説明

スライド扉装置

【課題】案内レールの取付を容易にし、扉体に装着された吊り車輪と水平ガイドローラを、案内レールに装着された引き寄せ部材に係合させて扉体の移動を安定させること。
【解決手段】庫体1の開口部2の上部側に配設される案内レール3と、扉体5に装着され、案内レールに転動可能に係合する吊り車輪7と水平ガイドローラ8を具備するスライド扉装置において、吊り車輪は、凹状走行面7aの両側に設けられるフランジ部7b1,7b2の先端側の内面に傾斜面7cを形成し、案内レールは、吊り車輪の走行面及びフランジ部が接触して転動可能な車輪走行部30と、庫体に固定される固定部31と、水平ガイドローラが転動可能なローラ走行部32とを具備する一体の部材にて形成され、吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面と係合する傾斜面を有する上部引き寄せ部材40Aと、水平ガイドローラを庫体側に誘導する凹状の案内面を有する下部引き寄せ部材40Bを装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライド扉装置に関するもので、更に詳細には、建造物の庫体の出入口用開口部の上部側に水平状に配設される案内レールと、出入口用開口部を開閉する扉体と、扉体の上部に装着されて、それぞれ案内レールに転動可能に係合する吊り車輪及び水平ガイドローラとを具備するスライド扉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスライド扉装置において、スライド扉の開放時の跳ね返りを防止すると共に、スライド扉を確実に開放維持するために、案内レールの開放側後端部に、庫体側に向かって屈曲形成されたガイド部材を配設した構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のものにおいては、扉体を開放した際に、吊り車輪がガイド部材のレール面を転走し、扉体が庫体側に偏移するので、扉体の勢いが減衰され、扉体の跳ね返りを防止することができると共に、扉体を確実に開放維持することができる。
【0004】
また、この種のスライド扉においては、特に、扉体で出入口用開口部を閉鎖した状態では、扉体の庫体側に周設されたパッキン材を庫体に密接させて気密を保持する必要がある。このように気密を保持するために、上記ガイド部材を用いて扉体を庫体側に引き寄せる構造が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−330711号公報(特許請求の範囲、図1,図3,図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、案内レールは、断面略逆V字状に隆起するレール基部と、このレール基部に連接される少なくともレール面が断面逆V字状に隆起するピース状のガイド部材とで構成されるため、レール基部とガイド部材とを接合して案内レールを組付けると共に、案内レールを庫体へ取り付ける必要があり、特に、扉体の閉鎖時に扉体を庫体側に引き寄せる構造のものにおいては、複数のガイド部材とレール基部とを接合するため、案内レール自体の組付けと庫体への取付に手間を要する。また、ガイド部材は、レール面がレール基部のレール面と同じ高さに形成されると共に、庫体側に向かって屈曲形成される構造であるため、ガイド部材の加工に精度が要求される。
【0007】
また、吊り車輪のみを庫体側に偏倚させて扉体を引き寄せる構造においては、扉体の移動が不安定になる懸念がある。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、案内レール自体を一体部材にて形成して、案内レールの取付を容易にし、扉体に装着された吊り車輪及び水平ガイドローラを、案内レールに容易に組み込まれた引き寄せ部材に係合させて扉体の移動を安定させるようにしたスライド扉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、この発明のスライド扉装置は、建造物の庫体に設けられた出入口用開口部の上部側に水平に配設される案内レールと、上記出入口用開口部を開閉する扉体と、この扉体の上部に装着され、それぞれが上記案内レールに転動可能に係合する吊り車輪及び水平ガイドローラと、を具備するスライド扉装置であって、 上記吊り車輪は、凹状走行面の両側に一対のフランジ部を具備すると共に、両フランジ部の先端側の内面に相対的に拡開する傾斜面を形成してなり、 上記案内レールは、上記吊り車輪の凹状走行面及び上記フランジ部の一方が接触して転動可能な第1の走行部と、上記庫体の開口部の上部に取付部材によって固定される固定部と、上記固定部の下方に垂下され上記水平ガイドローラが転動可能な第2の走行部とを具備する一体の部材にて形成され、 上記案内レールにおける上記扉体の開放時及び閉鎖時に上記吊り車輪及び水平ガイドローラが位置する部位に、吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面と係合する引き寄せ傾斜面を具備する第1の引き寄せ部材を装着すると共に、上記水平ガイドローラを庫体側に誘導する凹状の案内面を有する第2の引き寄せ部材を装着してなる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成することにより、庫体に配設される一部材からなる案内レールに設けられる第1の走行部及び第2の走行部に、扉体の上部に装着された吊り車輪及び水平ガイドローラをそれぞれ転動させて扉体を開閉移動することができる。また、案内レールに装着された第1の引き寄せ部材及び第2の引き寄せ部材に、吊り車輪及び水平ガイドローラをそれぞれ係合させて扉体を庫体側に引き寄せることができる。
【0011】
この発明において、上記案内レールの第1の走行部に、上記吊り車輪の凹状走行面が転動可能な断面逆U字状に隆起するレール面部と、このレール面部の両側下端から外方に向かって下り勾配の一対の傾斜片とを具備し、上記第1の引き寄せ部材には、上記吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面を庫体側に誘導する引き寄せ傾斜面を有する車輪案内部を具備し、上記吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面が上記第1の引き寄せ部材の引き寄せ傾斜面に係合した際、上記吊り車輪の他方のフランジ部の傾斜面が上記第1の走行部の傾斜片に係合するように形成する方が好ましい(請求項2)。
【0012】
このように構成することにより、吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面が第1の引き寄せ部材の引き寄せ傾斜面に係合した状態において、吊り車輪の他方のフランジ部(庫体側のフランジ部の反対側フランジ部)の傾斜面が第1の走行部の傾斜片に係合するので、吊り車輪が案内レールと第1の引き寄せ部材の双方に確実に係合して庫体側に移動することができる。
【0013】
また、この発明において、上記扉体の上端に固定されるL字状のブラケットの垂直片に水平の支持軸を介して上記吊り車輪を垂直方向に回転自在に装着し、上記ブラケットの上記吊り車輪の下方における水平片に鉛直の支持軸を介して上記水平ガイドローラを水平方向に回転自在に装着する方が好ましい(請求項3)。
【0014】
このように構成することにより、吊り車輪と水平ガイドローラを略同一鉛直面上に設けることができると共に、第1の引き寄せ部材と第2の引き寄せ部材を吊り車輪と水平ガイドローラと対応させて略同一鉛直面上に設けることができる。
【0015】
また、この発明において、上記案内レールの固定部の下端と第1の走行部の下部との間に、固定部から第1の走行部に向かって下り勾配の傾斜連結片を設け、上記第1の引き寄せ部材は、上記固定部の表面に重合されて取付部材にて固定される取付片と、上記傾斜連結片に重合されて連結部材にて連結される傾斜片と、上記傾斜片の下端に突設される車輪案内走行部と、を具備する構造とする方が好ましい(請求項4)。
【0016】
このように構成することにより、案内レールに沿わせて第1の引き寄せ部材を簡単かつ強固に固定することができる。
【0017】
また、この発明において、上記案内レールの第2の走行部は垂直走行面を有する断面コ字状に形成されると共に、この第2の走行部に第2の引き寄せ部材を取り付けるための切欠部を形成し、上記第2の引き寄せ部材は、上記切欠部内に嵌挿され、表面にローラ案内走行部を有する基部と、この基部の両側に突設され上記第2の走行部の裏面側空間内に嵌挿される嵌合突部と、を具備する構造とする方が好ましい(請求項5)。
【0018】
このように構成することにより、案内レールの第2の走行部に、第2の引き寄せ部材を容易に組み込むことができると共に、第2の走行部の垂直走行面と第2の引き寄せ部材のローラ案内走行部の面とを滑らかに連続させることができる。
【0019】
加えて、この発明において、上記案内レールをアルミニウム(アルミニウム合金を含む)製押出形材にて形成し、上記第1の引き寄せ部材及び第2の引き寄せ部材を、例えばポリアセタール樹脂等の合成樹脂製部材にて形成する方が好ましい(請求項6)。
【0020】
このように構成することにより、案内レールの寸法精度を向上させることができると共に、第1の引き寄せ部材及び第2の引き寄せ部材の案内レールへの組付けを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0022】
(1)請求項1記載の発明によれば、案内レールは一部材にて形成されるので、庫体への取付を容易にすることができる。また、案内レールに設けられる第1の走行部及び第2の走行部に、扉体の上部に装着された吊り車輪及び水平ガイドローラをそれぞれ転動させて扉体を開閉移動することにより、扉体の開閉を安定させることができる。また、案内レールに装着された第1の引き寄せ部材及び第2の引き寄せ部材に、吊り車輪及び水平ガイドローラをそれぞれ係合させて扉体を庫体側に引き寄せることができるので、扉体の庫体側への引き寄せを確実に行うことができる。
【0023】
(2)請求項2記載の発明によれば、吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面が第1の引き寄せ部材の引き寄せ傾斜面に係合した状態において、吊り車輪の他方のフランジ部(庫体側のフランジ部の反対側フランジ部)の傾斜面が第1の走行部の傾斜片に係合するので、上記(1)に加えて、更に吊り車輪が案内レールと第1の引き寄せ部材の双方に確実に係合して庫体側に移動することができる。
【0024】
(3)請求項3記載の発明によれば、吊り車輪と水平ガイドローラを略同一鉛直面上に設けることができると共に、第1の引き寄せ部材と第2の引き寄せ部材を吊り車輪と水平ガイドローラと対応させて略同一鉛直面上に設けることができる。したがって、上記(1),(2)に加えて、更に吊り車輪と水平ガイドローラの取付を容易にすることができると共に、吊り車輪及び水平ガイドローラと第1の引き寄せ部材及び第2の引き寄せ部材との係合を確実に同期させることができる。
【0025】
(4)請求項4記載の発明によれば、(1)〜(3)に加えて、更に案内レールに沿わせて第1の引き寄せ部材を簡単かつ強固に固定することができる。
【0026】
(5)請求項5記載の発明によれば、(1)〜(3)に加えて、更に案内レールの第2の走行部に、第2の引き寄せ部材を容易に組み込むことができると共に、第2の走行部の垂直走行面と第2の引き寄せ部材のローラ案内走行部の面とを滑らかに連続させることができる。
【0027】
(6)請求項6記載の発明によれば、(1)〜(5)に加えて、更に案内レールの寸法精度を向上させることができると共に、第1の引き寄せ部材及び第2の引き寄せ部材の案内レールへの組付けを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係るスライド扉装置を示す概略正面図である。
【図2】上記スライド扉装置を示す断面図(a)及び(a)のI部拡大断面図(b)である。
【図3】この発明における案内レールと吊り車輪及び水平ガイドローラを示す拡大断面図である。
【図4】この発明における案内レールと第1及び第2の引き寄せ部材を示す正面図である。
【図5】この発明における案内レールと吊り車輪及び水平ガイドローラの引き寄せ状態を示す拡大断面図である。
【図6】この発明における案内レールと第1の引き寄せ部材との係合状態を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図7】この発明における水平ガイドローラと第2の引き寄せ部材との係合状態を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図8】この発明における案内レールを示す斜視図である。
【図9】この発明における第1の引き寄せ部材を示す斜視図である。
【図10】この発明における第2の引き寄せ部材を示す斜視図(a)、(a)のII−II線に沿う断面図(b)及び(a)のIII−III線に沿う断面図(c)である。
【図11】この発明における第2の引き寄せ部材を案内レールに取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係るスライド扉装置を冷凍庫に用いた場合について説明する。
【0030】
この発明に係るスライド扉装置は、プレハブ式冷凍庫の庫体1に開設された出入口用開口部2(以下に開口部2という)の上部側に水平状に配設される案内レール3と、開口部2を開閉する扉体5と、この扉体5の上端部に装着されるL形状のブラケット6の垂直片6aに装着されると共に、案内レール3を転動する凹状走行面7aの対峙する両側に一対のフランジ部7bを有する吊り車輪7と、ブラケット6の水平片6bに装着されると共に、開口部2の開口縁に装着される開口枠2aの外面に転動可能な水平ガイドローラ8と、扉体5の下端部に垂下状に装着され、床面Fに接触するずれパッキン9とで主に構成されている。
【0031】
また、案内レール3における扉体5の開放時及び閉鎖時に吊り車輪7及び水平ガイドローラ8が位置する部位には、吊り車輪7を庫体側に引き寄せる第1の引き寄せ部材40A(以下に上部引き寄せ部材40Aという)が装着されると共に、水平ガイドローラ8を庫体側に誘導する第2の引き寄せ部材40B(以下に下部引き寄せ部材40Bという)が装着されている。
【0032】
また、扉体5の下端部と庫体1の開口部2近傍の床面Fとの対向する位置には、扉体5を閉鎖する際に互いに係合して扉体5を庫体1の開口部2に押圧する密閉移動手段10が形成されている。また、開口枠2aの開口縁に沿ってパッキン受座2bが周設されている(図2参照)。
【0033】
上記扉体5は、一対の表面板5aと、これら表面板5aの辺部間に介在される枠材5bと、両表面板5a及び枠材5bにて形成される空間内に発泡ポリウレタン等の発泡性の断熱性心材5cを充填したサンドイッチ構造となっており、この扉体5の庫体1側の上辺及び左右辺には、開口部2の開口枠2aに周設されたパッキン受座2bに圧接する円筒状のパッキン材Pが周設されている(図2参照)。
【0034】
上記吊り車輪7は、扉体5の上端におけるスライド方向の両端側の2箇所に取り付けられている。すなわち、吊り車輪7は、扉体5の上端に固定されたL字状のブラケット6の垂直片6aに水平の支持軸7dを介して垂直方向に回動自在に装着されている。また、吊り車輪7は、凹状走行面7aの両側に一対のフランジ部7b1,7b2を具備すると共に、両フランジ部7b1,7b2の先端側の内面に相対的に拡開する傾斜面7cを有している。傾斜面7cは、後述する案内レール3の傾斜片34の傾斜角(勾配)と相似形の傾斜角度に形成されている。
【0035】
また、吊り車輪7は、扉体5の取付状態{具体的には、扉体5が位置する床面Fの凹凸や傾斜状態}に応じて位置調節が可能となっている。すなわち、扉体5の上端に固定されるL形状のブラケット6の垂直片6aに設けられた垂直状の長孔(図示せず)内を摺動可能(上下移動可能)に取り付けられた支持軸7dによって垂直方向に回転自在に装着されている(図2参照)。なお、ブラケット6の垂直片6aの上端には、扉体5が自重によって下がるのを防止するためのストッパ機構60が設けられている。このストッパ機構60のボルト61を締め付け又は緩めることにより、扉体5を吊った状態で扉体5の上下調整が可能となっており、左右両端部のストッパ機構60を調整することにより、扉体5の左右の傾きを抑制することができる。
【0036】
また、水平ガイドローラ8は、扉体5の上端に固定されたブラケット6の上記吊り車輪7の下方における水平片6bに鉛直の支持軸7eを介して水平方向に回転自在に装着されている。水平ガイドローラ8は、2箇所の吊り車輪7に対応して、吊り車輪7の下部側に配設されている。すなわち、水平ガイドローラ8は、吊り車輪7と略同一鉛直面上に設けられている。
【0037】
上記案内レール3は、図2、図3及び図8に示すように、吊り車輪7が転動する第1の走行部30(以下に、車輪走行部30という)と、庫体1の開口部2の上部外面に固定される固定部31と、固定部31の下部に延在し、開口部2の上部に設けられたパッキン受座2bの外面に当接され、水平ガイドローラ8が転動可能な第2の走行部32(以下に、ローラ走行部32という)とが一体のアルミニウム製押出形材にて形成されている。案内レール3は、庫体1の開口部2を扉体5が閉鎖する閉鎖領域Aと、扉体5が開口部2を開放する開放領域Bに渡って配設されている。
【0038】
上記車輪走行部30は、吊り車輪7の凹状走行面7aが転動可能な断面逆U字状に隆起するレール面部33と、このレール面部33の両側下端から外方に向かって下り勾配状に傾斜する一対の傾斜片34と、これら両傾斜片34の下端から垂下する一対の垂下片35と、両垂下片35の下端同士を連結する下部連結片36とからなる中空状に形成されている。なお、傾斜片34の傾斜角(勾配)は、吊り車輪7のフランジ部7b1,7b2に設けられた傾斜面7cと略相似形状に形成されている。
【0039】
固定部31とローラ走行部32は、クランク状段部37を介して連結されており、クランク状段部37に、車輪走行部30の下部連結片36から延在する水平片36aが連結されている。固定部31は、上部に庫体1の壁部1aを貫通する取付ボルト70の取付孔(図示せず)を有し、この取付孔部の下部と上記水平片36aとが固定部31から車輪走行部30に向かって下り勾配の傾斜連結片38aで連結され、傾斜連結片38aの中間部とクランク状段部37に補強片38bが連結されている。また、ローラ走行部32のクランク状段部37の近傍の表面には狭隘開口状の水平凹溝39aが設けられ、この水平凹溝39aの開口下部に延在する垂直案内片39bの下端にパッキン受座2bの表面に当接する折曲片39cが設けられている。したがって、ローラ走行部32は、水平凹溝39aの開口下部片と折曲片39cと垂直走行面を有する垂直案内片39bとで断面コ字状に形成され、垂直案内片39cの表面の垂直走行面に水平ガイドローラ8が転動可能に接触するようになっている。
【0040】
上記のように形成される案内レール3は、固定部31を庫体1の取付面に当接した状態で、取付ボルト70を固定部31に設けられた取付孔(図示せず)を貫通して庫体1に螺合することにより、案内レール3を強固に固定することができる。また、案内レール3はアルミニウム製押出形材にて一体に形成されるので、寸法精度を高めることができ、庫体1への取付を容易にすることができる。
【0041】
なお、扉体5の閉鎖位置及び開放位置の床面Fには、扉体5の移動を規制する戸先側及び戸尻側ストッパ部材52が取り付けられている(図1参照)。
【0042】
上部引き寄せ部材40Aは、例えばポリアセタール等の合成樹脂製部材にて形成されている。この上部引き寄せ部材40Aは、図6及び図9に示すように、案内レール3の固定部31の表面に重合されて取付ボルト70にて固定される取付片41と、案内レール3の傾斜連結片34に重合されて連結部材である連結ねじ42にて連結される傾斜片43と、傾斜片43の下端に突設される車輪案内部44と、を具備している。車輪案内部44には、吊り車輪7の庫体側フランジ部7b1の傾斜面7cを庫体側に誘導する引き寄せ傾斜面44aが形成されている。なお、取付片41には取付ボルト70の取付孔41aが設けられており、傾斜片43には連結ねじ42の取付孔43aが設けられている。このように形成される上部引き寄せ部材40Aは、案内レール3に沿わせて簡単かつ強固に固定される。
【0043】
なお、上記のように形成される上部引き寄せ部材40Aの引き寄せ傾斜面44aに吊り車輪7の庫体側フランジ部7b1の傾斜面7cが係合した状態では、吊り車輪7の他方のフランジ部7b2の傾斜面7cが車輪走行部30の傾斜片34に係合するようになっている(図6(b)参照)。これにより、吊り車輪7が案内レール3と上部引き寄せ部材40Aの双方に確実に係合して庫体側に移動することができる。
【0044】
一方、下部引き寄せ部材40Bは、上部引き寄せ部材40Aと同様に、例えばポリアセタール等の合成樹脂製部材にて形成されている。この下部引き寄せ部材40Bは、図7、図10及び図11に示すように、案内レール3に設けられた断面コ字状のローラ走行部32に設けられた切欠部32aに装着されている。すなわち、下部引き寄せ部材40Bは、図7、図10及び図11に示すように、上記切欠部32a内に嵌挿され、表面に凹状のローラ案内走行部45を有する基部46と、この基部46の両側に突設されローラ走行部32の裏面側空間32b内に嵌挿される嵌合突部47と、を具備する。この場合、ローラ案内走行部45は、中央表面に形成された平坦面45aの両端から嵌合突部47側の表面に向かって上り勾配の傾斜案内面45bを有する凹状に形成されている。
【0045】
上記のように形成される下部引き寄せ部材40Bは、案内レール3のローラ走行部32に容易に組み込むことができ、下部引き寄せ部材40Bのローラ案内走行部45の面とローラ走行部32の垂直走行面とを滑らかに連続させることができる。
【0046】
なお、扉体5の下端の側部における開閉移動の先端部側及び後端部側には扉寄せ部材11,12が装着されており、庫体1の開口部2近傍の床面Fに配設されて、扉体5の閉鎖位置における扉引寄せ部材11,12にそれぞれ係合するガイドローラ14A,14Bとによって密閉移動手段10が形成されている(図1及び図2参照)。また、扉体5の外側表面板5aの下端部には、扉引寄せ部材11,12間に連接するようにプロテクタ13が装着されており、このプロテクタ13にガイドローラ14A,14Bが接触することで、表面板5aを保護することができるようになっている。
【0047】
なお、庫体1の開口部2の上部には、リニアモータのリニアレールを配設するケース体(図示せず)が取り付けられる場合もあり、このケース体は化粧カバー20によって外部から目隠しされている。
【0048】
化粧カバー20は、庫体1の外面に固定ねじ22によって固定されるカバー受部材21に係脱可能に係合されている。この場合、カバー受部材21は、例えばアルミニウム製の押出形材を適宜長さに切断したピース状に形成されており、複数個が適宜間隔をおいて配設されている。このカバー受部材21は、庫体1の壁部1aに固定される垂直固定片23の上端部から外方に向かって下り勾配に傾斜する上部傾斜片24の先端と、垂直固定片23の上部側から外方に向かって上り勾配に傾斜する下部傾斜片25の先端とを連結した中空三角形状の突出部26を有し、この突出部26における上部傾斜片24の先端部に設けられた係止溝27に、化粧カバー20が係脱可能に係合されている。なお、係止溝27の上部側開口端には係止溝27内に向かって水平係止片27aが突設されている。
【0049】
なお、カバー受部材21は、必ずしも複数のピース状である必要はなく、長手通し状の1本のカバー受部材であってもよい。
【0050】
上記化粧カバー20は、例えばアルミニウム製の押出形材によって形成されている。この化粧カバー20には、一端にカバー受部材21の係止溝27内に係脱可能に係止する係止爪部28aを有し、カバー受部材21の上部傾斜片24に連なる傾斜状の上部カバー部28と、この上部カバー部28の下端(他端)から垂下状に折曲されて案内レール3及び吊り車輪7を覆う前面カバー部29とが設けられている。
【0051】
上記のように構成される化粧カバー20は、通常時には、係止爪部28aが係止溝27に係合されると共に、前面カバー部29がレール3及び吊り車輪7を覆っている(図2参照)。また、保守・点検時には、化粧カバー20を上方に持ち上げて係止爪部28aを係止溝27の水平係止片27aとの間で滑らせて、化粧カバー20を開放状態に保持して、案内レール3と吊り車輪7の走行部やリニアモータの保守・点検作業を行うことができる。
【0052】
上記のように化粧カバー20とカバー受部材21は共にアルミニウム製の押出形材であるため、係止溝27と係止爪部28aとはメタルタッチになるので、扉体5の開閉の衝撃により係止溝27と係止爪部28aがあたり、いわゆるビビリ音が発生する。このビビリ音を防止するためには、図2(b)に示すように、化粧カバー20の係止爪部28a側の裏面とカバー受部材21の上部傾斜片24の先端部上面との間に隙間sを設け、この隙間sに吸音用のパッキン部材Paを介在させるように構成する方がよい。
【0053】
なお、庫体1の開口枠2aの適宜位置とパッキング受座2bの適宜位置には解凍及び結露水防止用のヒータ(図示せず)が埋設されている。
【0054】
一方、扉体5の庫体1側の下端部には、床面Fに接触するずれパッキン9が垂下状に装着されている(図1及び図2参照)。上記ずれパッキン9は、可撓性を有する合成ゴム部材によって帯板状に形成されており、図2に示すように、上記扉体5の下端面に固着されるパッキン受部材80と、扉体5の下端部表面に固着されるパッキン押え部材90とによって挟持固定されている。
【0055】
上記パッキン受部材80は、扉体の下端面に第1の固定ねじ81によって固定される水平固定片82と、扉体5の庫体側面に添設される上部垂直片83及びこの上部垂直片83の下端に垂下する下部垂直片84を有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。なお、冷蔵雇用扉の場合は、パッキン受部材80は合成樹脂製部材にて形成されている。この場合、水平固定片82の先端部の下面には下方に向かって狭隘開口状に開口する2個の嵌合凹溝85,86が並設されており、両嵌合凹溝85,86内にそれぞれ断面略T字状のT形パッキン9a,9bが垂下状に装着されている。なお、先端側の嵌合凹溝85の先端側開口縁には、保護片87が垂下されており、この保護片87によってT形パッキン9aの上部側表面が保護されるようになっている。また、水平固定片82における嵌合凹溝86に隣接する部位には、互いに平行な一対の係止壁を有する係止溝88が設けられており、この係止溝88内に嵌挿されるアルミニウム製押出形材製のヒーター線格納部材89を第1の固定ねじ81をもって水平固定片82及び扉体5の下部側の枠材5bにねじ結合することで、パッキン受部材80と共にヒーター線格納部材89が扉体5の下端部に固定される。
【0056】
また、パッキン押え部材90はアルミニウム製の押出形材にて形成されている。このパッキン押え部材90は、中央部に上記ずれパッキン9の表面に当接すると共に、固定部材である第2の固定ねじ91が貫通する平坦固定片92と、この平坦固定片92に対して第2の固定ねじ91の頭部91aの高さより高く隆起する隆起部94を有すると共に、先端に向かって下り傾斜面を有する上下対称の一対の押え翼片93とを有し、かつ、押え翼片93の先端部が上記パッキン受部材80の下部垂直片84の下端部との間でずれパッキン9を挟持し得るように形成されている。また、図2に示すように、パッキン押え部材90の両押え翼片93の裏面には、それぞれ先端がずれパッキン9に当接する凹溝95が長手通しに形成されている。
【0057】
上記のように形成されるパッキン押え部材90によれば、パッキン受部材80の下部垂直片84と協働してずれパッキン9を床面Fに近い位置で挟持して固定することができるので、ずれパッキン9を強固に固定することができ、扉体5の開閉に伴うずれパッキン9の変形や損傷を抑制することができる。また、パッキン押え部材90の隆起部94によって固定ねじ91の頭部91aが外部に突出するのを防止することができ、かつ、パッキン押え部材90の上下部の一対の押え翼片93を先端に向かって下り傾斜面とすることで、外部の物との干渉を抑制することができる。また、パッキン押え部材90の一対の押え翼片93を上下対称の形状に形成することにより、扉体5にずれパッキン9を固定する時にパッキン押え部材90を上下間違って取り付ける心配がないので、ずれパッキン9の取付作業を容易にすることができる。なお、パッキン押え部材90の長手方向端部には、合成樹脂製のキャップ部材(図示せず)が被着されている。
【0058】
上記のように構成されるこの発明に係るスライド扉装置によれば、案内レール3に設けられる車輪走行部30及びローラ走行部32に、扉体5の上部に装着された吊り車輪7及び水平ガイドローラ8をそれぞれ転動させて扉体5を開閉移動することができるので、扉体5の開閉を安定させることができる。
【0059】
扉体5を開放位置又は閉鎖位置に移動すると、略同一鉛直面上に設けられている吊り車輪7及び水平ガイドローラ8がそれぞれ案内レール3に装着された上部引き寄せ部材40A及び下部引き寄せ部材40Bに同期に係合して、扉体5を庫体側に引き寄せることができるので、扉体5の庫体側への引き寄せを確実に行うことができる。
【0060】
また、吊り車輪7の庫体側フランジ部7b1の傾斜面7cが上部引き寄せ部材40Aの引き寄せ傾斜面44aに係合した状態において、吊り車輪7の他方のフランジ部7b2(庫体側のフランジ部の反対側フランジ部)の傾斜面7cが車輪走行部30の傾斜片34に係合するので、吊り車輪7が案内レール3と上部引き寄せ部材40Aの双方に確実に係合して庫体側に移動することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、この発明に係るスライド扉装置をプレハブ式の冷凍庫に適用した場合について説明したが、プレハブ式の冷凍庫以外の例えばプレハブ式の冷蔵庫、クリーンルームあるいは保管庫や一般の建物にも同様に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 庫体
2 出入口用開口部
3 案内レール
5 扉体
7 吊り車輪
7a 凹状走行面
7b1,7b2 フランジ部
7c 傾斜面
7d 水平支持軸
7e 鉛直支持軸
8 水平ガイドローラ
30 車輪走行部
31 固定部
32 ローラ走行部
32a 切欠部
32b 空間
33 レール面部
34 傾斜片
38a 傾斜連結片
39a 垂直案内片
40A 上部引き寄せ部材(第1の引き寄せ部材)
40B 下部引き寄せ部材(第2の引き寄せ部材)
41 取付片
42 連結ねじ(連結部材)
43 傾斜片
44 車輪案内部
44a 引き寄せ傾斜面
45 ローラ走行案内部
45a 平坦面
45b 傾斜案内面
46 基部
47 嵌合突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の庫体に設けられた出入口用開口部の上部側に水平に配設される案内レールと、上記出入口用開口部を開閉する扉体と、この扉体の上部に装着され、それぞれが上記案内レールに転動可能に係合する吊り車輪及び水平ガイドローラと、を具備するスライド扉装置であって、
上記吊り車輪は、凹状走行面の両側に一対のフランジ部を具備すると共に、両フランジ部の先端側の内面に相対的に拡開する傾斜面を形成してなり、
上記案内レールは、上記吊り車輪の凹状走行面及び上記フランジ部の一方が接触して転動可能な第1の走行部と、上記庫体の開口部の上部に取付部材によって固定される固定部と、上記固定部の下方に垂下され上記水平ガイドローラが転動可能な第2の走行部とを具備する一体の部材にて形成され、
上記案内レールにおける上記扉体の開放時及び閉鎖時に上記吊り車輪及び水平ガイドローラが位置する部位に、吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面と係合する引き寄せ傾斜面を具備する第1の引き寄せ部材を装着すると共に、上記水平ガイドローラを庫体側に誘導する凹状の案内面を有する第2の引き寄せ部材を装着してなる、
ことを特徴とするスライド扉装置。
【請求項2】
請求項1記載のスライド扉装置において、
上記案内レールの第1の走行部は、上記吊り車輪の凹状走行面が転動可能な断面逆U字状に隆起するレール面部と、このレール面部の両側下端から外方に向かって下り勾配の一対の傾斜片とを具備し、
上記第1の引き寄せ部材は、上記吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面を庫体側に誘導する引き寄せ傾斜面を有する車輪案内部を具備してなり、
上記吊り車輪の庫体側フランジ部の傾斜面が上記第1の引き寄せ部材の引き寄せ傾斜面に係合した際、上記吊り車輪の他方のフランジ部の傾斜面が上記第1の走行部の傾斜片に係合するように形成してなる、
ことを特徴とするスライド扉装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスライド扉装置において、
上記扉体の上端に固定されるL字状のブラケットの垂直片に水平の支持軸を介して上記吊り車輪を垂直方向に回転自在に装着し、上記ブラケットの上記吊り車輪の下方における水平片に鉛直の支持軸を介して上記水平ガイドローラを水平方向に回転自在に装着してなる、
ことを特徴とするスライド扉装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のスライド扉装置において、
上記案内レールの固定部の下端と第1の走行部の下部との間に、固定部から第1の走行部に向かって下り勾配の傾斜連結片を設け、
上記第1の引き寄せ部材は、上記固定部の表面に重合されて取付部材にて固定される取付片と、上記傾斜連結片に重合されて連結部材にて連結される傾斜片と、上記傾斜片の下端に突設される車輪案内走行部と、を具備する、
ことを特徴とするスライド扉装置。
【請求項5】
請求項1記載のスライド扉装置において、
上記案内レールの第2の走行部は垂直走行面を有する断面コ字状に形成されると共に、この第2の走行部に第2の引き寄せ部材を取り付けるための切欠部を形成し、
上記第2の引き寄せ部材は、上記切欠部内に嵌挿され、表面にローラ案内走行部を有する基部と、この基部の両側に突設され上記第2の走行部の裏面側空間内に嵌挿される嵌合突部と、を具備してなる、
ことを特徴とするスライド扉装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のスライド扉装置において、
上記案内レールをアルミニウム製押出形材にて形成し、上記第1の引き寄せ部材及び第2の引き寄せ部材を、合成樹脂製部材にて形成してなる、
ことを特徴とするスライド扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−6865(P2011−6865A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149487(P2009−149487)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】