説明

ステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計

【課題】レトログラード運針を行うアナログ電子時計において、正転駆動から逆転駆動への切替え時に運針異常が生じないようにすること。
【解決手段】クロノグラフ指針を駆動するステッピングモータ102と、ステッピングモータ102の駆動を正転駆動と逆転駆動に切替駆動することによって前記クロノグラフ指針をレトログラード運針する制御手段とを備え、前記制御手段は、ステッピングモータ102の駆動を正転駆動から逆転駆動に切り替える際の切替間隔を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御回路及び前記ステッピングモータ制御回路を用いたアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
ストップウォッチ機能などを備えたアナログ電子時計において、時計回りの正転運針後、直ちに反時計回りの逆転運針を繰り返す、いわゆるレトログラード運針を備えたものが実現化されている(例えば特許文献1参照)。
前記アナログ電子時計では指針を回転駆動するモータとして、ロータ収容孔及びロータの停止位置を決める位置決め部を有するステータと、前記ロータ収容孔内に配設されたロータと、コイルとを有し、前記コイルに交番信号を供給して前記ステータに磁束を発生させることによって前記ロータを回転させると共に、前記位置決め部に対応する位置に前記ロータを停止するようにした2極PM(Permanent Magnet)型ステッピングモータが使用されている。
【0003】
図8は前記ステッピングモータを正方向及び逆方向に回転駆動する場合の波形図で、図8の例では反時計回り方向を正方向、時計回り方向を逆方向とし、ステッピングモータが正方向に回転したときに時計回り方向の正転運針が行われ、ステッピングモータが逆方向に回転したときに反時計回り方向の逆転運針が行われる。
図8(a)に示すように、正転駆動用の正転駆動パルスPfはステッピングモータを正転させるための回転駆動部Pw1とステッピングモータに制動をかけるための制動部Pr1を有している。正転駆動パルスPf1による一方極性の駆動と、正転駆動パルスPf2による他極性の駆動とを、正転駆動間隔Sfを空けて交互に行うことにより、所定角度ずつ連続して正転する駆動が行われる。逆転駆動用の逆転駆動パルスPbは、パルス幅が相互に異なる複数のパルスP1〜P3を有しており、逆転駆動パルスPb1による一方極性の駆動と、逆転駆動パルスPb2による他極性の駆動とを、逆転駆動間隔Sbを空けて交互に行うことにより、所定角度ずつ連続して逆転する駆動が行われる。正転駆動から逆転駆動への切替は切替間隔S1を空けて行われる。
【0004】
前記正逆転駆動は、たとえば、正転を20ステップ運針後、逆転を20ステップ運針し、元の位置に戻る。このとき、ストップウォッチの機能にもよるが、1/10秒計測などの場合、正転64Hz駆動、逆転32Hz駆動など、高速駆動が要求されている。高速正転駆動の場合、15.6ミリ秒(ms)、逆転駆動の場合、31.3ms周期で駆動パルスが出力される。実際は、正転パルスの幅約10ms、逆転パルスの幅約20msあるので、出力間隔は10ms程度である。
【0005】
出力間隔に余裕がないと、ステッピングモータのロータの振動が減衰しきる前に次の駆動パルスが印加されてしまうため、前記ロータの静止位置が不安定になる(図8(b))。特に正転駆動から逆転駆動への切替え時は、切替間隔S1が短いと脱調して、ロータを回転できなかったり、オーバーランしてしまう等の回転異常が生じ、その結果、正常な運針ができずに運針異常が発生するという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2には、ステッピングモータの駆動電流波形の谷を検出して回転終了タイミングを判定し、主駆動パルス幅を制御するようにした発明が開示されている。高抵抗回路と低抵抗回路のスイッチングを行って誘起信号を検出するような構成を用いることなく、駆動電流波形に基づいてステッピングモータの駆動制御を行うため、構成が簡単になるという利点があるが、正逆回転切替時の前記回転異常等の問題に関しては何等記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−211490号公報
【特許文献2】特開昭53−45570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑み成されたもので、正転駆動から逆転駆動への切替え時に回転異常が生じないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点によれば、指針を駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータの駆動を正転駆動と逆転駆動に切替駆動することによって前記指針をレトログラード運針する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ステッピングモータの駆動を正転駆動から逆転駆動に切り替える際の切替間隔を調整することを特徴とするステッピングモータ制御回路が提供される。
【0010】
本発明の第2の視点によれば、指針を駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータの駆動を正転駆動と逆転駆動に切替駆動することによって前記指針をレトログラード運針する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ステッピングモータの駆動を正転駆動から逆転駆動に切替える場合、最後の正転駆動パルス駆動時の制動を他の正転駆動パルス駆動時の制動よりも大きくすることを特徴とするステッピングモータ制御回路が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の視点によれば、指針を回転駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータを制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、前記ステッピングモータ制御回路として、前記いずれか一に記載のステッピングモータ制御回路を用いたことを特徴とするアナログ電子時計が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るステッピングモータ制御回路によれば、正転駆動から逆転駆動への切替え時に回転異常が生じないようにすることができる。
また、本発明に係るアナログ電子時計によれば、レトログラード運針を行うアナログ電子時計において、正転駆動から逆転駆動への切替え時に運針異常が生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計に使用するステッピングモータの構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を説明するための信号波形図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を説明するための拡大信号波形図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を説明するための拡大信号波形図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を説明するための信号波形図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計の動作を説明するための信号波形図である。
【図8】従来のアナログ電子時計の動作を説明するための信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びこれを用いたアナログ電子時計について説明する。尚、各図において、同一部分には同一符号を付している。
図1は、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路を用いたアナログ電子時計のブロック図で、クロノグラフ指針を扇形に正逆回転駆動(レトログラード運針)することによって計測時間を表示するクロノグラフ機能と、時刻を計時して表示する計時機能とを有するクロノグラフ時計の例を示している。図1には主にクロノグラフ機能に関する構成部分を示しており、一般的な構成である時計機能に関する構成部分は省略して描いている。
尚、レトログラード運針させる指針としては、クロノグラフ時計の場合にはクロノグラフ針(例えばクロノグラフ秒針)あるいは時刻針のいずれとしてもよく又、時刻表示機能のみを有するアナログ電子時計の場合には時刻針でもよい。
【0015】
図1において、アナログ電子時計は、ステッピングモータ制御回路101、ステッピングモータ制御回路101によって回転制御され、クロノグラフ指針(図示せず)を回転駆動してレトログラード運針させるステッピングモータ102、ステッピングモータ制御回路101やステッピングモータ102等の回路要素に駆動電力を供給する電池等の電源103を備えている。
ステッピングモータ102は、ステッピングモータ駆動パルス回路107によって正転駆動及び逆転駆動が行われるステッピングモータで、図示しないクロノグラフ指針を扇形に正方向及び逆方向に運針する。
【0016】
ステッピングモータ制御回路101は、所定周波数の信号を発生する発振回路104、発振回路104で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する分周回路105、電子時計を構成する各電子回路要素の制御や駆動パルスの変更制御等の制御を行う制御回路106、制御回路106からの制御信号に基づいてステッピングモータ102にモータ回転駆動用の駆動パルスを選択し出力するステッピングモータ駆動パルス回路107、ステッピングモータ102の駆動によって生じる自由振動の大きさに応じてステッピングモータ102の駆動コイルに流れる電流を検出する電流検出回路108を備えている。
【0017】
電流検出回路108は、前記特許文献2に記載された回路と同様に、ステッピングモータ102の駆動コイルと直列接続された検出抵抗を有しており、所定の検出期間において、ステッピングモータ102駆動直後に前記検出抵抗に生じる電圧に基づいて駆動コイルに流れる電流が所定値を超えるか否かを検出するものである。
詳細は後述するが、制御回路106は、電流検出回路108が前記検出抵抗に所定値を超える電圧が生じた(即ち、駆動コイルに所定値を超える電流が流れた)ことを検出した場合ステッピングモータ102のロータの振動が安定していないと判定し、電流検出回路108が前記検出抵抗に前記所定値を超える電圧が生じない(即ち、駆動コイルに所定値を超える電流が流れない)ことを検出した場合にはステッピングモータ102のロータの振動が安定していると判定し、ロータの振動が安定しているか否かに応じて、正逆駆動パルスの切替間隔を調整する。
尚、発振回路104及び分周回路105は信号発生手段を構成し、電流検出回路108は、電流検出手段を構成している。また、発振回路104、分周回路105、制御回路106、ステッピングモータ駆動パルス回路107、電流検出回路108は制御手段を構成している。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態に使用するステッピングモータ102の構成図で、アナログ電子時計で一般に用いられている2極PM型ステッピングモータの例を示している。
図2において、ステッピングモータ102は、ロータ収容用貫通孔203を有するステータ201、ロータ収容用貫通孔203に回転可能に配設されたロータ202、ステータ201と接合された磁心208、磁心208に巻回された駆動コイル209を備えている。ステッピングモータ102をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201及び磁心208はネジ又はカシメ(図示せず)によって地板(図示せず)に固定され、互いに接合される。駆動コイル209は、第1端子OUT1、第2端子OUT2を有している。
【0019】
ロータ202は、2極(S極及びN極)に着磁されている。磁性材料によって形成されたステータ201の外端部には、ロータ収容用貫通孔203を挟んで対向する位置に複数(本実施の形態では2個)の切り欠き部(外ノッチ)206、207が設けられている。各外ノッチ206、207とロータ収容用貫通孔203間には可飽和部210、211が設けられている。
【0020】
可飽和部210、211は、ロータ202の磁束によっては磁気飽和せず、駆動コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなるように構成されている。ロータ収容用貫通孔203は、輪郭が円形の貫通孔の対向部分に複数(本実施の形態では2つ)の半月状の切り欠き部(内ノッチ)204、205を一体形成した円孔形状に構成されている。
【0021】
切り欠き部204、205は、ロータ202の停止位置を決めるための位置決め部を構成している。駆動コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、図2に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204、205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止している。
【0022】
いま、ステッピングモータ駆動パルス回路107から第1極性(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)の正転駆動パルスを駆動コイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して、図2の矢印方向に電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は図2の矢印方向に180度回転し、磁極軸が角度θ1位置で安定的に停止する。
尚、詳細は後述するが、正転駆動パルスは、所定時間幅を有し矩形波状の回転駆動部と短い時間幅の複数のパルスを有する櫛歯状の制動部とを有している。正転駆動パルスは、回転駆動部及び制動部を連続する1つの矩形波によって構成する、回転駆動部及び制動部の双方を櫛歯状の駆動パルスによって構成する等の変更が可能である。
【0023】
次に、ステッピングモータ駆動パルス回路107から、前記第1極性とは異なる第2極性(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)の正転駆動パルスを駆動コイル209の端子OUT1、OUT2に供給して、図2の反矢印i方向に電流を流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向に180度回転し、磁極軸Aが角度θ0位置で安定的に停止する。
【0024】
以後、このように、駆動コイル209に対して極性の異なる正転駆動パルス(交番信号)を供給することによって、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ矢印方向に連続的に回転させることができるように構成されている。
尚ここでは、ステッピングモータ102の回転方向は、反時計回り方向を正方向とし、その逆(時計回り方向)を逆方向としている。ステッピングモータ102が正方向に回転すると指針は時計回り方向に回転し、ステッピングモータ102が逆方向に回転すると指針は反時計回り方向に回転するように構成されている。
【0025】
ステッピングモータ102を逆方向に回転させる場合には、パルス幅が相互に異なる複数(例えば3つ)のパルスを有する逆転駆動パルスを用いて、前述した正転動作と同様に、第1極性と第2極性に交互に極性を切替えながら駆動する。これにより、逆転駆動パルスによって駆動する毎に、ロータ202が180度ずつ時計回り方向に逆転し、指針が反時計回り方向に回転する。
このようにして、正転駆動を複数回行い、逆転駆動を複数回行うことにより、表示領域の一端から他端までの間でレトログラード運針を行う。
図3は、本発明の第1の実施の形態の動作を説明するための信号波形図、図4及び図5は本発明の第1の実施の形態の動作を説明するための拡大信号波形図である。
【0026】
以下、図1〜図5を参照して、本発明の第1の実施の形態の動作を説明する。
発振回路104は所定周波数の基準クロック信号を発生し、分周回路105が発振回路104で発生した前記信号を分周して計時の基準となる時計信号を制御回路106に出力する。時刻表示を行う場合、制御回路106は前記時計信号を計時して時刻表時用のステッピングモータ(図示せず)を駆動し、時刻針により時刻表示を行う。
時間計測動作を開始させる場合、先ず、使用者が図示しない操作部をスタート操作して計測動作をスタートさせる。
【0027】
制御部106は、前記スタート操作に応答して、分周回路105からの時計信号を計測し、所定時間計測する毎に、正転駆動させるための制御信号をステッピングモータ駆動パルス回路107に出力する。ステッピングモータ駆動パルス回路107は、制御回路106からの制御信号に応答して、ステッピングモータ102を順次正転駆動する。
制御部106は、正転駆動させるための制御信号を所定回数ステッピングモータ駆動パルス回路107に出力して指針が所定時間正転運針するように、ステッピングモータ駆動パルス回路107にステッピングモータ102を正転駆動させる。その後、所定時間計測する毎に、ステッピングモータ102を逆転駆動させるための制御信号をステッピングモータ駆動パルス回路107に出力する。ステッピングモータ駆動パルス回路107は、制御回路106からの各制御信号に応答して、ステッピングモータ102を逆転駆動する。これにより、レトログラード運針が行われる。
【0028】
図3を用いて、制御回路106がステッピングモータ駆動パルス回路107を制御して、ステッピングモータ102を正逆転駆動する動作を説明する。
図3において、制御回路106はステッピングモータ102を正転駆動する場合、所定時間計測する毎に、ステッピングモータ駆動パルス回路107が極性の異なる正転駆動用の正転駆動パルスPf1、Pf2を交互に出力するようにステッピングモータ駆動パルス回路107を制御する。
【0029】
一方の極性の正転駆動パルスPf1は、正転させるための回転駆動部Pw1と制動をかけるための制動部Pr1を備えており、他方の極性の正転駆動パルスPf2も、正転させるための回転駆動部Pw1と制動をかけるための制動部Pr1を備えている。各正転駆動パルスPf1、Pf2間には、ロータの振動を一定以下に減衰させて安定に回転させるための期間である正転駆動間隔Sfが設けられている。ステッピングモータ102は、各正転駆動パルスPf1、Pf2に含まれる回転駆動部Pw1によって正転駆動された後、制動部Pr1によって制動がかけられる。前記正転駆動が行われることにより、クロノグラフ指針が表示部の一端から他端に向かって一定周期で運針される。
【0030】
前記正転駆動が所定回数行われてクロノグラフ指針が他端に到達すると、制御回路106は、制御信号を出力して逆転駆動するようにステッピングモータ駆動パルス回路107を制御する。この場合、制御回路106は、所定時間計測する毎に、ステッピングモータ駆動パルス回路107が極性の異なる逆転駆動用の逆転駆動パルスPb1、Pb2を交互に出力するようにステッピングモータ駆動パルス回路107を制御する。
【0031】
一方の極性の逆転駆動パルスPb1と他方の極性の逆転駆動パルスPb2は極性が異なる以外は同一波形の駆動パルスであり、逆転駆動パルスPb1は相互にパルス幅が異なる複数(図3の例では3つ)のパルス部P1〜P3を備え、逆転駆動パルスPb2も相互にパルス幅が異なる複数(図3の例では3つ)のパルス部P1〜P3を備えている。各逆転駆動パルスPb1、Pb2間には、ロータの振動を一定以下に減衰させて安定に回転させるための期間である逆転駆動間隔Sbが設けられている。また、正逆駆動切替前の最後の正転駆動パルスPf2と正逆駆動切替後の最初の逆転駆動パルスPb1との間には、最後の正転駆動後にロータ202の振動を一定以下に減衰させて安定に逆転駆動させるための期間である切替間隔S1が設けられている。
ステッピングモータ102は各逆転駆動パルスPb1、Pb2によって逆転駆動され、指針が表示部の前記他端から前記一端に向かって一定周期で逆方向に運針される。
【0032】
ところで、前記最後の正転駆動パルスPf2による駆動が行われると、電流検出回路108がステッピングモータ102の駆動コイル209に流れる電流を検出する。
前述したように駆動コイル209には検出抵抗が接続されており、ステッピングモータ102を最後の正転駆動パルスPf2によって駆動した後、ロータ202の自由振動によって駆動コイル209に流れる電流に応じた電圧が前記検出抵抗に発生する。
前記検出抵抗に生じる電圧は、ロータ202の振動の大きさに応じて、図4、図5に示す状態となる。
【0033】
図4において、制御回路106は、最後の正転駆動パルスPf2の制動部Pr1から第1所定時間経過後の時刻T1の第1電圧値V1と、前記制動部Pr1から第2所定時間経過後の時刻T2(T1<T2)の第2電圧値V2とを比較し、第1電圧値V1と第2電圧値V2の大小関係を判定する。時刻T1、T2は所定の検出時間内に設けられており、時刻T1において前記検出抵抗に発生する電圧値V1を基準電圧とし、ロータ202の振動が安定しているか否かを表す電圧値V2が時刻T2において得られるように予め時刻T1、T2を設定している。電圧値V1、V2の検出及び比較判定は、駆動条件が変動する場合があるため、正逆駆動切替の度に行うことが好ましい。
【0034】
制御回路106は、第2電圧値V2が第1電圧値V1を超える場合にはロータ202の振動が安定していないと判定して、最後の正転駆動パルスPf2と最初の逆転駆動パルスPb1との間の切替間隔S1に間隔S2を付加して、切替間隔(S1+S2)に伸ばす。前記切替間隔(S1+S2)は、例えば10ミリ秒(ms)以上であることが好ましい。アナログ電子時計に使用するステッピングモータの場合、ロータ202が大きく振動している場合でも、切替間隔が10ms以上あれば正転駆動から逆転駆動への切替動作が安定するからである。
このようにして、最後の正転駆動パルスPf2駆動後にロータ202の振動が大きく、短時間で安定しない場合でも、最初の逆転駆動パルスPb1による駆動時までにはロータ202の振動を一定値以下に安定させることが可能になり、最初の逆転駆動時に確実に逆回転させることが可能になる。
【0035】
一方、図5に示すように、制御回路106は、第2電圧値V2が第1電圧値V1を超えない場合にはロータ202の振動が安定していると判定して、最後の正転駆動パルスPf2と最初の逆転駆動パルスPb1との間の切替間隔S1は変更せずにそのままとする。このように、最後の正転駆動パルスPf2駆動後にロータ202の振動が短時間で安定した場合には、正転駆動と逆転駆動の切替を切替時間S1という短時間で行うことが可能になり、この場合も確実に逆回転させることが可能になる。
【0036】
以上述べたように本第1の実施の形態によれば、指針を駆動するステッピングモータ102と、ステッピングモータ102の駆動を正転駆動と逆転駆動に切替駆動することによって前記指針をレトログラード運針する制御手段とを備え、前記制御手段は、ステッピングモータ102の駆動を正転駆動から逆転駆動に切り替える際の切替間隔を調整することを特徴としている。
したがって、レトログラード運針を行うアナログ電子時計において、正転駆動から逆転駆動への切替え時に運針異常が生じないようにすることが可能になり、確実安定なレトログラード運針が可能となる。また、既存技術を利用しているため、複雑な検出回路は不要であり構成が簡単である。
【0037】
また、運針周期や電源電圧等の時計の仕様に応じて、運針周期を種々に設定することが可能になる。
また、前記制御手段は、ステッピングモータ102のロータ202の振動の大きさに応じて前記切替間隔を変化させるようにしているので、安定駆動が可能であると共に短時間で切替駆動が可能になる。
【0038】
また、前記制御手段は、前記切替間隔が所定時間以上になるように変化させるため、安定駆動が可能になる。特に、前記切替間隔を10ミリ秒以上にしているため、回転異常等が発生せず、安定駆動が可能である。
また、本第1の実施の形態によれば、クロノグラフ針を回転駆動するステッピングモータ102と、ステッピングモータ102を制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、ステッピングモータ制御回路として、前記ステッピングモータ制御回路101を用いたことを特徴とするクロノグラフ時計が提供される。
【0039】
尚、ステッピングモータ102は、ロータ収容孔203及びロータ202の停止位置を決める位置決め部を有するステータ201と、ロータ収容孔203内に配設されたロータ202と、駆動コイル209とを有し、駆動コイル209に交番信号を供給してステータ201に磁束を発生させることによってロータ202を回転させると共に、前記位置決め部に対応する位置にロータ202を停止するように構成され、正転駆動する正転駆動パルスPf1、Pf2は矩形波形又は櫛歯形の回転駆動部Pw1を有し、逆転駆動する逆転駆動パルスPb1、Pb2はパルス幅の異なる複数のパルスP1〜P3を組み合わせた駆動パルスを用いている。
【0040】
図6は、本発明の第2の実施の形態の動作を説明するための信号波形図である。前記第1の実施の形態では、ロータ202の振動が安定しない場合には切替間隔を長くするように構成したが、本第2の実施の形態では切替時間は変えずに、最後の正転駆動パルスPf3の制動部Pr2のパルス数を増加して制動を大きくするように構成している。
このように、制御回路106は、ステッピングモータ102の駆動を正転駆動から逆転駆動に切替える場合、最後の正転駆動パルス駆動時の制動を他の正転駆動パルス駆動時の制動よりも大きくするようにしている。また、前記最後の正転駆動パルスの制動は変化させずに、他の主駆動パルスによる駆動時の制動よりも大きい予め定めた一定値としている。
【0041】
これにより、切替間隔S1が短い場合でも、最初の逆転駆動パルスPb1による駆動時までにはロータ202の振動を一定以下に安定させることが可能になり、最初の逆転駆動時に確実に逆回転させることが可能になる。
尚、本第2の実施の形態においては、駆動コイル209に流れる電流は検出しないため、本第2の実施の形態の回路ブロックは、図1の構成から電流検出回路108を削除した構成となる。
【0042】
図7は、本発明の第3の実施の形態の動作を説明するための信号波形図である。本第3の実施の形態においても前記第2の実施の形態と同様に、最後の正転駆動パルスPf4の制動が大きくなるように構成しているが、前記第2の実施の形態では制動部Pr2を櫛歯状に構成したのに対して、本第3の実施の形態では、最後の正転駆動パルスPf4を他の正転駆動パルスPf1よりも長い矩形波パルス信号とし、回転駆動部と制動部を一体化した駆動パルスとして、他の正転駆動パルスPf1よりも制動が大きくなるように構成している。
【0043】
これにより、切替間隔S1が短い場合でも、最初の逆転駆動パルスPb1による駆動時までにはロータ202の振動を一定以下に安定させることが可能になり、最初の逆転駆動によって確実に逆回転させることが可能になる。
尚、本第3の実施の形態においても駆動コイル209に流れる電流は検出しないため、本第3の実施の形態の回路ブロックは、図1の構成から電流検出回路108を削除した構成となる。
【0044】
尚、前記各実施の形態では、正転駆動パルスの回転駆動部Pw1を矩形波にしたが、複数のパルスを有する櫛歯状に構成してもよい。
また、前記各実施の形態は、クロノグラフ時計の例で説明したが、時間計測機能を持たずに時刻表示を行うアナログ電子時計にも適用可能である。
また、ステッピングモータの応用例としてアナログ電子時計の例で説明したが、モータを使用する電子機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るステッピングモータ制御回路は、ステッピングモータを使用する各種電子機器に適用可能である。
また、本発明に係る電子時計は、クロノグラフ時計、アナログ電子腕時計、カレンダ機能付きアナログ電子置時計等の各種アナログ電子時計に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
101・・・ステッピングモータ制御回路
102・・・ステッピングモータ
103・・・電源
104・・・発振回路
105・・・分周回路
106・・・制御回路
107・・・ステッピングモータ駆動パルス回路
108・・・電流検出回路
201・・・ステータ
202・・・ロータ
203・・・ロータ収容用貫通孔
204、205・・・切り欠き部(内ノッチ)
206、207・・・切り欠き部(外ノッチ)
208・・・磁心
209・・・駆動コイル
210、211・・・可飽和部
OUT1・・・第1端子
OUT2・・・第2端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータの駆動を正転駆動と逆転駆動に切替駆動することによって前記指針をレトログラード運針する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記ステッピングモータの駆動を正転駆動から逆転駆動に切り替える際の切替間隔を調整することを特徴とするステッピングモータ制御回路。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ステッピングモータのロータの振動の大きさに応じて前記切替間隔を変化させることを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項3】
前記制御手段は、前記切替間隔が所定時間以上になるように変化させることを特徴とする請求項1又は2記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項4】
前記所定時間は10ミリ秒であることを特徴とする請求項3記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項5】
指針を駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータの駆動を正転駆動と逆転駆動に切替駆動することによって前記指針をレトログラード運針する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記ステッピングモータの駆動を正転駆動から逆転駆動に切替える場合、最後の正転駆動パルス駆動時の制動を他の正転駆動パルス駆動時の制動よりも大きくすることを特徴とするステッピングモータ制御回路。
【請求項6】
前記指針はクロノグラフ指針であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項7】
指針を回転駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータを制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、
前記ステッピングモータ制御回路として、請求項1乃至6のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路を用いたことを特徴とするアナログ電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−53118(P2011−53118A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203135(P2009−203135)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】