スライド弁
【課題】真空装置に用いられる回転式スライド弁に於いて、衝撃の少ない回転操作が可能な操作部構造を提供する。
【解決手段】ピストンの直線運動を、ピニオンラックを介して回転運動に変換し、弁体を回動作動させる弁構造に於いて、ピストン112の突起部112cの円筒面にに形成され、突起部112cの根本部分から、シリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように、軸線(長手方向)Cに対して傾斜した緩衝溝118を設け、圧力空間113内の流体を緩衝溝118を介して排出する。
【解決手段】ピストンの直線運動を、ピニオンラックを介して回転運動に変換し、弁体を回動作動させる弁構造に於いて、ピストン112の突起部112cの円筒面にに形成され、突起部112cの根本部分から、シリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように、軸線(長手方向)Cに対して傾斜した緩衝溝118を設け、圧力空間113内の流体を緩衝溝118を介して排出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体(弁板)による流路を開閉する動作に加えて、弁体をスライド動作させる振り子型に適したスライド弁に関する。特に、本発明は、真空装置等において、異なる圧力、及び異なるプロセスを行う2つの空間をつなげている流路を仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放し(2つの空間をつなぐ)、または流路を一部制限する(流路の開口面積を制限し)スライド弁に関する。
【背景技術】
【0002】
真空装置等においては、チャンバーと配管との間、配管と配管との間、あるいは配管とポンプ等との間等、異なる真空度の2つの空間の間を仕切り、仕切られた2つの空間をつなげる仕切りバルブが設けられている。このような仕切りバルブとしては、様々な形態の弁が知られている。
【0003】
例えば、弁板をスライドさせて流路の弁開閉位置に弁板を挿入し、更にこの弁板を作動させて流路を仕切り(閉弁動作)、あるいは上記弁板を作動させて流路をつなぎ(開弁動作)、更に弁板をスライドさせ、流路から弁箱内の退避位置に弁板を退避させる構造が知られている。このような構造を有する弁としては、振り子型,直動型,ドア型等が知られている。
【0004】
直動型スライド弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成された弁箱の中空部に、弁棒(支持体)に固設された弁板が配置された構造を有する。この構造においては、上記弁棒をその長手方向に直動させて、上記弁板を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁板を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0005】
従来の上記直動型スライド弁としては、ベローズで接続された2枚の第1弁板及び第2弁板からなる弁体と、この2つの弁板の間において弁板の中央部に配置されたアクチュエータと、流路を構成する開口部が形成された弁箱とを備えたスライド弁が知られている。このスライド弁においては、アクチュエータによって、弁箱の開口部の周囲の内面に第1弁板を当接及び押圧させて流路を閉鎖し、または、アクチュエータによって第1弁板を上記弁箱の内面から離間させて流路を開放する(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、振り子型スライド弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成されかつ中空部を有する弁箱と、中空部において回転軸に固設されて回転軸と垂直をなす面に平行な方向において広がっている支持体と、この支持体に固設された弁体(シールリング板が開口部に設けられている構造の場合には弁板)とが配置された構造を有する。このスライド弁においては、上記回転軸を回転させて、上記弁体を回動させ、上記弁体を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁体を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0007】
従来の上記振り子型スライド弁としては、ハウジングの中空部内に、回転軸において回動可能な弁板と、ハウジングの開口部に配置された摺動可能なシールリング板と、ハウジングに一体形成されたフランジに上記シールリング板を摺動させるアクチュエータとが設けられた構造が知られている。このスライド弁においては、上記シールリング板を上記弁板に当接及び押圧して流路を閉鎖し、または、上記シールリング板を上記弁板から離間させて流路を開放する(例えば特許文献2参照)。
【0008】
こうした振り子型スライド弁において、弁板を回動させるための機構として、弁板が取り付けられた回転軸に固着されたピニオンギアと、このピニオンギアに噛合するラックギアが形成されたラック部材と、ラック部材を直線運動(往復運動)させるシリンダからなる弁板回転機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−181205号公報
【特許文献2】特許第3655715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来のスライド弁においては、筒状のシリンダ本体内を摺動するピストンが収縮する、即ちシリンダ本体の圧力空間が減少する方向にピストンが移動する際に、ピストンの移動方向の終端部分でピストンがシリンダ本体の内壁に衝突するなどして、ピストンが急減速する構造となっていた。
このため、ピストンに固着されたラック部材から回転軸を介して接続された弁体も回動が急に停止することになり、弁体に強い応力が加わることで弁体にダメージが及ぶ虞があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で高い信頼性の仕切り動作が可能なスライド弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は、次のようなスライド弁を提供した。
すなわち、本発明のスライド弁は、スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させる回転手段と、
前記弁箱内において前記回転軸に固着され、前記中立弁部を脱着可能に保持する接続部材と、を具備するものとされ、
前記中立弁体は、前記接続部材を介して前記回転軸に接続される中立弁部と、該中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される可動弁部と、を有し、
前記回転手段は、前記回転軸の軸心周りに形成されたピニオンと、該ピニオンに噛合するラック歯を備えたラック部材と、該ラック部材を直線運動させるシリンダと、を有し、
前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分の両側にはそれぞれ、前記ラック部材を摺動可能に支持する滑り軸受が配され、
前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復運動可能なピストンとからなり、前記シリンダ本体の一端側と前記ピストンとの間で圧力空間を成し、
前記シリンダ本体には、前記圧力空間と外部との間を連通させる通気口を有し、前記ピストンには、前記往復運動方向に沿って断面積が連続的に変化し、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて徐々に通気させる緩衝溝が形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記ピストンは、第1ピストンと、該第1ビストンと前記シリンダ本体の一端側との間に配された第2ピストンと、からなり、
前記第1ピストンと前記第2ピストンとの当接部分には、緩衝材が配されてなることを特徴とする。
【0014】
前記ラック部材は長手方向に垂直な断面が円形を成し、かつ、前記長手方向に沿った2箇所以上で、前記滑り軸受によって摺動自在に支持されることを特徴とする。
【0015】
前記滑り軸受は、前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分に生じる前記ラック部材の作用線と、前記ラック部材の軸中心線との交点よりも、前記噛合部分から遠ざかる方向に配されていることを特徴とする。
【0016】
前記ラック部材の表面には、長手方向に沿って延びる溝が更に形成されていることを特徴とする。
【0017】
前記可動弁部には、該弁板に周設され前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに、
前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される第1可動弁部と、
前記第1可動弁部を前記流路方向前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着可能とする第1付勢部と、
前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、
前記第1付勢部の付勢力に対抗して前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向厚み寸法を収縮可能なように駆動する第2付勢部と、
前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との流路方向厚み寸法変化に対応して、前記第1可動弁部を前記中立弁体に対して流路方向位置変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向中央位置側に付勢する第3付勢部と、を具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態のスライド弁においては、ピストンを伸位置から縮位置に移動させる際に、圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止、即ちラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力が加わらないように、ピストンに形成された緩衝溝によって、ピストンの縮位置への移動を滑らかに変化させる。
【0019】
即ち、圧力空間の内圧を減少させてピストンの縮位置に向けて移動させる際に、圧力空間の内圧が急に高まり(圧力空間が圧縮され)、ピストンの移動速度が急激に減少する方向に力が働く。しかしながら、圧力空間内の空気は緩衝溝を介して通気口に誘導され、この緩衝溝は、ピストンの一面側からシリンダ本体の一端側に向かって断面積が広がるように形成されているので、ピストンが縮位置に近づくほど、緩衝溝の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストンが縮位置に至る直前では、圧力空間から通気口に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、圧力空間の内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストンを緩やかに縮位置で停止させることができる。よって、圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止を防止し、ラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す横断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が退避動作可能位置とされている場合を示す図である。
【図3】図2における回転軸の駆動用シリンダを示す要部拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が弁閉位置とされている場合を示す図である。
【図5】図4におけるメインバネ付近の要部拡大図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が退避位置とされている場合を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リング付近の要部を拡大して示す径方向断面図(a)、軸方向断面図(b)である。
【図8】本発明の第1実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(伸位置)である。
【図9】本発明の第1実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(縮位置)である。
【図10】緩衝溝の作用を示す断面図である。
【図11】ラック部材、および滑り軸受を示す要部拡大断面図である。
【図12】ラック部材とピニオンとの噛合部分を示す要部拡大断面図である。
【図13】回転軸と中立弁体との係合部分を示す要部拡大図である。
【図14】本発明の第2実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(伸位置)である。
【図15】本発明の第2実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(縮位置)である。
【図16】本発明の第2実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(中間位置)である。
【図17】本発明の第2実施形態におけるスライド弁の構成を示す横断面図である。。
【図18】本発明の第2実施形態における緩衝材の作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るスライド弁の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
また、以下の説明に用いられる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
本発明の技術範囲は、以下に述べる実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態におけるスライド弁の構成を示す平面図である。図2は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避動作可能位置とされている場合を示す図である。図3は、図2の中立弁部と第1可動弁部の接続部分および第1と第2との付勢部付近を示す要部拡大図である。図4は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が密閉閉塞位置とされている場合を示す図である。図5は、図4の中立弁部と第1可動弁部の接続部分および第1と第2との付勢部付近を示す要部拡大図である。図6は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避位置とされている場合を示す図である。
【0023】
[振り子型スライド弁]
第1実施形態のスライド弁1は、図1〜図6に示すように、振り子型スライド弁である。
このスライド弁1は、互いに対向した第1開口部12aと第2開口部12bとが設けられた弁箱10と、弁箱10を貫通した切り替え手段としての回転軸20と、回転軸20に固着された接続部材91と、この接続部材91を介して回転軸20に接続された中立弁部30と、回転軸20の軸線方向に移動可能として中立弁部30に接続された可動弁部40と、可動弁部40の厚さ方向寸法を拡大する方向に付勢されるメインバネ(第1付勢部)70と、メインバネ70の付勢方向と反対方向に伸張可能な駆動用の円環状エアシリンダ(第2付勢部)80と、可動弁部40を弁箱10の中央位置側にしようとする位置規制用の補助バネ(第3付勢部)90と、を備えている。
【0024】
中立弁部30及び可動弁部40は、中立弁体5を構成している。また、可動弁部40は、第2可動弁部(可動弁板部)50と第1可動弁部(可動弁枠部)60とによって構成されている。第1開口部12aから第2開口部12bに向かって流路Hが設定されている。なお、以下の説明において、この流路Hに沿った方向を流路方向Hと称することがある。
【0025】
回転軸20が符号A1で示された方向(流路Hの方向に交差する方向)に回転すると、この回転に従って、接続部材91を介して回転軸20に固定されている中立弁部30も方向A1に沿って回動する。また、可動弁部40は中立弁部30に厚さ方向のみ摺動可能として接続されているため、可動弁部40は、中立弁部30と一体に回転する。
このように中立弁部30を回転することにより、流路Hが設けられていない中空部11とされる退避位置E1から第1開口部12aに対応する位置とされる流路Hの弁閉位置E2に可動弁部40が振り子運動で移動する。
【0026】
そして、メインバネ70が伸張する方向に作用することで流路H方向に可動弁部40の厚さ寸法が拡大する動作により(閉弁動作)、後述するように、可動弁枠部60のシール部61と、可動弁板部50の反力伝達部59とが、それぞれ、弁箱10の内面15aと内面15bとを押圧することにより、可動弁部40は流路Hを閉鎖する。
【0027】
逆に、円環状エアシリンダ80が作用することで、メインバネ70の付勢力に円環状エアシリンダ80の押圧力が打ち勝って流路H方向に可動弁部40の厚さ寸法が収縮する動作により可動弁部40が表裏とも弁箱10の内面15aおよび内面15bから離間した後に(解除動作)、回転軸20が符号A2で示された向きに回転する(退避動作)と、この回転に従って中立弁部30および可動弁部40も向きA2に回動する。
この解除動作と退避動作とにより、可動弁部40は上記弁開閉位置から上記退避位置に退避して弁開状態とする弁開動作がおこなわれる。
【0028】
[弁箱10]
弁箱10は、中空部11を有するフレームによって構成されている。フレームの図示上面には第1開口部12aが設けられており、フレームの図示下面には第2開口部12bが設けられている。
スライド弁1は、第1開口部12aが露出されている空間(第1空間)と第2開口部12bが露出されている空間(第2空間)の間に挿入される。スライド弁1は、第1開口部12aと第2開口部12bとをつなげている流路H、即ち、第1空間と第2空間とをつなげている流路Hを仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放する(第1空間と第2空間をつなぐ)。
弁箱10の中空部11には、回転軸20、中立弁部30、可動弁部40、メインバネ(第1付勢部)70、円環状エアシリンダ(第2付勢部)80、及び補助バネ(第3付勢部)90が設けられている。
【0029】
[回転軸20、流体経路リング17,18]
回転軸20は、流路Hとほぼ平行状態に延在して弁箱10を貫通するとともに回転可能に設けられている。
この回転軸20には、接続部材91が固着されている。この接続部材91は、例えば略平板状の部材であり、図7に示すように、回転軸20の一端20aに対してネジ92によって固着される。図7(b)に示すように、接続部材91は、流路方向Hに沿った一端側が広がった略T字状の断面形状を成す突起部93が形成されている。
【0030】
回転軸20は、図7に示すように、弁箱10に固設されるケーシング14に、ベアリング等とされる軸受16A,16Bを介して、この弁箱10を貫通して回動可能に支持されている。軸受16A,16Bは、回転軸20の軸線LL方向に可能な限り離間して配置される。
【0031】
ケーシング14は、弁箱10に対して密閉状態として貫通するように固定されるとともに、回転軸20が密閉状態で回動自在に貫通するシールケーシング14Aと、このシールケーシング14Aに接続され、その内周側に設けられた軸受16A,16Bを介して回転軸20を回動自在に支持する円筒ケーシング14Bと、円筒ケーシング14Bの一端を閉塞する蓋体ケーシング14Cとからなり、これらは互いに固定接続されている。蓋体ケーシング14Cには回転軸20を挿抜可能な開孔を閉塞する蓋体14Dが設けられる。
【0032】
シールケーシング14Aには、弁箱10内部をシールするために、シール部14Aa、14Ab,14Acおよび、大気圧の空間(空隙)である中間大気室14Adが設けられている。
円筒ケーシング14Bの内周面側には、軸線LL方向における軸受16A,16Bの間の位置に、流体経路リング17,18が、回転軸20の外周面20bに摺動可能に接触するように固定されている。
【0033】
回転軸20の外周面20bの流体経路リング17,18の間の中心位置には、この回転軸20を駆動させる(回転させる)ための回転軸駆動機構100(図8参照)を構成するピニオン21が固着される。ピニオン21は外部と連通した大気圧状態におかれている。このピニオン21には、図7において紙面奥行方向に往復動作することで、ピニオン21を介して回転軸20を回動させる丸棒状のラック部材22が接続される。
【0034】
[回転軸駆動機構100]
図8は、回転軸駆動機構100を示す概要図である。
回転軸20を回転させるための回転軸駆動機構100は、回転軸20に固着されたピニオン21と、このピニオン21と噛合するラック歯22aを備えたラック部材22とを有している。
また、回転軸駆動機構100は、ラック部材22を往復運動させるためのシリンダ(回転軸駆動用シリンダ)110を備えている。シリンダ110によって、ラック部材22は軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能とされる。
【0035】
シリンダ110は、一端側111aが閉塞されたシリンダ本体111と、このシリンダ本体111の内部空間111bに摺動可能に収容されたピストン112とを備えている。そして、このシリンダ本体111とピストン112の一面側112aとで区画され、ピストン112の移動によって容量が可変する圧力空間113が形成される。また、シリンダ本体111には、この圧力空間113に連通し、外部から圧力空間113に空気を送り込み、又は圧力空間113から外部に空気を排出する通気口114が形成されている。こうした通気口114は、外部に例えばポンプが接続されていれば良い。
【0036】
ピストン112は、シリンダ本体111の内部空間111bにおいて、軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能に収容されている。こうしたピストン112は、圧力空間113が最大に拡張され、シリンダ本体111の内部空間111bにおいて最も一端側111aから遠ざかった位置にピストン112がある伸位置Pa(図8)と、圧力空間113が最小に縮小され、最も一端側111aに接近した位置にピストン112がある縮位置Pb(図9)との間で摺動可能にされている。
【0037】
また、ピストン112の一面側112aには、突起部112cが形成されている。シリンダ本体111の一端側111aには、ピストン112が縮位置Pbにある時に突起部112cが入り込む凹部111cが形成されている。通気口114の一端側は、この凹部111cで露呈する位置に形成されている。また、ピストン112の他面側112bには、接続部112dを介してラック部材22が固着される。
【0038】
ピストン112の突起部112cには、ピストン112の往復運動方向、即ち軸線(長手方向)Cに沿って断面積が連続的に変化し、圧力空間113内の空気を通気口114に向けて徐々に通気させる緩衝溝118が形成されている。
具体的には、図10に示すように、緩衝溝118は、ピストン112の突起部112cに形成された、ピストン112の一面側112aからシリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように、軸線(長手方向)Cに対して傾斜した溝からなる。
【0039】
ラック部材22は、図8、9,11に示すように、軸線(長手方向)Cに垂直な断面が円形を成す丸棒状に形成されている。そして、この丸棒状のラック部材22の周面の一部には、ラック歯22aが軸線(長手方向)Cに沿って所定のピッチで配列形成されている。
【0040】
回転軸20に固着されたピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sの両側にはそれぞれ、ラック部材22を摺動可能に支持する滑り軸受115,115が配されている。この滑り軸受115,115は、図10に示すように、ラック部材22の断面よりも僅かに大きい断面円形の開口115aが形成され、この開口115aを取り囲むように配列されたベアリング(図示略)によって、丸棒状のラック部材22を軸線(長手方向)Cに沿って円滑に摺動可能に支持する。
【0041】
また、図8に示すように、ラック部材22の表面(周面)には、軸線(長手方向)Cに沿って延びる溝(長溝)116が形成されている。また、例えばラック部材22に隣接するケーシング(図示略)には、この溝(長溝)116に入り込むボス117が形成されている。こうした溝(長溝)116は、ボス117との係合によって、ラック部材22が軸線C周りに回動することを防止する。これによって、ラック部材22が往復運動する際に軸線C周りに捩れることがない。
【0042】
図12は、滑り軸受115の配置位置を示す説明図である。
滑り軸受115,115は、ピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sに生じるラック部材22の作用線(の延長線)L1,L2と、ラック部材22の軸心(軸中心線)Cとの交点P1,P2よりも、噛合部分Sから遠ざかる方向に配されるのが好ましい。
【0043】
即ち、2つの噛合歯であるピニオン21とラック歯22aとの接触点の移動方向である作用線L1,L2が、それぞれラック部材22の軸心(軸中心線)Cと交差する点を交点P1,P2としたときに、滑り軸受115,115の中心線Qがこの交点P1,P2よりも外側になるように、滑り軸受115,115をそれぞれ配置する。
【0044】
滑り軸受115,115の配置位置を上述したように設定することによって、滑り軸受115,115は、ピニオン21の回転によって生じる外力、即ちピニオン21から遠ざかる方向に向かう力を受けることがなくなる。これによって、滑り軸受115,115は、ラック部材22との接触部分において、軸心(軸中心線)Cに直角な方向の応力が加わることを防止して、ラック部材22との摩擦力を低減して円滑に摺動可能にラック部材22を保持することが可能になる。
【0045】
以上のような構成の回転軸駆動機構100によれば、例えば、図9に示す縮位置Pbにピストン112がある場合には、このピストン112に固着されたラック部材22からピニオン21を介して連動(回転)される回転軸20が、図9中の反時計回りに回転した状態とされ、この回転軸20の位置においては、回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの弁閉位置E2(図1)に置かれる。
【0046】
一方、この縮位置Pbから、図8に示す伸位置Paにピストン112を移動させる際には、シリンダ本体111の内面とピストン112の一面側112aとで区画された圧力空間113内に、通気口114から空気を送り込む。すると圧力空間113の内圧が高まることによって、ピストン112は軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体111の一端側111aから遠ざかる方向に移動(摺動)し、圧力空間113が広がる。
【0047】
ピストン112がシリンダ本体111の一端側111aから遠ざかる方向に移動すると、ピストン112に固着されたラック部材22は、ラック歯22aと噛合するピニオン21を図8中の時計回り方向に回転させる。これによって、回転軸20も時計回り方向に回転され、この回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図1)に振り子運動で移動する
【0048】
このように、回転軸駆動機構100を構成するシリンダ本体111内の圧力空間113の内圧を可変させ、ピストン112を伸位置Pa(図8)と縮位置Pb(図9)との間で直線運動させることによって、ラック部材22、ピニオン21を介して回転軸20を回動させ、可動弁部40を流路Hに対して退避位置E1と弁閉位置E2(図1)との間で移動させることができる。
【0049】
以上のようなピストン112の伸位置Paと縮位置Pbとの間の移動において、特にピストン112を伸位置Paから縮位置Pbに移動させる際に、圧力空間113の急激な縮小によるピストン112の急停止、即ちラック部材22とピニオン21との噛合部分Sに急激に大きな応力が加わらないように、ピストン112の突起部112c形成された緩衝溝118によって、ピストン112の縮位置Pbへの移動を滑らかに変化させる。
【0050】
例えば、図10(a)に示すように、圧力空間113の内圧を減少させてピストン112の縮位置Pbに向けて移動させる際に、突起部112cがシリンダ本体111の凹部111cに入り込む位置まで移動してくると、突起部112cの周縁に広がる圧力空間113aの内圧が急に高まり(圧力空間113aが圧縮され)、ピストン112の移動速度が急激に減少する方向に力が働く。
【0051】
しかしながら、突起部112cに形成された緩衝溝118によって、圧力空間113a内の空気はこの緩衝溝118を介して通気口114に誘導される。即ち、圧力空間113aは緩衝溝118を介して通気口114に連通される。
【0052】
しかも、この緩衝溝118は、ピストン112の一面側112aからシリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように形成されているので、図10(b)に示すように、ピストン112が縮位置Pb(図9)に近づくほど、緩衝溝118の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストン112が縮位置Pbに至る直前では、圧力空間113aから通気口114に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、圧力空間113aの内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストン112を緩やかに縮位置Pbで停止させることができる。よって、圧力空間113の急激な縮小によるピストン112の急停止を防止し、ラック部材22とピニオン21との噛合部分S(図12)に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
【0053】
流体経路リング17と流体経路リング18とは、回転軸20とほぼ等しい内径とされ、ピニオン21よりも弁箱10側の流体経路リング17の外径がベアリング16Aの外径より大きくかつピニオン21の外径寸法よりも小さく設定され、ピニオン21よりも蓋体14D側の流体経路リング18の外径がピニオン21の径寸法よりも大きく設定されている。ベアリング16A,16Bで支持された回転軸20が回動すると、流体経路リング17と流体経路リング18とに対して、接触位置が周方向に変化することになる。
【0054】
流体経路リング17には、第2周囲領域40aにおいて可動弁板部50と可動弁枠部60との間に形成された円環状エアシリンダ80に駆動用気体を供給する供給路41の一部とされる流体経路として、径方向に延在しその外周面17a及び内周面17bに開口する径方向リング経路17cが設けられる。この径方向リング経路17cの外周面17a側は円筒ケーシング14Bの径方向に貫通する経路14Bcに連通している。
【0055】
流体経路リング18には、第2周囲領域40aにおいて可動弁板部50と可動弁枠部60との間に形成された円環状エアシリンダ80に設けられた2重シール部において2重目のシールs1a,52aより気体供給側に設けられた中間大気室55に接続され、1重目のシール51b,52bが破れた際に駆動用気体をスライド弁1外部に向けて逃がす連絡路42の一部とされる流体経路として、径方向に延在しその外周面18a及び内周面18bに開口する径方向リング経路18cが設けられる。この径方向リング経路18cの外周面18a側は円筒ケーシング14Bの径方向に貫通する経路14Ccに連通している。
【0056】
流体経路リング17には、内周面17bに溝17dが周設され、回転軸20外周面20bとで囲まれることで周方向経路となっている。
溝17dに対向する位置とされる回転軸20外周面20bには、径方向軸内経路27が開口し、径方向軸内経路27は、回転軸20の軸線LL方向に延在して回転軸20の一端面20aに開口する軸方向軸内経路25に連通している。
【0057】
流体経路リング18には、内周面18bに溝18dが周設され、回転軸20外周面20bとで囲まれることで周方向経路となっている。
溝18dに対向する位置とされる回転軸20外周面20bには、径方向軸内経路28が開口し、径方向軸内経路28は、回転軸20の軸線LL方向に延在して回転軸20の一端面20aに開口する軸方向軸内経路26に連通している。
【0058】
これら軸方向軸内経路25と軸方向軸内経路26とは、互いに平行状態でかつ軸線LLに平行とされ、回転軸20の蓋体14D側の他端20c側は閉塞されている。
軸方向軸内経路25と軸方向軸内経路26とは、いずれも、中立弁部30内部の供給路41及び、連絡路42に接続されている。
【0059】
流体経路リング17には、内周面17bと回転軸20外周面20bとの間において径方向軸内経路27の開口部分および溝17dを摺動可能にシールするOリング等のシール部材17h,17j,17kが周設されている。
流体経路リング17には、外周面17aと円筒ケーシング14B内面との間において径方向リング経路17cの開口部分および経路14BcをシールするOリング等のシール部材17e,17f,17gが周設されている。
【0060】
流体経路リング18には、内周面18bと回転軸20外周面20bとの間において径方向軸内経路27の開口部分および溝18dを摺動可能にシールするOリング等のシール部材18h,18j,18kが周設されている。
流体経路リング18には、外周面18aと円筒ケーシング14B内面との間において径方向リング経路18cの開口部分および経路14CcをシールするOリング等のシール部材18e,18f,18gが周設されている。
【0061】
こうした流体経路リング17と流体経路リング18によって、回転軸20がどのような回動位置になっても、径方向軸内経路27と径方向軸内経路28が連通した状態を維持できるため、密閉度よく、駆動用流体の供給等を行うことができる。しかも、供給路41と連絡路42とを、独立してそれぞれ接続しているので、回転軸20の回動位置にかかわらず、異なる圧力状態あるいは、異なるガス状態の2系統を弁体10内部に影響を与えずに、制御することが可能となる。
【0062】
[中立弁部30、接続部材91]
中立弁部30は、回転軸20の軸線に対して直行する方向に延在し、この方向に平行な面を有している。図1に示すように、中立弁部30は、可動弁部40に重なる円形部30aと、回転軸20の回転に伴って円形部を回転させる回転部30bとを有する。回転部30bは、回転軸20と円形部30aとの間に位置しており、回転部30bの幅は回転軸20から円形部30aに向けて徐々に増加している。これら回転軸20、中立弁部30は、弁箱10に対して回動はするが、流路H方向には位置変動しないように設けられている。
【0063】
中立弁部30の一端には、図13に示すように、接続部材91の突起部93と嵌合する凹部95が形成されている。この凹部95は、その断面形状が接続部材91の断面形状と合致する略T字状を成す。こうした凹部95は、中立弁部30の流路方向Hにおける一面側30Aと他面側30Bの両側に、それぞれ凹部95A,95Bとして形成されている。これによって、回転軸20は、中立弁部30に対して流路方向Hに沿った上側と下側のいずれにも選択的に接続することができる。
【0064】
あるいは、回転軸20に対して、中立弁体5全体を両面どちらにも取り付けることができる。即ち、接続部材91の凹部95Aの側に中立弁体5を取り付ければ、スライド弁1の閉弁時において、可動弁部40が第1開口部12aを塞ぐ向きとなる。逆に、接続部材91の凹部95Bの側に中立弁体5を取り付ければ、可動弁部40が第2開口部12abを塞ぐ向きにとなる。
【0065】
図13に示すように、接続部材91に形成された突起部93と、中立弁部30に形成された凹部95とは互いに嵌合される。図13(a)に示すように、接続部材91と中立弁部30とは、係合状態において、流路方向Hに沿って互いに平行に広がり第1間隔t1で離間した一組の第1平行面96a,96bと、流路方向Hに沿って互いに平行に広がり第1間隔t1よりも広い第2間隔t2で離間した一組の第2平行面97a,97bとで互いに接触している。
【0066】
こうした一組の第1平行面96a,96b、および一組の第2平行面97a,97bは、それぞれ、流路方向Hに直角に延びる一軸Lを挟んで対称に配される。また、第1平行面96a,96bと第2平行面97a,97bとは、この一軸Lに沿って互いに重ならない位置に配される。
【0067】
接続部材91の突起部93には、図13に示すように、この一組の第1平行面96a,96bを構成する第1接触面93a,93bと、第2平行面97a,97bを構成する第2接触面93c,93dとが形成されている。そして、これら第1接触面93a,93bと第2接触面93c,93dのそれぞれを繋ぐ第1傾斜面93e,93fとともに、突起部93は全体として2段階の幅を持つ突起形状を成している。
【0068】
中立弁部30の一端に形成された凹部95は、図13に示すように、一組の第1平行面96a,96bを構成する第三接触面95a,95bと、第2平行面97a,97bを構成する第四接触面95c,95dとが形成されている。そして、これら第三接触面95a,95bと第四接触面95c,95dのそれぞれを繋ぐ第2傾斜面95e,95fとともに、凹部95は全体として2段階の幅を持つ溝形状を成している。
【0069】
回転軸20の中心には、図12に示すように、接続部材91を介して回転軸20と中立弁部30とを締結するための雄ネジ(締結具)21を貫通させる貫通穴22が形成されている。また、中立弁部30の一端に形成された凹部95には、雄ネジ(締結具)21と螺合する雌ネジ31が形成されている。更に、接続部材91には、雄ネジ(締結具)21を貫通させるネジ溝のない開口98が形成されている。
【0070】
以上の構成によって、接続部材91に形成された突起部93と、中立弁部30に形成された凹部95とを嵌合させ、更に、回転軸20の上端側から、雄ネジ21を貫通穴22および開口98に貫通させ、雄ネジ21の先端部分を、中立弁部30の雌ネジ31にネジ止めすることにより、回転軸20と中立弁部30とは、接続部材91を介して締結(固定)される。
【0071】
中立弁部30のメンテナンス、例えば、繰り返し開閉による中立弁部30の交換等で、中立弁部30を回転軸20に固着された接続部材91に取り付ける際には、中立弁部30の一端に形成された凹部95を接続部材91に形成された突起部93に対向させる。
次に、中立弁部30の凹部95を突起部93に差し込むと、凹部95の第三接触面95a,95bが、それぞれ突起部93の第1接触面93a,93bに接触する。また、凹部95の第四接触面95c,95dが、それぞれ突起部93の第2接触面93c,93dに接触する。
【0072】
こうした挿入工程での凹部95と突起部93との接触面は、第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bに限られ、突起部93の第1傾斜面93e,93fと、凹部95の第2傾斜面95e,95fとは接触しない。つまり、矢印B1で示す方向である接続方向において、回転軸20の軸線を挟んだ両側位置となる部分で周方向の取り付け位置を規制することができるので、取り付け位置、特に、回転軸20の軸線周りの中立弁部30の取り付け方向の正確性を容易に向上することができる。
【0073】
同時に、例えば、凹部95と突起部93との接触面(第1平行面96a,96b、第2平行面97a,97b)のクリアランス(隙間)を極めて小さく設定しても、凹部95を突起部93に押し込む際の摩擦力が軽減され、スムーズに凹部95と突起部93とを嵌合させることができる。
【0074】
また、互いに幅の異なる第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bで凹部95と突起部93とを接触させることによって、凹部95を突起部93に押し込む際の取付精度を向上させると共に、取付時に摩擦力の軽減によって、容易にその取付位置、即ち突起部93に対する凹部95の押し込み量を調整することができる。即ち、凹部95と突起部93との係合時には、凹部95に形成されためねじ31のネジ穴位置を、接続部材91の突起部93に形成された開口98と合致させる必要がある。
【0075】
本実施形態のように、第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bだけで凹部95と突起部93とを接触させることで、雌ネジ31のネジ穴位置と突起部93に形成された開口98とを容易に微調整しつつ合致させることができる。これによって、回転軸20の貫通穴22から開口98を介して雄ネジ(締結具)21を容易に雌ネジ31に締結することができる。また、端面93mと端面95mとを接触させることで、図13において矢印B1で示す方向である接続方向における互いの位置決めをおこなうことも可能である。
【0076】
なお、この実施形態においては、接続部材91に突起部93を、また中立弁部30の一端に凹部95を設けているが、凹凸が逆の構造とすることもできる。つまり、回転軸20に固着される接続部材に凹部を形成して、この凹部と嵌合する突起部を中立弁部の一端に形成する構造である。
【0077】
[可動弁部40、第2可動弁部(可動弁板部)50、第1可動弁部(可動弁枠部)60]
可動弁部40は略円板状とされ、円形部30aと略同心円状に形成された可動弁板部50と、この可動弁板部50の周囲を囲むように配置された略円環状の第2可動弁部60とを有する。第2可動弁部60は、中立弁部30に流路H方向に摺動可能として接続されている。
【0078】
また、可動弁板部50は、第2可動弁部60に摺動可能として嵌合されている。可動弁板部50と第2可動弁部60とは、メインバネ70及び円環状エアシリンダ80によって符号B1,B2で示された方向(往復方向)に摺動しながら移動可能である。ここで、符号B1,B2で示された方向とは、可動弁板部50および第2可動弁部60の面に垂直な方向であり、回転軸20の軸方向に平行な流路H方向である。
【0079】
また、可動弁板部50の外周付近における全領域には、内周クランク部50cが形成されている。また、可動弁枠部60の内周付近における全領域には、外周クランク部60cが形成されている。
第1実施形態においては、外周クランク部60cと内周クランク部50cとが、流路H方向と平行な摺動面50b、60bどうしで摺動可能に嵌合している。
【0080】
弁箱10の内面に対向(当接)する可動弁枠部60の表面には、第1開口部12aの形状に対応して円環状に形成された、例えば、Oリング等からなる第1シール部61(主シール部)が設けられている。
この第1シール部61は、閉弁時に可動弁部40が第1開口部12aを覆っている状態で、第1開口部12aの周縁となる弁箱10の内面15aに接触し、可動弁枠部60及び弁箱10の内面によって押圧される。これによって、第1空間は第2空間から確実に隔離される(仕切り状態が確保される)。
【0081】
[メインバネ(第1付勢部)70]
メインバネ(第1付勢部)70は、可動弁部40の最外周となる第1周囲領域40aに隣接した第1周囲領域40bに配置されている。メインバネ70においては、可動弁枠部60を第1開口部12aに向けて(B1方向)に押圧するように、同時に、可動弁板部50を第2開口部12bに向けて(B2方向)に押圧するように復元力が生じている。
【0082】
これにより可動弁部40による弁閉状態において、メインバネ70は、可動弁板部50に力を加え(付勢し)、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面15bに向けて可動弁板部50を押圧して内面15bと可動弁板部50の反力伝達部59とを当接させているとともに、同時に、可動弁枠部60に力を加え(付勢し)、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aに向けて可動弁枠部60を押圧して内面15aと可動弁枠部60の第1シール部61とを当接させている。
【0083】
第1実施形態においては、メインバネ70は、可動弁板部50に第2開口部12b側を向いて開口するよう設けられた凹部50aとこの凹部50aの対向位置に可動弁枠部60に第1開口部12a側を向いて開口するよう設けられた凹部60aとに嵌め込まれて設けられた弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、密閉されたエアダンパーなど)である。
【0084】
メインバネ70は、第1端と第2端とを有する。第1端は、可動弁板部50の凹部50aの底面に当接している。第2端は、可動弁枠部60の凹部60aの天井面に当接している。また、図1に示すように、円環状の可動弁枠部60において、複数の第1付勢部70が周方向に沿って等間隔に設けられている。
【0085】
メインバネ70を構成する弾性部材の自然長は、可動弁枠部60のシール部61と、可動弁板部50の反力伝達部59とが、それぞれ、弁箱10の内面15aと内面15bとを押圧する可動弁部40の最大厚さ寸法となった状態における可動弁板部50の凹部50aの底面と可動弁枠部60の凹部60aの天井面との間の距離よりも大きい。このため、可動弁板部50の凹部50aの底面と可動弁枠部60の凹部60aの天井面とによって圧縮されつつ凹部50aおよび凹部60aの内部に配置されているメインバネ70においては、弾性復元力(延伸力,付勢力)が生じている。この弾性復元力が作用することにより、可動弁枠部60がB1方向に、同時に、可動弁板部50がB2方向に摺動しながら、第1シール部61および反力伝達部59が弁箱10の内面に当接して押圧され、閉弁動作が行われる。
【0086】
また、メインバネ70は、第1シール部61に対する押圧力を効率よく伝達してスライド弁1の閉塞を確実にするために、第1シール部61に近接した第2周囲領域40bに配置される。具体的には、第1シール部61直下のすぐ外周位置には後述する反力伝達部59となる突条が位置するのに対し、可動弁板部50の径方向位置として、この第1シール部61を挟んだ突条(反力伝達部)59の反対側位置にメインバネ70は位置される。これにより、メインバネ70の付勢力は効率よく可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59とに伝達され、第1シール部61の変形による弁の密閉の確実性を向上することができる。
【0087】
また、メインバネ70は、第1シール部61を直接押圧できるようにするために、第1シール部61の直下付近とされる第2周囲領域40bに配置されることもできる。この場合、スライド弁においては、第1付勢部70を可動弁枠部60に設けられているので、第1付勢部70を第1シール部61の直下に位置させることが可能である。
【0088】
このように、スライド弁1においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、閉弁動作を行うメインバネ70と、開弁動作を行う第2付勢部80(後述)とが近接して設けられている。この構成において、メインバネ70及び第2付勢部80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域(第1周囲領域40a及び第2周囲領域40b)において、互いに近接するように径方向に隣接して配置されている。また、メインバネ70は、第1シール部61の直下付近に位置している。つまり、スライド弁1の構造は、第1シール部61、反力伝達部59、メインバネ70の位置関係が、作用点及び支点が存在するモーメント荷重を加える構造として効率よくシールをおこなうことができるように構成される。
【0089】
さらに、メインバネ70の付勢力が可動弁板部50と可動弁枠部60とを拡げる方向、つまり、可動弁部40の厚さを増大して、可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59とを弁箱10の内面15a,15bに押圧する方向に設定されているので、停電等によってユーティリティ設備からスライド弁1を備える装置への電力供給(エネルギー供給)が停止した場合であっても、メインバネ70において生じる機械的な力のみで確実にスライド弁1を閉じることができる。このため、フェイルセーフなスライド弁を確実に実現できる。
【0090】
一方、スライド弁40の厚さを減じる付勢がおこなわれているもの、あるいは、ユーティリティ設備から供給される電力等のエネルギーによって閉弁動作が行われている構造を有するスライド弁においては、ユーティリティ設備から装置へのエネルギー供給が停止した場合に閉弁動作を行うことができない場合がある。このため、このような構造においては、フェイルセーフなスライド弁を実現できない。
【0091】
[円環状エアシリンダ(第2付勢部)80]
円環状エアシリンダ80は、可動弁部40の最外周となる第1周囲領域40aに配置されている。円環状エアシリンダ80においては、円環状エアシリンダ80に駆動流体として圧縮空気が供給された際に、可動弁枠部60を第2開口部12bに向けて(B2方向)移動させる力(付勢力、圧縮空気に起因する力)が生じる。同時に、可動弁板部50を第1開口部12aに向けて(B1方向)に移動させる力(付勢力、圧縮空気に起因する力)が生じる。これによって、メインバネ70の付勢力に打ち勝って、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aから可動弁枠部60を離間させるのと同時に、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面15bから可動弁板部50を離間させる。
これにより、後述する補助バネ(第3付勢部)90の付勢力により体40は流路H方向において弁箱10の厚さ中央位置となりの弁箱10内で回動可能な状態となる。
【0092】
なお、可動弁部40において、第1周囲領域40aは、円環状である可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59との内側に位置する。同時に、可動弁部40において、第2周囲領域40bは、第1周囲領域40aの内側に位置する。即ち、可動弁部40の径方向において、メインバネ70は、円環状エアシリンダ80の内側に配置されている。言い換えれば、円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向(流路H方向)に交差する方向においてメインバネ70に隣接している。つまり、円環状エアシリンダ80は、可動弁部40の径方向において、シール部61および反力伝達部59、と、メインバネ70との間に位置する。
【0093】
第1実施形態においては、円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つのエアシリンダ(空隙)である。
具体的に、この円環状エアシリンダ80は、可動弁枠部60の第1開口部12aに向けて開口した凹部60dと可動弁板部50の第2開口部12bに向けて突出した凸部50dとが勘合した状態で形成され、これら環状の凹部60dと環状の凸部50dとが摺動するように形成されている。また、この円環状エアシリンダ80は、可動弁枠部60の周縁部に形成された円環状の空間、および、可動弁板部50の最外周に形成された突条(環状凸部)からなり、1つの円環シリンダ(円環空隙)として機能する。また、言い換えると、円環シリンダは、流路Hを囲むように形成されている。
【0094】
円環状エアシリンダ80に駆動用流体である圧縮空気が供給されると、第2付勢部80の体積を膨張させる膨張力(付勢力)がB1,B2方向に生じる。膨張力の大きさがメインバネ70に生じる復元力よりも大きい場合、この膨張力がメインバネ70の付勢力に打ち勝ってメインバネ70が圧縮され、可動弁板部50がB1方向に可動弁枠部60がB2方向に摺動して弁体40の厚さ方向寸法が縮小して、第1シール部61が弁箱10の内面15aから離間し、同時に、反力伝達部59が弁箱10の内面15bから離間して、開弁動作が行われる。この際、円環状の凹部60dと凸部50dとが摺動することで、可動弁板部50と可動弁枠部60との移動する方向が流路方向のみに規制されるとともに、可動弁板部50と可動弁枠部60とが、シール部61および反力伝達部59が弁箱10内面15a、15bに当接した状態から平行移動するように位置規制される。つまり、この円環状エアシリンダ80は可動弁板部50と可動弁枠部60との相対移動方向とその姿勢を規制することができる。
【0095】
[補助バネ(第3付勢部)90]
補助バネ90は、中立弁部30と可動弁枠部60との間に設けられ、弁箱10の流路方向ほぼ中央に位置する中立弁部30に対して、弁体40の厚さ寸法が縮小した際に、弁体40を弁箱10の中央よりに付勢するものである。
補助バネ90は、中立弁部30の外周位置(図2,図4では右側位置)に設けられた開口30aを貫通して可動弁枠部60に接続された棒状の位置規制部65に設けられている。補助バネ90もメインバネ70と同様に弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、密閉されたエアダンパーなど)である。
補助バネ90は、中立弁部30開口30aの第1開口部12a側に設けられたフランジ部30bと、位置規制部65の先端65aとに係止されて、可動弁枠部60を第2開口部12b側に移動するB2に向かう向きに付勢されている。
【0096】
補助バネ90は、この中立弁部30より第1開口部12a側に位置する可動弁枠部60を第2開口部12bに向けて付勢して、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aに可動弁枠部60のシール部61が当接している場合であって、円環状エアシリンダ80に駆動用流体である圧縮空気が供給された際に、可動弁枠部60が第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aから離間するように付勢している。
【0097】
これにより、円環状エアシリンダ80に圧縮空気が供給された際に、弁体40が弁箱10の流路方向ほぼ中央に向かって移動し、最終的に、弁体40が弁箱10の流路方向ほぼ中央に位置するように姿勢制御される。また、補助バネ90の付勢力は、メインバネ70の付勢力と円環状エアシリンダ80の付勢力の差よりも遙かに小さいものとされる。つまり、弁閉状態を実現するための能動的バネあるいは、アクチュエータとしてのメインバネ70や円環状エアシリンダ80に比べて、弁体の厚さ寸法を変化させるものであるから極めて小さなものでよい。
【0098】
このように、スライド弁1においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、弁体40厚さを増大する動作を行うメインバネ70と、弁体40厚さを縮小する動作を行う円環状エアシリンダ80と、弁体40を流路方向において弁箱10中央位置側にする姿勢制御をおこなう補助バネ90と、が設けられている。
【0099】
この構成において、メインバネ70及び円環状エアシリンダ80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域において、互いに近接するように並列に配置されている。円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つの円環シリンダを構成している。この構成によれば、一方向に圧縮空気第2付勢部80に供給する供給路41が1つ設けられていれば、圧縮空気を円環状の円環状エアシリンダ80に沿ってこの円環シリンダの内部に供給することができ、弁体40の厚さ寸法の伸縮(開弁動作及び閉弁動作)を行うことができるとともに、この動作中において補助バネ90により弁体40の伸縮に伴う弁体40の流路方向位置を弁箱10中央付近に容易に維持することができる。このため、簡易かつコンパクトな構成を有するアクチュエータを実現することができる。
【0100】
また、円環状エアシリンダ80は、開弁動作を行うために用いられるので、第2付勢部80において発生する力の大きさ(出力)として、第1付勢部70を圧縮することができる大きさ(出力)があれば十分である。
【0101】
第1実施形態においては、可動弁板部50と可動弁枠部60とによって1つの厚さ方向寸法を可変な可動弁部40が構成されているので、2枚の可動弁部を設ける必要がなく、簡単かつコンパクトな構造を有する可動弁部を実現することができる。
【0102】
また、中立弁部30にはアクチュエータの力、特に弁閉状態を維持するように弁体40を密閉する際にかかる力が作用しない。このため、中立弁部30には振り子弁として弁体を揺動するに足る強度があれば充分である。また、回転軸20にもアクチュエータの力、特に弁閉状態を維持するように弁体40を密閉する際にかかる力が作用しない。このため、回転軸20振り子弁として弁体を揺動するに足る強度があれば充分である。同時に、回転軸20に弁密閉するためのモーメントが必要なものに比べて、弁体40の揺動機構の出力を抑えることができるので、この回転軸20の回動機構を小型化することができる。
この構造においては、剛性として、上記中立弁部30の強度に加えて、退避位置と弁開閉位置の間で可動弁部40を回動させる際にその自重を支える強度があれば十分である。
【0103】
図2は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが互いに嵌合されている部分および中立弁部30と可動弁板部50とが互いに嵌合されている部分を示す拡大縦断面図であり、第1付勢部70及びガイドピン62が設けられた部位を示している。
【0104】
[第2シール部(2重シール部)51a,51b及び第3シール部(2重シール部)52a,52b]
可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの外周面には、可動弁枠部60の環状凹部60dの内周面に当接し、可動弁板部50と可動弁枠部60との間をシールする2重シール部として、Oリング等の円環状の第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bが設けられている。
【0105】
具体的には、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向外側に位置する第1外周面50fに第2シール部51a,51bが設けられている。また、径方向において第1外周面50fの内側である第2内周面50gに、第3シール部52a,52bが設けられている。第2シール部51a,51bは、可動弁枠部60の第1内周面60fに当接し、第3シール部52a,52bは、可動弁枠部60の第2外周面60gに当接する。
【0106】
第2シール部51a,51bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第1開口部12aに近い中空部11とを仕切り、仕切り状態を確保する。同様に、第3シール部52a,52bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第2開口部12bに中空部11とを仕切り、仕切り状態を確保する。
【0107】
第2シール部51a,51bは、駆動用の圧縮空気が供給されて圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、例えば圧力が低い空間である第1開口部12aに連通する第1空間側とを遮断するものであり、この仕切り状態を確保することができる。同様に、第3シール部52a,52bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間であって第2開口部12bに近い第2空間側とを仕切り、仕切り状態を確保することができる。
【0108】
[ガイドピン62]
ガイドピン62は、可動弁枠部60に固設されて流路方向に立設された太さ寸法均一の棒状体とされ、円環状エアシリンダ80内を貫通し、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dに形成された孔部50hに嵌合している。
このガイドピン62は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向が符号B1,B2に示された方向からずれないように、かつ、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動した際にもその姿勢が変化せずに平行移動をおこなうように、これらの位置規制を確実に誘導する。
【0109】
これによって、可動弁板部50と可動弁枠部60とが、符号B1,B2に対して斜め方向に移動することを防止している。同時に、可動弁枠部60は、弁閉状態としてシール部61と反力伝達部59とがそれぞれ弁箱10の内面15a,15bに当接した状態に対して、可動弁板部50と可動弁枠部60との流路方向位置が変化した場合でも、これらが平行状態を維持して平行移動し、可動弁板部50と可動弁枠部60とが傾いてしまうことを防止している。
【0110】
この構造においては、可動弁板部50と可動弁枠部60とが互いに位置決めされつつ、符号B1及びB2で示された方向に平行状態を維持したまま相対的に移動し、閉弁動作及び開弁動作を行うことができる。これによって、開弁動作においては、可動弁枠部60に設けられた第1シール部61に均一に押圧力を生じさせ、リークが抑制されたシール構造を実現できる。
【0111】
また、このようにガイドピン62を備えた構造においては、スライド弁1が真空装置に取り付けられる姿勢が決められていない場合、即ち、スライド弁1が取り付け方向が自由である場合に、弁体40の重量の負荷が第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bに局所的に加わることを防止することができる。例えば、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向に対して直角に重力が作用するようにスライド弁1が取り付けられている場合、摺動する部材である可動弁板部50と可動弁枠部60との重量がガイドピン62に加わる。このため、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52b(O−ring)に可動弁板部50と可動弁枠部60との重量が直接的に加わることを防止される。これにより、スライド弁1が取り付けられる姿勢がいかなる姿勢であっても、シール部の寿命が短くならず、リークを防止する効果を確保・維持することができる。
【0112】
ガイドピン62と孔部50hとの摺動面の面積を低減するため、また、スライド弁1の外部である第1空間及び第2空間からガイドピン62を隔離するために、ガイドピン62は、円環状エアシリンダ80内を貫通するように配置されている。
また、このように、円環状エアシリンダ80内にガイドピン62を配置することにより、可動弁板部50と可動弁枠部60とを互いに滑らかに摺動させることができる。
【0113】
なお、ガイドピンの強度が十分に得られていれば、大口径を有するスライド弁においても、可動弁部60が摺動する方向がずれることが防止される。また、ガイドピン62は、特殊な形状を有する可動弁部においても流路と直行する面内配置を設定して荷重を適宜分散することでより一層開閉動作の良好なスライド弁として適用可能である。
【0114】
ガイドピン62には、図14に示すように、その先端と可動弁枠部60側に形成された内部空間62aに連通する開口を有し、ガイドピン62内部を貫通する軸方向経路62bが設けられその基部側が、連絡路42に接続されている。また、円筒状の内部空間62aは、中立弁部5の径方向内側および外側に向かう経路42aを介してガイドピン62中心側に位置する中間大気室55,56にそれぞれ連通されている。ガイドピン62の可動弁板部50側となる先端側には、Oリング等とされるシール部材62cが設けられて孔部50hとの摺動面をシールしている。
【0115】
[ワイパー53,54]
可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向外側に位置する第1外周面50fには、可動弁部60の内周面に当接する円環状のワイパー53が設けられている。同様に、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向において第1外周面50fの内側である第2内周面50gには、可動弁部60の外周面に当接する円環状のワイパー54が設けられている。
【0116】
ワイパー53は、第2シール部51a,51bと同様にして、可動弁枠部60の第1内周面60fに当接し、ワイパー54は、第3シール部52a,52bと同様にして、可動弁枠部60の第1外周面60gに当接する。
ワイパー53,54、第2シール部51a,51b、第3シール部52a,52bは、いずれも、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dに配置されている。第2シール部51aは、第1開口部12a(第1空間)に近い位置に配置されている。第3シール部52aは、第2開口部12b(第2空間)に近い位置に配置されている。
【0117】
これらのワイパー53,54は、開弁動作及び閉弁動作によって環状の凹部60dと環状の凸部50dとが摺動する円環状エアシリンダ80において、その可動弁枠部60の凹部60dの内周面を潤滑あるいは清掃し、上記摺動によって発生するダスト及び円環状エアシリンダ80から発生するダストを第1空間及び第2空間に放出させない機能を有する。
また、ワイパー53,54を構成する部材(材料)として、例えば、スポンジ状のポーラスな弾性体を選択すれば、その部材の内部に潤滑油を浸透(保持)させておくことができる。
【0118】
これにより、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bによってシールされるシール面に一定の膜厚を有する薄い油膜が形成された状態を維持することが可能となる。つまり、ワイパー53,54は、余剰な油膜を拭き取り、油膜が枯渇した際には一定の膜厚を有する油膜を塗布する。
【0119】
[中間大気室55,56]
第2シール部51a,51bによって仕切られた円環状エアシリンダ80の表面には、大気圧の空間(空隙)である中間大気室55が設けられている。同様に、第3シール部52a,52bによって仕切られた円環状エアシリンダ80の表面には、大気圧の空間(空隙)である中間大気室56が設けられている。
具体的には、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの外周面50fで第2シール部51a,51bによって仕切られた部分に中間大気室55が設けられている。また、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの内周面50gで第3シール部52a,52bによって仕切られた部分に中間大気室56が設けられている。中間大気室55は、可動弁枠部60の第1内周面60fと可動弁板部50の外周面50fに設けられた溝とで形成された空間であり、中間大気室56は、可動弁枠部60の第1外周面60gと可動弁板部50の第2内周面50gに設けられた溝とで形成された空間である。
【0120】
そして、これらの中間大気室55,56は、後述する供給路41と同様の構成とされた図示しない連絡路によってスライド弁1の外部に連通され、円環状エアシリンダ80の加圧中に1重目のシールが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)をスライド弁外部に向けて逃がして、圧縮空気が弁箱10内部に放出されてしまうことを防止するようになっている。
【0121】
つまり、加圧状態にある円環状エアシリンダ80に対して、1重目のシールである第2シール部51bが破れた際に、2重目のシールである第2シール部51aより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす中間大気室55および連絡路が設けられている。また、加圧状態にある円環状エアシリンダ80に対して、1重目のシールである第3シール部52bが破れた際に、2重目のシールである第3シール部52aより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす中間大気室56および連絡路が設けられている。
これにより、圧縮空気が弁体10内部に噴出して、スライド弁1内部、および、第1空間、第2空間、に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0122】
同時にまた、これらの中間大気室55,56の圧力は、連絡路によりモニタ可能である。即ち、圧力計が中間大気室55,56の圧力を測定するようにスライド弁1外部に設けられるとともに連絡路によって接続されており、ユーザによってその圧力が監視される。
例えば、第1開口部12aに近い第1空間が減圧空間であり、第2シール部51aが破損している場合においては、中間大気室55の圧力は、大気圧よりも低くなる。
また、圧縮空気が供給されている円環状エアシリンダ80内の圧力は大気圧よりも高くなるため、第2シール部51bが破損している場合には、中間大気室55の圧力は、大気圧よりも高くなる。
【0123】
同様に、第2開口部12bに近い第2空間が減圧空間であり、第3シール部52aが破損している場合においては、中間大気室56の圧力は、大気圧よりも低くなる。
また、圧縮空気が供給されている円環状エアシリンダ80内の圧力は大気圧よりも高くなるため、第3シール部52bが破損している場合には、中間大気室56の圧力は、大気圧よりも高くなる。
【0124】
このようにスライド弁1は、中間大気室55,56の圧力をモニタする構造を有することができるので、例えば、中間大気室55,56の圧力値が大気圧よりも低い圧力であって閾値の圧力よりも低い場合、あるいは大気圧よりも高い圧力であって閾値の圧力よりも高い場合に、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bの異常を検知することができる。
【0125】
例えば、と中間大気室55,56中あるいは連絡路にアラーム装置が設けられた構造、或いは、スライド弁1に接続された制御装置にアラーム装置が設けられた構造が採用されていれば、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bの異常をアラームによって報知することができる。従って、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bが破損し、内部リークがスライド弁1に発生し、メンテナンスが必要であることをすぐに認識することができる。
これにより、真空装置等の外部から検知することができない、スライド弁において発生した内部リーク等の不具合を確実に判断することができる。
【0126】
[接続ピン部69、供給路41]
スライド弁1には、図に二点差線で示すように、円環状エアシリンダ80に駆動用気体を供給する供給路41が形成され、この供給路41は、可動弁枠部60の躯体内部、および、中立弁部30の躯体内部、回転軸10内部を経由して、スライド弁1の外部に設けられた図示しない駆動用気体供給手段に連通するよう設けられている。
この供給路41には、可動弁枠部60と中立弁部30との流路方向位置が変化した際にも、可動弁枠部60と中立弁部30との間で駆動用気体を供給可能に摺動接続する接続ピン部69が設けられる。
【0127】
接続ピン部69は、中立弁部30に流路方向と平行に穿孔された円形断面の孔部38と、この孔部38に回動可能に勘合された棒状の接続ピン68とからなっている。孔部38の内面38aは、開口側の内面38aに比べて底部側の内面38bが縮径され、これに対応して、接続ピン68の径寸法も基部68aに対して先端68bが縮径している。そして、この径寸法が変化する部分にそれぞれ段差38c、段差68cが形成されている。
【0128】
接続ピン部69は、図に二点差線で示すように、その中心軸線付近に供給路41が形成されて管状となっており、可動弁枠部60内部の供給路41が連通されている。また、接続ピン68の先端面68daには供給路41が開口しており、この先端面68dと孔部38の底部38d付近とで形成される加圧空間69aには、中立弁部30躯体内に形成された供給路41が連通されている。
【0129】
駆動用気体供給手段から供給された圧縮空気は、中立弁部30内部の供給路41を介して空間69aに噴出し、接続ピン部69内部の供給路41および可動弁枠部60内部の供給路41を介して円環状エアシリンダ80に供給される。
【0130】
接続ピン部69においては、接続ピン68の外周面68aには孔部38の内周面38aが当接するとともに、接続ピン68の外周面68bには孔部38の内周面38bが当接している。
【0131】
接続ピン68には、孔部38内で接続ピン68が軸線方向(流路方向)に移動した場合でも、加圧面となる先端面68dと底面38dとの間ではなく、摺動方向となる面に、駆動用の圧縮空気が供給されて圧力が高い空間である加圧空間69aと、例えば圧力が低い空間である第2開口部1bに連通する第2空間側とを遮断する2重シール部が設けられる。
シール部は、加圧空間69aと中空部11との仕切り状態を確保できるものとされる。
【0132】
具体的には、接続ピン68には、接続ピン68と孔部38との間をシールする2重シール部として、Oリング等とこれを埋設する周設溝とされる円環状の太シール部68fが設けられるとともに、Oリング等とこれを埋設する周設溝とされる円環状の小シール部68gが外周面68bに設けられている。
【0133】
同時に、段差68cおよび段差38cで形成された円環状の中間大気室69cが、この2重シールの間にあり、図示しない連絡路42に連通されることで、圧縮空気が弁箱10内部に噴出して、スライド弁1内部、および、第1空間、第2空間、に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0134】
特に、加圧面となるとともにその距離が変化する先端面68dと底面38dとの間でシールするのではなく、直接的に加圧面とはならずかつ摺動面であり距離が変化しない外周面68aと内周面38aおよび外周面68bと内周面38bとの間でシールをおこなうので、より確実な密閉状態を維持することが可能となる。
このようなシール部68f、68gの構成によれば、上述した円環状エアシリンダ80における第2シール部(2重シール部)51a,51b及び第3シール部(2重シール部)52a,52bおよびガイドピン62の構成と同様の作用効果を奏することが可能となる。
【0135】
孔部38内で接続ピン68が軸線方向(流路方向)に移動中あるいは移動して流路方向の相対位置が変化した場合でも、駆動用気体供給手段から供給された圧縮空気は、中立弁部30内部の供給路41を介して空間69aに噴出し、この体積の変化した空間69aを介して、接続ピン部69内部の供給路41および可動弁枠部60内部の供給路41を介して円環状エアシリンダ80に安定的に供給される。
【0136】
以上のように、第1実施形態においては、流路方向に互いに離間接近可能な可動弁板部50と可動弁枠部60とによって構成された可動弁部40が設けられ、可動弁部40には、可動弁板部50と可動弁枠部60とを流路方向外側に向けて付勢するメインバネ70が設けられ、可動弁部40には、可動弁板部50と可動弁枠部60とを中空部11の流路方向中央位置側に向けて移動させる円環状エアシリンダ80が設けられ、可動弁枠部60を中立弁部30に接近する方向に付勢する補助バネ90が設けられることによって、可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱の内面15a、15bに押圧して、シール部61及び反力伝達部59とで確実に弁閉塞をおこなうことができる。
【0137】
また、可動弁板部50と可動弁枠部60とを中空部11の流路方向中央位置側に向けて移動させることで、弁箱10に弁体40が接触しないようにして回動させ、回動以外の動作が必要な機構に比べて小型で出力の小さい駆動機構によって退避位置まで弁体40を移動することができる。
【0138】
この構成においては、1つの可動弁部40と3つの付勢部70,80,90とによって弁体を形成することができる。また、可動弁部40の周囲領域に配置されたメインバネ70の復元力によって可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱10の内面に直接押し付けて、確実に閉弁できる。同様に、可動弁部40の周囲領域に配置された円環状エアシリンダ80に供給された圧縮空気の作用によって可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱10の内面から離間させて、確実に回動可能状態として開弁できる。従って、第1実施形態においては、簡単な構造を有し、高い信頼性で仕切り動作を行うことができるスライド弁を実現することができる。
【0139】
(第2実施形態)
図14は、本発明の第2実施形態における回転軸駆動機構200の構成を示す断面図であり、シリンダが伸位置にある時の状態である。図15は、回転軸駆動機構200の構成を示す断面図であり、シリンダが縮位置にある時の状態である。図16は、回転軸駆動機構200の構成を示す断面図であり、シリンダが中間位置にある時の状態である。
なお、これら図14〜図16に示す第2実施形態において、図1ないし図6に示した第1実施形態と同一の構成、部材には同一符号を付し、また、その説明は省略または簡略化する。
【0140】
第1実施形態においては、シリンダ本体111の内部空間111bに収容されているピストン112は1つであり、このピストン112の停止位置として伸位置Paと縮位置Pbの2位置が設定されていた(図8,図9参照)。
一方、以下に説明する第2実施形態においては、シリンダ本体211の第1の内部空間211bおよび第2の内部空間211cには、直列に2つのピストン212a,212bがそれぞれ収容される。そして、これら2つのピストン212a,212bがそれぞれ、3つの停止位置、即ち伸位置Pa1,Pa2,縮位置Pb1,Pb2,および中間位置Pc1,Pc2が設定される。
【0141】
こうした2つのピストン212a,212bにそれぞれ3つの停止位置が設定されることによって、図17に示す第2実施形態におけるスライド弁2の可動弁部40は、流路Hが設けられていない中空部11とされる退避位置E1、第1開口部12aに対応する位置とされる流路Hの弁閉位置E2、およびこれら退避位置E1と弁閉位置E2との中間にあって流路Hの開口面積のうち半分ほどを覆う(遮蔽する)半開位置(E3)の3つの可動弁部停止位置で停止可能にされる。
なお、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下、回転軸駆動機構200を構成するシリンダ210を中心に、その構成と作用を説明する。
【0142】
回転軸20を回転させるための回転軸駆動機構200は、回転軸20に固着されたピニオン21と、このピニオン21と噛合するラック歯22aを備えたラック部材22とを有している。
また、回転軸駆動機構200は、ラック部材22を往復運動させるためのシリンダ210を備えている。シリンダ210によって、ラック部材22は軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能とされる。
【0143】
シリンダ210は、一端側211aが閉塞された略円筒形のシリンダ本体211を有している。シリンダ本体211の内部は、中間隔壁223によって互いに仕切られた第1の内部空間211bおよび第2の内部空間211cが区画されている。
また、第1の内部空間211bに摺動可能に収容された第1ピストン221と、第2の内部空間211cに摺動可能に収容された第2ピストン222とを備えている。そして、このシリンダ本体211と第1ピストン221の一面側221aとで区画され、第1ピストン221の移動によって容量が可変する第1圧力空間224が形成される。また、シリンダ本体211と第2ピストン222の一面側222aとで区画され、第2ピストン222の移動によって容量が可変する第2圧力空間225が形成される。
【0144】
シリンダ本体211には、第1圧力空間224に連通し、外部から第1圧力空間224に空気を送り込み、又は第1圧力空間224から外部に空気を排出する通気口226が形成されている。
また、シリンダ本体211には、第2圧力空間225に連通し、外部から第2圧力空間225に空気を送り込み、又は第2圧力空間225から外部に空気を排出する通気口227が形成されている。
これら通気口226,227は、それぞれ外部に例えばポンプが接続されていれば良い。
【0145】
第1ピストン221は、中心部分が一面側221aから第2圧力空間225に向けて延びる中空の突出部231が形成されている。中間隔壁223には、この突出部231を摺動可能に貫通させる貫通孔223aが形成されている。突出部231は、第1ピストン221の一面側221aが狭窄部231aとされ、中間隔壁223側に広がる中空部分よりも開口幅が狭められている。
【0146】
シリンダ本体211の一端側211aには、長ネジ232、回動ツマミ233、および長ネジ232の一端に螺合されたナット234とからなる第1ピストン規制部材235が回動可能に設けられている。
このうち、長ネジ232は一端側が第1ピストン221の突出部231における狭窄部231aを貫通し、突出部231の中空部分でナット234が締結されている。このナット234の外径は、狭窄部231aの開口幅よりも大きい。
【0147】
一方、第2ピストン222の一面側222aには、突起部222bが形成されている。そして、この突起部222bの一端には、緩衝材236が形成されている。第1ピストン221と第2ピストン222とは、突出部231の第2ピストン222側の外面(底面)と突起部222bとで当接し、こうした当接部分においては、この緩衝材236を介して第1ピストン221と第2ピストン222とが当接する。緩衝材236は、例えば、ゴム、ゲルなど弾性材料、スポンジなどの多孔質材料から構成されていればよい。
こうしたと第2ピストン222の他面側222cには、接続部222dを介してラック部材22が固着される。
【0148】
第1ピストン221は、シリンダ本体211の第1の内部空間211bにおいて、軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能に収容されている。こうした第1ピストン221は、第1圧力空間224が最大に拡張され、第1の内部空間211bにおいて最も一端側221aから遠ざかった位置、即ち第1ピストン221の他面側221bが中間隔壁223に接する位置にある伸位置Pa1(図14)と、第1の内部空間211bが最小に縮小され、最も一端側211aに接近した位置にある縮位置Pb1(図15)と、この伸位置Pa1と縮位置Pb1の中間付近にある中間位置Pc1(図16)の3位置の停止位置が設定される。
【0149】
なお、第1ピストン221は、第1ピストン規制部材235によって、伸位置Pa1(図14)における停止位置を微調整することが可能されている。即ち、第1ピストン規制部材235の回動ツマミ233を回すことによって、突出部231の内面に接して回動が抑止されたナット234と、長ネジ232との位置を変化させることができる。
【0150】
これによって、例えば、ナット234の長ネジ232に対する締結位置をシリンダ本体211の一端側211aに寄せた位置にすると、第1ピストン221が伸位置Pa1に向けて移動させる際に、狭窄部231aにナット234が当接し、第1ピストン221はそれ以上中間隔壁223に向かって移動することができなくなる。これによって、第1ピストン221の伸位置Pa1における停止位置を微調整、即ち、回転軸20を介して接続された可動弁部40の弁開位置E1における停止位置を微調整することが可能になる。
【0151】
第2ピストン222は、シリンダ本体211の第2の内部空間211cにおいて、軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能に収容されている。こうした第2ピストン222は、第2圧力空間225が最大に拡張され、第2の内部空間211cにおいて最も中間隔壁223から遠ざかった位置にある伸位置Pa2(図14)と、第2の内部空間211cが最小に縮小され、第2ピストン222の一面側222aが中間隔壁223に近接、ないし接した位置にある縮位置Pb2(図15)と、この伸位置Pa2と縮位置Pb2の中間付近にある中間位置Pc2(図16)の3位置の停止位置が設定される。
【0152】
ラック部材22は、軸線(長手方向)Cに垂直な断面が円形を成す丸棒状に形成されている。そして、この丸棒状のラック部材22の周面の一部には、ラック歯22aが軸線(長手方向)Cに沿って所定のピッチで配列形成されている。また、回転軸20に固着されたピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sの両側にはそれぞれ、ラック部材22を摺動可能に支持する滑り軸受115,115が配されている。
【0153】
以上のような構成の回転軸駆動機構200を備えたスライド弁2の作用を説明する。例えば、図15に示す縮位置Pb1,Pb2にそれぞれ第1ピストン221,第2ピストン222がある場合には、この第2ピストン222に固着されたラック部材22からピニオン21を介して連動(回転)される回転軸20が、図9中の反時計回りに回転した状態とされ、この回転軸20の位置においては、回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの弁閉位置E2(図17)に置かれる。
【0154】
一方、この縮位置Pb1,Pb2から第1ピストン221,第2ピストン222をそれぞれ、図14に示す伸位置Pa1,Pa2、即ち、可動弁部40の弁開位置E2に移動させる際には、第1圧力空間224内および第2圧力空間225内にそれぞれ、通気口226,227から空気を送り込む。すると第1圧力空間224,および第2圧力空間225の内圧それぞれが高まることによって、第1ピストン221,および第2ピストン222は、軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体211の一端側211aから遠ざかる方向に移動(摺動)し、第1圧力空間224,および第2圧力空間225の内容積がそれぞれ広がる。
【0155】
第1ピストン221,および第2ピストン222がシリンダ本体211の一端側211aからそれぞれ遠ざかる方向に移動すると、第2ピストン222に固着されたラック部材22は、ラック歯22aと噛合するピニオン21を図15中の時計回り方向に回転させる。これによって、回転軸20も時計回り方向に回転され、この回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図17)に振り子運動で移動する。
【0156】
こうした第1ピストン221,第2ピストン222を伸位置Pa1,Pa2に移動させる際に第1ピストン規制部材235によって、第1ピストン221の伸位置Pa1における停止位置を微調整することにより、第1ピストン221の伸位置Pa1における停止位置を微調整、即ち、回転軸20を介して接続された可動弁部40の弁開位置E1における停止位置を微調整することが可能になる。
【0157】
次に、この第1ピストン221,第2ピストン222をそれぞれ伸位置Pa1,Pa2から中間位置Pa3,Pa3、即ち可動弁部40の半開位置E3に移動させる際には、図18(a)に示すように、まず、第1圧力空間224内の空気を通気口226から排出して第1圧力空間224を縮める(縮小させる)。これによって、第1ピストン221は、軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体211の一端側211aに近づく方向に向けて移動(摺動)する。そして、所定の中間位置Pc1で停止させる。なお、第1ピストン221の停止位置は、第1圧力空間224内の内圧調整によって設定すればよい。また、第1ピストン221をシリンダ本体211の一端側211aに向けて移動させる際に、長ネジ232に螺合されたナット234の位置調整によって、第1ピストン221の移動を制限することで所定の中間位置Pc1で停止させてもよい。
【0158】
その後、第2圧力空間225内の空気を通気口227から排出して第2圧力空間225を縮める(縮小させる)。この時、第2ピストン222の突起部222bが第1ピストン221の突出部231に衝突する(図18(a))。しかしながら、第2ピストン222の突起部222bには、緩衝材236が形成されているので、中間位置Pc1で停止している第2ピストン222の突起部222bにはこの緩衝材236を介して当接することになる。これによって、衝突の衝撃は緩衝材236によって吸収され、第2ピストン222の移動によって第1ピストン221に強い衝撃が加わることを防止できる。
【0159】
そして、第2ピストン222の突起部222bが緩衝材236を介して第1ピストン221の突出部231に当接した位置で第2ピストン222が停止し、第2ピストン222は中間位置Pc2に配置される。
こうした第1ピストン221および第2ピストン222が、それぞれ中間位置Pc1,Pc2にある時は、回転軸20に中立弁部30を介して固定された可動弁部40は、流路Hの半開位置E3(図17)に位置する。こうした半開位置E3においては、可動弁部40が流路Hを半分ほど覆う形となり、例えば、流路Hの開口面積が弁開位置E1の半分ほどに制限される。このような半開位置E3を設定することによって、スライド弁2を通過する流量を弁開位置E1よりも制限する弁位置として適用することができる。
【0160】
なお、こうした回転軸駆動機構200においても、第一実施形態の回転軸駆動機構100と同様に、第1ピストン221や第2ピストン222に対して緩衝溝を形成し、これら第1ピストン221や第2ピストン222が縮位置Pb1,Pb2に向けて移動する際に、シリンダ本体211に対して第1ピストン221や第2ピストン222が緩やかに当接する構成とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、真空装置等において、真空度や温度あるいはガス雰囲気等性質の異なる2つの空間を連結している流路を仕切る状態と、この仕切り状態を開放した状態を切り替える用途のスライド弁に広く適用できる。
【符号の説明】
【0162】
1…スライド弁、 5…中立弁体、 10,10a,10b…弁箱、 11…中空部、 12a…第1開口部、 12b…第2開口部、 17,18…流体経路リング、 20…回転軸、 21…ピニオン、 22…ラック、 26…弁軸、 30…中立弁部、 40…可動弁部、 41…供給路、 42…連絡路、 50…可動弁板部(第2可動弁部)、 51a,51b…第2シール部、 52a,52b…第3シール部、 53,54…ワイパー、 55,56…中間大気室、 60…可動弁枠部(第1可動弁部)、 61…第1シール部、 62…ガイドピン、 68…接続ピン、68A…フローティングピン、 69…接続ピン部、 70…メインバネ(第1付勢部)、 80…円環状エアシリンダ(第2付勢部)、 90…補助バネ(第3付勢部)、 91…接続部材、 110…シリンダ(回転軸駆動用シリンダ)、 111…シリンダ本体、 112…ピストン、 113…圧力空間、 114…通気口、 118…緩衝溝、 236…緩衝材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体(弁板)による流路を開閉する動作に加えて、弁体をスライド動作させる振り子型に適したスライド弁に関する。特に、本発明は、真空装置等において、異なる圧力、及び異なるプロセスを行う2つの空間をつなげている流路を仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放し(2つの空間をつなぐ)、または流路を一部制限する(流路の開口面積を制限し)スライド弁に関する。
【背景技術】
【0002】
真空装置等においては、チャンバーと配管との間、配管と配管との間、あるいは配管とポンプ等との間等、異なる真空度の2つの空間の間を仕切り、仕切られた2つの空間をつなげる仕切りバルブが設けられている。このような仕切りバルブとしては、様々な形態の弁が知られている。
【0003】
例えば、弁板をスライドさせて流路の弁開閉位置に弁板を挿入し、更にこの弁板を作動させて流路を仕切り(閉弁動作)、あるいは上記弁板を作動させて流路をつなぎ(開弁動作)、更に弁板をスライドさせ、流路から弁箱内の退避位置に弁板を退避させる構造が知られている。このような構造を有する弁としては、振り子型,直動型,ドア型等が知られている。
【0004】
直動型スライド弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成された弁箱の中空部に、弁棒(支持体)に固設された弁板が配置された構造を有する。この構造においては、上記弁棒をその長手方向に直動させて、上記弁板を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁板を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0005】
従来の上記直動型スライド弁としては、ベローズで接続された2枚の第1弁板及び第2弁板からなる弁体と、この2つの弁板の間において弁板の中央部に配置されたアクチュエータと、流路を構成する開口部が形成された弁箱とを備えたスライド弁が知られている。このスライド弁においては、アクチュエータによって、弁箱の開口部の周囲の内面に第1弁板を当接及び押圧させて流路を閉鎖し、または、アクチュエータによって第1弁板を上記弁箱の内面から離間させて流路を開放する(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、振り子型スライド弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成されかつ中空部を有する弁箱と、中空部において回転軸に固設されて回転軸と垂直をなす面に平行な方向において広がっている支持体と、この支持体に固設された弁体(シールリング板が開口部に設けられている構造の場合には弁板)とが配置された構造を有する。このスライド弁においては、上記回転軸を回転させて、上記弁体を回動させ、上記弁体を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁体を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0007】
従来の上記振り子型スライド弁としては、ハウジングの中空部内に、回転軸において回動可能な弁板と、ハウジングの開口部に配置された摺動可能なシールリング板と、ハウジングに一体形成されたフランジに上記シールリング板を摺動させるアクチュエータとが設けられた構造が知られている。このスライド弁においては、上記シールリング板を上記弁板に当接及び押圧して流路を閉鎖し、または、上記シールリング板を上記弁板から離間させて流路を開放する(例えば特許文献2参照)。
【0008】
こうした振り子型スライド弁において、弁板を回動させるための機構として、弁板が取り付けられた回転軸に固着されたピニオンギアと、このピニオンギアに噛合するラックギアが形成されたラック部材と、ラック部材を直線運動(往復運動)させるシリンダからなる弁板回転機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−181205号公報
【特許文献2】特許第3655715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来のスライド弁においては、筒状のシリンダ本体内を摺動するピストンが収縮する、即ちシリンダ本体の圧力空間が減少する方向にピストンが移動する際に、ピストンの移動方向の終端部分でピストンがシリンダ本体の内壁に衝突するなどして、ピストンが急減速する構造となっていた。
このため、ピストンに固着されたラック部材から回転軸を介して接続された弁体も回動が急に停止することになり、弁体に強い応力が加わることで弁体にダメージが及ぶ虞があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で高い信頼性の仕切り動作が可能なスライド弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は、次のようなスライド弁を提供した。
すなわち、本発明のスライド弁は、スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させる回転手段と、
前記弁箱内において前記回転軸に固着され、前記中立弁部を脱着可能に保持する接続部材と、を具備するものとされ、
前記中立弁体は、前記接続部材を介して前記回転軸に接続される中立弁部と、該中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される可動弁部と、を有し、
前記回転手段は、前記回転軸の軸心周りに形成されたピニオンと、該ピニオンに噛合するラック歯を備えたラック部材と、該ラック部材を直線運動させるシリンダと、を有し、
前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分の両側にはそれぞれ、前記ラック部材を摺動可能に支持する滑り軸受が配され、
前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復運動可能なピストンとからなり、前記シリンダ本体の一端側と前記ピストンとの間で圧力空間を成し、
前記シリンダ本体には、前記圧力空間と外部との間を連通させる通気口を有し、前記ピストンには、前記往復運動方向に沿って断面積が連続的に変化し、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて徐々に通気させる緩衝溝が形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記ピストンは、第1ピストンと、該第1ビストンと前記シリンダ本体の一端側との間に配された第2ピストンと、からなり、
前記第1ピストンと前記第2ピストンとの当接部分には、緩衝材が配されてなることを特徴とする。
【0014】
前記ラック部材は長手方向に垂直な断面が円形を成し、かつ、前記長手方向に沿った2箇所以上で、前記滑り軸受によって摺動自在に支持されることを特徴とする。
【0015】
前記滑り軸受は、前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分に生じる前記ラック部材の作用線と、前記ラック部材の軸中心線との交点よりも、前記噛合部分から遠ざかる方向に配されていることを特徴とする。
【0016】
前記ラック部材の表面には、長手方向に沿って延びる溝が更に形成されていることを特徴とする。
【0017】
前記可動弁部には、該弁板に周設され前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに、
前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される第1可動弁部と、
前記第1可動弁部を前記流路方向前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着可能とする第1付勢部と、
前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、
前記第1付勢部の付勢力に対抗して前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向厚み寸法を収縮可能なように駆動する第2付勢部と、
前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との流路方向厚み寸法変化に対応して、前記第1可動弁部を前記中立弁体に対して流路方向位置変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向中央位置側に付勢する第3付勢部と、を具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態のスライド弁においては、ピストンを伸位置から縮位置に移動させる際に、圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止、即ちラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力が加わらないように、ピストンに形成された緩衝溝によって、ピストンの縮位置への移動を滑らかに変化させる。
【0019】
即ち、圧力空間の内圧を減少させてピストンの縮位置に向けて移動させる際に、圧力空間の内圧が急に高まり(圧力空間が圧縮され)、ピストンの移動速度が急激に減少する方向に力が働く。しかしながら、圧力空間内の空気は緩衝溝を介して通気口に誘導され、この緩衝溝は、ピストンの一面側からシリンダ本体の一端側に向かって断面積が広がるように形成されているので、ピストンが縮位置に近づくほど、緩衝溝の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストンが縮位置に至る直前では、圧力空間から通気口に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、圧力空間の内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストンを緩やかに縮位置で停止させることができる。よって、圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止を防止し、ラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す横断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が退避動作可能位置とされている場合を示す図である。
【図3】図2における回転軸の駆動用シリンダを示す要部拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が弁閉位置とされている場合を示す図である。
【図5】図4におけるメインバネ付近の要部拡大図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が退避位置とされている場合を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リング付近の要部を拡大して示す径方向断面図(a)、軸方向断面図(b)である。
【図8】本発明の第1実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(伸位置)である。
【図9】本発明の第1実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(縮位置)である。
【図10】緩衝溝の作用を示す断面図である。
【図11】ラック部材、および滑り軸受を示す要部拡大断面図である。
【図12】ラック部材とピニオンとの噛合部分を示す要部拡大断面図である。
【図13】回転軸と中立弁体との係合部分を示す要部拡大図である。
【図14】本発明の第2実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(伸位置)である。
【図15】本発明の第2実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(縮位置)である。
【図16】本発明の第2実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(中間位置)である。
【図17】本発明の第2実施形態におけるスライド弁の構成を示す横断面図である。。
【図18】本発明の第2実施形態における緩衝材の作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るスライド弁の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
また、以下の説明に用いられる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
本発明の技術範囲は、以下に述べる実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態におけるスライド弁の構成を示す平面図である。図2は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避動作可能位置とされている場合を示す図である。図3は、図2の中立弁部と第1可動弁部の接続部分および第1と第2との付勢部付近を示す要部拡大図である。図4は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が密閉閉塞位置とされている場合を示す図である。図5は、図4の中立弁部と第1可動弁部の接続部分および第1と第2との付勢部付近を示す要部拡大図である。図6は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避位置とされている場合を示す図である。
【0023】
[振り子型スライド弁]
第1実施形態のスライド弁1は、図1〜図6に示すように、振り子型スライド弁である。
このスライド弁1は、互いに対向した第1開口部12aと第2開口部12bとが設けられた弁箱10と、弁箱10を貫通した切り替え手段としての回転軸20と、回転軸20に固着された接続部材91と、この接続部材91を介して回転軸20に接続された中立弁部30と、回転軸20の軸線方向に移動可能として中立弁部30に接続された可動弁部40と、可動弁部40の厚さ方向寸法を拡大する方向に付勢されるメインバネ(第1付勢部)70と、メインバネ70の付勢方向と反対方向に伸張可能な駆動用の円環状エアシリンダ(第2付勢部)80と、可動弁部40を弁箱10の中央位置側にしようとする位置規制用の補助バネ(第3付勢部)90と、を備えている。
【0024】
中立弁部30及び可動弁部40は、中立弁体5を構成している。また、可動弁部40は、第2可動弁部(可動弁板部)50と第1可動弁部(可動弁枠部)60とによって構成されている。第1開口部12aから第2開口部12bに向かって流路Hが設定されている。なお、以下の説明において、この流路Hに沿った方向を流路方向Hと称することがある。
【0025】
回転軸20が符号A1で示された方向(流路Hの方向に交差する方向)に回転すると、この回転に従って、接続部材91を介して回転軸20に固定されている中立弁部30も方向A1に沿って回動する。また、可動弁部40は中立弁部30に厚さ方向のみ摺動可能として接続されているため、可動弁部40は、中立弁部30と一体に回転する。
このように中立弁部30を回転することにより、流路Hが設けられていない中空部11とされる退避位置E1から第1開口部12aに対応する位置とされる流路Hの弁閉位置E2に可動弁部40が振り子運動で移動する。
【0026】
そして、メインバネ70が伸張する方向に作用することで流路H方向に可動弁部40の厚さ寸法が拡大する動作により(閉弁動作)、後述するように、可動弁枠部60のシール部61と、可動弁板部50の反力伝達部59とが、それぞれ、弁箱10の内面15aと内面15bとを押圧することにより、可動弁部40は流路Hを閉鎖する。
【0027】
逆に、円環状エアシリンダ80が作用することで、メインバネ70の付勢力に円環状エアシリンダ80の押圧力が打ち勝って流路H方向に可動弁部40の厚さ寸法が収縮する動作により可動弁部40が表裏とも弁箱10の内面15aおよび内面15bから離間した後に(解除動作)、回転軸20が符号A2で示された向きに回転する(退避動作)と、この回転に従って中立弁部30および可動弁部40も向きA2に回動する。
この解除動作と退避動作とにより、可動弁部40は上記弁開閉位置から上記退避位置に退避して弁開状態とする弁開動作がおこなわれる。
【0028】
[弁箱10]
弁箱10は、中空部11を有するフレームによって構成されている。フレームの図示上面には第1開口部12aが設けられており、フレームの図示下面には第2開口部12bが設けられている。
スライド弁1は、第1開口部12aが露出されている空間(第1空間)と第2開口部12bが露出されている空間(第2空間)の間に挿入される。スライド弁1は、第1開口部12aと第2開口部12bとをつなげている流路H、即ち、第1空間と第2空間とをつなげている流路Hを仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放する(第1空間と第2空間をつなぐ)。
弁箱10の中空部11には、回転軸20、中立弁部30、可動弁部40、メインバネ(第1付勢部)70、円環状エアシリンダ(第2付勢部)80、及び補助バネ(第3付勢部)90が設けられている。
【0029】
[回転軸20、流体経路リング17,18]
回転軸20は、流路Hとほぼ平行状態に延在して弁箱10を貫通するとともに回転可能に設けられている。
この回転軸20には、接続部材91が固着されている。この接続部材91は、例えば略平板状の部材であり、図7に示すように、回転軸20の一端20aに対してネジ92によって固着される。図7(b)に示すように、接続部材91は、流路方向Hに沿った一端側が広がった略T字状の断面形状を成す突起部93が形成されている。
【0030】
回転軸20は、図7に示すように、弁箱10に固設されるケーシング14に、ベアリング等とされる軸受16A,16Bを介して、この弁箱10を貫通して回動可能に支持されている。軸受16A,16Bは、回転軸20の軸線LL方向に可能な限り離間して配置される。
【0031】
ケーシング14は、弁箱10に対して密閉状態として貫通するように固定されるとともに、回転軸20が密閉状態で回動自在に貫通するシールケーシング14Aと、このシールケーシング14Aに接続され、その内周側に設けられた軸受16A,16Bを介して回転軸20を回動自在に支持する円筒ケーシング14Bと、円筒ケーシング14Bの一端を閉塞する蓋体ケーシング14Cとからなり、これらは互いに固定接続されている。蓋体ケーシング14Cには回転軸20を挿抜可能な開孔を閉塞する蓋体14Dが設けられる。
【0032】
シールケーシング14Aには、弁箱10内部をシールするために、シール部14Aa、14Ab,14Acおよび、大気圧の空間(空隙)である中間大気室14Adが設けられている。
円筒ケーシング14Bの内周面側には、軸線LL方向における軸受16A,16Bの間の位置に、流体経路リング17,18が、回転軸20の外周面20bに摺動可能に接触するように固定されている。
【0033】
回転軸20の外周面20bの流体経路リング17,18の間の中心位置には、この回転軸20を駆動させる(回転させる)ための回転軸駆動機構100(図8参照)を構成するピニオン21が固着される。ピニオン21は外部と連通した大気圧状態におかれている。このピニオン21には、図7において紙面奥行方向に往復動作することで、ピニオン21を介して回転軸20を回動させる丸棒状のラック部材22が接続される。
【0034】
[回転軸駆動機構100]
図8は、回転軸駆動機構100を示す概要図である。
回転軸20を回転させるための回転軸駆動機構100は、回転軸20に固着されたピニオン21と、このピニオン21と噛合するラック歯22aを備えたラック部材22とを有している。
また、回転軸駆動機構100は、ラック部材22を往復運動させるためのシリンダ(回転軸駆動用シリンダ)110を備えている。シリンダ110によって、ラック部材22は軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能とされる。
【0035】
シリンダ110は、一端側111aが閉塞されたシリンダ本体111と、このシリンダ本体111の内部空間111bに摺動可能に収容されたピストン112とを備えている。そして、このシリンダ本体111とピストン112の一面側112aとで区画され、ピストン112の移動によって容量が可変する圧力空間113が形成される。また、シリンダ本体111には、この圧力空間113に連通し、外部から圧力空間113に空気を送り込み、又は圧力空間113から外部に空気を排出する通気口114が形成されている。こうした通気口114は、外部に例えばポンプが接続されていれば良い。
【0036】
ピストン112は、シリンダ本体111の内部空間111bにおいて、軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能に収容されている。こうしたピストン112は、圧力空間113が最大に拡張され、シリンダ本体111の内部空間111bにおいて最も一端側111aから遠ざかった位置にピストン112がある伸位置Pa(図8)と、圧力空間113が最小に縮小され、最も一端側111aに接近した位置にピストン112がある縮位置Pb(図9)との間で摺動可能にされている。
【0037】
また、ピストン112の一面側112aには、突起部112cが形成されている。シリンダ本体111の一端側111aには、ピストン112が縮位置Pbにある時に突起部112cが入り込む凹部111cが形成されている。通気口114の一端側は、この凹部111cで露呈する位置に形成されている。また、ピストン112の他面側112bには、接続部112dを介してラック部材22が固着される。
【0038】
ピストン112の突起部112cには、ピストン112の往復運動方向、即ち軸線(長手方向)Cに沿って断面積が連続的に変化し、圧力空間113内の空気を通気口114に向けて徐々に通気させる緩衝溝118が形成されている。
具体的には、図10に示すように、緩衝溝118は、ピストン112の突起部112cに形成された、ピストン112の一面側112aからシリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように、軸線(長手方向)Cに対して傾斜した溝からなる。
【0039】
ラック部材22は、図8、9,11に示すように、軸線(長手方向)Cに垂直な断面が円形を成す丸棒状に形成されている。そして、この丸棒状のラック部材22の周面の一部には、ラック歯22aが軸線(長手方向)Cに沿って所定のピッチで配列形成されている。
【0040】
回転軸20に固着されたピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sの両側にはそれぞれ、ラック部材22を摺動可能に支持する滑り軸受115,115が配されている。この滑り軸受115,115は、図10に示すように、ラック部材22の断面よりも僅かに大きい断面円形の開口115aが形成され、この開口115aを取り囲むように配列されたベアリング(図示略)によって、丸棒状のラック部材22を軸線(長手方向)Cに沿って円滑に摺動可能に支持する。
【0041】
また、図8に示すように、ラック部材22の表面(周面)には、軸線(長手方向)Cに沿って延びる溝(長溝)116が形成されている。また、例えばラック部材22に隣接するケーシング(図示略)には、この溝(長溝)116に入り込むボス117が形成されている。こうした溝(長溝)116は、ボス117との係合によって、ラック部材22が軸線C周りに回動することを防止する。これによって、ラック部材22が往復運動する際に軸線C周りに捩れることがない。
【0042】
図12は、滑り軸受115の配置位置を示す説明図である。
滑り軸受115,115は、ピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sに生じるラック部材22の作用線(の延長線)L1,L2と、ラック部材22の軸心(軸中心線)Cとの交点P1,P2よりも、噛合部分Sから遠ざかる方向に配されるのが好ましい。
【0043】
即ち、2つの噛合歯であるピニオン21とラック歯22aとの接触点の移動方向である作用線L1,L2が、それぞれラック部材22の軸心(軸中心線)Cと交差する点を交点P1,P2としたときに、滑り軸受115,115の中心線Qがこの交点P1,P2よりも外側になるように、滑り軸受115,115をそれぞれ配置する。
【0044】
滑り軸受115,115の配置位置を上述したように設定することによって、滑り軸受115,115は、ピニオン21の回転によって生じる外力、即ちピニオン21から遠ざかる方向に向かう力を受けることがなくなる。これによって、滑り軸受115,115は、ラック部材22との接触部分において、軸心(軸中心線)Cに直角な方向の応力が加わることを防止して、ラック部材22との摩擦力を低減して円滑に摺動可能にラック部材22を保持することが可能になる。
【0045】
以上のような構成の回転軸駆動機構100によれば、例えば、図9に示す縮位置Pbにピストン112がある場合には、このピストン112に固着されたラック部材22からピニオン21を介して連動(回転)される回転軸20が、図9中の反時計回りに回転した状態とされ、この回転軸20の位置においては、回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの弁閉位置E2(図1)に置かれる。
【0046】
一方、この縮位置Pbから、図8に示す伸位置Paにピストン112を移動させる際には、シリンダ本体111の内面とピストン112の一面側112aとで区画された圧力空間113内に、通気口114から空気を送り込む。すると圧力空間113の内圧が高まることによって、ピストン112は軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体111の一端側111aから遠ざかる方向に移動(摺動)し、圧力空間113が広がる。
【0047】
ピストン112がシリンダ本体111の一端側111aから遠ざかる方向に移動すると、ピストン112に固着されたラック部材22は、ラック歯22aと噛合するピニオン21を図8中の時計回り方向に回転させる。これによって、回転軸20も時計回り方向に回転され、この回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図1)に振り子運動で移動する
【0048】
このように、回転軸駆動機構100を構成するシリンダ本体111内の圧力空間113の内圧を可変させ、ピストン112を伸位置Pa(図8)と縮位置Pb(図9)との間で直線運動させることによって、ラック部材22、ピニオン21を介して回転軸20を回動させ、可動弁部40を流路Hに対して退避位置E1と弁閉位置E2(図1)との間で移動させることができる。
【0049】
以上のようなピストン112の伸位置Paと縮位置Pbとの間の移動において、特にピストン112を伸位置Paから縮位置Pbに移動させる際に、圧力空間113の急激な縮小によるピストン112の急停止、即ちラック部材22とピニオン21との噛合部分Sに急激に大きな応力が加わらないように、ピストン112の突起部112c形成された緩衝溝118によって、ピストン112の縮位置Pbへの移動を滑らかに変化させる。
【0050】
例えば、図10(a)に示すように、圧力空間113の内圧を減少させてピストン112の縮位置Pbに向けて移動させる際に、突起部112cがシリンダ本体111の凹部111cに入り込む位置まで移動してくると、突起部112cの周縁に広がる圧力空間113aの内圧が急に高まり(圧力空間113aが圧縮され)、ピストン112の移動速度が急激に減少する方向に力が働く。
【0051】
しかしながら、突起部112cに形成された緩衝溝118によって、圧力空間113a内の空気はこの緩衝溝118を介して通気口114に誘導される。即ち、圧力空間113aは緩衝溝118を介して通気口114に連通される。
【0052】
しかも、この緩衝溝118は、ピストン112の一面側112aからシリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように形成されているので、図10(b)に示すように、ピストン112が縮位置Pb(図9)に近づくほど、緩衝溝118の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストン112が縮位置Pbに至る直前では、圧力空間113aから通気口114に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、圧力空間113aの内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストン112を緩やかに縮位置Pbで停止させることができる。よって、圧力空間113の急激な縮小によるピストン112の急停止を防止し、ラック部材22とピニオン21との噛合部分S(図12)に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
【0053】
流体経路リング17と流体経路リング18とは、回転軸20とほぼ等しい内径とされ、ピニオン21よりも弁箱10側の流体経路リング17の外径がベアリング16Aの外径より大きくかつピニオン21の外径寸法よりも小さく設定され、ピニオン21よりも蓋体14D側の流体経路リング18の外径がピニオン21の径寸法よりも大きく設定されている。ベアリング16A,16Bで支持された回転軸20が回動すると、流体経路リング17と流体経路リング18とに対して、接触位置が周方向に変化することになる。
【0054】
流体経路リング17には、第2周囲領域40aにおいて可動弁板部50と可動弁枠部60との間に形成された円環状エアシリンダ80に駆動用気体を供給する供給路41の一部とされる流体経路として、径方向に延在しその外周面17a及び内周面17bに開口する径方向リング経路17cが設けられる。この径方向リング経路17cの外周面17a側は円筒ケーシング14Bの径方向に貫通する経路14Bcに連通している。
【0055】
流体経路リング18には、第2周囲領域40aにおいて可動弁板部50と可動弁枠部60との間に形成された円環状エアシリンダ80に設けられた2重シール部において2重目のシールs1a,52aより気体供給側に設けられた中間大気室55に接続され、1重目のシール51b,52bが破れた際に駆動用気体をスライド弁1外部に向けて逃がす連絡路42の一部とされる流体経路として、径方向に延在しその外周面18a及び内周面18bに開口する径方向リング経路18cが設けられる。この径方向リング経路18cの外周面18a側は円筒ケーシング14Bの径方向に貫通する経路14Ccに連通している。
【0056】
流体経路リング17には、内周面17bに溝17dが周設され、回転軸20外周面20bとで囲まれることで周方向経路となっている。
溝17dに対向する位置とされる回転軸20外周面20bには、径方向軸内経路27が開口し、径方向軸内経路27は、回転軸20の軸線LL方向に延在して回転軸20の一端面20aに開口する軸方向軸内経路25に連通している。
【0057】
流体経路リング18には、内周面18bに溝18dが周設され、回転軸20外周面20bとで囲まれることで周方向経路となっている。
溝18dに対向する位置とされる回転軸20外周面20bには、径方向軸内経路28が開口し、径方向軸内経路28は、回転軸20の軸線LL方向に延在して回転軸20の一端面20aに開口する軸方向軸内経路26に連通している。
【0058】
これら軸方向軸内経路25と軸方向軸内経路26とは、互いに平行状態でかつ軸線LLに平行とされ、回転軸20の蓋体14D側の他端20c側は閉塞されている。
軸方向軸内経路25と軸方向軸内経路26とは、いずれも、中立弁部30内部の供給路41及び、連絡路42に接続されている。
【0059】
流体経路リング17には、内周面17bと回転軸20外周面20bとの間において径方向軸内経路27の開口部分および溝17dを摺動可能にシールするOリング等のシール部材17h,17j,17kが周設されている。
流体経路リング17には、外周面17aと円筒ケーシング14B内面との間において径方向リング経路17cの開口部分および経路14BcをシールするOリング等のシール部材17e,17f,17gが周設されている。
【0060】
流体経路リング18には、内周面18bと回転軸20外周面20bとの間において径方向軸内経路27の開口部分および溝18dを摺動可能にシールするOリング等のシール部材18h,18j,18kが周設されている。
流体経路リング18には、外周面18aと円筒ケーシング14B内面との間において径方向リング経路18cの開口部分および経路14CcをシールするOリング等のシール部材18e,18f,18gが周設されている。
【0061】
こうした流体経路リング17と流体経路リング18によって、回転軸20がどのような回動位置になっても、径方向軸内経路27と径方向軸内経路28が連通した状態を維持できるため、密閉度よく、駆動用流体の供給等を行うことができる。しかも、供給路41と連絡路42とを、独立してそれぞれ接続しているので、回転軸20の回動位置にかかわらず、異なる圧力状態あるいは、異なるガス状態の2系統を弁体10内部に影響を与えずに、制御することが可能となる。
【0062】
[中立弁部30、接続部材91]
中立弁部30は、回転軸20の軸線に対して直行する方向に延在し、この方向に平行な面を有している。図1に示すように、中立弁部30は、可動弁部40に重なる円形部30aと、回転軸20の回転に伴って円形部を回転させる回転部30bとを有する。回転部30bは、回転軸20と円形部30aとの間に位置しており、回転部30bの幅は回転軸20から円形部30aに向けて徐々に増加している。これら回転軸20、中立弁部30は、弁箱10に対して回動はするが、流路H方向には位置変動しないように設けられている。
【0063】
中立弁部30の一端には、図13に示すように、接続部材91の突起部93と嵌合する凹部95が形成されている。この凹部95は、その断面形状が接続部材91の断面形状と合致する略T字状を成す。こうした凹部95は、中立弁部30の流路方向Hにおける一面側30Aと他面側30Bの両側に、それぞれ凹部95A,95Bとして形成されている。これによって、回転軸20は、中立弁部30に対して流路方向Hに沿った上側と下側のいずれにも選択的に接続することができる。
【0064】
あるいは、回転軸20に対して、中立弁体5全体を両面どちらにも取り付けることができる。即ち、接続部材91の凹部95Aの側に中立弁体5を取り付ければ、スライド弁1の閉弁時において、可動弁部40が第1開口部12aを塞ぐ向きとなる。逆に、接続部材91の凹部95Bの側に中立弁体5を取り付ければ、可動弁部40が第2開口部12abを塞ぐ向きにとなる。
【0065】
図13に示すように、接続部材91に形成された突起部93と、中立弁部30に形成された凹部95とは互いに嵌合される。図13(a)に示すように、接続部材91と中立弁部30とは、係合状態において、流路方向Hに沿って互いに平行に広がり第1間隔t1で離間した一組の第1平行面96a,96bと、流路方向Hに沿って互いに平行に広がり第1間隔t1よりも広い第2間隔t2で離間した一組の第2平行面97a,97bとで互いに接触している。
【0066】
こうした一組の第1平行面96a,96b、および一組の第2平行面97a,97bは、それぞれ、流路方向Hに直角に延びる一軸Lを挟んで対称に配される。また、第1平行面96a,96bと第2平行面97a,97bとは、この一軸Lに沿って互いに重ならない位置に配される。
【0067】
接続部材91の突起部93には、図13に示すように、この一組の第1平行面96a,96bを構成する第1接触面93a,93bと、第2平行面97a,97bを構成する第2接触面93c,93dとが形成されている。そして、これら第1接触面93a,93bと第2接触面93c,93dのそれぞれを繋ぐ第1傾斜面93e,93fとともに、突起部93は全体として2段階の幅を持つ突起形状を成している。
【0068】
中立弁部30の一端に形成された凹部95は、図13に示すように、一組の第1平行面96a,96bを構成する第三接触面95a,95bと、第2平行面97a,97bを構成する第四接触面95c,95dとが形成されている。そして、これら第三接触面95a,95bと第四接触面95c,95dのそれぞれを繋ぐ第2傾斜面95e,95fとともに、凹部95は全体として2段階の幅を持つ溝形状を成している。
【0069】
回転軸20の中心には、図12に示すように、接続部材91を介して回転軸20と中立弁部30とを締結するための雄ネジ(締結具)21を貫通させる貫通穴22が形成されている。また、中立弁部30の一端に形成された凹部95には、雄ネジ(締結具)21と螺合する雌ネジ31が形成されている。更に、接続部材91には、雄ネジ(締結具)21を貫通させるネジ溝のない開口98が形成されている。
【0070】
以上の構成によって、接続部材91に形成された突起部93と、中立弁部30に形成された凹部95とを嵌合させ、更に、回転軸20の上端側から、雄ネジ21を貫通穴22および開口98に貫通させ、雄ネジ21の先端部分を、中立弁部30の雌ネジ31にネジ止めすることにより、回転軸20と中立弁部30とは、接続部材91を介して締結(固定)される。
【0071】
中立弁部30のメンテナンス、例えば、繰り返し開閉による中立弁部30の交換等で、中立弁部30を回転軸20に固着された接続部材91に取り付ける際には、中立弁部30の一端に形成された凹部95を接続部材91に形成された突起部93に対向させる。
次に、中立弁部30の凹部95を突起部93に差し込むと、凹部95の第三接触面95a,95bが、それぞれ突起部93の第1接触面93a,93bに接触する。また、凹部95の第四接触面95c,95dが、それぞれ突起部93の第2接触面93c,93dに接触する。
【0072】
こうした挿入工程での凹部95と突起部93との接触面は、第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bに限られ、突起部93の第1傾斜面93e,93fと、凹部95の第2傾斜面95e,95fとは接触しない。つまり、矢印B1で示す方向である接続方向において、回転軸20の軸線を挟んだ両側位置となる部分で周方向の取り付け位置を規制することができるので、取り付け位置、特に、回転軸20の軸線周りの中立弁部30の取り付け方向の正確性を容易に向上することができる。
【0073】
同時に、例えば、凹部95と突起部93との接触面(第1平行面96a,96b、第2平行面97a,97b)のクリアランス(隙間)を極めて小さく設定しても、凹部95を突起部93に押し込む際の摩擦力が軽減され、スムーズに凹部95と突起部93とを嵌合させることができる。
【0074】
また、互いに幅の異なる第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bで凹部95と突起部93とを接触させることによって、凹部95を突起部93に押し込む際の取付精度を向上させると共に、取付時に摩擦力の軽減によって、容易にその取付位置、即ち突起部93に対する凹部95の押し込み量を調整することができる。即ち、凹部95と突起部93との係合時には、凹部95に形成されためねじ31のネジ穴位置を、接続部材91の突起部93に形成された開口98と合致させる必要がある。
【0075】
本実施形態のように、第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bだけで凹部95と突起部93とを接触させることで、雌ネジ31のネジ穴位置と突起部93に形成された開口98とを容易に微調整しつつ合致させることができる。これによって、回転軸20の貫通穴22から開口98を介して雄ネジ(締結具)21を容易に雌ネジ31に締結することができる。また、端面93mと端面95mとを接触させることで、図13において矢印B1で示す方向である接続方向における互いの位置決めをおこなうことも可能である。
【0076】
なお、この実施形態においては、接続部材91に突起部93を、また中立弁部30の一端に凹部95を設けているが、凹凸が逆の構造とすることもできる。つまり、回転軸20に固着される接続部材に凹部を形成して、この凹部と嵌合する突起部を中立弁部の一端に形成する構造である。
【0077】
[可動弁部40、第2可動弁部(可動弁板部)50、第1可動弁部(可動弁枠部)60]
可動弁部40は略円板状とされ、円形部30aと略同心円状に形成された可動弁板部50と、この可動弁板部50の周囲を囲むように配置された略円環状の第2可動弁部60とを有する。第2可動弁部60は、中立弁部30に流路H方向に摺動可能として接続されている。
【0078】
また、可動弁板部50は、第2可動弁部60に摺動可能として嵌合されている。可動弁板部50と第2可動弁部60とは、メインバネ70及び円環状エアシリンダ80によって符号B1,B2で示された方向(往復方向)に摺動しながら移動可能である。ここで、符号B1,B2で示された方向とは、可動弁板部50および第2可動弁部60の面に垂直な方向であり、回転軸20の軸方向に平行な流路H方向である。
【0079】
また、可動弁板部50の外周付近における全領域には、内周クランク部50cが形成されている。また、可動弁枠部60の内周付近における全領域には、外周クランク部60cが形成されている。
第1実施形態においては、外周クランク部60cと内周クランク部50cとが、流路H方向と平行な摺動面50b、60bどうしで摺動可能に嵌合している。
【0080】
弁箱10の内面に対向(当接)する可動弁枠部60の表面には、第1開口部12aの形状に対応して円環状に形成された、例えば、Oリング等からなる第1シール部61(主シール部)が設けられている。
この第1シール部61は、閉弁時に可動弁部40が第1開口部12aを覆っている状態で、第1開口部12aの周縁となる弁箱10の内面15aに接触し、可動弁枠部60及び弁箱10の内面によって押圧される。これによって、第1空間は第2空間から確実に隔離される(仕切り状態が確保される)。
【0081】
[メインバネ(第1付勢部)70]
メインバネ(第1付勢部)70は、可動弁部40の最外周となる第1周囲領域40aに隣接した第1周囲領域40bに配置されている。メインバネ70においては、可動弁枠部60を第1開口部12aに向けて(B1方向)に押圧するように、同時に、可動弁板部50を第2開口部12bに向けて(B2方向)に押圧するように復元力が生じている。
【0082】
これにより可動弁部40による弁閉状態において、メインバネ70は、可動弁板部50に力を加え(付勢し)、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面15bに向けて可動弁板部50を押圧して内面15bと可動弁板部50の反力伝達部59とを当接させているとともに、同時に、可動弁枠部60に力を加え(付勢し)、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aに向けて可動弁枠部60を押圧して内面15aと可動弁枠部60の第1シール部61とを当接させている。
【0083】
第1実施形態においては、メインバネ70は、可動弁板部50に第2開口部12b側を向いて開口するよう設けられた凹部50aとこの凹部50aの対向位置に可動弁枠部60に第1開口部12a側を向いて開口するよう設けられた凹部60aとに嵌め込まれて設けられた弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、密閉されたエアダンパーなど)である。
【0084】
メインバネ70は、第1端と第2端とを有する。第1端は、可動弁板部50の凹部50aの底面に当接している。第2端は、可動弁枠部60の凹部60aの天井面に当接している。また、図1に示すように、円環状の可動弁枠部60において、複数の第1付勢部70が周方向に沿って等間隔に設けられている。
【0085】
メインバネ70を構成する弾性部材の自然長は、可動弁枠部60のシール部61と、可動弁板部50の反力伝達部59とが、それぞれ、弁箱10の内面15aと内面15bとを押圧する可動弁部40の最大厚さ寸法となった状態における可動弁板部50の凹部50aの底面と可動弁枠部60の凹部60aの天井面との間の距離よりも大きい。このため、可動弁板部50の凹部50aの底面と可動弁枠部60の凹部60aの天井面とによって圧縮されつつ凹部50aおよび凹部60aの内部に配置されているメインバネ70においては、弾性復元力(延伸力,付勢力)が生じている。この弾性復元力が作用することにより、可動弁枠部60がB1方向に、同時に、可動弁板部50がB2方向に摺動しながら、第1シール部61および反力伝達部59が弁箱10の内面に当接して押圧され、閉弁動作が行われる。
【0086】
また、メインバネ70は、第1シール部61に対する押圧力を効率よく伝達してスライド弁1の閉塞を確実にするために、第1シール部61に近接した第2周囲領域40bに配置される。具体的には、第1シール部61直下のすぐ外周位置には後述する反力伝達部59となる突条が位置するのに対し、可動弁板部50の径方向位置として、この第1シール部61を挟んだ突条(反力伝達部)59の反対側位置にメインバネ70は位置される。これにより、メインバネ70の付勢力は効率よく可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59とに伝達され、第1シール部61の変形による弁の密閉の確実性を向上することができる。
【0087】
また、メインバネ70は、第1シール部61を直接押圧できるようにするために、第1シール部61の直下付近とされる第2周囲領域40bに配置されることもできる。この場合、スライド弁においては、第1付勢部70を可動弁枠部60に設けられているので、第1付勢部70を第1シール部61の直下に位置させることが可能である。
【0088】
このように、スライド弁1においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、閉弁動作を行うメインバネ70と、開弁動作を行う第2付勢部80(後述)とが近接して設けられている。この構成において、メインバネ70及び第2付勢部80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域(第1周囲領域40a及び第2周囲領域40b)において、互いに近接するように径方向に隣接して配置されている。また、メインバネ70は、第1シール部61の直下付近に位置している。つまり、スライド弁1の構造は、第1シール部61、反力伝達部59、メインバネ70の位置関係が、作用点及び支点が存在するモーメント荷重を加える構造として効率よくシールをおこなうことができるように構成される。
【0089】
さらに、メインバネ70の付勢力が可動弁板部50と可動弁枠部60とを拡げる方向、つまり、可動弁部40の厚さを増大して、可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59とを弁箱10の内面15a,15bに押圧する方向に設定されているので、停電等によってユーティリティ設備からスライド弁1を備える装置への電力供給(エネルギー供給)が停止した場合であっても、メインバネ70において生じる機械的な力のみで確実にスライド弁1を閉じることができる。このため、フェイルセーフなスライド弁を確実に実現できる。
【0090】
一方、スライド弁40の厚さを減じる付勢がおこなわれているもの、あるいは、ユーティリティ設備から供給される電力等のエネルギーによって閉弁動作が行われている構造を有するスライド弁においては、ユーティリティ設備から装置へのエネルギー供給が停止した場合に閉弁動作を行うことができない場合がある。このため、このような構造においては、フェイルセーフなスライド弁を実現できない。
【0091】
[円環状エアシリンダ(第2付勢部)80]
円環状エアシリンダ80は、可動弁部40の最外周となる第1周囲領域40aに配置されている。円環状エアシリンダ80においては、円環状エアシリンダ80に駆動流体として圧縮空気が供給された際に、可動弁枠部60を第2開口部12bに向けて(B2方向)移動させる力(付勢力、圧縮空気に起因する力)が生じる。同時に、可動弁板部50を第1開口部12aに向けて(B1方向)に移動させる力(付勢力、圧縮空気に起因する力)が生じる。これによって、メインバネ70の付勢力に打ち勝って、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aから可動弁枠部60を離間させるのと同時に、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面15bから可動弁板部50を離間させる。
これにより、後述する補助バネ(第3付勢部)90の付勢力により体40は流路H方向において弁箱10の厚さ中央位置となりの弁箱10内で回動可能な状態となる。
【0092】
なお、可動弁部40において、第1周囲領域40aは、円環状である可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59との内側に位置する。同時に、可動弁部40において、第2周囲領域40bは、第1周囲領域40aの内側に位置する。即ち、可動弁部40の径方向において、メインバネ70は、円環状エアシリンダ80の内側に配置されている。言い換えれば、円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向(流路H方向)に交差する方向においてメインバネ70に隣接している。つまり、円環状エアシリンダ80は、可動弁部40の径方向において、シール部61および反力伝達部59、と、メインバネ70との間に位置する。
【0093】
第1実施形態においては、円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つのエアシリンダ(空隙)である。
具体的に、この円環状エアシリンダ80は、可動弁枠部60の第1開口部12aに向けて開口した凹部60dと可動弁板部50の第2開口部12bに向けて突出した凸部50dとが勘合した状態で形成され、これら環状の凹部60dと環状の凸部50dとが摺動するように形成されている。また、この円環状エアシリンダ80は、可動弁枠部60の周縁部に形成された円環状の空間、および、可動弁板部50の最外周に形成された突条(環状凸部)からなり、1つの円環シリンダ(円環空隙)として機能する。また、言い換えると、円環シリンダは、流路Hを囲むように形成されている。
【0094】
円環状エアシリンダ80に駆動用流体である圧縮空気が供給されると、第2付勢部80の体積を膨張させる膨張力(付勢力)がB1,B2方向に生じる。膨張力の大きさがメインバネ70に生じる復元力よりも大きい場合、この膨張力がメインバネ70の付勢力に打ち勝ってメインバネ70が圧縮され、可動弁板部50がB1方向に可動弁枠部60がB2方向に摺動して弁体40の厚さ方向寸法が縮小して、第1シール部61が弁箱10の内面15aから離間し、同時に、反力伝達部59が弁箱10の内面15bから離間して、開弁動作が行われる。この際、円環状の凹部60dと凸部50dとが摺動することで、可動弁板部50と可動弁枠部60との移動する方向が流路方向のみに規制されるとともに、可動弁板部50と可動弁枠部60とが、シール部61および反力伝達部59が弁箱10内面15a、15bに当接した状態から平行移動するように位置規制される。つまり、この円環状エアシリンダ80は可動弁板部50と可動弁枠部60との相対移動方向とその姿勢を規制することができる。
【0095】
[補助バネ(第3付勢部)90]
補助バネ90は、中立弁部30と可動弁枠部60との間に設けられ、弁箱10の流路方向ほぼ中央に位置する中立弁部30に対して、弁体40の厚さ寸法が縮小した際に、弁体40を弁箱10の中央よりに付勢するものである。
補助バネ90は、中立弁部30の外周位置(図2,図4では右側位置)に設けられた開口30aを貫通して可動弁枠部60に接続された棒状の位置規制部65に設けられている。補助バネ90もメインバネ70と同様に弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、密閉されたエアダンパーなど)である。
補助バネ90は、中立弁部30開口30aの第1開口部12a側に設けられたフランジ部30bと、位置規制部65の先端65aとに係止されて、可動弁枠部60を第2開口部12b側に移動するB2に向かう向きに付勢されている。
【0096】
補助バネ90は、この中立弁部30より第1開口部12a側に位置する可動弁枠部60を第2開口部12bに向けて付勢して、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aに可動弁枠部60のシール部61が当接している場合であって、円環状エアシリンダ80に駆動用流体である圧縮空気が供給された際に、可動弁枠部60が第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aから離間するように付勢している。
【0097】
これにより、円環状エアシリンダ80に圧縮空気が供給された際に、弁体40が弁箱10の流路方向ほぼ中央に向かって移動し、最終的に、弁体40が弁箱10の流路方向ほぼ中央に位置するように姿勢制御される。また、補助バネ90の付勢力は、メインバネ70の付勢力と円環状エアシリンダ80の付勢力の差よりも遙かに小さいものとされる。つまり、弁閉状態を実現するための能動的バネあるいは、アクチュエータとしてのメインバネ70や円環状エアシリンダ80に比べて、弁体の厚さ寸法を変化させるものであるから極めて小さなものでよい。
【0098】
このように、スライド弁1においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、弁体40厚さを増大する動作を行うメインバネ70と、弁体40厚さを縮小する動作を行う円環状エアシリンダ80と、弁体40を流路方向において弁箱10中央位置側にする姿勢制御をおこなう補助バネ90と、が設けられている。
【0099】
この構成において、メインバネ70及び円環状エアシリンダ80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域において、互いに近接するように並列に配置されている。円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つの円環シリンダを構成している。この構成によれば、一方向に圧縮空気第2付勢部80に供給する供給路41が1つ設けられていれば、圧縮空気を円環状の円環状エアシリンダ80に沿ってこの円環シリンダの内部に供給することができ、弁体40の厚さ寸法の伸縮(開弁動作及び閉弁動作)を行うことができるとともに、この動作中において補助バネ90により弁体40の伸縮に伴う弁体40の流路方向位置を弁箱10中央付近に容易に維持することができる。このため、簡易かつコンパクトな構成を有するアクチュエータを実現することができる。
【0100】
また、円環状エアシリンダ80は、開弁動作を行うために用いられるので、第2付勢部80において発生する力の大きさ(出力)として、第1付勢部70を圧縮することができる大きさ(出力)があれば十分である。
【0101】
第1実施形態においては、可動弁板部50と可動弁枠部60とによって1つの厚さ方向寸法を可変な可動弁部40が構成されているので、2枚の可動弁部を設ける必要がなく、簡単かつコンパクトな構造を有する可動弁部を実現することができる。
【0102】
また、中立弁部30にはアクチュエータの力、特に弁閉状態を維持するように弁体40を密閉する際にかかる力が作用しない。このため、中立弁部30には振り子弁として弁体を揺動するに足る強度があれば充分である。また、回転軸20にもアクチュエータの力、特に弁閉状態を維持するように弁体40を密閉する際にかかる力が作用しない。このため、回転軸20振り子弁として弁体を揺動するに足る強度があれば充分である。同時に、回転軸20に弁密閉するためのモーメントが必要なものに比べて、弁体40の揺動機構の出力を抑えることができるので、この回転軸20の回動機構を小型化することができる。
この構造においては、剛性として、上記中立弁部30の強度に加えて、退避位置と弁開閉位置の間で可動弁部40を回動させる際にその自重を支える強度があれば十分である。
【0103】
図2は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが互いに嵌合されている部分および中立弁部30と可動弁板部50とが互いに嵌合されている部分を示す拡大縦断面図であり、第1付勢部70及びガイドピン62が設けられた部位を示している。
【0104】
[第2シール部(2重シール部)51a,51b及び第3シール部(2重シール部)52a,52b]
可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの外周面には、可動弁枠部60の環状凹部60dの内周面に当接し、可動弁板部50と可動弁枠部60との間をシールする2重シール部として、Oリング等の円環状の第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bが設けられている。
【0105】
具体的には、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向外側に位置する第1外周面50fに第2シール部51a,51bが設けられている。また、径方向において第1外周面50fの内側である第2内周面50gに、第3シール部52a,52bが設けられている。第2シール部51a,51bは、可動弁枠部60の第1内周面60fに当接し、第3シール部52a,52bは、可動弁枠部60の第2外周面60gに当接する。
【0106】
第2シール部51a,51bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第1開口部12aに近い中空部11とを仕切り、仕切り状態を確保する。同様に、第3シール部52a,52bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第2開口部12bに中空部11とを仕切り、仕切り状態を確保する。
【0107】
第2シール部51a,51bは、駆動用の圧縮空気が供給されて圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、例えば圧力が低い空間である第1開口部12aに連通する第1空間側とを遮断するものであり、この仕切り状態を確保することができる。同様に、第3シール部52a,52bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間であって第2開口部12bに近い第2空間側とを仕切り、仕切り状態を確保することができる。
【0108】
[ガイドピン62]
ガイドピン62は、可動弁枠部60に固設されて流路方向に立設された太さ寸法均一の棒状体とされ、円環状エアシリンダ80内を貫通し、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dに形成された孔部50hに嵌合している。
このガイドピン62は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向が符号B1,B2に示された方向からずれないように、かつ、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動した際にもその姿勢が変化せずに平行移動をおこなうように、これらの位置規制を確実に誘導する。
【0109】
これによって、可動弁板部50と可動弁枠部60とが、符号B1,B2に対して斜め方向に移動することを防止している。同時に、可動弁枠部60は、弁閉状態としてシール部61と反力伝達部59とがそれぞれ弁箱10の内面15a,15bに当接した状態に対して、可動弁板部50と可動弁枠部60との流路方向位置が変化した場合でも、これらが平行状態を維持して平行移動し、可動弁板部50と可動弁枠部60とが傾いてしまうことを防止している。
【0110】
この構造においては、可動弁板部50と可動弁枠部60とが互いに位置決めされつつ、符号B1及びB2で示された方向に平行状態を維持したまま相対的に移動し、閉弁動作及び開弁動作を行うことができる。これによって、開弁動作においては、可動弁枠部60に設けられた第1シール部61に均一に押圧力を生じさせ、リークが抑制されたシール構造を実現できる。
【0111】
また、このようにガイドピン62を備えた構造においては、スライド弁1が真空装置に取り付けられる姿勢が決められていない場合、即ち、スライド弁1が取り付け方向が自由である場合に、弁体40の重量の負荷が第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bに局所的に加わることを防止することができる。例えば、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向に対して直角に重力が作用するようにスライド弁1が取り付けられている場合、摺動する部材である可動弁板部50と可動弁枠部60との重量がガイドピン62に加わる。このため、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52b(O−ring)に可動弁板部50と可動弁枠部60との重量が直接的に加わることを防止される。これにより、スライド弁1が取り付けられる姿勢がいかなる姿勢であっても、シール部の寿命が短くならず、リークを防止する効果を確保・維持することができる。
【0112】
ガイドピン62と孔部50hとの摺動面の面積を低減するため、また、スライド弁1の外部である第1空間及び第2空間からガイドピン62を隔離するために、ガイドピン62は、円環状エアシリンダ80内を貫通するように配置されている。
また、このように、円環状エアシリンダ80内にガイドピン62を配置することにより、可動弁板部50と可動弁枠部60とを互いに滑らかに摺動させることができる。
【0113】
なお、ガイドピンの強度が十分に得られていれば、大口径を有するスライド弁においても、可動弁部60が摺動する方向がずれることが防止される。また、ガイドピン62は、特殊な形状を有する可動弁部においても流路と直行する面内配置を設定して荷重を適宜分散することでより一層開閉動作の良好なスライド弁として適用可能である。
【0114】
ガイドピン62には、図14に示すように、その先端と可動弁枠部60側に形成された内部空間62aに連通する開口を有し、ガイドピン62内部を貫通する軸方向経路62bが設けられその基部側が、連絡路42に接続されている。また、円筒状の内部空間62aは、中立弁部5の径方向内側および外側に向かう経路42aを介してガイドピン62中心側に位置する中間大気室55,56にそれぞれ連通されている。ガイドピン62の可動弁板部50側となる先端側には、Oリング等とされるシール部材62cが設けられて孔部50hとの摺動面をシールしている。
【0115】
[ワイパー53,54]
可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向外側に位置する第1外周面50fには、可動弁部60の内周面に当接する円環状のワイパー53が設けられている。同様に、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向において第1外周面50fの内側である第2内周面50gには、可動弁部60の外周面に当接する円環状のワイパー54が設けられている。
【0116】
ワイパー53は、第2シール部51a,51bと同様にして、可動弁枠部60の第1内周面60fに当接し、ワイパー54は、第3シール部52a,52bと同様にして、可動弁枠部60の第1外周面60gに当接する。
ワイパー53,54、第2シール部51a,51b、第3シール部52a,52bは、いずれも、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dに配置されている。第2シール部51aは、第1開口部12a(第1空間)に近い位置に配置されている。第3シール部52aは、第2開口部12b(第2空間)に近い位置に配置されている。
【0117】
これらのワイパー53,54は、開弁動作及び閉弁動作によって環状の凹部60dと環状の凸部50dとが摺動する円環状エアシリンダ80において、その可動弁枠部60の凹部60dの内周面を潤滑あるいは清掃し、上記摺動によって発生するダスト及び円環状エアシリンダ80から発生するダストを第1空間及び第2空間に放出させない機能を有する。
また、ワイパー53,54を構成する部材(材料)として、例えば、スポンジ状のポーラスな弾性体を選択すれば、その部材の内部に潤滑油を浸透(保持)させておくことができる。
【0118】
これにより、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bによってシールされるシール面に一定の膜厚を有する薄い油膜が形成された状態を維持することが可能となる。つまり、ワイパー53,54は、余剰な油膜を拭き取り、油膜が枯渇した際には一定の膜厚を有する油膜を塗布する。
【0119】
[中間大気室55,56]
第2シール部51a,51bによって仕切られた円環状エアシリンダ80の表面には、大気圧の空間(空隙)である中間大気室55が設けられている。同様に、第3シール部52a,52bによって仕切られた円環状エアシリンダ80の表面には、大気圧の空間(空隙)である中間大気室56が設けられている。
具体的には、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの外周面50fで第2シール部51a,51bによって仕切られた部分に中間大気室55が設けられている。また、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの内周面50gで第3シール部52a,52bによって仕切られた部分に中間大気室56が設けられている。中間大気室55は、可動弁枠部60の第1内周面60fと可動弁板部50の外周面50fに設けられた溝とで形成された空間であり、中間大気室56は、可動弁枠部60の第1外周面60gと可動弁板部50の第2内周面50gに設けられた溝とで形成された空間である。
【0120】
そして、これらの中間大気室55,56は、後述する供給路41と同様の構成とされた図示しない連絡路によってスライド弁1の外部に連通され、円環状エアシリンダ80の加圧中に1重目のシールが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)をスライド弁外部に向けて逃がして、圧縮空気が弁箱10内部に放出されてしまうことを防止するようになっている。
【0121】
つまり、加圧状態にある円環状エアシリンダ80に対して、1重目のシールである第2シール部51bが破れた際に、2重目のシールである第2シール部51aより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす中間大気室55および連絡路が設けられている。また、加圧状態にある円環状エアシリンダ80に対して、1重目のシールである第3シール部52bが破れた際に、2重目のシールである第3シール部52aより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす中間大気室56および連絡路が設けられている。
これにより、圧縮空気が弁体10内部に噴出して、スライド弁1内部、および、第1空間、第2空間、に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0122】
同時にまた、これらの中間大気室55,56の圧力は、連絡路によりモニタ可能である。即ち、圧力計が中間大気室55,56の圧力を測定するようにスライド弁1外部に設けられるとともに連絡路によって接続されており、ユーザによってその圧力が監視される。
例えば、第1開口部12aに近い第1空間が減圧空間であり、第2シール部51aが破損している場合においては、中間大気室55の圧力は、大気圧よりも低くなる。
また、圧縮空気が供給されている円環状エアシリンダ80内の圧力は大気圧よりも高くなるため、第2シール部51bが破損している場合には、中間大気室55の圧力は、大気圧よりも高くなる。
【0123】
同様に、第2開口部12bに近い第2空間が減圧空間であり、第3シール部52aが破損している場合においては、中間大気室56の圧力は、大気圧よりも低くなる。
また、圧縮空気が供給されている円環状エアシリンダ80内の圧力は大気圧よりも高くなるため、第3シール部52bが破損している場合には、中間大気室56の圧力は、大気圧よりも高くなる。
【0124】
このようにスライド弁1は、中間大気室55,56の圧力をモニタする構造を有することができるので、例えば、中間大気室55,56の圧力値が大気圧よりも低い圧力であって閾値の圧力よりも低い場合、あるいは大気圧よりも高い圧力であって閾値の圧力よりも高い場合に、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bの異常を検知することができる。
【0125】
例えば、と中間大気室55,56中あるいは連絡路にアラーム装置が設けられた構造、或いは、スライド弁1に接続された制御装置にアラーム装置が設けられた構造が採用されていれば、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bの異常をアラームによって報知することができる。従って、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bが破損し、内部リークがスライド弁1に発生し、メンテナンスが必要であることをすぐに認識することができる。
これにより、真空装置等の外部から検知することができない、スライド弁において発生した内部リーク等の不具合を確実に判断することができる。
【0126】
[接続ピン部69、供給路41]
スライド弁1には、図に二点差線で示すように、円環状エアシリンダ80に駆動用気体を供給する供給路41が形成され、この供給路41は、可動弁枠部60の躯体内部、および、中立弁部30の躯体内部、回転軸10内部を経由して、スライド弁1の外部に設けられた図示しない駆動用気体供給手段に連通するよう設けられている。
この供給路41には、可動弁枠部60と中立弁部30との流路方向位置が変化した際にも、可動弁枠部60と中立弁部30との間で駆動用気体を供給可能に摺動接続する接続ピン部69が設けられる。
【0127】
接続ピン部69は、中立弁部30に流路方向と平行に穿孔された円形断面の孔部38と、この孔部38に回動可能に勘合された棒状の接続ピン68とからなっている。孔部38の内面38aは、開口側の内面38aに比べて底部側の内面38bが縮径され、これに対応して、接続ピン68の径寸法も基部68aに対して先端68bが縮径している。そして、この径寸法が変化する部分にそれぞれ段差38c、段差68cが形成されている。
【0128】
接続ピン部69は、図に二点差線で示すように、その中心軸線付近に供給路41が形成されて管状となっており、可動弁枠部60内部の供給路41が連通されている。また、接続ピン68の先端面68daには供給路41が開口しており、この先端面68dと孔部38の底部38d付近とで形成される加圧空間69aには、中立弁部30躯体内に形成された供給路41が連通されている。
【0129】
駆動用気体供給手段から供給された圧縮空気は、中立弁部30内部の供給路41を介して空間69aに噴出し、接続ピン部69内部の供給路41および可動弁枠部60内部の供給路41を介して円環状エアシリンダ80に供給される。
【0130】
接続ピン部69においては、接続ピン68の外周面68aには孔部38の内周面38aが当接するとともに、接続ピン68の外周面68bには孔部38の内周面38bが当接している。
【0131】
接続ピン68には、孔部38内で接続ピン68が軸線方向(流路方向)に移動した場合でも、加圧面となる先端面68dと底面38dとの間ではなく、摺動方向となる面に、駆動用の圧縮空気が供給されて圧力が高い空間である加圧空間69aと、例えば圧力が低い空間である第2開口部1bに連通する第2空間側とを遮断する2重シール部が設けられる。
シール部は、加圧空間69aと中空部11との仕切り状態を確保できるものとされる。
【0132】
具体的には、接続ピン68には、接続ピン68と孔部38との間をシールする2重シール部として、Oリング等とこれを埋設する周設溝とされる円環状の太シール部68fが設けられるとともに、Oリング等とこれを埋設する周設溝とされる円環状の小シール部68gが外周面68bに設けられている。
【0133】
同時に、段差68cおよび段差38cで形成された円環状の中間大気室69cが、この2重シールの間にあり、図示しない連絡路42に連通されることで、圧縮空気が弁箱10内部に噴出して、スライド弁1内部、および、第1空間、第2空間、に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0134】
特に、加圧面となるとともにその距離が変化する先端面68dと底面38dとの間でシールするのではなく、直接的に加圧面とはならずかつ摺動面であり距離が変化しない外周面68aと内周面38aおよび外周面68bと内周面38bとの間でシールをおこなうので、より確実な密閉状態を維持することが可能となる。
このようなシール部68f、68gの構成によれば、上述した円環状エアシリンダ80における第2シール部(2重シール部)51a,51b及び第3シール部(2重シール部)52a,52bおよびガイドピン62の構成と同様の作用効果を奏することが可能となる。
【0135】
孔部38内で接続ピン68が軸線方向(流路方向)に移動中あるいは移動して流路方向の相対位置が変化した場合でも、駆動用気体供給手段から供給された圧縮空気は、中立弁部30内部の供給路41を介して空間69aに噴出し、この体積の変化した空間69aを介して、接続ピン部69内部の供給路41および可動弁枠部60内部の供給路41を介して円環状エアシリンダ80に安定的に供給される。
【0136】
以上のように、第1実施形態においては、流路方向に互いに離間接近可能な可動弁板部50と可動弁枠部60とによって構成された可動弁部40が設けられ、可動弁部40には、可動弁板部50と可動弁枠部60とを流路方向外側に向けて付勢するメインバネ70が設けられ、可動弁部40には、可動弁板部50と可動弁枠部60とを中空部11の流路方向中央位置側に向けて移動させる円環状エアシリンダ80が設けられ、可動弁枠部60を中立弁部30に接近する方向に付勢する補助バネ90が設けられることによって、可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱の内面15a、15bに押圧して、シール部61及び反力伝達部59とで確実に弁閉塞をおこなうことができる。
【0137】
また、可動弁板部50と可動弁枠部60とを中空部11の流路方向中央位置側に向けて移動させることで、弁箱10に弁体40が接触しないようにして回動させ、回動以外の動作が必要な機構に比べて小型で出力の小さい駆動機構によって退避位置まで弁体40を移動することができる。
【0138】
この構成においては、1つの可動弁部40と3つの付勢部70,80,90とによって弁体を形成することができる。また、可動弁部40の周囲領域に配置されたメインバネ70の復元力によって可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱10の内面に直接押し付けて、確実に閉弁できる。同様に、可動弁部40の周囲領域に配置された円環状エアシリンダ80に供給された圧縮空気の作用によって可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱10の内面から離間させて、確実に回動可能状態として開弁できる。従って、第1実施形態においては、簡単な構造を有し、高い信頼性で仕切り動作を行うことができるスライド弁を実現することができる。
【0139】
(第2実施形態)
図14は、本発明の第2実施形態における回転軸駆動機構200の構成を示す断面図であり、シリンダが伸位置にある時の状態である。図15は、回転軸駆動機構200の構成を示す断面図であり、シリンダが縮位置にある時の状態である。図16は、回転軸駆動機構200の構成を示す断面図であり、シリンダが中間位置にある時の状態である。
なお、これら図14〜図16に示す第2実施形態において、図1ないし図6に示した第1実施形態と同一の構成、部材には同一符号を付し、また、その説明は省略または簡略化する。
【0140】
第1実施形態においては、シリンダ本体111の内部空間111bに収容されているピストン112は1つであり、このピストン112の停止位置として伸位置Paと縮位置Pbの2位置が設定されていた(図8,図9参照)。
一方、以下に説明する第2実施形態においては、シリンダ本体211の第1の内部空間211bおよび第2の内部空間211cには、直列に2つのピストン212a,212bがそれぞれ収容される。そして、これら2つのピストン212a,212bがそれぞれ、3つの停止位置、即ち伸位置Pa1,Pa2,縮位置Pb1,Pb2,および中間位置Pc1,Pc2が設定される。
【0141】
こうした2つのピストン212a,212bにそれぞれ3つの停止位置が設定されることによって、図17に示す第2実施形態におけるスライド弁2の可動弁部40は、流路Hが設けられていない中空部11とされる退避位置E1、第1開口部12aに対応する位置とされる流路Hの弁閉位置E2、およびこれら退避位置E1と弁閉位置E2との中間にあって流路Hの開口面積のうち半分ほどを覆う(遮蔽する)半開位置(E3)の3つの可動弁部停止位置で停止可能にされる。
なお、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下、回転軸駆動機構200を構成するシリンダ210を中心に、その構成と作用を説明する。
【0142】
回転軸20を回転させるための回転軸駆動機構200は、回転軸20に固着されたピニオン21と、このピニオン21と噛合するラック歯22aを備えたラック部材22とを有している。
また、回転軸駆動機構200は、ラック部材22を往復運動させるためのシリンダ210を備えている。シリンダ210によって、ラック部材22は軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能とされる。
【0143】
シリンダ210は、一端側211aが閉塞された略円筒形のシリンダ本体211を有している。シリンダ本体211の内部は、中間隔壁223によって互いに仕切られた第1の内部空間211bおよび第2の内部空間211cが区画されている。
また、第1の内部空間211bに摺動可能に収容された第1ピストン221と、第2の内部空間211cに摺動可能に収容された第2ピストン222とを備えている。そして、このシリンダ本体211と第1ピストン221の一面側221aとで区画され、第1ピストン221の移動によって容量が可変する第1圧力空間224が形成される。また、シリンダ本体211と第2ピストン222の一面側222aとで区画され、第2ピストン222の移動によって容量が可変する第2圧力空間225が形成される。
【0144】
シリンダ本体211には、第1圧力空間224に連通し、外部から第1圧力空間224に空気を送り込み、又は第1圧力空間224から外部に空気を排出する通気口226が形成されている。
また、シリンダ本体211には、第2圧力空間225に連通し、外部から第2圧力空間225に空気を送り込み、又は第2圧力空間225から外部に空気を排出する通気口227が形成されている。
これら通気口226,227は、それぞれ外部に例えばポンプが接続されていれば良い。
【0145】
第1ピストン221は、中心部分が一面側221aから第2圧力空間225に向けて延びる中空の突出部231が形成されている。中間隔壁223には、この突出部231を摺動可能に貫通させる貫通孔223aが形成されている。突出部231は、第1ピストン221の一面側221aが狭窄部231aとされ、中間隔壁223側に広がる中空部分よりも開口幅が狭められている。
【0146】
シリンダ本体211の一端側211aには、長ネジ232、回動ツマミ233、および長ネジ232の一端に螺合されたナット234とからなる第1ピストン規制部材235が回動可能に設けられている。
このうち、長ネジ232は一端側が第1ピストン221の突出部231における狭窄部231aを貫通し、突出部231の中空部分でナット234が締結されている。このナット234の外径は、狭窄部231aの開口幅よりも大きい。
【0147】
一方、第2ピストン222の一面側222aには、突起部222bが形成されている。そして、この突起部222bの一端には、緩衝材236が形成されている。第1ピストン221と第2ピストン222とは、突出部231の第2ピストン222側の外面(底面)と突起部222bとで当接し、こうした当接部分においては、この緩衝材236を介して第1ピストン221と第2ピストン222とが当接する。緩衝材236は、例えば、ゴム、ゲルなど弾性材料、スポンジなどの多孔質材料から構成されていればよい。
こうしたと第2ピストン222の他面側222cには、接続部222dを介してラック部材22が固着される。
【0148】
第1ピストン221は、シリンダ本体211の第1の内部空間211bにおいて、軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能に収容されている。こうした第1ピストン221は、第1圧力空間224が最大に拡張され、第1の内部空間211bにおいて最も一端側221aから遠ざかった位置、即ち第1ピストン221の他面側221bが中間隔壁223に接する位置にある伸位置Pa1(図14)と、第1の内部空間211bが最小に縮小され、最も一端側211aに接近した位置にある縮位置Pb1(図15)と、この伸位置Pa1と縮位置Pb1の中間付近にある中間位置Pc1(図16)の3位置の停止位置が設定される。
【0149】
なお、第1ピストン221は、第1ピストン規制部材235によって、伸位置Pa1(図14)における停止位置を微調整することが可能されている。即ち、第1ピストン規制部材235の回動ツマミ233を回すことによって、突出部231の内面に接して回動が抑止されたナット234と、長ネジ232との位置を変化させることができる。
【0150】
これによって、例えば、ナット234の長ネジ232に対する締結位置をシリンダ本体211の一端側211aに寄せた位置にすると、第1ピストン221が伸位置Pa1に向けて移動させる際に、狭窄部231aにナット234が当接し、第1ピストン221はそれ以上中間隔壁223に向かって移動することができなくなる。これによって、第1ピストン221の伸位置Pa1における停止位置を微調整、即ち、回転軸20を介して接続された可動弁部40の弁開位置E1における停止位置を微調整することが可能になる。
【0151】
第2ピストン222は、シリンダ本体211の第2の内部空間211cにおいて、軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能に収容されている。こうした第2ピストン222は、第2圧力空間225が最大に拡張され、第2の内部空間211cにおいて最も中間隔壁223から遠ざかった位置にある伸位置Pa2(図14)と、第2の内部空間211cが最小に縮小され、第2ピストン222の一面側222aが中間隔壁223に近接、ないし接した位置にある縮位置Pb2(図15)と、この伸位置Pa2と縮位置Pb2の中間付近にある中間位置Pc2(図16)の3位置の停止位置が設定される。
【0152】
ラック部材22は、軸線(長手方向)Cに垂直な断面が円形を成す丸棒状に形成されている。そして、この丸棒状のラック部材22の周面の一部には、ラック歯22aが軸線(長手方向)Cに沿って所定のピッチで配列形成されている。また、回転軸20に固着されたピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sの両側にはそれぞれ、ラック部材22を摺動可能に支持する滑り軸受115,115が配されている。
【0153】
以上のような構成の回転軸駆動機構200を備えたスライド弁2の作用を説明する。例えば、図15に示す縮位置Pb1,Pb2にそれぞれ第1ピストン221,第2ピストン222がある場合には、この第2ピストン222に固着されたラック部材22からピニオン21を介して連動(回転)される回転軸20が、図9中の反時計回りに回転した状態とされ、この回転軸20の位置においては、回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの弁閉位置E2(図17)に置かれる。
【0154】
一方、この縮位置Pb1,Pb2から第1ピストン221,第2ピストン222をそれぞれ、図14に示す伸位置Pa1,Pa2、即ち、可動弁部40の弁開位置E2に移動させる際には、第1圧力空間224内および第2圧力空間225内にそれぞれ、通気口226,227から空気を送り込む。すると第1圧力空間224,および第2圧力空間225の内圧それぞれが高まることによって、第1ピストン221,および第2ピストン222は、軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体211の一端側211aから遠ざかる方向に移動(摺動)し、第1圧力空間224,および第2圧力空間225の内容積がそれぞれ広がる。
【0155】
第1ピストン221,および第2ピストン222がシリンダ本体211の一端側211aからそれぞれ遠ざかる方向に移動すると、第2ピストン222に固着されたラック部材22は、ラック歯22aと噛合するピニオン21を図15中の時計回り方向に回転させる。これによって、回転軸20も時計回り方向に回転され、この回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図17)に振り子運動で移動する。
【0156】
こうした第1ピストン221,第2ピストン222を伸位置Pa1,Pa2に移動させる際に第1ピストン規制部材235によって、第1ピストン221の伸位置Pa1における停止位置を微調整することにより、第1ピストン221の伸位置Pa1における停止位置を微調整、即ち、回転軸20を介して接続された可動弁部40の弁開位置E1における停止位置を微調整することが可能になる。
【0157】
次に、この第1ピストン221,第2ピストン222をそれぞれ伸位置Pa1,Pa2から中間位置Pa3,Pa3、即ち可動弁部40の半開位置E3に移動させる際には、図18(a)に示すように、まず、第1圧力空間224内の空気を通気口226から排出して第1圧力空間224を縮める(縮小させる)。これによって、第1ピストン221は、軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体211の一端側211aに近づく方向に向けて移動(摺動)する。そして、所定の中間位置Pc1で停止させる。なお、第1ピストン221の停止位置は、第1圧力空間224内の内圧調整によって設定すればよい。また、第1ピストン221をシリンダ本体211の一端側211aに向けて移動させる際に、長ネジ232に螺合されたナット234の位置調整によって、第1ピストン221の移動を制限することで所定の中間位置Pc1で停止させてもよい。
【0158】
その後、第2圧力空間225内の空気を通気口227から排出して第2圧力空間225を縮める(縮小させる)。この時、第2ピストン222の突起部222bが第1ピストン221の突出部231に衝突する(図18(a))。しかしながら、第2ピストン222の突起部222bには、緩衝材236が形成されているので、中間位置Pc1で停止している第2ピストン222の突起部222bにはこの緩衝材236を介して当接することになる。これによって、衝突の衝撃は緩衝材236によって吸収され、第2ピストン222の移動によって第1ピストン221に強い衝撃が加わることを防止できる。
【0159】
そして、第2ピストン222の突起部222bが緩衝材236を介して第1ピストン221の突出部231に当接した位置で第2ピストン222が停止し、第2ピストン222は中間位置Pc2に配置される。
こうした第1ピストン221および第2ピストン222が、それぞれ中間位置Pc1,Pc2にある時は、回転軸20に中立弁部30を介して固定された可動弁部40は、流路Hの半開位置E3(図17)に位置する。こうした半開位置E3においては、可動弁部40が流路Hを半分ほど覆う形となり、例えば、流路Hの開口面積が弁開位置E1の半分ほどに制限される。このような半開位置E3を設定することによって、スライド弁2を通過する流量を弁開位置E1よりも制限する弁位置として適用することができる。
【0160】
なお、こうした回転軸駆動機構200においても、第一実施形態の回転軸駆動機構100と同様に、第1ピストン221や第2ピストン222に対して緩衝溝を形成し、これら第1ピストン221や第2ピストン222が縮位置Pb1,Pb2に向けて移動する際に、シリンダ本体211に対して第1ピストン221や第2ピストン222が緩やかに当接する構成とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、真空装置等において、真空度や温度あるいはガス雰囲気等性質の異なる2つの空間を連結している流路を仕切る状態と、この仕切り状態を開放した状態を切り替える用途のスライド弁に広く適用できる。
【符号の説明】
【0162】
1…スライド弁、 5…中立弁体、 10,10a,10b…弁箱、 11…中空部、 12a…第1開口部、 12b…第2開口部、 17,18…流体経路リング、 20…回転軸、 21…ピニオン、 22…ラック、 26…弁軸、 30…中立弁部、 40…可動弁部、 41…供給路、 42…連絡路、 50…可動弁板部(第2可動弁部)、 51a,51b…第2シール部、 52a,52b…第3シール部、 53,54…ワイパー、 55,56…中間大気室、 60…可動弁枠部(第1可動弁部)、 61…第1シール部、 62…ガイドピン、 68…接続ピン、68A…フローティングピン、 69…接続ピン部、 70…メインバネ(第1付勢部)、 80…円環状エアシリンダ(第2付勢部)、 90…補助バネ(第3付勢部)、 91…接続部材、 110…シリンダ(回転軸駆動用シリンダ)、 111…シリンダ本体、 112…ピストン、 113…圧力空間、 114…通気口、 118…緩衝溝、 236…緩衝材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させる回転手段と、
前記弁箱内において前記回転軸に固着され、前記中立弁部を脱着可能に保持する接続部材と、を具備するものとされ、
前記中立弁体は、前記接続部材を介して前記回転軸に接続される中立弁部と、該中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される可動弁部と、を有し、
前記回転手段は、前記回転軸の軸心周りに形成されたピニオンと、該ピニオンに噛合するラック歯を備えたラック部材と、該ラック部材を直線運動させるシリンダと、を有し、
前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分の両側にはそれぞれ、前記ラック部材を摺動可能に支持する滑り軸受が配され、
前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復運動可能なピストンとからなり、前記シリンダ本体の一端側と前記ピストンとの間で圧力空間を成し、
前記シリンダ本体には、前記圧力空間と外部との間を連通させる通気口を有し、前記ピストンには、前記往復運動方向に沿って断面積が連続的に変化し、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて徐々に通気させる緩衝溝が形成されていることを特徴とするスライド弁。
【請求項2】
前記ピストンは、第1ピストンと、該第1ビストンと前記シリンダ本体の一端側との間に配された第2ピストンと、からなり、
前記第1ピストンと前記第2ピストンとの当接部分には、緩衝材が配されてなることを特徴とする請求項1記載のスライド弁。
【請求項3】
前記ラック部材は長手方向に垂直な断面が円形を成し、かつ、前記長手方向に沿った2箇所以上で、前記滑り軸受によって摺動自在に支持されることを特徴とする請求項1または2記載のスライド弁。
【請求項4】
前記滑り軸受は、前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分に生じる前記ラック部材の作用線と、前記ラック部材の軸中心線との交点よりも、前記噛合部分から遠ざかる方向に配されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のスライド弁。
【請求項5】
前記ラック部材の表面には、長手方向に沿って延びる溝が更に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のスライド弁。
【請求項6】
前記可動弁部には、該弁板に周設され前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに、
前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される第1可動弁部と、
前記第1可動弁部を前記流路方向前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着可能とする第1付勢部と、
前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、
前記第1付勢部の付勢力に対抗して前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向厚み寸法を収縮可能なように駆動する第2付勢部と、
前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との流路方向厚み寸法変化に対応して、前記第1可動弁部を前記中立弁体に対して流路方向位置変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向中央位置側に付勢する第3付勢部と、を具備してなることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のスライド弁。
【請求項1】
スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させる回転手段と、
前記弁箱内において前記回転軸に固着され、前記中立弁部を脱着可能に保持する接続部材と、を具備するものとされ、
前記中立弁体は、前記接続部材を介して前記回転軸に接続される中立弁部と、該中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される可動弁部と、を有し、
前記回転手段は、前記回転軸の軸心周りに形成されたピニオンと、該ピニオンに噛合するラック歯を備えたラック部材と、該ラック部材を直線運動させるシリンダと、を有し、
前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分の両側にはそれぞれ、前記ラック部材を摺動可能に支持する滑り軸受が配され、
前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復運動可能なピストンとからなり、前記シリンダ本体の一端側と前記ピストンとの間で圧力空間を成し、
前記シリンダ本体には、前記圧力空間と外部との間を連通させる通気口を有し、前記ピストンには、前記往復運動方向に沿って断面積が連続的に変化し、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて徐々に通気させる緩衝溝が形成されていることを特徴とするスライド弁。
【請求項2】
前記ピストンは、第1ピストンと、該第1ビストンと前記シリンダ本体の一端側との間に配された第2ピストンと、からなり、
前記第1ピストンと前記第2ピストンとの当接部分には、緩衝材が配されてなることを特徴とする請求項1記載のスライド弁。
【請求項3】
前記ラック部材は長手方向に垂直な断面が円形を成し、かつ、前記長手方向に沿った2箇所以上で、前記滑り軸受によって摺動自在に支持されることを特徴とする請求項1または2記載のスライド弁。
【請求項4】
前記滑り軸受は、前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分に生じる前記ラック部材の作用線と、前記ラック部材の軸中心線との交点よりも、前記噛合部分から遠ざかる方向に配されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のスライド弁。
【請求項5】
前記ラック部材の表面には、長手方向に沿って延びる溝が更に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のスライド弁。
【請求項6】
前記可動弁部には、該弁板に周設され前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに、
前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される第1可動弁部と、
前記第1可動弁部を前記流路方向前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着可能とする第1付勢部と、
前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、
前記第1付勢部の付勢力に対抗して前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向厚み寸法を収縮可能なように駆動する第2付勢部と、
前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との流路方向厚み寸法変化に対応して、前記第1可動弁部を前記中立弁体に対して流路方向位置変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向中央位置側に付勢する第3付勢部と、を具備してなることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のスライド弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−219826(P2012−219826A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82792(P2011−82792)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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