説明

スプリンクラーヘッド

【課題】スプリンクラーヘッドから放出される消火液をより均一に放水できるようにする。
【解決手段】消火液を放出する放出口を有する放出部2と、円板状に形成され放出口に対向するデフレクタ6と、デフレクタ6と放出部2とを連結する連結部7とを備え、デフレクタ6は、外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリット60によって区画された複数のつば部61と、複数のつば部61と一体に形成された基部62とを有し、連結部7は、放出部2からデフレクタ6の径方向外周側に突出するとともにデフレクタ6の中心部に向けて連結される一対のフレーム70を備えたスプリンクラーヘッドにおいて、基部62に表裏を貫通する貫通孔63a、63bを形成することにより、消火区域内における消火液供給の均一性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備に使用され、消火液を放射するスプリンクラーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
消火液を放射するスプリンクラーヘッドとしては、例えば特許文献1に開示された構成のものが提案されている。かかるスプリンクラーヘッドは、放水口を有するヘッド本体と、放水口を塞ぐ弁体と、放水口と対向するデフレクタと、デフレクタとヘッド本体とを連結するフレームと、弁体を閉弁方向に押圧する感熱開弁部材とを備えており、感熱開弁部材が火災の熱を感知すると感熱開弁部材がはじけて弁体が落下し、放水口から放出された消火液がデフレクタに案内されて飛散する構成となっている。
【0003】
また、上記スプリンクラーヘッドに備えたデフレクタは、デフレクタのうちフレームの背面に対応する部分のみを下方に曲げることにより、デフレクタとヘッド本体とを連結するフレームの背面に消火液が回りにくくなるという問題の解決を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−46544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されたスプリンクラーヘッドを用いても、消火液散布の均一性は十分とはいえない。特に、スプリンクラーヘッドの下方には消火液が供給されにくく、更なる改善が求められている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、その目的は、スプリンクラーヘッドから放出される消火液をより均一に散布できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、消火液を放出する放出口を有する放出部と、放出口をシールするシール部と、放出口に向けてシール部を押圧する感熱部材と、円板状に形成され放出口に対向するデフレクタと、デフレクタと放出部とを連結する連結部とを備えたスプリンクラーヘッドに関し、デフレクタは、外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリットと、スリットによって区画された複数のつば部と、複数のつば部と一体に形成された基部とを有し、連結部は、放出部からデフレクタの径方向外周側に突出するとともにデフレクタの中心部に向けて連結される一対のフレームを備え、基部には、表裏を貫通する貫通孔が形成されている。
【0008】
貫通孔は、基部の中心を基準としてフレームの突出方向に直交する方向の対称な位置に2つ形成されていることが望ましい。また、スリットは12個形成され、つば部は放出部からの消火液の放出方向に対して直交する方向に延びていることが望ましい
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスプリンクラーヘッドは、デフレクタを、外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリットと、スリットによって区画された複数のつば部と、複数のつば部と一体に形成された基部とで構成し、基部には表裏を貫通する貫通孔を形成したため、貫通孔を通った消火液が下方に落下してスプリンクラーヘッドの下方にも消火液が供給されやすくなり、消火区域内における消火液供給の均一性を改善することができる。
【0010】
また、基部の中心を基準としてフレームの突出方向に直交する方向の対称な位置に貫通孔を2つ形成することにより、消火液をより均一に放水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スプリンクラーヘッドを示す斜視図である。
【図2】スプリンクラーヘッドの内部構造を示す断面図である。
【図3】スプリンクラーヘッドを側面側から見て略示的に示した断面図である。
【図4】スプリンクラーヘッドに備えたデフレクタを示す平面図である。
【図5】採水マスの配置を示す平面図である。
【図6】実施例及び比較対象の実験結果を示す表である。
【図7】実施例及び比較対象の実験結果を採水量合計が10000になるように換算して示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すスプリンクラーヘッド1は、消火液を放出する放出部2を有している。放出部2は、天井等に埋設された配管に螺着するためのねじ部20を備えている。ねじ部20は、筒状に形成され、上方に向けて開口した開口部21を備えており、開口部21から消火液を進入させることができる。
【0013】
図2に示すように、放出部2の内部には、鉛直方向に貫通するノズル状の放出口22が形成されている。放出口22の下端はシール部30及びキャップ31によって塞がれており、通常時に放出口22から下方に消火液が放出されるのを防止している。
【0014】
図1及び図2に示すように、シール部30及びキャップ31の下方には、放出口22に向けてシール部30及びキャップ31を押圧する感熱部材4が配設されている。感熱部材4はグラスバルブであり、その下方のインプレスネジ5によって下方から支持されている。
【0015】
感熱部材4及びインプレスネジ5の鉛直方向下方には、円板状に形成されたデフレクタ6が形成されている。デフレクタ6の面は、放出口22に対向した水平方向に向いている。
【0016】
図1乃至3に示すように、放出部2とデフレクタ6とは、連結部7によって連結されている。連結部7は、放出部2の側部からデフレクタ6の径方向外周側に向けて突出するとともに、デフレクタ6の中心部に向けて連結される一対のフレーム70を備えている。
【0017】
図4に示すように、デフレクタ6には、その円弧の外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリット60を有している。そして、隣り合う2つのスリット60の間には、スリット60によって区画された爪状のつば部61が形成されている。つば部61は、放出部2からの消火液の放出方向(鉛直方向)に対して直交する方向(水平方向)に延びて形成されている。図示の例では、12個のスリット60が形成され、これにともない12個のつば部61が形成されている。
【0018】
図1乃至図3に示すように、すべてのつば部61は、その内周側に位置する円板状の基部62と一体に形成されている。基部62の表面62a及び裏面62bは、つば部61の表面61a及び裏面61bと同一平面上に形成されている。
【0019】
基部62には、その表面62aから裏面62bに貫通する貫通孔63a、63bが形成されている。図示の例では、2つの貫通孔63a、63bは、基部62の中心を基準としてフレーム70の突出方向(以下「フレーム方向」という。)に直交する方向の対称な位置に2つ形成されている。
【0020】
以上のように構成されるスプリンクラーヘッド1においては、感熱部材4が火災を感知して破壊されることにより、放出部2から下方に向けて消火液が放出される。そして、放出された消火液は、デフレクタ6のつば部61に沿って外周方向に飛散する。また、スリット60からは斜め下方に消火液が落下する。さらに、貫通孔63a、63bからは、下方に消火液が落下する。したがって、消火区域内に満遍なく消火液を供給することができ、消火液供給の均一性を改善することができる。
【0021】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形形態を採用することができる。例えば、デフレクタ以外の部材については、図示の例に限定されるものではない。例えば、感熱部材4は、低融点合金であっても良い。
【実施例】
【0022】
図1乃至図4に示したスプリンクラーヘッド1(実施例)と、デフレクタに貫通孔が形成されていない従来のスプリンクラーヘッド(比較対象)とを用意した。
【0023】
(実施例に固有の条件)
実施例のスプリンクラーヘッド1の貫通孔63a、63bの直径は1.5[mm]である。また、それぞれの貫通孔は、基部62の中心を基準としてフレームの突出方向に直交する方向の対称な位置であって、基部の中心からフレーム方向に直交する方向に7.5[mm]離れた位置に形成されている。
【0024】
(実施例と比較対象に共通の条件)
実施例のスプリンクラーヘッド1と比較対象のスプリンクラーヘッドとは、貫通孔の有無以外については違いがなく、共通の条件は以下のとおりとした。
スリットの数:12個(等間隔)
スリットの周方向の幅:1[mm]
基部の直径:23[mm]
スプリンクラーヘッドの高さ:53[mm]
連結部の直径:25[mm]
デフレクタの厚み:(1.5±0.1)[mm]
デフレクタの直径:30[mm]
【0025】
放水区域内に、図5に示す複数の採水マス8を配置し、実施例及び比較対象のスプリンクラーヘッドから放水し、各採水マス8における水の採水量を計測する実験を行った。図5に示す採水マス8は、フレーム方向及びフレーム方向に対して水平方向に直交する方向に直線状に配置されている。この採水マス8は、一辺が10001/2cmの大きさに形成されており、各採水マスの内部に記載された番号1〜33は採水マス番号である。実施例及び比較対象のスプリンクラーヘッドは、採水マス9の直上に配置した。
【0026】
放水時の水の圧力は、0.05[MPa]と0.7[MPa]の2通りとした。実験結果は図6及び図7に示すとおりである。
【0027】
図6に示す実験結果の採水量の単位は、[ml/3min]であり、これを全採水マスの採水量合計が10000になるように換算したのが図7である。場所による採水量のバラツキは、標準偏差を求めることによる把握した。
【0028】
図7を参照して説明すると、まず、放水圧力が0.05[MPa]のときは、比較対象のスプリンクラーヘッドでは標準偏差が271であるのに対し、実施例のスプリンクラーヘッドでは標準偏差がそれより小さい221となっており、より均一に放水できたことが確認された。
【0029】
また、放水圧力が0.7[MPa]のときは、比較対象のスプリンクラーヘッドでは標準偏差が316であるのに対し、実施例のスプリンクラーヘッドでは標準偏差がそれより小さい211となっており、より均一に放水できたことが確認された。
【符号の説明】
【0030】
1:スプリンクラーヘッド
2:放出部 20:ねじ部 21:開口部 22:放出口
30:シール部 31:キャップ
4:感熱部材 5:インプレスねじ
6:デフレクタ 60:スリット
61:つば部 62:基部 63a,63b:貫通孔
7:連結部 70:フレーム
8:採水マス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火液を放出する放出口を有する放出部と、前記放出口をシールするシール部と、前記放出口に向けて前記シール部を押圧する感熱部材と、円板状に形成され前記放出口に対向するデフレクタと、前記デフレクタと前記放出部とを連結する連結部とを備えたスプリンクラーヘッドであって、
前記デフレクタは、外周縁部に等間隔かつ径方向に形成された複数のスリットと、前記スリットによって区画された複数のつば部と、該複数のつば部と一体に形成された基部とを有し、
前記連結部は、前記放出部から前記デフレクタの径方向外周側に突出するとともに前記デフレクタの中心部に向けて連結される一対のフレームを備え、
前記基部には、表裏を貫通する貫通孔が形成されている
スプリンクラーヘッド。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記基部の中心を基準として前記フレームの突出方向に直交する方向の対称な位置に2つ形成されている
請求項1に記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
前記スリットは12個形成され、前記つば部は前記放出部からの消火液の放出方向に対して直交する方向に延びている
請求項2に記載のスプリンクラーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165801(P2012−165801A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27049(P2011−27049)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000114905)ヤマトプロテック株式会社 (46)
【Fターム(参考)】