説明

スパイクピンとその製造方法

【課題】軽量で、耐摩耗性や強度特性に優れているばかりでなく、安価に、且つ大量に製造可能なスパイクピンとその製造方法を提供すること。
【解決手段】スパイクピン1は、ねじ部2と鍔部3と接地突起部4とを有するもので、炭素繊維が長手方向に揃えて含有された炭素繊維強化樹脂の射出成型一体成形品である。接地突起部4の根元には鍔部3との間にねじ締込み用の凹凸部5が放射状に複数設けられている。スパイクピン1は、ABS樹脂又はN6樹脂をベースとし、ペレット長と同じ長さ(例えば7mm程度)の強化繊維である炭素繊維を同一方向に且つマトリクス状に有する長繊維タイプの炭素繊維強化合成樹脂の円筒状ペレットを溶融させ、射出成型機から金型内に注入する。この射出成形によって、ネジ部2と鍔部3と凹凸部5を含む接地突起部4とが一体成形されると共に合成樹脂の流れに沿って炭素繊維の向きがスパイクピン1の長手方向に揃えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、耐摩耗性や強度特性に優れていて、例えば陸上競技用シューズのスパイクピンとして有用なスパイクピンとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、陸上競技用シューズの底にはスパイクピンが着脱自在に取り付けられており、このスパイクピンはねじ部、鍔部及び接地突起部とから成る一体成形体であり、ねじ部を靴底に設けられている取付孔に鍔部までねじ込んで使用されている。
【0003】
そして、競技中、このスパイクピンには鍔部を中心にして大きな曲げ応力が発生すると同時に、接地突起部の表面は常時激しい摩耗作用を受けるので、このスパイクピンは強度特性と並んで耐摩耗性に優れていることが要求される。一方、スピード競技や跳躍競技では、スパイクシューズの軽量化が要求され、その一環として、軽量なスパイクピンの提供が求められている。
【0004】
そこで、軽量で、耐摩耗性や強度特性に優れているという要求に対応するために、β型Ti合金から成り、ねじ部と鍔部と接地突起部とを有する一体成形体であって、長手方向には繊維組織が連続して形成され、且つ、表面にはTiO2 およびO2 拡散層でなる硬化層が形成されているスパイクピンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3278787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したスパイクピンは、β型Ti合金から成る線材を切断し、得られた線材片の長手方向に冷間鍛造又は温間鍛造で鍔部と接地突起部とを一体成形した後、ねじ部を転造し、更に続けて、大気中で熱処理を行って表面酸化することによって製造されるものであり、高価な金属材料を使用するとともに、製造工程が複雑になるため、安価に、且つ大量に製造するには不向きであるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記の点に鑑み、軽量で、耐摩耗性や強度特性に優れているばかりでなく、安価に、且つ大量に製造可能なスパイクピンとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため第1の発明のスパイクピンは、ねじ部と鍔部と接地突起部とを有するスパイクピンであって、炭素繊維強化合成樹脂材料で製造されていることを特徴とする。従って、炭素繊維強化合成樹脂の比重が小さいことから軽量化が可能で、強度も高いことから優れた耐摩耗性や強度特性が得られ、しかも、安価に、且つ大量に製造可能としている。
【0009】
また第2の発明のスパイクピンは、ねじ部と鍔部と接地突起部とを有するスパイクピンであって、炭素繊維が長手方向に揃えて含有された炭素繊維強化合成樹脂の射出成型一体成形品であることを特徴とする。従って、炭素繊維強化合成樹脂の比重が小さいことから軽量化が可能で、炭素繊維が長手方向に揃えて含有されていて引張り強度が高いことから優れた耐摩耗性や強度特性が得られ、しかも、合成樹脂の射出成型一体成形品であるため、安価に、且つ大量に製造可能としている。
【0010】
また第3の発明のスパイクピンの製造方法は、炭素繊維を含有する合成樹脂ペレットを用いて射出成型を行い、且つ、射出成形中の樹脂の流れに沿って炭素繊維の向きを長手方向に揃えることにより、ねじ部と鍔部と接地突起部とを一体成形することを特徴とする。従って、上述した特性を有するスパイクピンが樹脂の射出成型によって安価に、且つ大量に製造できるようにしている。
【0011】
また第4の発明のスパイクピンの製造方法は、第3の発明において、前記合成樹脂ペレットはABS樹脂又はN6樹脂をベースとしたもので、ペレット長と同じ長さの炭素繊維をマトリクス状に含有するものであることを特徴とする。従って、スパイクピンの優れた耐摩耗性や強度特性を保ちながら、比重をより小さくして超軽量化が図れ、且つ、安価で大量に製造できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭素繊維強化樹脂の比重が小さく、炭素繊維が長手方向に揃えて含有されていて引張り強度が高いことから、軽量化が可能で、優れた耐摩耗性や強度特性が得られ、しかも、炭素繊維強化樹脂の射出成型で一体成型するため、安価に、且つ大量に製造可能なスパイクピンとその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のスパイクピンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図1に基づき、本発明の実施の形態について説明する。本発明のスパイクピン1は、図1に示すように、靴底の取付孔に入り込むねじ部2と鍔部3と接地突起部4とを有するものであって、炭素繊維が長手方向に揃えて含有された炭素繊維強化樹脂の射出成型一体成形品である。また、前記接地突起部4の根元には鍔部3との間にねじ締込み用の凹凸部5が形成され、この凹凸部5には放射状に4つずつ又は3つずつ(複数ずつ)の凹凸が設けられている。
【0015】
このスパイクピン1は、次のようにして製造される。まず、ABS(アクリロニトリル−ブタンジエン−スチレン共重合体)樹脂又はN6樹脂をベースとし、ペレット長と同じ長さ(例えば7mm程度)の強化繊維である炭素繊維を同一方向に、且つマトリクス状に有する長繊維タイプの炭素繊維強化合成樹脂の円筒状ペレット(例えば、東レ株式会社の商品名トレカ)を溶融させ、射出成型機(図示せず)から金型(図示せず)内に注入する。
【0016】
この射出成形によって、前記ネジ部2と鍔部3と凹凸部5を含む接地突起部4とが一体成形されるとともに、合成樹脂の流れに沿って炭素繊維の向きがスパイクピン1の長手方向に揃えられる。
【0017】
このようにして製造されたスパイクピン1は比重が1以上2以下と成り、特に上述したABS樹脂をベースとする長繊維タイプの炭素繊維強化合成樹脂では比重が1.2以下となり、軽量化若しくは超軽量化が図れ、更には炭素繊維が長手方向に揃えて含有されていることから、引張り強度が150〜300Mpsとなり、優れた耐摩耗性や強度特性が得られる。
【0018】
また、接地突起部4の根元にねじ締込み用の凹凸部5が形成されているため、この凹凸部5に締込み治具(図示せず)を嵌め込むことによって、ねじ部2を靴底の取付孔に鍔部3まで(鍔部3が靴底に当接するまで)強固にねじ込むことができ、接地突起部4が凹凸部5によって補強され、接地突起部4自体の強度を高めることができる
なお、炭素繊維強化合成樹脂のペレットには、炭素繊維の長さが3mm程度の短繊維タイプのものもあり、これを使用してもよい。しかし、引張り強度で若干劣るため、長繊維タイプの炭素繊維強化合成樹脂のペレットを使用して製造することが好ましい。
【0019】
このようにして製造されたスパイクピン1は、陸上競技用シューズの他にゴルフシューズや種々の製品のスパイクピンとして使用できることは言うまでもない。
【0020】
以上のように、本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0021】
1 スパイクピン
2 ねじ部
3 鍔部
4 接地突起部
5 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部と鍔部と接地突起部とを有するスパイクピンであって、炭素繊維強化合成樹脂材料で製造されていることを特徴とするスパイクピン。
【請求項2】
ねじ部と鍔部と接地突起部とを有するスパイクピンであって、炭素繊維が長手方向に揃えて含有された炭素繊維強化合成樹脂の射出成型一体成形品であることを特徴とするスパイクピン。
【請求項3】
炭素繊維を含有する合成樹脂ペレットを用いて射出成型を行い、且つ、射出成形中の樹脂の流れに沿って炭素繊維の向きを長手方向に揃えることにより、ねじ部と鍔部と接地突起部とを一体成形することを特徴とするスパイクピンの製造方法。
【請求項4】
前記合成樹脂ペレットはABS樹脂又はN6樹脂をベースとしたもので、ペレット長と同じ長さの炭素繊維をマトリクス状に含有するものであることを特徴とする請求項3に記載のスパイクピンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−200355(P2011−200355A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69280(P2010−69280)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(510083245)ニックス有限会社 (1)
【Fターム(参考)】