説明

スパウト

【課題】袋状容器に設けられ、内容物の注出具として使用されるワンピース製のスパウトにおいて、その殺菌・洗浄性を改善し、スパウト内での薬液や洗浄水の残存を生じることなく、袋状容器と共に効果的に殺菌・洗浄を行うことが可能なスパウトを提供する。
【解決手段】袋状容器に接着固定され且つ内部に貫通孔を有する筒状本体1と、筒状本体1の上端に薄肉部を介して連なっており且つ筒状本体1の貫通孔を閉塞可能に設けられている折り取り部材3とを備えており、折り取り部材3は、筒状本体1の貫通孔に段差なく滑らかに連通している連通孔31を内部に有する環状部25と、環状部25の外周から外方に延びている摘み部27とからなり、環状部25は、平断面形状が楕円形に成形されており、連通孔31は、環状部25を貫通して延びているが、環状部25の上端部分を熱溶着せしめることにより閉塞されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状容器に接着固定され、該容器内に充填された内容物を注出するための注出具として使用されるスパウト並びに該スパウトが取り付けられた袋状容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムやアルミ箔などから形成された袋状容器は、古くから各種の用途に使用されている。従来、このような袋状容器としては、袋の端部を引き裂くことにより開口を形成し、この開口を通して内容物を取り出すように構成されているものが多かったが、最近では、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂から形成されたスパウトと呼ばれる注出具が多く使用されるようになっている。
【0003】
このスパウトは、内部に貫通孔を有する筒状本体を備えており、この筒状本体の外面に袋状容器が熱溶着され、筒状本体内の貫通孔を通して、袋状容器内に充填されている内容物が注出されるものであり、この貫通孔は、必要により設けられるアルミ箔等のシール箔と筒状本体に装着された蓋体とによって閉じられており、内容物の注出に際しては、蓋体が取り外され且つシール箔が引き剥がされることとなる。このようなスパウトが設けられた袋状容器は、内容物の注出に際して袋状容器を引裂く必要が無いため、飲料や調味液等を収容するための容器のみならず、薬液が充填された点滴用バッグ、或いはシャンプーなどの詰替ボトルなどとして広く実用されている。
さらに、近年における医療分野では、PEGにより、胃や腸に栄養を送るための孔を患者の腹部に形成することが容易になったため、所定のチューブを用いて胃や腸に直接栄養を供給する経管栄養法が広く利用されるようになってきた。上記のスパウト付袋状容器は、胃や腸に栄養を供給するためのチューブを容易に接続することができるため、このような経管栄養法にも効果的に利用されている。
【0004】
ところで、上記のようなスパウトとして、筒状本体に形成されている貫通孔を閉じるために設けられているシール箔や蓋体の代わりに、筒状本体の上端に折り取り部材を設けた構造を有するものが、特許文献1において本出願人により提案されている。
かかる構造のスパウトにおいて、上記の折り取り部材は、破断可能な薄肉部(橋絡部)を介して筒状本体の上端に連結された環状部と、該環状部の外周から外方に延びている摘み部とからなっており、環状部の内部は、肉抜きにより、筒状本体内の貫通孔と連通する連通孔が形成されている。この連通孔の上端は、当然、閉じられている。
【0005】
即ち、内容物の注出に際しては、上記折り取り部材の摘み部を持って、これを押し倒し、該折り取り部材と筒状本体とを繋いでいる薄肉部を破断することによって、該折り取り部材を筒状本体から折り取り、該筒状本体内の貫通孔を開放し、この貫通孔を通して内容物の注出が行われることとなる。
【0006】
このようなスパウトは、ワンピース製であり、筒状本体と、該筒状本体内の貫通孔を閉じるために設けられている折り取り部材とが一体に形成されており、蓋体が設けられているタイプのスパウトと比較すると、構成部品数が少なく、一回の成形で製造できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−341908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1で提案されているワンピース製のスパウトは、殺菌・洗浄性の点で未だ改善の余地がある。即ち、上記のような構造のスパウトには、袋状容器を形成する2枚のフィルムを熱溶着すると共に、該フィルムの周縁部を一部を残して熱溶着せしめ、熱溶着されていない開口部分(通常、スパウトが熱溶着されている部分とは反対側の部分であり、最終的に形成される袋状容器の下端部或いは底部となる部分)から容器内容物を充填した後、開口部を熱溶着することにより市販に供される。この場合において、容器内容物の充填に先立って、上記の開口部から過酸化水素水などの薬液を導入してスパウト及びフィルムの内部を殺菌し、次いで洗浄水を導入して薬液が洗浄除去されることとなる。しかるに、上記のようなワンピース製のスパウトが使用されている場合には、該スパウトの折り取り部材内に形成されている連通孔の内部に薬液や洗浄水が残存し易く、この点においての改良が求められている。
【0009】
従って、本発明の目的は、袋状容器に設けられ、内容物の注出具として使用されるワンピース製のスパウトにおいて、その殺菌・洗浄性を改善し、スパウト内での薬液や洗浄水の残存を生じることなく、袋状容器と共に効果的に殺菌・洗浄を行うことが可能なスパウト並びに該スパウトが取り付けられた袋状容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、袋状容器に接着固定され且つ内部に貫通孔を有する筒状本体と、該筒状本体の上端に薄肉部を介して連なっており且つ該筒状本体の貫通孔を閉塞可能に設けられている折り取り部材とを備えており、袋状容器内に充填されている内容物の注出に際しては、該薄肉部を破断せしめて該折り取り部材を取り除くことにより、該筒状本体の貫通孔を通して内容物の注出が行われるスパウトにおいて、
前記折り取り部材は、前記筒状本体の貫通孔に段差なく滑らかに連通している連通孔を内部に有する環状部と、該環状部の外周から外方に延びている摘み部とからなり、
前記環状部は、平断面形状が楕円形に成形されており、
前記連通孔は、前記環状部を貫通して延びているが、前記環状部を熱溶着せしめることにより閉塞されることを特徴とするスパウトが提供される。
【0011】
本発明のスパウトにおいては、
(1)前記環状部は、前記楕円形の長軸の両端部分が肉抜きにより薄肉となった形状を有していること、
(2)前記筒状本体の下部外面には、袋状容器を熱溶着するための張り出し部が形成され、該筒状本体の上部外面には、袋状容器から内容物を取り出すために使用されるチューブを嵌合固定するための段差部及び/または該チューブを螺子固定するための螺条が形成されていること、
が好適である。
【0012】
本発明によれば、また、上記のスパウトが取り付けられている袋状容器であって、該スパウトの前記環状部の連通孔の上端部分が熱溶着により閉じられていることを特徴とする袋状容器が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスパウトでは、筒状本体の貫通孔を閉塞し得るように折り取り部材が設けられているが、この折り取り部材の環状部の内部に設けられており且つ該貫通孔と連通している連通孔は、成形時には閉じられておらず、環状部を貫通して延びており、しかも該連通孔は、該貫通孔と段差無く、滑らかに連なっている。従って、このスパウトにフィルムを熱溶着し、さらに、フィルムの周縁部の一部を残して熱溶着せしめ、熱溶着されていない開口部分を形成したとき、この開口部から薬液や洗浄水を導入しての殺菌及び洗浄を行ったとき、薬液や洗浄水は、スパウト内の貫通孔や連通孔に滞留することなく、速やかに連通孔を通って外部に排出されることとなり、優れた殺菌・洗浄性を示す。
【0014】
さらに、本発明において、上記の連通孔を内部に有する環状部は、その平断面形状が楕円形に成形されている。このため、上記の殺菌及び洗浄後、該環状部を加熱圧着することにより、容易に且つ確実に熱溶着せしめて連通孔を閉じることができ、従って、該連通孔が通じている筒状本体の貫通孔は、この折り取り部の環状部の上端部分の熱溶着によって閉塞され、この結果、折り取り部材に要求されるシール材としての機能(即ち、蓋体としての機能)を付与することができる。
例えば、上記の環状部の平断面が楕円形でなく、円形に成形されている場合には、加熱圧着により環状部を圧潰し難く、このため、連通孔が完全に閉じられず、シール不良の問題が生じ易くなってしまう。
【0015】
本発明では、特に、前記環状部は、その平断面での楕円形の長軸の両端部分が肉抜きにより薄肉となった形状を有していることが特に好ましく、これにより、殺菌洗浄後の加熱圧着により、一層容易且つ確実に、袋状容器内に連なっている貫通孔に通じる連通孔を閉塞することができ、袋状容器内に充填される内容物の漏れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスパウトの好適例における斜視図。
【図2】図1のスパウトの平面図。
【図3】図1のスパウトの底面図。
【図4】図2及び図3におけるA−A側断面を示す図。
【図5】図2及び図3におけるB−B側断面を示す図。
【図6】図5におけるスパウトのC−C平断面を示す図。
【図7】図1のスパウトの環状部の先端について、熱溶着により連通孔が閉じられた状態を示す拡大図。
【図8】円形の水平断面を有するスパウト環状部の先端について、熱溶着により連通孔が閉じられた状態を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図6を参照して、本発明のスパウトは、筒状本体1と、該筒状本体1の上端に設けられた折り取り部材3とからなっており、折り取り部材3は、破断可能な薄肉部5を介して筒状本体1の上端に連なっている。このようなスパウトは、ワンピース製であり、例えば射出成形等のプラスチックの一体成形により容易に成形される。
【0018】
筒状本体1は、その外面に、袋状容器が接着固定されるものであり、筒状本体1の内部には、この下端から上端に貫通している貫通孔7が形成されており、この貫通孔7を通して、袋状容器の容器内容物の注出が行われる。
【0019】
筒状本体1は、その下部外面に、径方向外方に張り出した張り出し部11,11が形成されており、図1及び図3、図6から理解されるように、張り出し部11が形成されている下方部分は、全体として舟形形状の平断面を有しており、且つ、その外面は滑らかな面となっている。
即ち、このような張り出し部11,11の形成により、筒状本体1の下部外面は大面積化されており、図6に示されているように、袋状容器を構成する2枚のフィルム50,50が、互いに対面するようにして、この部分に熱溶着(ヒートシール)され、さらに、このフィルム50,50の周縁部を熱溶着することにより、スパウトが接合された状態で袋状容器が形成されるようになっている。
【0020】
また、上記の張り出し部11,11が形成されている部分の上方には、該張り出し部11とは間隔を置いて、鍔13が設けられている。この鍔13は、下方の張り出し部11よりも大きく形成されており、これを利用してスパウト或いは該スパウトが設けられた袋状容器の搬送を容易に行うことができる。また、フィルム50の熱溶着に際しては、例えば、この鍔13と張り出し部11との間にフィルム50を押さえる治具などを配置することが可能となり、フィルム50の熱溶着作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0021】
さらに、図1の例では、上記の鍔13が形成されている部分の上方に螺子係合部15が形成され、この螺子係合部15の上には嵌合部17が形成されている。
【0022】
即ち、上記の螺子係合部15や嵌合部17は、このスパウトが取り付けられた袋状容器の内容物を所定のチューブを介して生体内などに供給する場合に使用されるものであり、例えば、点滴用バッグや経管栄養療法などの医療分野に袋状容器を適用する際に使用される。
【0023】
例えば、螺子係合部15は、円筒状の外面を有しており、その周囲に螺条が形成され、この螺条に、所定のチューブの内面に形成されている螺条を螺子係合せしめることにより、所定のチューブを袋状容器に接続することができる。
また、嵌合部17では、全体として、下方から上方にいくにしたがって、その外径が小さくなるようなテーパー状の外面が形成されているが、その外面には、少なくとも1つの段差面20が形成されている(図の例では、3つの段差面20が形成されている)。この段差面20は、下方が小径で且つ上方が大径となった段差であり、この筒状本体1の嵌合部17が所定のチューブの内部に挿入されたとき、この段差面20での引っ掛かりにより、該チューブを引き抜かれないように安定に保持せしめることができる、また、全体としてテーパー状の外面となっているため、チューブ内への嵌合部17の挿入も容易に行うことができる。このような段差面20を複数形成しておくことにより、段差面20の数等に応じて、内径の異なる種々のチューブを嵌合部17で嵌合固定することができる。
【0024】
尚、図の例では、螺子係合部15と嵌合部17とが設けられているが、勿論、接続するチューブが螺子係合或いは嵌合固定の何れかで接続されるものならば、そのチューブの仕様に合わせて、螺子係合部15及び嵌合部17の何れか一方が形成されていてもよいし、さらに、チューブを接続せず、この筒状本体1の貫通孔7から直接容器内容物を注出する場合には、螺子係合部15及び嵌合部17の何れも形成されていなくともよい。
【0025】
上記の筒状本体1の上端に薄肉部5を介して連結されている折り取り部3は、環状部25と、環状部25の外周から外方に延びている摘み部27とからなっている。
【0026】
環状部25の内部には、前述した筒状体1の内部に形成されている貫通孔7に連通している連通孔31を有しており、この連通孔31は、図3等に明示されているように、環状部25を上下に突き抜けているが、袋状容器に取り付けられた最終的なスパウトの形態では、この連通孔31は、その上端において閉じられた構造となっており、この状態で、折り取り部材3が蓋体の如きシール材として機能し、貫通孔7及び連通孔31からの容器内容物の漏れが防止されるようになっている。
【0027】
また、摘み部27は、環状部25の外周から径方向外方に且つ全体として直線状に延びている水平基板27aと、該水平基板27aの両先端からそれぞれ垂直方向に延びている押圧板27b、27bとからなっている。即ち、この摘み部27の押圧板27bに指を当てて摘み部27を押し倒すか或いは摘み部27を回して取ることにより、薄肉部5が破断し、これにより、折り取り部3を取り除き、貫通孔7及び連通孔31を通して容器内容物の注出を行うことが可能となる。
【0028】
上記のような摘み部27においては、図4に示されているように、上記押圧板27b、27bは、それぞれ、筒状本体1の上部外面とは間隔をおいて下方に延びており、その下端は、薄肉の連結部33を介して筒状本体1の外面に連結されている。これにより、薄肉部5を介して筒状本体1の上端に連結されている環状部25は、ガタツクことなく安定に保持され、また、保管、搬送等の過程で薄肉部5が破断してしまうという不都合も有効に防止される。
【0029】
さらに、環状部25の内部に形成されている連通孔31は、前述した貫通孔7に通じており、しかも、環状部25を貫通しており、閉じられていない。即ち、この連通孔31は、貫通孔7と共に、殺菌・洗浄に際しての薬液及び洗浄水の流路として機能し、連通孔31の上端から薬液や洗浄水が排出されるものであり、殺菌・洗浄後に連通孔31は閉じられることとなる。
【0030】
このように、殺菌・洗浄は、貫通孔7及び連通孔31に薬液や洗浄水を流して行われ、連通孔31の上端から排出されるため、本発明では、連通孔31は、段差なく滑らかに貫通孔31に連通していることが必要である。即ち、連通孔31と貫通孔31との間に水平段差が形成されていると、この部分に薬液や洗浄水が付着残存し易くなってしまうが、段差がなければ、薬液や洗浄水の付着残存を有効に防止することができるからである。
【0031】
また、図4から理解されるように、上記と同様の理由により、連通路31及び貫通孔7の面は、何れも滑らかに形成され、その内部に液溜りとなるような凹部は形成されていない。また、貫通孔7は、前述した張り出し部11が形成されている領域の下方部分が最も大径となっており、その上方でかなり縮径されているが、両者の境界部分7aにも段差は形成されておらず、この部分はテーパー面となっている。
【0032】
上記のような構造のスパウトは、成形後、図6に示されているように、筒状本体1の外面において、張り出し部11が形成されている部分に袋状容器を形成するフィルム50,50が互いに対面するように熱溶着によって接合され、さらに、フィルム50,50の周縁部も一部を残して熱溶着される。即ち、所謂3方シールによりフィルム50,50の周縁が熱溶着され、スパウトが固定されている部分と反対側の下端に開口(シールされていない部分)が形成される。この状態で、この開口からフィルム50,50内(袋内)に殺菌用の薬液(例えば過酸化水素水など)が導入され、この薬液は、スパウト内を通って、前述した連通孔31から外部に排出される。このようにして殺菌が行われた後、洗浄水及び/又は洗浄用エアーが同様にして開口からフィルム50,50内に導入され、スパウト内を通って、連通孔31から外部に排出され、これにより、殺菌用の薬液を完全に排出することができる。殺菌・洗浄の方法としては、筒状本体1の外面において、張り出し部11が形成されている部分の片側に袋状容器を形成するフィルム50,50の一方の面のみを熱溶着下状態で殺菌・洗浄が行われ、その後、フィルム50,50の他方の面を熱溶着することも可能である。
【0033】
本発明においては、上記のようにして殺菌・洗浄が行われた後、連通孔31を閉じる作業が行われる。即ち、この連通孔31が外部に開放されていると、袋状容器内への内容物の充填を行うことができず、また内容物を密封することもできないからである。
【0034】
本発明では、環状部25の先端部分を熱溶着して連通孔31を閉じるために、図2及び図7に示されているように、この環状部25の水平断面は、楕円形となっている。即ち、環状部25の外面及び内面の何れも楕円形状となっている。このような楕円形の長軸L,L’と平行に配置された一対のヒートシールバー40,40によって環状部25の上端側面を挟み、これにより環状部25の上端側面を加熱圧着して熱溶着せしめ、これにより連通孔31を完全に閉じることができる。
【0035】
即ち、図8に示されているように、環状部25の水平断面が円形となっている比較例では、シールバー40,40による加熱圧着によって熱溶着を行った場合、シールバー40の中央部分に存在する熱溶融樹脂の量が過剰となり、この結果、両端部が潰れにくく、この部分に隙間41が形成され易くなってしまう。
【0036】
しかるに、図7に示されているように、環状部25の水平断面が楕円形となっている場合には、シールバー40,40による加熱圧着を行った場合、長軸Lに沿って存在する樹脂量は偏在しておらず、ほぼ均等であるため、両端が潰れにくくなるという不都合は有効に防止され、熱溶着により連通孔31を確実に閉じることができる。
【0037】
また、本発明においては、図2の拡大部分に示されているように、環状部25は、長軸Lの両端部分25a,25aが肉抜きによって薄肉に形成されていることが好ましい。即ち、環状部25が楕円形状の水平断面を有している場合においても、長軸Lの中央部分の存在する樹脂量が若干多く、このため、長軸Lの両端部分は若干閉じ難くなっていることは否めない。しかるに、図2の拡大部に示されているように、長軸Lの両端部25a,25aを薄肉とすることにより、熱圧着に際して、この部分が速やかに温度上昇して容易に熱溶融し、この結果、長軸Lの両端側での隙間の発生を、一層を確実に防止することができる。
この場合において、長軸Lの両端部25aでの薄肉の程度は、特に制限されるものではないが、一般に、長軸Lの両端部25aでの厚みtと短軸Sの両端部25bでの厚みtとの比(t/t)が0.5乃至0.8の範囲となる程度に薄肉化されていることが好ましい。また、楕円の程度は、長軸L(L’)と短軸S(S’)の長さの比L’/S’が1.5乃至3.0の範囲であることが、より確実に連通孔31を閉塞させ得る点で好適である。
【0038】
上記のようにして環状部25の上端を熱溶着せしめて連通孔31を閉じた後は、スパウトが接合されている部分とは反対側に形成されている開口から容器内容物を充填し、内容物の充填後、この開口を熱溶着により閉じ、内容物が充填されたスパウト付袋状容器が得られる。
このようなスパウト付袋状容器において、スパウトは、射出成形等により成形可能で且つ熱溶着可能な熱可塑性樹脂により形成されるが、一般的には、袋状容器を形成するフィルム50との接合性などの観点から、各種のオレフィン樹脂、例えば低−、中−、或いは高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)などにより形成され、また、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂を用いて形成することもできる。
さらに、袋状容器を形成するフィルム50としては、上記のスパウトとヒートシール可能なオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂などを挙げることができる。また、上記スパウトとの接合面にヒートシール可能な熱可塑性樹脂層が形成されたアルミ箔等の金属箔をフィルム50として使用することもできる。
【0039】
このようなスパウト付袋状容器は、既に述べたように、折り取り部材3を押し倒して或いは回して筒状本体1から折り取り、これにより筒状本体1の貫通孔7を開放し、この貫通孔7を通して容器内容物を注出する。
この場合、内容物を貫通孔7から直接注出してもよいし、各種のチューブを筒状本体1に螺子係合や嵌合により固定し、貫通孔7からチューブを介して内容物を注出することもできる。
【0040】
本発明のスパウトは、ワンピース製であり、蓋体などの別体を有しておらず、一段の成形で容易に製造されるためコスト的に有利であるばかりか、殺菌・洗浄性に極めて優れている。
このようなスパウトが設けられた袋状容器は、飲料や調味液等を収容するための容器、シャンプーなどの詰替ボトル、薬液が充填された点滴用バッグ、経管栄養法に用いるPEG用容器など、種々の用途に使用される。
【符号の説明】
【0041】
1:筒状本体
3:折り取り部材
5:薄肉部
7:貫通孔
11:張り出し部
13:鍔
25:環状部
27:摘み部
31:連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状容器に接着固定され且つ内部に貫通孔を有する筒状本体と、該筒状本体の上端に薄肉部を介して連なっており且つ該筒状本体の貫通孔を閉塞可能に設けられている折り取り部材とを備えており、袋状容器内に充填されている内容物の注出に際しては、該薄肉部を破断せしめて該折り取り部材を取り除くことにより、該筒状本体の貫通孔を通して内容物の注出が行われるスパウトにおいて、
前記折り取り部材は、前記筒状本体の貫通孔に段差なく滑らかに連通している連通孔を内部に有する環状部と、該環状部の外周から外方に延びている摘み部とからなり、
前記環状部は、平断面形状が楕円形に成形されており、
前記連通孔は、前記環状部を貫通して延びているが、前記環状部を熱溶着せしめることにより閉塞されることを特徴とするスパウト。
【請求項2】
前記環状部は、前記楕円形の長軸の両端部分が肉抜きにより薄肉となった形状を有している請求項1に記載のスパウト。
【請求項3】
前記筒状本体の下部外面には、袋状容器を熱溶着するための張り出し部が形成され、該筒状本体の上部外面には、袋状容器から内容物を取り出すために使用されるチューブを嵌合固定するための段差部及び/または該チューブを螺子固定するための螺条が形成されている請求項1または2に記載のスパウト。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのスパウトが取り付けられている袋状容器であって、該スパウトの前記環状部の連通孔の上端部分が熱溶着により閉じられていることを特徴とする袋状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−60213(P2013−60213A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199187(P2011−199187)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(596088093)オリヒロエンジニアリング株式会社 (15)
【出願人】(000129057)株式会社カナエ (39)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】