説明

スライドチルト機構

【課題】本発明はスライド動作とチルト動作を行うスライドチルト機構に関し、操作性の向上及び機構の簡単化を図ることを課題とする。
【解決手段】ベースプレート20と、スライドプレート30と、スライドプレート30を移動可能に支持するガイドプレート40と、スライドプレート30をチルトさせるチルト機構と、スライドプレート30を付勢するトーションばね60と、スライドプレート30が開位置までスライドしたときにガイドプレート40の傾動を許容するチルト規制部材50とを有し、チルト機構にスライドプレート30に設けられたチルト機構駆動ピン90Aと、一端がベースプレート20に他端がガイドプレート40に軸承されたリンク部材70とを設け、スライドプレート30のスライドに伴いチルト機構駆動ピン90Aがガイドプレート40をスライド付勢することによりリンク部材70を回動させ、スライドプレート40を傾動させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドチルト機構に係り、特にスライド動作とチルト動作を行うスライドチルト機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器の一つとして、テンキー等が配設された第1の筐体に対して液晶表示装置等が配設された第2の筐体をスライド可能な構成とした携帯電話機が提供されている。この種の携帯電話機には、筐体のスライド動作を可能とするためにスライド機構が内設されている。この種のスライド機構としては、例えば特許文献1に開示された機構が知られている。
【0003】
一方、近年では携帯電話機の多機能化が図られており、携帯電話機の有する液晶表示装置を利用してテレビ放送を受信し表示するものが提供されている。このように、液晶表示装置に表示される画像を比較的長時間にわたり見る場合、第1の筐体に対して第2の筐体を単に水平にスライドするスライド機構では、液晶表示装置に対する視認性が低い。
【0004】
このため、例えば特許文献2,3に示されるように第1の筐体に対して液晶表示装置が配設された第2の筐体を傾けるチルト機構を設け、これにより液晶表示装置の視認性を向上させた携帯電話機が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210649号公報
【特許文献2】特開2009−071511号公報
【特許文献3】特開2009−027520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来のチルト機構は、操作者が手動により第1の筐体に対して第2の筐体を回動させることにより、第1の筐体に対して第2の筐体をチルトさせる(傾ける)構成とされていたため、操作性が悪いという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、操作性の向上及び機構の簡単化を図ったスライドチルト機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、第1の観点からは、
ベースプレートと、
前記ベースプレートに対し、閉位置と開位置との間でスライドするスライドプレートと、
前記スライドプレートを前記ベースプレートに対しスライド方向及び傾動方向に移動可能に支持するガイドプレートと、
前記ベースプレートに対し前記ガイドプレートを傾動させることにより、前記スライドプレートを前記ベースプレートに対してチルトさせるチルト機構と、
前記スライドプレートをスライド方向にのみ付勢する弾性部材と、
前記スライドプレートが前記閉位置から前記開位置までスライドしている間は前記ガイドプレートの傾動を規制し、前記スライドプレートが前記開位置までスライドしたときに前記チルト機構による前記ガイドプレートの傾動を許容するチルト規制部材とを有するスライドチルト機構であって、
前記チルト機構は、
前記スライドプレートに設けられ、該スライドプレートのスライドに伴い移動するチルト機構駆動部と、
一端が前記ベースプレートに回動可能に軸承されると共に他端が前記ガイドプレートに回動可能に軸承されたリンク部材とを有し、
前記スライドプレートの前記開位置に向けたスライドに伴い、前記チルト機構駆動部が前記ガイドプレートと係合し前記リンク部材を回動させることにより、前記スライドプレートを前記ベースプレートに対して傾動させる構成としたことを特徴とするスライドチルト機構により解決することができる。
【発明の効果】
【0009】
開示のスライドチルト機構によれば、一回の操作でベースプレートに対してスライドプレートを水平方向に移動するスライド動作と、スライドプレートをベースプレートに対して傾動させるチルト動作を連続的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるスライドチルト機構の分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態であるスライドチルト機構を上から見た斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態であるスライドチルト機構を下から見た斜視図である。
【図4】図4は本発明の一実施形態であるスライドチルト機構の動作を説明するための図であり、(A)はスライドチルト機構を搭載した電子機器を、(B)はスライドチルト機構を示す斜視図である(閉状態を示す)。
【図5】図5は本発明の一実施形態であるスライドチルト機構の動作を説明するための図であり、(A)はスライドチルト機構を搭載した電子機器を、(B)はスライドチルト機構を示す斜視図である(開状態を示す)。
【図6】図6は本発明の一実施形態であるスライドチルト機構の動作を説明するための図であり、(A)はスライドチルト機構を搭載した電子機器を、(B)はスライドチルト機構を示す斜視図である(チルト状態を示す)。
【図7】図7は、本発明の一実施形態であるスライドチルト機構のスライド途中状態におけるピン近傍位置を拡大して示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態であるスライドチルト機構のチルト状態におけるピン近傍位置を拡大して示す側面図である。
【図9】図9は、閉状態のチルト機構を拡大して示す図である。
【図10】図10は、チルト状態のチルト機構を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0012】
図1乃至図3は、本発明の一実施形態であるスライドチルト機構10を示している。図1はスライドチルト機構10の分解斜視図であり、図2はスライドチルト機構10を上から見た斜視図であり、図3はスライドチルト機構を下から見た斜視図である。また図2及び図3は、ベースプレート20に対してスライドプレート30がチルトした状態を示している。尚、図2では、図中矢印Y2方向側のチルト規制プレート50を取り外した状態を示している。
【0013】
スライドチルト機構10は、大略するとベースプレート20、スライドプレート30、ガイドプレート40、チルト規制プレート50、トーションばね60、及びチルト機構等により構成されている。このスライドチルト機構10は、例えば図5(A),図6(A),図7(A)に示すような第1の筐体101に対して第2の筐体102がスライド(移動)及びチルト(傾動)する構成とされた電子機器100に適用されるものである。
【0014】
ベースプレート20は、電子機器100の固定側である第1の筐体101に固定されるものである。このベースプレート20は、図中Y1,Y2方向(この方向を場合によって横方向という)に延出した長板形状の本体部21を有している。この本体部21の両側部には段差部22がそれぞれ形成されると共に、この各段差部22には折曲部23及び軸承部25がそれぞれ形成されている。
【0015】
折曲部23及び軸承部25は、本体部21の両端部をプレス加工することにより直角上方に向け折り曲げられた構成とされている。この折曲部23には、三日月形状とされ、スライド方向(X1,X2方向)に延在する長孔24が形成されている。この長孔24には、後述する連結ピン75が挿通される。
【0016】
また、軸承部25には、後述する軸支ピン74が挿通される軸孔26が形成されている。更に、本体部21の両側部で段差部22の近傍位置には、後述するスライドピン80が固定されるばね固定孔27が形成されている。
【0017】
スライドプレート30は、略長方形状を有した板状部材である。このスライドプレート30は、電子機器100の移動側である第2の筐体102に固定されるものである。また、スライドプレート30の両側部には、スライド方向(図中、矢印X1,X2方向)に延在するスライド溝32が形成されている。このスライド溝32のX1方向端部には、スライド溝32の幅寸法よりも幅広とされた開口部33が形成されている。
【0018】
また、スライドプレート30の略中央位置には、弾性部材であるトーションばね60の端部61が固定されるばね固定部34が形成されている。更に、スライドプレート30の四隅位置には、チルト規制プレート50を固定するための固定孔35が形成されている。尚スライドプレート30の側縁部36は、後述するスライド保持部43によりスライド可能に保持される。
【0019】
ガイドプレート40は、上部プレート半体41と下部プレート半体42とを積層した構造とされている。具体的には、ガイドプレート40はガイドプレート40の中央部分である本体部40aにおいて、上部プレート半体41と下部プレート半体42が溶接により接合された構造とされている。
【0020】
上部プレート半体41は、その両側部がU字状に折り曲げ形成されることによりスライド保持部43を形成している。前記したスライドプレート30の側縁部36は、このスライド保持部43にスライド可能に支持される(図2及び図3参照)。よって、スライドプレート30はスライド保持部43に支持されることにより、ガイドプレート40に対して平行にスライドする。
【0021】
また、ガイドプレート40に一体的に形成されたスライド保持部43の図中矢印X1方向側の端部には、スライドプレート30が矢印X2方向にスライドした際に後述するチルト機構駆動ピン90Aが係合することによりスライドプレート30のそれ以上のスライドを規制する係合部43aが形成されている。また、スライド保持部43の図中矢印X2方向側の端部には、スライドプレート30が矢印X1方向にスライドした際に後述するスライド規制ピン90Bが係合することによりスライドプレート30のそれ以上のスライドを規制する係合部43bが形成されている。
【0022】
下部プレート半体42は、その両側部に段差部44が形成されている。また各段差部44には、直角上方に向け折り曲げられた一対の軸承部45が形成されている。外側に形成された軸承部45には、軸孔46及び軸孔47が形成されている。軸孔46は矢印X1方向側に形成され、軸孔47は軸孔46の形成位置よりも矢印X2方向側に形成されている。
【0023】
また、内側の軸承部45には1個の軸孔47が形成されており、この軸孔47は外側の軸承部45に形成された軸孔47と対向するよう同軸的に形成されている。更に、ガイドプレート40の両側位置には、後述するスライドピン80が遊嵌状態で挿通される挿通孔48が形成されている。
【0024】
上記構成とされたガイドプレート40は、ベースプレート20に対して図中矢印X1,X2方向に所定量だけ(長孔24の形成範囲に対応する量だけ)移動可能な構成となっている。
【0025】
チルト規制プレート50(請求項似記載のチルト規制部材に相当する)は、スライドプレート30の両側部にそれぞれ配設されている。チルト規制プレート50のスライドプレート30に対する固定は、チルト機構駆動ピン90A及びスライド規制ピン90Bを用いて行う。具体的には、チルト規制プレート50とスライドプレート30との間にスペーサ95を介装し、その上でチルト機構駆動ピン90A及びスライド規制ピン90Bを固定用孔52及びスペーサ95に挿通してスライドプレート30に形成された固定孔35に固定する。
【0026】
このチルト規制プレート50は、スライドプレート30に固定された状態で、スライドプレート30の側縁部36から外側に延出するよう構成されている。以下、このスライドプレート30の側縁部36から外側に延出した部分をリンク部材係合部50aという(図2及び図3参照)。また、リンク部材係合部50aの矢印X1方向端部には、切欠き部が形成されている。以下、この切欠き部分をチルト規制解除部51という。
【0027】
前記したように、スライドプレート30とチルト規制プレート50との間にはスペーサ95が介装される。このため、スライドプレート30とチルト規制プレート50との間には、スペーサ95の高さに対応した間隙(図3に矢印ΔHで示す)が形成される。この間隙は、スライドプレート30がガイドプレート40に対してスライドする際、スライド保持部43がチルト規制プレート50と緩衝しないようにするために設けられている。
【0028】
トーションばね60は、スライドプレート30をスライド方向に付勢する弾性部材として機能する。本実施形態では、一対のトーションばね60がスライドプレート30の上部に配設された構成とされている。このトーションばね60の一端部61は、ばね固定ピン63をばね固定部34に固定することによりスライドプレート30に固定される。一方、トーションばね60の他端部62は、スライドピン80の上端部(フランジ部81の上部)にばね固定ワッシャ82を用いて固定される。
【0029】
スライドピン80は、上端部にフランジ部81が形成されている。このフランジ部81の直径は、スライドプレート30に形成されたスライド溝32の幅寸法よりも大きく、開口部33の幅寸法よりも小さく、更に挿通孔48の直径よりも小さく設定されている。
【0030】
このスライドピン80は、ベースプレート20に形成されたばね固定孔27に固定される。具体的なスライドピン80の固定方法としては、スライドプレート30の開口部33と、ガイドプレート40の挿通孔48とが重なるよう位置決めした状態で、換言するとスライドプレート30をベースプレート20に対して矢印X2方向に移動させた状態(図2参照)で、スライドピン80をばね固定孔27に固定する。
【0031】
この固定状態において、スライドピン80の先端部はスライドプレート30の上部に突出する。そして、このスライドピン80のスライドプレート上に突出した位置にトーションばね60の端部62が固定される。
【0032】
また、スライドピン80の固定位置は、ベースプレート20に対してスライドプレート30がスライド方向(矢印X1,X2方向)に移動した際、スライドプレート30に形成されたスライド溝32と係合する位置に設定されている。即ち、ベースプレート20に対してスライドプレート30がスライドする際、スライドピン80は相対的にスライド溝32内を移動する。
【0033】
この際、スライドピン80の上端部に形成されたフランジ部81の直径はスライド溝32の幅寸法よりも大きいため、スライドプレート30はフランジ部81と係合した状態でスライドする。このため、ベースプレート20に対してスライドプレート30がスライドする際、スライドプレート30がベースプレート20に対して上方向(図中、Z1方向)に変位するようなことはない。
【0034】
次に、ベースプレート20に対してスライドプレート30をチルト(傾動)させるチルト機構について説明する。チルト機構は、ベースプレート20に対しガイドプレート40を傾動させることにより、スライドプレート30をベースプレート20に対してチルトさせる機能を奏するものである。このチルト機構は、ベースプレート20に形成された折曲部23及び軸承部25、ガイドプレート40、リンク部材70、軸支ピン73,74、及び連結ピン75等を有した構成とされている。
【0035】
リンク部材70は、ベースプレート20に対するスライドプレート30のチルト量に対応した長さを有した杆状の部材である。このリンク部材70は一対の軸孔71,72が形成されると共に、図3及び図8に示されるようにプレート係合部77及び摺接面78が形成されている。
【0036】
リンク部材70は、ベースプレート20とガイドプレート40とを連結するリンクとして機能するものである。リンク部材70とガイドプレート40との連結は、次のように行う。即ち、先ずリンク部材70をガイドプレート40の両側に形成された一対の軸承部45の間に装着する。この際、リンク部材70に形成された軸孔71と、軸承部45に形成された軸孔47とが、同軸的となるよう位置決めする。
【0037】
その上で、軸支ピン73を軸孔47及び軸孔71を挿通するよう挿入すると共に、外側の軸承部45から外側に突出した軸支ピン73の先端部に固定ワッシャ76(図1では、一つのみ図示している)を配設する。これにより、リンク部材70はガイドプレート40に対して、軸支ピン73を中心として回動可能な構成となる。尚、リンク部材70の軸支ピン74を中心とした傾動方向(回動方向)を、図7及び図8に矢印A1,A2で示す。
【0038】
一方、リンク部材70とベースプレート20との連結は、次のように行う。即ち、先ずリンク部材70をベースプレート20の両側に形成された一対の軸承部25の間に装着する。この際、リンク部材70に形成された軸孔72と、軸承部25に形成された軸孔26とが、同軸的となるよう位置決めする。
【0039】
その上で、軸支ピン74を軸孔26及び軸孔72を挿通するよう挿入すると共に、外側の軸承部25から外側に突出した軸支ピン73の先端部に固定ワッシャ76を配設する。これにより、リンク部材70はベースプレート20に対して、軸支ピン74を中心として回動可能な構成となる。
【0040】
更に、ベースプレート20とガイドプレート40は、連結ピン75によっても連結されている。即ち、ベースプレート20の折曲部23には長孔24が形成されており、またガイドプレート40の外側の軸承部45には軸孔46が形成されている。連結ピン75の装着するには、軸孔46と長孔24とが対向するよう位置決めした上で、各孔24,46を挿通するよう連結ピン75を挿入し、外側の軸承部45から外側に突出した連結ピン75の先端部に固定ワッシャ76を配設する。
【0041】
これにより、ベースプレート20とガイドプレート40は、連結ピン75によって直接連結された構成となる。また前記ように、長孔24はスライド方向(矢印X1,X2方向)に延在した三日月形状を有しており、よって連結ピン75はこの長孔24内をX1,X2方向に移動可能な構成となっている。
【0042】
上記のチルト機構は、各構成要素が組み立てられた状態において、スライドプレート30のスライドに伴い、リンク部材70がチルト規制プレート50(詳細にはリンク部材係合部50a)又はチルト規制解除部51と対向可能となるよう構成されている。リンク部材70がリンク部材係合部50aと係合した状態(図7に示す状態)では、リンク部材70は矢印A2方向に回動しており、リンク部材70の摺接面78がリンク部材係合部50aの下面と係合(摺接)している。
【0043】
これに対し、リンク部材70がチルト規制解除部51と対向した状態では、チルト規制解除部51は切欠きであるため、リンク部材70とリンク部材係合部50aとの係合は解除される。このため、リンク部材70は矢印A1方向に回動可能な状態(図2に示す状態)となる。
【0044】
次に、上記構成とされたスライドチルト機構10の動作について説明する。
【0045】
図4乃至図6は、スライドチルト機構10の動作を説明するための図である。理解を容易にするため、各図(A)においてスライドチルト機構10を搭載した電子機器100の動作を示し、各図(B)においてスライドチルト機構10の動作を示している。
【0046】
図4(A)は、第1の筐体101と第2の筐体102が重なった状態を示している。電子機器100は、この状態において携帯される。この時、図4(B)に示すようにスライドチルト機構10は、スライドプレート30がベースプレート20に対してX1方向にスライドした状態となっている。以下、スライドプレート30がX1方向にスライドした位置を閉位置といい、この時のスライドチルト機構10の状態を閉状態というものとする。
【0047】
この閉状態において、スライドピン80はスライド溝32のX2方向の端部に位置しており、またスライドピン80のフランジ部81はスライドプレート30と係合した状態となっている。また、連結ピン75は長孔24内の矢印X1方向端部に位置している。
【0048】
尚、トーションばね60はスライドプレート30を矢印X1方向(スライド方向)に弾性力を付勢しているが、スライドプレート30の矢印X2方向側に設けられたスライド規制ピン90Bがスライド保持部43の係合部43aと当接することにより、それ以上のスライドが規制されている。
【0049】
図7は、閉状態におけるチルト機構を示している。閉状態では、リンク部材70は矢印A2方向に回動しており、ベースプレート20の底面に沿って寝たような状態となっている。この状態において、連結ピン75は長孔24の矢印X1方向端部に位置している。よって、スライドプレート30及びガイドプレート40がベースプレート20に対して傾動(チルト)するようなことはない。
【0050】
更に、この閉状態において、ベースプレート20の本体部21とガイドプレート40の本体部40aとは平行に重なった状態となっている。よって、ガイドプレート40に保持されたスライドプレート30も、ベースプレート20の本体部21に対して平行な状態となっている。スライドプレート30はガイドプレート40にスライド可能に保持された構成とされているため、スライドプレート30は閉状態ではベースプレート20(本体部21)に対して平行にX1,X2方向にスライドする構成となっている。
【0051】
上記した閉状態から、第2の筐体102を第1の筐体101に対して矢印X2方向にスライド操作させると、これに伴いスライドプレート30もベースプレート20及びガイドプレート40に対して矢印X2方向にスライドする。これに伴い、スライドピン80はスライド溝32内を相対的にX1方向に移動し、またチルト機構駆動ピン90Aもスライド保持部43の係合部43aに近接するよう移動する(移動方向を図9に矢印Bで示す)。
【0052】
スライドプレート30のスライドに伴い、ばね固定ピン63とスライドピン80とが図中Y1,Y2方向に一直線になる位置(以下、この位置をばね力反転位置という)までの間は、トーションばね60はスライドプレート30をX1方向に弾性付勢する。よって、スライドプレート30に対する移動操作をばね力反転位置に至る前に解除すると、スライドプレート30(第2の筐体102)はトーションばね60に弾性付勢されて閉位置に向けてスライドする。
【0053】
これに対し、スライドプレート30(第2の筐体102)に対する移動操作をばね力反転位置よりもX2方向側に移動させると、トーションばね60の弾性力はスライドプレート30を開く方向(X2方向)に反転する。よって、スライドプレート30(第2の筐体102)をばね力反転位置よりも若干量X2方向に移動操作すると、後はトーションばね60の弾性付勢力によりスライドプレート30(第2の筐体102)はX2方向に自動的にスライドする。この際、チルト機構を構成するリンク部材70(摺接面78)は、チルト規制プレート50と摺接した状態を維持しつつスライドする。
【0054】
図5は、ベースプレート20に対してスライドプレート30がX2方向の端部まで移動した状態を示している。以下、スライドプレート30がX2方向の端部にスライドした位置を開位置といい、この時のスライドチルト機構10の状態を開状態というものとする。
【0055】
前記のように、スライドプレート30は閉位置と開位置との間でスライドする。スライドプレート30が閉位置と開位置の直前位置までの間でスライドする際、チルト機構のリンク部材70はチルト規制プレート50と摺接した状態を維持する。このため、ベースプレート20に対するガイドプレート40の傾動は規制される。
【0056】
しかしながら、スライドプレート30が開位置まで移動すると、図5(B)に加えて図2に示すようにスライドピン80はスライド溝32から離間して開口部33の内部に進行する。従って、スライドプレート30がチルトしても、スライドピン80の本体部31がスライドプレート30と係合してチルトが規制されるようなことはなくなる。
【0057】
また、スライドプレート30が開位置まで移動することにより、チルト機構を構成するリンク部材70は、チルト規制プレート50のリンク部材係合部50aから離間してチルト規制解除部51内に位置した状態となる。チルト規制解除部51は、前記のようにチルト規制プレート50に形成された切欠き部分である。よってリンク部材70は、軸支ピン74を中心としてA1方向への回動が許容された状態となる。更に、スライドプレート30に設けられたチルト機構駆動ピン90Aは、ガイドプレート40に形成されたスライド保持部43の係合部43aと当接した状態となる。チルト機構駆動ピン90Aと係合部43aが当接した状態を図2及び図10に示す。
【0058】
前記のように、トーションばね60は一端部61がスライドプレート30に固定されると共に、他端部62がベースプレート20に固定されたスライドピン80に固定されている。よって、トーションばね60の弾性力により、ガイドプレート40はチルト機構駆動ピン90A及びスライド保持部43を解してベースプレート20に対して矢印X2方向に移動を行う。
【0059】
このようにガイドプレート40が矢印X2方向に移動することにより、軸承部45に軸承されている軸支ピン73及び連結ピン75も矢印X2方向に移動する。これにより、リンク部材70は軸支ピン74を中心として矢印A2方向(図7,図8参照)に回動し、連結ピン75は長孔24内を矢印X2方向に移動する。
【0060】
開状態において、スライドピン80は開口部33内に位置すると共に、リンク部材70はチルト規制プレート50から離間しチルト規制解除部51(切欠き部)内に位置している。よって、スライドプレート30が開位置まで移動すると、スライドプレート30のチルト方向へ対する移動を規制するものはなくなる。
【0061】
前記のように、スライドプレート30はガイドプレート40のスライド保持部43に保持された構成となっている。よって、リンク部材70が軸支ピン74を中心にA1方向に回動する。
【0062】
上記の動作により、ガイドプレート40はベースプレート20に対して連結ピン75を中心として傾動し、これに伴いガイドプレート40に保持されたスライドプレート30はベースプレート20に対してチルトする。上記のように、チルト機構駆動ピン90Aは、リンク部材70等により構成されるチルト機構を駆動するチルト機構駆動部として機能する。図6及び図8は、スライドプレート30がベースプレート20に対してチルトした状態を示している。以下、スライドプレート30が開状態からチルトした位置をチルト位置といい、この時のスライドチルト機構10の状態をチルト状態というものとする。
【0063】
上記のチルト状態では、図8に示すように、各連結ピン73,75は上下方向(Z1,Z2方向)に並んだ状態となっている。また、リンク部材70の軸支ピン73が配設された側の端部に形成されたプレート係合部77は、チルト規制プレート50のチルト規制解除部51の一部を構成する縁部53と対向した状態となっている。更に、連結ピン75は、長孔24のX2方向端部に位置した状態となっている。
【0064】
チルト機構を構成するリンク部材70が、ベースプレート20に対して立った状態となることにより、ガイドプレート40とリンク部材70を軸承する軸支ピン73は、ベースプレート20とリンク部材70を軸承する軸支ピン74の位置よりも高い位置となる。また、ガイドプレート40は、長孔24と係合した連結ピン75を中心として回動可能な構成となっている。よって、リンク部材70がA1方向に回動することにより、ガイドプレート40は連結ピン75を中心としてベースプレート20に対して傾動する。
【0065】
このように、ベースプレート20に対してガイドプレート40が傾動することにより、ガイドプレート40に保持されたスライドプレート30もベースプレート20に対して傾動し、これによりスライドプレート30はベースプレート20に対してチルトした状態となる。本実施形態では、スライドプレート30はベースプレート20に対してルト角度θだけチルトした状態を示している(図6及び図8参照)。
【0066】
このようにスライドプレート30がベースプレート20に対してチルトすることにより、図6(A)に示すように第2の筐体102は第1の筐体101に対してチルトした状態となり、例えば第2の筐体102に液晶表示装置等のディスプレイが設けられていた場合、その視認性を高めることができる。
【0067】
上記した説明では、説明の便宜上、スライドプレート30の開位置までの移動と、開位置からチルト位置への移動を分けて説明したが、実際のスライドプレート30の動作は、X2方向へのスライド動作と、チルト位置に向けたチルト動作は連続的に行われる。即ち、スライドプレート30をばね力反転位置よりも若干量X2方向に移動操作した後は、スライドプレート30は自動的にX2方向にスライドして開位置に至り、その後に連続的にチルト動作を行う。
【0068】
上記のように本実施形態に係るスライドチルト機構10によれば、スライドプレート30をばね力反転位置よりも若干先まで移動操作するのみで、後はスライド動作とチルト動作が連続的かつ自動的に行われるため操作性を高めることができる。
【0069】
また、閉位置から開位置(実際は開位置の直前位置)までにおけるスライドプレート30のスライドは、リンク部材70がチルト規制プレート50と摺接すると共にスライドピン80のフランジ部81がスライド溝32に係合した状態で行われる。よって、チルト動作可能なスライドプレート30であっても、閉位置から開位置までのスライドプレート30のスライド動作は安定しており、ガタツキが発生するようなことはない。
【0070】
更に、チルト状態において、チルトしたスライドプレート30に対してスライド方向(矢印X1方向)に移動付勢する外力が作用しても、図8に示すようにチルト規制プレート50に形成されたチルト規制解除部51の縁部53がリンク部材70と当接し、スライドプレート30のX1方向の移動(スライド)は規制される。即ち、本実施形態に係るチルトスライド機構10では、スライド方向に外力が作用してもスライドプレート30はチルト状態ではスライドを行うことはない。
【0071】
一方、チルト状態にあるスライドプレート30を閉位置に移動させるには、図6及び図8に示すチルト状態にあるスライドプレート30を図中矢印Rで示す方向(スライド方向X1と異なる方向)に移動させる。チルト状態では、リンク部材70に形成されたプレート係合部77がチルト規制解除部51の縁部53と対向した状態となっている。よって、スライドプレート30が矢印R方向(縁部53がプレート係合部77に向かう方向)に移動することにより、縁部53はプレート係合部77と当接する。
【0072】
更にスライドプレート30をR方向にスライドさせることにより、プレート係合部77はスライドプレート30に付勢され、リンク部材70は軸支ピン74を中心として矢印A2方向に回動する。これに伴い、連結ピン75は長孔24内を矢印X1方向に移動すると共に、ガイドプレート40はベースプレート20に近接するよう移動する。
【0073】
また、スライドプレート30のR方向のスライドに伴い、チルト機構駆動ピン90Aは係合部43aから離間し、ガイドプレート40によるリンク部材70への矢印A1方向への付勢は解除される。更に、スライドプレート30のR方向のスライドに伴い、スライドプレート30に固定されたチルト規制プレート50もR方向に移動し、やがてリンク部材70の摺接面78がチルト規制プレート50の背面に係合する。これにより、再びチルト機構によるスライドプレート30のチルトが規制された状態となる。そして、スライドプレート30をばね力反転位置よりも若干量だけX1方向に移動させることにより、トーションばね60の弾性付勢力は反転し、その後はスライドプレート30は自動的に閉位置まで移動する。
【0074】
このように、チルト状態にあるスライドプレート30を閉位置まで移動させる処理も、スライドプレート30をR1方向及びX1方向にスライドさせるのみでよく、閉状態とする処理においても操作性の向上を図ることができる。また、上記のようにスライドプレート30の開位置から閉位置へのスライドは、スライドプレート30のチルト状態が解除された後に実施される。よって、チルド状態が外力印加等により容易に解除されることはなく、チルト機構としての信頼性を高めることができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0076】
10 スライドチルト機構
20 ベースプレート
21 本体部
22 段差部
23 折曲部
24 長孔
25 軸承部
26 軸孔
27 ばね固定孔
30 スライドプレート
31 本体部
32 スライド溝
33 開口部
34 ばね固定部
35 固定孔
36 側縁部
40 ガイドプレート
41 上部プレート半体
42 下部プレート半体
43 スライド保持部
43a 係合部
44 段差部
45 軸承部
46,47,71,72 軸孔
48 挿通孔
50 チルト規制プレート
51 チルト規制解除部
60 トーションばね
63 ばね固定ピン
70 リンク部材
73,74 軸支ピン
75 連結ピン
77 係合部
78 摺接面
80 スライドピン
81 フランジ部
82 ばね固定ワッシャ
90A スライド規制ピン(チルト機能駆動ピン)
90B スライド規制ピン
100 電子機器
101 第1の筐体
102 第2の筐体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに対し、閉位置と開位置との間でスライドするスライドプレートと、
前記スライドプレートを前記ベースプレートに対しスライド方向及び傾動方向に移動可能に支持するガイドプレートと、
前記ベースプレートに対し前記ガイドプレートを傾動させることにより、前記スライドプレートを前記ベースプレートに対してチルトさせるチルト機構と、
前記スライドプレートをスライド方向にのみ付勢する弾性部材と、
前記スライドプレートが前記閉位置から前記開位置までスライドしている間は前記ガイドプレートの傾動を規制し、前記スライドプレートが前記開位置までスライドしたときに前記チルト機構による前記ガイドプレートの傾動を許容するチルト規制部材とを有するスライドチルト機構であって、
前記チルト機構は、
前記スライドプレートに設けられ、該スライドプレートのスライドに伴い移動するチルト機構駆動部と、
一端が前記ベースプレートに回動可能に軸承されると共に他端が前記ガイドプレートに回動可能に軸承されたリンク部材とを有し、
前記スライドプレートの前記開位置に向けたスライドに伴い、前記チルト機構駆動部が前記ガイドプレートと係合し前記リンク部材を回動させることにより、前記スライドプレートを前記ベースプレートに対して傾動させる構成としたことを特徴とするスライドチルト機構。
【請求項2】
前記チルト規制部材は、
前記スライドプレートに設けられ、前記スライドプレートが前記閉位置から前記開位置までスライドしている間は前記リンク部材と係合して前記スライドプレートの傾動を規制すると共に、前記スライドプレートが前記開位置までスライドしたときに前記リンク部材から離間することにより前記リンク部材の回動を許容することにより前記チルト機構による前記スライドプレートの傾動を許容する構成であることを特徴とする請求項1記載のスライドチルト機構。
【請求項3】
前記チルト機構駆動部を、前記スライドプレートが前記開位置に移動した際に該スライドプレートのスライドを規制する部材として用いることを特徴とする請求項1又は2記載のスライドチルト機構。
【請求項4】
前記スライドプレートのスライド動作と、前記チルト機構による前記スライドプレートのチルト動作が前記弾性部材に付勢されることにより連続的に行われる構成としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスライドチルト機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−78128(P2013−78128A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−261718(P2012−261718)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【分割の表示】特願2009−273956(P2009−273956)の分割
【原出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000176833)三菱製鋼株式会社 (69)
【Fターム(参考)】