説明

スプリンクラー消火ポンプシステム

【課題】補助加圧ポンプを不要にすると共に、スプリンクラー消火ポンプとして迅速に起動できるようにする。
【解決手段】スプリンクラー消火ポンプシステムは、スプリンクラー消火ポンプ3と、圧力タンク10と、送水管7内の圧力を検出する圧力検出手段8,28と、前記スプリンクラー消火ポンプを運転制御する制御装置16を備えている。前記スプリンクラー消火ポンプは、送水管7内の圧力が低下したとき設定値以上に加圧する送水管増圧運転領域と、スプリンクラー消火ポンプとして運転可能なスプリンクラー運転領域を確保できるポンプ性能を備える。前記圧力検出手段は、増圧運転始動圧力PS2と、スプリンクラー運転始動圧力PS1を検出可能で、前記制御装置は、前記圧力検出手段からの信号に基づいて前記スプリンクラー消火ポンプを、送水管増圧運転領域或いはスプリンクラー運転領域で運転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助加圧ポンプとスプリンクラー消火ポンプを兼用したスプリンクラー消火ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー消火ポンプシステムは、火災発生時に送水管途中に取り付けているスプリンクラーが開放されると、水圧の低下を圧力検出手段が検出することによって、或いは外部からの始動指令(始動リレー)によって、更には人為的な運転操作などによって、スプリンクラー消火ポンプが速やかに運転され、給水されなければならない。
【0003】
従来のスプリンクラー消火ポンプシステムの例を図5及び図6により説明する。
図5はスプリンクラー消火ポンプシステムの系統図である。図において、1は消火水槽などの水源、2はフート弁、3はモータ4により駆動されるスプリンクラー消火ポンプ、7は送水管、9a,9b,9cはこの送水管途中に設けられたスプリンクラーである。火災時はこのスプリンクラー9a,9b,9cが開放され、火災発生場所などに消火用水を散水して消火する。また、これらスプリンクラー9a,9b,9cには、その開放時に信号S1,S2,S3を出力するスイッチが備えられており、火災報知器17は前記信号S1,S2,S3を受信して警報を発する。
【0004】
16は前記スプリンクラー消火ポンプ3を運転制御する制御盤(制御装置)であり、前記火災報知器17からの始動指令信号S4を受信する。10は内部に空気溜まりを有し前記スプリンクラー消火ポンプ3の吐出側近くの前記送水管7に接続される圧力タンク、8は前記スプリンクラー消火ポンプ3の吐出側近くの前記送水管7に取り付けられてここの圧力を検出する圧力検出手段で、送水管7内の圧力が所定値以下に低下すると圧力検出手段8から信号S5が前記制御盤16に送信され、制御盤16からは前記スプリンクラー消火ポンプ3の始動指令を発する信号S6が前記モータ4に送信される。また、前記送水管7の上流側(スプリンクラー消火ポンプの出口側)には逆止弁5及び仕切弁6が設けられている。
【0005】
13は、ボールタップなどの注水手段14を備え、これにより水道水が注水される呼水槽であり、呼び水配管11及び逆止弁12を介して前記スプリンクラー消火ポンプ3へ補水し、吸込管2a内の空気を除去し、スプリンクラー消火ポンプ3の吸込側を常に満水状態にしてスプリンクラー消火ポンプ3がいつでも始動できるように準備されている。また、前記呼水槽13は水位検出手段15を備えており、これにより呼水槽の水位の監視制御がされる。
【0006】
22はボールタップなどの注水手段23を備え、これにより水道水が注水される貯水槽であり、水位検出手段31により水位の監視制御がされる。20はモータ21により駆動される補助加圧ポンプ(ジョッキーポンプとも呼ばれる)であり、前記貯水槽22の水を吸込管24及び仕切弁25を介して吸い込み、逆止弁26、仕切弁27及び送水管29を通して前記送水管7に送られ、該送水管7を加圧する。28は前記送水管29に取り付けられ該送水管29内の圧力を検出する圧力検出手段であり、この圧力検出手段28は前記圧力検出手段8よりは高い圧力に設定されており、この圧力検出手段28からの信号S8は制御盤30に送られ、この制御盤30から通信線を介して信号S7をモータ21に送り、前記補助加圧ポンプ20の始動停止制御が為される。
【0007】
前記送水管7は漏水により水圧低下を起こすことがあり、この場合前記圧力検出手段8が作動して、火災が発生していないにも拘らず、スプリンクラー消火ポンプ3を運転させてしまうことがある。
【0008】
これを防止するため、圧力検出手段28の圧力設定値は圧力検出手段8の圧力設定値よりも高く設定されており、送水管7の水圧が低下すると、まず前記補助加圧ポンプ20が作動するように構成されている。これによって僅かな漏水であれば、前記送水管7内の圧力を前記圧力検出手段8の設定値以上に保持することができるから前記スプリンクラー消火ポンプ3の誤動作を防止できる。
【0009】
図6はスプリンクラー消火ポンプ及び補助加圧ポンプの運転特性図の例を示すものであり、横軸は水量Qを、縦軸は全揚程Hを示す。
曲線Aはスプリンクラー消火ポンプ3のQ−H性能曲線であり、このスプリンクラー消火ポンプ3は、商用電源(周波数f0)における運転で仕様点O(水量Q0、全揚程HTS)を満足するものが選ばれている。同様に曲線Bは補助加圧ポンプ20のQ−H性能曲線であり、商用電源(周波数f0)における運転で仕様点O(水量Qmin、全揚程JTS)を満足するものが選ばれている。
【0010】
SPONは前記スプリンクラー消火ポンプ3の始動圧力であり、圧力検出手段8のON圧力として設定される。また、SPOFFはスプリンクラー消火ポンプ3の復帰圧力である。同様に、JPONは補助加圧ポンプ20の始動圧力、JPOFFは補助加圧ポンプ20の停止圧力であり、前記圧力検出手段28で設定される圧力である。
【0011】
即ち、送水管7或いは送水管29の系統で漏水が生じた場合、前記圧力検出手段28は前記圧力検出手段8よりは高い圧力に設定されているので、送水管7,29内の圧力がJPON以下に低下すると、まず補助加圧ポンプ20が前記スプリンクラー消火ポンプ3が始動する前に始動し、送水管7,29内の圧力がJPOFFを越えると停止するように構成されている。
【0012】
なお、この種従来技術として、補助加圧ポンプを用いるものとしては特許文献1に記載のものなどがある。
また、特許文献2には、下限設定圧力に達するとスプリンクラー消化ポンプをタイマーにより一定時間起動した後停止させ、更に一定時間経過後の圧力状態を見て、単なる漏水なのかスプリンクラーによる放水なのかを判別し、スプリンクラーによる放水であると判断された場合にのみ前記スプリンクラー消化ポンプを連続運転させることにより補助加圧ポンプを不要にした発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−261671号公報
【特許文献2】特開2000−254245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
スプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、このスプリンクラー消火ポンプは送水管の漏水によって火災が発生していなくても運転して警報を発することがあり、保守及び警備上、問題を引起すことがある。これを防止するために、図5に示したものや特許文献1に記載されているように補助加圧ポンプを設けるものがあるが、このような従来技術では補助加圧ポンプが必要であると共に、その送水系統及び付帯電気設備を設ける必要があり、高価な設備となる課題がある。
【0015】
また、特許文献2に示すものでは、補助加圧ポンプを不要にしているものの、単なる漏水なのかスプリンクラーによる放水なのかを判別するためにタイマーを用いて判別するため、その判別に時間を要し、スプリンクラーによる放水であった場合にはスプリンクラー消火ポンプの連続起動運転開始が遅れてしまう課題がある。タイマーの設定時間を短くすると、単なる漏水なのかスプリンクラーによる放水なのかの判断を誤る可能性が高くなり、単なる漏水であるにもかかわらずスプリンクラー消火ポンプを連続運転し、火災が発生していなくても警報を発して、保守及び警備上、問題を引起す課題がある。
【0016】
本発明の目的は、補助加圧ポンプ、及びその送水系統や付帯電気設備を不要にすると共に、スプリンクラーによる放水時には迅速にスプリンクラー消火ポンプを起動できるスプリンクラー消火ポンプシステムを得ることにある。
【0017】
本発明の他の目的は、スプリンクラー消火ポンプが補助加圧ポンプとしての代替運転を行っているときは、その表示或いは報知をすることで、警備上の措置をとらなくて済むようにしたスプリンクラー消火ポンプシステムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、水源からの水を加圧し送水管を介してスプリンクラーに送水するスプリンクラー消火ポンプと、内部に空気溜りを有し前記送水管の途中に連結された圧力タンクと、前記送水管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段からの検出信号に基づいて前記スプリンクラー消火ポンプを運転制御する制御装置を備えたスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記スプリンクラー消火ポンプは、前記送水管内の圧力が設定値よりも低下したとき前記送水管内圧力を設定値以上に加圧する運転が可能な送水管増圧運転領域と、前記スプリンクラーが開放された際に該スプリンクラーに必要量の水を供給してスプリンクラー消火ポンプとして運転可能なスプリンクラー運転領域を確保できるポンプ性能を備えるものであり、前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力と、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出可能なものであり、前記制御装置は、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させ、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させることにある。
【0019】
上記において、前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力と、前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力と、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力と、スプリンクラー運転領域での運転開始後前記送水管内の圧力が所定値以上に上昇したことを示す復帰圧力を検出可能なものであり、前記制御装置は、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出して前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させた後、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域での運転に移行させるように制御し、その後、送水管内圧力が上昇して前記圧力検出手段が前記復帰圧力或いは前記停止圧力を検出しても前記スプリンクラー消火ポンプはスプリンクラー領域運転での運転を維持するように制御することが好ましい。
【0020】
本発明の第2の特徴は、水源からの水を加圧し送水管を介してスプリンクラーに送水するスプリンクラー消火ポンプと、内部に空気溜りを有し前記送水管の途中に連結された圧力タンクと、前記送水管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段からの検出信号に基づいて前記スプリンクラー消火ポンプを運転制御する制御装置を備えたスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記スプリンクラー消火ポンプは、前記送水管内の圧力が設定値よりも低下したとき前記送水管内圧力を設定値以上に加圧する運転が可能な送水管増圧運転領域と、前記スプリンクラーが開放された際に該スプリンクラーに必要量の水を供給してスプリンクラー消火ポンプとして運転可能なスプリンクラー運転領域を確保できるポンプ性能を備えるものであり、前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力と、前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力と、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出可能なものであり、前記制御装置は、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させ、前記圧力検出手段が前記停止圧力を検出した場合、前記送水管増圧運転領域での運転を停止させることにある。
【0021】
本発明の第3の特徴は、水源からの水を加圧し送水管を介してスプリンクラーに送水するスプリンクラー消火ポンプと、内部に空気溜りを有し前記送水管の途中に連結された圧力タンクと、前記送水管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段からの検出信号に基づいて前記スプリンクラー消火ポンプを運転制御する制御装置を備えたスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記スプリンクラー消火ポンプは、前記送水管内の圧力が設定値よりも低下したとき前記送水管内圧力を設定値以上に加圧する運転が可能な送水管増圧運転領域と、前記スプリンクラーが開放された際に該スプリンクラーに必要量の水を供給してスプリンクラー消火ポンプとして運転可能なスプリンクラー運転領域を確保できるポンプ性能を備えるものであり、前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力と、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出可能なものであり、前記制御装置は、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させることにある。
【0022】
上記において、前記制御装置は、マイクロプロセッサー及び記憶部を有しており、この記憶部には、前記送水管増圧運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記スプリンクラー運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記増圧運転始動圧力及び前記スプリンクラー運転始動圧力が記憶されていて、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させるための運転指令信号を出力し、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるための運転指令信号を出力するように構成すると良い。
【0023】
更に、前記停止圧力及び前記復帰圧力も前記記憶部に記憶しておくことが好ましく、前記圧力検出手段が前記停止圧力を検出した場合、前記送水管増圧運転領域での運転を停止させる指令信号を出力するように構成することが好ましい。
【0024】
また、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させるための運転指令信号を出力した後、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合には、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域での運転に移行させるための運転指令信号を出力し、その後、送水管内圧力が上昇して前記圧力検出手段が前記復帰圧力或いは前記停止圧力を検出しても前記スプリンクラー消火ポンプはスプリンクラー運転領域での運転が維持されるように制御すると良い。
【0025】
前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出するための第1の圧力検出手段と、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力を検出するための第2の圧力検出手段とで構成することができる。
【0026】
前記第1の圧力検出手段は、スプリンクラー運転領域での運転開始後前記送水管内の圧力が所定値以上に上昇したことを示す復帰圧力も検出するようにすると良い。また、前記第2の圧力検出手段は、前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力も検出するようにすると良い。
【0027】
また、前記圧力検出手段は、1つの圧力センサにより、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力、スプリンクラー運転領域での運転開始後前記送水管内の圧力が所定値以上に上昇したことを示す復帰圧力、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力及び前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力のうち少なくとも2つ以上を検出するように構成することもできる。
【0028】
前記制御装置には更に設定手段を設け、この設定手段から前記記憶部に、前記送水管増圧運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記スプリンクラー運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記増圧運転始動圧力、前記停止圧力、前記スプリンクラー運転始動圧力及び前記復帰圧力の少なくとも何れかを記憶させるように構成すると良い。
【0029】
また、上記において、前記制御装置は、前記送水管増圧運転領域での運転中はこれに対応した報知(モニタ上への表示、ランプ点灯、ブザーなど)を出力し、前記スプリンクラー運転領域での運転中はこれに対応した警報表示(モニタ上への表示など)及び警報(ブザーやランプ点灯など)を出力することで、前記スプリンクラー消火ポンプが何れの領域で運転されているのかを報知する手段を備えることが特に好ましい。
【0030】
更に、前記制御装置には、外部からの運転指令により前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるための手段(外部運転指令により閉じられる接点など)を備えることも有効である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、補助加圧ポンプ、及びその送水系統や付帯電気設備を不要にすることができ、設備費の大幅な低減を図り、配管系統、制御系統を簡素化することができる。また、スプリンクラーによる放水時には迅速にスプリンクラー消火ポンプを起動できるスプリンクラー消火ポンプシステムを得ることができる。
【0032】
更に、送水管増圧運転領域での運転中はこれに対応した報知を出力し、スプリンクラー運転領域での運転中はこれに対応した警報表示及び警報を出力することで、スプリンクラー消火ポンプが何れの領域で運転されているのかを報知する手段を備えるようにすれば、スプリンクラー消火ポンプが補助加圧ポンプとしての代替運転を行っているときは、それを容易に認識でき、警備上の措置をとらなくて済むようにすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のスプリンクラー消火ポンプシステムの実施例1を示す配管系統図。
【図2】図1に示すスプリンクラー消火ポンプの運転特性図。
【図3】図1に示すスプリンクラー消火ポンプシステムにおける制御の一例を示す制御回路図。
【図4】図1に示すスプリンクラー消火ポンプシステムにおける制御の他の例を示す制御回路図。
【図5】従来のスプリンクラー消化ポンプシステムを示す配管系統図。
【図6】図5に示すスプリンクラー消火ポンプ及び補助加圧ポンプの運転特性図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体的実施例を図1〜図4により説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は本発明のスプリンクラー消火ポンプシステムの実施例1を示す配管系統図で、上述した図5と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。
本実施例では、図5に示す補助加圧ポンプ20、駆動モータ21、貯水槽22、注水手段(ボールタップ)23、吸込管24、仕切弁25,27、逆止弁26、送水管29、水位検出手段31、制御盤30などが設けられていない。また、図5に示す圧力検出手段28は第2圧力検出手段(PS2)として送水管7に取付けられており、この送水管7には第1圧力検出手段(PS1)8も設けられ、これら第1、第2の圧力検出手段8,28は互いに近接して設置されている。他の構成は図5に示すものと略同一であるが、本実施例においては、スプリンクラー消火ポンプ3の構成、制御盤16での制御構成が図5に示すものと異なっている。以下、これらの点について詳細に説明する。
【0036】
図2は図1に示す本実施例におけるスプリンクラー消火ポンプ3の運転特性を説明する図であり、横軸は水量Q、縦軸は全揚程Hを示している。また、曲線Aは商用電源周波数f0(固定速)でスプリンクラー消火ポンプ3を運転した時のQ−H性能曲線であり、仕様点O1での水量がQ0、全揚程がHTSを満足する性能のものが選ばれている。また、本実施例におけるスプリンクラー消火ポンプ3は、図5に示す補助加圧ポンプ20としての性能も同時に満たすものが使用されている。即ち、本実施例におけるスプリンクラー消火ポンプ3は、前記仕様点O1での性能を満足し、且つ、次に述べるスプリンクラー消火ポンプと捕助加圧ポンプの圧力領域を確保できる右下がりの揚程変化のあるQ−H性能曲線をもつポンプが選択される。このような、低流量域では補助加圧ポンプと同等の圧力が得られ、且つ定格点ではスプリンクラー消火ポンプと同等の圧力及び流量を得ることができる性能のポンプは、羽根車の形状を適宜選択するなどにより、一般に容易に入手可能である。
【0037】
前記図2において、SPONは、前記スプリンクラー消火ポンプ3がスプリンクラー運転領域(即ち、スプリンクラー消火ポンプとして運転される領域)Bで始動される始動圧力であり、前記第1圧力検出手段8のON圧力として設定される。また、SPOFFはこれの復帰圧力(スプリンクラー運転領域での運転開始後前記送水管内の圧力が所定値以上に上昇したことを示す圧力)である。
また、図2において、JPONは、前記スプリンクラー消火ポンプ3が増圧運転領域(即ち、補助加圧ポンプとして運転される領域)Cで送水管の増圧運転を開始する増圧運転開始圧力であり、図5に示した補助加圧ポンプ20の始動圧力に対応した圧力である。JPOFFは、前記スプリンクラー消火ポンプ3での増圧運転を停止させる圧力(増圧運転停止圧力)で、図5に示した補助加圧ポンプ20の停止圧力に対応するものである。これらの圧力設定値は前記第2圧力検出手段28に設定されている。
【0038】
前記増圧運転領域Cでのスプリンクラー消火ポンプ3の性能は、仕様点O2(水量Q00、全揚程JTS)を満足するものが選ばれる。
【0039】
このように、本実施例におけるスプリンクラー消火ポンプ3は、増圧運転領域C(第2圧力検出手段28とその設定圧力範囲に対応)での運転と、スプリンクラー運転領域B(第1圧力検出手段8とその設定圧力範囲に対応)での運転とに区別されて運転制御される構成となっている。
【0040】
図3は図1に示すスプリンクラー消火ポンプシステムにおける制御の一例を示す制御回路図である。図において、R,S,Tは電源、ELBは漏電遮断器であり、これ以降の主回路の漏電及び短絡保護を行う。R,Sは制御電源、52aは電磁接触器の主回路接点であり、電磁接触器のコイル52が励磁されると閉路し、消磁すると開路する。49はサーマルリレーであり、その検出部接点49aは過電流(過負荷)が流れると閉じる。BSは運転操作専用のスイッチ、BSSは運転停止専用のスイッチ、KPは機械的に記憶可能なリレー(本実施例では、キープリレーの例で示しておりSETコイルが励磁するとその接点KPaが閉じ、RESETコイルが励磁するとその接点KPaは開くように構成されている)であり、その接点KPaが閉じると前記電磁接触器のコイル52励磁されてその接点52aが閉じ、スプリンクラー消火ポンプ3は運転を開始する。
【0041】
PS2は第2圧力検出手段28の接点、AUXPはリレーであり、前記圧力検出手段PS2の接点が閉じると励磁し、開くと消磁する。即ち、第2圧力検出手段28は送水管7の送水圧力がJPON以下で閉じ、JPOFF以上で開くように設定されており、送水管増圧運転領域に対応している。リレーAUXPの接点AUXPaが閉じるとコイル52が励磁されて電磁接触器の主回路接点52aが閉じ、スプリンクラー消火ポンプ3は運転を開始する。圧力がJPOFF以上になってPS2が開くとスプリンクラー消火ポンプ3は停止する。このように送水管7内の圧力がJPONからJPOFFの間ではスプリンクラー消火ポンプ3は送水管増圧運転領域C(図2参照)で運転される。
【0042】
PS1は第1圧力検出手段の接点、SPXはリレーであり、前記圧力検出手段PS1の接点が閉じると励磁し、開くと消磁する。即ち、第1圧力検出手段8は送水管7の送水圧力がSPON以下で閉じ、SPOFF以上で開くように設定されており、スプリンクラー運転領域に対応している。リレーSPXの接点SPXcが閉じると、キープリレーKPのSETコイルが励磁されてその接点KPaが閉じ、コイル52が励磁されて電磁接触器の主回路接点52aを閉じて、スプリンクラー消火ポンプ3がスプリンクラー運転領域での運転Bを開始する。このスプリンクラー領域運転Bでは、PS1がSPOFF以上の圧力となって開いた場合でもキープリレーの接点KPaは閉じられた状態を維持するからスプリンクラー消火ポンプ3の運転は継続され、スプリンクラー消火ポンプ3が停止して消化活動を停止してしまうのを防止する構成となっている。なお、スプリンクラー消火ポンプ3を強制的に停止させたい場合には、停止専用スイッチBSSを押すことで、キープリレーKPのRESETコイルが励磁され、その接点KPaが開かれるようにして停止可能な構成としている。
【0043】
また、本実施例では、上記増圧運転領域で運転中か、或いはスプリンクラー運転領域で運転中かがわかるように、表示ランプL1,L2によって表示するようにしている。即ち、リレーAUXPと並列に増圧運転領域で運転中であることを示す表示ランプL2を点灯させることで、スプリンクラー消火ポンプが補助加圧ポンプ代替運転を行っていることを表示することができ、火災発生でないことを管理人などに知らせることができるから、警備上の措置を取ってしまうのを回避できる。また、本実施例では、増圧運転領域での運転の場合にはスプリンクラー運転領域での運転とは明確に区別できる構成としているから、スプリンクラー消火ポンプが作動したことにより自動的に消防署に通報したり、火災報知器を鳴動させてしまうことも回避できる。
【0044】
また、リレーSPXと並列にスプリンクラー運転領域で運転中であることを示す表示ランプL1を点灯させることで、スプリンクラー9a〜9cが作動していることを表示することができる。
【0045】
更に本実施例では、増圧運転領域に対応した圧力検出手段とスプリンクラー運転領域に対応した圧力検出手段を設けて、増圧運転領域とスプリンクラー運転領域を明確に分けているので、単なる漏水であるにもかかわらず、スプリンクラー消火ポンプを連続運転し、火災が発生していなくても警報を発して、保守及び警備上、問題を引起すことを確実に防止できる。しかも、本実施例では、増圧運転領域に対応した圧力検出手段とスプリンクラー運転領域に対応した圧力検出手段を設けているから、火災発生時には迅速にスプリンクラー運転領域での運転を開始でき、迅速な消化活動ができる効果もある。
【0046】
尚、前述した停止専用スイッチBSSを押すとスプリンクラー消火ポンプ3を強制的に停止させることができ、更に、外部運転指令信号により接点Gが閉じたり、運転操作専用スイッチBSが押されると、キープリレーKPのSETコイルが励磁されてその接点KPaが閉じられ、スプリンクラー消火ポンプ3を強制的に運転することができる。
【0047】
また、過負荷時などの過電流によりサーマルリレー49が作動してその検出部接点49aが閉じたり、漏電遮断器ELBが作動してその接点ELBALが閉じると、警報表示ランプL3、警報ブザーK、或いは外部端子(図示を省略しているがリレーALの接点などを利用する)に出力される。
【0048】
図4は図1に示すスプリンクラー消火ポンプシステムにおける制御の他の例を示す制御回路図で、図において、図3と同じ符号を付した部分は同一または相当する部分であり、説明を省略する。この例は制御回路を、CPU、記憶部などを有する制御基板を用いて構成したものである。
【0049】
図4において、SSは制御装置CTLの運転/停止スイッチ、TRはトランス、CUは制御基板である。制御基板CUは、次のように構成されている。
【0050】
Zは安定化電源であり、前記トランスTRから電源の供給を受け、直流電源を生成して、前記制御基板CUに供給する。CPUはマイクロプロセッサー、OPはタッチースイッチ及び表示部を有するデジタルオペレータである。Mはメモリー(記憶部)で、プログラム(送水管増圧運転領域での運転処理を行わせるためのプログラムや、スプリンクラー運転領域での運転処理を行わせるためのプログラムなど)及び各種データが記憶され、更に圧力パラメータJPON、JPOFF、SPON、SPOFF、更には圧力検出手段(例えば圧力センサ)PSでの検出データ等が記憶されている。前記圧力検出手段PSは送水管7に取り付けられて送水管内の圧力を検出するものであり、図1に示す第1及び第2の圧力検出手段8,28を一つの圧力検出手段に統合したものである。圧力検出手段PSで検出された圧力信号は、端子台TB4及び入力回路I/O3を介してCPUに読み込まれ、送水管7内の圧力データとして記憶部Mに記憶される。
【0051】
52は電磁接触器のコイルで、図3と同様にスプリンクラー消火ポンプ3の始動条件が成立すると、CPUから出力回路I/O1及び端子台TB1の端子O3を介して出力され、コイル52が励磁されて電磁接触器の接点52aが閉じ、スプリンクラー消火ポンプ3が起動される。
【0052】
SS1は、送水管の増圧運転を外部から強制的に行うための加圧運転選択スイッチ、SS2はスプリンクラー運転領域での運転を外部から強制的に行うためのスプリンクラー運転選択スイッチであり、これらのスイッチが押されると端子台TB2及び入力回路I/O2を介してCPUに読み込まれ、記憶部Mに記憶されると共に、スプリンクラー消火ポンプ3が起動される。
【0053】
GSは、外部から始動指令(例えば、火災報知器等からの始動指令)が入力された場合に閉じられる接点で、この接点GSが閉じた場合にもスプリンクラー運転領域での運転が行なわれる。
【0054】
また、この制御例でも、図3の例と同様に、第1圧力検出手段8の接点PS1、第2圧力検出手段28の接点PS2、サーマルリレー検出部接点49a、漏電遮断器ELBの接点(図4には図示せず)なども設けられている。
【0055】
R1は送水管増圧運転領域でスプリンクラー消火ポンプ3が起動されている場合に点灯される増圧運転表示ランプ、R2はスプリンクラー運転領域でスプリンクラー消火ポンプ3が起動されている場合に点灯されるスプリンクラー運転表示ランプ、K1は送水管増圧運転時に鳴動する警報ブザー(または外部警報出力端子)、K2はスプリンクラー運転時に鳴動する警報ブザー(または外部警報出力端子)であり、CPUから出力回路I/O1及び端子台TB1を介して出力される。
【0056】
以上のように構成したものにおいて、本スプリンクラー消火ポンプシステムは、通常は据付初期時の試運転等によって、送水管7の圧力は送水管保持圧力(増圧運転停止圧力)JPOFF以上に加圧されてこの圧力を保持している。この状態から、送水管7で漏水が生じ、送水管圧力が送水管増圧運転開始圧力JPON以下に低下すると、圧力検出手段(第2圧力検出手段28または圧力センサPS)がこれを検出し、CPUはコイル52を励磁する信号を出力する。これによって、スプリンクラー消火ポンプ3は図2に示す曲線Aで運転され、送水管7を加圧するのに必要十分な時間だけ増圧運転領域での運転を行い、送水管7内を加圧し、圧力がJPOFF以上になると停止する。そして、次の送水管の増圧運転に備える。
【0057】
また、火災発生により送水管7の途中に取り付けられたスプリンクラー9a〜9cが開放され、送水管7の圧力がSPON以下まで低下すると、圧力検出手段(第1圧力検出手段8、第2圧力検出手段28、または圧力センサPS)がこれを検出し、CPUはコイル52を励磁する信号を出力する。この場合も、スプリンクラー消火ポンプ3は図2に示す曲線Aで運転される(スプリンクラー領域運転)。尚、この場合には、第2圧力検出手段28(PS2)が検出したことによる送水管の増圧運転は無効にされるようにして、スプリンクラー運転領域で即座に運転されるようにしている。
【0058】
次に、本実施例における動作を説明する。
スプリンクラー消火ポンプ3は水源1からの水を送水管7に吐出し、スプリンクラー9a〜9cに送水する。圧力タンク10は内部に空気溜りを有していて送水管7内の圧力を保持するようにしている。第1及び第2の圧力検出手段8,28は、吐出側の送水管7に取り付けられ、ここの圧力を検出する。また、前記第1圧力検出手段(PS1)8をスプリンクラー運転領域用に、第2圧力検出手段(PS2)28を送水管増圧運転領域用に夫々対応させる。なお、上述したように、第1及び第2の圧力検出手段8,28を1つの圧力センサPSで兼用させるようにしても良い。
【0059】
図4に示す制御装置CTLは、前記第2圧力検出手段28が始動圧力(増圧運転開始圧力)JPONを検出したとき、前記制御装置から前記スプリンクラー消火ポンプ3に送水管7の増圧運転領域での運転を開始するように指令信号を出力し、増圧運転停止圧力JPOFFを検出したとき前記増圧運転を停止する指令信号を出力する。
【0060】
また、前記制御装置CTLは、前記第1圧力検出手段8が始動圧力SPONを検出したとき、制御装置から前記スプリンクラー消火ポンプ3にスプリンクラー運転領域での運転を開始するように指令信号を出力する。
【0061】
また、最初に第2圧力検出手段28が始動圧力JPONを検出し、制御装置からスプリンクラー消火ポンプ3に増圧運転領域での運転指令信号を出力した後、第1圧力検出手段8からも始動圧力SPONを検出した場合には、増圧運転領域からスプリンクラー運転領域に移行するように前記制御装置から指令信号が出力される。
【0062】
その後、送水管7内の圧力が上昇し、第1圧力検出手段8が復帰圧力SPOFFを検出したり、更に第2圧力検出手段28が停止圧力JPOFFを検出した場合でも、スプリンクラー消火ポンプ3は停止されずにスプリンクラー運転領域での運転が維持されるように構成されている。
【0063】
また、図4に示す制御装置CTLには、マイクロプロセッサーCPU及び記憶部Mを有しており、この記憶部Mには、送水管増圧運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、及びこの領域での始動圧力JPONや停止圧力JPOFFのパラメータ、スプリンクラー運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、及びこの領域での始動圧力SPONや復帰圧力SPOFFのパラメータなどが記憶されている。このような制御装置を用い、前記第1及び第2の圧力検出手段8,28を1つの圧力センサPSで兼用することもできる。これらは必要に応じて適宜選択して使用する。次に圧力センサPSで兼用した場合の動作について説明する。
【0064】
この場合、前記制御装置は、前記圧力検出手段(圧力センサ)PSから送水管増圧運転の始動圧力JPONを検出した信号を取り込んだとき前記スプリンクラー消火ポンプ3には送水管増圧運転領域での運転指令信号を出力し、停止圧力JPOFFを検出したときには運転停止信号を出力するように構成されている。
【0065】
前記スプリンクラー消火ポンプ3の運転領域は送水管増圧運転領域とスプリンクラー運転領域とに分けられており、前記送水管増圧運転領域での運転指令信号により起動されて図2に示す増圧運転領域で運転される。また、前記運転停止信号により送水管増圧運転領域での運転を停止する。
【0066】
また、前記制御装置CTLは、前記圧力検出手段PSからスプリンクラー運転領域での始動圧力JPONを検出した信号を取り込んだとき前記スプリンクラー消火ポンプ3にスプリンクラー運転領域での運転指令信号を出力し、スプリンクラー消火ポンプ3はスプリンクラー運転領域で運転開始される。なお、スプリンクラー消火ポンプ3が既に増圧運転領域で運転されている場合には、スプリンクラー運転領域に移行する指令信号が出力される。
【0067】
このスプリンクラー運転領域で運転を開始された後は、送水管7内の圧力が上昇して前記圧力検出手段が復帰圧力SPOFFを検出したり、送水管保持圧力(増圧運転の停止圧力)JPOFFを検出しても、スプリンクラー消火ポンプ3は停止せずにスプリンクラー運転領域での運転が維持される。
【0068】
図4に示すように、前記制御装置CTLには、デジタルオペレータOPが設けられており、このデジタルオペレータOPにはタッチースイッチなどで構成された設定手段35や表示部(モニタ)36が設けられていて、前記記憶部Mに、前記設定手段35で設定した送水管増圧運転領域処理(運転プログラム)及びこの領域での始動圧力や停止圧力のパラメータ、スプリンクラー運転領域処理(運転プログラム)及びこの領域での始動圧力パラメータなどが記憶される。
【0069】
また、送水管増圧運転領域やスプリンクラー運転領域での運転中は、前記表示部36にそれらに対応した運転表示や警報表示を出力し、更にこれらの運転領域を区別するような警報出力(表示ランプやブザーなど)をする。これらの表示や警報出力により、スプリンクラー消火ポンプ3が何れの領域で運転されているのかを区別できるように知らせることができる。
【0070】
なお、上記動作の説明は、図4に示す制御装置の例で説明したが、図3に示す制御装置の例でも同様の動作が可能である。図3の例では図4に示すようなデジタルオペレータOPを備えていないので、モニタ上に運転状態を示す運転表示や警報表示はできないが、表示ランプやブザーなどによる警報出力は可能であり、スプリンクラー消火ポンプ3が何れの領域で運転されているのかを知らせることができる。
【0071】
また、上記において、スプリンクラー運転領域でのスプリンクラー消火ポンプ3の始動条件として、第1圧力検出手段8や圧力検出手段PSからの信号だけでなく、外部からの運転指令(例えば、火災報知器等からの始動指令)でONされる接点(図3に示すGや図4に示すGS)を設けるようにすると、火災発生時などにより迅速、確実にスプリンクラー消火ポンプ3を作動させることが可能となる。これは図3に示す制御装置の例では、第1圧力検出手段PS1と並列に外部運転指令で閉じられる接点Gを設けることで、スプリンクラー消火ポンプ3をスプリンクラー運転領域で運転開始させるためのリレーSPXを励磁させるようにすることが可能である。図4に示す制御装置の例でも、外部運転指令で閉じられる接点GSを設けることで、端子台TB2、入力回路I/O2を介してマイクロプロセッサCPUに外部運転指令を取り込み、ここから出力回路I/O1、端子台TB1を介してリレー52を励磁し、スプリンクラー消火ポンプ3をスプリンクラー運転領域で運転開始させることができる。
【0072】
上述した本実施例によれば、スプリンクラー消火ポンプに補助加圧ポンプとしての機能を兼用させることができるので、補助加圧ポンプと、その送水系統及びその付帯の電気設備などを省くことができる。従って、設備費の低減を図り、配管系統、制御系統を簡素化した安価なスプリンクラー消火ポンプシステムを得ることができる。
【0073】
また、本実施例によれば、増圧運転始動圧力及びスプリンクラー運転始動圧力を検出する圧力検出手段を備え、この圧力検出手段がスプリンクラー運転始動圧力を検出した場合には前記スプリンクラー消火ポンプにスプリンクラー運転領域で運転させるための運転指令信号を出力して、スプリンクラー消火ポンプを起動させるので、スプリンクラー消火ポンプに補助加圧ポンプとしての機能を兼用させていながら、火災発生時などスプリンクラーによる放水時には迅速にスプリンクラー消火ポンプを起動することができる効果がある。
【0074】
更に、送水管増圧運転領域での運転中はこれに対応した報知(モニタ上への表示、ランプ点灯、ブザーなど)を出力し、スプリンクラー運転領域での運転中はこれに対応した警報表示(モニタ上への表示など)及び警報(ブザーやランプ点灯など)を出力することで、スプリンクラー消火ポンプが何れの領域で運転されているのかを報知することができ、スプリンクラー消火ポンプが補助加圧ポンプとしての代替運転を行っているときは、それを容易に認識でき、警備上の措置をとらなくて済むようにできる効果がある。
【符号の説明】
【0075】
1…水源
3…スプリンクラー消火ポンプ
4,21…駆動モータ
5,12,26…逆止弁
7…送水管
8,28,PS…圧力検出手段(圧力センサ)(8:第1圧力検出手段(PS1)、28:第2圧力検出手段(PS2))
9a,9b,9c…スプリンクラー
10…圧力タンク
11…呼水配管
13…呼水槽
14…注水手段
15…水位検出手段
16,30…制御盤
17…火災報知器
20…補助加圧ポンプ
35…設定手段
36…表示部
49…サーマルリレー(49a…サーマルリレーの検出部接点)
52…コイル(電磁接触器)(52a…電磁接触器の主回路接点)
CTL…制御装置、CU…制御基板
ELB…漏洩遮断機(ELBAL…漏洩遮断機の接点)
F…ヒューズ
G,GS…外部指令で閉じられる接点
OP…デジタルオペレータ
SS…制御装置の運転/停止スイッチ
TR…トランス
Z…安定化電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源からの水を加圧し送水管を介してスプリンクラーに送水するスプリンクラー消火ポンプと、内部に空気溜りを有し前記送水管の途中に連結された圧力タンクと、前記送水管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段からの検出信号に基づいて前記スプリンクラー消火ポンプを運転制御する制御装置を備えたスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、
前記スプリンクラー消火ポンプは、前記送水管内の圧力が設定値よりも低下したとき前記送水管内圧力を設定値以上に加圧する運転が可能な送水管増圧運転領域と、前記スプリンクラーが開放された際に該スプリンクラーに必要量の水を供給してスプリンクラー消火ポンプとして運転可能なスプリンクラー運転領域を確保できるポンプ性能を備えるものであり、
前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力と、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出可能なものであり、
前記制御装置は、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させ、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させる
ことを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項2】
水源からの水を加圧し送水管を介してスプリンクラーに送水するスプリンクラー消火ポンプと、内部に空気溜りを有し前記送水管の途中に連結された圧力タンクと、前記送水管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段からの検出信号に基づいて前記スプリンクラー消火ポンプを運転制御する制御装置を備えたスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、
前記スプリンクラー消火ポンプは、前記送水管内の圧力が設定値よりも低下したとき前記送水管内圧力を設定値以上に加圧する運転が可能な送水管増圧運転領域と、前記スプリンクラーが開放された際に該スプリンクラーに必要量の水を供給してスプリンクラー消火ポンプとして運転可能なスプリンクラー運転領域を確保できるポンプ性能を備えるものであり、
前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力と、前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力と、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出可能なものであり、
前記制御装置は、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させ、前記圧力検出手段が前記停止圧力を検出した場合、前記送水管増圧運転領域での運転を停止させる
ことを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項3】
水源からの水を加圧し送水管を介してスプリンクラーに送水するスプリンクラー消火ポンプと、内部に空気溜りを有し前記送水管の途中に連結された圧力タンクと、前記送水管内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段からの検出信号に基づいて前記スプリンクラー消火ポンプを運転制御する制御装置を備えたスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、
前記スプリンクラー消火ポンプは、前記送水管内の圧力が設定値よりも低下したとき前記送水管内圧力を設定値以上に加圧する運転が可能な送水管増圧運転領域と、前記スプリンクラーが開放された際に該スプリンクラーに必要量の水を供給してスプリンクラー消火ポンプとして運転可能なスプリンクラー運転領域を確保できるポンプ性能を備えるものであり、
前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力と、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出可能なものであり、
前記制御装置は、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させる
ことを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、
前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力と、前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力と、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力と、スプリンクラー運転領域での運転開始後前記送水管内の圧力が所定値以上に上昇したことを示す復帰圧力を検出可能なものであり、
前記制御装置は、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出して前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させた後、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域での運転に移行させるように制御し、その後、送水管内圧力が上昇して前記圧力検出手段が前記復帰圧力或いは前記停止圧力を検出しても前記スプリンクラー消火ポンプはスプリンクラー領域運転での運転を維持する
ことを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記制御装置は、マイクロプロセッサー及び記憶部を有しており、この記憶部には、前記送水管増圧運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記スプリンクラー運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記増圧運転始動圧力及び前記スプリンクラー運転始動圧力が記憶されていて、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させるための運転指令信号を出力し、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるための運転指令信号を出力することを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項6】
請求項2に記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記制御装置は、マイクロプロセッサー及び記憶部を有しており、この記憶部には、前記送水管増圧運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記スプリンクラー運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記増圧運転始動圧力、前記停止圧力及び前記スプリンクラー運転始動圧力が記憶されていて、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させるための運転指令信号を出力し、前記圧力検出手段が前記停止圧力を検出した場合、前記送水管増圧運転領域での運転を停止させる指令信号を出力することを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項7】
請求項4に記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記制御装置は、マイクロプロセッサー及び記憶部を有しており、この記憶部には、前記送水管増圧運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記スプリンクラー運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記増圧運転始動圧力、前記停止圧力、前記スプリンクラー運転始動圧力及び前記復帰圧力が記憶されていて、前記圧力検出手段が前記増圧運転始動圧力を検出した場合前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で運転させるための運転指令信号を出力し、その後、前記圧力検出手段が前記スプリンクラー運転始動圧力を検出した場合、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域での運転に移行させるための運転指令信号を出力し、更にその後、送水管内圧力が上昇して前記圧力検出手段が前記復帰圧力或いは前記停止圧力を検出しても前記スプリンクラー消火ポンプはスプリンクラー運転領域での運転が維持されるように制御される
ことを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項8】
請求項1〜5の何れかに記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出するための第1の圧力検出手段と、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力を検出するための第2の圧力検出手段とを備えていることを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項9】
請求項2または6に記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力を検出するための第1の圧力検出手段と、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力及び前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力を検出するための第2の圧力検出手段とを備えていることを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項10】
請求項4または7に記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記圧力検出手段は、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力及びスプリンクラー運転領域での運転開始後前記送水管内の圧力が所定値以上に上昇したことを示す復帰圧力を検出するための第1の圧力検出手段と、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力及び前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力を検出するための第2の圧力検出手段を備えていることを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項11】
請求項1〜7の何れかに記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記圧力検出手段は、1つの圧力センサにより、前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるためのスプリンクラー運転始動圧力、スプリンクラー運転領域での運転開始後前記送水管内の圧力が所定値以上に上昇したことを示す復帰圧力、前記スプリンクラー消火ポンプを送水管増圧運転領域で始動させるための増圧運転始動圧力及び前記送水管内の圧力が設定値以上に増圧された場合に増圧運転を停止させるための停止圧力のうち少なくとも2つ以上を検出するものであることを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項12】
請求項5〜7の何れかに記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記制御装置は更に設定手段を有しており、この設定手段から前記記憶部に、前記送水管増圧運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記スプリンクラー運転領域での運転処理を行わせるためのプログラム、前記増圧運転始動圧力、前記停止圧力、前記スプリンクラー運転始動圧力及び前記復帰圧力の少なくとも何れかを記憶させることを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかに記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記制御装置は、前記送水管増圧運転領域での運転中はこれに対応した報知を出力し、前記スプリンクラー運転領域での運転中はこれに対応した警報表示及び警報を出力することで、前記スプリンクラー消火ポンプが何れの領域で運転されているのかを報知する手段を備えていることを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに記載のスプリンクラー消火ポンプシステムにおいて、前記制御装置には、外部からの運転指令により前記スプリンクラー消火ポンプをスプリンクラー運転領域で運転させるための手段を備えていることを特徴とするスプリンクラー消火ポンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−239930(P2011−239930A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114381(P2010−114381)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】