説明

タイヤ用電子タグ及び空気入りタイヤ

【課題】ICチップとアンテナの接続部分の耐破壊強度を一層高め、耐久性を更に改善することが可能なタイヤ用電子タグ及び空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ内に埋設され、ICチップ1とそれに接続したアンテナ2,3を有するタイヤ用電子タグTであり、アンテナ2,3が螺旋状に巻回したコイル状アンテナから構成されている。コイル状アンテナは、接続側のアンテナ部分2A,3AのコイルピッチP1が、非接続側のアンテナ部分2B,3BのコイルピッチP2より狭くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用電子タグ及び空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、タイヤ内に埋設されるタイヤ用電子タグの耐久性を改善するようにしたタイヤ用電子タグ及び該タグを埋設した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送信・受信回路及びメモリ等を備えたICチップにアンテナを接合したRF−ID(Radio Frequency Identification)タグを空気入りタイヤに用いる提案がなされている。このような電子タグは、後から情報を自由に書き込むことができるため、空気入りタイヤに取り付けることで、タイヤサイズや製造年月日などのタイヤ製造情報に加えて、タイヤの所有者やタイヤを取り付けた車両などの市場情報も追記することができる利点がある。
【0003】
上記電子タグを空気入りタイヤに埋設して取り付ける場合、タイヤの成形時や走行時の変形により埋設した電子タグに高い応力が作用する。接続されるICチップとアンテナとは、半田付けなどによる接合構造であるため、電子タグに作用する応力によりその接続部分で破壊を招き易い。
【0004】
そこで、アンテナに螺旋状にアンテナ線を巻回したコイル状アンテナを使用し(例えば、特許文献1参照)、コイルの伸縮作用を利用して接続部分に作用する応力を緩和することで、接続部分における耐破壊強度を高め、タイヤに埋設される電子タグの耐久性を高めるようにしている。また、アンテナをコイル状にすることで、アンテナの長さを短くし、それにより電子タグの長さを短くできる利点がある。
【0005】
しかしながら、空気入りタイヤは、摩耗限界に達するまで長期にわたって使用されるため、電子タグの接続部分の耐破壊強度を一層高め、更なる耐久性の改善が望まれていた。
【特許文献1】特開2003−249804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ICチップとアンテナとの接続部分の耐破壊強度を一層高め、耐久性を更に改善することが可能なタイヤ用電子タグ及び空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用電子タグは、空気入りタイヤ内に埋設され、ICチップと該ICチップに接続したアンテナを有し、該アンテナを螺旋状にアンテナ線を巻回したコイル状アンテナから構成したタイヤ用電子タグにおいて、前記コイル状アンテナのコイルピッチを接続側のアンテナ部分の方が非接続側のアンテナ部分より狭くなるようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、上記タイヤ用電子タグをタイヤ内に埋設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明によれば、ICタグに接続されるコイル状アンテナのコイルピッチを接続側で狭くすることにより、接続側でコイルの伸縮作用を従来より高めて接続部分に作用する応力を一層緩和することができるようになる。そのため、ICタグとコイル状アンテナとの接続部分の耐破壊強度を一層高め、タイヤ用電子タグの耐久性を更に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のタイヤ用電子タグの一実施形態を示し、このタイヤ用電子タグTは、RF−ID(Radio Frequency Identification)タグ(トランスポンダとも言う)からなり、送信・受信回路及びメモリ等の電子回路や電子部品を集積したICチップ1と、このICチップ1に接続された左右のアンテナ2,3を有している。基板4上にICチップ1が固設されている。ICチップ1の左右には接続部5,6が配設され、この接続部5,6を介して、左右のアンテナ2,3がICチップ1に接続されるようになっている。
【0011】
ICチップ1の大きさは、8mm(長手方向長さ)×4mm(幅)×1.5mm(厚さ)程度であり、左右のアンテナ2,3を含む全長が70mm程度である。
左右のアンテナ2,3は、図2に示すようにアンテナ線7を螺旋状に巻回したコイル状アンテナから構成され、その一端部2x,3xが図3に示すようにICチップ1の接続部5,6に半田8による溶接(半田付け)により接合してある。各コイル状のアンテナ2,3は、接続側のアンテナ部分2A,3AのコイルピッチP1が非接続側のアンテナ部分2B,3BのコイルピッチP2より狭くしてあり、接続側のアンテナ部分2A,3AのコイルピッチP1を従来より密にしている。
【0012】
図4に上述したタイヤ用電子タグTを埋設した空気入りタイヤの一例を示す。図において、11はトレッド部、12はサイドウォール部、13はビード部である。
左右のビード部13間にカーカス層14が延設され、その両端部が左右のビード部13にそれぞれ埋設したビードコア15の周りにビードフィラー16を挟み込むようにしてタイヤ内側から外側に折り返されている。トレッド部1のカーカス層14の外周側には、複数のベルト層17が設けられている。
【0013】
左右のビードコア15の外周側にそれぞれ配置した左右のビードフィラー16は、サイドウォール部12側に延在し、右側のビードフィラー16の外側の側面16aにタイヤ用電子タグTが設けられている。タイヤ用電子タグTは側面16aに沿って配設され、カーカス層14の折り返した右側の端部と側面16aとの間に挟み込まれている。
【0014】
上述した本発明によれば、空気入りタイヤ内に埋設されるタイヤ用電子タグTにおいて、ICタグ1に接続されるコイル状のアンテナ2,3のコイルピッチを接続側で狭くすることで、接続側でコイルの伸縮作用を従来より高めて接続部分に作用する応力を一層緩和することができるので、ICタグ1とアンテナ2,3との接続部分の耐破壊強度を一層高め、タイヤ用電子タグTの更なる耐久性の改善が可能になる。
【0015】
本発明において、接続側のアンテナ部分2A,3Aにおける単位長さ当たりのコイル巻き数Mと、非接続側のアンテナ部分2B,3Bにおける単位長さ当たりのコイル巻き数Nとの比M/Nとしては、1.2〜3の範囲にするのが、接続部分の耐破壊強度を一層高める上で好ましい。
【0016】
接続側のアンテナ部分2A,3Aにおける単位長さ当たりのコイル巻き数Mとしては、1回/mm以上にするのが接続部分の耐破壊強度を一層高める上でよい。上限値としては、製造上の観点と、アンテナ性能の点から、5回/mm以下にするのがよい。
【0017】
上述したタイヤ用電子タグTは、図5に示すように、非接続側のアンテナ部分2B,3Bをコイル状にする構成に代えて、直線状あるいは図示せぬが波状にアンテナ線7が延在するように構成してもよい。なお、ここで言う波状とは、波型に限定されす、ジグザグ状など振幅をもって延在する形状で、抵抗成分のみを生じ、誘導性リアクタンス成分を生じないものを言う。
【0018】
タイヤ用電子タグTは、通常、受信した電波を電力に変換して電源とするため、コイル状のアンテナを使用すると、その誘導性リアクタンス成分により電波の輻射効率が悪化する。図5に示すようにアンテナ2,3の一部をコイル状にしないことで、誘導性リアクタンス成分を減らし、電波の輻射効率を改善することができる利点がある。
【0019】
ビードフィラー16は、周囲の部材に使用されるゴムより硬度が高いゴムが使用されるため、タイヤの走行時や成形時に他の部位より変形し難いので、タイヤ用電子タグTは、上述したようにビードフィラー16の外側の側面16a、或いは内側の側面に設けるのが好ましいが、それに限定されず、タイヤの構成に応じて他の部位に適宜埋設するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のタイヤ用電子タグの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のタイヤ用電子タグを模式的に示す説明図である。
【図3】接続部分の拡大図である。
【図4】図1のタイヤ用電子タグを埋設した空気入りタイヤの一例を示す要部断面図である。
【図5】本発明のタイヤ用電子タグの他の実施形態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ICチップ
2,3 アンテナ
2A,3A 接続側のアンテナ部分
2B,3B 非接続側のアンテナ部分
2x,3x 一端
5,6 接続部
7 アンテナ線
8 半田
12 サイドウォール部
13 ビード部
15 ビードコア
16 ビードフィラー
16a 側面
P1,P2 コイルピッチ
T タイヤ用電子タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤ内に埋設され、ICチップと該ICチップに接続したアンテナを有し、該アンテナを螺旋状にアンテナ線を巻回したコイル状アンテナから構成したタイヤ用電子タグにおいて、前記コイル状アンテナのコイルピッチを接続側のアンテナ部分の方が非接続側のアンテナ部分より狭くなるようにしたタイヤ用電子タグ。
【請求項2】
前記接続側のアンテナ部分の単位長さ当たりのコイル巻き数Mと前記非接続側のアンテナ部分の単位長さ当たりのコイル巻き数Nとの比M/Nを1.2〜3にした請求項1に記載のタイヤ用電子タグ。
【請求項3】
前記コイル巻き数Mを1〜5回/mmにした請求項3に記載のタイヤ用電子タグ。
【請求項4】
前記非接続側のアンテナ部分をコイル状に代えて、直線状または波状にアンテナ線が延在する構成にした請求項1に記載のタイヤ用電子タグ。
【請求項5】
前記接続側のアンテナ部分の単位長さ当たりのコイル巻き数Mを1〜5回/mmにした請求項4に記載のタイヤ用電子タグ。
【請求項6】
前記ICチップとアンテナを半田付けにより接続した請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタイヤ用電子タグ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタイヤ用電子タグをタイヤ内に埋設した空気入りタイヤ。
【請求項8】
ビード部に埋設したビードコアの外周側にサイドウォール部側に延在するビードフィラーを有し、該ビードフィラーの側面に前記タイヤ用電子タグを設けた請求項7に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−49351(P2007−49351A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230754(P2005−230754)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】