説明

スピーカー用増幅器およびこれを用いたスピーカーシステム

【課題】 車載用の音響再生のためのスピーカーを駆動するスピーカー用増幅器、および、これを用いて構成したスピーカーシステムに関し、ユーザーの接続作業が容易で、ノイズや異音が生じることがなく良好な音声再生が可能なスピーカー用増幅器、およびこれを用いたスピーカーシステムを提供する。
【解決手段】 本発明のスピーカー用増幅器は、入力音声信号が入力される入力端子と、入力音声信号に重畳した直流電圧値を検出する検出回路と、入力端子および検出回路と接続し、入力音声信号を増幅するプリアンプ回路と、を備え、検出回路が、検出した直流電圧値に基づいてゲイン切替制御信号をプリアンプ回路へ与え、プリアンプ回路が、ゲイン切替制御信号を受けてプリアンプ回路の増幅ゲインを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の音響再生のためのスピーカーを駆動するスピーカー用増幅器、および、これを用いて構成したスピーカーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の音響再生システムにおいては、音響特性を改善するために増幅器を含むスピーカーシステムが付加されることがある。増幅器を含むスピーカーシステムとは、代表的には、低音域を再生するためのアンプ内蔵サブウーファーである。図3は、音響再生システム2を構成するヘッドユニット3およびスピーカー4と、従来のアンプ内蔵サブウーファー20との接続を説明する図である。アンプ内蔵サブウーファー20は、プリアンプ21と、メインアンプ22と、スピーカー23とを含む。アンプ内蔵サブウーファー20は音声信号を入力する入力端子を備え、ヘッドユニット3のディスクプレーヤー31等のライン出力信号端子33に対応するラインレベル入力端子25と、スピーカー4を駆動するヘッドユニット3のアンプ部32の出力信号端子34に対応するスピーカーレベル入力端子26とを備える。つまり、接続する機器の音声出力信号の信号レベルが大きく異なるため、アンプ内蔵サブウーファー20には、ラインレベル入力端子25とスピーカーレベル入力端子26という専用の2組の入力端子を用意し、プリアンプ21がそれぞれに対応した所定の増幅ゲインを与えるように設計される。
【0003】
図4は、従来のアンプ内蔵サブウーファー20の入力端子25および26と、プリアンプ21と、を説明する図である。具体的には、入力端子25はピンプラグが接続可能な端子であり、入力端子26はスピーカー用電線が接続可能な端子である。このアンプ内蔵サブウーファー20は、ラインレベル入力端子25とスピーカーレベル入力端子26のどちらを選択するかを切り替える切替スイッチを備えず、プリアンプ21のそれぞれに対応したプリアンプ回路部分の出力を混合して、メインアンプ22へ出力する。ユーザーがこのアンプ内蔵サブウーファー20を音響再生システムに接続する際には、ラインレベル入力端子25かスピーカーレベル入力端子26かのいずれかに音声信号を入力するだけでよい、という利便性がある。
【0004】
しかしながら、多くの場合使用されるスピーカーレベル入力端子26に接続がされたときには、増幅ゲインが大きく設定される他方のラインレベル入力端子25のプリアンプ出力にノイズが混入し、その結果、アンプ内蔵サブウーファー20のS/N特性が悪化する問題がある。この問題を回避するためには、ラインレベル入力端子25にショートピンを結合する、もしくは、ラインレベル入力端子25を、入力を切断するスイッチ付きの入力端子に変更する、等の対策が必要になる。これらの対策が行われないときには、ラインレベル入力端子25に異物が接触すると大きなポップ音が出る等の不具合を生じることがある。
【0005】
また、車載用の音響再生システムを構成する増幅器には、車両のバッテリーを電源とするBTL(Balanced Transformer Less)増幅器が使用される。BTL増幅器からスピーカーへ供給される音声信号には、直流電源に基づく直流電圧が重畳されるので、従来の車載用の音響再生システムに付加する機器には、BTL増幅器の動作オン/オフの検知をこの直流電圧を検知することにより行うものがある。例えば、BTL増幅器を含むヘッドアンプ出力に重畳する直流電圧を検知することにより、接続されるパワーアンプ装置の動作オン/オフが切り替わる(特許文献1)。また、BTL出力か非BTL出力かを判定して、判定に応じて増幅器の回路構成をBTL出力もしくは非BTL出力のいずれかに対応するように切り替えるものがある(特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−189986号公報 (第2図)
【特許文献2】実開昭61−57708号公報 (第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、車載用の音響再生のためのスピーカーを駆動するスピーカー用増幅器、および、これを用いて構成したスピーカーシステムに関し、ユーザーの接続作業が容易で、ノイズや異音が生じることがなく良好な音声再生が可能なスピーカー用増幅器、およびこれを用いたスピーカーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスピーカー用増幅器は、入力音声信号が入力される入力端子と、入力音声信号に重畳した直流電圧値を検出する検出回路と、入力端子および検出回路と接続し、入力音声信号を増幅するプリアンプ回路と、を備え、検出回路が、検出した直流電圧値に基づいてゲイン切替制御信号をプリアンプ回路へ与え、プリアンプ回路が、ゲイン切替制御信号を受けてプリアンプ回路の増幅ゲインを切り替える。
【0009】
好ましくは、本発明のスピーカー用増幅器は、検出回路は基準直流電圧値を有し、検出した直流電圧値が基準直流電圧値以上である場合に、基準直流電圧値未満である場合よりも、プリアンプ回路の増幅ゲインを低く設定するゲイン切替制御信号をプリアンプ回路へ与える。
【0010】
さらに好ましくは、本発明のスピーカー用増幅器は、外部電源から直流電源電圧が供給される直流電源入力端子を備え、基準直流電圧値が、直流電源電圧の9/20以上、11/20以下の値に設定される。
【0011】
さらに好ましくは、本発明のスピーカー用増幅器は、外部電源から直流電源電圧が供給される直流電源入力端子を備え、基準直流電圧値が、直流電源電圧の1/2の値に設定される。
【0012】
また、本発明のスピーカーシステムは、上記のいずれかに記載のスピーカー用増幅器と、プリアンプ回路の出力信号を増幅するメインアンプ回路と、メインアンプ回路に接続するスピーカーと、を備える。
【0013】
以下、本発明の作用について説明する。
【0014】
本発明のスピーカー用増幅器は、入力音声信号が入力される入力端子と、入力音声信号に重畳した直流電圧値を検出する検出回路と、入力端子および検出回路と接続し、入力音声信号を増幅するプリアンプ回路と、を備えている。このスピーカー用増幅器を備える本発明のスピーカーシステムは、プリアンプ回路の出力信号を増幅するメインアンプ回路と、スピーカー用増幅器のメインアンプ回路に接続するスピーカーを備えるので、このスピーカーからは音声信号が再生される。
【0015】
入力端子に入力される入力音声信号の信号レベルに対応して、プリアンプ回路は所定の増幅ゲインで入力音声信号を増幅し、メインアンプ回路へ出力する。入力音声信号の信号レベルは、ラインレベル入力時は約10〜200mVrms程度であり、一方で、スピーカーレベル入力時は約1〜20Vrms程度であるので、スピーカーレベル入力時には、ラインレベル入力時よりもプリアンプ回路の増幅ゲインを低く設定する。
【0016】
ここで、入力端子に入力される入力音声信号が、ディスクプレーヤー等の車載用機器からの信号レベルが小さいラインレベル入力である場合には、入力音声信号は直流電圧が重畳されていない。一方で、入力端子に入力される入力音声信号が、車載用のBTL増幅器からスピーカーへ供給されるスピーカーレベル入力である場合には、信号レベルは大きく、入力音声信号には直流電圧が重畳されている。この直流電圧は、車載用のBTL増幅器へ供給されている外部直流電源に基づいているので、スピーカー用増幅器の検出回路は、検出した直流電圧値に基づいてゲイン切替制御信号をプリアンプ回路へ与え、プリアンプ回路が、ゲイン切替制御信号を受けてプリアンプ回路の増幅ゲインを切り替えることができる。
【0017】
つまり、本発明のスピーカー用増幅器は、入力音声信号に重畳する直流電圧の検出により、プリアンプ回路の増幅ゲインを自動的に切り替えることができる。検出回路は基準直流電圧値を有し、検出した直流電圧値が基準直流電圧値以上である場合に、基準直流電圧値未満である場合よりも、プリアンプ回路の増幅ゲインを低く設定するゲイン切替制御信号をプリアンプ回路へ与える。例えば、ゲイン切替制御信号を受けたプリアンプ回路は、入力信号がスピーカーレベル入力であるとしてプリアンプ回路の増幅ゲインを低く設定し、ゲイン切替制御信号を受けなければ入力信号がラインレベル入力であるとしてプリアンプ回路の増幅ゲインを高く設定する。その結果、入力信号がラインレベル入力であろうと、スピーカーレベル入力であろうと、所定の増幅ゲインに設定されるので、適切な信号レベルに増幅されてメインアンプ回路へ出力され、良好な音声再生が可能となる。
【0018】
検出回路の基準直流電圧値は、外部電源から直流電源電圧が供給される直流電源入力端子を備える場合には、直流電源電圧の9/20以上、11/20以下の値に設定され、好ましくは、直流電源電圧の1/2の値に設定される。入力音声信号に重畳する直流電圧は、車載用のBTL増幅器へ供給されている外部電源の約1/2の値であり、本発明のスピーカー増幅回路にも同一の外部電源から電源が供給されているからである。したがって、基準直流電圧値がこの範囲であれば、ほぼ自動的に入力信号の信号レベルに応じたプリアンプ回路の増幅ゲインを設定できる。
【0019】
また、入力信号がラインレベル入力かスピーカーレベル入力かに関わらず、プリアンプ回路の増幅ゲインを自動的に切り替えることができるので、それぞれに対応した別個の入力端子を設ける必要が無くなり、ユーザーの接続作業が容易になる。加えて、プリアンプ回路が統一されるので、使用していないプリアンプ回路に起因する従来のようなノイズや異音が生じることがなく、良好な音声再生が可能になる。別個の入力端子を省略することができるので、端子に異物が接触することを原因とする大きなポップ音が出る等の不具合も生じず、またショートピン等の付属部品を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスピーカー用増幅器は、ユーザーの接続作業が容易で、ノイズや異音が生じることがなく良好な音声再生が可能なスピーカーシステムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のスピーカー用増幅器は、ユーザーの接続作業が容易で、ノイズや異音が生じることがなく良好な音声再生が可能なスピーカーシステムを提供するという目的を、入力音声信号が入力される入力端子と、入力音声信号に重畳した直流電圧値を検出する検出回路と、入力端子および検出回路と接続し、入力音声信号を増幅するプリアンプ回路と、を備え、検出回路が、検出した直流電圧値に基づいてゲイン切替制御信号をプリアンプ回路へ与え、プリアンプ回路が、ゲイン切替制御信号を受けてプリアンプ回路の増幅ゲインを切り替えることにより、実現した。
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用増幅器およびこれを用いたスピーカーシステムについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用増幅器を含むスピーカーシステムについて説明する図であり、本実施例では、スピーカーシステムはアンプ内蔵サブウーファー10である。アンプ内蔵サブウーファー10は、ヘッドユニット3およびスピーカー4とから構成される音響再生システム1に接続されて、音声信号の低域成分(例えば約300Hz以下)を再生する。この音響再生システム1は車載用のオーディオシステムであり、音響再生システム1を構成するヘッドユニット3およびアンプ内蔵サブウーファー10には、車両のバッテリーからなる直流電源5から直流電圧VCCがそれぞれ供給されている。直流電源5の直流電圧VCCは正の直流電圧であり、電源+12Vもしくは+24Vが多用される。なお、本実施例では、音声信号のチャンネルが一つのみ(つまり、モノラル信号)の場合が図示されているが、音声信号がモノラルの場合に限らず、左右信号を含むステレオ信号の場合には、音声信号チャンネル数に応じた再生チャンネルを設けてもよい。また、再生帯域が低音成分の場合には、アンプ内蔵サブウーファー10は、ステレオ信号を混合してモノラル信号としてもよい。
【0024】
ヘッドユニット3は、ディスクプレーヤー31と、BTLアンプ32とを含み、ディスクプレーヤー31の出力信号VLを出力するライン出力信号端子33と、スピーカー4を駆動するBTLアンプ32の出力信号VHを出力するスピーカー出力信号端子34を備える。例えば、ライン出力信号端子33からの出力信号VLのレベルは、約10〜200mVrmsであり、一方で、スピーカー出力信号端子34からの出力信号のレベルは、約1〜20Vrmsである。ここで、ディスクプレーヤー31の出力信号VLは直流成分を含まないが、BTLアンプ32からの出力信号VHにはBTLアンプ32へ供給されている電源電圧VCCの約1/2の値の直流電圧が重畳されている。例えば、直流電源5からの直流電圧VCCが+12Vの場合には、約6Vの直流電圧がBTLアンプ32からの出力信号VHに含まれている。
【0025】
アンプ内蔵サブウーファー10は、プリアンプ11と、メインアンプ12と、スピーカー13とを含み、直流電圧VCCが供給される直流電源入力端子14と、音声信号が入力される入力端子15を備える。プリアンプ11に接続する入力端子15には、ヘッドユニット3のディスクプレーヤー31等のライン出力信号端子33からの出力信号VL、もしくは、スピーカー4を駆動するヘッドユニット3のアンプ部32の出力信号34からの出力信号VHのいずれかが入力される。メインアンプ12には、プリアンプ11からの出力信号が接続され、音声信号の低域信号のみを通過させるローパスフィルター(図示しない)およびスピーカー13への出力電圧を制御するボリューム(図示しない)が含まれる。
【0026】
図2は、アンプ内蔵サブウーファー10の入力端子15と、プリアンプ11と、を説明する図である。プリアンプ11は、後述するプリアンプ回路Pと、検出回路Kを含む。入力端子15は、端子151と端子152との組から構成され、端子151と端子152は、それぞれコンデンサC1およびC2を介して、プリアンプ回路Pに接続する。コンデンサC1およびC2により入力信号の低域ノイズ成分は除去され、音声信号成分のみがプリアンプ回路Pに入力される。プリアンプ回路Pの出力は、プリアンプ11の出力としてメインアンプ12に接続される。なお、図2において、直流電源5からプリアンプ11へ供給される直流電圧VCCを入力する端子は、省略されている。
【0027】
プリアンプ回路Pは、直流電圧VCCが供給されるオペアンプOP1と、FET1ならびにFET2を含む。プリアンプ回路Pは、コンデンサC1に接続する抵抗R11と、コンデンサC2に接続する抵抗R12と、抵抗R11およびオペアンプOP1の入力に接続する抵抗R21と、抵抗R12およびオペアンプOP1の他方の入力に接続する抵抗R22と、抵抗R21およびオペアンプOP1の出力に接続する抵抗R31と、抵抗R22および直流電圧VCCの2分の1の電圧が供給される端子に接続する抵抗R32と、オペアンプOP1の出力に接続する抵抗R41と、から構成される。抵抗R31にはFET1のドレインおよびソースが、抵抗R32にはFET2のドレインおよびソースが、並列に接続され、FET1およびFET2のそれぞれのゲートは、検出回路Kに接続される。つまり、プリアンプ回路Pは、入力信号の信号レベルに応じて所定のゲインで入力信号を増幅するゲイン切替手段を備え、FET1およびFET2のそれぞれのゲートには、検出回路Kからゲイン切替制御信号が与えられる。
【0028】
検出回路Kは、端子151と端子152のいずれかと接続する抵抗R51およびR52ならびにコンデンサC3およびC4から構成されるローパスフィルターと、このローパスフィルターにその入力が接続されるオペアンプOP2と、オペアンプOP2の他方の入力に接続する抵抗R61およびR62と、オペアンプOP2の出力に接続する抵抗R63およびR64と、R64に接続するダイオードD1およびD2と、コンデンサC5と、から構成される。抵抗R61ならびにR63は電源電圧VCCに接続され、コンデンサC4およびC5ならびに抵抗R62は、接地される。ダイオードD1ならびにD2は、プリアンプ回路PのFET1およびFET2のそれぞれのゲートに接続し、ゲイン切替制御信号をFET1およびFET2に与える。なお、抵抗R61およびR62は、抵抗値が等しく設定される。
【0029】
検出回路Kには、端子151と端子152のいずれか(図2の場合は端子152である。)から入力信号が入力される。検出回路Kのローパスフィルターは入力信号の直流電圧成分を出力し、オペアンプOP2に入力する。電源電圧VCC(+12V)は、抵抗値の等しい抵抗R61およびR62により等しく分圧されて、オペアンプOP2の他方の入力に入力される。したがって、オペアンプOP2は、外部からの電源電圧VCCの1/2の値である基準直流電圧(+6V)と、入力信号の直流電圧成分とを比較して、その出力からゲイン切替制御信号を出力する。例えば、検出回路Kは、入力信号が直流電圧を含まない出力信号VLの場合には、増幅ゲインを高く設定するゲイン切替制御信号:GHを出力し、直流電圧+6Vが重畳されている出力信号VHの場合には、増幅ゲインを低く設定するゲイン切替制御信号GLを出力する。ここで、ゲイン切替制御信号は、FET1およびFET2をONにするのに十分な電圧であればよく、例えば、GH:約5VもしくはGL:約0Vの直流電圧値を持つ直流電圧信号である。
【0030】
プリアンプ回路Pは、FET1およびFET2のそれぞれのゲートに、検出回路Kからのゲイン切替制御信号:GHが与えられた場合には、FET1およびFET2が抵抗R31および抵抗R32をバイパスして、増幅ゲインを切り替える。つまり、プリアンプ回路Pのゲイン切替手段は、検出回路Kからのゲイン切替制御信号GHもしくはGLを受けて、ゲイン切替制御信号GHであれば(すなわち、入力信号がライン出力信号端子33からの出力信号VLであれば)増幅率の高いハイゲインで増幅し、ゲイン切替制御信号GLであれば(すなわち、入力信号がアンプ部32の出力信号34からの出力信号VHであれば)増幅率の低いローゲインで増幅するように、プリアンプ回路Pのゲインを切り替える。なお、プリアンプ回路Pの増幅ゲインは、ハイゲイン時は(R21+R31)/R11に比例し、ローゲイン時は(R21)/R11に比例する。
【0031】
プリアンプ回路Pの増幅率は、抵抗R11、R12、R21、R22、R31、R32の値の組み合わせにより設定される。プリアンプ回路Pのハイゲイン時とローゲイン時のゲインの差は、入力される信号レベルの差により設定される。具体的には、例えば、直流電圧を含まない出力信号VLのレベルが約100mVrmsであり、一方で、電源電圧+12Vの約1/2の値の直流電圧+6Vが重畳されている出力信号VHのレベルが約1Vrmsである場合には、プリアンプ回路Pの増幅率は、入力される信号レベルの差に基づいて、ローゲインの場合(つまり出力信号VHのとき)よりもハイゲインの場合(つまり出力信号VLのとき)の方が約20dB高く設定される。また、例えば、R11=R12=33kΩ、R21=R22=5.1kΩ、R31=R32=100kΩのとき、ハイゲイン時とローゲイン時の増幅ゲインの差は、約26dBに設定される。
【0032】
検出回路Kにおいて、基準直流電圧値が外部からの電源電圧VCCの1/2の値である場合には、検出回路Kのローパスフィルターから出力された入力信号の直流電圧の値が基準直流電圧値以上になれば、入力信号は直流電圧が重畳された信号VHであることを検出し、また、検出回路Kのローパスフィルターから出力された入力信号の直流電圧の値が基準直流電圧値未満になれば、入力信号は直流電圧が重畳されていない信号VLであることを検出する。電源電圧VCCの1/2の値とする基準直流電圧値は、電源電圧VCCが変動する場合に備えて幅を持たせ、直流電源電圧の9/20以上、11/20以下の値に設定してもよい。例えば、直流電源電圧が+12Vの場合、基準直流電圧値は+5.4V以上、+6.6V以下に設定してもよい。
【0033】
つまり、基準直流電圧値の±10%の範囲の直流電圧値以上の直流電圧値を入力信号から検出した場合には、入力信号がアンプ部32の出力信号34からの出力信号VHと判断し、基準電圧の±10%の範囲の直流電圧値未満の直流電圧値を入力信号から検出した場合には、入力信号がライン出力信号端子33からの出力信号VLと判断するように設定する。具体的には、検出回路Kの抵抗R61およびR62の値を設定することにより、基準直流電圧値を直流電源電圧の9/20以上、11/20以下の値に設定する。例えば、基準直流電圧値を直流電源電圧の9/20とする場合にはR61とR62との抵抗値の比を11:9に、基準直流電圧値を直流電源電圧の11/20とする場合にはR61とR62との抵抗値の比を9:11にすればよい。
【0034】
例えば、アンプ内蔵サブウーファー10の入力端子15への接続がユーザーにより変更されて、プリアンプ11の検出回路Kがゲイン切替制御信号を出力した場合には、プリアンプ回路Pの増幅ゲインは大きく変化するので、抵抗R64およびコンデンサC5から構成されるローパスフィルターを、増幅ゲインが徐々に変化するように、又は増幅ゲインをしばらく保持するようにしてもよい。
【0035】
実施例のアンプ内蔵サブウーファー10の場合には、入力端子15に、ヘッドユニット3のディスクプレーヤー31等のライン出力信号端子33からの出力信号VLが入力されても、スピーカー4を駆動するヘッドユニット3のアンプ部32の出力信号34からの出力信号VHが入力されても、パワーアンプ12およびスピーカー13へ供給される出力信号レベルは変わらない。したがって、アンプ内蔵サブウーファー10から再生される音声信号の信号レベルは、音響再生システム1との接続の違いによっても変わることがなく、ユーザーの接続作業が容易になる。また、それぞれに対応した別個の入力端子を設ける必要が無くなり、従来のようなノイズや異音が生じることがなく、ショートピン等の付属部品を設ける必要がない。
【0036】
本発明のアンプ内蔵サブウーファーに含まれるスピーカー用増幅器のプリアンプ11は、入力音声信号に重畳した直流電圧値を検出する検出回路Kと、検出回路Kから出力されたゲイン切替制御信号に基づいて増幅ゲインを切り替えて入力音声信号を増幅するプリアンプ回路Pを含んでいればよく、検出回路Kおよびプリアンプ回路Pは上記実施例に限定されない。ゲインの切替は、FETに限らず他のスイッチ素子を使用してもよい。本発明のスピーカー用増幅器の検出回路Kは、検出した直流電圧値が基準直流電圧値以上である場合に、基準直流電圧値未満である場合よりも、プリアンプ回路Pの増幅ゲインを低く設定するゲイン切替制御信号をプリアンプ回路Pへ与えるようにすればよい。
【0037】
また、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用増幅器を含むスピーカーシステムは、アンプ内蔵サブウーファーに限られない。外部直流電源が供給される車載用のアンプ内蔵スピーカーであれば、音声信号の低域成分に限らず、ステレオ再生もしくはマルチチャンネルサラウンド再生に用いられる全帯域を再生するスピーカーシステムであってもよい。また、本発明によるスピーカー用増幅器は、スピーカーを含まないアンプ部分のみであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のスピーカー用増幅器は、ACアダプタ等の外部直流電源が接続されて使用される携帯用電子機器にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用増幅器を含むスピーカーシステムについて説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用増幅器を含むスピーカーシステムの入力端子と、プリアンプとを説明する図である。(実施例1)
【図3】従来のスピーカー用増幅器を含むスピーカーシステムについて説明する図である。
【図4】従来のスピーカー用増幅器を含むスピーカーシステムの入力端子と、プリアンプとを説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
1、2 音響再生システム
3 ヘッドユニット
31 ディスクプレーヤー
32 BTLアンプ
33、34 信号出力端子
4 スピーカー
5 バッテリー
10、20 アンプ内蔵サブウーファー
11、21 プリアンプ
12、22 メインアンプ
13、23 スピーカー
14、24 直流電源入力端子
15、16、25 入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力音声信号が入力される入力端子と、
該入力音声信号に重畳した直流電圧値を検出する検出回路と、
該入力端子および該検出回路と接続し、該入力音声信号を増幅するプリアンプ回路と、を備え、
該検出回路が、検出した直流電圧値に基づいてゲイン切替制御信号を該プリアンプ回路へ与え、
該プリアンプ回路が、該ゲイン切替制御信号を受けて該プリアンプ回路の増幅ゲインを切り替える、
スピーカー用増幅器。
【請求項2】
前記検出回路は基準直流電圧値を有し、検出した前記直流電圧値が該基準直流電圧値以上である場合に、該基準直流電圧値未満である場合よりも、前記プリアンプ回路の増幅ゲインを低く設定するゲイン切替制御信号を該プリアンプ回路へ与える、
請求項1に記載のスピーカー用増幅器。
【請求項3】
外部電源から直流電源電圧が供給される直流電源入力端子を備え、
前記基準直流電圧値が、該直流電源電圧の9/20以上、11/20以下の値に設定される、
請求項2に記載のスピーカー用増幅器。
【請求項4】
外部電源から直流電源電圧が供給される直流電源入力端子を備え、
前記基準直流電圧値が、該直流電源電圧の1/2の値に設定される、
請求項3に記載のスピーカー用増幅器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のスピーカー用増幅器と、
前記プリアンプ部の出力信号を増幅するメインアンプ回路と、該メインアンプ回路に接続するスピーカーと、を備える、
スピーカーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−340121(P2006−340121A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163459(P2005−163459)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】