ステアリング装置
【課題】ロック機構の圧接カムがインナチューブに対して確実に圧接可能なステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置は、コラム側ブラケットと車体側ブラケットとに回動自在に支持された軸部35bを有するチルトボルト35と、チルトボルト35と一体に回転する操作レバーが回動操作されることでインナチューブ26に圧接され、インナチューブ26とアウタチューブ24との相対変位を規制するカムリング52とを備える。ステアリング装置は、インナチューブ26とカムリング52とが接触する各部位には平面形状を有するチューブ接触部27とカム接触部53とがそれぞれ設けられ、チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面が平行に形成されている。
【解決手段】ステアリング装置は、コラム側ブラケットと車体側ブラケットとに回動自在に支持された軸部35bを有するチルトボルト35と、チルトボルト35と一体に回転する操作レバーが回動操作されることでインナチューブ26に圧接され、インナチューブ26とアウタチューブ24との相対変位を規制するカムリング52とを備える。ステアリング装置は、インナチューブ26とカムリング52とが接触する各部位には平面形状を有するチューブ接触部27とカム接触部53とがそれぞれ設けられ、チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面が平行に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレスコピック機構を備えたステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の体格等に応じてステアリングホイールの前後位置を調整するテレスコピック機構を備えたステアリング装置がある(例えば、特許文献1参照)。
こうしたステアリング装置は、アウタチューブ内にインナチューブを挿入させることで、軸方向に伸縮が可能となっている。ステアリング装置は、車両本体に固定される車体側ブラケットと、ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムに固定されるコラム側ブラケットと、これら両ブラケットを連結する軸部材とを備えている。コラム側ブラケットには、車両の略前後方向であるテレスコピック方向に延びるテレスコ長孔が形成されている。これにより、コラム側ブラケットは、テレスコ長孔の範囲で車体側ブラケットに対して相対移動可能となり、同範囲内でステアリングホイールの前後位置が調整可能な構成となっている。
【0003】
そして、ステアリング装置には、ステアリングホイールの位置調整後に、車体側ブラケットに対するコラム側ブラケットの位置を固定するための締付機構が設けられている。この締付機構は、操作レバーの回動操作によって、軸部材の軸方向へ車体側ブラケットとコラム側ブラケットとが締め付けられて狭着される。
【0004】
さらに、締付機構には、操作レバーの回動操作によって、軸部材の外周に設けられたカム形状の圧接カムが円筒状のインナチューブに圧接することでアウタチューブに対するインナチューブの移動を規制するロック機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−154789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載のステアリング装置のロック機構では、図6に示されるように、圧接カム150の接触面150aがインナチューブ126の外周面に一致するよう軸方向断面において円弧面となっている。このため、軸部材135の軸方向において圧接カム150の位置がインナチューブ126に対してずれてインナチューブ126の外周面と圧接カム150の接触面150aとが一致しない、すなわちインナチューブ126の法線Nが圧接カム150の幅方向の中心位置を通らないと、圧接カム150とインナチューブ126との接触が一部分だけになり確実に圧接できないおそれがあった。そして、組み付け時には、インナチューブ126に対する圧接カム150の位置に注意しなければならず、作業効率が悪かった。そこで、ロック機構の圧接カムがインナチューブに対して確実に圧接可能なステアリング装置が求められていた。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロック機構の圧接カムがインナチューブに対して確実に圧接可能なステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ロアシャフトを内部に回転自在に収容するインナチューブと、前記ロアシャフトに連係されるアッパシャフトと、該アッパシャフトを内部に回転自在に収容し、軸方向の長さ調整を可能に前記インナチューブの外周に装着され、前記インナチューブと重なる部位に軸方向に沿って開口する貫通孔を有するアウタチューブと、該アウタチューブを軸方向へ進退可能に車体に取り付けるブラケットと、該ブラケットに回動自在に支持された軸部を有する軸部材と、該軸部材を回転させる操作レバーと、前記軸部材の前記軸部上に設けられ、径方向の寸法が周方向に沿って次第に変化する偏心形状を有し、前記操作レバーが回動操作されることで前記インナチューブに圧接され、前記インナチューブと前記アウタチューブとの相対変位を規制する圧接カムと、を備えるステアリング装置であって、前記インナチューブと前記圧接カムとが接触する各部位には平面形状を有するチューブ接触部とカム接触部とがそれぞれ設けられ、前記チューブ接触部とカム接触部との各接触面が平行に形成されていることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、インナチューブに設けられたチューブ接触部の接触面と、圧接カムに設けられたカム接触部の接触面とが平面形状であって、且つ平行に形成されている。このため、軸部材の軸方向において圧接カムが本来の位置からずれたとしても、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部との接触面同士の距離は全面で同じである。よって、操作レバーが規制方向へ回動操作されて圧接カムがインナチューブを圧接する際に、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部とが従来技術のように片当たりすることなく、確実に接触することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリング装置において、前記チューブ接触部と前記カム接触部との各接触面は、前記軸部材の前記軸部の軸線と平行に形成されていることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、チューブ接触部とカム接触部との各接触面が軸部材の軸部の軸線と平行に形成されているので、軸部材の軸方向において圧接カムが本来の位置からずれたとしても、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部との接触面同士の距離は全面で同じであって、且つ接触面同士の距離がずれによって変化しない。よって、操作レバーが規制方向へ回動操作されて圧接カムがインナチューブを圧接する際に、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部とが更に確実に接触することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のステアリング装置において、前記軸部材の前記軸部の軸方向における前記チューブ接触部の幅よりも前記カム接触部の幅を大きく設定することをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、軸部材の軸部の軸方向におけるチューブ接触部の幅よりもカム接触部の幅が大きく設定されるので、軸部材の軸方向において圧接カムが本来の位置からずれたとしても、軸部材の軸方向においてインナチューブのチューブ接触部が圧接カムのカム接触部の接触面の幅に含まれる。よって、操作レバーが規制方向へ回動操作されて圧接カムがインナチューブを圧接する際に、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部とが更に確実に接触することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のステアリング装置において、前記軸部材の前記軸部の軸方向における前記カム接触部の幅よりも前記チューブ接触部の幅を大きく設定することをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、軸部材の軸部の軸方向におけるカム接触部の幅よりもチューブ接触部の幅が大きく設定されるので、軸部材の軸方向において圧接カムが本来の位置からずれたとしても、軸部材の軸方向において圧接カムのカム接触部がインナチューブのチューブ接触部の接触面の幅に含まれる。よって、操作レバーが規制方向へ回動操作されて圧接カムがインナチューブを圧接する際に、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部とが更に確実に接触することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置において、前記チューブ接触部は、前記インナチューブを径方向内側へ凹ませることで形成することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、インナチューブを径方向内側へ凹ませることでチューブ接触部を形成するので、圧接カムが設けられた部分において、インナチューブの外径を小さくでき、ひいてはインナチューブとアウタチューブとの規制を行う機構の体格を小さくできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ステアリング装置において、ロック機構の圧接カムがインナチューブに対して確実に圧接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ステアリング装置の構成を示す縦断面図。
【図2】ステアリング装置の構成を示す横断面図。
【図3】ステアリング装置の構成を示す図2の拡大図。
【図4】ステアリング装置の構成を示す横断面図。
【図5】ステアリング装置の構成を示す横断面図。
【図6】従来のステアリング装置の構成を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、テレスコピック機構を備えたステアリング装置に本発明を具体化した一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
図1に示されるように、ステアリング装置は、図示しないステアリングホイールが接続されるステアリングシャフト2の一部を構成するコラムシャフト3を備え、このコラムシャフト3の上側、つまり車両の後方側の箇所が上側支持機構29によって支持されている。なお、上側支持機構29には、ステアリングホイールの高さ位置を調整するチルト機構8及びステアリングホイールの前後位置を調整するテレスコピック機構9が設けられている。
【0021】
コラムシャフト3は、ステアリングコラム5内において回転可能に収容されている。コラムシャフト3における車両の後方側(図1の右側)端部には、ステアリングホイールが固定されている。一方、コラムシャフト3における車両の前方側(図1の左側)端部には、図示しない自在継手を介してインターミディエイトシャフトが連結されており、ステアリング操作に伴う回転(操舵トルク)がラック&ピニオン機構等の転舵機構に伝達されることにより転舵輪の舵角が変更されるようになっている。なお、コラムシャフト3は、前方側端部が車両の上下方向下側に位置するように傾斜した状態で車両に搭載されている。
【0022】
コラムシャフト3は、ステアリングホイールが固定される中空状のアッパシャフト21と、アッパシャフト21にスプライン嵌合されることによりアッパシャフト21に対して軸方向に相対移動可能な軸状のロアシャフト22とを備えている。一方、ステアリングコラム5は、アッパシャフト21を収容支持するアウタチューブ24と、車体に固定されてロアシャフト22を収容するインナチューブ26とを備えている。
【0023】
図2に示されるように、上側支持機構29は、車両本体に固定される車体側ブラケット31と、ステアリングコラム5(アウタチューブ24)に固定されるコラム側ブラケット33と、これら車体側ブラケット31とコラム側ブラケット33とを連結する軸部材としてのチルトボルト35とを備えている。
【0024】
車体側ブラケット31は、2枚の平板状の側板31a,31bから構成されている。車体側ブラケット31の一対の左側板31a及び右側板31bには、チルト方向に延びるチルト長孔32がそれぞれ形成されている。
【0025】
コラム側ブラケット33は、ステアリングシャフト2の軸方向視で上向きの略コ字状に形成されている。コラム側ブラケット33には、一対の左側板33a及び右側板33bが設けられている。車体側ブラケット31の一対の左側板31a及び右側板31bには、テレスコ方向に延びるテレスコ長孔34がそれぞれ形成されている。各側板33a,33bの上端部は、それぞれ内側に折り曲げられるとともに溶接等によりステアリングコラム5(アウタチューブ24)に固定されている。
【0026】
チルトボルト35は、頭部35aと軸部35bとからなり、コラム側ブラケット33が車体側ブラケット31の内側に配置された状態で、軸部35bがチルト長孔32及びテレスコ長孔34に挿通される。そして、チルトボルト35の先端(図2の右側)にナット36が螺着されることにより、車体側ブラケット31とコラム側ブラケット33とを連結している。これにより、コラム側ブラケット33は、チルト長孔32の形成された範囲内で車体側ブラケット31に対してチルト方向に相対移動可能であるとともに、テレスコ長孔34の形成された範囲内で車体側ブラケット31に対してテレスコ方向に相対移動可能である。
【0027】
また、ステアリング装置には、ステアリングホイールの高さ位置及び前後位置を保持するための締付機構40が設けられている。チルトボルト35の頭部35aと車体側ブラケット31の左側板31aとの間には、チルトボルト35の軸を中心として同チルトボルト35と一体で回動可能である操作レバー41が設けられている。締付機構40は、操作レバー41の回動位置に応じて、車体側ブラケット31の側板31a,31bに対し、これら側板31a,31bがコラム側ブラケット33の側板33a,33bをチルトボルト35の軸方向両側から挟み込むように軸方向に力を与えるカム機構42を備えている。カム機構42は、チルトボルト35と一体回転する第1カム部材43、及び該第1カム部材43と相対回転可能な第2カム部材44を有し、その相対回転位置に応じてこれら第1カム部材43と第2カム部材44とが接離する構成となっている。
【0028】
そして、締付機構40は、操作レバー41を締付方向に回動させることで、カム機構42によって左側板33a,31a同士、及び右側板33b,31b同士が摩擦係合し、ステアリングコラム5の位置が保持されるロック状態となる。一方、締付機構40は、操作レバー41を締付解除方向に回動させることで、左側板33a,31a同士、及び右側板33b,31b同士の摩擦係合が解除され、ステアリングコラム5の位置を調整可能なアンロック状態となる。
【0029】
本実施形態のステアリング装置には、締付機構40の操作レバー41の締付方向への回動操作によって、インナチューブ26に対してコラム側ブラケット33の相対移動を固定するロック機構50が設けられている。ロック機構50は、締付機構40によって車体側ブラケット31とコラム側ブラケット33とが締め付けられた際に、インナチューブ26に対してアウタチューブ24の変位を更に規制する。
【0030】
チルトボルト35の軸部35bの外周には、コラム側ブラケット33の両側板33a,33bの間に収容される円筒状のポール51がセレーション嵌合されている。ポール51の外周面の軸方向中央には、操作レバー41が締付位置に回動された際にステアリングコラム5側へ最も突出するように偏心した偏心形状の凸部51aが形成されている。この凸部51aの外周には、リング状のカムリング52が滑り嵌合されている。そして、チルトボルト35とポール51とカムリング52とは、操作レバー41の回動操作によって一体に回動する。なお、ポール51とカムリング52が圧接カムを構成する。
【0031】
アウタチューブ24のインナチューブ26と重なるとともに、チルトボルト35に対向する部分には、貫通孔25が形成されている。そして、操作レバー41が締付位置に回動された際に前述のカムリング52がインナチューブ26に圧接して、インナチューブ26に対するコラム側ブラケット33の相対移動を固定する。
【0032】
ここで、図3に示されるように、本例のインナチューブ26とカムリング52との接触面は互いに平面且つ平行に形成されている。すなわち、インナチューブ26の外周面のカムリング52と対向する部分には、軸方向に延出して曲面ではなく平面に形成されたチューブ接触部27が設けられている。チューブ接触部27は、径方向外側へ突出して形成されている。また、カムリング52の外周面は円筒面とされ、操作レバー41が締付位置に回動された際にカムリング52のインナチューブ26に圧接する部分には、平面に形成されたカム接触部53が設けられている。そして、チューブ接触部27とカム接触部53とは、互いの平面同士が平行に形成されている。また、チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面がチルトボルト35の軸部35bの軸線Pと平行に形成されている。さらに、チルトボルト35の軸部35bの軸方向におけるチューブ接触部27の幅W1よりもカム接触部53の幅W2が大きく設定されている。なお、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、チルトボルト35の軸方向においてインナチューブ26のチューブ接触部27がカムリング52のカム接触部53の接触面の幅に含まれる。
【0033】
次に、前述のように構成されたステアリング装置のロック機構50の動作について図3を参照して説明する。なお、図3において、操作レバー41が締付方向に回動されてインナチューブ26にカムリング52が圧接した圧接状態におけるカムリング52の位置を実線で示し、操作レバー41が締付解除方向に回動されてインナチューブ26にカムリング52が圧接していない非圧接状態におけるカムリング52の位置を二点鎖線で示している。
【0034】
図3に示されるように、操作レバー41が規制位置へ操作されると、カムリング52がチルトボルト35とともに回動して、インナチューブ26に対して二点鎖線で示した非圧接状態から実線で示した圧接状態に変更される。
【0035】
このとき、カムリング52のカム接触部53とインナチューブ26のチューブ接触部27とは、チルトボルト35の軸方向に亘って全面が圧接して確実に接触している。例えば、チューブ接触部27とカム接触部53とがチルトボルト35の軸方向において相対的に位置がずれたとしても、カム接触部53とチューブ接触部27との接触面同士の距離は全面で同じであるとともに、位置ずれによって接触面同士の距離が変化しない。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カム接触部53とチューブ接触部27とが従来技術のように片当たりすることなく確実に接触し、インナチューブ26とアウタチューブ24との相対変位を確実に規制できる。また、組み付け時に位置ずれの許容範囲が大きくなり、インナチューブ26に対するカムリング52やポール51の組み付け作業が容易となる。
【0036】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)インナチューブ26に設けられたチューブ接触部27の接触面と、カムリング52に設けられたカム接触部53の接触面とが平面形状であって、且つ平行に形成されている。このため、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、カム接触部53とチューブ接触部27との接触面同士の距離は全面で同じである。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カム接触部53とチューブ接触部27とが従来技術のように片当たりすることなく、確実に接触することができる。
【0037】
(2)チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面がチルトボルト35の軸部35bの軸線Pと平行に形成されているので、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、カム接触部53とチューブ接触部27との接触面同士の距離は全面で同じであって、且つ接触面同士の距離が位置ずれによって変化しない。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カム接触部53とチューブ接触部27とが更に確実に接触することができる。
【0038】
(3)チルトボルト35の軸部35bの軸方向におけるチューブ接触部27の幅W1よりもカム接触部53の幅W2が大きく設定される。このため、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、チルトボルト35の軸方向においてチューブ接触部27がカム接触部53の接触面の幅に含まれる。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カム接触部53とチューブ接触部27とが更に確実に接触することができる。
【0039】
(4)操作レバー41を規制方向へ回動操作した際に、カム接触部53とチューブ接触部27との圧接による規制に加え、締付機構40による車体側ブラケット31とコラム側ブラケット33とが締め付けられるので、インナチューブ26とアウタチューブ24との相対変位を確実に規制することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、インナチューブ26を径方向外側へ突出させることでチューブ接触部27を形成したが、図4に示されるように、インナチューブ26を径方向内側へ凹ませることでチューブ接触部27を形成してもよい。このようにすれば、カムリング52が設けられた部分において、インナチューブ26の外径を小さくでき、ひいてはインナチューブ26とアウタチューブ24との規制を行う機構の体格を小さくできる。また、カム接触部53の幅W2よりもチルトボルト35の軸部35bの軸方向におけるチューブ接触部27の幅W1が大きく設定してもよい。このため、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、チルトボルト35の軸方向においてチューブ接触部27がカム接触部53の接触面の幅に含まれる。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カムリング52のカム接触部53とインナチューブ26のチューブ接触部27とが更に確実に接触することができる。
【0041】
・上記実施形態では、チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面がチルトボルト35の軸部35bの軸線Pと平行に形成したが、チルトボルト35の軸部35bの軸線Pと平行に形成しなくてもよい。例えば、図5に示されるように、チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面をチルトボルト35の軸部35bの軸線Pに対して平行ではなく角度を持って形成する。このようにすれば、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、カム接触部53とチューブ接触部27との接触面同士の距離は全面で同じである。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カムリング52のカム接触部53とインナチューブ26のチューブ接触部27とが従来技術のように片当たりすることなく、確実に接触することができる。
【0042】
・上記実施形態では、操作レバー41と締付機構40とを左側に設けたが、操作レバー41と締付機構40とを右側に設けてもよい。また、操作レバー41と締付機構40とを別々に設けてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、ポール51とカムリング52とを別部材としたが、ポール51とカムリング52とを一体形成してもよい。
・上記実施形態では、チルトボルト35がアウタチューブ24の下側に配置される構成としたが、チルトボルト35がアウタチューブ24の上側に配置される構成としてもよい。
【0044】
・上記実施形態において、チルト機構8を省略した構成を採用してもよい。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置において、前記軸部材には、前記操作レバーを回動操作した際に、前記車体側ブラケットと前記コラム側ブラケットとを締め付ける締付機構が設けられていることを特徴とするステアリング装置。
【0045】
同構成によれば、操作レバーを規制方向へ回動操作した際に、カム接触部とチューブ接触部との圧接による規制に加え、締付機構による車体側ブラケットとコラム側ブラケットとが締め付けられるので、インナチューブとアウタチューブとの相対変位を確実に規制することができる。
【符号の説明】
【0046】
2…ステアリングシャフト、3…コラムシャフト、5…ステアリングコラム、8…チルト機構、9…テレスコ機構、21…アッパシャフト、22…ロアシャフト、24…アウタチューブ、25…貫通孔、26…インナチューブ、27…チューブ接触部、29…上側支持機構、31…車体側ブラケット、31a…左側板、31b…右側板、32…チルト長孔、33…コラム側ブラケット、33a…左側板、33b…右側板、34…テレスコ長孔、35…チルトボルト、35a…頭部、35b…軸部、36…ナット、40…締付機構、41…操作レバー、42…カム機構、43…第1カム部材、44…第2カム部材、50…ロック機構、51…ポール、51a…凸部、52…カムリング、53…カム接触部、P…軸線、W1,W2…幅。
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレスコピック機構を備えたステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の体格等に応じてステアリングホイールの前後位置を調整するテレスコピック機構を備えたステアリング装置がある(例えば、特許文献1参照)。
こうしたステアリング装置は、アウタチューブ内にインナチューブを挿入させることで、軸方向に伸縮が可能となっている。ステアリング装置は、車両本体に固定される車体側ブラケットと、ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムに固定されるコラム側ブラケットと、これら両ブラケットを連結する軸部材とを備えている。コラム側ブラケットには、車両の略前後方向であるテレスコピック方向に延びるテレスコ長孔が形成されている。これにより、コラム側ブラケットは、テレスコ長孔の範囲で車体側ブラケットに対して相対移動可能となり、同範囲内でステアリングホイールの前後位置が調整可能な構成となっている。
【0003】
そして、ステアリング装置には、ステアリングホイールの位置調整後に、車体側ブラケットに対するコラム側ブラケットの位置を固定するための締付機構が設けられている。この締付機構は、操作レバーの回動操作によって、軸部材の軸方向へ車体側ブラケットとコラム側ブラケットとが締め付けられて狭着される。
【0004】
さらに、締付機構には、操作レバーの回動操作によって、軸部材の外周に設けられたカム形状の圧接カムが円筒状のインナチューブに圧接することでアウタチューブに対するインナチューブの移動を規制するロック機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−154789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載のステアリング装置のロック機構では、図6に示されるように、圧接カム150の接触面150aがインナチューブ126の外周面に一致するよう軸方向断面において円弧面となっている。このため、軸部材135の軸方向において圧接カム150の位置がインナチューブ126に対してずれてインナチューブ126の外周面と圧接カム150の接触面150aとが一致しない、すなわちインナチューブ126の法線Nが圧接カム150の幅方向の中心位置を通らないと、圧接カム150とインナチューブ126との接触が一部分だけになり確実に圧接できないおそれがあった。そして、組み付け時には、インナチューブ126に対する圧接カム150の位置に注意しなければならず、作業効率が悪かった。そこで、ロック機構の圧接カムがインナチューブに対して確実に圧接可能なステアリング装置が求められていた。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロック機構の圧接カムがインナチューブに対して確実に圧接可能なステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ロアシャフトを内部に回転自在に収容するインナチューブと、前記ロアシャフトに連係されるアッパシャフトと、該アッパシャフトを内部に回転自在に収容し、軸方向の長さ調整を可能に前記インナチューブの外周に装着され、前記インナチューブと重なる部位に軸方向に沿って開口する貫通孔を有するアウタチューブと、該アウタチューブを軸方向へ進退可能に車体に取り付けるブラケットと、該ブラケットに回動自在に支持された軸部を有する軸部材と、該軸部材を回転させる操作レバーと、前記軸部材の前記軸部上に設けられ、径方向の寸法が周方向に沿って次第に変化する偏心形状を有し、前記操作レバーが回動操作されることで前記インナチューブに圧接され、前記インナチューブと前記アウタチューブとの相対変位を規制する圧接カムと、を備えるステアリング装置であって、前記インナチューブと前記圧接カムとが接触する各部位には平面形状を有するチューブ接触部とカム接触部とがそれぞれ設けられ、前記チューブ接触部とカム接触部との各接触面が平行に形成されていることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、インナチューブに設けられたチューブ接触部の接触面と、圧接カムに設けられたカム接触部の接触面とが平面形状であって、且つ平行に形成されている。このため、軸部材の軸方向において圧接カムが本来の位置からずれたとしても、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部との接触面同士の距離は全面で同じである。よって、操作レバーが規制方向へ回動操作されて圧接カムがインナチューブを圧接する際に、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部とが従来技術のように片当たりすることなく、確実に接触することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリング装置において、前記チューブ接触部と前記カム接触部との各接触面は、前記軸部材の前記軸部の軸線と平行に形成されていることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、チューブ接触部とカム接触部との各接触面が軸部材の軸部の軸線と平行に形成されているので、軸部材の軸方向において圧接カムが本来の位置からずれたとしても、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部との接触面同士の距離は全面で同じであって、且つ接触面同士の距離がずれによって変化しない。よって、操作レバーが規制方向へ回動操作されて圧接カムがインナチューブを圧接する際に、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部とが更に確実に接触することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のステアリング装置において、前記軸部材の前記軸部の軸方向における前記チューブ接触部の幅よりも前記カム接触部の幅を大きく設定することをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、軸部材の軸部の軸方向におけるチューブ接触部の幅よりもカム接触部の幅が大きく設定されるので、軸部材の軸方向において圧接カムが本来の位置からずれたとしても、軸部材の軸方向においてインナチューブのチューブ接触部が圧接カムのカム接触部の接触面の幅に含まれる。よって、操作レバーが規制方向へ回動操作されて圧接カムがインナチューブを圧接する際に、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部とが更に確実に接触することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のステアリング装置において、前記軸部材の前記軸部の軸方向における前記カム接触部の幅よりも前記チューブ接触部の幅を大きく設定することをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、軸部材の軸部の軸方向におけるカム接触部の幅よりもチューブ接触部の幅が大きく設定されるので、軸部材の軸方向において圧接カムが本来の位置からずれたとしても、軸部材の軸方向において圧接カムのカム接触部がインナチューブのチューブ接触部の接触面の幅に含まれる。よって、操作レバーが規制方向へ回動操作されて圧接カムがインナチューブを圧接する際に、圧接カムのカム接触部とインナチューブのチューブ接触部とが更に確実に接触することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置において、前記チューブ接触部は、前記インナチューブを径方向内側へ凹ませることで形成することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、インナチューブを径方向内側へ凹ませることでチューブ接触部を形成するので、圧接カムが設けられた部分において、インナチューブの外径を小さくでき、ひいてはインナチューブとアウタチューブとの規制を行う機構の体格を小さくできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ステアリング装置において、ロック機構の圧接カムがインナチューブに対して確実に圧接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ステアリング装置の構成を示す縦断面図。
【図2】ステアリング装置の構成を示す横断面図。
【図3】ステアリング装置の構成を示す図2の拡大図。
【図4】ステアリング装置の構成を示す横断面図。
【図5】ステアリング装置の構成を示す横断面図。
【図6】従来のステアリング装置の構成を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、テレスコピック機構を備えたステアリング装置に本発明を具体化した一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
図1に示されるように、ステアリング装置は、図示しないステアリングホイールが接続されるステアリングシャフト2の一部を構成するコラムシャフト3を備え、このコラムシャフト3の上側、つまり車両の後方側の箇所が上側支持機構29によって支持されている。なお、上側支持機構29には、ステアリングホイールの高さ位置を調整するチルト機構8及びステアリングホイールの前後位置を調整するテレスコピック機構9が設けられている。
【0021】
コラムシャフト3は、ステアリングコラム5内において回転可能に収容されている。コラムシャフト3における車両の後方側(図1の右側)端部には、ステアリングホイールが固定されている。一方、コラムシャフト3における車両の前方側(図1の左側)端部には、図示しない自在継手を介してインターミディエイトシャフトが連結されており、ステアリング操作に伴う回転(操舵トルク)がラック&ピニオン機構等の転舵機構に伝達されることにより転舵輪の舵角が変更されるようになっている。なお、コラムシャフト3は、前方側端部が車両の上下方向下側に位置するように傾斜した状態で車両に搭載されている。
【0022】
コラムシャフト3は、ステアリングホイールが固定される中空状のアッパシャフト21と、アッパシャフト21にスプライン嵌合されることによりアッパシャフト21に対して軸方向に相対移動可能な軸状のロアシャフト22とを備えている。一方、ステアリングコラム5は、アッパシャフト21を収容支持するアウタチューブ24と、車体に固定されてロアシャフト22を収容するインナチューブ26とを備えている。
【0023】
図2に示されるように、上側支持機構29は、車両本体に固定される車体側ブラケット31と、ステアリングコラム5(アウタチューブ24)に固定されるコラム側ブラケット33と、これら車体側ブラケット31とコラム側ブラケット33とを連結する軸部材としてのチルトボルト35とを備えている。
【0024】
車体側ブラケット31は、2枚の平板状の側板31a,31bから構成されている。車体側ブラケット31の一対の左側板31a及び右側板31bには、チルト方向に延びるチルト長孔32がそれぞれ形成されている。
【0025】
コラム側ブラケット33は、ステアリングシャフト2の軸方向視で上向きの略コ字状に形成されている。コラム側ブラケット33には、一対の左側板33a及び右側板33bが設けられている。車体側ブラケット31の一対の左側板31a及び右側板31bには、テレスコ方向に延びるテレスコ長孔34がそれぞれ形成されている。各側板33a,33bの上端部は、それぞれ内側に折り曲げられるとともに溶接等によりステアリングコラム5(アウタチューブ24)に固定されている。
【0026】
チルトボルト35は、頭部35aと軸部35bとからなり、コラム側ブラケット33が車体側ブラケット31の内側に配置された状態で、軸部35bがチルト長孔32及びテレスコ長孔34に挿通される。そして、チルトボルト35の先端(図2の右側)にナット36が螺着されることにより、車体側ブラケット31とコラム側ブラケット33とを連結している。これにより、コラム側ブラケット33は、チルト長孔32の形成された範囲内で車体側ブラケット31に対してチルト方向に相対移動可能であるとともに、テレスコ長孔34の形成された範囲内で車体側ブラケット31に対してテレスコ方向に相対移動可能である。
【0027】
また、ステアリング装置には、ステアリングホイールの高さ位置及び前後位置を保持するための締付機構40が設けられている。チルトボルト35の頭部35aと車体側ブラケット31の左側板31aとの間には、チルトボルト35の軸を中心として同チルトボルト35と一体で回動可能である操作レバー41が設けられている。締付機構40は、操作レバー41の回動位置に応じて、車体側ブラケット31の側板31a,31bに対し、これら側板31a,31bがコラム側ブラケット33の側板33a,33bをチルトボルト35の軸方向両側から挟み込むように軸方向に力を与えるカム機構42を備えている。カム機構42は、チルトボルト35と一体回転する第1カム部材43、及び該第1カム部材43と相対回転可能な第2カム部材44を有し、その相対回転位置に応じてこれら第1カム部材43と第2カム部材44とが接離する構成となっている。
【0028】
そして、締付機構40は、操作レバー41を締付方向に回動させることで、カム機構42によって左側板33a,31a同士、及び右側板33b,31b同士が摩擦係合し、ステアリングコラム5の位置が保持されるロック状態となる。一方、締付機構40は、操作レバー41を締付解除方向に回動させることで、左側板33a,31a同士、及び右側板33b,31b同士の摩擦係合が解除され、ステアリングコラム5の位置を調整可能なアンロック状態となる。
【0029】
本実施形態のステアリング装置には、締付機構40の操作レバー41の締付方向への回動操作によって、インナチューブ26に対してコラム側ブラケット33の相対移動を固定するロック機構50が設けられている。ロック機構50は、締付機構40によって車体側ブラケット31とコラム側ブラケット33とが締め付けられた際に、インナチューブ26に対してアウタチューブ24の変位を更に規制する。
【0030】
チルトボルト35の軸部35bの外周には、コラム側ブラケット33の両側板33a,33bの間に収容される円筒状のポール51がセレーション嵌合されている。ポール51の外周面の軸方向中央には、操作レバー41が締付位置に回動された際にステアリングコラム5側へ最も突出するように偏心した偏心形状の凸部51aが形成されている。この凸部51aの外周には、リング状のカムリング52が滑り嵌合されている。そして、チルトボルト35とポール51とカムリング52とは、操作レバー41の回動操作によって一体に回動する。なお、ポール51とカムリング52が圧接カムを構成する。
【0031】
アウタチューブ24のインナチューブ26と重なるとともに、チルトボルト35に対向する部分には、貫通孔25が形成されている。そして、操作レバー41が締付位置に回動された際に前述のカムリング52がインナチューブ26に圧接して、インナチューブ26に対するコラム側ブラケット33の相対移動を固定する。
【0032】
ここで、図3に示されるように、本例のインナチューブ26とカムリング52との接触面は互いに平面且つ平行に形成されている。すなわち、インナチューブ26の外周面のカムリング52と対向する部分には、軸方向に延出して曲面ではなく平面に形成されたチューブ接触部27が設けられている。チューブ接触部27は、径方向外側へ突出して形成されている。また、カムリング52の外周面は円筒面とされ、操作レバー41が締付位置に回動された際にカムリング52のインナチューブ26に圧接する部分には、平面に形成されたカム接触部53が設けられている。そして、チューブ接触部27とカム接触部53とは、互いの平面同士が平行に形成されている。また、チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面がチルトボルト35の軸部35bの軸線Pと平行に形成されている。さらに、チルトボルト35の軸部35bの軸方向におけるチューブ接触部27の幅W1よりもカム接触部53の幅W2が大きく設定されている。なお、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、チルトボルト35の軸方向においてインナチューブ26のチューブ接触部27がカムリング52のカム接触部53の接触面の幅に含まれる。
【0033】
次に、前述のように構成されたステアリング装置のロック機構50の動作について図3を参照して説明する。なお、図3において、操作レバー41が締付方向に回動されてインナチューブ26にカムリング52が圧接した圧接状態におけるカムリング52の位置を実線で示し、操作レバー41が締付解除方向に回動されてインナチューブ26にカムリング52が圧接していない非圧接状態におけるカムリング52の位置を二点鎖線で示している。
【0034】
図3に示されるように、操作レバー41が規制位置へ操作されると、カムリング52がチルトボルト35とともに回動して、インナチューブ26に対して二点鎖線で示した非圧接状態から実線で示した圧接状態に変更される。
【0035】
このとき、カムリング52のカム接触部53とインナチューブ26のチューブ接触部27とは、チルトボルト35の軸方向に亘って全面が圧接して確実に接触している。例えば、チューブ接触部27とカム接触部53とがチルトボルト35の軸方向において相対的に位置がずれたとしても、カム接触部53とチューブ接触部27との接触面同士の距離は全面で同じであるとともに、位置ずれによって接触面同士の距離が変化しない。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カム接触部53とチューブ接触部27とが従来技術のように片当たりすることなく確実に接触し、インナチューブ26とアウタチューブ24との相対変位を確実に規制できる。また、組み付け時に位置ずれの許容範囲が大きくなり、インナチューブ26に対するカムリング52やポール51の組み付け作業が容易となる。
【0036】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)インナチューブ26に設けられたチューブ接触部27の接触面と、カムリング52に設けられたカム接触部53の接触面とが平面形状であって、且つ平行に形成されている。このため、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、カム接触部53とチューブ接触部27との接触面同士の距離は全面で同じである。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カム接触部53とチューブ接触部27とが従来技術のように片当たりすることなく、確実に接触することができる。
【0037】
(2)チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面がチルトボルト35の軸部35bの軸線Pと平行に形成されているので、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、カム接触部53とチューブ接触部27との接触面同士の距離は全面で同じであって、且つ接触面同士の距離が位置ずれによって変化しない。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カム接触部53とチューブ接触部27とが更に確実に接触することができる。
【0038】
(3)チルトボルト35の軸部35bの軸方向におけるチューブ接触部27の幅W1よりもカム接触部53の幅W2が大きく設定される。このため、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、チルトボルト35の軸方向においてチューブ接触部27がカム接触部53の接触面の幅に含まれる。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カム接触部53とチューブ接触部27とが更に確実に接触することができる。
【0039】
(4)操作レバー41を規制方向へ回動操作した際に、カム接触部53とチューブ接触部27との圧接による規制に加え、締付機構40による車体側ブラケット31とコラム側ブラケット33とが締め付けられるので、インナチューブ26とアウタチューブ24との相対変位を確実に規制することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、インナチューブ26を径方向外側へ突出させることでチューブ接触部27を形成したが、図4に示されるように、インナチューブ26を径方向内側へ凹ませることでチューブ接触部27を形成してもよい。このようにすれば、カムリング52が設けられた部分において、インナチューブ26の外径を小さくでき、ひいてはインナチューブ26とアウタチューブ24との規制を行う機構の体格を小さくできる。また、カム接触部53の幅W2よりもチルトボルト35の軸部35bの軸方向におけるチューブ接触部27の幅W1が大きく設定してもよい。このため、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、チルトボルト35の軸方向においてチューブ接触部27がカム接触部53の接触面の幅に含まれる。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カムリング52のカム接触部53とインナチューブ26のチューブ接触部27とが更に確実に接触することができる。
【0041】
・上記実施形態では、チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面がチルトボルト35の軸部35bの軸線Pと平行に形成したが、チルトボルト35の軸部35bの軸線Pと平行に形成しなくてもよい。例えば、図5に示されるように、チューブ接触部27とカム接触部53との各接触面をチルトボルト35の軸部35bの軸線Pに対して平行ではなく角度を持って形成する。このようにすれば、チルトボルト35の軸方向においてカムリング52が本来の位置からずれたとしても、カム接触部53とチューブ接触部27との接触面同士の距離は全面で同じである。よって、操作レバー41が規制方向へ回動操作されてカムリング52がインナチューブ26を圧接する際に、カムリング52のカム接触部53とインナチューブ26のチューブ接触部27とが従来技術のように片当たりすることなく、確実に接触することができる。
【0042】
・上記実施形態では、操作レバー41と締付機構40とを左側に設けたが、操作レバー41と締付機構40とを右側に設けてもよい。また、操作レバー41と締付機構40とを別々に設けてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、ポール51とカムリング52とを別部材としたが、ポール51とカムリング52とを一体形成してもよい。
・上記実施形態では、チルトボルト35がアウタチューブ24の下側に配置される構成としたが、チルトボルト35がアウタチューブ24の上側に配置される構成としてもよい。
【0044】
・上記実施形態において、チルト機構8を省略した構成を採用してもよい。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置において、前記軸部材には、前記操作レバーを回動操作した際に、前記車体側ブラケットと前記コラム側ブラケットとを締め付ける締付機構が設けられていることを特徴とするステアリング装置。
【0045】
同構成によれば、操作レバーを規制方向へ回動操作した際に、カム接触部とチューブ接触部との圧接による規制に加え、締付機構による車体側ブラケットとコラム側ブラケットとが締め付けられるので、インナチューブとアウタチューブとの相対変位を確実に規制することができる。
【符号の説明】
【0046】
2…ステアリングシャフト、3…コラムシャフト、5…ステアリングコラム、8…チルト機構、9…テレスコ機構、21…アッパシャフト、22…ロアシャフト、24…アウタチューブ、25…貫通孔、26…インナチューブ、27…チューブ接触部、29…上側支持機構、31…車体側ブラケット、31a…左側板、31b…右側板、32…チルト長孔、33…コラム側ブラケット、33a…左側板、33b…右側板、34…テレスコ長孔、35…チルトボルト、35a…頭部、35b…軸部、36…ナット、40…締付機構、41…操作レバー、42…カム機構、43…第1カム部材、44…第2カム部材、50…ロック機構、51…ポール、51a…凸部、52…カムリング、53…カム接触部、P…軸線、W1,W2…幅。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアシャフトを内部に回転自在に収容するインナチューブと、前記ロアシャフトに連係されるアッパシャフトと、該アッパシャフトを内部に回転自在に収容し、軸方向の長さ調整を可能に前記インナチューブの外周に装着され、前記インナチューブと重なる部位に軸方向に沿って開口する貫通孔を有するアウタチューブと、該アウタチューブを軸方向へ進退可能に車体に取り付けるブラケットと、該ブラケットに回動自在に支持された軸部を有する軸部材と、該軸部材を回転させる操作レバーと、前記軸部材の前記軸部上に設けられ、径方向の寸法が周方向に沿って次第に変化する偏心形状を有し、前記操作レバーが回動操作されることで前記インナチューブに圧接され、前記インナチューブと前記アウタチューブとの相対変位を規制する圧接カムと、を備えるステアリング装置であって、
前記インナチューブと前記圧接カムとが接触する各部位には平面形状を有するチューブ接触部とカム接触部とがそれぞれ設けられ、前記チューブ接触部とカム接触部との各接触面が平行に形成されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記チューブ接触部と前記カム接触部との各接触面は、前記軸部材の前記軸部の軸線と平行に形成されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステアリング装置において、
前記軸部材の前記軸部の軸方向における前記チューブ接触部の幅よりも前記カム接触部の幅を大きく設定する
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のステアリング装置において、
前記軸部材の前記軸部の軸方向における前記カム接触部の幅よりも前記チューブ接触部の幅を大きく設定する
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置において、
前記チューブ接触部は、前記インナチューブを径方向内側へ凹ませることで形成する
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項1】
ロアシャフトを内部に回転自在に収容するインナチューブと、前記ロアシャフトに連係されるアッパシャフトと、該アッパシャフトを内部に回転自在に収容し、軸方向の長さ調整を可能に前記インナチューブの外周に装着され、前記インナチューブと重なる部位に軸方向に沿って開口する貫通孔を有するアウタチューブと、該アウタチューブを軸方向へ進退可能に車体に取り付けるブラケットと、該ブラケットに回動自在に支持された軸部を有する軸部材と、該軸部材を回転させる操作レバーと、前記軸部材の前記軸部上に設けられ、径方向の寸法が周方向に沿って次第に変化する偏心形状を有し、前記操作レバーが回動操作されることで前記インナチューブに圧接され、前記インナチューブと前記アウタチューブとの相対変位を規制する圧接カムと、を備えるステアリング装置であって、
前記インナチューブと前記圧接カムとが接触する各部位には平面形状を有するチューブ接触部とカム接触部とがそれぞれ設けられ、前記チューブ接触部とカム接触部との各接触面が平行に形成されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記チューブ接触部と前記カム接触部との各接触面は、前記軸部材の前記軸部の軸線と平行に形成されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステアリング装置において、
前記軸部材の前記軸部の軸方向における前記チューブ接触部の幅よりも前記カム接触部の幅を大きく設定する
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のステアリング装置において、
前記軸部材の前記軸部の軸方向における前記カム接触部の幅よりも前記チューブ接触部の幅を大きく設定する
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置において、
前記チューブ接触部は、前記インナチューブを径方向内側へ凹ませることで形成する
ことを特徴とするステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−103602(P2013−103602A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248527(P2011−248527)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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