スクレーパ
【課題】十分な耐圧性を有するとともに、潤滑の不足とダストの混入とに起因した摩耗や破損をも解決でき、これにより十分な耐久性を有するスクレーパを提供する。
【解決手段】 流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ2a又はロッド2bの摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパ15である。内部に金属環13aを加硫接着されるとともにリップ部13bを有する弾性材料からなる環状の第1のスクレーパ13と、第1のスクレーパ13に密着して装着されて摺動面に面接触するリップ部14aを有する樹脂材料からなる環状の第2のスクレーパ14と、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14から離間して配置され摺動面に接触して流体圧及び摺動面液膜シールを行うエッジ部8aを有する環状のパッキン8と、パッキン8を耐圧支持する樹脂材料からなる環状のバックアップリング9とを備えるスクレーパ15である。
【解決手段】 流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ2a又はロッド2bの摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパ15である。内部に金属環13aを加硫接着されるとともにリップ部13bを有する弾性材料からなる環状の第1のスクレーパ13と、第1のスクレーパ13に密着して装着されて摺動面に面接触するリップ部14aを有する樹脂材料からなる環状の第2のスクレーパ14と、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14から離間して配置され摺動面に接触して流体圧及び摺動面液膜シールを行うエッジ部8aを有する環状のパッキン8と、パッキン8を耐圧支持する樹脂材料からなる環状のバックアップリング9とを備えるスクレーパ15である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクレーパに関するものであり、具体的には、第1の相対移動部材と、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材との摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを、十分な耐久性を有して行うことができるスクレーパに関する。本発明は、例えば、流体圧アクチュエータを構成するシリンダ又はロッドの摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うのに好適な、耐圧高機能型のスクレーパに関する。
【背景技術】
【0002】
第1の相対移動部材と、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材との摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリング、例えば、一般的な油圧シリンダや空気圧シリンダといった流体圧アクチュエータのワイパリングには、合成ゴム等の弾性材料製のスクレーパが広く用いられる。弾性材料製のスクレーパは、流体圧アクチュエータのシリンダ又はロッドの摺動面に潤滑液膜が存在する条件下で、大気中のダストや外気の封止機能や防滴機能を発揮する。この弾性材料製のスクレーパは、例えば潤滑性の乏しい水や切削液といったクーラント液のようなダスト混入加圧流体に対するダストワイパリングにも適用される。
【0003】
しかしながら、例えば油空圧シリンダ用の弾性材料製のスクレーパは、本来大気圧条件下で使用されるものであり、加圧流体の圧力の影響を直接受ける条件下での使用は想定されていないために耐久性(寿命)や摺動特性の点で問題がある。
【0004】
図11は、シリンダ2a及びロッド2bからなる流体圧アクチュエータ2に使用されている水・切削液用の低〜中圧(3.5MPa以下)タイプの環状かつ弾性材料製のスクレーパ1の使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。図11に示す例では、スクレーパ1として、一般的な環状かつ弾性材料製の油空圧シリンダ用ダストシール3と、一般的な環状かつ弾性材料製の油空圧シリンダ用パッキン4とが用いられる。なお、符号5は軸受けを示す。
【0005】
一方、図12は、流体圧アクチュエータ2に使用されている水・切削液用の高圧(7〜10MPa以下)タイプの環状かつ弾性材料製のスクレーパ6の使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。図12に示す例では、スクレーパ6として、金属環7aを内部に加硫接着された環状かつ弾性材料製のダスト混入流体用シール7と、高密封タイプの環状のパッキン8と、パッキン8を支持する環状かつ樹脂製のバックアップリング9とが用いられる。なお、符号10はダスト混入流体用シール7を支持するための金属製のスペーサを示し、符号11はダスト混入流体用シール7を固定するための止め輪を示す。
【0006】
しかし、図11に示すスクレーパ1や図12に示すスクレーパ6を用いて上述したダスト混入加圧流体に対するダストワイパリングを行おうとすると、シール3、7が弾性材料製であることに起因した耐圧性の不足や、ダスト混入加圧流体自体の潤滑性の不足、さらには混入したダストによる弾性材料製のシール3、7の摩耗や破損といった様々な要因によって、スクレーパ1、6が使用開始後早期に破損するという耐久性の不足の問題が生じる。
【0007】
例えば、図12に示すスクレーパ6について作動耐久試験を行うと、要求寿命(7〜14MPaの圧力下での繰返し動作回数100〜150万回)に対して、50万回(圧力:10MPa)〜70万回(圧力:7MPa)程度の繰返し回数により破損及び潤滑不良による磨耗に起因した漏れを生じてしまい、使用できなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記作動耐久試験の結果を受けてダスト混入流体用シール7の加圧条件下での耐久性を向上することを目的として、初めに、図12に示すスクレーパ6に弾性材料製のダスト混入流体用シール7を支持してその耐圧性を向上するための樹脂製のバックアップリングを追加することを検討した。
【0009】
図13は、図12に示すスクレーパ6に環状かつ樹脂製のバックアップリング11を追加した環状のスクレーパ12の使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。
このスクレーパ12について同様に作動耐久試験を行ったところ、追加したバックアップリング11によりダスト混入流体用シール7を支持するために圧力によるダスト混入流体用シール7の破損は免れることはできたものの、摺動面の潤滑の不足とダストの混入とによりダスト混入流体用シール7のリップ7bが早期に摩耗して捲れ、捲れた部分が破損し、図12に示すスクレーパ6と略同程度の繰り返し動作回数により漏れを生じた。
【0010】
このように、ダスト混入加圧流体に対するダストワイパリングに適用した場合にも十分な耐久性を有するスクレーパを提供するためには、その耐圧性を向上するだけでは不十分であり、潤滑の不足とダストの混入とに起因したダスト混入流体用シールのリップ部の早期の摩耗や破損をも解決することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
流体圧アクチュエータを構成するシリンダ又はロッドの摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパの耐圧性及び耐久性をともに向上するためには、ダスト混入流体用シールの材質を弾性材料から、潤滑性の乏しい加圧流体の中での摺動特性や混入ダストの掻き取り性能では優れる、例えばPA、POM、PTFEさらにはUHMWPE等の樹脂材料に置き換えることが有効なのでは、とも一見考えられる。しかしながら、樹脂材料では合成ゴム等の弾性材料に比較して柔軟性及び弾性が劣り、ロッドの摺動面に対する密着性や追従性も乏しいため、仮に耐久性を向上することができたとしても、シールの基本性能であるダスト混入加圧流体に対する密封性の低下が避けられない。
【0012】
そこで、本発明者はさらに検討を重ねた結果、シリンダの軸方向に関して、合成ゴム等の弾性材料からなるスクレーパ(第1のスクレーパ)のシリンダ内部側を支持するだけではなく、このスクレーパのリップ部が、ロッドとの間の加圧変形や摺動ストレス等の繰り返し負荷にも耐えられるように、摺動面に面接触するリップ部を有する、例えばPTFE等の樹脂製の第2のスクレーパを追加し、この第2のスクレーパを介してダスト混入加圧流体のワイパリングを行うこととすれば、高圧が負荷される条件下においても十分な弾性とロッドの動きに対する良好な密着追随性とを維持して所望の耐圧性及び混入ダスト排除機能(密封機能)を発揮でき、これにより、潤滑の不足とダストの混入とに起因したリップ部の早期の摩耗や破損をも解決でき、十分な耐久性を有するスクレーパを提供できることを知見して、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、図1に例示するように、第1の相対移動部材2a(図示例は流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ)と、この第1の相対移動部材2aの内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材2aの軸方向(図1における上下方向)へ移動する第2の相対移動部材2b(図示例は流体圧アクチュエータ2を構成するロッド)との摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパ15であって、リップ部13bを有する弾性材料からなる環状の第1のスクレーパ13と、第1の相対移動部材2aの軸方向に関して第1のスクレーパ13よりも第1の相対移動部材2aの内部側に装着され、第1のスクレーパ13を支持するとともに摺動面に面接触するリップ部14aを有する樹脂材料からなる環状の第2のスクレーパ14とを備えることを特徴とするスクレーパ15である。
【0014】
この本発明に係るスクレーパ15は、第1の相対運動部材2aの軸方向に関して第2のスクレーパ14よりも第1の相対運動部材2aの内部側に離間して配置され、摺動面に接触することにより第2のスクレーパ14を通過した加圧流体の液膜をシールするエッジ部8aを有する環状のパッキン8と、パッキン8を支持するとともにパッキン8の耐圧性を向上させる樹脂材料からなる環状のバックアップリング9とを備えることが望ましい。
【0015】
これらの本発明に係るスクレーパ15は、第2のスクレーパ14のリップ部14aが、第1のスクレーパ13のリップ部13bにより摺動面へ向けて付勢されることによって、摺動面に面接触するものである。
【0016】
これらの本発明に係るスクレーパ15では、図1〜図4又は図8を参照しながら後述する実施の形態1又は3により示すように、第1のスクレーパ13のリップ部13bが摺動面に接触するように構成してもよいし、あるいは、図5〜図7又は図8を参照しながら後述する実施の形態2又は3により示すように、第1のスクレーパ13−1のリップ部13−1bが摺動面に接触しないように構成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、第1の相対移動部材と、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材との摺動面、例えば図1に示す、流体圧アクチュエータを構成するシリンダ又はロッドの摺動面に存在する、例えば、潤滑性の乏しい水や切削液といったクーラント液のようなダスト混入加圧流体のワイパリングを行う際に、十分な耐圧性を有するとともに、潤滑の不足とダストの混入とに起因した摩耗や破損をも解決でき、これにより十分な耐久性を有するスクレーパを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明に係るスクレーパを実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の各実施の形態の説明では、本発明における第1の相対移動部材が流体圧アクチュエータを構成するシリンダであるとともに第2の相対移動部材がこの流体圧アクチュエータを構成するロッドである形態を例にとる。
【0019】
本実施の形態1は、ダスト混入加圧流体の潤滑性が比較的良好な場合であって密封性を重視したスクレーパに関する一例である。
図1は、実施の形態1のスクレーパ15の構成を示す縦断面図である。図2は、図1における第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14を抽出して示す説明図である。図3は、第1のスクレーパ13の各部の寸法を示す説明である。さらに、図4は、第2のスクレーパ14の各部の寸法を示す説明図である。
【0020】
図1を参照しながら上述したように、実施の形態1のスクレーパ15は、流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ2a又はロッド2bの摺動面のワイパリングを行うものであり、略述すると、良好な密封性能を有する弾性材料からなる第1のスクレーパ13と、さらに樹脂材料からなる第2のスクレーパ14とを組み合わせて備え、好適条件としてさらに、パッキン8と、バックアップリング9とを備えるものである。
【0021】
実施の形態1における第2のスクレーパ14は、高圧が負荷された場合においても十分な弾性と、ロッド2bの動きに対する良好な密着追随性とを発揮して所望の耐圧性及び混入ダスト排除機能(密封機能)を有するため、潤滑の不足とダストの混入とに起因した早期の摩耗及び破損をも解決でき、十分な耐久性を有する。このため、実施の形態1のスクレーパ15の構成要素である第1のスクレーパ13と、第2のスクレーパ14と、パッキン8と、バックアップリング9とを順次分説する。
【0022】
[第1のスクレーパ13、第2のスクレーパ14]
図1〜3に示すように、第1のスクレーパ13は、流体圧アクチュエータ2のシリンダ2aの内周面に、止め輪11を介して装着される環状かつ弾性材料からなるシール部材であり、後述する第2のスクレーパ14のリップ部14a及び本体部分14bに密着して密封し、ロッド2bとの空隙を埋めることにより加圧力の変化や摺動摩擦等に伴う変形を抑制して耐圧性を高め、また、リップ部14aに弾性とロッド2bの動きに対する良好な追随性とを付与するとともに、本例では、流体圧アクチュエータ2のシリンダ2a及びロッド2bの間に存在するダスト混入加圧流体のシールをも行うものである。
【0023】
第1のスクレーパ13は弾性材料からなるものであり、具体的には、後述する第2のスクレーパ14のリップ部14a及び本体部分14bに密着して密封し、ロッド部2bとの空隙を埋めることにより加圧力の変化や摺動摩擦等に伴う変形を抑制して耐圧性を高め、また、リップ部14aに弾性とロッド2bの動きに対する良好な追随性とを付与することが可能な弾性を有するとともにダスト混入加圧流体に対して化学的な適合性を有する弾性材料により構成される。このような弾性材料として、各種のゴム材料、例えばNBR、FKM、HNBRさらにはEPDM等が例示される。
【0024】
第1のスクレーパ13の内部には、L字型の断面形状を有する金属環13aが加硫接着される。これにより、第1のスクレーパ13本体の剛性が維持される。なお、金属環13aは、加硫接着以外の手段、例えば圧入接着によって第1のスクレーパ13の内部に配置してもよい。
【0025】
また、第1のスクレーパ13は、先端にシャープエッジが形成されたリップ部13bを有する。このリップ部13bは、後述する第2のスクレーパ14のリップ部14a及び本体部分14bに密着して密封し、ロッド2bとの空隙を埋めることにより加圧力の変化や摺動摩擦等に伴う変形を抑制して耐圧性を高め、また、リップ部14aに弾性とロッド2bの動きに対する良好な追随性を付与するとともに、本例では自らのリップ部13bの先端に設定した締め代δ(図2、3を参照しながら後述する)により、先端のシャープエッジがロッド2bの外周面に接触するためのものである。
【0026】
図2を参照しながら具体的に説明すると、第1のスクレーパ13は、シリンダ2aの所定の装着位置に装着した際に、ロッド2bの外周面に対して僅かな締め代δを有するとともに、後述する第2のスクレーパ14と密着可能な外形を有する。これにより、第1のスクレーパ13は耐圧性を有するとともに、締め代δを有することにより得られる弾性力を利用して、第2のスクレーパ14のリップ部14aをロッド2bの外周面へ向けて付勢する。これにより、弾性材料製の第1のスクレーパ13単体では到底得ることができない耐圧性と潤滑性の乏しいダスト混入圧力流体中での摺動特性や、ダスト混入流体に含まれるダストの掻き取り性能を十分に得ることができる。
【0027】
本例では、さらに、リップ部13bの先端に形成されたシャープエッジがロッド2bの外周面に当接するように構成されており、上述したようにシール部14aのシール面14cがロッド2bの外周面に当接することと併せて、シリンダ2a及びロッド2bの間に存在するダスト混入加圧流体のシールを行う。これにより、さらに高い密封効果を得ることが可能である。
【0028】
一方、図1、2、4に示すように、第2のスクレーパ14は、シリンダ2aの軸方向に関して第1のスクレーパ13よりもシリンダ2aの内部側に装着され、第1のスクレーパ13を支持するとともに摺動面に面接触するリップ部14aを有する樹脂材料からなる環状のスクレーパである。
【0029】
第2のスクレーパ14に用いる樹脂材料としては、PTFE、PA、POMさらにはUHMWPE等)が例示される。PTFEを用いた場合の充填材としてはカーボン繊維、ガラス繊維さらには特殊耐熱樹脂等が例示される。PTFEを用いれば、潤滑性が乏しいダスト混入加圧流体に対しても極めて良好な摺動特性が得られる。
【0030】
上述したように、第2のスクレーパ14のリップ部14aに設けられたシール面14cが、摺動面をなすロッド2bの外周面に当接して、第1のスクレーパ13とロッド2bとの間の空隙を埋めることにより、第1のスクレーパ13の耐圧性や摺動特性を向上させるとともに、流体圧アクチュエータ2のシリンダ2a及びロッド2bの間に存在するダスト混入加圧流体のシールを行う。
【0031】
ここで、図1〜4を参照しながら、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14を関連付けてさらに詳細に説明する。
図1〜4に示す実施の形態1のスクレーパ15は、弾性材料からなる第1のスクレーパ13と、樹脂材料からなる第2のスクレーパ14とを組み合わせたものであるため、使用されるダスト混入加圧流体の種類、ダストの条件、圧力条件、作動条件さらには設定される摺動抵抗の仕様等に応じて、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14それぞれの材質や形状を適宜設定することにより、スクレーパ15のワイパリング性、摺動特性、耐圧性さらには耐久性を自在に調整することができる。
【0032】
図3及び図4において、この本実施の形態のスクレーパ15では、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14相互の密着を十分に確保するとともに、第2のスクレーパ14のリップ部14aの形状と、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14の締め代δの設定及び調整が重要であるため、これらの点を説明する。
【0033】
まず、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14相互の密着を十分に確保するためには、図3に示す第1のスクレーパ13の第2のスクレーパ14との密着部(長さT1、N、H2、H3、半径R1、R2)、及び、図4に示す第2のスクレーパ14の第1のスクレーパ13との密着部(距離t1、n、h2、h3、半径r1、r2)それぞれの形状、寸法さらには位置をシンクロさせること、すなわち図2において製品公差範囲での隙間l1は許容するもののこれを最小とすることが重要である。
【0034】
これにより、図2において破線で示すように、加圧時における第1のスクレーパ13の変形歪みや摺動に伴うストレスを最小とすることができ、スクレーパ13の耐久性を著しく向上することができる。
【0035】
また、第2のスクレーパ14の本体14bのロッド軸方向距離h0を、第1のスクレーパ13の第2のスクレーパ14との密着部のロッド軸方向距離H1よりも3〜5%程度大きめに設定することにより、第2のスクレーパ14の本体14bを、第1のスクレーパ13の密着部に圧入して装着した際に第1のスクレーパ13の座面13cに形成される隙間の距離X(図1、2参照)を確保でき、これにより、第1のスクレーパ13をシリンダ2aの内周面に圧入装着する際の撓みと、相互の製品公差とを吸収することができるとともに、圧力負荷を第2のスクレーパ14の本体14bにより支持することができ、第1のスクレーパ13と第2のスクレーパ14との密着性を十分に維持でき、第2のスクレーパ14による第1のスクレーパ13の支持機能(耐圧性の獲得)を確実なものとすることができる。
【0036】
また、第1のスクレーパ13のリップ部13bは、弾性材料からなるとともに上述した締め代δを有することにより、第2のスクレーパ14のリップ部14aをロッド2bの外周面へ押し付けることにより密着させてこの部分の空隙を埋めることにより加圧力の変化や摺動摩擦等に伴う変形を抑制し、これにより、第1のスクレーパ13bのスクレーパ密封機能を向上して安定させることができる。さらに、第2のスクレーパ14は樹脂材料からなることから、例えば繊維屑等の付着性異物の掻き取り機能と、潤滑状況の悪化の影響を受け難い摺動特性とが得られる。
【0037】
また、実施の形態1の第1のスクレーパ13のリップ部13bの高さ(図1、2における距離H4)を変更することにより、第1のスクレーパ13により発揮される密封機能及び摩擦特性をいずれも変化させることができる。本実施の形態1は、上述したように混入ダストや流体の潤滑性が比較的良好な場合における高圧流体に対する密封性を重視した例であるため、図2に示すように、第1のスクレーパ13のリップ部13bの高さH4を大きく設定することにより、リップ部13bをロッド2bの外周面に直接当接させることにより密封機能の確保を優先する。これにより、樹脂材料からなる第2のスクレーパ14が有する摺動特性を最大限に発揮しながら高圧に対応できるとともに、混入ダストおよび付着性ダストや金属等の硬質系ダストに対する掻き取り機能を強化することができる。
【0038】
このため、第1のスクレーパ13のリップ部13bの高さH4は、リップ部13bの締め代δを大きく損なわない高さとすることが望ましい。具体的には、リップ部13bの高さH4は、図12に示す公知のダスト混入加圧流体用シールのリップ部の高さH5の(1/2)以上(1/1)以下とし、さらに、第2のスクレーパ14のリップ部14aの先端部の外周側形状の丸み付けr3や、先端部厚さt2を薄く設定することにより、良好な密着状態を得ることができる。また、これらの寸法を適宜設定することによって、第1のスクレーパ13のリップ部13bの締め代δを変化させて、密封性や摩擦抵抗を所望の程度に微調整することもできる。
【0039】
なお、実施の形態1のスクレーパ15では、図4に示すように、第2のスクレーパ14の本体14bの摺動面側の形状を、傾斜角度θをなす緩やかなテーパ面としている。これにより、仮に微少異物が侵入した場合にも、ロッド2bの動作を利用してこのテーパ面により付着物及び摺動面油膜(液膜)を外部へ排出することができる。
【0040】
このように、本実施の形態のスクレーパ15は、弾性材料からなる第1のスクレーパ13及び、樹脂材料からなる第2のスクレーパ14をともに備えるため、高圧が掛かった場合の変形を抑制できるとともに良好な摺動特性を維持して十分な耐圧性及び混入ダスト排除機能(密封機能)を有し、これにより、潤滑の不足とダストの混入とに起因した早期の摩耗及び破損をも解決でき、十分な耐久性を有する。
【0041】
[パッキン8]
上述したように、本実施の形態1のスクレーパ15は、上述した第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14をともに備えることにより、ダスト混入加圧流体に含まれるダストの内部への侵入を長期間にわたって防止することができるものであり、これだけでも、流体圧アクチュエータを構成するシリンダ又はロッドの摺動面に存在する、例えばクーラント液のようなダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパとして要求される機能を十分に備えるものである。
【0042】
そして、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14によりダストが除去された加圧流体の液膜がシリンダ2aの軸方向の内部へ侵入することをも防止したい場合には、以下に説明するパッキン8及びバックアップリング9を、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14とともに用いることが、望ましい。
【0043】
図1におけるパッキン8は、流体圧アクチュエータ2のシリンダ2aの内周面に装着される環状のシール部材である。パッキン8は、シリンダ2aの軸方向に関して第2のスクレーパ14よりもシリンダ2aの軸方向(図1における上下方向)の内部側に離間して、シリンダ2aの内周面に配置及び装着される。
【0044】
パッキン8の先端側のエッジ8aが摺動面をなすロッド2bの外周面に当接することにより、第2のスクレーパ14によってダストを除去されたものの第2のスクレーパ14を通過してシリンダ2a及びロッド2bの摺動面に存在する加圧流体の液膜をシールする。
【0045】
また、エッジ部8aは、例えば0〜21MPaといった圧力変化に伴うパスカル力を付勢され膨出変形してシリンダ2a及びロッド2bとの間の隙間を確実に塞ぐ。
[バックアップリング9]
図1におけるバックアップリング9は、シリンダ2aの内周面に装着される環状かつ樹脂材料からなる部材である。バックアップリング9は、パッキン8の端面8bに隣接してパッキン8を支持する。バックアップリング9がパッキン8の端面8bに当接することにより、パッキン8の耐圧性を向上させる。
【0046】
また、バックアップリング9は、シリンダ2a及びロッド2bの摺動面に面接触する。
このように、実施の形態1のスクレーパ15によれば、流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ2a又はロッド2bの摺動面に存在する、例えば、潤滑性の乏しい水や切削液といったクーラント液のようなダスト混入加圧流体に対しても、十分な耐圧性が発揮されるとともに、潤滑の不足とダストの混入とに起因した早期の摩耗及び破損を解決でき、これにより十分な耐久性、具体的には、要求寿命(7〜14MPaの圧力下での繰返し動作回数100〜150万回)を十分に満足した耐久性が確保される。
【0047】
したがって、本実施の形態1により、第1の相対移動部材の一例である流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ2aと、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材の一例である流体圧アクチュエータ2を構成するロッド2bとの摺動面に存在する、例えば、潤滑性の乏しい水や切削液といったクーラント液のようなダスト混入加圧流体のワイパリングを行う際に、十分な耐圧性を有するとともに、潤滑の不足とダストの混入とに起因した摩耗や破損をも解決でき、これにより十分な耐久性を有するスクレーパ15が提供される。
【0048】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2を説明する。なお、以降の各実施の形態の説明では、上述した実施の形態1と相違する部分を主に説明し、共通する部分については同一の図中符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0049】
図5は、実施の形態2のスクレーパ15−1の構成の一例の一部を示す縦断面図である。また、図6は、図5における第1のスクレーパ13−1及び第2のスクレーパ14−1を抽出して示す説明図である。さらに、図7は、第2のスクレーパ14−1の各部の寸法を示す説明図である。
【0050】
図5〜図7に示すように、実施の形態2のスクレーパ15−1は、混入ダストや流体の潤滑性が劣悪なために防塵機能を優先する場合に用いるのに好適である。
すなわち、このスクレーパ15−1は、図1に示すスクレーパ15よりも、第2のスクレーパ14−1のリップ部14−1aの先端部高さを高くし、かつリップ部14−1aの先端部も厚く頑丈にした形状である。これにより、第1のスクレーパ13−1のリップ部13−1bは、第2のスクレーパ14−1のリップ部14−1aに密着してこの部分の密封を行うとともに第2のスクレーパ14−1のリップ部14−1aをロッド2bの外周面に向けて付勢することにより当接させるものの、第1のスクレーパ13−1のリップ部13−1bはロッド2bの外周面には当接させない。これにより、第2のスクレーパ14−1の混入ダストの掻き取り性及び摺動特性を優先させる。
【0051】
第1のスクレーパ14−1及び第2のスクレーパ14−1を互いに密着させるための手法は、上述した実施の形態1と同じであるものの、混入ダストや流体の潤滑性が劣悪な状況下にあっても十分なスクレーパ機能を奏するために、図6に示すように、第2のスクレーパ14−1のリップ部14−1aに僅かな締め代δを設定し、かつリップ部14−1aの高さを、実施の形態1のリップ部14aの高さよりも高く設定し、かつ、リップ部14−1aの先端(図7における14−1d部)をシャープエッジにしたものである。
【0052】
本例における第2のスクレーパ14−1の締め代δは、第2のスクレーパ14−1が樹脂材料からなるためにロッド2bの外周面への装着性を考慮して、製品の加工公差範囲内で、かつ装着時にロッド2bとの間に隙間を生じない程度の僅かな設定とする。ロッド2bに対する密着及び追随性に関しては、第1のスクレーパ13−1による弾力や締め代及び加圧流体によるパスカル力(第1のスクレーパ13−1のリップ部13−1bの高さ相当分の面積×圧力)によって付勢される。
【0053】
実施の形態2のスクレーパ15−1の第2のスクレーパ14−1がこのような形状を有するため、リップ部14−1aの先端が主体的にロッド2bの外周面に接触し、防塵機能が高められる。これにより、混入ダストに含まれる金属粉、固形物、付着性ダストさらには粘着性ダスト等によるゴム攻撃性が高い場合に固形物に対する掻き取り機能を強化することができる。
【0054】
なお、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、第2のスクレーパ14−1の本体14−1bの摺動面側の形状を、傾斜角度θをなす緩やかなテーパ面としている。これにより、仮に微少異物が侵入した場合にも、ロッド2bの動作を利用してこのテーパ面により付着物及び摺動面油膜(液膜)を外部へ排出することができる。
【0055】
(実施の形態3)
上述した実施の形態1、2のスクレーパ15、15−1では、いずれも、第2のスクレーパ14、14−1の本体14b、14−1bの摺動面側の形状を、傾斜角度θの緩やかなテーパ面として、混入した微少異物及び摺動面油膜(液膜)を、ロッド2bの働きを利用して摺動接触面の角度差により外部へ排出するように構成した。
【0056】
しかし、本例では、第2のスクレーパ14−2の本体14−2bの摺動面の形状を、傾斜角度θの緩やかなテーパ面ではなく、内部側方向へ指向するエッジ形状とする。
図8は、実施の形態1のスクレーパ15の第2のスクレーパ14の本体部14bの摺動面側の形状を、内部側方向へ指向するエッジ形状とした本体14−2bを有する第2のスクレーパ14−2を備えるスクレーパ15−2を部分的に示す縦断面図である。
【0057】
また、図9は、実施の形態2のスクレーパ15−1の第2のスクレーパ14−1の本体14−1bの摺動面側の形状を、内部側方向へ指向するエッジ形状とした本体14−3bを有する第2のスクレーパ14−3を備えるスクレーパ15−3を部分的に示す縦断面図である。
【0058】
図8に示す第2のスクレーパ14−2、図9に示す第2のスクレーパ14−3ともに、潤滑剤等の摺動面油膜をその内部側に掻き溜める機能が高められており、これにより、内部に充填する潤滑剤やグリース等を第2のスクレーパ14−2、14−3が外部側へ掻き出すことを抑制し、潤滑機能を長期間にわたって維持することにより、耐久性を向上するものである。
【0059】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4のスクレーパ15−4の構成例を示す説明図である。
本例は、図9に示すスクレーパ15−3の変形例であり、シリンダ2aに環状に溝2cを形成するとともに、第1のスクレーパ13−2を、金属環13aに加硫接着させたゴムを被覆することにより、この溝2cに嵌まり合うゴム被覆層圧入部13−2dを有するように、構成する。
【0060】
ゴム被覆層圧入部13−2dを有するゴム被覆層は、第1のスクレーパ13−2dをシリンダ2aの内部に圧入及び挿設する際に、自らが有する弾性によって撓んで弾性変形する。
【0061】
本実施の形態では、第1のスクレーパ13−2のゴム被覆層が有する弾性と撓み変形とを利用して、第1のスクレーパ13−2に形成されたゴム被覆層圧入部13−2dをこの溝2cに嵌め込むことにより、第1のスクレーパ13−2をシリンダ2aに強く嵌着することにより、抜け出し防止用の止め輪11を不要とした構成である。
【0062】
この第1のスクレーパ13−2に形成されたゴム被覆層圧入部13−2dがシリンダ2aに形成された溝2cに嵌め込まれることにより、高い密封性、すなわち外部からのダスト混入圧力流体の浸入防止機能と、抜け出し防止機能とを、簡素な構成により実現することができる。
【0063】
このため、この第1のスクレーパ13−2は、防塵機能を十分に有するとともに、止め輪等の補助具なしで装着することができる。すなわち、シリンダ2aの装着部に圧入して嵌め込まれることにより、第2のスクレーパ14−3と確実に密着合体して固定され、これにより、所定の締め代と、第2のスクレーパ14−3のリップ部14−3aをロッド2bの外周面へ付勢する弾性力を発揮することができる。
【0064】
弾性材料製の第1のスクレーパ13−1単体でもある程度の密封機能を有するものの、樹脂材料からなる第2のスクレーパ14−2と組み合わせて用いることにより、十分な耐圧性や摺動特性を確保することができるとともに、潤滑性の乏しいダスト混入加圧流体が作用する条件下においても、耐久性及び信頼性、具体的には要求寿命(7〜14MPa、100〜150万回)を十分に満足する150万回以上の耐久性が得られた。
【0065】
(変形例)
上述した実施の形態1〜4の説明では、本発明における第1の相対移動部材が流体圧アクチュエータを構成するシリンダであるとともに第2の相対移動部材が流体圧アクチュエータを構成するロッドである形態を例にとった。しかし、本発明はこの形態に限定されるものではなく、第1の相対移動部材と、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材とを備える各種の機器についても、流体圧アクチュエータの場合と同様に適用可能である。
【0066】
また、実施の形態1〜4に示した第1のスクレーパ及び第2のスクレーパの材質、形状さらには設置位置を、スクレーパに求める性能等を勘案して適宜変更する形態を用いることにより、様々な種類のダスト混入加圧流体や、温度、圧力等においても使用可能なスクレーパを提供することができる。これらの形態も本発明の範囲である。例えば、第1のスクレーパ及び第2のスクレーパのリップ部の形状や剛性を適宜選定して組み換えることにより、混入ダストや付着性ダスト等に対しても十分に使用可能なスクレーパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1のスクレーパの構成の一例の一部を示す縦断面図である。
【図2】図1における第1のスクレーパ及び第2のスクレーパを抽出して示す説明図である。
【図3】第1のスクレーパの各部の寸法を示す説明である。
【図4】第2のスクレーパの各部の寸法を示す説明図である。
【図5】実施の形態2のスクレーパの構成の一例の一部を示す縦断面図である。
【図6】図5における第1のスクレーパ及び第2のスクレーパを抽出して示す説明図である。
【図7】第2のスクレーパの各部の寸法を示す説明図である。
【図8】実施の形態1のスクレーパの第2のスクレーパの本体部の摺動面側の形状を、内部側方向へ指向するエッジ形状とした本体を有する第2のスクレーパを備えるスクレーパを部分的に示す縦断面図である。
【図9】実施の形態2のスクレーパの第2のスクレーパの本体部の摺動面側の形状を、内部側方向へ指向するエッジ形状とした本体を有する第2のスクレーパを備えるスクレーパを部分的に示す縦断面図である。
【図10】実施の形態4のスクレーパの構成例を示す説明図である。
【図11】シリンダ及びロッドからなる流体圧アクチュエータに使用されている水・切削液用の低〜中圧タイプの環状かつ弾性材料製のスクレーパの使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。
【図12】流体圧アクチュエータに使用されている水・切削液用の高圧タイプの環状かつ弾性材料製のスクレーパの使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。
【図13】図12に示すスクレーパに環状かつ樹脂製のバックアップリングを追加した環状のスクレーパの使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
2 流体圧アクチュエータ
2a シリンダ
2b ロッド
7a 金属環
8 パッキン
8a エッジ部
9 バックアップリング
13 第1のスクレーパ
13b リップ部
14 第2のスクレーパ
14a リップ部
14b 本体
15 スクレーパ
【技術分野】
【0001】
本発明はスクレーパに関するものであり、具体的には、第1の相対移動部材と、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材との摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを、十分な耐久性を有して行うことができるスクレーパに関する。本発明は、例えば、流体圧アクチュエータを構成するシリンダ又はロッドの摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うのに好適な、耐圧高機能型のスクレーパに関する。
【背景技術】
【0002】
第1の相対移動部材と、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材との摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリング、例えば、一般的な油圧シリンダや空気圧シリンダといった流体圧アクチュエータのワイパリングには、合成ゴム等の弾性材料製のスクレーパが広く用いられる。弾性材料製のスクレーパは、流体圧アクチュエータのシリンダ又はロッドの摺動面に潤滑液膜が存在する条件下で、大気中のダストや外気の封止機能や防滴機能を発揮する。この弾性材料製のスクレーパは、例えば潤滑性の乏しい水や切削液といったクーラント液のようなダスト混入加圧流体に対するダストワイパリングにも適用される。
【0003】
しかしながら、例えば油空圧シリンダ用の弾性材料製のスクレーパは、本来大気圧条件下で使用されるものであり、加圧流体の圧力の影響を直接受ける条件下での使用は想定されていないために耐久性(寿命)や摺動特性の点で問題がある。
【0004】
図11は、シリンダ2a及びロッド2bからなる流体圧アクチュエータ2に使用されている水・切削液用の低〜中圧(3.5MPa以下)タイプの環状かつ弾性材料製のスクレーパ1の使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。図11に示す例では、スクレーパ1として、一般的な環状かつ弾性材料製の油空圧シリンダ用ダストシール3と、一般的な環状かつ弾性材料製の油空圧シリンダ用パッキン4とが用いられる。なお、符号5は軸受けを示す。
【0005】
一方、図12は、流体圧アクチュエータ2に使用されている水・切削液用の高圧(7〜10MPa以下)タイプの環状かつ弾性材料製のスクレーパ6の使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。図12に示す例では、スクレーパ6として、金属環7aを内部に加硫接着された環状かつ弾性材料製のダスト混入流体用シール7と、高密封タイプの環状のパッキン8と、パッキン8を支持する環状かつ樹脂製のバックアップリング9とが用いられる。なお、符号10はダスト混入流体用シール7を支持するための金属製のスペーサを示し、符号11はダスト混入流体用シール7を固定するための止め輪を示す。
【0006】
しかし、図11に示すスクレーパ1や図12に示すスクレーパ6を用いて上述したダスト混入加圧流体に対するダストワイパリングを行おうとすると、シール3、7が弾性材料製であることに起因した耐圧性の不足や、ダスト混入加圧流体自体の潤滑性の不足、さらには混入したダストによる弾性材料製のシール3、7の摩耗や破損といった様々な要因によって、スクレーパ1、6が使用開始後早期に破損するという耐久性の不足の問題が生じる。
【0007】
例えば、図12に示すスクレーパ6について作動耐久試験を行うと、要求寿命(7〜14MPaの圧力下での繰返し動作回数100〜150万回)に対して、50万回(圧力:10MPa)〜70万回(圧力:7MPa)程度の繰返し回数により破損及び潤滑不良による磨耗に起因した漏れを生じてしまい、使用できなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記作動耐久試験の結果を受けてダスト混入流体用シール7の加圧条件下での耐久性を向上することを目的として、初めに、図12に示すスクレーパ6に弾性材料製のダスト混入流体用シール7を支持してその耐圧性を向上するための樹脂製のバックアップリングを追加することを検討した。
【0009】
図13は、図12に示すスクレーパ6に環状かつ樹脂製のバックアップリング11を追加した環状のスクレーパ12の使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。
このスクレーパ12について同様に作動耐久試験を行ったところ、追加したバックアップリング11によりダスト混入流体用シール7を支持するために圧力によるダスト混入流体用シール7の破損は免れることはできたものの、摺動面の潤滑の不足とダストの混入とによりダスト混入流体用シール7のリップ7bが早期に摩耗して捲れ、捲れた部分が破損し、図12に示すスクレーパ6と略同程度の繰り返し動作回数により漏れを生じた。
【0010】
このように、ダスト混入加圧流体に対するダストワイパリングに適用した場合にも十分な耐久性を有するスクレーパを提供するためには、その耐圧性を向上するだけでは不十分であり、潤滑の不足とダストの混入とに起因したダスト混入流体用シールのリップ部の早期の摩耗や破損をも解決することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
流体圧アクチュエータを構成するシリンダ又はロッドの摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパの耐圧性及び耐久性をともに向上するためには、ダスト混入流体用シールの材質を弾性材料から、潤滑性の乏しい加圧流体の中での摺動特性や混入ダストの掻き取り性能では優れる、例えばPA、POM、PTFEさらにはUHMWPE等の樹脂材料に置き換えることが有効なのでは、とも一見考えられる。しかしながら、樹脂材料では合成ゴム等の弾性材料に比較して柔軟性及び弾性が劣り、ロッドの摺動面に対する密着性や追従性も乏しいため、仮に耐久性を向上することができたとしても、シールの基本性能であるダスト混入加圧流体に対する密封性の低下が避けられない。
【0012】
そこで、本発明者はさらに検討を重ねた結果、シリンダの軸方向に関して、合成ゴム等の弾性材料からなるスクレーパ(第1のスクレーパ)のシリンダ内部側を支持するだけではなく、このスクレーパのリップ部が、ロッドとの間の加圧変形や摺動ストレス等の繰り返し負荷にも耐えられるように、摺動面に面接触するリップ部を有する、例えばPTFE等の樹脂製の第2のスクレーパを追加し、この第2のスクレーパを介してダスト混入加圧流体のワイパリングを行うこととすれば、高圧が負荷される条件下においても十分な弾性とロッドの動きに対する良好な密着追随性とを維持して所望の耐圧性及び混入ダスト排除機能(密封機能)を発揮でき、これにより、潤滑の不足とダストの混入とに起因したリップ部の早期の摩耗や破損をも解決でき、十分な耐久性を有するスクレーパを提供できることを知見して、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、図1に例示するように、第1の相対移動部材2a(図示例は流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ)と、この第1の相対移動部材2aの内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材2aの軸方向(図1における上下方向)へ移動する第2の相対移動部材2b(図示例は流体圧アクチュエータ2を構成するロッド)との摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパ15であって、リップ部13bを有する弾性材料からなる環状の第1のスクレーパ13と、第1の相対移動部材2aの軸方向に関して第1のスクレーパ13よりも第1の相対移動部材2aの内部側に装着され、第1のスクレーパ13を支持するとともに摺動面に面接触するリップ部14aを有する樹脂材料からなる環状の第2のスクレーパ14とを備えることを特徴とするスクレーパ15である。
【0014】
この本発明に係るスクレーパ15は、第1の相対運動部材2aの軸方向に関して第2のスクレーパ14よりも第1の相対運動部材2aの内部側に離間して配置され、摺動面に接触することにより第2のスクレーパ14を通過した加圧流体の液膜をシールするエッジ部8aを有する環状のパッキン8と、パッキン8を支持するとともにパッキン8の耐圧性を向上させる樹脂材料からなる環状のバックアップリング9とを備えることが望ましい。
【0015】
これらの本発明に係るスクレーパ15は、第2のスクレーパ14のリップ部14aが、第1のスクレーパ13のリップ部13bにより摺動面へ向けて付勢されることによって、摺動面に面接触するものである。
【0016】
これらの本発明に係るスクレーパ15では、図1〜図4又は図8を参照しながら後述する実施の形態1又は3により示すように、第1のスクレーパ13のリップ部13bが摺動面に接触するように構成してもよいし、あるいは、図5〜図7又は図8を参照しながら後述する実施の形態2又は3により示すように、第1のスクレーパ13−1のリップ部13−1bが摺動面に接触しないように構成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、第1の相対移動部材と、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材との摺動面、例えば図1に示す、流体圧アクチュエータを構成するシリンダ又はロッドの摺動面に存在する、例えば、潤滑性の乏しい水や切削液といったクーラント液のようなダスト混入加圧流体のワイパリングを行う際に、十分な耐圧性を有するとともに、潤滑の不足とダストの混入とに起因した摩耗や破損をも解決でき、これにより十分な耐久性を有するスクレーパを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明に係るスクレーパを実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の各実施の形態の説明では、本発明における第1の相対移動部材が流体圧アクチュエータを構成するシリンダであるとともに第2の相対移動部材がこの流体圧アクチュエータを構成するロッドである形態を例にとる。
【0019】
本実施の形態1は、ダスト混入加圧流体の潤滑性が比較的良好な場合であって密封性を重視したスクレーパに関する一例である。
図1は、実施の形態1のスクレーパ15の構成を示す縦断面図である。図2は、図1における第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14を抽出して示す説明図である。図3は、第1のスクレーパ13の各部の寸法を示す説明である。さらに、図4は、第2のスクレーパ14の各部の寸法を示す説明図である。
【0020】
図1を参照しながら上述したように、実施の形態1のスクレーパ15は、流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ2a又はロッド2bの摺動面のワイパリングを行うものであり、略述すると、良好な密封性能を有する弾性材料からなる第1のスクレーパ13と、さらに樹脂材料からなる第2のスクレーパ14とを組み合わせて備え、好適条件としてさらに、パッキン8と、バックアップリング9とを備えるものである。
【0021】
実施の形態1における第2のスクレーパ14は、高圧が負荷された場合においても十分な弾性と、ロッド2bの動きに対する良好な密着追随性とを発揮して所望の耐圧性及び混入ダスト排除機能(密封機能)を有するため、潤滑の不足とダストの混入とに起因した早期の摩耗及び破損をも解決でき、十分な耐久性を有する。このため、実施の形態1のスクレーパ15の構成要素である第1のスクレーパ13と、第2のスクレーパ14と、パッキン8と、バックアップリング9とを順次分説する。
【0022】
[第1のスクレーパ13、第2のスクレーパ14]
図1〜3に示すように、第1のスクレーパ13は、流体圧アクチュエータ2のシリンダ2aの内周面に、止め輪11を介して装着される環状かつ弾性材料からなるシール部材であり、後述する第2のスクレーパ14のリップ部14a及び本体部分14bに密着して密封し、ロッド2bとの空隙を埋めることにより加圧力の変化や摺動摩擦等に伴う変形を抑制して耐圧性を高め、また、リップ部14aに弾性とロッド2bの動きに対する良好な追随性とを付与するとともに、本例では、流体圧アクチュエータ2のシリンダ2a及びロッド2bの間に存在するダスト混入加圧流体のシールをも行うものである。
【0023】
第1のスクレーパ13は弾性材料からなるものであり、具体的には、後述する第2のスクレーパ14のリップ部14a及び本体部分14bに密着して密封し、ロッド部2bとの空隙を埋めることにより加圧力の変化や摺動摩擦等に伴う変形を抑制して耐圧性を高め、また、リップ部14aに弾性とロッド2bの動きに対する良好な追随性とを付与することが可能な弾性を有するとともにダスト混入加圧流体に対して化学的な適合性を有する弾性材料により構成される。このような弾性材料として、各種のゴム材料、例えばNBR、FKM、HNBRさらにはEPDM等が例示される。
【0024】
第1のスクレーパ13の内部には、L字型の断面形状を有する金属環13aが加硫接着される。これにより、第1のスクレーパ13本体の剛性が維持される。なお、金属環13aは、加硫接着以外の手段、例えば圧入接着によって第1のスクレーパ13の内部に配置してもよい。
【0025】
また、第1のスクレーパ13は、先端にシャープエッジが形成されたリップ部13bを有する。このリップ部13bは、後述する第2のスクレーパ14のリップ部14a及び本体部分14bに密着して密封し、ロッド2bとの空隙を埋めることにより加圧力の変化や摺動摩擦等に伴う変形を抑制して耐圧性を高め、また、リップ部14aに弾性とロッド2bの動きに対する良好な追随性を付与するとともに、本例では自らのリップ部13bの先端に設定した締め代δ(図2、3を参照しながら後述する)により、先端のシャープエッジがロッド2bの外周面に接触するためのものである。
【0026】
図2を参照しながら具体的に説明すると、第1のスクレーパ13は、シリンダ2aの所定の装着位置に装着した際に、ロッド2bの外周面に対して僅かな締め代δを有するとともに、後述する第2のスクレーパ14と密着可能な外形を有する。これにより、第1のスクレーパ13は耐圧性を有するとともに、締め代δを有することにより得られる弾性力を利用して、第2のスクレーパ14のリップ部14aをロッド2bの外周面へ向けて付勢する。これにより、弾性材料製の第1のスクレーパ13単体では到底得ることができない耐圧性と潤滑性の乏しいダスト混入圧力流体中での摺動特性や、ダスト混入流体に含まれるダストの掻き取り性能を十分に得ることができる。
【0027】
本例では、さらに、リップ部13bの先端に形成されたシャープエッジがロッド2bの外周面に当接するように構成されており、上述したようにシール部14aのシール面14cがロッド2bの外周面に当接することと併せて、シリンダ2a及びロッド2bの間に存在するダスト混入加圧流体のシールを行う。これにより、さらに高い密封効果を得ることが可能である。
【0028】
一方、図1、2、4に示すように、第2のスクレーパ14は、シリンダ2aの軸方向に関して第1のスクレーパ13よりもシリンダ2aの内部側に装着され、第1のスクレーパ13を支持するとともに摺動面に面接触するリップ部14aを有する樹脂材料からなる環状のスクレーパである。
【0029】
第2のスクレーパ14に用いる樹脂材料としては、PTFE、PA、POMさらにはUHMWPE等)が例示される。PTFEを用いた場合の充填材としてはカーボン繊維、ガラス繊維さらには特殊耐熱樹脂等が例示される。PTFEを用いれば、潤滑性が乏しいダスト混入加圧流体に対しても極めて良好な摺動特性が得られる。
【0030】
上述したように、第2のスクレーパ14のリップ部14aに設けられたシール面14cが、摺動面をなすロッド2bの外周面に当接して、第1のスクレーパ13とロッド2bとの間の空隙を埋めることにより、第1のスクレーパ13の耐圧性や摺動特性を向上させるとともに、流体圧アクチュエータ2のシリンダ2a及びロッド2bの間に存在するダスト混入加圧流体のシールを行う。
【0031】
ここで、図1〜4を参照しながら、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14を関連付けてさらに詳細に説明する。
図1〜4に示す実施の形態1のスクレーパ15は、弾性材料からなる第1のスクレーパ13と、樹脂材料からなる第2のスクレーパ14とを組み合わせたものであるため、使用されるダスト混入加圧流体の種類、ダストの条件、圧力条件、作動条件さらには設定される摺動抵抗の仕様等に応じて、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14それぞれの材質や形状を適宜設定することにより、スクレーパ15のワイパリング性、摺動特性、耐圧性さらには耐久性を自在に調整することができる。
【0032】
図3及び図4において、この本実施の形態のスクレーパ15では、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14相互の密着を十分に確保するとともに、第2のスクレーパ14のリップ部14aの形状と、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14の締め代δの設定及び調整が重要であるため、これらの点を説明する。
【0033】
まず、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14相互の密着を十分に確保するためには、図3に示す第1のスクレーパ13の第2のスクレーパ14との密着部(長さT1、N、H2、H3、半径R1、R2)、及び、図4に示す第2のスクレーパ14の第1のスクレーパ13との密着部(距離t1、n、h2、h3、半径r1、r2)それぞれの形状、寸法さらには位置をシンクロさせること、すなわち図2において製品公差範囲での隙間l1は許容するもののこれを最小とすることが重要である。
【0034】
これにより、図2において破線で示すように、加圧時における第1のスクレーパ13の変形歪みや摺動に伴うストレスを最小とすることができ、スクレーパ13の耐久性を著しく向上することができる。
【0035】
また、第2のスクレーパ14の本体14bのロッド軸方向距離h0を、第1のスクレーパ13の第2のスクレーパ14との密着部のロッド軸方向距離H1よりも3〜5%程度大きめに設定することにより、第2のスクレーパ14の本体14bを、第1のスクレーパ13の密着部に圧入して装着した際に第1のスクレーパ13の座面13cに形成される隙間の距離X(図1、2参照)を確保でき、これにより、第1のスクレーパ13をシリンダ2aの内周面に圧入装着する際の撓みと、相互の製品公差とを吸収することができるとともに、圧力負荷を第2のスクレーパ14の本体14bにより支持することができ、第1のスクレーパ13と第2のスクレーパ14との密着性を十分に維持でき、第2のスクレーパ14による第1のスクレーパ13の支持機能(耐圧性の獲得)を確実なものとすることができる。
【0036】
また、第1のスクレーパ13のリップ部13bは、弾性材料からなるとともに上述した締め代δを有することにより、第2のスクレーパ14のリップ部14aをロッド2bの外周面へ押し付けることにより密着させてこの部分の空隙を埋めることにより加圧力の変化や摺動摩擦等に伴う変形を抑制し、これにより、第1のスクレーパ13bのスクレーパ密封機能を向上して安定させることができる。さらに、第2のスクレーパ14は樹脂材料からなることから、例えば繊維屑等の付着性異物の掻き取り機能と、潤滑状況の悪化の影響を受け難い摺動特性とが得られる。
【0037】
また、実施の形態1の第1のスクレーパ13のリップ部13bの高さ(図1、2における距離H4)を変更することにより、第1のスクレーパ13により発揮される密封機能及び摩擦特性をいずれも変化させることができる。本実施の形態1は、上述したように混入ダストや流体の潤滑性が比較的良好な場合における高圧流体に対する密封性を重視した例であるため、図2に示すように、第1のスクレーパ13のリップ部13bの高さH4を大きく設定することにより、リップ部13bをロッド2bの外周面に直接当接させることにより密封機能の確保を優先する。これにより、樹脂材料からなる第2のスクレーパ14が有する摺動特性を最大限に発揮しながら高圧に対応できるとともに、混入ダストおよび付着性ダストや金属等の硬質系ダストに対する掻き取り機能を強化することができる。
【0038】
このため、第1のスクレーパ13のリップ部13bの高さH4は、リップ部13bの締め代δを大きく損なわない高さとすることが望ましい。具体的には、リップ部13bの高さH4は、図12に示す公知のダスト混入加圧流体用シールのリップ部の高さH5の(1/2)以上(1/1)以下とし、さらに、第2のスクレーパ14のリップ部14aの先端部の外周側形状の丸み付けr3や、先端部厚さt2を薄く設定することにより、良好な密着状態を得ることができる。また、これらの寸法を適宜設定することによって、第1のスクレーパ13のリップ部13bの締め代δを変化させて、密封性や摩擦抵抗を所望の程度に微調整することもできる。
【0039】
なお、実施の形態1のスクレーパ15では、図4に示すように、第2のスクレーパ14の本体14bの摺動面側の形状を、傾斜角度θをなす緩やかなテーパ面としている。これにより、仮に微少異物が侵入した場合にも、ロッド2bの動作を利用してこのテーパ面により付着物及び摺動面油膜(液膜)を外部へ排出することができる。
【0040】
このように、本実施の形態のスクレーパ15は、弾性材料からなる第1のスクレーパ13及び、樹脂材料からなる第2のスクレーパ14をともに備えるため、高圧が掛かった場合の変形を抑制できるとともに良好な摺動特性を維持して十分な耐圧性及び混入ダスト排除機能(密封機能)を有し、これにより、潤滑の不足とダストの混入とに起因した早期の摩耗及び破損をも解決でき、十分な耐久性を有する。
【0041】
[パッキン8]
上述したように、本実施の形態1のスクレーパ15は、上述した第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14をともに備えることにより、ダスト混入加圧流体に含まれるダストの内部への侵入を長期間にわたって防止することができるものであり、これだけでも、流体圧アクチュエータを構成するシリンダ又はロッドの摺動面に存在する、例えばクーラント液のようなダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパとして要求される機能を十分に備えるものである。
【0042】
そして、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14によりダストが除去された加圧流体の液膜がシリンダ2aの軸方向の内部へ侵入することをも防止したい場合には、以下に説明するパッキン8及びバックアップリング9を、第1のスクレーパ13及び第2のスクレーパ14とともに用いることが、望ましい。
【0043】
図1におけるパッキン8は、流体圧アクチュエータ2のシリンダ2aの内周面に装着される環状のシール部材である。パッキン8は、シリンダ2aの軸方向に関して第2のスクレーパ14よりもシリンダ2aの軸方向(図1における上下方向)の内部側に離間して、シリンダ2aの内周面に配置及び装着される。
【0044】
パッキン8の先端側のエッジ8aが摺動面をなすロッド2bの外周面に当接することにより、第2のスクレーパ14によってダストを除去されたものの第2のスクレーパ14を通過してシリンダ2a及びロッド2bの摺動面に存在する加圧流体の液膜をシールする。
【0045】
また、エッジ部8aは、例えば0〜21MPaといった圧力変化に伴うパスカル力を付勢され膨出変形してシリンダ2a及びロッド2bとの間の隙間を確実に塞ぐ。
[バックアップリング9]
図1におけるバックアップリング9は、シリンダ2aの内周面に装着される環状かつ樹脂材料からなる部材である。バックアップリング9は、パッキン8の端面8bに隣接してパッキン8を支持する。バックアップリング9がパッキン8の端面8bに当接することにより、パッキン8の耐圧性を向上させる。
【0046】
また、バックアップリング9は、シリンダ2a及びロッド2bの摺動面に面接触する。
このように、実施の形態1のスクレーパ15によれば、流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ2a又はロッド2bの摺動面に存在する、例えば、潤滑性の乏しい水や切削液といったクーラント液のようなダスト混入加圧流体に対しても、十分な耐圧性が発揮されるとともに、潤滑の不足とダストの混入とに起因した早期の摩耗及び破損を解決でき、これにより十分な耐久性、具体的には、要求寿命(7〜14MPaの圧力下での繰返し動作回数100〜150万回)を十分に満足した耐久性が確保される。
【0047】
したがって、本実施の形態1により、第1の相対移動部材の一例である流体圧アクチュエータ2を構成するシリンダ2aと、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材の一例である流体圧アクチュエータ2を構成するロッド2bとの摺動面に存在する、例えば、潤滑性の乏しい水や切削液といったクーラント液のようなダスト混入加圧流体のワイパリングを行う際に、十分な耐圧性を有するとともに、潤滑の不足とダストの混入とに起因した摩耗や破損をも解決でき、これにより十分な耐久性を有するスクレーパ15が提供される。
【0048】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2を説明する。なお、以降の各実施の形態の説明では、上述した実施の形態1と相違する部分を主に説明し、共通する部分については同一の図中符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0049】
図5は、実施の形態2のスクレーパ15−1の構成の一例の一部を示す縦断面図である。また、図6は、図5における第1のスクレーパ13−1及び第2のスクレーパ14−1を抽出して示す説明図である。さらに、図7は、第2のスクレーパ14−1の各部の寸法を示す説明図である。
【0050】
図5〜図7に示すように、実施の形態2のスクレーパ15−1は、混入ダストや流体の潤滑性が劣悪なために防塵機能を優先する場合に用いるのに好適である。
すなわち、このスクレーパ15−1は、図1に示すスクレーパ15よりも、第2のスクレーパ14−1のリップ部14−1aの先端部高さを高くし、かつリップ部14−1aの先端部も厚く頑丈にした形状である。これにより、第1のスクレーパ13−1のリップ部13−1bは、第2のスクレーパ14−1のリップ部14−1aに密着してこの部分の密封を行うとともに第2のスクレーパ14−1のリップ部14−1aをロッド2bの外周面に向けて付勢することにより当接させるものの、第1のスクレーパ13−1のリップ部13−1bはロッド2bの外周面には当接させない。これにより、第2のスクレーパ14−1の混入ダストの掻き取り性及び摺動特性を優先させる。
【0051】
第1のスクレーパ14−1及び第2のスクレーパ14−1を互いに密着させるための手法は、上述した実施の形態1と同じであるものの、混入ダストや流体の潤滑性が劣悪な状況下にあっても十分なスクレーパ機能を奏するために、図6に示すように、第2のスクレーパ14−1のリップ部14−1aに僅かな締め代δを設定し、かつリップ部14−1aの高さを、実施の形態1のリップ部14aの高さよりも高く設定し、かつ、リップ部14−1aの先端(図7における14−1d部)をシャープエッジにしたものである。
【0052】
本例における第2のスクレーパ14−1の締め代δは、第2のスクレーパ14−1が樹脂材料からなるためにロッド2bの外周面への装着性を考慮して、製品の加工公差範囲内で、かつ装着時にロッド2bとの間に隙間を生じない程度の僅かな設定とする。ロッド2bに対する密着及び追随性に関しては、第1のスクレーパ13−1による弾力や締め代及び加圧流体によるパスカル力(第1のスクレーパ13−1のリップ部13−1bの高さ相当分の面積×圧力)によって付勢される。
【0053】
実施の形態2のスクレーパ15−1の第2のスクレーパ14−1がこのような形状を有するため、リップ部14−1aの先端が主体的にロッド2bの外周面に接触し、防塵機能が高められる。これにより、混入ダストに含まれる金属粉、固形物、付着性ダストさらには粘着性ダスト等によるゴム攻撃性が高い場合に固形物に対する掻き取り機能を強化することができる。
【0054】
なお、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、第2のスクレーパ14−1の本体14−1bの摺動面側の形状を、傾斜角度θをなす緩やかなテーパ面としている。これにより、仮に微少異物が侵入した場合にも、ロッド2bの動作を利用してこのテーパ面により付着物及び摺動面油膜(液膜)を外部へ排出することができる。
【0055】
(実施の形態3)
上述した実施の形態1、2のスクレーパ15、15−1では、いずれも、第2のスクレーパ14、14−1の本体14b、14−1bの摺動面側の形状を、傾斜角度θの緩やかなテーパ面として、混入した微少異物及び摺動面油膜(液膜)を、ロッド2bの働きを利用して摺動接触面の角度差により外部へ排出するように構成した。
【0056】
しかし、本例では、第2のスクレーパ14−2の本体14−2bの摺動面の形状を、傾斜角度θの緩やかなテーパ面ではなく、内部側方向へ指向するエッジ形状とする。
図8は、実施の形態1のスクレーパ15の第2のスクレーパ14の本体部14bの摺動面側の形状を、内部側方向へ指向するエッジ形状とした本体14−2bを有する第2のスクレーパ14−2を備えるスクレーパ15−2を部分的に示す縦断面図である。
【0057】
また、図9は、実施の形態2のスクレーパ15−1の第2のスクレーパ14−1の本体14−1bの摺動面側の形状を、内部側方向へ指向するエッジ形状とした本体14−3bを有する第2のスクレーパ14−3を備えるスクレーパ15−3を部分的に示す縦断面図である。
【0058】
図8に示す第2のスクレーパ14−2、図9に示す第2のスクレーパ14−3ともに、潤滑剤等の摺動面油膜をその内部側に掻き溜める機能が高められており、これにより、内部に充填する潤滑剤やグリース等を第2のスクレーパ14−2、14−3が外部側へ掻き出すことを抑制し、潤滑機能を長期間にわたって維持することにより、耐久性を向上するものである。
【0059】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4のスクレーパ15−4の構成例を示す説明図である。
本例は、図9に示すスクレーパ15−3の変形例であり、シリンダ2aに環状に溝2cを形成するとともに、第1のスクレーパ13−2を、金属環13aに加硫接着させたゴムを被覆することにより、この溝2cに嵌まり合うゴム被覆層圧入部13−2dを有するように、構成する。
【0060】
ゴム被覆層圧入部13−2dを有するゴム被覆層は、第1のスクレーパ13−2dをシリンダ2aの内部に圧入及び挿設する際に、自らが有する弾性によって撓んで弾性変形する。
【0061】
本実施の形態では、第1のスクレーパ13−2のゴム被覆層が有する弾性と撓み変形とを利用して、第1のスクレーパ13−2に形成されたゴム被覆層圧入部13−2dをこの溝2cに嵌め込むことにより、第1のスクレーパ13−2をシリンダ2aに強く嵌着することにより、抜け出し防止用の止め輪11を不要とした構成である。
【0062】
この第1のスクレーパ13−2に形成されたゴム被覆層圧入部13−2dがシリンダ2aに形成された溝2cに嵌め込まれることにより、高い密封性、すなわち外部からのダスト混入圧力流体の浸入防止機能と、抜け出し防止機能とを、簡素な構成により実現することができる。
【0063】
このため、この第1のスクレーパ13−2は、防塵機能を十分に有するとともに、止め輪等の補助具なしで装着することができる。すなわち、シリンダ2aの装着部に圧入して嵌め込まれることにより、第2のスクレーパ14−3と確実に密着合体して固定され、これにより、所定の締め代と、第2のスクレーパ14−3のリップ部14−3aをロッド2bの外周面へ付勢する弾性力を発揮することができる。
【0064】
弾性材料製の第1のスクレーパ13−1単体でもある程度の密封機能を有するものの、樹脂材料からなる第2のスクレーパ14−2と組み合わせて用いることにより、十分な耐圧性や摺動特性を確保することができるとともに、潤滑性の乏しいダスト混入加圧流体が作用する条件下においても、耐久性及び信頼性、具体的には要求寿命(7〜14MPa、100〜150万回)を十分に満足する150万回以上の耐久性が得られた。
【0065】
(変形例)
上述した実施の形態1〜4の説明では、本発明における第1の相対移動部材が流体圧アクチュエータを構成するシリンダであるとともに第2の相対移動部材が流体圧アクチュエータを構成するロッドである形態を例にとった。しかし、本発明はこの形態に限定されるものではなく、第1の相対移動部材と、この第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材とを備える各種の機器についても、流体圧アクチュエータの場合と同様に適用可能である。
【0066】
また、実施の形態1〜4に示した第1のスクレーパ及び第2のスクレーパの材質、形状さらには設置位置を、スクレーパに求める性能等を勘案して適宜変更する形態を用いることにより、様々な種類のダスト混入加圧流体や、温度、圧力等においても使用可能なスクレーパを提供することができる。これらの形態も本発明の範囲である。例えば、第1のスクレーパ及び第2のスクレーパのリップ部の形状や剛性を適宜選定して組み換えることにより、混入ダストや付着性ダスト等に対しても十分に使用可能なスクレーパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1のスクレーパの構成の一例の一部を示す縦断面図である。
【図2】図1における第1のスクレーパ及び第2のスクレーパを抽出して示す説明図である。
【図3】第1のスクレーパの各部の寸法を示す説明である。
【図4】第2のスクレーパの各部の寸法を示す説明図である。
【図5】実施の形態2のスクレーパの構成の一例の一部を示す縦断面図である。
【図6】図5における第1のスクレーパ及び第2のスクレーパを抽出して示す説明図である。
【図7】第2のスクレーパの各部の寸法を示す説明図である。
【図8】実施の形態1のスクレーパの第2のスクレーパの本体部の摺動面側の形状を、内部側方向へ指向するエッジ形状とした本体を有する第2のスクレーパを備えるスクレーパを部分的に示す縦断面図である。
【図9】実施の形態2のスクレーパの第2のスクレーパの本体部の摺動面側の形状を、内部側方向へ指向するエッジ形状とした本体を有する第2のスクレーパを備えるスクレーパを部分的に示す縦断面図である。
【図10】実施の形態4のスクレーパの構成例を示す説明図である。
【図11】シリンダ及びロッドからなる流体圧アクチュエータに使用されている水・切削液用の低〜中圧タイプの環状かつ弾性材料製のスクレーパの使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。
【図12】流体圧アクチュエータに使用されている水・切削液用の高圧タイプの環状かつ弾性材料製のスクレーパの使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。
【図13】図12に示すスクレーパに環状かつ樹脂製のバックアップリングを追加した環状のスクレーパの使用状況の一例を部分的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
2 流体圧アクチュエータ
2a シリンダ
2b ロッド
7a 金属環
8 パッキン
8a エッジ部
9 バックアップリング
13 第1のスクレーパ
13b リップ部
14 第2のスクレーパ
14a リップ部
14b 本体
15 スクレーパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の相対移動部材と、該第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に前記第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材との摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパであって、
リップ部を有する弾性材料からなる環状の第1のスクレーパと、
前記軸方向に関して前記第1のスクレーパよりも前記第1の相対移動部材の内部側に装着され、該第1のスクレーパを支持するとともに前記摺動面に面接触するリップ部を有する樹脂材料からなる環状の第2のスクレーパと
を備えることを特徴とするスクレーパ。
【請求項2】
前記軸方向に関して前記第2のスクレーパよりも前記第1の相対運動部材の内部側に離間して配置され、前記摺動面に接触することにより前記第2のスクレーパを通過した加圧流体の液膜をシールするエッジ部を有する環状のパッキンと、
該パッキンを支持するとともに該パッキンの耐圧性を向上させる樹脂材料からなる環状のバックアップリングと
を備える請求項1に記載されたスクレーパ
【請求項3】
前記第2のスクレーパのリップ部は、前記第1のスクレーパのリップ部により前記摺動面へ向けて付勢されることによって、前記摺動面に面接触する請求項1又は請求項2に記載されたスクレーパ。
【請求項4】
前記第1のスクレーパのリップ部は、前記摺動面に接触する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたスクレーパ。
【請求項5】
前記第1のスクレーパのリップ部は、前記摺動面に接触しない請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたスクレーパ。
【請求項1】
第1の相対移動部材と、該第1の相対移動部材の内部に挿設されて摺動しながら相対的に前記第1の相対移動部材の軸方向へ移動する第2の相対移動部材との摺動面に存在するダスト混入加圧流体のワイパリングを行うスクレーパであって、
リップ部を有する弾性材料からなる環状の第1のスクレーパと、
前記軸方向に関して前記第1のスクレーパよりも前記第1の相対移動部材の内部側に装着され、該第1のスクレーパを支持するとともに前記摺動面に面接触するリップ部を有する樹脂材料からなる環状の第2のスクレーパと
を備えることを特徴とするスクレーパ。
【請求項2】
前記軸方向に関して前記第2のスクレーパよりも前記第1の相対運動部材の内部側に離間して配置され、前記摺動面に接触することにより前記第2のスクレーパを通過した加圧流体の液膜をシールするエッジ部を有する環状のパッキンと、
該パッキンを支持するとともに該パッキンの耐圧性を向上させる樹脂材料からなる環状のバックアップリングと
を備える請求項1に記載されたスクレーパ
【請求項3】
前記第2のスクレーパのリップ部は、前記第1のスクレーパのリップ部により前記摺動面へ向けて付勢されることによって、前記摺動面に面接触する請求項1又は請求項2に記載されたスクレーパ。
【請求項4】
前記第1のスクレーパのリップ部は、前記摺動面に接触する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたスクレーパ。
【請求項5】
前記第1のスクレーパのリップ部は、前記摺動面に接触しない請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたスクレーパ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−226455(P2006−226455A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42553(P2005−42553)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000143891)株式会社阪上製作所 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000143891)株式会社阪上製作所 (8)
【Fターム(参考)】
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