説明

スプリンクラーヘッド

【課題】スプリンクラーヘッドから放出される消火液をより均一に散布できるようにする。
【解決手段】消火液を放出する放出口を有する放出部2と、円板状に形成され放出口に対向するデフレクタ6と、デフレクタ6と放出部2とを連結する連結部7とを備え、デフレクタ6は、外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリット60によって区画された複数のつば部を有し、連結部7は、放出部2からデフレクタ6の径方向外周側に突出するとともにデフレクタ6の中心部に向けて連結される一対のフレーム70を備えたスプリンクラーヘッドにおいて、フレーム70の突出方向外周側に位置するつば部が消火液の落下方向に7°〜32°傾斜し、フレーム70の突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部がフレーム70の突出方向外周側に位置するつば部よりも消火液の落下方向への傾斜角度が浅く形成されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備に使用され、消火液を放射するスプリンクラーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
消火液を放射するスプリンクラーヘッドとしては、例えば特許文献1に開示された構成のものが提案されている。かかるスプリンクラーヘッドは、放水口を有するヘッド本体と、放水口を塞ぐ弁体と、放水口と対向するデフレクタと、デフレクタとヘッド本体とを連結するフレームと、弁体を閉弁方向に押圧する感熱開弁部材とを備えており、感熱開弁部材が火災の熱を感知すると感熱開弁部材がはじけて弁体が落下し、放水口から放出された消火液がデフレクタに案内されて飛散する構成となっている。
【0003】
また、上記スプリンクラーヘッドに備えたデフレクタは、デフレクタのうちフレームの背面に対応する部分のみを下方に曲げることにより、デフレクタとヘッド本体とを連結するフレームの背面に消火液が回りにくくなるという問題の解決を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−46544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されたスプリンクラーヘッドを用いても、消火液散布の均一性は十分とはいえず、更なる改善が求められている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、その目的は、スプリンクラーヘッドから放出される消火液をより均一に散布できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、消火液を放出する放出口を有する放出部と、放出口をシールするシール部と、放出口に向けてシール部を押圧する感熱部材と、円板状に形成され放出口に対向するデフレクタと、デフレクタと放出部とを連結する連結部とを備えたスプリンクラーヘッドに関するもので、デフレクタは、外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリットと、スリットによって区画された複数のつば部とを有し、連結部は、放出部からデフレクタの径方向外周側に突出するとともにデフレクタの中心部に向けて連結される一対のフレームを備え、フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向に7°〜32°傾斜し、フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、フレームの突出方向外周側に位置するつば部よりも消火液の落下方向への傾斜角度が浅く形成される。
【0008】
上記スプリンクラーヘッドの具体例として、以下のものが挙げられる。
(1)フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が7°であり、フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が0°であるスプリンクラーヘッド。
(2)フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が18°であり、フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が7°であるスプリンクラーヘッド。
(3)フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が32°であり、フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が18°であるスプリンクラーヘッド。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスプリンクラーヘッドは、フレームの突出方向外周側に位置するつば部が、消火液の落下方向に7°〜32°傾斜し、フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部が、フレームの突出方向外周側に位置するつば部よりも消火液の落下方向への傾斜角度が浅く形成されるようにしたことで、消火区域内における消火液供給の均一性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】スプリンクラーヘッドを示す斜視図である。
【図2】スプリンクラーヘッドの内部構造を示す断面図である。
【図3】スプリンクラーヘッドの側面図である。
【図4】スプリンクラーヘッドに備えたデフレクタを示す平面図である。
【図5】図4のA−A線切断部端面図である。
【図6】図4のB−B線切断部端面図である。
【図7】採水マスの配置を示す平面図である。
【図8】実施例の実験結果を示す表である。
【図9】実施例の実験結果を採水量合計が10000になるように換算した結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すスプリンクラーヘッド1は、消火液を放出する放出部2を有している。放出部2は、天井等に埋設された配管に螺着するためのねじ部20を備えている。ねじ部20は、筒状に形成され、上方に向けて開口した開口部21を備えており、開口部21から消火液を進入させることができる。
【0012】
図2に示すように、放出部2の内部には、鉛直方向に貫通するノズル状の放出口22が形成されている。放出口22の下端はシール部30及びキャップ31によって塞がれており、通常時に放出口22から下方に消火液が放出されるのを防止している。
【0013】
図1及び図2に示すように、シール部30及びキャップ31の下方には、放出口22に向けてシール部30及びキャップ31を押圧する感熱部材4が配設されている。感熱部材4はグラスバルブであり、その下方のインプレスネジ5によって下方から支持されている。
【0014】
感熱部材4及びインプレスネジ5の鉛直方向下方には、円板状に形成されたデフレクタ6が形成されている。デフレクタ6の面方向は、放出口22に対向している。
【0015】
図1乃至3に示すように、放出部2とデフレクタ6とは、連結部7によって連結されている。連結部7は、放出部2の側部からデフレクタ6の径方向外周側に向けて突出するとともに、デフレクタ6の中心部に向けて連結される一対のフレーム70を備えている。
【0016】
図4に示すように、デフレクタ6には、その円弧の外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリット60を有している。そして、隣り合う2つのスリット60の間には、スリット60によって区画された爪状のつば部61A〜61Lが形成されている。図示の例では、12個のスリット60が形成され、これにともない12個のつば部61A〜61Lが形成されている。
【0017】
図5に示すように、フレーム70の突出方向(以下「フレーム方向」という。)の外周側に位置するつば部61B及び61Cは、消火液の落下方向に傾斜角θ1だけ傾斜している。図示はしていないが、つば部61D,61E,61H,61I,61J及び61Kについても同様である。
【0018】
一方、図6に示すように、フレーム方向に対して水平方向に直交する方向の外周側に位置するつば部61A及び61G及びは、フレーム方向の外周側に位置するつば部61B,61C,61D,61E,61H,61I,61J及び61Kよりも、消火液の落下方向への傾斜角θ2がθ1より浅く形成されている。図示はしていないが、つば部61F及び61Lについても同様である。なお、θ2=0、すなわち、つば部61A,61F,61G及び61Lが傾斜せず、水平に形成されていてもよい。
【0019】
以上のように、フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向に傾斜し、フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、フレームの突出方向外周側に位置するつば部よりも浅い角度で消火液の落下方向へ傾斜しているため、各つば部が消火液をガイドすることにより、消火区域内における消火液供給の均一性を改善することができる。
【0020】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形形態を採用することができる。例えば、デフレクタ以外の部材については、図示の例に限定されるものではない。例えば、感熱部材4は、低融点合金であっても良い。
【実施例】
【0021】
図5及び図6に示した傾斜角θ1、θ2の値の組み合わせが以下の4種類のスプリンクラーヘッドを用意した。
【0022】
(スプリンクラーヘッドA) θ1=0°,θ2=0° (比較対象例)
(スプリンクラーヘッドB) θ1=7°,θ2=0° (実施例)
(スプリンクラーヘッドC) θ1=18°,θ2=7° (実施例)
(スプリンクラーヘッドD) θ1=32°,θ2=18°(実施例)
【0023】
全スプリンクラーヘッドA〜Dに共通の条件は以下のとおりである。
スリットの数:12個(等間隔)
スリットの周方向の幅:1.2[mm]
スプリンクラーヘッドの高さ:54[mm]
連結部の直径:25[mm]
デフレクタの厚み:(1.5±0.1)[mm]、
つば部を除いたデフレクタの平坦部分の直径:20[mm]
【0024】
放水区域内に、図7に示す複数の採水マス8を配置し、各スプリンクラーヘッドから放水し、各採水マス8における水の採水量を計測する実験を行った。図7に示す採水マス8は、フレーム方向及びフレーム方向に対して水平方向に直交する方向に直線状に配置されている。この採水マス8は、一辺が10001/2cmの大きさに形成されており、各採水マスの内部に記載された番号1〜33は採水マス番号である。スプリンクラーヘッドA〜Dは、採水マス9の直上に配置した。
【0025】
採水マス8が図7のような位置関係で設置された放水区域内において、上記スプリンクラーヘッドA〜Dを用いて放水を行った。放水時の水の圧力は、0.1[MPa]と0.7[MPa]の2通りとした。実験結果は図8及び図9に示すとおりである。
【0026】
図8に示す実験結果の採水量の単位は、[ml/3min]であり、これを全採水マスの採水量合計が10000になるように換算したのが図9である。場所による採水量のバラツキは、標準偏差を求めることによる把握した。
【0027】
図9を参照して説明すると、まず、放水圧力が0.1[MPa]のときは、(θ1=0、θ2=0)である本発明の対象外の比較対象のデフレクタを使用した場合は、標準偏差376であるのに対し、(θ1=7°、θ2=0°)、(θ1=18°、θ2=7°)、(θ1=32°、θ2=18°)のデフレクタでは、標準偏差がそれより小さい189、206、168となっており、より均一に放水できたことが確認された。
【0028】
また、放水圧力が0.7[MPa]のときは、(θ1=0、θ2=0)である本発明の対象外の比較対象のデフレクタを使用した場合は、標準偏差325であるのに対し、(θ1=7°、θ2=0°)、(θ1=18°、θ2=7°)、(θ1=32°、θ2=18°)のデフレクタでは標準偏差がそれより小さい253、276、272となっており、より均一に放水できたことが確認された。
【符号の説明】
【0029】
1:スプリンクラーヘッド
2:放出部 20:ねじ部 21:開口部 22:放出口
30:シール部 31:キャップ
4:感熱部材 5:インプレスねじ
6:デフレクタ 60:スリット
61A〜61L:つば部
7:連結部 70:フレーム
8:採水マス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火液を放出する放出口を有する放出部と、前記放出口をシールするシール部と、前記放出口に向けて前記シール部を押圧する感熱部材と、円板状に形成され前記放出口に対向するデフレクタと、前記デフレクタと前記放出部とを連結する連結部とを備えたスプリンクラーヘッドであって、
前記デフレクタは、外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリットと、前記スリットによって区画された複数のつば部とを有し、
前記連結部は、前記放出部から前記デフレクタの径方向外周側に突出するとともに前記デフレクタの中心部に向けて連結される一対のフレームを備え、
前記フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向に7°〜32°傾斜し、
前記フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、前記フレームの突出方向外周側に位置するつば部よりも消火液の落下方向への傾斜角度が浅く形成される
スプリンクラーヘッド。
【請求項2】
前記フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が7°であり、
前記フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が0°である
請求項1に記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
前記フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が18°であり、
前記フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が7°である
請求項1に記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項4】
前記フレームの突出方向外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が32°であり、
前記フレームの突出方向に直交する方向の外周側に位置するつば部は、消火液の落下方向への傾斜角度が18°である
請求項1に記載のスプリンクラーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−139267(P2012−139267A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292279(P2010−292279)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000114905)ヤマトプロテック株式会社 (46)
【Fターム(参考)】