説明

ステージ装置

【課題】装置の大型化を図った場合であっても、特殊車両を用いることなく輸送を可能とすると共に、基台の機械加工を容易に行うことのできるステージ装置を提供する。
【解決手段】ステージ装置1において、基台2をガントリ部9の移動方向と直行する水平方向Xに分割面12,13を境として分割可能とする。これによって、ステージ装置1を、輸送車に搭載可能な大きさの本体部1aと分割部1bと分割部1cとに分割可能な構成とすると共に、本体部1aと分割部1bと分割部1cとに分割して機械加工を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台に支持され、当該基台上を進行方向である一軸方向に移動するガントリ部を有するステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルや半導体の各種基板の製造装置として用いられるステージ装置として、複数本の缶材を連結して構築された製缶構造の基台と、基台上の両側に設けられたガイドレールと、ガイドレールに沿って案内される案内スライダを有するビームとを備え、ビームがガイドレールに沿って移動するステージ装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−269509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ステージ装置にあっては、近年液晶ディスプレイの大型化などに伴い装置の大型化を図った場合、輸送用の車両などに積載することができない場合がある。ここで、特殊車両を用いて輸送することが考えられるが、コストが膨大となってしまう。また、基台を構築するための缶材も長くなるため、加工装置で機械加工を施すことが困難となってしまう場合がある。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、装置の大型化を図った場合であっても、特殊車両を用いることなく輸送を可能とすると共に、基台の機械加工を容易に行うことのできるステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるステージ装置は、基台に支持され、当該基台上を進行方向である一軸方向に移動するガントリ部を有するステージ装置において、基台は、ガントリ部の移動方向と直行する水平方向に分割可能に構成されていることを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、ガントリ部の移動方向と直行する水平方向に基台を分割することによって、装置を分割して輸送車に積載することができる。これによって、装置の大型化を図った場合であっても特殊車両を用いることなく輸送が可能となる。また、基台を機械加工する際も、分割された部分ごとに行うことができるため、容易に機械加工を行うことができる。
【0007】
ここで、ワークの載置領域に基台の分割面が形成された場合は基台と共にワークも分割する必要があるため、基台の分割面は、載置領域を除く領域に形成されることが好ましい。これにより、ワークを分割することなく装置を分割できる。
【0008】
ここで、ガントリ部を移動方向に案内するための部材であり移動方向に延在するガイドレールは、基台に対する組付精度が特に要求される部分であるため、ガイドレールがステージ装置の本体部側と分割部側のうちの分割部側に設けられていた場合は、組立時の位置決め精度出し作業が非常に手間のかかるものとなる。従って、基台の分割面は、一対のガイドレールより外側の領域に形成されることが好ましい。このような構成を採用した場合、ガイドレールがステージ装置の本体部側に設けられているため、組立時、ステージ装置の分割部を本体部に連結させる際の位置決め精度出し作業を容易に行うことができる。
【0009】
また、ガントリ部には、ガイドレールに沿って案内される一対のガイド部が設けられ、ガントリ部は、移動方向と直行する水平方向に分割可能に構成され、その分割面は、ガイド部よりも外側の領域に形成されることが好ましい。このような構成を採用した場合、ガイドレールと同様に、特に組付精度の要求される部分であるガイド部がステージ装置の本体部側に設けられているため、組立時、ステージ装置の分割部を本体部に連結させる際の位置決め精度出し作業を容易に行うことができる。
【0010】
また、ガントリ部は、鉛直方向に延在する中心軸線周りに回動可能に支持されていることが好ましい。このような構成を採用した場合、ガントリ部を分割すること無く、中心軸線周りにガントリ部を回動させることによって、ガイドレールよりも外側にはみ出るガントリ部の端部を内側に収めることができる。これによって、上記作用に加えて、位置調整が必要とされる箇所を減らすことができ、容易に装置の組み立てを行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、装置の大型化を図った場合であっても、特殊輸送車を用いることなく、輸送が可能となると共に、基台の機械加工が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるステージ装置の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るステージ装置1を示す斜視図、図2は、図1に示すステージ装置1の駆動部及びその近傍の部分拡大斜視図、図3は、図1に示すステージ装置1にワーク定盤(ワーク)15をセットした斜視図、図4は、図3に示すステージ装置1の部分正面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のステージ装置1は、複数本の缶材を連結して構築された製缶構造のベースフレーム(基台)2と、ベースフレーム2を下から支持する支持架台3と、ベースフレーム2上を移動するガントリ部9と、ベースフレーム2に設けられ、ガントリ部9の移動を案内するガイドレール4及び永久磁石6と、ガントリ部9の下部に設けられ、ガイドレール4に案内される案内スライダ7及び永久磁石6と対向する電磁石8とを備え、このガントリ部9がガイドレール4に沿って移動するものである。なお、図1において、ベースフレーム2の長手方向をY軸方向とし、それと直交する水平方向をX軸方向とする。
【0015】
ベースフレーム2は、X軸方向に延在する缶材2a,2bと、Y軸方向に延在する缶材2c,2dとを各々連結させることで形成される矩形状の枠体の内側を、複数の缶材で補強することにより構成される。また、ベースフレーム2は、缶材2c,2dの上面に、ガイドレール4を載置するための部材2f,2gをY軸方向に延在するように各々備えると共に、部材2f,2gの外側の側面に、永久磁石8を載置するためのブラケット2h,2kをY軸方向に延在するように各々備えている。
【0016】
支持架台3は、ベースフレーム2の四隅をそれぞれ支持する脚部3aと、脚部3a同士を連結して補強する連結部3bとから構成される。なお、脚部3aとベースフレーム2との間には、空気バネやバネなどの弾性材による除振機構が設けられている。
【0017】
ガイドレール4は、部材2f,2gの上面に各々設けられ、Y軸方向に延在する。また、永久磁石6は、ブラケット2h,2kの上面に、ガイドレール4に隣接して設けられ、Y軸方向に延在する。この永久磁石6は、Y軸方向にS極とN極の所定パターンが繰り返されているものである。
【0018】
図2に示すように、ガイドレール4及び永久磁石6の上方には、X軸方向に延びるガントリ部9の両側の下部に連結された連結板11が配置されており、この連結板11の下面には、案内スライダ7と電磁石8が各々隣接して設けられている。電磁石8は、永久磁石6のS極とN極のパターンにあわせて磁極を変化させ、永久磁石6との間で反発力を発生させることによってガントリ部9をガイドレール4で案内しながらY軸方向に移動させることができる。そして、永久磁石6及び電磁石8により駆動部が構成される。
【0019】
図1へ戻り、ガントリ部9は、X軸方向に延びる支持部9a、リニアモータ部9b及び移動部9cを備える。移動部9cは、リニアモータ部9bにより当該リニアモータ部9bに沿ってX軸方向へ移動可能とされている。そして、この移動部9cに所定の処理装置を付設することで、処理装置がX軸方向に移動し所定の処理が実行される。
【0020】
図3に示すように、ステージ装置1のベースフレーム2上には、液晶パネルなどを載置するためのワーク定盤15が設置される。ベースフレーム2において、ワーク定盤15が載置される領域を載置領域2eとする。この載置領域2eは、ベースフレーム2よりX軸方向及びY軸方向において小とされ、詳しくは、X軸方向において、部材2f,2gより内側の領域とされている。なお、ステージ装置1が輸送車で輸送される際、このワーク定盤15が設置された状態で輸送車に積載される。
【0021】
ここで、特に本実施形態においては、図3及び図4に示すように、ベースフレーム2の缶材2d側において、ベースフレーム2、支持部9a、リニアモータ部9b及び連結板11はX軸方向と直交する分割面12で分割される。この分割面12は、ベースフレーム2の部材2gとブラケット2kとの境い目、すなわち、ガイドレール4及び案内スライダ7と永久磁石6及び電磁石8との境い目に合わせて形成される。そして、分割面12により分割されたベースフレーム2、支持部9a、リニアモータ部9b及び連結板11は、分割面12でボルト等によって連結される。
【0022】
また、図3に示すように、ベースフレーム2の缶材2c側の端部においても、ベースフレーム2の部材2fとブラケット2hとの境い目、すなわち、ガイドレール4及び案内スライダ7と永久磁石6及び電磁石8との境い目に合わせて分割面13が形成され、分割面13により分割されたベースフレーム2、支持部9a、リニアモータ部9b及び連結板11は、分割面13でボルト等によって連結される。
【0023】
以上のように、ベースフレーム2、支持部9a、リニアモータ部9b及び連結板11はX軸方向に分割可能に構成されているため、ステージ装置1はX軸方向の中央の本体部1aと、X軸方向の一端側の分割部1bと、X軸方向の他端側の分割部1cに分割可能に構成されることになる。
【0024】
このように、本実施形態に係るステージ装置1では、X軸方向にベースフレーム2を分割することによって、分割して輸送車に積載することができる。これによって、ステージ装置1の大型化を図った場合であっても特殊車両を用いることなく輸送が可能となる。また、ベースフレーム2を機械加工する際も、分割された部分ごとに行うことができるため、容易に機械加工を行うことができる。永久磁石6及び電磁石8は、元々非接触の部分なので、分割しても精度の調整が容易となる。
【0025】
また、ワーク定盤15の載置領域2eにベースフレーム2の分割面12,13が形成された場合はベースフレーム2と共にワーク定盤15も分割する必要があるが、ベースフレーム2の分割面12,13が、載置領域2eを除く領域に形成されているため、ワーク定盤15を分割することなく装置を分割できる。
【0026】
また、ガントリ部9を案内するための部材であるガイドレール4は、ベースフレーム2に対する組付精度が特に要求される部分であるため、ガイドレール4がステージ装置1の分割部1b,1c側に設けられている場合は、組立時の位置決め精度出し作業が非常に手間のかかるものとなる。しかしながら、本実施形態に係るステージ装置1では、分割面12,13は、各々のガイドレール4より外側の領域に形成されている。これによって、ガイドレール4がステージ装置1の本体部1a側に設けられることとなるため、組立時、ステージ装置1の分割部1b,1cを本体部1aに連結させる際の位置決め精度出し作業を容易に行うことができる。
【0027】
また、ガントリ部9は、X軸方向に分割可能に構成され、分割面12,13は、各々の案内スライダ7よりも外側の領域に形成されており、ガイドレール4と同様に、特に組付精度の要求される部分である案内スライダ7がステージ装置1の本体部1a側に設けられているため、組立時、ステージ装置1の分割部1b,1cを本体部1aに連結させる際の位置決め精度出し作業を容易に行うことができる。
【0028】
なお、ここでは、ガントリ部9がY軸方向に移動し、移動部9cがX軸方向に移動する2軸タイプのステージ装置に対する適用を述べているが、ガントリ部のみが移動する1軸タイプにも適用可能である。
【0029】
また、ガントリ部9や移動部9cの移動は、接触タイプ、非接触タイプの何れであってもよい。
【0030】
また、本実施形態においては、ベースフレーム2及びガントリ部9の両端部を分割可能としているが、一方の端部のみを分割可能としてもよい。
【0031】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係るステージ装置21の部分正面図である。この第2の実施形態が第1の実施形態と違う点は、ガントリ部9を分割しない構成とした点である。
【0032】
図5に示すように、ステージ装置21にあっては、支持部9a、リニアモータ部9b及び連結板11には分割面が形成されず、ベースフレーム2のみに第1の実施形態の分割面12と同様な分割面22が形成される。これによって、ステージ装置21は、ガントリ部9を有する本体部21aと分割部21bとに分割可能に構成されることとなる。なお、図示しないが、ベースフレーム2の缶材2c側の端部においても同様に分割可能に構成される。
【0033】
ここで、支持部9aと連結板11との境界部分におけるガイドレール4の上方の位置には、ガントリ部9を水平面内において回動可能に支持する回動部25が設けられる。この回動部25は缶材2d側の端部のみに設けられている。そして、ステージ装置21の本体部21aを輸送車に積載する際、ガントリ部9を回動部25の中心軸線L周りに回動させ、その位置で所定の固定手段にて固定する。あるいは、ガントリ部9を取り外しておく。
【0034】
このような第2の実施形態によれば、ガントリ部9を分割することなく中心軸線Lを中心としてガントリ部9を回動させることによって、ガイドレール4よりも外側にはみ出でる両端部を内側に収めることができる。これによって、位置調整が必要とされる箇所を減らすことができ、容易に装置の組み立てを行うことができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、ベースフレーム2の両端部を分割可能にしているが、一方の端部のみを分割可能としても良い。このように、ベースフレーム2の一方の端部のみを分割する場合には、回動軸線のある側とは反対側の端部側を分割し、回動軸線を中心軸としてガントリ部9を多少回動すれば輸送が可能となる。
【0036】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態に係るステージ装置31の部分正面図である。この第3の実施形態が第2の実施形態と違う点は、ベースフレーム2を更に分割可能な構成とした点である。
【0037】
図6に示すように、ステージ装置31にあっては、ベースフレーム2は分割面22のみならず、X軸方向と直交する分割面32によっても分割される。この分割面32は、缶材2dと缶材2b及び缶材2aとの境い目に合わせて形成される。これによって、ステージ装置31は、本体部31aと、第2の実施形態と同様な分割部31bと、ガントリ部9を有する分割部31cとに分割可能に構成されることとなる。なお、図示しないが、ベースフレーム2の缶材2c側の端部においても同様に分割可能に構成される。これによって、第2の実施形態の本体部21aを更に分割することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、ベースフレーム2の両端部を分割可能にしているが、一方の端部のみを分割可能としても良い。このように、ベースフレーム2の一方の端部のみを分割する場合には、回動軸線のある側とは反対側の端部側を分割し、回動軸線を中心軸としてガントリ部9を多少回動すれば輸送が可能となる。また、第1の実施形態のようにガントリ部9を分割する場合にも、本実施形態は適用可能である。
【0039】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、分割面12,13,22,32を、図7(a)に示すように、上下方向に沿って凹凸が並ぶインロー型の分割面50としてもよく、また、図7(b)に示すように、傾斜する分割面51としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るステージ装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示すステージ装置の駆動部及びその近傍を示す部分拡大斜視図である。
【図3】図1に示すステージ装置にワーク定盤をセットした斜視図である。
【図4】図3に示すステージ装置の部分正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るステージ装置の部分正面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るステージ装置の部分正面図である。
【図7】他の分割面を示す図であり、(a)は分割面をインロー型とした場合を示し、(b)は分割面を傾斜面とした場合を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1,21,31…ステージ装置、2…ベースフレーム(基台)、2e…載置領域、3…支持架台、9…ガントリ部、12,13,22,32,50,51…分割面、15…ワーク定盤(ワーク)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に支持され、当該基台上を進行方向である一軸方向に移動するガントリ部を有するステージ装置において、
前記基台は、前記ガントリ部の移動方向と直行する水平方向に分割可能に構成されていることを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記基台はワークを載置する載置領域を有し、
前記基台の分割面は、前記載置領域を除く領域に形成されることを特徴とする請求項1記載のステージ装置。
【請求項3】
前記基台上には、前記ガントリ部を移動方向に案内する一対のガイドレールが前記移動方向に延在するように設けられ、
前記基台の分割面は、前記ガイドレールより外側の領域に形成されることを特徴とする請求項2記載のステージ装置。
【請求項4】
前記ガントリ部には、前記ガイドレールに沿って案内される一対のガイド部が設けられ、
前記ガントリ部は、前記移動方向と直行する水平方向に分割可能に構成され、その分割面は、前記ガイド部より外側の領域に形成されることを特徴とする請求項3記載のステージ装置。
【請求項5】
前記ガントリ部は、鉛直方向に延在する中心軸線周りに回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載のステージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−23698(P2008−23698A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−81987(P2007−81987)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】