説明

スピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカー

【課題】 軽量で、音声再生能力に優れ、自動車等の車両に取り付けるのに適するスピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカーを提供する。
【解決手段】 スピーカー用フレームは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成され、基体が、スピーカー用フレームを他の機器に取り付けるフレーム取付部を含む第1環状部を備え、第1環状部のフレーム取付部が、基体に取付孔を形成する金属からなる取付孔形成部材を有し、取付孔形成部材が、少なくとも取付孔が露出するように芯材にインサート成形され、少なくともその一部の表面に表面材層が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
樹脂材料からなるフレームを備える動電型スピーカーに関し、特に、軽量で剛性を有し、自動車等の車両に取り付けるのに適するスピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に取り付けるスピーカーにおいては、省エネルギーの観点から、音声を再生するスピーカーを小型化し、かつ、軽量化することが要望されている。特に、磁気回路を有する動電型スピーカーでは、磁気回路の小型化・軽量化を図るともに、磁気回路に取り付けられるフレームを軽量化する場合がある。スピーカー用フレームは、スピーカー振動板を振動可能に支持し、車両等の他の機器への取付部を形成するとともに、スピーカー振動板に駆動力を与えるボイスコイルが配置される磁気空隙を有する磁気回路を固定する。車両に取り付けるスピーカーでは、ABS等の樹脂を射出成形する樹脂フレームに、磁気回路を固定するアルミカバーまたはサブフレームを備えるものがある。
【0003】
スピーカーの樹脂フレームは、軽量化を図ってその骨格を薄く、または、細くすると、重量を有する磁気回路の取り付けに必要な剛性が不足して不要な振動が発生する、あるいは、その剛性不足のために動電型スピーカーの車両への取り付け作業時に、あるいは、車両に大きな衝撃が加わった時に動電型スピーカーが破損する、という問題を生じる場合がある。また、動電型スピーカーのボイスコイルが発熱して、磁気回路が高い温度になる場合には、耐熱温度の低い樹脂で形成される樹脂フレームに悪影響を与える恐れがある。したがって、従来には、これらの問題を解決するために様々なフレーム、および、これを用いた動電型スピーカーが提案されている。
【0004】
従来には、ドーム状振動板とこれに一体成形されたコイルボビンの下端部に水平方向にエッジ部を一体成形することにより振動系が構成され、上記エッジ部を磁気回路内に支持させるようにして振動系を組み込むとともにトッププレートの前面側にはフレームを固定は位置してなるドーム型スピーカーであって、合成樹脂によって成形されるフレームには、裏面側に突出するように分周的に複数個の金属製の嵌合ボスをインサート成形し、トッププレートには上記嵌合ボスに対応するように嵌合孔を設けて上記嵌合ボスを圧入嵌合することによりトッププレートとフレームを結合固定し、トッププレートをマグネット上に組み込むことにより上記エッジ部を磁気回路内に支持するように構成されていることを特徴とするドーム型スピーカーがある(特許文献1)。
【0005】
また、従来には、湾曲部を有する弾性片を形成した、フレーム半径方向の断面がクサビ形状の別体のナットを、フレームの外周縁に穿設した取付孔に相当する後背面内周部位に、前記取付孔の延長上にネジ孔が位置するように、かつ、前記外周縁の後背面に対し所定の間隔を隔てて、クサビの先端をフレーム後端に向けて、ネジ等の取付具により取り付けたことを特徴とするスピーカーフレームがある(特許文献2)。このスピーカーフレームでは、フレームの外周縁と弾性片及びクサビ形ナットとが、成形時に一体に合成樹脂成形されている場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−70791号公報
【特許文献2】実公平4−22636号公報
【0007】
しかしながら、スピーカーのフレームは、さらに軽量化することが要望されている。スピーカーを軽量化するために樹脂フレームを用いる場合には、フレームの車両への取付部を樹脂で成形すると、薄肉に成形された取付部に規定される取付孔の周辺部に取付ネジ等により高い圧力が加わり、その結果、取付部が破断するなどの問題を生じる場合がある。一方で、フレームを厚肉にして剛性を高めると、軽量化が十分でなくなる場合がある、という問題がある。高温になりえる磁気回路と樹脂フレームとを固定する部分を含めて、動電型スピーカー全体としての剛性が不足すると、結果的に、音声再生能力に劣る動電型スピーカーになる、という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、樹脂材料からなるフレームと、これを備える動電型スピーカーに関し、軽量で、音声再生能力に優れ、自動車等の車両に取り付けるのに適するスピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスピーカー用フレームは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームであって、基体が、スピーカー用フレームを他の機器に取り付けるフレーム取付部を含む第1環状部を備え、第1環状部のフレーム取付部が、基体に取付孔を形成する金属からなる取付孔形成部材を有し、取付孔形成部材が、少なくとも取付孔が露出するように芯材にインサート成形され、少なくともその一部の表面に表面材層が形成される。
【0010】
また、本発明のスピーカー用フレームは、取付孔形成部材が、取付孔の端部から延設されるフランジ部をさらに有し、フランジ部の少なくとも所定の面積が露出するように芯材にインサート成形される。
【0011】
また、本発明のスピーカー用フレームは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームであって、基体が、エッジの外周端側を固定するエッジ固定部と、スピーカー用フレームを他の機器に取り付けるフレーム取付部と、を含む第1環状部を備え、第1環状部のフレーム取付部が、基体を貫通し、かつ、その内側表面が表面材層で被覆される貫通孔と、貫通孔に係合する金属からなる取付孔形成部材と、を有し、取付孔形成部材が、少なくとも取付孔が露出するようにフレーム取付部の貫通孔に接着剤で固定される。
【0012】
また、本発明の動電型スピーカーは、上記のスピーカー用フレームと、磁気回路固定部に固定される磁気回路と、磁気回路の磁気空隙に配置されるコイルを有するボイスコイルと、ボイスコイルに中央側で連結するスピーカー振動板と、スピーカー振動板の外周端側およびスピーカー用フレームのエッジ固定部に連結するエッジと、を備える。
【0013】
また、本発明の動電型スピーカーは、スピーカー用フレームに磁気回路を連結するサブフレームをさらに備え、サブフレームが、スピーカー用フレームのサブフレーム固定部に後面側から固定される。
【0014】
また、本発明の動電型スピーカーは、ボイスコイルおよびスピーカー用フレームのダンパー固定部に連結するダンパーをさらに備える。
【0015】
以下、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明のスピーカー用フレームは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームである。本発明のスピーカー用フレームは、極めて軽量な樹脂発泡体を芯材とし、その表面が十分な剛性を有する熱硬化性樹脂層である表面材層で覆われている基体で形成されるので、動電型スピーカーのフレームとして十分な剛性を有しつつ、樹脂で形成される従来のスピーカー用フレームよりも大幅に軽量化される。
【0017】
したがって、本発明のスピーカー用フレームを用いる動電型スピーカーは、従来の動電型スピーカーよりも大幅に軽量化できるので、自動車等の車両に取り付けるのに適した動電型スピーカーとなる。本発明の動電型スピーカーは、本発明のスピーカー用フレームと、磁気回路と、ボイスコイルと、スピーカー振動板と、エッジと、場合によってはダンパーをさらに備える。動電型スピーカーは、スピーカー用フレームに磁気回路を後面側から連結するサブフレームと、スピーカー用フレームとサブフレームとを連結する連結部材と、をさらに備えていてもよい。スピーカー用フレームの基体を構成する芯材の樹脂発泡体の融点が低く、耐熱温度の低い樹脂で形成されて芯材が熱に弱い場合であっても、フレームに悪影響を与えずに、動電型スピーカー全体としての剛性を保って、結果的に、音声再生能力に優れる動電型スピーカーを実現できる。
【0018】
本発明のスピーカー用フレームの基体は、スピーカー用フレームを他の機器に取り付けるフレーム取付部を含む第1環状部を備える。第1環状部は、略バスケット形状のスピーカー用フレームの前面側の環状部分であって、エッジの外周端側を固定するエッジ固定部を含んでいてもよい。また、スピーカー用フレームの基体は、略バスケット形状のスピーカー用フレームの後面側の環状部分であって、磁気回路を連結する磁気回路固定部、または、磁気回路を連結するサブフレームを固定するサブフレーム固定部を含む第2環状部を備える。第2環状部は、ダンパーの外周端側を固定するダンパー固定部を含んでいてもよい。第1環状部と第2環状部とは、複数の柱状の連結部により連結し、貫通孔である窓部を規定する。
【0019】
第1環状部のフレーム取付部は、基体に取付孔を形成する金属からなる取付孔形成部材を有する。取付孔形成部材は、少なくとも取付孔が露出するように芯材にインサート成形され、少なくともその一部の表面に表面材層が形成される。この場合には、取付孔形成部材は、取付孔の端部から延設されるフランジ部をさらに有し、フランジ部の少なくとも所定の面積が露出するように芯材にインサート成形されてもよい。あるいは、第1環状部のフレーム取付部は、基体を貫通し、かつ、その内側表面が表面材層で被覆される貫通孔と、貫通孔に係合する金属からなる取付孔形成部材と、を有する。この場合には、取付孔形成部材は、少なくとも取付孔が露出するようにフレーム取付部の貫通孔に接着剤で固定される。
【0020】
スピーカー用フレームのフレーム取付部は、金属からなる取付孔形成部材により取付孔を設けられるので、その結果、取付孔を通過してフレーム取付部に固定されるネジ等により高い圧力が加わっても、フレーム取付部が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。取付孔形成部材は、取付孔が露出するように芯材にインサート成形され、その一部の表面に表面材層が形成される。あるいは、取付孔形成部材は、スピーカー用フレームのフレーム取付部の内側表面が表面材層で被覆される貫通孔に係合する。取付孔形成部材は、その一部の表面に表面材層が形成されるか、または、接着剤で固定されるので、基体に対して強固に固定される。その結果、取付孔形成部材は、基体の芯材に連結部材であるネジ等の圧力が直接に加わらないようにして、基体の破断を防止する。取付孔形成部材がフランジ部をさらに有していれば、より広い面積でネジ頭部の圧力を受けるので、ネジのトルクを高めても基体のフレーム取付部の変形を防止できる。
【0021】
したがって、本発明のスピーカー用フレームが、樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成される場合に、基体の第1環状部のフレーム取付部を必要以上に厚肉にしなくても、これを用いる動電型スピーカーにおいて、フレーム取付部の破断、または、変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のスピーカー用フレーム、および、これを用いる動電型スピーカーは、軽量であり、かつ、車両等に取り付ける動電型スピーカー全体としての剛性を保って、音声再生能力に優れる動電型スピーカーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1aを説明する断面図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用フレーム20aの構成を説明する一部拡大平面図、および、一部拡大断面図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1bを説明する断面図である。(実施例2)
【図4】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用フレーム20bの構成を説明する一部拡大平面図、および、一部拡大断面図である。(実施例2)
【図5】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1cを説明する断面図である。(実施例3)
【図6】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用フレーム20cの構成を説明する一部拡大平面図、および、一部拡大断面図である。(実施例3)
【図7】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1dを説明する断面図である。(実施例4)
【図8】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用フレーム20dの構成を説明する一部拡大平面図、および、一部拡大断面図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1aを説明する図である。また、図2は、動電型スピーカー1aを構成するスピーカー用フレーム20aの構成を説明する図である。具体的には、図1は、(図示しない)中心点Oを通過する断面に相当する動電型スピーカー1aの断面図であり、図2は、スピーカー用フレーム20aの第1環状部21の一部拡大平面図、および、一部拡大断面である。なお、後述するように、動電型スピーカー1aおよびスピーカー用フレーム20aの一部の構造や、内部構造等は、省略している。
【0026】
本実施例の動電型スピーカー1aは、口径が約16cmの円形のスピーカー振動板2を有する動電型スピーカーであり、(図示しない)車両の車体に取り付けるように軽量化を図った車両用のスピーカーである。コーン形状のスピーカー振動板2は、エッジ3によってその外周端を振動可能に支持されている。本実施例のスピーカー振動板2は、抄紙される紙材であるが、他の材料で構成するものであってもよい。ロール形状のエッジ3の外周端は、スピーカー用フレーム20aに固定されており、その前側にはガスケット7が取り付けられている。エッジ3の内周端は、スピーカー振動板2の外周端に連結している。また、スピーカー振動板2の中央部の内径端には、ボイスコイル4が連結しており、ボイスコイル4は、そのコイルボビンがダンパー5により振動可能に支持されている。ダンパー5は、柔軟性を有する繊維の織布を基材としてフェノール樹脂を含浸して成形するコルゲーションダンパーであり、その外周端がフレーム20aに固定されている。
【0027】
ボイスコイル4は、円筒形のコイルボビンの一端側に巻回されたコイルを有し、このコイルは、フレーム20aにサブフレーム8およびネジ9を介して固定される磁気回路10の磁気空隙に配置される。本実施例のサブフレーム8は、耐熱性および放熱性に優れるアルミニウム合金から形成される。ボイスコイル4に接続する(図示しない)錦糸線は、フレーム20aに固定される(図示しない)ターミナルと、ターミナルからコイル4の引出線とを、ハンダづけして導通させるので、ボイスコイル4に音声電流を供給することができる。なお、錦糸線は、スピーカー振動板2に金属ハトメを設けてターミナルまで導通させるようにしてもよい。スピーカー振動板2の中央側において、ボイスコイル4のコイルボビンの端部には、ダストキャップ6が接着剤で取り付けられて閉塞されているので、磁気回路10の磁気空隙には、鉄粉等の粉塵が入り込まない。
【0028】
本実施例の磁気回路10は、段付きの壺状のヨーク11と、ヨーク11の内部に固定される円盤状のマグネット12と、マグネット12の上面側に固定される円盤状のトッププレート13と、トッププレート13の上面側に固定される円盤状の反発マグネット14と、からなる内磁反発型磁気回路であって、ヨーク11の底面部分及び側面部分が、サブフレーム8の中央凹部に固定されている。サブフレーム8は、アルミニウム合金からなり、中央凹部の周囲に形成されるフランジ部分がネジ9を介してフレーム20aに固定されて連結されている。磁気回路10は、ヨーク11の内周端部とトッププレート13との間に規定される円環状の磁気空隙に、高い磁束密度の直流磁界を形成する。したがって、この磁気空隙に配置されるボイスコイル4のコイルに音声電流が供給されると、ボイスコイル4に駆動力が作用して、スピーカー振動板2を振動させる。したがって、動電型スピーカー1は、音声信号電流を音波に変換することができる。
【0029】
図2(b)に断面を拡大して図示するように、本実施例のフレーム20aは、生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材20xと、熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂を含んで芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームである。フレーム20aは、密度の低い樹脂発泡体からなる芯材が基体の大部分を占めるので、樹脂材料から形成される口径16cmのスピーカー用フレームとしては、極めて軽量である。フレーム20aは、前面外周側に形成される第1環状部21と、第1環状部21よりも背面内周側に形成される第2環状部22と、第1環状部21と第2環状部22とを連結する複数の連結部23と、を備える略バスケット状のスピーカー用フレームである。
【0030】
なお、芯材20xの樹脂発泡体を形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、蒸気加熱発泡法により発泡可能なTgを有する熱可塑性樹脂や、発泡成形性が高く、かつ、適度な剛性を有する熱硬化性樹脂が採用され得る。このような樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、および、これらのブレンド物またはアロイ化物が好ましく例示される。軽量、かつ、表面材層との接着性に優れた樹脂発泡体を形成し得るからである。ウレタン系樹脂は、さらに常温で発泡性を有するという利点も有する。また、環境適応の観点から、本実施例の場合のポリ乳酸等の生分解性プラスチックを用いてもよい。好ましくは、ポリ乳酸は、トウモロコシのような農作物またはバイオマス原料から製造される。
【0031】
芯材20xには、必要に応じて、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理が施され得る。表面処理を施すことにより、表面材層との接着性が向上し得る。表面処理条件は、上記樹脂の種類等に応じて適切に設定され得る。芯材20xの形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。芯材20xは、例えば、炭化水素ガス等の発泡剤を含む樹脂粒子を発泡させて形成される。
【0032】
一方、表面材層20yは、熱硬化性樹脂を含み、芯材20xの表面のほぼ全体を被覆する。表面材層20yの厚みは、所望される剛性等に応じて、適切に設定され得る。表面材層20yの厚みは、好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.45mm以上である。表面材層20yの厚みがこのような範囲内であれば、軽量でありながら剛性に優れたスピーカーフレームが得られ得る。好ましい実施形態においては、芯材20xの厚みに対する表面材層20yの厚みの合計(放射面側の表面材層とその反対側の表面材層との厚みの合計)の割合は、0.1%〜20%、さらに好ましくは0.5%〜10%である。
【0033】
表面材層20yに含まれる熱硬化性樹脂としては、任意の適切な熱硬化性樹脂が採用され得る。好ましくは、表面硬度およびヤング率が高く、芯材20xとの接着性に優れた熱硬化性樹脂が採用され得る。また、操作性の観点から、硬化前は流動性が高く、液状を呈することが好ましい。表面材層20yに含まれる熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、およびウレタン系樹脂が好ましい。
【0034】
表面材層20yは、好ましくは上記樹脂に加えて強化材をさらに含んでいてもよい。強化材を含むことにより、さらに剛性に優れたスピーカーフレームが得られ得る。強化材としては、繊維状・粒子状・鱗片状等の任意の適切な材料が用いられ得る。なかでも、繊維状の強化材は、剛性の向上効果が高く、好ましい。
【0035】
フレーム20aの第1環状部21からは、一周に渡ってフランジ24が径方向の外側へ突出するように形成されている。この第1環状部21と一体に形成されているフランジ24には、車両の車体に取り付ける図示するような取付孔25hを規定する複数のフレーム取付部25が、周方向に約120度の間隔で3箇所形成されている。第1環状部21は、(図示しない)ターミナルを連結する(図示しない)ターミナル連結部を有する。また、フレーム20aの第1環状部21は、その前側にスピーカー振動板2並びにエッジ3を含むスピーカー振動系を保護するガスケット7が取り付けられる。第1環状部21は、スピーカー振動板2が連結するエッジ3の外周端側を固定するエッジ固定部を有する。エッジ固定部は、エッジ3を接着する円環状の平面部分である。
【0036】
フレーム20aの第2環状部22は、サブフレーム8を介して磁気回路10を固定するサブフレーム固定部26を含み、磁気回路10の磁気空隙に連通する中心孔と、ダンパー5の外周部を固定するダンパー固定部とを有する。サブフレーム8は、サブフレーム固定部26にその後面側から、ネジ9を用いて固定される。サブフレーム固定部26は、周方向に約120度の間隔で3箇所形成されている。サブフレーム8は、フランジ部分にネジ9が貫通する貫通孔を複数有している。また、第2環状部22が有するダンパー固定部は、ダンパー5を接着する円環状の平面部分である。
【0037】
なお、本実施例の場合には、複数の連結部23は、第1環状部21と第2環状部22とを連結する柱状の部分であって、中心点Oを中心にして周方向に約120度の間隔で3つ設けられている。第2環状部22から見ると第1環状部21がフレーム20aの前方側に配置されているので、第1環状部21は、第2環状部22から前方側の第1環状部21へ向かうように延設されている構造になる。第1環状部21と第2環状部22と、これらを連結する複数の連結部23は、貫通孔である窓部を規定する。
【0038】
フレーム20aの第1環状部21に設けられるフレーム取付部25は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体に、取付孔25hを形成する金属からなる取付孔形成部材25aを有する。つまり、取付孔形成部材25aは、第1環状部21のフレーム取付部25において、取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形される金属筒部材であって、図2(b)に図示するように、芯材20xにくい込んで容易に抜け落ちないようにする突部をその外側円筒曲面に有する部材である。
【0039】
取付孔形成部材25aは、フレーム20aの芯材20xが成型される段階でインサート成形され、その後に熱硬化性樹脂により芯材20xの表面を被覆する表面材層20yが形成されるので、取付孔形成部材25aは、少なくともその一部の表面に表面材層20yが形成される。図2(a)および図2(b)に図示するように、本実施例の取付孔形成部材25aでは、表面に露出し得る表面の全部が表面材層20yにより被覆されている。なお、取付孔形成部材25aの取付孔25hには、ネジが螺合するネジ溝が形成されていてもよい。
【0040】
このように本実施例のフレーム20aを用いる動電型スピーカー1aでは、第1環状部21のフレーム取付部25が、金属からなる取付孔形成部材25aにより取付孔25hを設けられるので、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20aであっても、取付孔25hを通過して車両等に固定しようとするネジ等により高い圧力が加わる場合にも、フレーム取付部25が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。取付孔形成部材25aは、取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形され、少なくともその一部の表面に剛性を高める表面材層20yが形成されるからである。その結果、取付孔形成部材25aは、基体の芯材20xに連結部材であるネジ等の圧力が直接に加わらないようにして、フレーム20aを用いる動電型スピーカーにおいて、フレーム取付部25を含む第1環状部21のフランジ24を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0041】
同様に、フレーム20aの第2環状部22に設けられるサブフレーム固定部26は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体に、取付孔26hを形成する金属からなる取付孔形成部材26aを有する。つまり、取付孔形成部材26aは、第2環状部22のサブフレーム固定部26において、取付孔26hが露出するように芯材20xにインサート成形される金属筒部材であって、芯材20xにくい込んで容易に抜け落ちないようにする突部をその外側円筒曲面に有する部材である。
【0042】
フレーム20aの取付孔形成部材26aは、芯材20xが成型される段階でインサート成形され、その後に熱硬化性樹脂により芯材20xの表面を被覆する表面材層20yが形成されるので、取付孔形成部材26aは、少なくともその一部の表面に表面材層20yが形成される。本実施例の取付孔形成部材26aでは、表面に露出し得る表面の全部が表面材層20yにより被覆されている。なお、取付孔形成部材26aの取付孔26hには、サブフレーム8を固定するネジ9が螺合するネジ溝が形成されている。
【0043】
このように本実施例のフレーム20aを用いる動電型スピーカー1aでは、第2環状部22のサブフレーム取付部26が、金属からなる取付孔形成部材26aにより取付孔26hを設けられるので、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20aであっても、取付孔26hを通過して磁気回路10を固定しようとするネジ9により高い圧力が加わる場合にも、サブフレーム取付部26が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。取付孔形成部材26aは、取付孔26hが露出するように芯材20xにインサート成形され、少なくともその一部の表面に剛性を高める表面材層20yが形成されるからである。その結果、取付孔形成部材26aは、基体の芯材20xに連結部材であるネジ等の圧力が直接に加わらないようにして、フレーム20aを用いる動電型スピーカーにおいて、サブフレーム取付部26を含む第2環状部22を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【実施例2】
【0044】
図3は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー1bを説明する図である。また、図4は、動電型スピーカー1bを構成するスピーカー用フレーム20bの構成を説明する図である。具体的には、図3は、図1と同様に(図示しない)中心点Oを通過する断面に相当する動電型スピーカー1bの断面図であり、図4は、図2と同様にスピーカー用フレーム20bの第1環状部21の一部拡大平面図、および、一部拡大断面である。
【0045】
スピーカー用フレーム20bは、先の実施例におけるフレーム20aの第1環状部21のフレーム取付部25の構成と、第2環状部22のサブフレーム取付部26の構成と、が異なることを除いて、共通する構成を有するフレームである。つまり、本実施例のフレーム20bも、生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材20xと、熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂を含んで芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームである。したがって、共通する部分には共通する符号を付して、説明を省略する。
【0046】
フレーム20bの第1環状部21に設けられるフレーム取付部25は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体に、取付孔25hを形成する金属からなる取付孔形成部材25bを有する。つまり、取付孔形成部材25bは、第1環状部21のフレーム取付部25において、取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形される金属筒部材であって、円筒の両端に径方向に突出するように延設されるフランジ部を備え、芯材20xを両側から挟み込んで容易に抜け落ちないようにすることができる部材である。
【0047】
取付孔形成部材25bは、フレーム20bの芯材20xが成型される段階でインサート成形され、その後に熱硬化性樹脂により芯材20xの表面を被覆する表面材層20yが形成されるので、取付孔形成部材25bは、少なくともその一部の表面に表面材層20yが形成される。図4(a)および図4(b)に図示するように、本実施例の取付孔形成部材25bでは、表面に露出し得る表面のうち、フランジ部の少なくとも所定の面積が表面材層20yにより被覆されている。なお、取付孔形成部材25bの取付孔25hには、ネジが螺合するネジ溝が形成されていてもよい。
【0048】
このように本実施例のフレーム20bを用いる動電型スピーカー1bでは、第1環状部21のフレーム取付部25が、金属からなる取付孔形成部材25bにより取付孔25hを設けられるので、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20bであっても、取付孔25hを通過して車両等に固定しようとするネジ等により高い圧力が加わる場合にも、フレーム取付部25が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形され、少なくともその一部の表面に剛性を高める表面材層20yが形成されるからである。また、フランジ部をさらに有する取付孔形成部材25bは、より広い面積でネジ頭部の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ等の圧力が直接に加わらないようにして、フレーム取付部25を含む第1環状部21のフランジ24を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0049】
同様に、フレーム20bの第2環状部22に設けられるサブフレーム固定部26は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体に、取付孔26hを形成する金属からなる取付孔形成部材26bを有する。つまり、取付孔形成部材26bは、第2環状部22のサブフレーム固定部26において、取付孔26hが露出するように芯材20xにインサート成形される金属筒部材であって、円筒の両端に径方向に突出するように延設されるフランジ部を備え、芯材20xを両側から挟み込んで容易に抜け落ちないようにすることができる部材である。
【0050】
フレーム20bの取付孔形成部材26bは、芯材20xが成型される段階でインサート成形され、その後に熱硬化性樹脂により芯材20xの表面を被覆する表面材層20yが形成されるので、取付孔形成部材26bは、少なくともその一部の表面に表面材層20yが形成される。本実施例の取付孔形成部材26bでは、表面に露出し得る表面のうち、フランジ部の少なくとも所定の面積が表面材層20yにより被覆されている。なお、取付孔形成部材26bの取付孔26hには、サブフレーム8を固定するネジ9が螺合するネジ溝が形成されている。
【0051】
このように本実施例のフレーム20bを用いる動電型スピーカー1bでは、第2環状部22のサブフレーム取付部26が、金属からなる取付孔形成部材26bにより取付孔26hを設けられるので、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20bであっても、取付孔26hを通過して磁気回路10を固定しようとするネジ9により高い圧力が加わる場合にも、サブフレーム取付部26が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。取付孔形成部材26bは、取付孔26hが露出するように芯材20xにインサート成形され、少なくともその一部の表面に剛性を高める表面材層20yが形成されるからである。また、フランジ部をさらに有する取付孔形成部材26bは、より広い面積でネジ9の頭部の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ9の圧力が直接に加わらないようにして、サブフレーム取付部26を含む第2環状部22を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0052】
さらに、本実施例のフレーム20bは、フランジ部をさらに有する取付孔形成部材26bを含むので、図示するように、このフランジ部がサブフレーム取付部26と磁気回路10を連結するサブフレーム8とに狭持される。したがって、フランジ部の厚みの分だけ、サブフレーム取付部26とサブフレーム8とが離隔する。その結果、発熱する磁気回路10を連結するサブフレーム8が高温になっても、直接にフレーム20bを構成する表面材層20yと芯材20xとに触れることがないので、フレーム20bの基材の熱による変形を防止することが出来る。
【実施例3】
【0053】
図5は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー1cを説明する図である。また、図6は、動電型スピーカー1cを構成するスピーカー用フレーム20cの構成を説明する図である。具体的には、図5は、図1または図3と同様に(図示しない)中心点Oを通過する断面に相当する動電型スピーカー1cの断面図であり、図6は、図2または図4と同様にスピーカー用フレーム20cの第1環状部21の一部拡大平面図、および、一部拡大断面である。
【0054】
スピーカー用フレーム20cは、先の実施例におけるフレーム20aの第1環状部21のフレーム取付部25の構成と、第2環状部22のサブフレーム取付部26の構成と、が異なることを除いて、共通する構成を有するフレームである。つまり、本実施例のフレーム20cも、生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材20xと、熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂を含んで芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームである。したがって、共通する部分には共通する符号を付して、説明を省略する。
【0055】
フレーム20cの第1環状部21に設けられるフレーム取付部25は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体を貫通し、かつ、その内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zと、貫通孔20zに係合する金属からなる取付孔形成部材25cと、を有し、取付孔形成部材25cが、少なくとも取付孔25hが露出するようにフレーム取付部25の貫通孔20zに接着剤30で固定される。つまり、取付孔形成部材25cは、第1環状部21のフレーム取付部25において、内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zに取付孔25hが露出するように一方向から挿入される金属筒部材であって、円筒の一方端に径方向に突出するように延設されるフランジ部を備え、接着剤30により容易に抜け落ちないようにする固定される部材である。
【0056】
図6(b)に図示するように、接着剤30は、少なくとも取付孔形成部材25cの外側円筒曲面に塗布されて、取付孔形成部材25cが貫通孔20zに係合する結果、貫通孔20zとの間に接着剤層を形成する。したがって、取付孔形成部材25cは、フレーム20cの芯材20xが表面材層20yで被覆されて成型された後の段階で接着固定されるので、取付孔形成部材25cには、その表面に表面材層20yが形成されない。
【0057】
このように本実施例のフレーム20cを用いる動電型スピーカー1cでは、第1環状部21のフレーム取付部25が、接着剤30で固定する金属からなる取付孔形成部材25cにより取付孔25hを設けられるので、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20cであっても、取付孔25hを通過して車両等に固定しようとするネジ等により高い圧力が加わる場合にも、フレーム取付部25が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。また、フランジ部をさらに有する取付孔形成部材25cは、より広い面積でネジ頭部の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ等の圧力が直接に加わらないようにして、フレーム取付部25を含む第1環状部21のフランジ24を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0058】
同様に、フレーム20cの第2環状部22に設けられるサブフレーム固定部26は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体を貫通し、かつ、その内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zと、貫通孔20zに係合する金属からなる取付孔形成部材26cと、を有し、取付孔形成部材26cが、少なくとも取付孔26hが露出するようにサブフレーム固定部26の貫通孔20zに接着剤30で固定される。つまり、取付孔形成部材26cは、第2環状部22のサブフレーム取付部26において、内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zに取付孔26hが露出するように一方向から挿入される金属筒部材であって、円筒の一方端に径方向に突出するように延設されるフランジ部を備え、接着剤30により容易に抜け落ちないように固定される部材である。
【0059】
接着剤30は、少なくとも取付孔形成部材26cの外側円筒曲面に塗布されて、取付孔形成部材26cが貫通孔20zに係合する結果、貫通孔20zとの間に接着剤層を形成する。したがって、取付孔形成部材26cは、フレーム20cの芯材20xが表面材層20yで被覆されて成型された後の段階で接着固定されるので、取付孔形成部材25cには、その表面に表面材層20yが形成されない。なお、本実施例の取付孔形成部材26cの取付孔26hには、サブフレーム8を固定するネジ9が螺合するネジ溝が形成されておらず、ネジ9は対応するナット27と螺合する。その結果、ネジ9のネジ頭とナット27との間にサブフレーム8およびフレーム20cの取付孔形成部材26cが狭持されて、フレーム20cとサブフレーム8および磁気回路10とが連結される。
【0060】
このように本実施例のフレーム20cを用いる動電型スピーカー1cでは、第2環状部22のサブフレーム取付部26が、金属からなる取付孔形成部材26cにより取付孔26hを設けられるので、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20cであっても、取付孔26hを通過して磁気回路10を固定しようとするネジ9により高い圧力が加わる場合にも、サブフレーム取付部26が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。また、フランジ部をさらに有する取付孔形成部材26cは、より広い面積でナット27の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるナット27の圧力が直接に加わらないようにして、サブフレーム取付部26を含む第2環状部22を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0061】
さらに、本実施例のフレーム20cは、第2環状部22のサブフレーム取付部26の厚みよりも長さの長い取付孔形成部材26cを含むので、図示するように、この取付孔形成部材26cの一方側がサブフレーム取付部26より突出する。したがって、発熱する磁気回路10を連結するサブフレーム8が高温になっても、直接にフレーム20cを構成する表面材層20yと芯材20xとに触れることがないので、フレーム20cの基材の熱による変形を防止することが出来る。
【実施例4】
【0062】
図7は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー1dを説明する図である。また、図8は、動電型スピーカー1dを構成するスピーカー用フレーム20dの構成を説明する図である。具体的には、図7は、図1と同様に(図示しない)中心点Oを通過する断面に相当する動電型スピーカー1dの断面図であり、図8は、図2と同様にスピーカー用フレーム20dの第1環状部21の一部拡大平面図、および、一部拡大断面である。
【0063】
スピーカー用フレーム20dは、先の実施例におけるフレーム20aの第1環状部21のフレーム取付部25の構成と、第2環状部22のサブフレーム取付部26の構成と、が異なることを除いて、共通する構成を有するフレームである。つまり、本実施例のフレーム20dも、生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材20xと、熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂を含んで芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームである。したがって、共通する部分には共通する符号を付して、説明を省略する。
【0064】
フレーム20dの第1環状部21に設けられるフレーム取付部25は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体に、取付孔25hを形成する金属からなる取付孔形成部材25dを有する。つまり、取付孔形成部材25dは、第1環状部21のフレーム取付部25において、取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形されるワッシャー状の金属部材であって、内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zの一部に、取付孔25hが露出するように外周側が芯材20xにくい込んで、容易に抜け落ちないように固定される部材である。
【0065】
取付孔形成部材25dは、フレーム20dの芯材20xが成型される段階でインサート成形され、その後に熱硬化性樹脂により芯材20xの表面を被覆する表面材層20yが形成されるので、取付孔形成部材25dは、少なくともその一部の表面に表面材層20yが形成される。図8(a)および図8(b)に図示するように、本実施例の取付孔形成部材25dでは、表面に露出し得る表面のうち、ワッシャーの少なくとも所定の面積が表面材層20yにより被覆されている。
【0066】
このように本実施例のフレーム20dを用いる動電型スピーカー1dでは、第1環状部21のフレーム取付部25が、金属からなる取付孔形成部材25dにより取付孔25hを設けられるので、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20dであっても、取付孔25hを通過して車両等に固定しようとするネジ等により高い圧力が加わる場合にも、フレーム取付部25が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形され、少なくともその一部の表面に剛性を高める表面材層20yが形成されるからである。また、フランジ部をさらに有する取付孔形成部材25dは、より広い面積でネジ頭部の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ等の圧力が直接に加わらないようにして、フレーム取付部25を含む第1環状部21のフランジ24を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0067】
一方で、フレーム20dの第2環状部22に設けられるサブフレーム固定部26は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体を貫通し、かつ、その内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zを有し、先の他の実施例のような取付孔形成部材を有しない。その代わりに、動電型スピーカー1dでは、サブフレーム固定部26の貫通孔20zを貫通するネジ9と、ネジ9と螺合する環状のリング状部材28と、が、連結部材を構成する。リング状部材28は、アルミニウム合金を含む金属であり、ネジ9に対応する複数のネジ穴を有している。したがって、ネジ9のネジ頭とリング状部材28との間にサブフレーム8およびフレーム20dの第2環状部22のサブフレーム固定部26が狭持されて、フレーム20dとサブフレーム8および磁気回路10とが連結される。
【0068】
このように本実施例のフレーム20dを用いる動電型スピーカー1dでは、第2環状部22のサブフレーム取付部26が、金属からなる取付孔形成部材を有しておらず、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20dであっても、貫通孔20zを通過して磁気回路10を固定しようとするネジ9により高い圧力が加わる場合にも、サブフレーム取付部26が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。また、リング状部材28は、より広い面積でネジ9の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ9の圧力が直接に加わらないようにして、サブフレーム取付部26を含む第2環状部22を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0069】
なお、本実施例のフレーム20a〜20dでは、それぞれ3箇所の第1環状部21のフレーム取付部25と、第2環状部22のサブフレーム取付部26と、を周方向に約120度の間隔で設けているが、上記の実施例に限定されない。フレーム取付部25およびサブフレーム取付部26は、少なくとも2つ以上であればよく、それぞれ4つでも、5つでもよく、同じ数の場合に限られない。フレーム取付部25およびサブフレーム取付部26が配置される間隔も、周方向に略均等な角度に配置される場合に限られない。
【0070】
また、本実施例のフレーム20a〜20dでは、芯材20xを生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂を含む樹脂発泡体とし、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yを熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂としているが、上記の実施例に限定されない。上述するように、芯材20xは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなればよく、また、表面材層20yは、芯材の表面を被覆する他の熱硬化性樹脂であればよい。
【0071】
また、本実施例のフレーム20a〜20dを用いる動電型スピーカー1a〜1dは、円形のスピーカー振動板2を有する車両用の動電型スピーカーであるが、外径が長円形、あるいは、矩形のスピーカー振動板2に適する長円形、もしくは、矩形の環状部を有するフレームであっても、ドレインカバーを備える樹脂フレームであってもよい。ドレインカバーを備えていても、必要な剛性を保って車両の軽量化に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のスピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカーは、車両に取り付ける動電型スピーカーのみならず、ディスプレイ等の映像・音響機器に内蔵するスピーカー、または、音声を再生するスピーカーを内蔵するキャビネットを有するゲーム機、スロットマシン等の遊戯機にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1a〜1d 動電型スピーカー
2 スピーカー振動板
3 エッジ
4 ボイスコイル
5 ダンパー
6 ダストキャップ
7 ガスケット
8 サブフレーム
9 ネジ
10 磁気回路
11 ヨーク
12 マグネット
13 トッププレート
14 反発マグネット
20a〜20d フレーム
20x 芯材
20y 表面材層
20z 貫通孔
21 第1環状部
22 第2環状部
23 連結部
24 フランジ
25 フレーム取付部
25a〜25d 取付孔形成部材
25h 取付孔
26 サブフレーム固定部
26a〜26d 取付孔形成部材
26h 取付孔
27 ナット
28 リング状部材
30 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで該芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームであって、
該基体が、該スピーカー用フレームを他の機器に取り付けるフレーム取付部を含む第1環状部を備え、
該第1環状部の該フレーム取付部が、該基体に取付孔を形成する金属からなる取付孔形成部材を有し、
該取付孔形成部材が、少なくとも該取付孔が露出するように該芯材にインサート成形され、少なくともその一部の表面に該表面材層が形成される、
スピーカー用フレーム。
【請求項2】
前記取付孔形成部材が、前記取付孔の端部から延設されるフランジ部をさらに有し、該フランジ部の少なくとも所定の面積が露出するように該芯材にインサート成形される、
請求項1に記載のスピーカー用フレーム。
【請求項3】
ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで該芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームであって、
該基体が、該スピーカー用フレームを他の機器に取り付けるフレーム取付部を含む第1環状部を備え、
該第1環状部の該フレーム取付部が、該基体を貫通し、かつ、その内側表面が該表面材層で被覆される貫通孔と、該貫通孔に係合する金属からなる取付孔形成部材と、を有し、
該取付孔形成部材が、少なくとも該取付孔が露出するように該フレーム取付部の該貫通孔に接着剤で固定される、
スピーカー用フレーム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のスピーカー用フレームと、
該スピーカー用フレームに固定される前記磁気回路と、
該磁気回路の磁気空隙に配置されるコイルを有するボイスコイルと、
該ボイスコイルに中央側で連結するスピーカー振動板と、
該スピーカー振動板の外周端側および前記スピーカー用フレームのエッジ固定部に連結するエッジと、
を備える、
動電型スピーカー。
【請求項5】
前記スピーカー用フレームに前記磁気回路を連結するサブフレームをさらに備え、該サブフレームが、該スピーカー用フレームのサブフレーム固定部に後面側から固定される、
請求項4に記載の動電型スピーカー。
【請求項6】
前記ボイスコイルおよび前記スピーカー用フレームのダンパー固定部に連結するダンパーをさらに備える、
請求項4または5に記載の動電型スピーカー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−34315(P2012−34315A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174350(P2010−174350)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】