説明

スポンジケーキ用うるち米粉及びその製造方法

【課題】米粉を使用したスポンジケーキにおける食べたときの口溶けを良好にするスポンジケーキ用うるち米粉の製造方法を提供すること。
【解決手段】うるち米粉を80℃以上120℃以下で7分間以上40分間以下湿熱処理することを特徴とするスポンジケーキ用うるち米粉の製造方法及びスポンジケーキ用うるち米粉並びにこのスポンジケーキ用うるち米粉を使用したスポンジケーキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジケーキ用うるち米粉及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポンジケーキは一般に小麦粉を原料として製造されるが、小麦粉に代えて米粉を使用しスポンジケーキを製造することが行われている。
米粉を使用したスポンジケーキの配合として、例えば、米粉を主原料とし、これにセル構造スタビライザーとして精製絹フィブロインを泡立てて作った精製絹フィブロイン泡沫素材を混合したことを特徴とする複合化含泡米粉材料が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、うるち米のみから製粉された米粉100重量部、ベーキングパウダー3〜12重量部及び水溶性食物繊維粉末0.5〜2.5重量部を含んでなり、小麦粉グルテン及び絹フィブロインのいずれも含まない、スポンジ状含泡食品用粉体組成物が知られている(例えば特許文献2参照)。
また、小麦粉又は小麦粉由来の成分、及び卵又は卵由来の成分を全く使用せず、これらの原料の代わりに、米粉、乳蛋白質、及び食用油脂を使用することを特徴とするケーキ用スポンジの配合が知られている(例えば特許文献3参照)。
これらは、スポンジケーキの配合に特徴があるが、使用する米粉を加工してスポンジケーキの品質を向上させる試みもなされている。
例えば、胴搗製粉によって得られる100目以上240目以下の米粉を70℃以下の熱風で乾燥させることを特徴とする米粉の製造方法が知られている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−69925号公報
【特許文献2】特開2005−323616号公報
【特許文献3】特開2005−341845号公報
【特許文献4】特開2007−228812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米粉を使用したスポンジケーキの品質向上のために様々な試みがなされているが、米粉を使用したスポンジケーキは、小麦粉を使用したスポンジケーキに比較すると、食べたときに口溶けが劣るという欠点があった。
従って、本発明の目的は、米粉を使用したスポンジケーキにおける食べたときの口溶けを良好にするスポンジケーキ用うるち米粉の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の温度及び時間で湿熱処理したうるち米粉を使用することで、スポンジケーキの食べたときの口溶けが良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明うるち米粉を80℃以上120℃以下で7分間以上40分間以下湿熱処理することを特徴とするスポンジケーキ用うるち米粉の製造方法及びスポンジケーキ用うるち米粉並びにこのスポンジケーキ用うるち米粉を使用したスポンジケーキである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法により製造したスポンジケーキ用うるち米粉を使用したスポンジケーキは、食べたときの口溶け及び製品ボリュームが良好である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてスポンジケーキとは、卵の気泡性を利用して焼成により生地をスポンジ状に膨化して製造するケーキをいい、一般にスポンジケーキと称されるケーキの他、ロールケーキ、カステラ、ブッセなどと称されるものも含まれる。
【0008】
本発明において使用するうるち米粉は、うるち米を原料として、これを気流式粉砕、衝撃式粉砕方法など適当な方法により粉砕したうるち米粉であれば特に限定はなく市販のうるち米粉も使用することができる。
うるち米粉は粒度が細かく、損傷澱粉が低いほうが製品ボリューム大きくなり、食感のざらつきが少ないので好ましい。
【0009】
本発明ではうるち米粉を80℃以上120℃以下で7分間以上40分間以下湿熱処理を行いスポンジケーキ用うるち米粉を製造する。
この条件で湿熱処理できれば湿熱処理の方法には特に限定はない。
例えば、スチームオーブン、オートクレーブなどを使用して湿熱処理することができる。
処理温度は、80℃未満では、口溶けを良好にする効果が得られず、120℃を超えるとスポンジケーキがパサついたような食感になり口溶けが悪くなる。
処理時間は、7分間未満では、口溶けを良好にする効果が得られず、40分間を超えるとスポンジケーキのしっとり感がなくなり口溶けが悪くなると同時に製品ボリュームが小さくなる。
好ましい処理温度、処理時間は、90℃以上110℃以下で10分間以上20分間以下である。
なお、本発明において米粉の湿熱処理とは、水蒸気が導入された密閉系容器内で米粉を実質的に糊化しない状態で加熱する処理をいう。
【0010】
本発明のスポンジケーキ用うるち米粉を使用してスポンジケーキを製造する方法は、従来の米粉を使用したスポンジケーキの製造方法と同様でよく特別な操作は不要である。
例えば、共立て法、別立て法、オールイン法などの製造方法を使用することができる。
使用する原材料も従来の米粉を使用したスポンジケーキに使用できる原材料であれば特に限定はない。
例えば、卵、糖類、穀粉、澱粉、油脂、乳製品、食塩、保存料、膨張剤、起泡剤、乳化油脂などが使用できる。
【実施例1】
【0011】
うるち米粉(日本製粉社製、商品名:高砂A−82)をバットに均一に薄く広げてスチームオーブンに入れて、表1に示す処理温度、処理時間で湿熱処理しスポンジケーキ用うるち米粉を得た。
[実施例1〜13、比較例1〜6]スポンジケーキ 共立て法
卓上ミキサー(ホバート社製、N−50)を使用して全卵140質量部、砂糖140質量部及び水15質量部をホイッパーで高速2分間、中速3分間、低速30秒間、攪拌した。
これに前記スポンジケーキ用うるち米粉100質量部を加え、ビーターで低速30秒間混ぜ合わせた。
得られた生地を直径18cmのスポンジケーキ型に350g流し入れ180℃で30分間焼成しスポンジケーキを得た。
このスポンジケーキをスポンジケーキ型から取り出して粗熱をとってからビニール袋に包装し、翌日、体積の測定と以下の評価基準で10名のパネラーによる評価を行った。
[口溶け]
5点 口溶けが非常に良く非常に良い
4点 口溶けが良く良い
3点 普通
2点 口溶けが劣り悪い
1点 口溶けが非常に劣り非常に悪い
【0012】
得られた評価結果(平均値)及び体積の測定値を表1に示す。
【表1】

【0013】
湿熱処理が高温短時間又は低温長時間でも本発明の処理温度と時間の範囲を外れた場合は十分な効果を得ることができなかった。
[実施例14]ロールケーキ 別立て法
卵黄90質量部、砂糖60質量部、実施例5で得られたスポンジケーキ用うるち米粉100質量部、牛乳20質量部を混ぜ合わせ混合物を得た。
これとは別に卓上ミキサー(ホバート社製、N−50)を使用して卵白210質量部、砂糖50質量部をホイッパーで攪拌し、メレンゲ生地を作製した。
前記混合物と前記メレンゲ生地を気泡が潰れないように混ぜ合わせて生地を調製した。
8取り天板にロール紙を敷いた後、得られた生地を500g流し入れ、均一に伸ばしてから180℃で13分間焼成しスポンジケーキを得た。
このスポンジケーキを天板から取り出して粗熱をとってから評価した。
得られたスポンジケーキはふんわりと膨らみ、口溶けが良い食感で非常に良かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
うるち米粉を80℃以上120℃以下で7分間以上40分間以下湿熱処理することを特徴とするスポンジケーキ用うるち米粉の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法による得られたスポンジケーキ用うるち米粉。
【請求項3】
請求項2に記載のスポンジケーキ用うるち米粉を使用したスポンジケーキ。


【公開番号】特開2013−55889(P2013−55889A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194686(P2011−194686)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】