ソイルセメント構造体の構築方法、ソイルセメント構造体
【課題】ソイルセメント柱を連結することでソイルセメント壁を構築するにあたり、ソイルセメント柱の側部を切削することなく、ソイルセメント柱同士を連結できるようにする。
【解決手段】複数のソイルセメント柱30,31が接続されてなるソイルセメント壁10の構築方法は、隣接するソイルセメント柱30、31のうち一方のソイルセメント柱30を構築するステップと、地盤の他方のソイルセメント柱31に相当する部分を削孔攪拌しながらセメントミルクを注入するステップと、地盤の一方のソイルセメント柱30との間の接続部41を噴射攪拌し、一方のソイルセメント30と他方のソイルセメント柱31とを接続するステップを行う。
【解決手段】複数のソイルセメント柱30,31が接続されてなるソイルセメント壁10の構築方法は、隣接するソイルセメント柱30、31のうち一方のソイルセメント柱30を構築するステップと、地盤の他方のソイルセメント柱31に相当する部分を削孔攪拌しながらセメントミルクを注入するステップと、地盤の一方のソイルセメント柱30との間の接続部41を噴射攪拌し、一方のソイルセメント30と他方のソイルセメント柱31とを接続するステップを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のソイルセメント構造が連結されてなるソイルセメント構造体の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山留め壁としてソイルセメント壁、特に、円柱状のソイルセメント柱が連結されてなるソイルセメント柱列壁が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。かかるソイルセメント柱列壁は、隣接するソイルセメント柱同士を部分的に重なり合うように構築することにより構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009―57682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにソイルセメント柱同士を部分的に重なり合うように構築するためには、一方のソイルセメント柱が硬化した後、これに隣接する他方のソイルセメント柱に相当する部分を掘削する際に、硬化した一方のソイルセメント柱の側部を切削しなければならない。このため、掘削装置として硬質のソイルセメント柱を掘削可能な大型な装置を用いる必要があり、狭隘な敷地での施工が困難になる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、ソイルセメント構造を連結することでソイルセメント構造体を構築するにあたり、ソイルセメント構造の側部を切削することなく、ソイルセメント構造同士を連結できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のソイルセメント構造体の構築方法は、複数のソイルセメント構造が接続されてなるソイルセメント構造体の構築方法であって、隣接する前記ソイルセメント構造のうち一方を構築する第1のステップと、地盤の他方のソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌しながらセメントミルクを注入する第2のステップと、前記掘削孔から地盤の前記一方のソイルセメント構造との間の部分をセメントミルクにより噴射攪拌することで、前記一方のソイルセメント構造と前記他方のソイルセメント構造とを接続する第3のステップと、を行うことを特徴とする。
【0007】
上記のソイルセメント構造体の構築方法において、ロッドの先端に地盤を掘削するための回転掘削翼と、前記回転掘削翼から側方に向かってセメントミルクを噴射する噴射機能とを備え、前記ロッドを全周回転させる機能及び所定の角度範囲を揺動させる機能を備えた掘削機を用い、前記第2のステップでは、前記回転掘削翼を全周回転させながら下降させることで、他方のソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌し、前記第3のステップでは、前記噴射機能により側方に向かってソイルセメントを噴射しながら、前記ロッドを所定の角度範囲で揺動させることにより、地盤の前記一方のソイルセメント構造との間の部分を噴射攪拌してもよい。
【0008】
また、前記掘削機の噴射機能は、前記回転掘削翼から下方に向かってセメントミルクを噴射可能であり、前記第2のステップでは、ソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌しながら前記噴射機能により下方に向かってセメントミルクを噴射してもよい。
【0009】
また、本発明のソイルセメント構造体は、複数のソイルセメント構造が接続されてなるソイルセメント構造体であって、前記複数のソイルセメント構造は間隔をあけて構築されており、隣接するソイルセメント構造は、これら隣接するソイルセメント構造の間の部分が噴射攪拌され、前記噴射攪拌された部分に形成されたソイルセメントを介して接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隣接するソイルセメント構造の間の部分を噴射攪拌し、噴射掘削した部分にソイルセメントを形成することでソイルセメント構造同士を接続している。このため、ソイルセメント構造の側部を切削することなく、ソイルセメント構造同士を連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その1)である。
【図2】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その2)であり、図1におけるI−I断面の拡大図である。
【図3】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その3)である。
【図4】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その4)である。
【図5】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その5)である。
【図6】ソイルセメント壁を構築する際に用いられる掘削機を示す図である。
【図7】ソイルセメント壁を構築する方法を説明するための図(その1)であり、(A)は平面図、(B)は鉛直断面を拡大して示す図である。
【図8】ソイルセメント壁を構築する方法を説明するための図(その2)であり、(A)は平面図、(B)は鉛直断面を拡大して示す図である。
【図9】ソイルセメント壁を構築する方法を説明するための図(その3)であり、(A)は平面図、(B)は鉛直断面を拡大して示す図である。
【図10】複数のソイルセメント柱からなるソイルセメント構造を連結して構築したソイルセメント壁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のソイルセメント構造体の構築方法の一実施形態を、既存の鉄道の駅の狭隘な敷地において場所打ち杭を構築する際に用いられるソイルセメント壁からなる山留め壁を構築する場合を例として説明する。なお、本実施形態では、地下水位が場所打ち杭の下端よりも高い位置に位置しているものとする。
【0013】
図1〜図5は、場所打ち杭の構築方法を説明するための図である。なお、図1及び図3〜図5は鉛直断面図、図2は図1におけるI−I断面の拡大図である。
まず、図1及び図2に示すように、場所打ち杭の構築位置の周囲に円筒状のソイルセメント壁10を構築する。ソイルセメント壁10は、円環状に並ぶように間隔をあけて構築された複数の円柱状のソイルセメント柱30、31が、これらソイルセメント柱30、31の間の部分(以下、接続部41という)に構築されたソイルセメント32により環状に接続されてなる。また、ソイルセメント壁10は、下端が地下水位よりも低い深さまで到達している。
【0014】
以下、ソイルセメント壁10を構築する方法を説明する。
本実施形態では、図6に示すように、ロッド110の先端に回転掘削翼100が取り付けられた掘削機200を用いる。この掘削機200は、地上から圧送されたセメントミルクを回転掘削翼100の下部から下方へ噴射する状態と、回転掘削翼100の先端から側方へ噴射する状態とを切換可能に構成されている。また、掘削機200はロッド110の回転角度を所定の角度範囲に限定することにより、回転掘削翼100の先端から側方へセメントミルクを噴射する範囲を限定することができる。
【0015】
図7〜図9は、かかる掘削機200を用いてソイルセメント壁10を構築する方法を説明するための図であり、各図において、(A)は平面図、(B)は鉛直断面を拡大して示す図である。
まず、図7に示すように、水平方向に環状に所定の間隔をあけて、回転掘削翼100から下方に向けてセメントミルクを噴射した状態で回転掘削翼100を全周回転させて円柱状の掘削孔20を形成する。これにより、掘削孔20内の掘削土とセメントミルクとが混合攪拌され、ソイルセメント柱30を構築することができる。なお、掘削孔20の間隔は、掘削孔20の間に後述する掘削孔40と掘削孔20とを連結する接続部41を掘削できる間隔とする。
【0016】
次に、図8に示すように、上記の工程で形成したソイルセメント柱30の間に、掘削孔40を形成するとともに掘削孔40内にソイルセメントを形成する。すなわち、図7を参照して説明した掘削孔120の場合と同様に、回転掘削翼100から下方に向けてセメントミルクを噴射した状態で回転掘削翼100を全周回転させて、所定の深さまで地盤を掘削する。これにより、掘削孔40内にソイルセメント柱31が構築される。
【0017】
次に、図9に示すように、セメントミルクを回転掘削翼100の先端から側方へ噴射する状態に切り換えて、ロッド110を所定の角度範囲で繰り返し往復回転させることにより回転掘削翼100を揺動させながら、回転掘削翼100を引き上げる。これにより、図9(A)に示すように、隣接するソイルセメント柱30との間のセメントミルクが噴射された部分の地盤が回転掘削翼100の揺動範囲に対応した扇状に掘削され、隣接するソイルセメント柱30の外周面の一部が露出する。なお、回転掘削翼100を揺動させる角度範囲(つまり、ロッド110の回転範囲)は、後述するよう接続部41に構築されたソイルセメント32が、隣接するソイルセメント柱30、31間に作用する圧縮荷重を伝達可能となるような幅を有するように設定すればよい。
【0018】
また、上記のようにセメントミルクを噴射して接続部41を掘削することで、接続部41内の掘削土とセメントミルクとが混合攪拌されて、接続部41内にソイルセメント32が形成される。これにより、図2に示すように、隣接するソイルセメント柱30、31の間が接続部41のソイルセメント32により連結されることとなり、ソイルセメント柱30、31が環状に接続されたソイルセメント壁10が構築される。
【0019】
このように円柱状のソイルセメント柱30、31が環状に接続されることで、上記の実施形態と同様に周囲の地盤から作用する土水圧に対して、リングコンプレッション効果により抵抗することができる。また、ソイルセメント柱30、31が接続部41のソイルセメント32により連結されているため、周囲の地盤からの地下水の内部へ流れこむことや、場所打ち杭に相当する部分を掘削する際に安定液が周囲の地盤に染み出すことを防止できる。
【0020】
このようにして環状のソイルセメント壁10を構築した後、図3に示すように、ソイルセメント壁10の内側を、掘削機60により所定深さまで地盤を掘削して掘削孔13を形成する。掘削機60としては、狭隘な敷地でも掘削可能な、例えば、TBH工法に用いられる掘削機などが適している。この際、内部に掘削孔13内に安定液を満たすこととなるが、ソイルセメント壁10が掘削孔13の周囲を囲繞しており、ソイルセメント壁10が止水性を有するため、安定液が周囲に漏れ出すのを防止できる。すなわち、場所打ち杭の構築の対象となる敷地の周囲に地下構造物などがある場合には、掘削孔13から安定液が漏れ出すと地下構造物内に安定液が侵入してしまい問題となるが、本実施形態ではこれを防止できる。また、ソイルセメント壁10が止水性を有するため、地下水が内部へ染み出すのも防止することができる。
【0021】
地盤1を掘削すると、ソイルセメント壁10には周囲の地盤1から土水圧が作用するが、ソイルセメント壁10が環状に形成されているため、リングコンプレッション効果によりこの土水圧に対して抵抗することができる。
【0022】
次に、図4に示すように、掘削孔13内に鉄筋かご14を建て込む。なお、鉄筋かご14は、予め、長さ方向に複数に分割されたものを、建て込みながら連結するとよい。
次に、図5に示すように、掘削孔13内にトレミー管61を挿入し、トレミー管61を通して掘削孔13内にコンクリート15を打設する。打設したコンクリート15が硬化することで場所打ち杭50の構築が完了する。
【0023】
本実施形態によれば、回転掘削翼100の先端から側方へ向かってセメントミルクを噴射するとともに、回転掘削翼100を揺動させることで、地盤の回転掘削翼100の揺動範囲に対応した部分を扇状に掘削して接続部41を形成し、この接続部41において噴射されたセメントミルクと掘削土とを攪拌してソイルセメントを形成することができる。これにより、隣接するソイルセメント柱30、31を、接続部41に形成されたソイルセメント32により接続することができる。
【0024】
また、従来のようにソイルセメント柱30、31を切削することなく、ソイルセメント柱30、31同士を連結することができるため、小型の掘削装置であっても施工可能となる。これにより、狭隘な敷地においてもソイルセメント柱が連結されてなるソイルセメント構造物を構築することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、場所打ち杭50を構築するための山留め壁としてソイルセメント柱30、31を環状に接続してソイルセメント壁を構築する場合について説明したが、これに限らず、矩形状又は線状に並ぶソイルセメント柱を連結する場合にも適用できる。また、本実施形態では、ソイルセメント柱を連結してソイルセメント壁を構築する場合について説明したが、本発明は、例えば、図10に示すように、複数のソイルセメント柱310が連結されてなる複数のソイルセメント構造300を接続部320により連結してソイルセメント壁330を構築する場合や、壁状のソイルセメント壁体を連結してソイルセメント壁を構築する場合であっても適用でき、要するに、複数のソイルセメント構造を連結してソイルセメント構造体を構築する場合であれば本発明を適用できる。
【0026】
また、本実施形態では、掘削孔40を掘削する際には、回転掘削翼100から下方へセメントミルクを噴射し、接続部41を掘削する際には、回転掘削翼100の先端から側方へセメントミルクを噴射することとしたが、これに限らず、回転掘削翼100から水や安定液を噴射することとしてもよい。このような場合には、掘削孔40及び接続部41を掘削した後、掘削孔内にセメントミルクを注入するとともにセメントミルクと掘削土とを混合攪拌可能な装置を用いて、これら掘削孔40及び接続部41内にソイルセメントを構築してもよい。
【0027】
また、本実施形態では、掘削機として回転掘削翼100から下方へセメントミルクを噴射した状態と、回転掘削翼100の先端から側方へセメントミルクを噴射した状態とを切換可能な装置を用いたが、これに限らず、少なくとも側方へセメントミルクを噴射可能であればよい。また、本実施形態では、回転掘削翼100の全体から下方へセメントミルクを噴射しているが、中心のみ又は周辺のみとしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、回転掘削翼100を回転させるとともに回転掘削翼100から下方へセメントミルクを噴射することで掘削孔40を削孔するものとしたが、これに限らず、掘削孔40を削孔する方法としては、回転掘削翼100を回転させる方法、回転掘削翼100を上下方向に振動を加える方法、下方へセメントミルクを噴射する方法を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0029】
また、本実施形態では、まず、回転掘削翼100を回転させながら下方へ降下させることで掘削孔20を形成し、回転掘削翼100の先端から側方へセメントミルクを噴射させるとともに揺動させながら上方へ引き上げることで地盤の接続部41相当する部分を掘削することとしたが、これに限らず、回転掘削翼100を揺動させるとともに先端から側方へセメントミルクを噴射しながら、下方へ降下させることで、掘削孔20及び接続部41を掘削してもよい。
【0030】
また、本実施形態では、ソイルセメント柱31を、隣接するソイルセメント柱30よりも小径なものとしたが、これに限らず、ソイルセメント柱30と同径又はこれよりも大径としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 地盤 10 ソイルセメント壁
11 ソイルセメント柱 13 掘削孔
15 コンクリート 20 掘削孔
30、31 ソイルセメント柱 32 ソイルセメント
40 掘削孔 41 接続部
50 ソイルセメント壁 100 回転掘削翼
110 ロッド 200 掘削機
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のソイルセメント構造が連結されてなるソイルセメント構造体の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山留め壁としてソイルセメント壁、特に、円柱状のソイルセメント柱が連結されてなるソイルセメント柱列壁が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。かかるソイルセメント柱列壁は、隣接するソイルセメント柱同士を部分的に重なり合うように構築することにより構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009―57682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにソイルセメント柱同士を部分的に重なり合うように構築するためには、一方のソイルセメント柱が硬化した後、これに隣接する他方のソイルセメント柱に相当する部分を掘削する際に、硬化した一方のソイルセメント柱の側部を切削しなければならない。このため、掘削装置として硬質のソイルセメント柱を掘削可能な大型な装置を用いる必要があり、狭隘な敷地での施工が困難になる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、ソイルセメント構造を連結することでソイルセメント構造体を構築するにあたり、ソイルセメント構造の側部を切削することなく、ソイルセメント構造同士を連結できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のソイルセメント構造体の構築方法は、複数のソイルセメント構造が接続されてなるソイルセメント構造体の構築方法であって、隣接する前記ソイルセメント構造のうち一方を構築する第1のステップと、地盤の他方のソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌しながらセメントミルクを注入する第2のステップと、前記掘削孔から地盤の前記一方のソイルセメント構造との間の部分をセメントミルクにより噴射攪拌することで、前記一方のソイルセメント構造と前記他方のソイルセメント構造とを接続する第3のステップと、を行うことを特徴とする。
【0007】
上記のソイルセメント構造体の構築方法において、ロッドの先端に地盤を掘削するための回転掘削翼と、前記回転掘削翼から側方に向かってセメントミルクを噴射する噴射機能とを備え、前記ロッドを全周回転させる機能及び所定の角度範囲を揺動させる機能を備えた掘削機を用い、前記第2のステップでは、前記回転掘削翼を全周回転させながら下降させることで、他方のソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌し、前記第3のステップでは、前記噴射機能により側方に向かってソイルセメントを噴射しながら、前記ロッドを所定の角度範囲で揺動させることにより、地盤の前記一方のソイルセメント構造との間の部分を噴射攪拌してもよい。
【0008】
また、前記掘削機の噴射機能は、前記回転掘削翼から下方に向かってセメントミルクを噴射可能であり、前記第2のステップでは、ソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌しながら前記噴射機能により下方に向かってセメントミルクを噴射してもよい。
【0009】
また、本発明のソイルセメント構造体は、複数のソイルセメント構造が接続されてなるソイルセメント構造体であって、前記複数のソイルセメント構造は間隔をあけて構築されており、隣接するソイルセメント構造は、これら隣接するソイルセメント構造の間の部分が噴射攪拌され、前記噴射攪拌された部分に形成されたソイルセメントを介して接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隣接するソイルセメント構造の間の部分を噴射攪拌し、噴射掘削した部分にソイルセメントを形成することでソイルセメント構造同士を接続している。このため、ソイルセメント構造の側部を切削することなく、ソイルセメント構造同士を連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その1)である。
【図2】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その2)であり、図1におけるI−I断面の拡大図である。
【図3】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その3)である。
【図4】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その4)である。
【図5】場所打ち杭の構築方法を説明するための図(その5)である。
【図6】ソイルセメント壁を構築する際に用いられる掘削機を示す図である。
【図7】ソイルセメント壁を構築する方法を説明するための図(その1)であり、(A)は平面図、(B)は鉛直断面を拡大して示す図である。
【図8】ソイルセメント壁を構築する方法を説明するための図(その2)であり、(A)は平面図、(B)は鉛直断面を拡大して示す図である。
【図9】ソイルセメント壁を構築する方法を説明するための図(その3)であり、(A)は平面図、(B)は鉛直断面を拡大して示す図である。
【図10】複数のソイルセメント柱からなるソイルセメント構造を連結して構築したソイルセメント壁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のソイルセメント構造体の構築方法の一実施形態を、既存の鉄道の駅の狭隘な敷地において場所打ち杭を構築する際に用いられるソイルセメント壁からなる山留め壁を構築する場合を例として説明する。なお、本実施形態では、地下水位が場所打ち杭の下端よりも高い位置に位置しているものとする。
【0013】
図1〜図5は、場所打ち杭の構築方法を説明するための図である。なお、図1及び図3〜図5は鉛直断面図、図2は図1におけるI−I断面の拡大図である。
まず、図1及び図2に示すように、場所打ち杭の構築位置の周囲に円筒状のソイルセメント壁10を構築する。ソイルセメント壁10は、円環状に並ぶように間隔をあけて構築された複数の円柱状のソイルセメント柱30、31が、これらソイルセメント柱30、31の間の部分(以下、接続部41という)に構築されたソイルセメント32により環状に接続されてなる。また、ソイルセメント壁10は、下端が地下水位よりも低い深さまで到達している。
【0014】
以下、ソイルセメント壁10を構築する方法を説明する。
本実施形態では、図6に示すように、ロッド110の先端に回転掘削翼100が取り付けられた掘削機200を用いる。この掘削機200は、地上から圧送されたセメントミルクを回転掘削翼100の下部から下方へ噴射する状態と、回転掘削翼100の先端から側方へ噴射する状態とを切換可能に構成されている。また、掘削機200はロッド110の回転角度を所定の角度範囲に限定することにより、回転掘削翼100の先端から側方へセメントミルクを噴射する範囲を限定することができる。
【0015】
図7〜図9は、かかる掘削機200を用いてソイルセメント壁10を構築する方法を説明するための図であり、各図において、(A)は平面図、(B)は鉛直断面を拡大して示す図である。
まず、図7に示すように、水平方向に環状に所定の間隔をあけて、回転掘削翼100から下方に向けてセメントミルクを噴射した状態で回転掘削翼100を全周回転させて円柱状の掘削孔20を形成する。これにより、掘削孔20内の掘削土とセメントミルクとが混合攪拌され、ソイルセメント柱30を構築することができる。なお、掘削孔20の間隔は、掘削孔20の間に後述する掘削孔40と掘削孔20とを連結する接続部41を掘削できる間隔とする。
【0016】
次に、図8に示すように、上記の工程で形成したソイルセメント柱30の間に、掘削孔40を形成するとともに掘削孔40内にソイルセメントを形成する。すなわち、図7を参照して説明した掘削孔120の場合と同様に、回転掘削翼100から下方に向けてセメントミルクを噴射した状態で回転掘削翼100を全周回転させて、所定の深さまで地盤を掘削する。これにより、掘削孔40内にソイルセメント柱31が構築される。
【0017】
次に、図9に示すように、セメントミルクを回転掘削翼100の先端から側方へ噴射する状態に切り換えて、ロッド110を所定の角度範囲で繰り返し往復回転させることにより回転掘削翼100を揺動させながら、回転掘削翼100を引き上げる。これにより、図9(A)に示すように、隣接するソイルセメント柱30との間のセメントミルクが噴射された部分の地盤が回転掘削翼100の揺動範囲に対応した扇状に掘削され、隣接するソイルセメント柱30の外周面の一部が露出する。なお、回転掘削翼100を揺動させる角度範囲(つまり、ロッド110の回転範囲)は、後述するよう接続部41に構築されたソイルセメント32が、隣接するソイルセメント柱30、31間に作用する圧縮荷重を伝達可能となるような幅を有するように設定すればよい。
【0018】
また、上記のようにセメントミルクを噴射して接続部41を掘削することで、接続部41内の掘削土とセメントミルクとが混合攪拌されて、接続部41内にソイルセメント32が形成される。これにより、図2に示すように、隣接するソイルセメント柱30、31の間が接続部41のソイルセメント32により連結されることとなり、ソイルセメント柱30、31が環状に接続されたソイルセメント壁10が構築される。
【0019】
このように円柱状のソイルセメント柱30、31が環状に接続されることで、上記の実施形態と同様に周囲の地盤から作用する土水圧に対して、リングコンプレッション効果により抵抗することができる。また、ソイルセメント柱30、31が接続部41のソイルセメント32により連結されているため、周囲の地盤からの地下水の内部へ流れこむことや、場所打ち杭に相当する部分を掘削する際に安定液が周囲の地盤に染み出すことを防止できる。
【0020】
このようにして環状のソイルセメント壁10を構築した後、図3に示すように、ソイルセメント壁10の内側を、掘削機60により所定深さまで地盤を掘削して掘削孔13を形成する。掘削機60としては、狭隘な敷地でも掘削可能な、例えば、TBH工法に用いられる掘削機などが適している。この際、内部に掘削孔13内に安定液を満たすこととなるが、ソイルセメント壁10が掘削孔13の周囲を囲繞しており、ソイルセメント壁10が止水性を有するため、安定液が周囲に漏れ出すのを防止できる。すなわち、場所打ち杭の構築の対象となる敷地の周囲に地下構造物などがある場合には、掘削孔13から安定液が漏れ出すと地下構造物内に安定液が侵入してしまい問題となるが、本実施形態ではこれを防止できる。また、ソイルセメント壁10が止水性を有するため、地下水が内部へ染み出すのも防止することができる。
【0021】
地盤1を掘削すると、ソイルセメント壁10には周囲の地盤1から土水圧が作用するが、ソイルセメント壁10が環状に形成されているため、リングコンプレッション効果によりこの土水圧に対して抵抗することができる。
【0022】
次に、図4に示すように、掘削孔13内に鉄筋かご14を建て込む。なお、鉄筋かご14は、予め、長さ方向に複数に分割されたものを、建て込みながら連結するとよい。
次に、図5に示すように、掘削孔13内にトレミー管61を挿入し、トレミー管61を通して掘削孔13内にコンクリート15を打設する。打設したコンクリート15が硬化することで場所打ち杭50の構築が完了する。
【0023】
本実施形態によれば、回転掘削翼100の先端から側方へ向かってセメントミルクを噴射するとともに、回転掘削翼100を揺動させることで、地盤の回転掘削翼100の揺動範囲に対応した部分を扇状に掘削して接続部41を形成し、この接続部41において噴射されたセメントミルクと掘削土とを攪拌してソイルセメントを形成することができる。これにより、隣接するソイルセメント柱30、31を、接続部41に形成されたソイルセメント32により接続することができる。
【0024】
また、従来のようにソイルセメント柱30、31を切削することなく、ソイルセメント柱30、31同士を連結することができるため、小型の掘削装置であっても施工可能となる。これにより、狭隘な敷地においてもソイルセメント柱が連結されてなるソイルセメント構造物を構築することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、場所打ち杭50を構築するための山留め壁としてソイルセメント柱30、31を環状に接続してソイルセメント壁を構築する場合について説明したが、これに限らず、矩形状又は線状に並ぶソイルセメント柱を連結する場合にも適用できる。また、本実施形態では、ソイルセメント柱を連結してソイルセメント壁を構築する場合について説明したが、本発明は、例えば、図10に示すように、複数のソイルセメント柱310が連結されてなる複数のソイルセメント構造300を接続部320により連結してソイルセメント壁330を構築する場合や、壁状のソイルセメント壁体を連結してソイルセメント壁を構築する場合であっても適用でき、要するに、複数のソイルセメント構造を連結してソイルセメント構造体を構築する場合であれば本発明を適用できる。
【0026】
また、本実施形態では、掘削孔40を掘削する際には、回転掘削翼100から下方へセメントミルクを噴射し、接続部41を掘削する際には、回転掘削翼100の先端から側方へセメントミルクを噴射することとしたが、これに限らず、回転掘削翼100から水や安定液を噴射することとしてもよい。このような場合には、掘削孔40及び接続部41を掘削した後、掘削孔内にセメントミルクを注入するとともにセメントミルクと掘削土とを混合攪拌可能な装置を用いて、これら掘削孔40及び接続部41内にソイルセメントを構築してもよい。
【0027】
また、本実施形態では、掘削機として回転掘削翼100から下方へセメントミルクを噴射した状態と、回転掘削翼100の先端から側方へセメントミルクを噴射した状態とを切換可能な装置を用いたが、これに限らず、少なくとも側方へセメントミルクを噴射可能であればよい。また、本実施形態では、回転掘削翼100の全体から下方へセメントミルクを噴射しているが、中心のみ又は周辺のみとしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、回転掘削翼100を回転させるとともに回転掘削翼100から下方へセメントミルクを噴射することで掘削孔40を削孔するものとしたが、これに限らず、掘削孔40を削孔する方法としては、回転掘削翼100を回転させる方法、回転掘削翼100を上下方向に振動を加える方法、下方へセメントミルクを噴射する方法を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0029】
また、本実施形態では、まず、回転掘削翼100を回転させながら下方へ降下させることで掘削孔20を形成し、回転掘削翼100の先端から側方へセメントミルクを噴射させるとともに揺動させながら上方へ引き上げることで地盤の接続部41相当する部分を掘削することとしたが、これに限らず、回転掘削翼100を揺動させるとともに先端から側方へセメントミルクを噴射しながら、下方へ降下させることで、掘削孔20及び接続部41を掘削してもよい。
【0030】
また、本実施形態では、ソイルセメント柱31を、隣接するソイルセメント柱30よりも小径なものとしたが、これに限らず、ソイルセメント柱30と同径又はこれよりも大径としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 地盤 10 ソイルセメント壁
11 ソイルセメント柱 13 掘削孔
15 コンクリート 20 掘削孔
30、31 ソイルセメント柱 32 ソイルセメント
40 掘削孔 41 接続部
50 ソイルセメント壁 100 回転掘削翼
110 ロッド 200 掘削機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のソイルセメント構造が接続されてなるソイルセメント構造体の構築方法であって、
隣接する前記ソイルセメント構造のうち一方を構築する第1のステップと、
地盤の他方のソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌しながらセメントミルクを注入する第2のステップと、
前記掘削孔から地盤の前記一方のソイルセメント構造との間の部分をセメントミルクにより噴射攪拌することで、前記一方のソイルセメント構造と前記他方のソイルセメント構造とを接続する第3のステップと、を行うことを特徴とするソイルセメント構造体の構築方法。
【請求項2】
請求項1記載のソイルセメント構造体の構築方法であって、
ロッドの先端に地盤を掘削するための回転掘削翼と、前記回転掘削翼から側方に向かってセメントミルクを噴射する噴射機能とを備え、前記ロッドを全周回転させる機能及び所定の角度範囲を揺動させる機能を備えた掘削機を用い、
前記第2のステップでは、前記回転掘削翼を全周回転させながら下降させることで、他方のソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌し、
前記第3のステップでは、前記噴射機能により側方に向かってソイルセメントを噴射しながら、前記ロッドを所定の角度範囲で揺動させることにより、地盤の前記一方のソイルセメント構造との間の部分を噴射攪拌することを特徴とするソイルセメント構造体の構築方法。
【請求項3】
請求項2記載のソイルセメント構造体の構築方法であって、
前記掘削機の噴射機能は、前記回転掘削翼から下方に向かってセメントミルクを噴射可能であり、
前記第2のステップでは、ソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌しながら前記噴射機能により下方に向かってセメントミルクを噴射することを特徴とするソイルセメント構造体の構築方法。
【請求項4】
複数のソイルセメント構造が接続されてなるソイルセメント構造体であって、
前記複数のソイルセメント構造は間隔をあけて構築されており、
隣接するソイルセメント構造は、これら隣接するソイルセメント構造の間の部分が噴射攪拌され、前記噴射攪拌された部分に形成されたソイルセメントを介して接続されていることを特徴とするソイルセメント構造体。
【請求項1】
複数のソイルセメント構造が接続されてなるソイルセメント構造体の構築方法であって、
隣接する前記ソイルセメント構造のうち一方を構築する第1のステップと、
地盤の他方のソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌しながらセメントミルクを注入する第2のステップと、
前記掘削孔から地盤の前記一方のソイルセメント構造との間の部分をセメントミルクにより噴射攪拌することで、前記一方のソイルセメント構造と前記他方のソイルセメント構造とを接続する第3のステップと、を行うことを特徴とするソイルセメント構造体の構築方法。
【請求項2】
請求項1記載のソイルセメント構造体の構築方法であって、
ロッドの先端に地盤を掘削するための回転掘削翼と、前記回転掘削翼から側方に向かってセメントミルクを噴射する噴射機能とを備え、前記ロッドを全周回転させる機能及び所定の角度範囲を揺動させる機能を備えた掘削機を用い、
前記第2のステップでは、前記回転掘削翼を全周回転させながら下降させることで、他方のソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌し、
前記第3のステップでは、前記噴射機能により側方に向かってソイルセメントを噴射しながら、前記ロッドを所定の角度範囲で揺動させることにより、地盤の前記一方のソイルセメント構造との間の部分を噴射攪拌することを特徴とするソイルセメント構造体の構築方法。
【請求項3】
請求項2記載のソイルセメント構造体の構築方法であって、
前記掘削機の噴射機能は、前記回転掘削翼から下方に向かってセメントミルクを噴射可能であり、
前記第2のステップでは、ソイルセメント構造に相当する部分を削孔攪拌しながら前記噴射機能により下方に向かってセメントミルクを噴射することを特徴とするソイルセメント構造体の構築方法。
【請求項4】
複数のソイルセメント構造が接続されてなるソイルセメント構造体であって、
前記複数のソイルセメント構造は間隔をあけて構築されており、
隣接するソイルセメント構造は、これら隣接するソイルセメント構造の間の部分が噴射攪拌され、前記噴射攪拌された部分に形成されたソイルセメントを介して接続されていることを特徴とするソイルセメント構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−12443(P2011−12443A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157148(P2009−157148)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(504365799)株式会社特殊構工法計画研究所 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(504365799)株式会社特殊構工法計画研究所 (26)
【Fターム(参考)】
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