説明

ソレノイドバルブ

【課題】コイルを収納するコイルケースの周面に空間部を形成して該コイルの放熱を向上させるヨーク部を提供する。
【解決手段】ヨーク部37は、円板状のコイルヨーク36a乃至36cの外周面に均等に4箇所に帯状のコイルヨーク36dが横設されている。コイルヨーク36a及び36cは、円板45の外周面にT字状の突起46が半径方向に均等に4箇所設けられており、中央部にソレノイドガイドを嵌挿する穴が形成されている。コイルヨーク36cは円板48に穴が形成されている。コイルヨーク36dは帯状の板材の両端に凹状溝が形成され、該凹状溝はコイルヨーク36a及び36cの突起46に係合するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソレノイドバルブに関するもので、さらに詳細にはソレノイドコイルを嵌挿するソレノイドケースの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のソレノイドバルブ60は図8に示すように、基本的には弁本体61とコイル部本体62とから構成され、弁本体61にはボディ63に穿設されたスプール孔64にスプール65が摺動自在に嵌挿され、ボディ63の一側(図8で左側)にはスプール孔64を閉塞するプラグ66が螺着されている。
【0003】
弁本体61の他側(図8で右側)には、コイル部本体62がねじ機構(図示しない)により締結され、コイル部本体62は円形状のソレノイドガイド67と、該ソレノイドガイド67の外周部に嵌挿されたコイル部68と、該コイル部68をソレノイドガイド67に固定する際、ねじの塑性変形で緩みが防止される緩み止めナット部材69と、を備える。。
【0004】
ソレノイドガイド67は、一端部がボディ63にねじ結合すると共に、フランジ部70aが該ボディ63に係合し、かつ内部に段付孔70bを有する円筒形状のストッパ70と、一端が前記ストッパ70の他端に結合し他端が後述するプラグ71の一端に結合する薄肉円筒状のチューブ72と、一端が前記チューブ72の他端に結合する厚肉円筒状のプラグ71と、を備える。さらに、チューブ72内には、軸心方向に滑動する大径のプランジャ73が嵌挿され、該プランジャ73に小径の軸部74が形成されている。プラグ71には頭付ピン75が摺動自在に嵌挿されている。
【0005】
図9に示すように、コイル部68は軸心方向に直列に配設されたソレノイドコイル68a,68bとからなる。ソレノイドコイル68a,68bはボビン76a及び76bと、前記ボビン76a,76bにそれぞれ巻装されたコイル77a,77bと、ボビン76a,76bのそれぞれの一端に係合して配設されたコイルヨーク78a,78bと、前記ボビン76a,76bの他端に挟持されたコイルヨーク78cと、コイルケース79と、前記ボビン76a及び76b、コイル77a,77b、コイルヨーク78a乃至786c及びコイルケース79を樹脂材料により一体成形されたモールド80と、を備える。これにより、コイル部68はソレノイドコイル68a,68bにより形成される内周孔81がソレノイドガイド67の外周面に嵌挿され、該ソレノイドガイド67のねじ部(図示しない)と緩み止めナット部材69とによりボディ63とコイル部68とを一体に締結する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2007−281134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているようなソレノイドバルブは、ソレノイドガイドに一対のコイル部及びコイルヨークが嵌挿された状態で円筒形のソレノイドケースに収納しているので、コイル部の外径とソレノイドケースの肉厚分が小さくなり、必要なコイル部の巻線容積を確保するには、軸芯方向の長さを長くする必要があった。そのために、ソレノイドバルブが大きくなるという問題があった。
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、限られたスペースでコイル部の巻線径を最大にし、しかも必要な外側の磁路断面積を確保して小型のソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、スプールを摺動自在に嵌挿した弁本体と、
前記弁本体に締結されたソレノイドガイド部材と、
前記ソレノイドガイド部材に嵌挿されたコイル部と、
前記ソレノイドガイド部材及び前記コイル部を支持するヨーク部材と、
前記コイル部を前記ソレノイドガイド部材に固定するナット部材と、
を有するソレノイドバルブであって、
前記ヨーク部材は、円板状の少なくとも2個のコイルヨークと、
前記コイルヨークの外周面に均等に4箇所配設された帯状のコイルヨークと、
を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、円筒形のソレノイドケースに変えて四分割したコイルヨークを四隅の空いているスペースに設けるため、磁路断面積が制約されず該コイル部の外径方向の拡大により軸芯方向の長さを短くすることができるのでソレノイドコイルを小型化にすることができる。
【0009】
請求項2記載の発明では、前記コイルヨークは外周面に均等に4個の突起を形成し、前記ヨーク支持板には両端に凹状溝を形成し、
前記突起及び前記凹状溝を互いに係合し、請求項3記載の発明では、前記コイルヨークは外周面に均等に4個の凹状溝形成し、前記帯状のコイルヨークには両端に突起を形成し、前記凹状溝及び前記突起を互いに係合したので、隙間なく密に組み付けることができるので好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、磁路断面積が制約されず該コイル部の外径方向の拡大により軸芯方向の長さを短くすることができるのでソレノイドコイルを小型化にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るソレノイドバルブにつき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態に係るソレノイドバルブ10の概略構造を示す縦断面である。ソレノイドバルブ10は基本的には弁本体11とコイル部本体12とから構成されている。弁本体11はボディ13に穿設されたスプール孔14にスプール15が摺動自在に嵌挿されている。
【0012】
ボディ13の一側(図1で左側)にはスプール孔14を閉塞するプラグ16が螺着され、Oリングのシール部材17によりボディ13とプラグ16との間を液密にシールしている。ボディ13にはスプール孔14に接続する圧力供給源(図示しない)に連通する圧力ポート18、タンク(図示しない)に連通するタンクポート19が間隔をおいてスプール孔14の軸方向に設けられ、これらのポート18、19a,19bの間にスプール孔14に連通し油圧アクチュエータ(図示しない)に接続する流路20、21が設けられ、該タンクポート19は連通路22によって連通している。
【0013】
弁本体11の他側(図1で右側)には、コイル部本体12がねじ機構(図示しない)により締結されている。コイル部本体12は、円形状のソレノイドガイド(ソレノイドガイド部材)23と、該ソレノイドガイド23の外周部に嵌挿されたコイル部24と、該コイル部24をソレノイドガイド23に固定する際、ねじの塑性変形で緩みが防止されるナット部材25とから構成されている。
【0014】
ソレノイドガイド23は、一端部がボディ13にねじ結合すると共に、フランジ部28aが該ボディ13に係合し、かつ内部に段付孔28bを有する円筒形状のストッパ28と、一端が前記ストッパ28の他端に結合し他端が後述するプラグ30の一端に結合する薄肉円筒状のチューブ29と、一端が前記チューブ29の他端に結合する厚肉円筒状のプラグ30と、を備える。さらに、チューブ29内には、軸心方向に滑動する大径のプランジャ31が嵌挿され、該プランジャ31に小径の軸部31aが形成されている。また、プラグ30には頭付ピン32が摺動自在に嵌挿されている。プラグ30と頭付ピン31とはOリングよりなるシール部材33により液密にシールされている。
【0015】
コイル部24は軸心方向に直列に配設されたボビン34a及び34bと、前記ボビン334a,34bにそれぞれ巻装されたコイル35a,35bと、ボビン34a,34bのそれぞれの一端に係合して配設されたコイルヨーク36a(第一のコイルヨーク),36b(第二のコイルヨーク)、前記ボビン34a,34bの他端に挟持されたコイルヨーク36c(第三のコイルヨーク)及び帯状のコイルヨーク36d(第四のコイルヨーク)とからなるヨーク37部とを備え、前記ボビン34a及び34b、コイル35a,35b及びヨーク部37を樹脂材料により一体成形されたモールド38と、を備える。
【0016】
これにより、コイル部24はボビン34a,34bにより形成される内周孔39がソレノイドガイド23の外周面に嵌挿され、該ソレノイドガイド23のねじ部(図示しない)とナット部材25とによりボディ13とコイル部24とを一体に締結する(図6図参照)。
一方、スプール15はプランジャ31の軸部31aにピン40を介して締結している。よって、コイル35aが励磁すると、スプール15はプランジャ31に協動して矢印X方向に移動し、コイル35bが励磁するとスプール15はプランジャ31と共に矢印Y方向に移動するようになる。
【0017】
スプール15とプランジャ31との間に装着されたばね部材41はストッパ28の段付孔28bに内装され、一端がスプール15に設けられたリテーナ42に支持され、他端がリテーナ43に支持されている。
前記ばね部材41は、コイル35aが励磁するとリテーナ42により撓み(圧縮され)、コイル35bが励磁するとリテーナ43により撓むが(圧縮されるが)、該コイル35bの励磁が解除されると、その復元力によりスプール15及びプランジャ31を押し戻す。
参照符号44は、リセットピンでプラグ16に摺動自在に嵌挿されている。
【0018】
図3はヨーク部37を示す概略構造図である。図3に示すようにヨーク部37は、円板形状のコイルヨーク36a乃至36cの外周面に均等に4箇所に帯状のコイルヨーク36dが横設されている。
図4(A)に示すようにコイルヨーク36a及び36cは、円板45の外周面にT字状の突起46が半径方向に均等に4箇所設けられており、中央部にソレノイドガイド23を嵌挿する穴47が形成されている。コイルヨーク36cは図4(B)に示すように、円板48に穴47が形成されている。
【0019】
図5(a)に示すように帯状のコイルヨーク36dは帯状の板材49の両端に凹状溝50が形成され、該凹状溝50はコイルヨーク36a及び36cの突起46に係合するようになっており、図6(b)に示すようにコイルヨーク36a及び36cの外周面に密に係合するように該コイルヨーク36a及び36cの外周面に密に接触するように湾曲面49aが成形されている。
なお、コイルヨーク36a乃至36dは金型プレス作業により成形されるので量産され、同一寸法に確保されて加工精度が確保できる。
【0020】
なお、図3において、ヨーク部37はコイル35a,35bが2個直列に配設された場合について説明したが、コイル35aまたは35bがどちらか一方を使用するソレノイドバルブにも使用することもできる。
また、コイルヨーク36a及び36bは外周面にT字状の突起46を形成し、コイルヨーク36dに凹状溝50を形成したが、コイルヨーク36a及び36bは外周面に凹状溝50を形成し、コイルヨーク36dにT字状の突起46を形成してもよい。
さらに、コイルヨーク36a及び36bに形成した突起46の形状はT字状に限らず、例えばI字状、逆V字状の形状でもよく、コイルヨーク36dの凹状溝50の形状は他の溝形状でもよい。
さらにまた、帯状のヨークコイル36dはコイルヨーク36a乃至36cの円周上に均等に4箇所設けたが、均等に2箇所設けてもよい。
【0021】
本発明に係るソレノイドバルブ10は、基本的には以上のように構成されている。係るソレノイドバルブ10において、コイル部24はボビン34a,34bの両端にヨーク部37を構成するコイルヨーク36a乃至36cを係合し、コイルヨーク36a,36bの突起46にコイルヨーク36dの溝50を嵌挿している。コイル35a,35bの励磁による放熱がヨーク部37の開口部、すなわちコイルヨーク36d間の円周方向の空間より行なわれるので、コイル部24に吸引力の向上、消費電力が減少による省エネの向上を図ることができる。
コイル部24の外周を従来のようにコイルケースのように被覆しないので、外径方向に大きくすることに伴い軸芯方向の長さを小さくできるので、ソレノイドバルブ10の小型化を実現できる。
【0022】
図7はヨーク部の他の変形例を示す。図7中、図4(A),(B)に示す構成要素と同一の構成要素には同一を付して詳細な説明は省略する。図7において、コイルヨーク52a乃至52cは正方形にして4隅を削成して面取部を形成する。そして、コイルヨーク52a及び52bにT字状の突起46を形成し、コイルヨーク52cに凹状溝53を形成している。これらのコイルヨーク52a乃至52cにコイルヨーク52dを係合している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構造を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線の断面図である。
【図3】図1のIII−III線の断面図である。
【図4】図1のヨーク部の構造を示す概略構造図である。
【図5】(a)は第一及び第三のコイルヨークの外形図を示し、(b)は第二のコイルヨークの外形図を示す。
【図6】(a)は第四のコイルヨークの正面図を示し、(b)は第四のコイルヨークの側面図を示す。
【図7】本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構造を示す分解斜視図である。
【図8】他のヨーク部の構造を示す概略構造図である。
【図9】従来のソレノイドバルブの概略構造を示す縦断面図である。
【図10】従来のソレノイドバルブの概略構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ソレノイドバルブ 11 弁本体
12 コイル部本体 13 ボディ
23 ソレノイドガイド 24 コイル部
25 緩み止めナット部材 28 ストッパ
29 チューブ 30 プラグ
31 プランジャ 34a,34b ボビン
35a,35b コイル
36a〜36c、52a〜52c コイルヨーク
36d ヨーク支持板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールを摺動自在に嵌挿した弁本体と、
前記弁本体に締結されたソレノイドガイド部材と、
前記ソレノイドガイド部材に嵌挿されたコイル部と、
前記ソレノイドガイド部材及び前記コイル部を支持するヨーク部材と、
前記コイル部を前記ソレノイドガイド部材に固定するナット部材と、
を有するソレノイドバルブであって、
前記ヨーク部材は、円板状の少なくとも2個のコイルヨークと、
前記コイルヨークの外周面に均等に4箇所配設された帯状のコイルヨークと、
を備えたことを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のソレノイドバルブにおいて、
前記コイルヨークは外周面に均等に4個の突起を形成し、前記帯状のコイルヨークには両端に凹状溝を形成したことを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項3】
請求項1記載のソレノイドバルブにおいて、
前記コイルヨークは外周面に均等に4個の凹状溝形成し、前記帯状のコイルヨークには両端に突起を形成したことを特徴とするソレノイドバルブ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230138(P2010−230138A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80820(P2009−80820)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】