更に細胞誘導材料がコーティングされていてもよい。前記細胞誘導材料がコーティングされることにより、前記スキャフォールド材料に硬組織及び/又は軟組織をより短期間で定着することができるので、前記スキャフォールド材料が用いられる用途における治療をより効率的に行うことができる。前記細胞誘導材材料としては、細胞を誘導することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アパタイト、β−TCP、コラーゲン、ゼラチンおよびその他のグロスファクターから1種以上を用途に応じて適宜用いることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は生体内の細胞と連結するスキャフォールド材料を用い、前記生体組織としっかり連結できる人工歯根、人工骨、補綴、皮膚端子等の生体用材料に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 人工歯根
11 埋込部
111 雄ねじ
12 保持部
121 凹穴
13 取付部
131 第1抜止部
132 第2抜止部
133 係止部
2 スキャフォールド材料
21 可変部
22 細胞誘導部
23 コイル
24 誘導補助材料
3 他の例のスキャフォールド材料
31 可変部
32 細胞誘導部
4 スキャフォールド材料
41 線材
42 折り返し部
43 可変部
44a、44b 直線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を誘導する細胞誘導部と、
外力によって変形され、前記外力が解除されると元の形状に戻るように変形する可変部とを備えたスキャフォールド材料であって、前記外力が解除されると元の形状に戻ろうとする復元力を発生し、前記復元力で前記可変部が再変形することで固定対象物に固定されることを特徴とするスキャフォールド材料。
【請求項2】
前記可変部と前記細胞誘導部との少なくとも一方が前記復元力で固定対象物を押圧する請求項1に記載のスキャフォールド材料。
【請求項3】
前記可変部が前記細胞誘導部の一部又は全部を兼ねる請求項1又は請求項2に記載のスキャフォールド材料。
【請求項4】
リング状に形成された請求項1から請求項3のいずれかに記載のスキャフォールド材料。
【請求項5】
前記可変部がコイルスプリングである請求項1から請求項4のいずれかに記載のスキャフォールド材料。
【請求項6】
前記コイルスプリングのらせん内部に細胞を誘導する材料が配置されている請求項5に記載のスキャフォールド材料。
【請求項7】
人体に埋め込まれる埋込部を有し、請求項1から請求項6のいずれかに記載のスキャフォールド材料を用いた生体用材料であって、
前記埋込部は、前記復元力によって前記スキャフォールド材料が固定される取付部を備えたことを特徴とする生体用材料。
【請求項8】
前記取付部は、前記スキャフォールド材料が外力により変形されたときだけ通過可能な抜止部を備えている請求項7に記載の生体用材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−42948(P2013−42948A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182953(P2011−182953)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】