説明

スライドファスナー用開離嵌挿具とスライドファスナー

【課題】スライドファスナーにおいて、箱体に対して第1ピン部材又は第2ピン部材のいずれも単独で挿抜可能とした開離嵌挿具を提供する。
【解決手段】スライドファスナー用開離嵌挿具(22,322,422,522,622,722,822,1022,1122,1222)の箱体(50,150,250,350,450,550,650,750,850,1050,1150,1250)に対して挿抜可能に構成した第1ピン部材(30,230,1030,1130,1230)及び第2ピン部材(40,240,1040,1140,1240)に、それぞれロック爪(31,231,1031,1131,1231;41,241,1041,1141,1241)を形成し、箱体(50,150,250,350,450,550,650,750,850,1050,1150,1250)における空間部(57,257)の中央に、ロック爪(31,231,1031,1131,1231;41,241,1041,1141,1241)と係合することにより、第1及び第2ピン部材(30,230,1030,1130,1230;40,240,1040,1140,1240)の双方の同時抜取りを阻止する可動式のピン抜取り阻止手段(68,268,1068,1168,1268)を配した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドファスナーのスライダーを最下部まで摺動させてスライドファスナーを開いた後に、左右のファスナーストリンガーを分離可能としたオープンファスナーの開離嵌挿具、並びに当該開離嵌挿具を備えたスライドファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドファスナーのスライダーを最下部まで摺動させた後に、左右のファスナーストリンガー同士を分離させるための開離嵌挿具が知られている。従来一般に用いられている開離嵌挿具は、例えば正面視で右側のファスナーストリンガー下端に、箱体と一体に形成された箱棒が設けられているものであり、左側のファスナーストリンガー下端に取り付けられている第1ピン部材を前記箱体に対して挿抜自在にしたものである。この従来の開離嵌挿具を備えたスライドファスナーでは、左右のファスナーストリンガー同士を分離させる際には、右側のファスナーストリンガーを保持した状態で、左側のファスナーストリンガーを上方に引き上げる操作を行う必要がある。また、左右のファスナーストリンガー同士を結合させる際には、右側のファスナーストリンガーを保持した状態で、左側のファスナーストリンガー下端に取り付けられている第1ピン部材を、スライダー及び箱体に挿入させる操作を行う必要がある。
【0003】
このようなスライドファスナーにおいて、スライダーを下降させた際の左右ファスナーストリンガー同士の分離性を向上させるとともに、ファスナーを閉じるときのスライダーのスタート性を向上させるための開離嵌挿具が、独国特許出願公開第10124704号明細書(特許文献1)に示されている。
特許文献1に記載されている開離嵌挿具では、箱体の中央部に取り付けられたシーソーが、箱体の中に設けられた軸を中心に揺動するように構成されている。このシーソーの左端は、スライダーを箱体に接触する位置まで下降させた場合に、当該スライダーから下方に延出し箱体に進入するフック下端に当接して、当該シーソーを反時計回りに傾ける働きをする。
【0004】
このとき、シーソーの右端は、箱体に対して取り外し可能な右側ファスナーストリンガー下端のピン部材に形成されているフック下端を押し上げて、右側ファスナーストリンガーを箱体から押し上げる働きをするので、右側ファスナーストリンガーの分離が容易となる。
【0005】
他方、右側ファスナーストリンガー下端のピン部材を箱体に嵌入させると、当該ピン部材に形成されているフック下端がシーソーの右端に当接して、シーソーを時計回りに傾ける働きをする。このとき、シーソーの左端は、スライダーから下方に延出しているフック下端を押し上げる働きをするため、ファスナーを閉じようとするときのスライダーのスタート性を向上させている。
【0006】
また、スライダーを箱体から引き上げることにより、スライダーから下方に延出しているフックが、シーソーの上部に形成されているT字型の左肩端を引き上げるので、シーソーが時計回りに傾き、T字型の右肩端が右側ファスナーストリンガーのピン部材に形成されているフックを押し下げる。これにより、右側ファスナーストリンガーのピン部材を所定の位置まで下げて、ファスナーストリンガーに形成されている左右一対の務歯同士を容易に噛合させることができる。
【特許文献1】独国特許出願公開第10124704号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているスライドファスナーでは、箱体に対して挿抜可能なピン部材は、その図の右側のピン部材だけである。したがって、リバーシブル・ウェアに当該スライドファスナーを用いた場合には、スライドファスナーを表側から操作する場合と、裏返しの状態で操作する場合とで、左右のファスナーストリンガー同士を分離結合する際の右手と左手の操作が逆になる。このため、素早くスライドファスナーの分離結合操作を行うことができないという不具合を生じている。
【0008】
また、子供や高齢者が衣服を脱いだり着たりするのを向かい合った状態で補助する際においても、左右のファスナーストリンガー同士を分離結合する際の右手と左手の操作が、通常の操作とは逆になるために、操作しずらくなるという不具合を生じている。
【0009】
なお、開離嵌挿具を備えたスライドファスナーでは、向かって左側のファスナーストリンガー下端に取り付けられている第1ピン部材を、箱体に対して挿抜自在にした形式のものが用いられており、日本で使用する衣類等において好んで採用されている。しかし、米国等においては、向かって右側のファスナーストリンガー下端に取り付けられている第2ピン部材を、箱体に対して挿抜自在にした逆の形式のものが用いられる。このように従来は、各国の慣習に合わせた2種類の開離嵌挿具を生産して、それぞれを提供していた。
【0010】
本発明は、こうした従来技術のもつ問題点を解決するために創出されたもので、箱体に対して、第1ピン部材又は第2ピン部材のいずれかを選択して挿抜することが可能なスライドファスナーの開離嵌挿具、並びに当該開離嵌挿具を備えたスライドファスナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成すべく、本発明に係るスライドファスナー用開離嵌挿具は、一側縁に相対向して務歯列が固着された左右一対のファスナーストリンガーにおける前記務歯列の一端部に相対向して固着された第1ピン部材及び第2ピン部材と、前記ファスナーストリンガーとは別体に形成され、左壁、右壁、前壁及び後壁により囲まれた空間部を有し、前記第1及び第2ピン部材の挿抜が可能な箱体とを備えたスライドファスナー用の開離嵌挿具であり、前記第1ピン部材及び前記第2ピン部材に、それぞれロック爪を有し、前記空間部の中央には、ロック爪と係合することにより、前記第1及び第2ピン部材の双方の同時抜取りを阻止する可動式のピン抜取り阻止手段が配されてなることを特徴とする。
【0012】
好ましい態様として、前記ピン抜取り阻止手段が、前記第1ピン部材及び第2ピン部材の挿抜操作により回動可能な回動部材に形成され、その回動部材の周面には前記第1及び第2ピン部材が前記空間部に挿入された状態にあるとき、前記第1及び第2ピン部材の双方のロック爪と係合して前記回動部材の回動を不能とし、前記第1及び第2ピン部材のいずれか単独による抜取り操作時は、その抜取方向の回動を許容して、同ピン部材のみの係合を解除する係合/解除面を、前記回動部材の周面に有している。
【0013】
また、前記回動部材に、前記第1及び第2ピン部材のいずれかの挿入操作の後段において、前記回動部材を中立位置まで回動させる中立回動カムを形成し、前記第1及び第2ピン部材の前記ロック爪の上方に、前記中立回動カムと係合する中立位置回動用凸部を形成することが好ましい。
【0014】
また、前記回動部材に軸部を有し、その軸部の枢支面の一部に回動部材の回動動作を妨げる軸受係止部が形成され、前記箱体における前記前壁及び前記後壁に、前記軸部を枢支する軸受を有し、当該軸受の枢支面の一部に前記軸受係止部と係合する軸係止部が形成され、前記第1及び第2ピン部材のいずれかが前記空間部から抜き取られた状態にあるとき、前記空間部に残された他方の第2又は第1ピン部材の抜取り操作に基づき、前記軸受係止部と前記軸係止部とが係合して、前記回動部材の回動を制限することが好ましい。
【0015】
また、前記回動部材の端に軸部を形成し、前記回動部材の一部に回動部材の回動動作を妨げる軸受係止部を形成し、前記箱体における前記前壁及び前記後壁に、前記軸部を枢支して前記回動部材を回動自在にする軸受と、前記軸受係止部に係合する軸係止部とを形成し、前記軸受係止部を前記軸係止部に向けて付勢する付勢手段を備えることが好ましい。
【0016】
また、前記回動部材の端に軸部を形成し、当該軸部の端面に回動部材の回動動作を妨げる軸受係止部を形成し、前記箱体における前記前壁及び前記後壁に、前記軸部を枢支して前記回動部材を回動自在にする軸受を形成し、当該軸受の奥壁面の一部に前記軸受係止部と係合する軸係止部を形成し、前記軸受係止部と前記軸係止部とが互いに向けて付勢する付勢手段を備えていることが好ましい。
【0017】
また、前記箱体の前壁及び後壁の中央部に摺動口を形成し、前記ピン抜取り阻止手段を、前記摺動口に嵌挿して前記箱体の左右方向に摺動操作が可能に支持される摺動部材に形成することが好ましい。更に、前記摺動部材を左方向又は右方向に係止することにより、前記第1及び第2ピン部材の双方の同時抜取りを阻止する係止部を備えることが好ましい。
【0018】
また、前記箱体の前壁及び後壁の中央部に軸受を形成し、前記ピン抜取り阻止手段を、前記軸受に嵌挿して前記箱体に対して回動操作可能に支持された回動部材の周面に形成することが好ましい。更に、前記回動部材を所定位置に係止することにより、前記第1及び第2ピン部材の双方の同時抜取りを阻止する軸係止部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る開離嵌挿具によれば、箱体の空間部中央に回動又は摺動による可動式のピン抜取り阻止手段を備え、第1ピン部材の下端部に形成したロック爪、及び第2ピン部材の下端部に形成したロック爪のうちの少なくともいずれかと係合するようにしたので、第1及び第2ピン部材の双方の同時抜取りを阻止することが可能となる。しかして、箱体に対して、第1ピン部材又は第2ピン部材のいずれかを選択して挿抜することは可能である。
【0020】
なお、一方のピン部材を箱体から抜き取った状態において、外部から手動により意図的にピン抜取り阻止手段を動作させる場合には、箱体に残った方のピン部材を箱体から離脱させることもできる。こうすることで、スライドファスナーが完成品の状態であっても、スライダーを交換することが可能となる。
【0021】
本発明をリバーシブル・ウェアに適用することによって、そのリバーシブル・ウェアを裏返して着用した場合においても、常に操作が容易な側でピン部材の挿抜操作を行うことができる。また、子供や高齢者と向かい合ってファスナーを開閉する場合であっても、操作する人が使い慣れた側でピン部材の操作を行うことができる。また、スライダーが残される側のストリンガーを利用者が自由に選択することができるので、アウトドア用などの同じ形状のシートを複数繋げて、大きさを変えることができる商品に適用することによって、接続や分離の作業性を向上させることができる。
【0022】
また、従来は、各国の慣習に合わせて、箱体に対して左側の第1ピン部材を挿抜自在にしたタイプと、これとは逆に、箱体に対して右側の第2ピン部材を挿抜自在にしたタイプとの、2種類の開離嵌挿具をそれぞれ生産して提供する必要があった。しかし、本発明によれば、第1ピン部材及び第2ピン部材のいずれかを選択して挿抜することが可能になるので、1種類の開離嵌挿具で各国の異なる慣習に対応することができる。
【0023】
また、第1の好適な態様によれば、箱体の内部に第1及び第2ピン部材の挿抜操作により回動する回動部材を備え、当該回動部材の周面に係合/解除面を形成したので、2本のピン部材が空間部に挿入されているとき、この双方のピン部材のロック爪が係合/解除面と係合して、回動部材の回動を不能とすることができる。これにより、第1及び第2ピン部材の双方の同時抜取りは不能となる。
【0024】
また、第1及び第2ピン部材の単独の抜取り操作時には、その抜取方向の回動を許容して、その操作されるピン部材だけを係合から解除することができる。したがって、第1及び第2ピン部材の双方が箱体に挿入された状態から、いずれか一方のピン部材を選択して挿抜することができ、一方のピン部材の挿抜操作を行っている際には、他方のピン部材と箱体とが分離しないように、自動的に係合される。
【0025】
また、回動部材の周面に中立回動カムを形成するとともに、第1及び第2ピン部材のロック爪の上方に前記中立回動カムと係合する中立位置回動用凸部を形成することにより、第1及び第2ピン部材のいずれかの挿入操作の後段において、回動部材を中立位置まで回動させることができる。これにより、回動部材の中立位置においては、係合/解除面が第1及び第2ピン部材の双方と係合して、第1及び第2ピン部材の双方の同時抜取りを不能にすることができる。そして、第1及び第2ピン部材のいずれかの単独の抜取り操作時には、操作されるピン部材だけを係合から解除することができる。
【0026】
また、回動部材両端の軸部における枢支面の一部に軸受係止部を形成し、箱体の前壁及び後壁に形成した軸受の枢支面の一部に軸係止部を形成することにより、第1又は第2ピン部材のいずれかが単独で抜き取られた状態において、軸受係止部と軸係止部とが係合する。同時に、回動部材が不用意に回動してしまう不具合を防止することができる。この回動部材の回動が制限されることにより、箱体内部に残っている方のピン部材が、箱体から離脱してしまう不具合を防止することができる。そして、ロック爪を嵌入しやすい位置に係合/解除面を保持しておくことができる。
【0027】
また、回動部材の一部に回動部材の回動動作を妨げる軸受係止部を形成し、箱体に前記軸受係止部と係合する軸係止部を設け、更に軸受係止部を軸係止部に向けて付勢する付勢手段を備えることにより、回動部材が中立位置に存在する状態、又は第1ピン部材若しくは第2ピン部材のいずれか一方を抜き取った状態において、回動部材の不必要な回動を制限することができる。
【0028】
また、回動部材の端に形成した軸部の端面に軸受係止部を形成し、箱体に形成した軸受の奥壁面の一部に前記軸受係止部と係合する軸係止部を設け、更に、軸受係止部と軸係止部とを互いに付勢する付勢手段を備えることにより、回動部材が中立位置に存在する状態、又は第1ピン部材若しくは第2ピン部材のいずれか一方を抜き取った状態において、回動部材の不必要な回動を制限することができる。
【0029】
また、箱体の前壁及び後壁を挿通して摺動自在に配置して、箱体の左右方向に利用者による摺動を可能とした摺動部材にピン抜取り阻止手段を形成することにより、手動で摺動部材の位置を切り替えて、挿抜可能にするピン部材を左右のいずれか一方から選択することができる。また、摺動部材を左方向又は右方向に位置決め係止する係止部を備えることにより、第1及び第2ピン部材の双方の同時抜取りを阻止して、箱体の脱落を防止することができる。
【0030】
また、箱体に対して回動自在に支持され、利用者による回動を可能とした回動部材の外周にピン抜取り阻止手段を形成することにより、手動で回動部材の回動位置を切り替えて、挿抜可能にするピン部材を左右のいずれか一方から選択することができる。更に、回動部材を所定の回動位置に位置決めする軸係止部を備えたことにより、第1及び第2ピン部材の双方の同時抜取りを阻止して、箱体の脱落を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係るスライドファスナー用開離嵌挿具の代表的な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は、スライドファスナー10の下端部に形成されている開離嵌挿具22の外観図であり、スライドファスナー10を閉じた状態を示す外観図である。図2は、図1に示したスライドファスナー10の右側面図であり、スライダー20を箱体50と接触する位置まで下げた状態を示す図である。図3は、図1に示した状態においてスライダー20を箱体50と接触する位置まで下げ、左ファスナーストリンガー16を上方に引き上げて箱体50から第1ピン部材30を抜き取った状態を示す作用説明図である。また、図4は、図1に示した状態においてスライダー20を箱体50と接触する位置まで下げ、右ファスナーストリンガー17を上方に引き上げて、箱体50から第2ピン部材40を抜き取った状態を示す作用説明図である。
【0033】
図1及び図2に示すように、スライドファスナー10は、縫着した左右の生地同士の開閉を可能にする左ファスナーストリンガー16及び右ファスナーストリンガー17と、左ファスナーストリンガー16及び右ファスナーストリンガー17の対向する側縁部に所定の間隔で列設した多数の務歯12と、左ファスナーストリンガー16の下端に設けられた第1ピン部材30と、右ファスナーストリンガー17の下端に設けられた第2ピン部材40と、第1ピン部材30及び第2ピン部材40を挿入して左右のファスナーストリンガー16,17を下端部で連結する箱体50とを備えている。なお、図1においては、左右一対の務歯12同士を噛合・離脱させるスライダーの記載は省略してある。
【0034】
図3は、図1に示す状態からスライダー20を箱体50と接触する位置まで下げて務歯12同士を分離させるとともに、右ファスナーストリンガー17に対して左ファスナーストリンガー16を引き上げて、右ファスナーストリンガー17及びスライダー20から分離させた状態を示している。本発明によれば、箱体50は、第2ピン部材40とは直接固定されていないが、箱体50の内部に回動自在に設けられている回動部材60のピン抜取り阻止手段68が第2ピン部材40のロック爪41と係合することにより、第1ピン部材30を箱体50から抜き取っても、箱体50が第2ピン部材40から離脱しないように構成されている。このときの、第1ピン部材30、第2ピン部材40、箱体50、及び回動部材60の働きについては、図5〜図7を用いて後述する。
【0035】
第1ピン部材30下部の噛合軸線CL側には、鉤状のロック爪31が形成されている。また、第1ピン部材30のロック爪31の鉤部上方には、第1ピン部材30を箱体50に挿入していった際に、回動部材60の中立回動カム62(後段の図8にて説明する。)と係合して、回動部材60を中立位置まで回動させる中立位置回動用凸部34が形成されている。第1ピン部材30の噛合軸線CLの反対側には、箱体50及びスライダー20に対する挿抜を容易にする背面逃部35が形成されている。
【0036】
図4は、図1に示す状態からスライダー20を箱体50に接触する位置まで下げて、務歯12同士を離脱させるとともに、左ファスナーストリンガー16に対して右ファスナーストリンガー17を引き上げて、左ファスナーストリンガー16及びスライダー20から分離させた状態を示している。本発明によれば、箱体50は、第1ピン部材30とは直接固定されていないが、箱体50の内部に回動自在に設けられている回動部材60のピン抜取り阻止手段68が第1ピン部材30のロック爪31と係合することにより、第2ピン部材40を箱体50から抜き取った際であっても、箱体50が第1ピン部材30から離脱しないように構成されている。
【0037】
第1ピン部材30と同様に、第2ピン部材40下部の噛合軸線CL側には、鉤状のロック爪41が形成されている。また、第2ピン部材40のロック爪41の鉤部上方には、第2ピン部材40を箱体50に挿入する際に、回動部材60の中立回動カム62(後段の図8にて説明する。)と係合して回動部材60を中立位置まで回動させる中立位置回動用凸部44が形成されている。なお、第2ピン部材40における噛合軸線CLの反対側には、箱体50及びスライダー20に対する挿抜を容易にする背面逃部45が形成されている。
【0038】
次に、本発明に係る開離嵌挿具22のピン部材の離脱防止機構部の構造について、断面図を参照しながら説明する。図5は、図1及び図2に示したスライドファスナー10の噛合状態における第1ピン部材30及び第2ピン部材40の手前側を断面とするK−K矢視断面図(図2参照。)であり、第1ピン部材30及び第2ピン部材40の双方が箱体50に挿入されている状態を示している。
【0039】
図5は、回動部材60に形成されているロック爪嵌入部64が、第1ピン部材30のロック爪31の挿入部と、第2ピン部材40のロック爪41の嵌入部とを共用している実施例である。この実施例とは別に、回動部材に第1ピン部材のロック爪専用の嵌入部と、第2ピン部材のロック爪専用の嵌入部とを別々に設けた他の実施例については、図20〜図22を用いて後段にて説明する。
【0040】
図5に示すスライドファスナー10の第1ピン部材30及び第2ピン部材40は、箱体50の4面を形成する左壁51、右壁52、前壁53(図5には図示せず。図12参照。)、及び後壁54にて囲まれて箱体50の上部に開口した空間部57に、下方に向けて挿入されている。
【0041】
このうち、第1ピン部材30は、箱体50の左壁51と、前壁53と、後壁54と、回動部材60との間に形成されている左挿入溝に挿入されている。また、第2ピン部材40は、右壁52と、前壁53と、後壁54と、回動部材60との間に形成されている右挿入溝に挿入されている。したがって、箱体50は図5の左右方向(図5に示すLR方向。)及び図5の紙面の表裏方向に位置決めされている。
【0042】
また、箱体50の上下方向(図5に示すUD方向。)に対する位置決めは、第1ピン部材30のロック爪31及び第2ピン部材40のロック爪41を、回動部材60のピン抜取り阻止手段68と箱体内部底面55との間に挟み込むことによって位置決めしている。回動部材60は、箱体50に対して時計回り及び反時計回り(図5に示すRT方向。)の双方向に回動自在に軸支されているが、回動部材60の一部に形成されているロック爪嵌入部64の係合/解除面65の端部に、第1ピン部材30及び第2ピン部材40のロック爪31及びロック爪41の双方が均衡して係合しているために、図5に示す状態で、第1ピン部材30及び第2ピン部材40の双方を箱体50から抜き取ろうとしても、回動部材60は回動することができず、箱体50が第1ピン部材30及び第2ピン部材40から離脱しないように構成されている。
【0043】
なお、箱体内部底面55の噛合軸線CL付近に山形に突出する中央突出部56は、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方のみが箱体50に挿入されている状態(例えば、図3又は図4に示す状態。)において、箱体50が、挿入されているピン部材に対して、大きく傾くことを防止するための突出部である。なお、第1及び第2の各ピン部材30,40の噛合軸線CLを挟んだ反対側の側面には、箱体50及びスライダー20に対する挿抜を容易にするための凹面状の背面逃部35が形成されている。
【0044】
この種の開離嵌挿具にあっては、ピン部材を箱体及びスライダーに挿入するとき、あるいは箱体及びスライダーから抜脱するとき、ピン部材を前記噛合軸線CLに平行に操作することは難しく、斜め上方或いは斜め下方へと操作することが多い。このとき、箱体及びスライダーとピン部材とが互いに干渉し合うため、操作がスムースにいかない。本実施形態によれば、前述のように凹面状の背面逃部35を設けているので、第1ピン部材30又は第2ピン部材40を箱体及びスライダーに対して傾けやすくなり、第1ピン部材30又は第2ピン部材40の挿抜操作が容易に且つ円滑に行えるようになる。
【0045】
次に、図5に示す状態からスライダー20を箱体50に接触する位置まで下げ、第1ピン部材30を箱体50から抜き取る過程につき図6及び図7を用いて説明する。図6は、左ファスナーストリンガー16を上方に引き上げることにより、箱体50から第1ピン部材30をL1だけ引き上げた状態を示す図である。図7は、図6に示した状態から更に左ファスナーストリンガー16を上方に引き上げて、箱体50から第1ピン部材30をL2だけ引き上げた状態を示す図である。
【0046】
図6に示すように、第1ピン部材30を箱体50から引き上げる操作を行うと、第1ピン部材30下部の噛合軸線CL側に形成されているロック爪31が、回動部材60に形成されているロック爪嵌入部64の係合/解除面65に係合して、回動部材60を時計回りに回動させる。
【0047】
例えば、第1ピン部材30をL1だけ引き上げた状態では、ロック爪嵌入部64の開口方向は平均角度θL1(図6に示す例では、約45°。)時計回りに回動することになる。他方、第2ピン部材40下部の噛合軸線CL側に形成されているロック爪41は、ロック爪嵌入部64から外れて回動部材60のピン抜取り阻止手段68に係合しているために、箱体50が第2ピン部材40から離脱することはない。
【0048】
図7に示すように、更に第1ピン部材30を引き上げると、第1ピン部材30のロック爪31は、回動部材60に形成されているロック爪嵌入部64の係合/解除面65から離れる。これにより、第1ピン部材30を箱体50及びスライダー20から完全に抜き取って、図3に示した状態にすることができる。
【0049】
例えば、図7に示すように、第1ピン部材30をL2だけ引き上げると、回動部材60におけるロック爪嵌入部64の開口方向は平均角度θL2(図7に示す例では、約135°。)回動した状態で停止することになる。この状態においても、第2ピン部材40のロック爪41は、回動部材60のピン抜取り阻止手段68に係合しているために、第2ピン部材40を箱体50から抜き取ることは不可能であるので、箱体50が第2ピン部材40から離脱することはない。
【0050】
次に、第1ピン部材30を完全に取り外した状態から、第1ピン部材30をスライダー20及び箱体50に挿入させて行くと、第1ピン部材30下部のロック爪31が、回動部材60に形成されているロック爪嵌入部64の係合/解除面65に係合して、図7に示した状態となる。更に第1ピン部材30を下げて行くと、ロック爪31が係合/解除面65を押して、回動部材60を反時計回りに回動させながら第1ピン部材30を下降させてゆくことができる。更に、第1ピン部材30を箱体50に押し込む操作を続けると、図6に示した状態に遷移して、第1ピン部材30の先端部が箱体50の内部底面55に当接させる位置まで第1ピン部材30を挿入することができる。
【0051】
なお、図6に示した状態では、回動部材60におけるロック爪嵌入部64の開口方向は平均角度θL1だけ回動した状態で停止しており、このままでは、第2ピン部材40のロック爪41は、回動部材60のピン抜取り阻止手段68に係合したままとなっている。したがって、このままの状態では、第2ピン部材40を箱体50から抜き取ることができない。
【0052】
そこで、回動部材60を更に反時計回りに角度θL1だけ回動させて、回動部材60を中立位置まで戻す必要がある。この、回動部材60を中立位置に戻す機構については、図16を用いて後段にて説明する。ここでは、先ず回動部材60の全体形状について図8及び図9を用いて説明し、第1ピン部材30及び第2ピン部材40の外観形状について図10及び図11を用いて説明する。
【0053】
図8は、回動部材60の形状を、側面図と断面図とを用いて説明する図である。また、図9は、回動部材60の斜視図である。
図8に示すA−A矢視図及びE−E矢視図は、回動部材60を回動軸RC回りに回動自在に支持するための軸部66の断面図である。図8に示すように、軸部66は回動部材60の両端に形成されており、この軸部66を、箱体50の表裏に形成されている前壁53(図12参照。)及び後壁54(図12参照。)内面の軸受58(図12参照。)に挿入させることにより、回動部材60が箱体50に対して回動軸RC回りに回動自在に支持されることになる。
【0054】
なお、軸部66のピン抜取り阻止手段68には、平面状の軸受係止部67が2面形成されている。この軸受係止部67は、箱体50における軸受58の内周面に形成されている軸係止部59と係合することにより、回動部材60の回動を制限するためのものである。図8に示す実施例では、2つの軸受係止部67が互いに直交しており、中立軸Z−Zに対して線対称に形成されている。なお、軸受係止部67の働きについては、図18及び図19を用いて後述する。
【0055】
図8に示すB−B矢視図及びD−D矢視図は、第1ピン部材30のロック爪31又は第2ピン部材40のロック爪41を挿入させるための、ロック爪嵌入部64の形状を示す断面図である。図8に示すように、ロック爪嵌入部64は、中立軸Z−Zに対して線対称に形成されている。ロック爪嵌入部64には、ロック爪31及びロック爪41と係合することにより、第1ピン部材30及び第2ピン部材40が行う直動の運動を、回動部材60の回動運動に変換するための係合/解除面65が形成されている(動きに関しては図5〜7を参照。)。
【0056】
図8に示すC−C矢視図は、第1ピン部材30の中立位置回動用凸部34、又は第2ピン部材40の中立位置回動用凸部44と係合する中立回動カム62の形状を示す断面図である。図8に示すように、中立回動カム62は、中立軸Z−Zに対して線対称に形成されている。この中立回動カム62の働きについては、図16及び図17を用いて後段にて説明する。
【0057】
なお、切断面C−Cの位置は、回動部材60の回動軸RC(両方の軸部66の中心を通る回動軸。)の中間点であり、一対のロック爪嵌入部64は、この回動部材60の回動軸RCの中間点に対して対称に形成されている。したがって、ロック爪嵌入部64に、ロック爪31又はロック爪41を挿入して回動部材60を回動させる際には、双方の軸部66に均等な力が加わるので、回動部材60の回動をスムーズに行うことができる。
【0058】
また、中立回動カム62は、回動部材60の回動軸RCの中間点に形成されているので、中立位置回動用凸部34又は中立位置回動用凸部44と係合して回動部材60を中立位置まで回動させる際にも、双方の軸部66には均等な力が加わるので、回動部材60をスムーズに中立位置まで回動させることができる。
【0059】
図10は、左ファスナーストリンガー16の下端に取り付けられる第1ピン部材30の詳細形状を示す斜視図であり、図11は、右ファスナーストリンガー17の下端に取り付けられる第2ピン部材40の詳細形状を示す斜視図である。
【0060】
図10に示すように、第1ピン部材30の下部には、同一形状のロック爪31が二つ並列に形成されている。この二つのロック爪31は、図8に示した二つのロック爪嵌入部64に、それぞれ挿入させるためのものである。二箇所に同一形状のロック爪31及びロック爪嵌入部64が形成されているのは、回動部材60両端の二ヶ所の軸部66に均等な力が加わるようにして、回動部材60の回動をスムーズにするためである。
【0061】
また、第1ピン部材30下部の二箇所に形成されているロック爪31の中間部の上方には、第1ピン部材30を箱体50に挿入していく最後の段階で、回動部材60の中立回動カム62(図8参照。)と係合することにより、回動部材60を中立位置まで回動させるための中立位置回動用凸部34が形成されている。
【0062】
同様に、図11に示すように、第2ピン部材40の下部には、同一形状のロック爪41が二つ並列に形成されている。この二つのロック爪41は、図8に示した二つのロック爪嵌入部64に、それぞれ挿入させるためのものである。また、第2ピン部材40下部の二箇所に形成されているロック爪41の中間部の上方には、第2ピン部材40を箱体50に挿入していった最後の段階で、回動部材60の中立回動カム62(図8参照。)と係合することにより、回動部材60を中立位置まで回動させるための中立位置回動用凸部44が形成されている。
【0063】
次に、箱体50の形状について、図12を用いて説明する。図12は、組立式の箱体50を分解した状態を示す斜視図である。
【0064】
図12に示すように、箱体50は、前壁53、左壁51、右壁52、箱体内部底面55、及び中央突出部56が形成されている表箱体50Fと、後壁54、左壁51、右壁52、箱体内部底面55、及び中央突出部56が形成されている裏箱体50Rとから構成されている。
【0065】
表箱体50Fの前壁53、及び裏箱体50Rの中央部には、回動部材60の軸部66を軸支するための円筒の枢支面を有する軸受58が形成されている。この軸受58の枢支面の上部には、図8に示した軸受係止部67と係合することにより回動部材60の回動動作を制限するための平面状の軸係止部59が形成されている。この軸係止部59は、回動部材60の軸部66の外径よりも外側に形成されているので、軸受58に回動部材60の軸部66を挿入することが可能であり、軸受58は軸部66を回動自在に支持することができる。
【0066】
表箱体50F及び裏箱体50Rの接合面70には、ドエル71が突出して形成されている。このドエル71を、同じく接合面70に開設されているドエル穴72に挿入させることにより、表箱体50Fと裏箱体50Rとの位置決めと接合とを維持することができる。表箱体50F及び裏箱体50Rを樹脂で成形した場合には、表箱体50Fと裏箱体50Rとを接合するにあたり、接着や、超音波溶着を用いることができる。また、表箱体50F及び裏箱体50Rを金属で成形した場合には、表箱体50Fと裏箱体50Rとを、接着したり、ロウ付けすることにより接合することができる。
【0067】
図13に、箱体の他の実施例を示す。
図13に示す箱体150は、図12に示した表箱体50Fと裏箱体50Rとの二つの部品から構成されるものとは異なり、一体型で形成した箱体である。図12に示した箱体50では、回動部材60の軸部66を軸受58に挿入した後に、表箱体50Fと裏箱体50Rとを接合することによって、軸受58が軸部66を軸支することができるが、図13に示す箱体150のように、前壁53(図示せず。)と後壁54とが一体に成形されていると、回動部材60の軸部66を軸受58に挿入するための工夫が必要となる。
【0068】
図13に示す実施例では、前壁53(図14参照。)及び後壁54の軸受58の上方の部分に、軸部66の挿入を容易にするために、前壁53及び後壁54の厚さを薄くした軸受導入部157が形成されている。更に、当該軸受導入部157に沿って軸部66を下方に押し付けることにより、前壁53及び後壁54を外側に広げて軸部66を軸受58に挿入させるために、導入傾斜面159が形成されている。
【0069】
軸部66が導入傾斜面159を乗り越えて軸受58が形成されている凹部に挿入し終えた場合には、前壁53及び後壁54が広げられた状態から元の位置に戻り、図14に示すように、軸部66が軸受58が形成されている凹部に挿入された状態に維持される。
【0070】
図14は、回動部材60の両端に形成されている軸部66が、箱体150の2箇所に形成されている軸受58に挿入された状態を示す箱体150の断面斜視図である。
図14に示すように、前壁53及び後壁54の軸受58の上方には軸受導入部157が形成され、その下方には導入傾斜面159が形成されている。図14に示すように、一旦軸部66が軸受58が形成されている凹部に挿入されると、前壁53及び後壁54が広げられた状態から元の位置に戻り、軸受58が形成されている凹部に軸部66が挿入された状態が維持される。したがって、回動部材60が箱体150に対して回動自在に軸支される。
【0071】
次に、図8にて示した回動部材60の各部位と、図10に示した第1ピン部材30の各部位と、図11に示した第2ピン部材40の各部位との機能について、図15を用いて概説する。
【0072】
図15は、回動部材60の軸受機構及び回動防止機構部、箱体50及びピン部材の離脱防止機構部、及び回動部材60の中立回動機構部が形成されている場所を説明する開離嵌挿具22の説明図である。
【0073】
図15では、箱体50を、軸受機構並びに回動防止機構部50A,50E、ピン部材の離脱防止機構部50B,50D、及び中立回動機構部50Cに分けて切断した状態を示している。第1ピン部材30については、ピン部材の離脱防止機構部30B,30D、及び中立回動機構部30Cに分けて切断した状態を示している。ピン部材の離脱防止機構部30B,30Dの作用については、図5〜図7に示した通りである。
【0074】
なお、中立回動機構部50Cの作用については、以降の図16、及び図17を用いて説明する。また、軸受及び回動防止機構部50A,50Eについては、図18及び図19を用いて説明する。
【0075】
まず、図6に示した状態からピン部材30を挿入する際の、回動部材60を中立位置に戻すための、中立回動機構部50Cの機構について図16を用いて説明する。
図16は、図2に示すスライドファスナー10のL−L矢視図である。図6に示すように、第1ピン部材30を箱体50に挿入していった際に、第1ピン部材30の下端と箱体内部底面55との間の寸法がL1以下になると、ロック爪31がロック爪嵌入部64から離間してしまう。したがって、回動部材60におけるロック爪嵌入部64の平均開口方向の角度を、中立位置から角度θL1(図16に示す例では、約45°。)以下にすることができない。
【0076】
そこで、図16に示すように、回動部材60に中立回動カム62を形成するとともに、第1ピン部材30を更に下げることによりロック爪31がロック爪嵌入部64から離間した際に、中立回動カム62と当接させて回動部材60を中立位置まで回動させるための中立位置回動用凸部34を、第1ピン部材30の噛合軸線CL側に下向きに形成している。
【0077】
これにより、図16に示す状態から、更に第1ピン部材30を下げて行くと、中立位置回動用凸部34が中立回動カム62に当接して、回動部材60を反時計回りに回動させることができる。第1ピン部材30を更に下げていった後の状態について、図17を用いて説明する。
【0078】
図17は、スライドファスナー10の第1ピン部材30及び第2ピン部材40を箱体50の奥まで挿入した状態を示す図であり、図2のL−L矢視図である。図16に示す状態から、第1ピン部材30を箱体50に完全に挿入すると、図17に示すように、中立位置回動用凸部34及び中立位置回動用凸部44が中立回動カム62と当接するようになるので、回動部材60は、噛合軸線CLに対して線対称の位置(中立位置)で位置決めされることになる。
【0079】
図17に示したように、回動部材60が中立位置にある場合には、ロック爪嵌入部64の係合/解除面65に、第1ピン部材30のロック爪31と、第2ピン部材40のロック爪41との双方が均衡して係合するので、箱体50は、第1ピン部材30及び第2ピン部材40から離脱しない。
【0080】
なお、図16及び図17では、第1ピン部材30を挿入して回動部材60を中立位置まで回動させる説明を行ったが、ロック爪31とロック爪41、中立位置回動用凸部34と中立位置回動用凸部44とは、噛合軸線CLに対して線対称の形状であり、回動部材60も噛合軸線CLに対して線対称の形状であるため、第2ピン部材40を挿入した場合であっても、回動部材60を中立位置まで回動させることができる。
【0081】
また、先の図5〜図7において、第1ピン部材30を挿抜させる際の説明にあるように、第1ピン部材30のロック爪31及び中立位置回動用凸部34は、第2ピン部材40のロック爪41及び中立位置回動用凸部44と噛合軸線CLに対して線対称の形状である。また、図5に示す状態では、回動部材60も噛合軸線CLに対して線対称の形状であるため、第2ピン部材40も同様に箱体50に対して挿抜することが可能である。
【0082】
次に、図18及び図19を用いて、軸受機構及び回動防止機構50A,50Eについて説明する。
図18は、スライドファスナー10の第1ピン部材30及び第2ピン部材40が箱体50の奥まで挿入されて、回動部材60が中立状態にある状況を示す図である。また、図18は、図2のM−M矢視図である。図19は、箱体50からスライドファスナー10の第1ピン部材30を抜き取り、第2ピン部材40のみが箱体50に挿入されている状態を示す図である。図19も図18と同様に、図2のM−M矢視図である。
【0083】
図18に示す状態では、第1ピン部材30のロック爪31及び第2ピン部材40のロック爪41の双方が、回動部材60に形成されているロック爪嵌入部64の係合/解除面65に係合しているために、箱体50から第1ピン部材30及び第2ピン部材40の双方を同時に取り外すことはできない。しかし、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のうちのいずれか一方を引き上げることで、ロック爪嵌入部64にロック爪31又はロック爪41を挿入させるとともに回動部材60を回動させて、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取ることができる。
【0084】
図5〜図7に示したように、第1ピン部材30を抜き取る際には、回動部材60が時計回りに回動する。また、第2ピン部材40を抜き取る際には、回動部材60は反時計回りに回動する。回動部材60が中立状態から角度θL3(図19参照。)回動する間では、回動部材60における円筒形状の軸部66が軸係止部59に接触しているので、回動部材60は軸受58の内部を自由に回動することができ、第1ピン部材30又は第2ピン部材40を抜き取ることが可能となる。その後の、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った場合における軸受58と軸部66との関係については、以下の図19を用いて説明する。
【0085】
図19に示す状態では、第1ピン部材30が完全に抜き取られており、箱体50が第2ピン部材40からぶら下がった状態になっている。この状態では、第2ピン部材40と箱体50とを引き離す方向に力が加わっている可能性が高い。
【0086】
図19に示す実施例のように、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った際においては、回動部材60が角度θL3以上回動したり、角度θL3以下に戻ってしまうことにより、第1ピン部材30のロック爪31をロック爪嵌入部64に挿入することができなくなってしまったり、第2ピン部材40が箱体50から外れてしまう不具合を未然に防止するために、軸受58の一部に形成されている軸係止部59と軸受係止部67とを係合させて、回動部材60の回動を制限している。
【0087】
これにより、第2ピン部材40と箱体50とを引き離す方向に力が加わった場合であっても、第2ピン部材40のロック爪41を回動部材60のピン抜取り阻止手段68に係合させ続けることができる。そして、第2ピン部材40から箱体50が離脱することを防止する。また、回動部材60のロック爪嵌入部64を、ロック爪31を挿入しやすい位置に保持しておくことができる。
【0088】
なお、図18及び図19に示す実施例では、軸受係止部67は、ロック爪嵌入部64の平均開口方向(図19に示す。角度θL3。)に対してそれぞれ45°の位相角を有する位置に形成されているが、30°〜60°の位相角を有する位置に形成することができる。
【0089】
図19に示す状態から、第1ピン部材30をスライダー20及び箱体50に挿入させると、第1ピン部材30のロック爪31がロック爪嵌入部64に嵌入して、ロック爪嵌入部64を下方に押しながら、反時計回りに回動させる力が働く。回動部材60を下方に押しながら反時計回りに回動させると、軸部66に形成されている軸受係止部67が軸係止部59から離れ、軸部66が軸受58の下方に接触するようになるので、回動部材60は回動自在に軸支されて、中立位置に向けて回動することが可能となる。そして、箱体50に対して第1ピン部材30を挿入させることができる。
【0090】
なお、図19に示す状態では、第2ピン部材40が挿入されている状態について説明を行ったが、第1ピン部材30及び第2ピン部材40の先端部形状、箱体50の形状、並びに回動部材60の形状は、噛合軸線CLに対して線対称の形状であるため、第1ピン部材30のみが箱体50に挿入されている状態においても、上記の場合と同様に、軸係止部59と軸受係止部67とが係合することにより、回動部材60の回動を制限することができる。
【実施例2】
【0091】
次に、本発明に係る開離嵌挿具の他の実施例について、図20〜図22を用いて説明する。図20〜図22は、回動部材260に、第1ピン部材230におけるロック爪231専用のロック爪嵌入部264Lと、第2ピン部材240におけるロック爪241専用のロック爪嵌入部264Rとを、独立して別々に設けた実施例を説明する図である。図20は、前述の図5と同様に、第1ピン部材230及び第2ピン部材240の手前側を断面とするスライドファスナー210の断面図であり、箱体250に第1ピン部材230及び第2ピン部材240の双方を嵌入して、回動部材260が中立位置にて停止している状態を示す図である。
【0092】
図20に示すスライドファスナー210の第1ピン部材230及び第2ピン部材240は、箱体250の4面を形成する左壁251、右壁252、前壁(図20には図示せず。)、及び後壁254で囲まれて箱体250の上部に開口している空間部257に嵌入されている。
【0093】
第1ピン部材230は、箱体250の左壁251と、前壁と、後壁254と、回動部材260との間に形成されている左嵌入溝に嵌入されている。また、第2ピン部材240は、右壁252と、前壁と、後壁254と、回動部材260との間に形成されている右嵌入溝に嵌入されているので、箱体250は図20の左右方向(図20に示すLR方向。)及び、図20の紙面の表裏方向に位置決めされている。
【0094】
また、箱体250の上下方向(図20に示すUD方向。)に対する位置決めは、第1ピン部材230のロック爪231、及び第2ピン部材240のロック爪241を、回動部材260と箱体内部底面255との間に挟み込むことによって位置決めしている。箱体250は、第1ピン部材230、第2ピン部材240、左ファスナーストリンガー216及び右ファスナーストリンガー217のいずれにも固定されていないが、第1ピン部材230又は第2ピン部材240から外れることはない。
【0095】
回動部材260は、箱体250に対して時計回り及び反時計回り(図20に示すRT方向。)の双方向に回動自在に軸支されている。回動部材260の一部に形成されているロック爪嵌入部264Lの係合/解除面265Lには、第1ピン部材230のロック爪231が係合し、ロック爪嵌入部264Rの係合/解除面265Rには、第2ピン部材240のロック爪241が係合する。そのため、図20に示す状態では、第1ピン部材230及び第2ピン部材240の双方を箱体250から抜き取ろうとしても、回動部材60は回動することができず、箱体250から、第1ピン部材230及び第2ピン部材240の双方が離脱しないように構成されている。
【0096】
次に、第1ピン部材230を箱体250から抜き取る過程について図21及び図22を用いて説明する。
図21は、図20に示す状態から第1ピン部材230を引き上げることにより、回動部材260が中立位置から45°時計回りに回動した状態を示す図である。図22は、図21に示した状態から更に第1ピン部材230を上方に引き上げて、回動部材260が中立位置から90°時計回りに回動した状態を示す図である。
【0097】
図21に示すように、第1ピン部材230を箱体250から引き上げる操作を行うと、第1ピン部材230下部の噛合軸線CL側に形成されているロック爪231が、回動部材260に形成されているロック爪嵌入部264Lに嵌入して、回動部材260を時計回りに回動させる。この回動部材260が回動動作を行うことにより、第1ピン部材230を上方に引き上げることができる。
【0098】
他方、図21に示す状態では、第2ピン部材240下部の噛合軸線CL側に形成されているロック爪241は、ロック爪嵌入部264Rから外れて回動部材260のピン抜取り阻止手段268に係合しているために、第2ピン部材240を箱体250から抜き取ることは不可能である。
【0099】
図22に示すように、更に第1ピン部材230を引き上げると、第1ピン部材230のロック爪231は、回動部材260に形成されているロック爪嵌入部264Lから外れるので、第1ピン部材230を箱体250及びスライダー20から完全に抜き取ることができる。この状態においても、第2ピン部材240のロック爪241は、回動部材260のピン抜取り阻止手段268に係合しているために、第2ピン部材240を箱体250から抜き取ることは不可能である。したがって、箱体250が第2ピン部材240から離脱することはない。
【0100】
次に、第1ピン部材230を完全に取り外した状態から、第1ピン部材230をスライダー20及び箱体250に挿入させてゆくと、図22に示すように、第1ピン部材230下部のロック爪231が、回動部材260に形成されているロック爪嵌入部264Lに嵌入して、回動部材260を反時計回りに回動させながら第1ピン部材230を下降させることができる。
【0101】
更に、第1ピン部材230を箱体250に押し込むと、更に回動部材260が反時計回りに回動して、図21、図20に示した状態へと遷移し、第1ピン部材230の先端部が箱体250の箱体内部底面255に当接させる位置まで挿入することができる。なお、図20に示した状態では、既に回動部材260は中立位置まで戻っているので、図16及び図17に示したような中立回動カム62や中立位置回動用凸部34は不要となる。
【実施例3】
【0102】
次に、回動部材に形成した軸受係止部、及び箱体に形成した軸係止部の他の実施例を図23〜図28に示す。
図23は、回動部材360に形成した軸受係止部367Nを、箱体350に形成した軸係止部359に向けて付勢する付勢手段380を備えた開離嵌挿具322の実施例を示す斜視図である。同図に示す開離嵌挿具322の箱体350は、説明の都合上破線で示してある。また、左ファスナーストリンガー及び右ファスナーストリンガーのファスナーテープの記載は省略し、第1ピン部材30及び第2ピン部材40のみを記載してある。
【0103】
図24は、図23に示した開離嵌挿具322における箱体350の中央部を、回動部材360の回動軸線に対して直角な断面で切断した状態を示す斜視図であり、箱体350の軸受358(図25参照。)に回動部材360を挿入した状態を示す図である。
【0104】
図25は、図24に示した箱体350から、回動部材360を取り除いて、軸受358、軸係止部359、及び付勢手段格納部382を見やすく表した図である。また、図26は、図24に示した箱体350を更に回動部材360の回動軸線と平行に切断し、付勢手段格納部382に付勢手段380を嵌装した状態を示す図である。
【0105】
図23に示す状態は、箱体350の空間部に、第1ピン部材30及び第2ピン部材40の双方を挿入した状態であり、回動部材360が中立位置に存在している状態である。図23に示す実施例では、回動部材360が中立位置に存在する場合において、その中立位置を保持するために、回動部材360の回動動作を妨げる軸受係止部367Nを、軸部366の枢支面の一部に形成してある(後段の図27参照。)。
【0106】
また、図19に示した状態と同様に、箱体350から第1ピン部材30又は第2ピン部材40を抜き取って、いずれか一方のピン部材のみが箱体350に挿入されている状態においても、回動部材360の回動動作を妨げるために、軸部366の枢支面の一部に軸受係止部367を形成してある(後段の図28にてその作用を説明する。)。
【0107】
図23〜図26に示すように、回動部材360の軸部366は、箱体350の前壁及び後壁に形成された軸受358に軸支されている。また、回動部材360を上方に向けて付勢する板状の付勢手段380は、箱体350の付勢手段格納部382に格納されている。付勢手段格納部382は、軸受358とは反対方向に凸のV字型をした溝であり、付勢手段380が回動部材360を上方に向けて付勢する際に、付勢手段380が撓み得るように形成してある。付勢手段380の素材として、ばね用の鋼材、銅合金、その他の材質のものを用いることができる。
【0108】
次に、回動部材360が中立位置に保持されている状態について、図27を用いて説明する。
図27は、箱体350の軸受358部分における、回動部材360及び付勢手段380の断面図であり、回動部材360の回動軸線と直交する面の断面図である。
図27に示すように、付勢手段格納部382に格納されている付勢手段380は、中立位置に存在する回動部材360の軸部366を、その軸芯に向けて付勢している。すると、軸部366の枢支面の一部に形成されている平面状の軸受係止部367Nが、軸受358の枢支面の一部に形成されている平面状の軸係止部359を押圧するので、軸受係止部367Nと軸係止部359とが係合する。すると、中立位置に存在する回動部材360の回動が制限されて、所定の力で中立位置に保持される。
【0109】
利用者が、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれかを抜き取る操作を行うと、平面状の軸受係止部367Nが、同じく平面状の軸係止部359から離間して、軸部366が軸係止部359と相対的に滑る運動を行う。このとき、回動部材360は、同図に示す下方に少し移動するので、軸部366が付勢手段380を下方に押し下げて、付勢手段380の中央部が下方に向けて撓むことになる。
【0110】
次に、箱体350から第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った状態について、図28を用いて説明する。なお、図28は、図27と同一の断面にて箱体350を切断した図である。
【0111】
図28に示すように、箱体350から第1ピン部材30を抜き取ると、回動部材360は中立状態からθL3の角度回動する。この状態においても、付勢手段380は回動部材360の軸部366を軸芯に向けて付勢している。すると、軸部366の枢支面の一部に形成されている平面状の軸受係止部367が、軸受358の枢支面の一部に形成されている平面状の軸係止部359を押圧するので、軸受係止部367と軸係止部359とが係合する。したがって、回動部材360の回動が制限されて、その位置に保持される。
【0112】
このように、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った状態では、回動部材360がθL3の角度以上回動したり、角度θL3以下に戻ってしまうことにより、第1ピン部材30のロック爪31をロック爪嵌入部64に嵌入することができなくなってしまったり、第2ピン部材40が箱体350から外れてしまう不具合を未然に防止することができる。また、回動部材360に形成されているロック爪嵌入部64(図24参照。)を、ロック爪31を嵌入しやすい位置に保持しておくことができる。
【0113】
図28に示した状態から、利用者が、抜き取ってあった第1ピン部材30を再び挿入する操作を行うと、平面状の軸受係止部367が同じく平面状の軸係止部359から離間して、軸部366が軸係止部359と相対的に滑る運動を行う。このときも回動部材360が同図に示す下方に下がるが、軸部366が付勢手段380を下方に押し下げることにより、付勢手段380の中央部が下方に向けて撓むことになる。
【0114】
このようにして、回動部材360が中立位置に存在する場合、又は第1ピン部材30若しくは第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った場合において、回動部材360の回動動作を妨げる働きをすることができる。
【実施例4】
【0115】
次に、回動部材に形成した軸受係止部、及び箱体に形成した軸係止部を備える開離嵌挿具の他の実施例を図29に示す。
図23〜図28に示した実施例では、回動部材360に形成した軸受係止部367Nを、箱体350に形成した軸係止部359に向けて付勢する付勢手段380として、箱体350とは別部品の付勢手段380を用いた実施例を示した。図29は、箱体450の一部に、付勢手段480を一体成形した開離嵌挿具422の実施例である。また、図29は、先に説明した図27と同様に、箱体450の軸受458部分における、回動部材360及び付勢手段480の断面図である。なお、回動部材360は、図27と同様に、中立位置に存在する状態を示している。
【0116】
図29に示すように、箱体450の軸受458は、回動部材360の軸部366を回動自在に軸支している。付勢手段480は、回動部材360に形成した軸受係止部367Nを、箱体450に形成した軸係止部459に向けて付勢している。
【0117】
また、図29に示すように、所定のばね定数を得るために、幅広の付勢手段480の両端を箱体450と一体に接続する構成とし、付勢手段480の上下には、付勢手段480を撓ませるための空隙482を形成してある。
【0118】
付勢手段480の働きにより、軸部366の枢支面の一部に形成されている平面状の軸受係止部367Nが、軸受458の枢支面の一部に形成されている平面状の軸係止部459を押圧するので、軸受係止部367Nと軸係止部459とが係合する。すると、中立位置に存在する回動部材360の回動が制限されて、所定の力で中立位置に保持される。
【0119】
利用者が、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれかを抜き取る操作を行うと、平面状の軸受係止部367Nが、同じく平面状の軸係止部459から離間して、軸部366が軸係止部459と相対的に滑る運動を行う。このとき、回動部材360は、同図に示す下方に少し移動するので、軸部366が付勢手段480を下方に押し下げて、付勢手段480の中央部が下方に向けて撓むことになる。
【0120】
箱体450から第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った状態においては、回動部材360は中立状態から約135°回動する(図28に示した角度θL3。)。この状態においても、付勢手段480が回動部材360の軸部366を軸芯に向けて付勢している。すると、軸部366の枢支面の一部に形成されている平面状の軸受係止部367が、軸受458の枢支面の一部に形成されている平面状の軸係止部459を押圧するので、軸受係止部367と軸係止部459とが係合する。したがって、回動部材360の回動が制限されて、所定の力で保持される。
【0121】
このように、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った状態では、回動部材360が135°以上回動したり、135°以下に戻ってしまうことにより、第1ピン部材30のロック爪31をロック爪嵌入部64に嵌入することができなくなってしまったり、第2ピン部材40が箱体450から外れてしまう不具合を未然に防止することができる。また、回動部材360に形成されているロック爪嵌入部64(図24参照。)を、ロック爪31を嵌入しやすい位置に保持しておくことができる。
【0122】
第1ピン部材30を抜き取った状態から、利用者が第1ピン部材30を再び挿入する操作を行うと、平面状の軸受係止部367が、同じく平面状の軸係止部459から離間して、軸部366が軸係止部459と相対的に滑る運動を行う。このときも回動部材360が下方に下がるが、軸部366が付勢手段480を下方に押し下げることにより、付勢手段480の中央部が下方に向けて撓むことになる。
【0123】
このようにして、回動部材360が中立位置に存在する場合、又は第1ピン部材30若しくは第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った場合において、回動部材360の回動動作を妨げる働きをすることができる。
【実施例5】
【0124】
次に、回動部材に形成した軸受係止部、及び箱体に形成した軸係止部の他の実施例を図30及び図31に示す。
図30及び図31に示す実施例は、回動部材560を回動自在に軸支する軸部566と、回動部材560の回動動作を妨げる働きをする軸受係止部567,567Nをそれぞれ別の位置に形成した開離嵌挿具522の実施例である。
図30は、回動部材560単体の斜視図であり、軸部566と軸受係止部567,567Nをそれぞれ別の位置に形成した実施例を説明する図である。
【0125】
図30に示すように、回動部材560を回動自在に軸支する軸部566の外側には、回動部材560の回動動作を妨げる働きをする6角形状の軸受係止部567,567Nを形成してある。相対向する2箇所に形成されている軸受係止部567Nは、回動部材560が中立位置にある場合に、その回動動作を妨げる働きをせるための係止部である。また、相対向する4箇所に形成されている軸受係止部567は、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った際において、回動部材560の回動動作を妨げる働きをせるための係止部である。なお、ロック爪嵌入部、中立回動カム、及びピン抜取り阻止手段については、図9にて説明した回動部材60のものと同一であるため、その説明は省略してある。
【0126】
図31は、箱体550の軸受に回動部材560の軸部566を挿入して、回動部材560を回動自在に軸支した状態における、軸受係止部567,567N部分の断面図である。なお、回動部材560は、中立位置に存在する状態を示している。
【0127】
図31に示すように、箱体550において軸受係止部567,567Nを収納する部分には空隙582が形成されており、そこには軸受係止部567,567Nと係合する可動式の軸係止部559が備えられている。軸係止部559は、付勢手段580の働きにより、軸部566の軸芯に向けて付勢されている。付勢手段580には、ばね等の弾性体を用いることができる。
【0128】
付勢手段580の働きにより、平面状の軸係止部559が平面状の軸受係止部567Nを押圧するので、軸係止部559と軸受係止部567Nとが係合した状態を作り出すことができる。そうすると、中立位置に存在する回動部材560の回動が制限されて、中立位置に保持される。
【0129】
利用者が、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれかを抜き取る操作を行うと、平面状の軸受係止部567Nと、同じく平面状の軸係止部559とが離間して、回動部材560が回動運動を行う。このとき、付勢手段580が弾性変形することにより縮んで、双方の軸係止部559は軸受係止部567Nから遠ざかる方向に移動することになる。
【0130】
図31に示す実施例は、回動部材560が中立位置に存在する場合の説明図であるが、同様に、箱体550から第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った状態においても、回動部材560の回動が制限されて、所定の力で保持される。そして、回動部材560に形成されているロック爪嵌入部(図24参照。)を、ロック爪31を嵌入しやすい位置に保持しておくことができる。
【実施例6】
【0131】
回動部材に形成した軸受係止部、及び箱体に形成した軸係止部の他の実施例を図32に示す。
図32に示す実施例は、箱体650の一部に付勢手段680及び軸係止部659を一体成形した開離嵌挿具622の実施例であり、先に説明した図27と同様に、箱体650の軸受658部分における、回動部材660及び付勢手段680並びに軸係止部659の断面図である。なお、回動部材660は、中立位置、又は第1ピン部材30若しくは第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った位置に存在する状態を示している。
【0132】
図32に示すように、箱体650の軸受658は、回動部材660の軸部666を回動自在に軸支している。付勢手段680は、一体に形成されている軸係止部659を、回動部材660に形成した軸受係止部667に向けて付勢している。付勢手段680が所定のばね定数を得るために、幅広の付勢手段680の両端を箱体650と一体に接続する構成とし、付勢手段680の上下には、付勢手段680を撓ませるための空隙682を形成してある。
【0133】
図32に示す実施例では、軸係止部659を凸型の球形に形成して、軸受係止部667を球形の凹型に形成している。したがって、付勢手段680の付勢により軸係止部659と軸受係止部667とが係合するので、中立位置、又は第1ピン部材30若しくは第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取ったときに、回動部材660の回動を制限して、所定の力で保持することができる。
【0134】
利用者が、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれかを挿抜する操作を行うと、球形凹型の軸受係止部667が軸係止部659を押し上げる動作を行って、軸受係止部667と軸係止部659とによる係合が外れる。すると、軸係止部659が軸部666の方向に付勢されながら、相対的に滑る運動を行う。
【0135】
また、回動部材660が中立位置に存在する状態と同様に、回動部材660が第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った状態においても、回動部材660の回動を制限して、所定の力で保持することができる。
【実施例7】
【0136】
次に、回動部材に形成した軸受係止部、及び箱体に形成した軸係止部の他の実施例を図33及び図34に示す。
図33に示す実施例は、箱体750の前壁753及び後壁754に形成した軸受758の奥壁面に、軸係止部759を配置した開離嵌挿具722の実施例であり、回動部材760の回動軸線部分で箱体750を切断した断面図である。なお、図33に示す実施例では、回動部材760が中立位置に存在する状態を示している。
【0137】
図33に示すように、箱体750の軸受758は、回動部材760の軸部766を回動自在に軸支している。回動部材760における軸部766の端面には、軸受758の奥壁面から突出する方向に付勢された軸係止部759と係合するための軸受係止部767Nが開設されている。軸係止部759は、前壁753及び後壁754に内蔵されているばね等の付勢手段780により、回動部材760の方向に付勢されている。
【0138】
軸受係止部767Nは、半球形状の凹部、すり鉢形状の凹部、テーパー形状の凹部、その他の形状の凹部を用いることができる。また、相手方の軸係止部759及び付勢手段780に代えて、プランジャー等の部品を用いることも可能である。
【0139】
軸係止部759及び軸受係止部767Nは、回動部材760の回動軸線から所定の半径だけ離れた位置に配置されており、軸受係止部767Nに軸係止部759が係合することによって、回動部材760の回動を制限し、所定の位置に保持しておくことが可能となる。
【0140】
利用者が、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれかを挿抜する操作を行うと、回動部材760が中立位置から回動動作を開始する。すると、軸受係止部767Nが、軸係止部759を前壁753及び後壁754の内部方向に押しのける動作を行うので、軸受係止部767Nと軸係止部759とによる係合が外れる。すると、軸係止部759が回動部材760の端面方向に付勢されながら、軸係止部759と回動部材760とが相対的に滑る運動を行うので、回動自在となる。
【0141】
次に、軸受係止部767Nが開設されている位置と、その数量の実施例について、図34を用いて説明する。
図34に示すように、回動部材760の両側に形成されている軸部766の端面には、中立位置において回動部材760の回動を制限するための軸受係止部767Nと、第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った状態において、回動部材760の回動を制限する二つの軸受係止部767とが開設されている。
【0142】
図33に示す実施例では、回動部材760が中立位置に存在する場合において、付勢手段780の付勢により軸係止部759が軸受係止部767Nに係合して、回動部材760の回動動作を制限する状態について説明したが、回動部材760が第1ピン部材30又は第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った位置に存在する場合にも、軸係止部759が軸受係止部767と係合することにより、回動部材760の回動を制限することができる。
【実施例8】
【0143】
回動部材に形成した軸受係止部、及び箱体に形成した軸係止部の他の実施例を図35に示す。
図33及び図34に示した実施例では、箱体750の前壁753及び後壁754に形成した軸受758の奥壁面に軸係止部759を配置し、この軸係止部759を専用の付勢手段780を用いて回動部材760の端面に向けて付勢するように構成した。これに対し、図35に示す開離嵌挿具822の実施例では、独立した付勢手段780に代えて、箱体850の前壁853(付勢手段)及び後壁854(付勢手段)の弾性力を用いて、軸係止部859を回動部材760の端面に向けて付勢するように構成してある。なお、図35に示す回動部材760は、図34に示した回動部材760と同一の形状を採用することができる。
【0144】
図35に示すように、前壁853及び後壁854の双方が閉じる方向に、内側に向けて軸係止部859を付勢する際の弾性力を用いて、軸係止部859を回動部材760の軸受係止部767,767Nに向けて付勢する。これにより、軸係止部859と軸受係止部767,767Nとを係合させることができる。
【0145】
これにより、図33に示した場合と同様に、回動部材760が中立位置に存在する状態、又は第1ピン部材30若しくは第2ピン部材40のいずれか一方を抜き取った状態において、回動部材760の不必要な回動を制限して、所定の位置に保持しておくことが可能となる。
【実施例9】
【0146】
次に、第1ピン部材又は第2ピン部材のいずれかを手動により切り替えて挿抜可能とする実施例について、図36〜図38を用いて説明する。
図36は、摺動による手動切替式の開離嵌挿具1022の外観斜視図であり、図37及び図38は、図36に示す箱体1050の内部を表すXXXVII−XXXVII矢視断面図である。図37は、第1ピン部材1030が挿抜可能となるように切り替えられている状態を示す図であり、図38は、第2ピン部材1040が挿抜可能となるように切り替えられている状態を示す図である。
【0147】
図36及び図37に示すように、開離嵌挿具1022は、箱体1050に対して挿抜可能な第1ピン部材1030及び第2ピン部材1040と、第1ピン部材1030及び第2ピン部材1040を挿入する箱体1050と、箱体1050の前壁1053及び後壁1054の中央部に開設した平面視矩形形状の摺動口1058の内部を左右方向に摺動自在な摺動部材1090とを備えている。
【0148】
摺動部材1090の下面は、第1ピン部材1030及び第2ピン部材1040の双方の同時抜取りを阻止するピン抜取り阻止手段1068として機能する面である。摺動部材1090は、箱体1050の前壁1053を挿通して箱体1050の外部に突出しており、前壁1053から外部に突出した部分には、利用者が摺動部材1090を左右に摺動操作するための摺動操作部1091を形成してある。図36及び図37においては、左右一対の務歯と、当該務歯同士を噛合・離脱させるスライダーの記載は省略してある。
【0149】
なお、図36に示すように、摺動操作部1091が右側に移動している状態においては、摺動操作部1091の左側に、挿抜可能なピン部材が左側の第1ピン部材1030であることを利用者に通知するための挿抜表示1092が見えている。なお、図36には示していないが、摺動操作部1091が左側に移動している場合には、摺動操作部1091の右側に、挿抜可能なピン部材が右側の第2ピン部材1040であることを利用者に通知するための挿抜表示が見えるように構成する。
【0150】
図37に示す箱体1050における摺動口1058の摺動部には、摺動部材1090を左側又は右側に位置決めするための係止部1059が、摺動口1058の内部に向けて突出している。この係止部1059は、図37に示す上下方向に対して所定のバネ定数を得るために、上下方向に撓む付勢手段1080の中央部に形成してある。この付勢手段1080は、両端を箱体1050の後壁1054と一体に接続する構成とし、付勢手段1080の下方には、付勢手段1080を撓ませるための空隙1082を形成してある。
【0151】
この係止部1059の働きにより、摺動部材1090の自由な働きを制限して、摺動部材1090を左側又は右側に位置決めすることができる。これにより、左右のロック爪1031及びロック爪1041の双方が、同時に摺動部材1090の下面に形成されているピン抜取り阻止手段1068と係合してしまうことにより、第1ピン部材1030及び第2ピン部材1040の双方が挿抜不能となることを防止している。なお、摺動部材1090を左側から右側に摺動させる場合、又は右側から左側に摺動させる場合には、係止部1059が空隙1082の方向に逃げて、摺動部材1090の下面に形成されているピン抜取り阻止手段1068に接触しながら滑ることになる。
【0152】
図37に示すように、摺動部材1090が摺動口1058内部の右端に移動した状態においては、摺動部材1090の左下端が係止部1059の右根元部分に当接しているので、摺動部材1090は、摺動口1058の右側に位置決めされる。この状態では、摺動部材1090下面のピン抜取り阻止手段1068が、第2ピン部材1040のロック爪1041と係合するので、第2ピン部材1040が箱体1050から抜けないようになる。他方、第1ピン部材1030のロック爪1031は、摺動部材1090下面のピン抜取り阻止手段1068とは係合しないので、第1ピン部材1030は箱体1050に対して挿抜自在となっている。
【0153】
なお、図37には、後壁1054に開設されている摺動口1058と、付勢手段1080と空隙1082とを示してあり、対向して配されている前壁1053に開設された摺動口1058についての図面は省略してあるが、前壁1053にも同一の摺動口1058と、付勢手段1080と空隙1082とが形成されている。
【0154】
次に、第2ピン部材1040を挿抜可能な状態に切り替えた場合について、図38を用いて説明する。
図36及び図37に示した状態から、第1ピン部材1030を箱体1050に挿入することにより、第1ピン部材1030及び第2ピン部材1040の双方を箱体1050に挿入した状態にしてから、図36に示す摺動操作部1091を左側に摺動させる。すると、図38に示すように、今度は右側の第2ピン部材1040が挿抜可能な状態となる。
【0155】
図38に示すように、摺動部材1090が摺動口1058内部の左端に移動した状態においては、摺動部材1090の右下端が係止部1059の左根元部分に当接し、摺動部材1090は、摺動口1058の左側に位置決めされる。この状態では、摺動部材1090下面のピン抜取り阻止手段1068が、第1ピン部材1030のロック爪1031と係合するので、第1ピン部材1030が箱体1050から抜けないようになる。
【0156】
このように、利用者が摺動操作部1091を左右に移動させることによって、摺動部材1090が左側又は右側に位置決めされ、第2ピン部材1040又は第1ピン部材1030のいずれかを挿抜可能な状態にすることができる。
【0157】
なお、第1ピン部材1030及び第2ピン部材1040の双方の同時抜取りを阻止する係止部1059は、図37及び図38に示した実施例に限定するものではない。例えば、図39に示すように、鉤状のロック爪1231又はロック爪1241のいずれかと係合した際に、係合したロック爪が存在する方向に摺動部材1290を引き込むように形成した台形の凹形状から成るピン抜取り阻止手段1268を有する摺動部材1290を用いても、第1ピン部材1230及び第2ピン部材1240の双方の同時抜取りを防止することができる。なお、開離嵌挿具1222の摺動部材1290は、箱体1250の前壁(図示せず。)及び後壁1254の中央部に開設した摺動口1258の内部を、左右方向に摺動自在に構成されている。
【実施例10】
【0158】
次に、第1ピン部材又は第2ピン部材のいずれかを手動により切り替えて挿抜可能とする他の実施例について、図40及び図41を用いて説明する。
図40は、回動による手動切替式の開離嵌挿具1122における箱体1150の内部を表す断面図であり、図41は、箱体1150の前壁及び後壁1154の中央部にて回動自在に軸支される回動部材1160単体の外観斜視図である。
【0159】
図40に示すように、開離嵌挿具1122は、箱体1150に対して挿抜可能な第1ピン部材1130及び第2ピン部材1140と、第1ピン部材1130及び第2ピン部材1140を挿入する箱体1150と、箱体1150の前壁(図示せず。)と後壁1154の中央部に開設した軸受1158を挿通し回動自在に軸支される回動部材1160とを備えている。なお、図40においては、左右一対の務歯と、当該務歯同士を噛合・離脱させるスライダーの記載は省略してある。
【0160】
第1ピン部材1130及び第2ピン部材1140下部の噛合軸線側には、回動部材1160の外周面に形成されているピン抜取り阻止手段1168と係合することにより、当該第1ピン部材1130の挿抜を制限するロック爪1131、及び第2ピン部材1140の挿抜を制限するロック爪1141を形成してある。
【0161】
箱体1150の前壁及び後壁1154の中央部に開設されている軸受1158の枢支面には、回動部材1160に形成されている凹形状の軸受係止部1167と係合することにより、回動部材1160を所定の回動位置に位置決めしておくための軸係止部1159を突出させてある。
【0162】
この軸係止部1159は、軸受1158の放射方向に対して所定のバネ定数を得るために、軸受1158の放射方向に撓む付勢手段1180の中央部に形成してある。この付勢手段1180は、両端を箱体1150の後壁1154と一体に接続する構成とし、付勢手段1180の外周部分には、付勢手段1180を撓ませるための空隙1182を形成してある。
【0163】
他方、図41に示すように、回動部材1160の両端部には、当該回動部材1160を箱体1150の前壁及び後壁1154に形成されている軸受1158に挿通して回動自在に軸支するための軸部1166を形成してある。
【0164】
この両軸部1166の中間部は、外周面にピン抜取り阻止手段1168を形成した半円の断面形状を有する柱となっている。また、軸部1166の外周には、前壁及び後壁1154の軸受1158の枢支面に形成されている軸係止部1159と係合するための軸受係止部1167が、凹形状に2箇所形成されている。
【0165】
この軸係止部1159と軸受係止部1167とが係合することにより、回動部材1160のピン抜取り阻止手段1168が丁度左半分又は右半分に位置するように位置決めされる。これにより、ロック爪1131及びロック爪1141の双方が同時にピン抜取り阻止手段1168と係合してしまうことにより、第1ピン部材1130及び第2ピン部材1140の双方が挿抜不能となることを防止することができる。
【0166】
また、回動部材1160の一端面には、利用者が回動部材1160を回動させる際に指で摘むための回動操作部1191を、箱体1150の外部に突出させてある。また、回動部材1160の中央部にてピン抜取り阻止手段1168が形成されていないことにより、ピン部材下部に形成したロック爪が挿通自在となる側の回動部材1160の端面には、現在挿抜可能となっているピン部材が、第1ピン部材1130又は第2ピン部材1140のいずれであるかを利用者に通知するための挿抜表示1192を表示してある。
【0167】
図40に示すように、回動部材1160のピン抜取り阻止手段1168が右半分となるように位置決めされている場合には、ピン抜取り阻止手段1168はロック爪1141と係合しているために、第2ピン部材1140は箱体1150から抜き取ることができない。一方、回動部材1160の左側にはピン抜取り阻止手段1168が存在しないので、第1ピン部材1130のロック爪1131は、箱体1150に対して挿抜自在となっている。
【0168】
このように、利用者が回動操作部1191を摘んで所定の回動位置まで回動させることによって、ピン抜取り阻止手段1168が左半分又は右半分に位置決めされる。これにより、第1ピン部材1130又は第2ピン部材1140のいずれかを挿抜可能な状態に切り替えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明に係る開離嵌挿具を用いたスライドファスナーは、ジャンパー、ジャケット、その他の衣類に適用可能である他、リバーシブル・ウェア用のファスナーに好適である。また、既存のスライドファスナーに用いられている開離嵌挿具に代えて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】スライドファスナー下端部に形成されている開離嵌挿具の外観図である。
【図2】図1に示したスライドファスナーの右側面図であり、スライダーを箱体と接触する位置まで下げた状態を示す図である。
【図3】図1に示した状態から左ファスナーストリンガーを上方に引き上げて、箱体から第1ピン部材を抜き取った状態を示す図である。
【図4】図1に示した状態から右ファスナーストリンガーを上方に引き上げて、箱体から第2ピン部材を抜き取った状態を示す図である。
【図5】図1に示したスライドファスナーの噛合状態において、第1及び第2ピン部材の手前側を断面とする箱体の断面図である。
【図6】図5に示す位置から左ファスナーストリンガーを上方に引き上げて、箱体から第1ピン部材をL1だけ引き上げた状態を示す図である。
【図7】図6に示した状態から更に左ファスナーストリンガーを上方に引き上げて、箱体から第1ピン部材をL2だけ引き上げた状態を示す図である。
【図8】回動部材の形状を、側面図と断面図とを用いて説明する図である。
【図9】回動部材を斜め方向から見た斜視図である。
【図10】左ファスナーストリンガーの下端に設けられた第1ピン部材の詳細形状を示す斜視図である。
【図11】右ファスナーストリンガーの下端に設けられた第2ピン部材の詳細形状を示す斜視図である。
【図12】組立式の箱体を分解した状態を示す斜視図である。
【図13】箱体を一体成形した実施例を示す図である。
【図14】回動部材の軸部が、箱体の軸受を形成する凹部に嵌入された状態を示す図である。
【図15】回動部材の軸受、回動防止機構部、中立回動機構部等が形成されている場所を説明する開離嵌挿具の説明図である。
【図16】図2に示したスライドファスナーのL−L矢視図である。
【図17】スライドファスナーの第1及び第2ピン部材が箱体に嵌入されている状態を示す図であり、図2のL−L矢視図である。
【図18】スライドファスナーの第1及び第2ピン部材が嵌入されており回動部材が中立状態にある状況を示す、M−M矢視図である。
【図19】スライドファスナーの第1ピン部材が抜き取られ、第2ピン部材が箱体に嵌入されている状態を示す、M−M矢視図である。
【図20】回動部材に、二つのロック爪嵌入部を独立して設けた実施例であり、第1及び第2ピン部材の手前側を断面とするスライドファスナーの断面図である。
【図21】図20に示す位置から第1ピン部材を引き上げて、回動部材が中立位置から45°時計回りに回動した状態を示す図である。
【図22】図21に示した状態から更に第1ピン部材を上方に引き上げて、回動部材が中立位置から90°時計回りに回動した状態を示す図である。
【図23】回動部材に形成した軸受係止部を、箱体に形成した軸係止部に向けて付勢する付勢手段を備えた開離嵌挿具の他の実施例を示す斜視図である。
【図24】図23に示した開離嵌挿具における箱体の中心を、回動部材の回動軸線に対して直角な断面で切断した斜視図である。
【図25】図24に示した箱体から、回動部材を取り除いて、軸受、軸係止部、及び付勢手段格納部を見やすく表した図である。
【図26】図24に示した箱体を更に回動部材の回動軸線と平行に切断し、付勢手段格納部に付勢手段3を嵌入した状態を示す図である。
【図27】図23〜図26に示した開離嵌挿具の箱体の軸受部分における回動部材及び付勢手段の断面図であり、回動部材が中立位置に存在する状態を示す図である。
【図28】図23〜図26に示した開離嵌挿具の箱体の軸受部分における回動部材及び付勢手段の断面図であり、箱体から第1ピン部材を抜き取った状態を示す図である。
【図29】箱体の軸受部分における回動部材及び付勢手段の断面図であり、箱体の一部に付勢手段を一体成形した他の実施例を示す図である。
【図30】回動部材両側に形成した軸部の外側に、回動部材の回動動作を妨げる軸受係止部を形成した他の実施例を示す回動部材の斜視図である。
【図31】図30に示した回動部材を箱体に組み込んだ状態を示す図であり、箱体の軸係止部における回動部材及び付勢手段の断面図である。
【図32】箱体一部に付勢手段及び軸係止部を一体成形した他の実施例を示す図であり、箱体の軸受部分における回動部材及び付勢手段の断面図である。
【図33】箱体における軸受の奥壁面に軸係止部と付勢手段とを配設した他の実施例を示す図であり、回動部材の回動軸線を中心に箱体を切断した断面図である。
【図34】図33に示した回動部材における軸部の端面形成した軸係止部を説明する外観斜視図である。
【図35】箱体における軸受の奥壁面に軸係止部を配設した他の実施例を示す図であり、回動部材の回動軸線を中心に箱体を切断した断面図である。
【図36】摺動による手動切替式の開離嵌挿具の外観斜視図である。
【図37】第1ピン部材が挿抜可能となるように切り替えられている状態を示す、開離嵌挿具の断面図である。
【図38】第2ピン部材が挿抜可能となるように切り替えられている状態を示す、開離嵌挿具の断面図である。
【図39】摺動による手動切替式の開離嵌挿具の他の実施例を説明する箱体の内部の断面図である。
【図40】回動による手動切替式の開離嵌挿具の箱体の内部を表す断面図である。
【図41】箱体の前壁及び後壁の中央部にて回動自在に軸支される回動部材の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0171】
10,210 スライドファスナー
12 務歯
16,216 左ファスナーストリンガー
17,217 右ファスナーストリンガー
20 スライダー
22,322,422,522,622,722,822,1022,1122,1222 開離嵌挿具
30,230,1030,1130,1230 第1ピン部材
31,231、1031、1131,1231 ロック爪
34 中立位置回動用凸部
35 背面逃部
40,240,1040,1140,1240 第2ピン部材
41,241,1041,1141,1241 ロック爪
44 中立位置回動用凸部
45 背面逃部
50,150,250,350,450,550,650,750,850,1050,1150,1250 箱体
51,251 左壁
52,252 右壁
53,753,853,1053 前壁
54,254,754,854,1054,1154,1254 後壁
55,255 箱体内部底面
56 中央突出部
57,257 空間部
58,358,458,658,758,1158 軸受
59,359,459,559,659,759,859 軸係止部
60,260,360,560,660,760,1160 回動部材
62 中立回動カム
64,264L,264R ロック爪嵌入部
65,265L,265R 係合/解除面
66,366,566,666,766,1160 軸部
67,367,367N,567,567N,667,767,767N,1167 軸受係止部
68,268,1068,1168,1268 ピン抜取り阻止手段
70 接合面
71 ドエル
72 ドエル穴
150 箱体
157 軸受導入部
159 導入傾斜面
380,480,580,680,780,1080,1180 付勢手段
382 付勢手段格納部
482,682,1082,1182 空隙
1058 摺動口
1059 係止部
1159 軸係止部
1090 摺動部材
1091 摺動操作部
1092,1192 挿抜表示
1191 回動操作部
RC 回動軸線
CL 噛合軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側縁に相対向して務歯(12)列が固着された左右一対のファスナーストリンガーにおける前記務歯(12)列の一端部に相対向して固着された第1ピン部材(30,230,1030,1130,1230)及び第2ピン部材(40,240,1040,1140,1240)と、前記ファスナーストリンガーとは別体に形成され、左壁(51,251)、右壁(52,252)、前壁(53,753,853,1053)及び後壁(54,754,854,1054,1154,1254)により囲まれた空間部(57,257)を有し、前記第1及び第2ピン部材(30,230,1030,1130,1230;40,240,1040,1140,1240)の挿抜が可能な箱体(50,150,250,350,450,550,650,750,850,1050,1150,1250)とを備えたスライドファスナー用の開離嵌挿具であって、
前記第1ピン部材(30,230,1030,1130,1230)及び前記第2ピン部材(40,240,1040,1140,1240)に、それぞれロック爪(31,231,1031,1131,1231;41,241,1041,1141,1241)を有し、
前記空間部(57,257)の中央には、ロック爪(31,231,1031,1131,1231;41,241,1041,1141,1241)と係合することにより、前記第1及び第2ピン部材(30,230,1030,1130,1230;40,240,1040,1140,1240)の双方の同時抜取りを阻止する可動式のピン抜取り阻止手段(68,268,1068,1168,1268)が配されてなることを特徴とするスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項2】
前記ピン抜取り阻止手段(68,268)は、前記第1ピン部材(30)及び第2ピン部材(40)の挿抜操作により回動可能な回動部材(60,260,360,560,660,760)の周面に形成され、
その回動部材(60,260,360,560,660,760)には、前記第1及び第2ピン部材(30,40)が前記空間部(57)に挿入された状態にあるとき、前記第1及び第2ピン部材(30,40)の前記ロック爪(31,231,1031,1131,1231;41,241,1041,1141,1241)の双方が係合して前記回動部材(60,260,360,560,660,760)の回動を不能とし、前記第1及び第2ピン部材(30,40)のいずれか単独による抜取り操作時は、その抜取方向の回動を許容して、同ピン部材のみの係合を解除する係合/解除面(65)を有してなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項3】
前記回動部材(60,360,560,660,760)が、前記第1及び第2ピン部材(30,40)のいずれかの挿入操作の後段において、前記回動部材(60)を中立位置まで回動させる中立回動カム(62)を有し、
前記第1及び第2ピン部材(30,40)の前記ロック爪(31,41)の上方に、前記中立回動カム(62)と係合する中立位置回動用凸部(34)を有してなる、
ことを特徴とする請求項2に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項4】
前記回動部材(60)は軸部(66)を有し、当該軸部(66)の枢支面の一部に回動部材(60)の回動動作を妨げる軸受係止部(67)が形成され、
前記箱体(50)における前記前壁(53)及び前記後壁(54)には、前記軸部(66)を枢支する軸受(58)を有し、当該軸受(58)の枢支面の一部に前記軸受係止部(67)と係合する軸係止部(59)が形成され、
前記第1及び第2ピン部材(30,40)のいずれかが前記空間部(57)から抜き取られた状態にあるとき、前記空間部(57)に残された他方の第2又は第1ピン部材(40,30)の抜取り操作に基づき、前記軸受係止部(67)と前記軸係止部(59)とが係合して、前記回動部材(60)の回動が制限される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項5】
前記回動部材(360,560,660)の端に軸部(366,566,666)を有し、前記回動部材(360,560,660)の一部に回動部材(360,560,660)の回動動作を妨げる軸受係止部(367,367N,567,567N,667)が形成され、
前記箱体(350,450,550,650)における前記前壁及び前記後壁には、前記軸部(366,566,666)を枢支して前記回動部材(360,560,660)を回動自在にする軸受(358,458,658)と、前記軸受係止部(367,367N,567,567N,667)に係合する軸係止部(359,459,559,659)とが設けられ、
前記軸受係止部(367,367N,567,567N,667)を前記軸係止部(359,459,559,659)に向けて付勢する付勢手段(380,480,580,680)を有してなる、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項6】
前記回動部材(760)の端に軸部(766)を有し、当該軸部(766)の端面に回動部材(760)の回動動作を妨げる軸受係止部(767,767N)が形成され、
前記箱体(750,850)における前記前壁(753,853)及び前記後壁(754,854)には、前記軸部(766)を枢支して前記回動部材(760)を回動自在にする軸受(758)を有し、当該軸受(758)の奥壁面の一部に前記軸受係止部(767,767N)と係合する軸係止部(759,859)が設けられ、
前記軸受係止部(767,767N)と前記軸係止部(759,859)とが互いに向けて付勢する付勢手段(780,853,854)を備えた、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項7】
前記箱体(1050,1250)の前壁(1053)及び後壁(1054,1254)の中央部に摺動口(1058,1258)を有し、
前記ピン抜取り阻止手段(1068,1268)は、前記摺動口(1058,1258)に嵌挿して前記箱体(1050,1250)の左右方向に摺動操作が可能に支持される摺動部材(1090,1290)に形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項8】
前記摺動部材(1090,1290)を左方向又は右方向に係止することにより、前記第1及び第2ピン部材(1030,1230;1040,1240)の双方の同時抜取りを阻止する係止部(1059,1268,1231,1241)を備えたことを特徴とする請求項7に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項9】
前記箱体(1150)の前壁及び後壁(1154)の中央部に軸受(1158)を有し、
前記ピン抜取り阻止手段(1168)は、前記軸受(1158)に嵌挿して前記箱体(1150)に対して回動操作可能に支持された回動部材(1160)の周面に形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項10】
前記回動部材(1160)を所定位置に係止することにより、前記第1及び第2ピン部材(1130;1140)の双方の同時抜取りを阻止する軸係止部(1159)を備えたことを特徴とする請求項9に記載のスライドファスナー用開離嵌挿具。
【請求項11】
前記請求項1〜10に記載の開離嵌挿具(22,322,422,522,622,722,822,1022,1122,1222)が適用されてなることを特徴とするスライドファスナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2009−95411(P2009−95411A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267719(P2007−267719)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】