説明

スプリアス測定装置及びそれを利用した受信装置,通信システム

【課題】通信周波数帯域内の複数のスプリアス強度をそれぞれ測定する。
【解決手段】通信周波数帯域を区分した部分周波数領域内のスプリアスを測定するスプリアス測定装置において,部分周波数領域の帯域幅の2倍の周波数を有するサンプルクロックに同期して擬似雑音信号を生成する擬似雑音信号発生器と,擬似雑音信号の周波数を部分周波数領域の周波数に周波数変換するミキサと,当該周波数変換された擬似雑音信号を離散フーリエ変換(以下DFT)して部分相関同期パターンを発生するDFT部とを有する部分相関同期パターン発生器と,部分相関同期パターンを逆離散フーリエ変換(以下IDFT)して参照時間領域信号を生成するIDFT部と,送信側で周波数変換された擬似雑音信号をDFTして得られた送信同期パターンをIDFTして送信された受信時間領域信号と,参照時間領域信号との乗算値を積分して相関値を生成する相関値生成部と,相関値からスプリアスを抽出するスプリアス判定部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,スプリアス測定装置及びそれを利用した受信装置,通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や携帯情報端末などの通信端末と基地局とを有する通信システムにおいて,周期的な矩形信号であるクロック信号に含まれる高調波成分(以下スプリアス)が,受信信号と干渉して,受信信号が劣化する。また,直交周波数分割多重(OFDM)方式の場合,受信信号がスプリアスと干渉した結果,タイミング同期がとれなくなり,正常に離散フーリエ変換(DFT)できなくなる。
【0003】
クロック信号の高調波成分であるスプリアスは,クロック周波数の逓倍の位置に発生し,クロック信号のデューティ比に依存して正弦波(sin)周期で変化する。したがって,デューティ比を適切に設定することで通信周波数帯域内のスプリアスを抑制することが提案されている。たとえば,特許文献1,2などである。
【0004】
また,OFDM方式における改良例が特許文献3,4などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−49576号公報
【特許文献2】特開2009−44271号公報
【特許文献3】特開2006−279254号公報
【特許文献4】特開2007−324704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,スプリアスはsin周期で変化するので,クロック信号のデューティ比を調整しても,周波数が隣接するスプリアスを同時に低減することは原理的にできない。一方で,OFDM方式などの複数のサブキャリアを多重化する通信方式の場合,その広い通信周波数帯域内には複数のスプリアスが存在している。そのため,単純にクロック信号のデューティ比を調整するだけでは,通信周波数帯域内のスプリアスのうち特に最大電力のスプリアスを低減することはできない。
【0007】
そこで,本発明の目的は,通信周波数帯域内のスプリアスを抑制するための,スプリアス測定装置及びそれを利用した受信装置及び通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
スプリアス測定装置の第1の側面は,通信周波数帯域を区分した部分周波数領域内のスプリアスを測定するスプリアス測定装置において,
前記部分周波数領域の帯域幅の2倍の周波数を有するサンプルクロックに同期して擬似雑音信号を生成する擬似雑音信号発生器と,前記擬似雑音信号の周波数を前記部分周波数領域の周波数に周波数変換するミキサと,当該周波数変換された擬似雑音信号を離散フーリエ変換(以下DFT)して部分相関同期パターンを発生するDFT部とを有する部分相関同期パターン発生器と,
前記部分相関同期パターンを逆離散フーリエ変換(以下IDFT)して参照時間領域信号を生成するIDFT部と,
送信側で前記周波数変換された擬似雑音信号をDFTして得られた送信同期パターンをIDFTして送信された受信時間領域信号と,前記参照時間領域信号との乗算値を積分して相関値を生成する相関値生成部と,
前記相関値からスプリアスを抽出するスプリアス判定部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
第1の側面によれば,通信周波数領域内の各スプリアス強度を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】クロック信号の高調波成分のスペクトルを示す図である。
【図2】本実施の形態における通信システムの送信装置と受信装置を示す図である。
【図3】本実施の形態の受信装置での受信時間領域信号S(t)と参照時間領域信号Rm(t)とを説明する図である。
【図4】本実施の形態における受信装置内の部分相関測定部22の構成図である。
【図5】部分相関同期パターン発生器220の構成図である。
【図6】部分相関同期パターン発生器220の動作を説明する図である。
【図7】部分相関同期パターン発生器220の動作を説明する図である。
【図8】PN信号の電力スペクトルの例を示す図である。
【図9】送信装置内の部分相関同期パターン発生器16の構成図である。
【図10】受信装置の部分相関測定部22内の相関値検出部224の構成図である。
【図11】図10の各積分器50−1〜50−Mの構成図である。
【図12】数7の相関電圧C(τ)の一例を示す図である。
【図13】部分相関測定部22の詳細構成図である。
【図14】スプリアス抑制制御部228の動作を示すフローチャート図である。
【図15】クロックのデューティ比Dとスプリアス強度との関係例を示す図である。
【図16】第3の実施の形態における部分相関測定部22の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態におけるスプリアス測定装置,それを使用した受信装置及び通信システムは,通信方式が直交周波数分割多重(OFDM)を例にして説明する。しかし,後述するとおり,本実施の形態はOFDM方式に限定されるものではない。
【0012】
図1は,クロック信号の高調波成分(スプリアス)と通信周波数帯域との関係を示す図である。通信システムの受信装置は,周期的矩形信号であるクロック信号を使用して受信処理を行う。例えば,受信装置は,受信した高周波信号をベースバンドにダウンコンバートするダウンミキサを有し,このダウンミキサは,受信した高周波信号にローカルクロックを乗算する。また,受信装置内のデジタル処理回路も,内部のシステムクロックに同期してデジタル処理を行う。
【0013】
受信装置のうち,特に移動体通信端末は,機能の高度化と短小軽量化により,高密度に電子部品が実装され,端末自身の信号線から発生するスプリアスとの干渉により受信信号の劣化が無視できない。例えば,スプリアスとの干渉により受信信号のタイミング同期に時間がかかったり,受信信号の誤検出が発生したりすることで,スループットの低下を招いている。
【0014】
そして,端末自身が発生するスプリアスの一例として,クロック信号の高調波成分がある。クロック周波数fc,デューティ比Dの場合,第n次高調波成分(スプリアス)は,以下の数1の式になる。すなわち,クロック信号をフーリエ変換することで以下の高調波成分に分解される。
【0015】
【数1】

【0016】
そして,デューティ比DがD=1/2の場合は,第n次高調波成分は,以下の数2の式になる。
【0017】
【数2】

【0018】
図1は,クロック信号の高調波成分のスペクトルを示す図である。横軸が周波数でクロック周波数fcのn倍であるnfcの次数nが示され,縦軸が信号の強度である。図1には,デューティ比Dが1/2,1/3,1/4の場合それぞれが示されている。前述の数1,2の式に示されるとおり,高周波成分(スプリアス)はクロック周波数fcの逓倍の位置に現れ,その強度はデューティ比Dと次数nに依存して変化する。たとえば,図1(1)のデューティ比D=1/2の場合は,n=2k(kは正整数)の場合にスプリアス強度がゼロ,n=2k−1の場合にピーク強度をとる。そして,ピーク強度はnfcに反比例して減衰する。
【0019】
図1(2)のデューティ比D=1/3の場合は,nが3の倍数の場合にスプリアス強度がゼロになり,図1(3)のデューティ比D=1/4の場合は,nが4の倍数の場合にスプリアス強度がゼロになる。
【0020】
例えば,通信周波数帯域が図1中に示した周波数39fcの狭帯域の場合は,デューティ比をD=1/3に設定すれば,狭帯域内に現れる第39次高調波が強度ゼロになる。したがって,通信周波数帯域がこのような狭帯域の場合は,そこに現れる高調波の強度がゼロになるデューティ比を選択することでクロック信号によるスプリアスの影響を抑制することができる。このように,通信端末のクロック周波数を変更することなくデューティ比を選択することで,スプリアス強度をゼロにすることができる。
【0021】
しかし,前述したとおり,OFDM通信方式などの複数のサブキャリアを使用する通信方式では,通信周波数帯域が広く,図1に示された広帯域にあるとおり,その帯域内に複数のスプリアスが現れてしまう。したがって,それら複数のスプリアス強度をそれぞれ抽出して比較することは容易ではない。また,位相振幅変調が用いられる通信方式では,変調時に振幅が変調されるので,受信信号の強度にその変調成分が含まれスプリアス強度を測定することは困難である。
【0022】
さらに,スプリアス強度を実測することなく,上記の数1,2の式に従ってスプリアス強度を求めて,最適なデューティ比に設定する方法では,次の問題がある。すなわち,隣接するスプリアスを共にゼロにすることはできないので,上記の方法は通信周波数帯域内に複数のスプリアスが存在する場合には適用できない。さらに,通信端末が移動体の場合は,ドップラーシフトの影響により受信周波数とスプリアス周波数の干渉位置がずれてしまい,数1,2の式による計算では最適なデューティ比を見つけることはできない。つまり,上記の方法は固定端末にしか適用できない。
【0023】
[第1の実施の形態]
図2は,本実施の形態における通信システムの送信装置と受信装置を示す図である。送信装置TXは,送信データを符号化する符号化処理部10と,符号化されたデータをサブキャリアで変調してIDFT処理するIDFT処理部12と,IDFTされた時間領域信号SBS(t)を高周波にアップコンバートし増幅してアンテナから送出するRF送信処理部14とを有する。さらに,送信装置TXは,プリアンブル期間において符号化データに代えて,部分相関同期パターンを生成してIDFT処理部12に出力する部分相関同期パターン発生器16を有する。この部分相関同期パターン発生器16については,後述する。
【0024】
一方,図2の受信装置RXは,受信した高周波信号を増幅しベースバンドにダウンコンバートするRF受信処理部20と,ベースバンドの受信時間領域信号S(t)と,図示しない部分相関同期パターンから生成した参照時間領域信号との相関値を測定し,最適なデューティ比を検出して設定する部分相関測定部22とを有する。さらに,受信装置RXは,ベースバンドの受信時間領域信号S(t)に基づいて周波数同期とタイミング同期をとる同期部24と,受信時間領域信号S(t)をDFT処理して複数のサブキャリアからデータを復調するDFT処理部26と,復調されたデータを復号化する復号処理部28とを有する。
【0025】
図3は,本実施の形態の受信装置での受信時間領域信号S(t)と参照時間領域信号Rm(t)とを説明する図である。図3は,受信時間領域信号S(t)と参照時間領域信号Rm(t)の周波数スペクトルを示す。横軸が周波数fに対応し,OFDMのベースバンドの時間領域信号の周波数帯域WBがM個の部分周波数領域W1〜WMに分割されている。この部分周波数領域W1〜WM内は,各領域内に多くとも1つのスプリアスSP〜SPMが含まれ,さらに複数のサブキャリア(図示せず)が含まれるように分割される。すなわち,各部分周波数領域の帯域幅fwは,サブキャリアの周波数間隔fsc,スプリアスの周波数間隔fspとすると,次のとおりである。
fsc<fw<fsp
そして,第m部分周波数領域Wmの帯域幅は,次のとおりである。
【0026】
【数3】

【0027】
つまり,第1〜M-1部分周波数領域W1〜WM-1の帯域幅は,それぞれfwである。例えば,クロック信号によるスプリアス強度を検出して抑制する例の場合は,帯域幅fwはクロック信号の周波数fcと等しくする。そのように帯域幅fwを設定することで,図1に示したクロック信号の高調波が最大で1つ各部分周波数領域内に存在することになる。そして,第M部分周波数領域WMの帯域幅は,通信周波数帯域WBから第1〜M-1部分周波数領域の帯域の合計(M-1)fwを減じた幅になる。
【0028】
本実施の形態によれば,送信装置では,プリアンブル期間において,部分相関同期パターン発生器16が,各部分周波数領域毎に異なる同期パターン(部分相関同期パターン)を生成し,その同期パターンをサブキャリアで変調し,IDFT処理部12がIDFT処理によりそのサブキャリア信号を多重化して時間領域信号SBS(t)とし,それをRF処理後,送信する。この送信装置側の部分相関同期パターン発生器16の構成については後述する。
【0029】
一方,送信された時間領域信号は,受信装置RXで受信され,RF受信処理部20でRF処理されてベースバンドの時間領域信号S(t)になる。この時間領域信号S(t)には,図3に示されるとおり,例えばクロック信号の高調波成分であるスプリアスSP1〜SPMが含まれる。前述したとおり,各部分周波数領域W1〜WM内には,1つ以下のスプリアスSP1〜SPMが含まれている。
【0030】
そして,受信装置RXでは,部分相関測定部22が,第m部分周波数領域Wm内のスプリアスの強度を検出するために,図3に示された参照用時間領域信号Rm(t)を生成する。この部分周波数領域Wmのための参照用時間領域信号Rm(t)は,部分周波数領域の帯域幅fwだけ高い電力を有する擬似雑音信号(PN信号: Pseudo Noise信号)を周波数m*fwにアップコンバートし,そのPN信号をDFTして部分相関同期パターンを生成し,その部分相関同期パターンをIDFTした時間領域信号である。そして,部分相関測定部22が,この受信時間領域信号S(t)と参照時間領域信号Rm(t)との相関値を測定し,第m部分周波数領域Wm内のスプリアスSPmの強度を検出する。
【0031】
後述する部分相関測定部22の構成によりより明らかになるが,本実施の形態では,サンプル周波数2fwで擬似雑音信号(PN信号)を生成すると,PN信号は,その中心周波数を中心とする帯域幅fwの周波数だけが高い電力になる。このPN信号の周波数特性を利用して,送信装置TXと受信装置RXとで,同じ部分周波数領域Wmには同じPN信号から生成した同期パターン(周波数領域信号)を割当てて,その同期パターンをIDFTして時間領域信号を生成し,その各時間領域信号に対応する受信時間領域信号S(t)と参照時間領域信号Rm(t)との相関値を求めることで,その部分周波数領域Wmに含まれているスプリアスの強度を測定する。
【0032】
この方法を利用することで,各部分周波数領域W1〜WM内にそれぞれ高々1つしか含まれていないスプリアスの強度を抽出することができる。そして,クロック信号のデューティ比Dを変更しながら,各デューティ比での最大スプリアス強度を測定し,その最大スプリアス強度が最小になるデューティ比を選択する。これにより,スプリアスを抑制したクロック信号のデューティ比で端末装置を動作させることができる。
【0033】
図4は,本実施の形態における受信装置内の部分相関測定部22の構成図である。部分相関測定部22は,複数の部分周波数領域内それぞれのスプリアスを測定するスプリアス測定部220,222,224,226と,スプリアス測定部が測定したスプリアス強度に基づいて,最適なクロック信号のデューティ比を検出して設定するスプリアス抑制制御部228とを有する。
【0034】
スプリアス測定部は,部分周波数領域Wmを特定する制御信号mに応じて,サンプル周波数2fwで生成したPN信号から部分周波数領域Wmの部分相関同期パターン{dn}mを生成する部分相関同期パターン発生器220と,部分同期パターン{dn}mをIDFTして参照時間領域信号Rm(t)を生成するIDFT部222と,受信時間領域信号S(t)と参照時間領域信号Rm(t)との相関値(相関電圧)を検出する相関値生成部224と,相関値(相関電圧)からスプリアスの強度を判定するスプリアス判定部226とを有する。スプリアス判定部226が検出したスプリアスSPmの強度は,スプリアス抑制制御部228に与えられる。
【0035】
スプリアス抑制制御部228は,後で詳述するとおり,クロック信号の複数のデューティ比毎に,スプリアス測定部が測定した複数の部分周波数領域内それぞれのスプリアスの最大値である最大スプリアスを検出し,複数のデューティ比毎に検出した最大スプリアスのうち,最小の最大スプリアスに対応するデューティ比を検出して,当該検出したデューティ比をクロック発生回路に設定する。
【0036】
図5は,部分相関同期パターン発生器220の構成図である。図6,図7は,部分相関同期パターン発生器220の動作を説明する図である。部分相関同期パターン発生器220は,部分相関を取得するための同期パターンを発生する。部分相関同期パターン発生器220は,部分周波数領域W1〜WMの帯域幅fw(=fc)の周波数を有する基準クロックから,2倍に逓倍された周波数2fw(=2fc)のサンプルクロック30−1を生成するPLLシンセサイザ30を有する。PLLシンセサイザ30は,さらに,制御信号mに応じて基準クロックをm倍に逓倍した周波数mfw(=mfc)のクロック30−2と,M倍に逓倍した周波数Mfw(=Mfc)のクロック30−3も生成する。
【0037】
そして,部分相関同期パターン発生器220は,2fw(=2fc)の周波数を有するサンプルクロック30−1に同期して擬似雑音信号32−1を生成する擬似雑音信号発生器32と,擬似雑音信号32−1の周波数を被測定スプリアスを含む部分周波数領域WmにコンバートするミキサMIX1と,当該コンバートされた擬似雑音信号32−2を周波数Mfw(=Mfc)のクロック30−3で直並列変換し、さらに直並列変換された当該信号に対し、周波数Mfw(=Mfc)のクロック30−3を使用通信システムのDFTポイント数で分周したクロックで離散フーリエ変換(以下DFT)して部分相関同期パターン{dn}mを発生するDFT部34とを有する。擬似雑音信号発生器32は,たとえば,ΔΣ変調器で構成される。
【0038】
図7に示されるとおり,擬似雑音信号発生器32が生成する擬似雑音信号(PN信号)32−1は,周波数2fw(=2fc)のサンプルクロック30−1の立ち上がりエッジ毎に+1または−1に変化するパルス信号である。したがって,PN信号32−1は,1/2fwの周期で+1,−1に変化する。そのため,図6に示されるとおり,PN信号32−1のスペクトラムは,周波数帯域fw(=fc)で高い電力を有し,それ以外の周波数帯域では電力が低い。
【0039】
そして,図6に示されるように,擬似雑音信号発生器32により生成されたPN信号32−1は,相関値をとるべき部分周波数領域Wmに対応する周波数mfw(=mfc)にアップコンバートされて,対応する周波数を中心とするPN信号32−2に変換される。
【0040】
DFT部34は,部分周波数領域Wmに対応する周波数にコンバートされたPN信号32−1を高速クロックMfw(=Mfc)によりDFT処理し,同期パターン{dn}mを生成する。つまり,時間領域信号であるPN信号32−1が,周波数領域信号である同期パターン{dn}mに変換される。図7に示されるとおり,部分周波数領域Wmに対応するPN信号PNmは,一定の周期を有する擬似雑音信号であり,アップコンバートされDFT処理されることで,複数のサブチャネルの周波数毎に+1,0,−1を有する同期パターン{dn}mに変換される。
【0041】
本実施の形態では,送信装置と受信装置とが,各部分周波数領域Wmで同じ同期パターン{dn}mを使用することで,各部分周波数領域での相関値を別々に生成することができる。したがって,図7に示されるように,受信装置側の部分相関同期パターン発生器220は,擬似雑音(PN)信号発生器32が連続して発生するPN信号を,一定周期(PN1〜PNm,PNm+1〜PNM)毎に順番にアップコンバートとDFT処理を行い,複数の部分周波数領域W1〜Wm,Wm+1〜WMに対応する同期パターン{dn}1〜{dn}m, {dn}m+1〜{dn}Mを生成する。そして,必要に応じて,注目する部分周波数領域Wmに対応する同期パターン{dn}mを出力する。
【0042】
図4に示されるとおり,上記の同期パターン{dn}mは,IDFT部222により変調されIDFTされて,OFDM帯域内の複数のサブキャリアを多重化した参照用の時間領域信号Rm(t)が生成される。同期パターンが送信されるプリアンブル期間の変調方式を二位相偏移変調(BPSK: Binary Phase Shift Keying)とすると,同期パターン{dn}mのcos成分が多重化されるので,第m部分周波数領域の周波数のみで構成される参照用時間領域信号Rm(t)は,次の数4の式の通りになる。
【0043】
【数4】

【0044】
ここで,第m部分周波数領域に含まれるサブキャリア数をNとし,第m部分周波数領域内のサブキャリアの周波数は((m-1)N+n)fsc(n=1〜N)となっている。
【0045】
図8は,PN信号の電力スペクトルの例を示す図である。これは,サンプルレート1MHzでPN信号発生器により発生したPN信号を3GHz帯にアップコンバートしたときの電力スペクトルである。図7に示したように,PN信号のシンボル長がクロックの周期fc(=fw)であるので,PN信号のサンプルレート1MHz(2fw(=2fc))に対し,半分の500KHz(fw(=fc))の急峻な帯域幅をもつ電力スペクトルになっている。
【0046】
図9は,送信装置内の部分相関同期パターン発生器16の構成図である。送信装置内の部分相関同期パターン発生器16は,図7の受信装置内の部分相関測定部22に設けられた部分相関同期パターン発生器220と同様の構成を有する。すなわち,送信装置内の部分相関同期パターン発生器16は,部分周波数領域の帯域幅fw(=fc)の周波数を有するクロックから周波数2fw(=2fc)のサンプルクロック30−1と周波数mfw(=mfc)のクロック30−2と周波数Mfw(Mfc)のクロック30−3とを生成するPLLシンセサイザ30を有する。さらに,送信装置内の部分相関同期パターン発生器16は,サンプルクロック30−1に基づいてPN信号を発生するPN信号発生器32と,そのPN信号を周波数mfw(=mfc)アップコンバートするミキサMIX2と,そのアップコンバートされた時間領域の信号を周波数Mfw(=Mfc)のクロック30−3で直並列変換し、さらに直並列変換された当該信号に対し、周波数Mfw(=Mfc)のクロック30−3を使用通信システムのDFTポイント数で分周したクロックでDFTして部分周波数領域Wm内の同期パターン{dn}mを生成するDFT部34とを有する。この同期パターン{dn}mは図7に示したとおり周波数領域信号である。
【0047】
さらに,送信装置内の部分相関同期パターン発生器16は,通信帯域内の全ての部分周波数領域の同期パターン{dn}1〜{dn}Mを蓄積してIDFT部12に出力する送信パターン生成器36を有する。この同期パターン{dn}1〜{dn}Mは,IDFT部12でIDFTされて多重化された時間領域信号SBS(t)にされ,RF処理後に通信媒体に送出される。
【0048】
この送出される時間領域信号SBS(t)は,数4の参照時間領域信号Rm(t)をm=1〜Mで多重化したものと同等であるので,以下の数5のとおりである。
【0049】
【数5】

【0050】
この場合も,同期パターンが送信されるプリアンブル期間の変調方式はBPSKである。
【0051】
上記のように,送信装置側では,全ての部分周波数領域の同期パターンが,IDFT部12でIDFTされて多重化された時間領域信号SBS(t)にされ,RF処理後に通信媒体に送出される。そして,図4,5に示されるとおり,受信装置では,その受信した時間領域信号S(t)と,各部分周波数領域の同期パターン{dn}mをIDFTした参照時間領域信号Rm(t)との相関値を求め,各部分周波数領域の信号強度を測定する。図7,8に示したように,PN信号は部分周波数領域の帯域fw(=fc)で大きな電力を有しそれ以外の帯域は電力が小さい。したがって,このPN信号から生成した参照時間領域信号Rm(t)を利用することで,受信する時間領域信号S(t)から各部分周波数領域Wmの帯域の信号強度を抽出することができる。
【0052】
図10は,受信装置の部分相関測定部22内の相関値検出部224の構成図である。図4に示されるとおり,受信装置は, RF受信処理部20で受信信号をベースバンドの時間領域信号S(t)に変換する。この受信時間領域信号S(t)は,数5に示した送信時間領域信号SBS(t)が伝送路を伝搬してきた信号である。さらに,受信時間領域信号S(t)には,受信装置のクロック信号などによるスプリアス成分が含まれている。そこで,伝搬路のチャネル行列を^H(t)とし,スプリアスをDs(t)とすると,時刻t=0で送信された信号SBS(0)を時刻tで受信した受信時間領域信号S(t)は,次の数6のとおりである。
【0053】
【数6】

【0054】
図10に示した相関値生成部224は,第1〜Mの部分周波数領域の相関値を並列に検出する。そのために,メモリ40が,IDFT部222が生成する参照時間領域信号Rm(t)をm=1〜Mについて予め格納しておく。そして,相関値生成部224は,第1〜Mの部分周波数領域の相関値をそれぞれ検出するM個の積分器50−1〜5−Mを有する。各積分器50−1〜50−Mは,受信時間領域信号S(t)と,各部分周波数領域に対応する参照時間領域信号R1(t)〜RM(t)とを入力し,それぞれの相関値(相関電圧)C1(t)〜CM(t)を生成する。
【0055】
図11は,図10の各積分器50−1〜50−Mの構成図である。積分器50は,受信時間領域信号S(t)をそれぞれサンプル時間dtずつ遅延させるフリップフロップFFと,それぞれ遅延したサンプル点での受信時間領域信号S(4dt−τ)〜S(dt−τ),S(−τ)と,参照時間領域信号R(4dt)〜R(0)とを乗算する乗算器MIXと,乗算値を累積する加算器52とを有する。図11の例では,サンプル点は4点であるが,この数に限定されず任意の適切なサンプル点にされるのが望ましい。
【0056】
ここで,τは走査位相である。すなわち,各積分器50−1〜50−Mは,受信した受信信号領域信号S(t)をサンプル点で走査しながら,走査対象の受信信号領域S(t)と各部分周波数領域に対応した参照時間領域信号R(t)との相関値Cを生成する。この相関値は,具体的には相関電圧である。
【0057】
部分周波数領域中においてサブキャリアが複数あることに対し、スプリアス本数が1本以下であることから、受信時間領域信号S(t)と参照時間領域信号R(t)との相関電圧C(τ)は,急峻性のあるピークを持った次の数7,数8の式に縮約できる。
【0058】
【数7】

【0059】
【数8】

【0060】
ここで,Iは第m部分周波数領域の部分相関電圧の最大値,tpは最大値のタイミング位置,Aは伝搬路特性を考慮した同期パターンだけの理想的な部分相関電圧,Dは受信装置から発生したスプリアスによる相関電圧の変化分,Tsは正規化定数である。また,数7の積分はt=dt〜4dtで行われる。
【0061】
図10に示した相関値生成部224は,全ての部分周波数領域の相関値(相関電圧)C(τ)を生成する。ただし,相関値生成部224は,一つの積分器50を有していても良い。その場合は,単一の積分器50が時分割で第1〜第Mの部分周波数領域の相関値C(τ)(m=1〜M)を順番に生成する。したがって,部分相関同期パターン発生部220は,順番に各部分周波数領域の同期パターン{dn}mを生成し,それをIDFTした参照時間領域信号Rm(t)を相関値生成部224内の積分器に供給し,順番に相関電圧C(τ)が生成される。
【0062】
図12は,数7の相関電圧C(τ)の一例を示す図である。横軸は走査位相τ,縦軸は相関電圧C(τ)である。走査位相がtpの時に相関電圧C(tp)は最大値Iになる。したがって,数7の関数δは走査位相τがτ=tpの時に最大値Imをとる。
【0063】
図13は,部分相関測定部22の詳細構成図である。図4の部分相関測定部22と比較すると,図13では,特にスプリアス抑制制御部228の構成が示されている。以下,上記の相関値生成部224が生成した各部分周波数領域の相関値C(t)(m=1〜M)から,スプリアスを抽出するスプリアス判定部226の動作と,スプリアスを抑制できるデューティ比を検出するスプリアス抑制制御部228の動作について説明する。
【0064】
スプリアス判定部226は,各部分周波数領域の相関値Iから,理想的な部分相関電圧Aの推定値A’を除去したスプリアスによる相関値の変動分D’=I−A’を求める。この推定値A’は,たとえば,携帯電話通信の場合であれば,一般に雑音より受信信号が大きいので自動利得制御(AGC)により検出した受信信号強度(RSSI:Reserved Signal Strength Indication)の平均値である。平均化することで受信信号強度からスプリアスの雑音成分が抑制または実質的に除去されるからである。このように相関値Iから推定値A’を除去することで,ドップラーシフトや送受信間の周波数オフセットに起因して相関値Iが変動して,どの部分周波数領域のスプリアスが最大値になるかを正しく検出できなくすることができる。
【0065】
このように,スプリアス判定部226は,各部分周波数領域において取得した相関電圧Cに対して,推定値A’を除算した値の絶対値をスプリアス強度として保持し,全ての部分周波数領域のスプリアス強度のうち最大値を最大干渉スプリアスJとしてスプリアス抑制制御部228に出力する。この最大干渉スプリアスJは,次の数9の式に示されるとおりである。
【0066】
【数9】

【0067】
次に,スプリアスを抑制するクロックのデューティ比を検出するスプリアス抑制制御部228の動作について説明する。スプリアス抑制制御部228は,デューティ比制御部60と,デューティ比を可変設定できるクロック発生器62とを有し,デューティ比Dを0〜1の範囲で変更しながら,クロック発生器62にそのデューティ比Dで周波数fcのクロック信号CLKを生成させる。このクロック信号CLKは,受信装置内のクロックとして使用されると共に,部分相関同期パターン発生器220内のPLLシンセサイザに基準クロックとして供給される。PLLシンセサイザは,基準クロックの立ち上がりエッジに基づいて動作するので,デューティ比Dが変更されても支障はない。
【0068】
そして,各設定したデューティ比のクロック信号CLKによるスプリアスの最大干渉スプリアスJを記憶し,最大干渉スプリアスJが最も小さくなるデューティ比Dを検出する。そして,このデューティ比Dをクロック発生器62に設定することで,通信周波数帯域内の最大スプリアスをより小さく抑制することができる。
【0069】
図14は,スプリアス抑制制御部228の動作を示すフローチャート図である。このスプリアス抑制制御部228内のデューティ比制御部60は,ソフトウエアにより図14の制御を行う。まず,受信装置の電源起動時などに最適なデューティ比を走査する走査プログラムが図示しないメモリから読み込まれる(S10)。そして,受信を開始すると(S12),デューティ比制御部60は,クロック発生器62に対して,デューティ比DをD=0.5−nΔに設定する。nの初期値がn=0であるので,最初のデューティ比はD=0.5となる(S14)。これにより,クロック発生器62はデューティ比D=0.5で周波数fc=fwのクロックCLKを生成する(S16)。
【0070】
次に,このクロックCLKに基づいて部分相関同期パターン発生器220が同期パターン{dn}mを生成し,相関値生成部224が同期パターン{dn}mをIDFTした参照時間領域信号Rm(t)と,受信時間領域信号S(t)との相関値を生成し,スプリアス判定部226が各部分周波数領域毎のスプリアスの最大値Jを判定する(S18)。そして,デューティ比DをD=0.5−Δ(n=1)にして,上記の工程S14,S16,S18を繰り返す。この繰り返しは,デューティ比Dが最小値Dmin≒0になるまで行われる(S20)。
【0071】
図15は,クロックのデューティ比Dとスプリアス強度との関係例を示す図である。これに示されるとおり,デューティ比D=0〜0.5と,D=0.5〜1.0とは対象な関係にある。したがって,上記のようにスプリアスが最小になるデューティ比Dを探索する場合は,デューティ比DをD=0〜0.5またはD=0.5〜1.0のいずれかの範囲で探索すればよい。図14の例は,D=0〜0.5で探索する例である。
【0072】
図14に戻り,全てのデューティ比Dでの最大干渉スプリアスJのうち最も小さいJに対応する最適デューティ比Dを決定し(S22),その最適デューティ比Dをクロック発生器62に設定する(S24)。その結果,その後のクロックCLKは,最大干渉スプリアスJが最も小さいデューティ比に設定される。
【0073】
この最適なデューティ比Dopによる最大干渉スプリアスJ(Dop)を基準に,その後の最大干渉スプリアスJを監視し,あるデューティ比Dでの最大干渉スプリアスJ(D)が,最適デューティ比Dopでの最大干渉スプリアスJ(Dop)と閾値Jth以上の差分を有することが検出されたら(S28のYES),工程S14〜S24を再度実行して,新たな最適なデューティ比Dopを探索し,検出したデューティ比Dopを再度設定する。
【0074】
この常時最大干渉スプリアスJを監視する理由は,たとえば,受信装置が移動体端末の場合に,ドップラーシフトにより受信信号の帯域が変化することで,通信周波数帯域内での最大干渉スプリアスJが変動する場合があるからである。
【0075】
[第2の実施の形態:スプリアス検出精度の向上]
数9の推定値A’は,ノイズであるスプリアス強度が受信信号に比較して小さい場合に,前記の通りAGCより検出したRSSIの平均値から求めることができる。しかし,スプリアス強度が大きく,受信信号のS/N比が悪い場合には,上記の方法で推定値A’を求めても,スプリアスの検出精度は高くならない。
【0076】
そこで,第2の実施の形態では,スプリアス判定部226が,2回のプリアンブル期間を用いてスプリアスによる相関電圧Dを求める。まず,送信装置の同期パターン発生器が,1回目のプリアンブル期間では,ある同期パターン{dn}mをm=1〜Mについて発生しIDFTして送信し,2回目のプリアンブル期間では,上記の同期パターン{dn}mを符号反転させた同期パターン/{dn}mをm=1〜Mについて発生しIDFTして送信する。
【0077】
それに対して受信装置では,相関値生成部が,1回目と2回目のプリアンブル期間でそれぞれ第m部分周波数領域の相関値C(1)m,C(2)mを求める。その結果2回目の当該部分相関電圧の最大値I(2)mは,次の数10のとおりになる。
【0078】
【数10】

【0079】
そこで,1回目と2回目の部分相関電圧の最大値Iを加算して1/2にすることで,Aを除去したスプリアス部分の部分相関電圧の最大値Iを求めることができる。この方法によれば,AGCの利得値から推定値A’を求める必要がないので,特に,スプリアスが大きく,受信信号のS/N比が悪い場合でも,スプリアス検出精度を高めることができる。
【0080】
[第3の実施の形態:スプリアス検出精度の向上]
スプリアス強度が大きくなると干渉したスプリアスと受信信号との相対位相の影響が顕著になる。すなわち,数6のスプリアス成分Ds(t)は,第m部分周波数領域内に含まれるスプリアスの周波数をfs,受信信号との相対位相をθsとすると,次の数11の式の通りになる。
【0081】
【数11】

【0082】
この数11の式から,スプリアス強度が大きい条件下では,干渉したスプリアスと受信信号の相対位相θsの影響が顕著であることが理解できる。つまり,相対位相に応じてスプリアス成分Ds(t)が変動する。
【0083】
そこで,第3の実施の形態では,同期パターンを送信するプリアンブル期間の変調方式がBPSKであることを利用して,パターン部分相関測定部22が,同相位相I側の相関値と,直交位相Q側の相関値とを生成し,それぞれ生成した相関値を2乗して加算することで,相対位相θsの成分を除去して,スプリアス強度Nsのみを抽出する。
【0084】
図16は,第3の実施の形態における部分相関測定部22の構成図である。この部分相関測定部22は,相関値生成部224として同相位相I側224Iと直交位相Q側224Qとを有する。それに対応して,同期パターンをIDFTするIDFT部も,同相位相I側222Iと直交位相Q側222Qとを有する。
ここで、受信時間領域信号S(t)は同相位相I側224Iと直交位相Q側224Qの両方に入力する。
【0085】
一方,I−IDFT部222Iの参照時間領域信号RmI(t)は,同期パターンをcos成分として多重化し同相位相I側224Iに入力する。数式は数4と同じく数12の通りとなる。
【0086】
【数12】

【0087】
このとき相関値生成部(I) 224Iの出力値は走査位相(時間)τに対して数13の数式の通りである。
【0088】
【数13】

【0089】
そして,Q−IDFT部222Qの参照時間領域信号RmI(t)は,同期パターンをsin成分として多重化し直交位相Q側224Qに入力する。数式は数14の通りとなる。
【0090】
【数14】

【0091】
ここで数7の場合と同様に部分周波数領域のスプリアスの本数が1本以下であることに対しサブキャリアの本数が複数であるため、理想部分相関電圧Aの相関ピークタイミングにおいて相関値生成部(I) 224I及び相関値生成部(Q) 224Qで急峻なピークを持った相関値が交互に得られる。特に相関値生成部(I) 224Iに着目した場合、相関値生成部(I)224Iの出力C(τ)の最大値は次の数15の通りである。
【0092】
【数15】

【0093】
このとき同タイミングにおいて,相関値生成部(Q)224Qの出力値は次の数16の通りである。
【0094】
【数16】

【0095】
そして,スプリアス判定部226内のスプリアス強度計算部60は,上記相関値生成部(I) 224Iの最大出力タイミング時の両部分相関値CI,CQとスプリアス判定部64から取得した推定値A’とにより,以下の数17の式のとおり相対位相θsの成分を除去する。
【0096】
【数17】

【0097】
数17で求められたスプリアス強度Nsは第m部分周波数領域の相関電力であり,各部分周波数領域毎にメモリ62に格納される。そして,スプリアス判定ユニット64が全部分周波数領域での最大スプリアス強度Nsを判定し,スプリアス抑制制御部228に出力する。それ以降の最適デューティ比を検出し,アップデートする制御動作は,図14で説明した第1の実施の形態と同じである。
【0098】
[第4の実施の形態]
上記第3の実施の形態では,推定値A’を利用してAを除去した。しかし,このAは,前述の第2の実施の形態で説明した2回のプリアンブル期間で求めたスプリアス強度を加算して1/2倍することで除去することができる。つまり,2回のプリアンブル期間で求めたスプリアス強度CI(1),CI(2)は,以下のとおりである。
【0099】
【数18】

【0100】
【数19】

【0101】
これを加算して1/2倍することで,CI=Ns×sinθsを求めることができる。
【0102】
したがって,第4の実施の形態では,スプリアス強度計算部60が,上記の2回のプリアンブル期間で求めたスプリアス強度から,CI=Ns×sinθsを求める。
【0103】
以上の通り,本実施の形態によれば,クロック信号の高調波などのスプリアス強度を高精度に検出することができ,それを利用して最大スプリアス強度を抑制できる最適なデューティ比を検出することができる。
【0104】
上記の実施の形態では,クロック信号の高調波信号によるスプリアスを測定し,最適なデューティ比を検出している。そのため,部分周波数領域の帯域fwをクロック信号の周波数fcに設定した。
【0105】
しかしながら,本実施の形態のスプリアス測定部220,222,224,226は,クロック信号の高調波以外のスプリアスにも適用可能であり,通信周波数領域内に離散的に存在するスプリアスそれぞれの強度を,PN信号から生成する同期パターンを利用して抽出することができる。その場合は,部分周波数領域の帯域fwは,各部分周波数領域Wm内に高々1つのスプリアス成分が存在するように設定される。このように,本実施の形態のスプリアス測定部は,任意のスプリアス成分の強度をそれぞれ測定することができる。
【0106】
また,本実施の形態は,OFDM方式を例にして説明した。ただし,直交周波数分割多重(OFDM),直交周波数分割多元接続(OFDMA),単一キャリア周波数分割多重(SC−OFDM),単一キャリア周波数分割多元接続(SC−FDMA)方式では,送信装置が,複数のサブキャリアである周波数領域信号を逆離散フーリエ変換(IDFT)して時間領域信号を生成し,アップコンバートして通信媒体に送出し,受信装置が,受信信号をダウンコンバートし,時間領域信号を離散フーリエ変換(DFT)して複数の周波数領域信号を生成し,それぞれの信号を復調する。SC−OFDMとSC−FDMAでは,上記に加えて,送信装置が時間領域信号を離散フーリエ変換して複数の周波数領域信号を生成し,送信装置が複数の周波数領域信号を逆離散フーリエ変換して1つの時間領域信号を生成する。
【0107】
したがって,本実施の形態は,OFDM以外に,OFDMA,SC−OFDM,SC−OFDMAのいずれの通信方式でも適用可能である。
【0108】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0109】
(付記1)
通信周波数帯域を区分した部分周波数領域内のスプリアスを測定するスプリアス測定装置において,
前記部分周波数領域の帯域幅の2倍の周波数を有するサンプルクロックに同期して擬似雑音信号を生成する擬似雑音信号発生器と,前記擬似雑音信号の周波数を前記部分周波数領域の周波数に周波数変換するミキサと,当該周波数変換された擬似雑音信号を離散フーリエ変換(以下DFT)して部分相関同期パターンを発生するDFT部とを有する部分相関同期パターン発生器と,
前記部分相関同期パターンを逆離散フーリエ変換(以下IDFT)して参照時間領域信号を生成するIDFT部と,
送信側で前記周波数変換された擬似雑音信号をDFTして得られた送信同期パターンをIDFTして送信された受信時間領域信号と,前記参照時間領域信号との乗算値を積分して相関値を生成する相関値生成部と,
前記相関値からスプリアスを抽出するスプリアス判定部とを有するスプリアス測定装置。
【0110】
(付記2)
付記1において,
前記スプリアス判定部は,第1の期間で前記相関値生成部が生成する第1の相関値と,前記第1の期間の前記送信同期パターンの符号を反転させた符号反転送信同期パターンをIDFTして送信される第2の期間で前記相関値生成部が生成する第2の相関値とを加算して,前記スプリアスを抽出するスプリアス測定装置。
【0111】
(付記3)
付記1において,
前記IDFT部は,前記部分相関同期パターンの同相成分をIDFTして同相参照時間領域信号を生成する同相IDFT部と,前記部分相関同期パターンの直交位相成分をIDFTして直交位相参照時間領域信号を生成する直交位相IDFT部とを有し,
前記相関値生成部は,前記受信時間領域信号と前記同相参照時間領域信号との乗算値を積分して同相相関値を生成する同相相関値生成部と,前記受信時間領域信号と前記直交位相参照時間領域信号との乗算値を積分して直交位相相関値を生成する直交位相相関値生成部とを有し,
前記スプリアス判定部は,前記同相相関値と前記直交位相相関値とをそれぞれ二乗して加算して,前記スプリアスによる相関電力を求めるスプリアス測定装置。
【0112】
(付記4)
付記1において,
前記相関値生成部は,前記受信時間領域信号と,前記部分相関同期パターン発生器が前記複数の部分周波数領域毎に生成した複数の参照時間領域信号とを乗算し,当該乗算値を積分して,前記複数の部分周波数領域毎の相関値を生成する複数の積分器を有し,
前記受信時間領域信号は,送信装置にて前記複数の部分周波数領域それぞれに周波数変換された複数の擬似雑音信号をそれぞれDFTして得られた複数の送信同期パターンをIDFTして送信された信号であるスプリアス測定装置。
【0113】
(付記5)
受信時間領域信号を複数の周波数領域信号に変換する受信装置において,
設定されたデューティ比でクロック信号を生成するクロック発生回路と,
通信周波数帯域を区分した複数の部分周波数領域内それぞれのスプリアスを測定するスプリアス測定部と,
前記クロック信号の複数のデューティ比毎に,前記スプリアス測定部が測定した前記複数の部分周波数領域内それぞれのスプリアスの最大値である最大スプリアスを検出し,前記複数のデューティ比毎に検出した最大スプリアスのうち,最小の最大スプリアスに対応するデューティ比を検出して,当該検出したデューティ比を前記クロック発生回路に設定するスプリアス抑制制御部とを有する受信装置。
【0114】
(付記6)
付記5において,
前記スプリアス測定部は,
前記部分周波数領域の帯域幅の2倍の周波数を有するサンプルクロックに同期して擬似雑音信号を生成する擬似雑音信号発生器と,前記擬似雑音信号の周波数を前記部分周波数領域の周波数に周波数変換するミキサと,当該周波数変換された擬似雑音信号を離散フーリエ変換(以下DFT)して部分相関同期パターンを発生するDFT部とを有する部分相関同期パターン発生器と,
前記部分相関同期パターンを逆離散フーリエ変換(以下IDFT)して参照時間領域信号を生成するIDFT部と,
前記周波数変換された擬似雑音信号をDFTして得られた送信同期パターンをIDFTして送信された受信時間領域信号と,前記参照時間領域信号との乗算値を積分して相関値を生成する相関値生成部と,
前記相関値からスプリアスを抽出するスプリアス判定部とを有する受信装置。
【0115】
(付記7)
付記5において,
前記部分周波数領域は,前記クロック信号の単一の高調波成分を有する周波数領域に設定される受信装置。
【0116】
(付記8)
付記5,6,7のいずれかの受信装置と,
前記受信時間領域信号を送信する送信装置とを有し,
前記送信装置は,
前記部分周波数領域の帯域幅の2倍の周波数を有するサンプルクロックに同期して擬似雑音信号を生成する送信側擬似雑音信号発生器と,前記送信側擬似雑音信号の周波数を前記部分周波数領域に周波数変換する送信側ミキサと,当該周波数変換された擬似雑音信号を離散フーリエ変換(以下DFT)して送信側部分相関同期パターンを発生する送信側DFT部とを有する送信側部分相関同期パターン発生器と,
前記送信側部分相関同期パターンをIDFTして送信時間領域信号を生成する送信側IDFT部とを有し,
前記送信装置から送信された前記送信時間領域信号が,前記受信装置で前記受信時間領域信号として受信される通信システム。
【符号の説明】
【0117】
fc:クロック周波数 fsc:サブキャリア周波数
FW:通信周波数帯域 fw(=fc):部分周波数領域の帯域幅
〜W:複数の部分周波数領域 SP:スプリアス
D:デューティ比 D:スプリアス
,{d:同期パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信周波数帯域を区分した部分周波数領域内のスプリアスを測定するスプリアス測定装置において,
前記部分周波数領域の帯域幅の2倍の周波数を有するサンプルクロックに同期して擬似雑音信号を生成する擬似雑音信号発生器と,前記擬似雑音信号の周波数を前記部分周波数領域の周波数に周波数変換するミキサと,当該周波数変換された擬似雑音信号を離散フーリエ変換(以下DFT)して部分相関同期パターンを発生するDFT部とを有する部分相関同期パターン発生器と,
前記部分相関同期パターンを逆離散フーリエ変換(以下IDFT)して参照時間領域信号を生成するIDFT部と,
送信側で前記周波数変換された擬似雑音信号をDFTして得られた送信同期パターンをIDFTして送信された受信時間領域信号と,前記参照時間領域信号との乗算値を積分して相関値を生成する相関値生成部と,
前記相関値からスプリアスを抽出するスプリアス判定部とを有するスプリアス測定装置。
【請求項2】
請求項1において,
前記スプリアス判定部は,第1の期間で前記相関値生成部が生成する第1の相関値と,前記第1の期間の前記送信同期パターンの符号を反転させた符号反転送信同期パターンをIDFTして送信される第2の期間で前記相関値生成部が生成する第2の相関値とを加算して,前記スプリアスを抽出するスプリアス測定装置。
【請求項3】
請求項1において,
前記IDFT部は,前記部分相関同期パターンの同相成分をIDFTして同相参照時間領域信号を生成する同相IDFT部と,前記部分相関同期パターンの直交位相成分をIDFTして直交位相参照時間領域信号を生成する直交位相IDFT部とを有し,
前記相関値生成部は,前記受信時間領域信号と前記同相参照時間領域信号との乗算値を積分して同相相関値を生成する同相相関値生成部と,前記受信時間領域信号と前記直交位相参照時間領域信号との乗算値を積分して直交位相相関値を生成する直交位相相関値生成部とを有し,
前記スプリアス判定部は,前記同相相関値と前記直交位相相関値とをそれぞれ二乗して加算して,前記スプリアスによる相関電力を求めるスプリアス測定装置。
【請求項4】
請求項1において,
前記相関値生成部は,前記受信時間領域信号と,前記部分相関同期パターン発生器が前記複数の部分周波数領域毎に生成した複数の参照時間領域信号とを乗算し,当該乗算値を積分して,前記複数の部分周波数領域毎の相関値を生成する複数の積分器を有し,
前記受信時間領域信号は,送信装置にて前記複数の部分周波数領域それぞれに周波数変換された複数の擬似雑音信号をそれぞれDFTして得られた複数の送信同期パターンをIDFTして送信された信号であるスプリアス測定装置。
【請求項5】
受信時間領域信号を複数の周波数領域信号に変換する受信装置において,
設定されたデューティ比でクロック信号を生成するクロック発生回路と,
通信周波数帯域を区分した複数の部分周波数領域内それぞれのスプリアスを測定するスプリアス測定部と,
前記クロック信号の複数のデューティ比毎に,前記スプリアス測定部が測定した前記複数の部分周波数領域内それぞれのスプリアスの最大値である最大スプリアスを検出し,前記複数のデューティ比毎に検出した最大スプリアスのうち,最小の最大スプリアスに対応するデューティ比を検出して,当該検出したデューティ比を前記クロック発生回路に設定するスプリアス抑制制御部とを有する受信装置。
【請求項6】
請求項5において,
前記スプリアス測定部は,
前記部分周波数領域の帯域幅の2倍の周波数を有するサンプルクロックに同期して擬似雑音信号を生成する擬似雑音信号発生器と,前記擬似雑音信号の周波数を前記部分周波数領域の周波数に周波数変換するミキサと,当該周波数変換された擬似雑音信号を離散フーリエ変換(以下DFT)して部分相関同期パターンを発生するDFT部とを有する部分相関同期パターン発生器と,
前記部分相関同期パターンを逆離散フーリエ変換(以下IDFT)して参照時間領域信号を生成するIDFT部と,
前記周波数変換された擬似雑音信号をDFTして得られた送信同期パターンをIDFTして送信された受信時間領域信号と,前記参照時間領域信号との乗算値を積分して相関値を生成する相関値生成部と,
前記相関値からスプリアスを抽出するスプリアス判定部とを有する受信装置。
【請求項7】
請求項5,6のいずれかの受信装置と,
前記受信時間領域信号を送信する送信装置とを有し,
前記送信装置は,
前記部分周波数領域の帯域幅の2倍の周波数を有するサンプルクロックに同期して擬似雑音信号を生成する送信側擬似雑音信号発生器と,前記送信側擬似雑音信号の周波数を前記部分周波数領域に周波数変換する送信側ミキサと,当該周波数変換された擬似雑音信号を離散フーリエ変換(以下DFT)して送信側部分相関同期パターンを発生する送信側DFT部とを有する送信側部分相関同期パターン発生器と,
前記送信側部分相関同期パターンをIDFTして送信時間領域信号を生成する送信側IDFT部とを有し,
前記送信装置から送信された前記送信時間領域信号が,前記受信装置で前記受信時間領域信号として受信される通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−195754(P2012−195754A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57930(P2011−57930)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】