説明

タイヤ

【課題】ゴム層間境界面付近への剥離の発生を有効に防止できるタイヤを提供する。
【解決手段】サイドウォール部に、老化防止剤を含む黒ゴム層と、黒ゴム層に環状に埋設配置され、黒ゴム層とは異色な色ゴム層11と、色ゴム層11と黒ゴム層との間に、黒ゴム層よりも空気透過性の低いゴムからなる汚染防止ゴム層とを具え、色ゴム層11と汚染防止ゴム層との境界線1AO、1AI、及び汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線1BO、1BIのそれぞれを、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、境界線のタイヤ軸線方向内側が、タイヤの回転軸線に近接する方向または離隔する方向に傾斜させるとともに、色ゴム層11よりもタイヤ半径方向外側のそれぞれの境界線と、色ゴム層11よりもタイヤ半径方向内側のそれぞれの境界線とを、回転軸線に対し相互に逆方向に傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイドウォール部とビード部とを含むサイド部の、外皮ゴムとしての黒ゴム内に、色ゴムを環状に埋設配置して装飾帯を形成する空気入りタイヤまたはソリッドタイヤ(以下、「タイヤ」という)に関するものであり、特には、色ゴムが周囲の黒ゴム中の老化防止剤により汚染されることを防止しつつ、ゴム間の境界面の耐剥離性を向上させる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイド部の黒ゴム内に、白ゴム等の黒色以外の色ゴムを埋設配置して、サイド部の外表面に環状の装飾帯を形成したタイヤが広く用いられている。このようなタイヤにおいて、特許文献1に記載のように、色ゴムが、周囲の黒ゴムに含まれる老化防止剤によって汚染されることを防止するため、非汚染性ないし微汚染性のサイドウォール内層ゴムを配設して、色ゴムを周囲の黒ゴムから隔離する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、上記のようにサイド部に複数種類のゴム層を配設すると、タイヤの負荷転動時のそれぞれのゴムの変形挙動の違いにより、ゴム層の接着境界面付近に応力の集中が生じ、また非汚染性ないし微汚染性のサイドウォール内層ゴムは、周囲の黒ゴムとゴム種が異なるために接着強度が弱く、その結果として、ゴムの接着界面位置に剥離が発生しやすくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−121205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、色ゴムによって、サイド部に環状の装飾帯を形成したタイヤに生じていた従来技術の、このような問題点を解決するものであり、色ゴム層が周囲の黒ゴム層に含まれる老化防止剤等により汚染されることを防止してなお、ゴム層間境界面付近への剥離の発生を有効に防止できるタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のタイヤは、サイドウォール部とビード部とを含むサイド部の外皮ゴムに、老化防止剤を含む黒ゴム層と、該黒ゴム層に環状に埋設配置される色ゴム層と、該色ゴム層の、少なくともタイヤ半径方向の内外側に隣接させて環状に配設され、該色ゴム層と該黒ゴム層との間に介装されて、該黒ゴム層から滲出する老化防止剤の透過を防止する汚染防止ゴム層とを具えるタイヤであって、タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及び前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線のそれぞれをともに、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側が、タイヤの回転軸線に近接する方向または該回転軸線から離隔する方向に傾斜させて配設するとともに、該色ゴム層よりもタイヤ半径方向外側のそれぞれの該境界線と、該色ゴム層よりもタイヤ半径方向内側のそれぞれの該境界線とを、該回転軸線に対し、相互に逆方向に傾斜させて配設してなるものである。
【0007】
ここで、タイヤ幅方向断面内において、タイヤ半径方向外側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線の少なくとも径方向最外側端を、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側に配設することが好ましい。
【0008】
このようなタイヤにおいては、タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線と、前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線とのそれぞれを、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対し、10〜60°の範囲内で傾けることが好ましい。
【0009】
また、タイヤ幅方向断面内において、タイヤ半径方向外側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及びタイヤ半径方向外側の前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線をともに、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側が、タイヤの回転軸線側に向かう方向に傾斜させるとともに、タイヤ半径方向内側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及びタイヤ半径方向内側の前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線をともに、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側がタイヤの回転軸線から離隔する方向に傾斜させることが好ましい。
【0010】
なお、前記汚染防止ゴム層がブチル系ゴムと無機粘土鉱物とを含むことが好ましい。ここで、ブチル系ゴムとは、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴム等をいう。
【0011】
そしてまた、タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線の少なくとも径方向最外側端と、前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線の境界線の少なくとも径方向最外側端を、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側で、かつ、ビードトウからタイヤ半径方向外方へ、タイヤ断面高さSHの20%だけ離隔した位置または該位置よりもタイヤ半径方向外側の領域内に配設することが好ましい。
さらに好適には、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線の径方向最内側端と、前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線の境界線の径方向最内側端を、タイヤ断面高さSHの20%だけ離隔した位置または該位置よりもタイヤ半径方向外側の領域内に配設する。
【0012】
さらに、タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と、前記汚染防止ゴム層を隔てて配設される黒ゴム層との間の最小距離を1〜5mmとすることが好ましい。
【0013】
そしてさらに、前記色ゴム層の少なくとも一部が環状の突起部を具えることが好ましい。
【0014】
ここにおいて、環状のカバーゴム層で、前記色ゴム層及び、前記汚染防止ゴム層の少なくとも一部を被覆することが好ましい。
【0015】
以上に述べたところにおいて、前記色ゴム層の、サイド部外表面へのタイヤ半径方向の露出幅の平均値Wを2〜30mmとすることが好ましい。
なお、ここでいう平均値Wとは、該露出幅のタイヤ周方向での平均値をいうものとする。
【0016】
またここで、前記色ゴム層のタイヤ軸線方向の内端の少なくとも一部をカーカスプライに接触させることが好ましい。
【0017】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、タイヤ幅方向断面内での、ゴム層間の境界線の傾き等の各寸法は、タイヤを適用リムに装着して所定内圧を充填した無負荷状態でのものとする。
また、「タイヤ断面高さ」とは、タイヤの外径と適用リムのリム径との差の1/2をいう。
ここで「適用リム」とは、タイヤが生産されまたは、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会) YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)のYEAR BOOK等に規定されたリムを指す。
また、「所定内圧」とは、JATMA等の規格で、タイヤサイズに応じて規定される、タイヤの最大負荷能力に対応する充填空気圧(最高空気圧)をいい、「最大負荷能力」とは、上記の規格でタイヤに負荷することが許される最大の質量をいう。
なお、ここでいう空気は、窒素ガスその他の不活性ガスに置換することもできる。
【発明の効果】
【0018】
この発明のタイヤでは、タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及び前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線のそれぞれをともに、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側が、タイヤの回転軸線に近接する方向または該回転軸線から離隔する方向に傾斜させて配設するとともに、該色ゴム層よりもタイヤ半径方向外側のそれぞれの該境界線と、該色ゴム層よりもタイヤ半径方向内側のそれぞれの該境界線とを、該回転軸線に対し、相互に逆方向に傾斜させて配設することで、
タイヤのサイド部に表出する色ゴム層によって、タイヤの装飾性を向上させ、
汚染防止ゴム層で、黒ゴム層に含まれる老化防止剤を遮断することにより、色ゴム層が老化防止剤によって汚染されることを防止しつつも、
ゴム層間の境界面がサイド部の外表面に垂直な場合よりも、ゴム層同士の接着面積を大きくして、タイヤ負荷転動時のゴム層境界面にかかる応力の集中を抑制し、歪みの低減と相俟って剥離の発生を有効に防止することができる。
【0019】
ここで、タイヤ幅方向断面内において、タイヤ半径方向外側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線の少なくとも径方向最外側端を、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側に配設した場合は、
第1には、色ゴム層が配設される位置がタイヤ半径方向外側であるほど、色ゴムによる装飾性は高くなるため、上記の領域内に、タイヤ半径方向外側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線の少なくとも径方向最外側端を配設することで、装飾性を確保することができる。
また第2には、トレッドゴムをサイドウォールゴムに重ねて生タイヤを成型する場合があるが、その場合には、製品タイヤのサイドウォール部のタイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径外側に色ゴムを配設すると、サイドウォール部に配設した色ゴムがトレッドゴムで覆われてしまい、色ゴムを製品タイヤのサイドウォール部の外表面に表出させることができなくなる場合がある。これに対し、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側に色ゴムを配設する場合は、トレッドゴムをサイドウォールゴムに重ねて生タイヤを成型する場合でも、色ゴムを製品タイヤのサイドウォール部の外表面に表出させて、装飾性を発揮させることができる。
【0020】
ところで、タイヤの負荷転動に当ってのタイヤのサイド部の変形を図1に仮想線で誇張して示すように、負荷転動時のタイヤの変形量は、タイヤ最大幅位置近傍でピークとなり、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側にむかって減少し、タイヤ最大幅位置と、ビードトウからタイヤ半径方向外方へ、タイヤ断面高さSHの20%だけ離隔した位置または該位置よりもタイヤ半径方向外側の領域内で小さくなる。
従って、タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線の少なくとも径方向最外側端と、前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線の境界線の少なくとも径方向最外側端を、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側で、かつ、ビードトウからタイヤ半径方向外方へ、タイヤ断面高さSHの20%だけ離隔した位置または該位置よりもタイヤ半径方向外側の領域内に配設した場合には、上述した、色ゴム層による装飾性を十分に発揮できる効果に加えて、タイヤの負荷転動時の変形量が少ない領域にゴム層の境界面を位置させることで、剥離の発生をより一層有効に防止できる。
【0021】
さらに、タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線と、前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線とを、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対し、10〜60°の範囲内で傾けた場合には、ゴム層同士の接着面積をより大きくすることにより、ゴム層の境界面への応力の集中を一層抑制し、歪みの低減と相俟って、ゴム層間境界面付近の剥離の発生を一層有効に防止することができる。
すなわち、前記傾斜角度が10°未満の場合には、ゴム層同士の接着面積が小さくなることにより、ゴム層の境界面で剥離が発生しやすくなり、一方、前記傾斜角度が60°を越えた場合にも、ゴム層の境界面で剥離が起こりやすくなる。
【0022】
なお、タイヤ幅方向断面内において、タイヤ半径方向外側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及びタイヤ半径方向外側の前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線をともに、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側が、タイヤの回転軸線側に向かう方向に傾斜させるとともに、タイヤ半径方向内側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及びタイヤ半径方向内側の前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線をともに、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側がタイヤの回転軸線から離隔する方向に傾斜させた場合には、色ゴム層をサイド外表面に、タイヤ半径方向に十分な幅をもって表出させて、タイヤの装飾性を高めつつも、タイヤ負荷転動時に、ゴム層境界面にかかる応力の集中を抑制して、歪みの低減と相俟って剥離の発生をより一層効果的に防止することができる。
【0023】
ここで、ブチル系ゴムは極めて低い空気透過率を示し、また、ゴム組成物中に含まれる、老化防止剤等の配合物の透過防止性に優れる性質を示す。
そのために、前記汚染防止ゴム層がブチル系ゴムを含むことで、黒ゴム層から析出する老化防止剤等を汚染防止ゴム層で遮断して、これにより色ゴム層の老化防止剤による変色を防ぐことができる。
また、色ゴム層の変色を有効に防止するためには、汚染防止ゴム層中にブチル系ゴムが締める割合が、ゴム成分100重量部中80重量部以上であることが好ましい。80重量部未満だと、黒ゴム層から色ゴム層への老化防止剤の移行を有効に防ぐことができない。
【0024】
さらに、前記汚染防止ゴム層が無機粘土鉱物を含む場合には、無機粘土鉱物がゴム中の空気透過率を一層低下させることにより、汚染防止ゴム層における老化防止剤の透過性をより有効に低下させ、黒ゴム層に含まれる老化防止剤による色ゴム層の汚染をより効果的に防止することができる。
【0025】
尚、前記無機粘土鉱物としては、例えば、カオリンクレー、クレー、マイカ、長石、シリカおよびアルミナの含水複合体等を挙げることができるが、他の無機粘土鉱物を用いることもできる。また、前記汚染防止ゴム層での無機粘土鉱物の配合比は、ゴム組成物のゴム成分100重量部に対し、10〜150重量部の範囲であることが好ましい。
【0026】
また、本発明のゴム組成物に前記無機粘土鉱物を配合する場合、該無機粘土鉱物は、層状または板状であることが好ましい。このような無機粘土鉱物をゴム成分に配合することで、特に押出または圧延工程において層構造が形成され、空気の透過経路が遮られて、空気透過性を低下される効果がさらに発揮される。
【0027】
そして、タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と、前記汚染防止ゴム層を隔てて配設される黒ゴム層との間の最小距離を1〜5mmとした場合には、汚染防止ゴム層が、黒ゴム層からの老化防止剤を十分有効に遮断することで、色ゴム層の汚染を防止しつつも、老化防止剤を十分に具える黒ゴム層の厚みを十分に確保することによって、サイド部の劣化を防止することができる。
すなわち、前記色ゴム層と、前記汚染防止ゴム層を隔てて配設される黒ゴム層との間の最小距離が1mm未満の場合は、汚染防止ゴム層で、黒ゴム層からの老化防止剤を有効に遮断することができず、色ゴム層を汚染するおそれがある一方、前記色ゴム層と、前記汚染防止ゴム層を隔てて配設される黒ゴム層との間の最小距離が5mmを超える場合には、老化防止剤が十分に含まれる黒ゴム層のカバー領域を十分に確保することができず、サイド部が劣化しやすくなり、また汚染防止ゴム層の領域が多くなることで境界面が負荷転動時の変形量が大きい領域に含まれやすくなる。
【0028】
そしてさらに、前記色ゴム層の少なくとも一部が環状の突起部を具える場合には、突起部が看者から視認しやすくなることによって、装飾性を向上させることができる。加えて、後述するカバーゴム層で、前記色ゴム層及び、前記汚染防止ゴム層の少なくとも一部を被覆した場合に、バフ加工等の加工を容易にすることができる。
【0029】
また、環状のカバーゴム層で、前記色ゴム層及び、前記汚染防止ゴム層の少なくとも一部を被覆した場合には、タイヤの加硫時に、色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界面が、サイドの外表面上で周方向に湾曲、折曲等してしまう場合であっても、カバーゴム層で色ゴム層とカバーゴム層との境界の湾曲部等を覆い隠すことができるので、バフ加工その他による研削、切削によってサイド部外表面にきれいなカラーラインを表出させて装飾性をより有効に向上させることができる。
なお、カバーゴム層によって色ゴム層が汚染されることを防止するために、カバーゴム層の空気透過性は黒ゴム層よりも低くすることが好ましく、また、老化防止剤を含まないようにすることが好ましい。
【0030】
なお、前記色ゴム層のタイヤ軸線方向の内端の少なくとも一部をカーカスプライに接触させた場合には、色ゴム層のタイヤ軸線方向内側では、汚染防止ゴム層を設けることなしに汚染を防止することができ、そのため、汚染防止ゴム層を色ゴム層のタイヤ軸線方向の内側に配設する必要がなくなり、サイド部の製造を容易とすることができる。
【0031】
さらに、前記色ゴム層の、サイド部外表面へのタイヤ半径方向の露出幅の平均値Wを2〜30mmとした場合には、色ゴム層をサイド部外表面に、タイヤ半径方向に十分な幅を持って表出させることによって、タイヤの装飾性を向上することができ、また、ゴム層境界面付近での応力の集中を抑制することによって、歪みの低減と相俟って剥離の発生を抑制することができる。
すなわち、前記色ゴム層のサイド部外表面への露出幅が2mm未満の場合には、色ゴム層の幅が狭すぎることにより、装飾性を十分発揮させることができず、前記色ゴム層のサイド部外表面への露出幅が30mmよりも大きい場合には、色ゴム層と汚染防止ゴム層の少なくとも一部の領域が、負荷転動時の変形量が大きい領域に配設されるおそれがあるため、剥離が発生しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】タイヤの負荷転動時におけるサイド部外表面の変形態様を誇張して示す、タイヤ幅方向断面図である。
【図2】この発明の一実施形態のタイヤを、適用リムに組み付けて所定内圧を充填した無負荷姿勢で示すタイヤ幅方向断面図である。
【図3】図2に示すタイヤの色ゴム層の周辺を拡大して示す部分断面図である。
【図4】図2に示すタイヤの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。
なお、下記の説明はあくまで例示であり、各部材の構成や作用効果等は、これに限定されるものではない。
図2に例示するタイヤ10は、トレッド部1と、トレッド部1の側部のタイヤ半径方向内方端に連続してタイヤ径方向内方に延びる各サイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ半径方向内端に連なる各ビード部3とを具えてなる。
ここでは、サイドウォール部2とビード部3とを合わせてサイド部4と呼ぶ。
【0034】
ここで、タイヤ10は、一対のビード部3間に延在する、ラジアル配置を可とするカーカスプライ6を具えており、該カーカスプライ6は、トレッド部1から一対のサイドウォール部2を介して一対のビード部3にわたってトロイド状に延び、ビード部3内に埋設されたビードコア5の周りに折り返すことで係止されている。
また、カーカスプライ6の内周側に、インナーライナー7を具える。
【0035】
図2〜4に示すように、タイヤ10のサイド部4は、全周にわたって連続する環状の色ゴム層11と、色ゴム層11のタイヤ半径方向の内外側それぞれに隣接させた、環状の汚染防止ゴム層12o、12iとを具え、これらの汚染防止ゴム層12o、12iによって、色ゴム層11は、黒ゴム層13o、13iからそれぞれ離隔される。
【0036】
本実施形態では色ゴム層11を、例えば白ゴムにて形成することとしているが、黒色以外の他の任意の色彩のゴムにて形成することもできる。
色ゴム層を形成するゴム組成物には、一般的なタイヤ用ゴム組成物に配合される成分が適宜配合され得る。ゴム成分としては、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(EPDM)等を単独または2種以上の組合せで配合することができる。
また、汚染防止ゴム層12o、12iが、ブチル系ゴムを含むことで、汚染防止ゴム層12o、12iでの老化防止剤の透過を低減させて、黒ゴム層13o、13iに含まれる老化防止剤による色ゴム層11の汚染を防止することができる。
さらに、前記汚染防止ゴム層12o、12iが無機粘土鉱物を含む場合は、汚染防止ゴム層12o、12iでの老化防止剤の透過を一層低減させて、黒ゴム層13o、13iによる色ゴム層11の汚染防止効果を一層高めることができる。なお、老化防止剤の透過性を低下させる他の素材で汚染防止ゴム層を構成することもできる。
【0037】
ところで、タイヤ使用環境下でのオゾンや熱によるゴムの劣化を抑制し、耐候性を高めるために、汚染性老化防止剤として、アミン系老化防止剤等が用いられ、非汚染性老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤等が用いられる。一般的に、汚染性老化防止剤の方がより高い老化防止効果を有するが、汚染性老化防止剤の方が色ゴム層11を汚染し易い。
そのため、汚染防止ゴム層12o、12iには、老化防止剤を含有させないか、または、非汚染性老化防止剤の少量が用いられる。一方、黒ゴム層13o、13iには老化防止剤が配合される。
【0038】
図3に示すように、タイヤ幅方向断面における、色ゴム層11と、タイヤ半径方向外側の汚染防止ゴム層12oとの境界線lAOは、境界線lAOのタイヤ軸方向外側の端に立てた法線LAOに対し、境界線lAOの内側がタイヤの回転軸線Lに向かう方向に、傾斜角度θAOだけ傾いている。
なお、境界線lAOが曲線等の場合、傾斜角度θAOは、境界線lAOとサイド部外表面とが交わる位置におけるlAOの接線と、法線LAOとがなす角度をいうものとする。以下に示す傾斜角度θBO、θAI、θBIについても同様である。
【0039】
前記境界線lAOに傾斜角度θAOを持たせることで、境界線lAOをサイド部4の外表面に垂直とした場合よりも、該境界面の面積、すなわち色ゴム層11と汚染防止ゴム層12oとの接着面積を大きくすることができる。
このようにゴム層同士の接着面積を大きくすることで、タイヤの負荷転動時に、色ゴム層11と汚染防止ゴム層12oとの境界面付近で、タイヤの負荷転動時のゴム層の境界面付近での応力の集中が抑制され、歪みの低減と相俟って剥離の発生を抑制できる。
【0040】
同様に、タイヤ幅方向断面における、色ゴム層11よりもタイヤ半径方向外側の、汚染防止ゴム層12oと黒ゴム層13oとの境界線lBOは、境界線lBOとサイド部4外表面とが交わる位置に立てたサイド部4外表面の法線LBOから、境界線lBOの内側がタイヤの回転軸線Lに向かう方向に、傾斜角度θBOだけ傾いており、この傾きにより、汚染防止ゴム層12oと黒ゴム層13oとの境界面付近の応力の集中が抑制され、歪みの低減と相俟って剥離が発生しにくくなる。
【0041】
一方、タイヤ幅方向断面における、色ゴム層11とタイヤ半径方向内側の汚染防止ゴム層12iとの境界線lAI、および色ゴム層11よりタイヤ半径方向内側の汚染防止ゴム層12iと黒ゴム層13iの境界線lBIは、それぞれの境界線lAI、lBIとサイド部4外表面とが交わる位置に立てたサイド部4外表面の法線LAI、LBIから、境界線lAI、lBIの内側がタイヤの回転軸線Lから離隔する方向に、それぞれ傾斜角度θAI、θBIだけ傾いており、このことにより、タイヤの負荷転動時に、色ゴム層11と汚染防止ゴム層12iとの境界面付近、および汚染防止ゴム層12iと黒ゴム層13iとの境界面付近での応力集中が抑制され、歪みの低減と相俟って剥離が発生しにくくなる。
【0042】
なお、図3に示す実施形態では、境界線lAI及びlBIと、境界線lAO及びlBOとは、それぞれの境界線とタイヤ外表面との交点に立てた法線から互いに逆方向に傾斜している。このことによって、それぞれの境界線を、それぞれの境界線とタイヤ外表面との交点に立てた法線から、同じ方向に傾斜させた場合よりも、ゴム層11、および汚染防止ゴム層12a、12bの量を減少させることができる。
【0043】
さらに、図3に示す実施形態では、境界線lAO及びlBOは、それぞれの境界線とタイヤ外表面との交点に立てた法線から、該法線の内側がタイヤの回転軸線Lに向かう方向に傾斜させ、境界線lAI及びlBIを、それぞれの境界線とタイヤ外表面との交点に立てた法線から、該法線の内側がタイヤの回転軸線Lから離隔する方向に傾斜させている。
このことによって、色ゴム層11をサイド4の外表面に、タイヤ半径方向に十分な幅をもって表出させてタイヤの装飾性を高めつつも、タイヤ負荷転動時に、色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界面及び汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界面に加わる応力集中を抑制して、歪みの低減と相俟って剥離を防止することができる。
【0044】
また、前記傾斜角度θAO、θBO、θAI、θBIをそれぞれ10°〜60°の範囲内、好ましくは30°〜60°の範囲内とした場合には、ゴム層同士の接着面積をより大きくすることによりゴム層の境界面への応力集中を一層抑制し、歪みの低減と相俟って剥離の発生をより有効に防止することができる。
【0045】
なお、汚染防止ゴム層12oと黒ゴム層13oとの境界面は、色ゴム層11と汚染防止ゴム層12oの境界面よりも剥離が生じやすいため、タイヤ幅方向断面での、汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線の傾斜角度を、色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界線の傾斜角度よりも大きくして、ゴム層の境界面の接触面積を大きくすることで、耐剥離性の向上効果をより高めることができる。
【0046】
ところで、タイヤ最大幅位置4aよりもタイヤ半径方向内側かつ、タイヤ断面高さSHの20%以上の領域に、前記境界線lAO、lBO、lAI、lBIを配設することで、色ゴム層11による装飾性を維持しつつも、タイヤの負荷転動時の変形量が少ない領域に、それぞれのゴム層の境界面を位置させることで、ゴム層間境界面付近での剥離の発生をより一層有効に防止できる。
【0047】
すなわち、上述したように、タイヤ負荷転動時のサイド部4の変形量は、タイヤ最大幅位置4aよりもタイヤ半径方向内側、かつ、ビードトウからタイヤ半径方向外方へ、タイヤ断面高さSHの20%だけ離隔した位置または該位置よりもタイヤ半径方向外側の領域で小さくなるため、この変形量が小さい領域に、タイヤ幅方向におけるゴム層の境界線
AO、lBO、lAI、lBIを配設し、変形量が大きい領域に色ゴム層11及び汚染防止層層12o、12iを配設しないようにすることで、ゴム層の境界面での応力集中を抑制し、剥離の発生を有効に防止することができる。
また、色ゴム層11をタイヤ半径方向の外側に配設すると、色ゴムによる装飾性が高くなることから、上記の領域内に色ゴム層を配設することで、装飾性を確保する上で好適である。
【0048】
さらに、トレッドゴムをサイドウォールゴムに重ねて生タイヤを成型する場合があるが、その場合、製品タイヤのサイド部のタイヤ最大幅位置4aよりもタイヤ半径外側に色ゴムを配設すると、色ゴムがトレッドゴムで覆われてしまい、色ゴム層11をタイヤのサイド部4の外表面に表出させることができなくなる。
これに対し、タイヤ最大幅位置4aよりもタイヤ半径方向内側に色ゴム層11を配設する場合は、トレッドゴムをサイドウォールゴムに重ねて生タイヤを成型する場合であっても、サイド部4の色ゴム層11を、トレッドゴムに妨げられることなく、外表面に表出させて、装飾性を発揮させることができる場合がある。
【0049】
またここで、タイヤ幅方向断面内での、色ゴム層11と、汚染防止ゴム層12o、12iを隔てて配設される黒ゴム層13o、13iとの間の最小距離をそれぞれD、Dとすると、D、Dをともに1〜5mmの範囲内とすることにより、汚染防止ゴム層12o、12iのそれぞれによって、黒ゴム層13o、13iからの老化防止剤の浸潤を有効に防止することで、色ゴム層11の汚染を防止しつつも、汚染防止ゴム層12o、12iの使用量を必要最小限とすることで、老化防止剤を含む黒ゴム層のカバー領域を十分に確保して、サイド部4の劣化を防止することができる。
【0050】
ここで、色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界面とを真っ直ぐになるように生タイヤを成型しても、タイヤの加硫の際に該境界面が、サイド部4の外表面上で周方向に湾曲等することがあるので、ここでは図3に示すように、色ゴム層11の外部露出部分11aを除いた部分、及び汚染防止ゴム層12o、12iの少なくとも一部を、環状のカバーゴム層14で被覆することにより、図4に示すように、カバーゴム層14をもって色ゴム層11の湾曲部等を覆い隠して、色ゴム層の外部露出部分11aのみを表出させることで、サイド部4の外表面に、色ゴム層によるきれいなカラーラインを表出させることができて、装飾性を向上させることができる。
なお例えば、カバーゴム層は他のサイド部のゴム層と同時に加硫される。タイヤの加硫時には、外部露出部分は形成されておらず、加硫後にカバーゴム層をバフ掛け加工その他によって、研削、切削等することによって、外部露出部分11aを形成することができる。
【0051】
そしてさらに、色ゴム層11の少なくとも一部が環状の突起部11bを具える場合には、突起部11bが看者から視認しやすくなることによって、装飾性を向上させることができる。加えて、カバーゴム層14で色ゴム層11及び、汚染防止ゴム層12o、12iの少なくとも一部を被覆した場合には、汚染防止ゴム層12o、12iに対するバフ加工等を容易とすることができる。
【0052】
またさらに、図3、4に示すように、色ゴム層11のサイド部外表面へのタイヤ半径方向の露出幅の平均値Wを2〜30mmの範囲内とした場合には、タイヤ半径方向に十分な幅の色ゴム層を、サイド部の外表面に表出させることによって、サイド部4、ひいては、タイヤ10の装飾性を向上させつつも、負荷転動時の変形量が大きいおそれがある領域にゴム層の境界面を配設しないことにより、境界面付近での応力の集中を抑制し、歪みの低減と相俟って剥離の発生を抑制することができる。
【0053】
ところで、図3に示すように、色ゴム層11のタイヤ軸線方向の内端の少なくとも一部をカーカスプライ6に接触させることができる。
カーカスプライ6の被覆ゴムには耐候性が要求されないため、一般に老化防止剤を含まない。そのため、色ゴム層11で、タイヤ軸線方向の内端をカーカスプライ6に接触させても、該接触部では、汚染防止ゴム層を設けることなしに、老化防止剤による汚染を防止することができる。従って、汚染防止ゴム層を色ゴム層のタイヤ半径方向内側に配設させる必要がなく、サイド部の製造を容易とすることができる。
【実施例1】
【0054】
タイヤサイズが195/65R15の実施例タイヤ及び比較例タイヤを試作し、それらの性能を評価したので、以下に説明する。
【0055】
実施例タイヤ及び比較例タイヤはともに、図2に示すように、サイド部に環状の色ゴム層と、色ゴム層のタイヤ半径方向の内外側それぞれに隣接させた環状の汚染防止ゴム層とを具えている。
【0056】
実施例タイヤ及び比較例タイヤの汚染防止ゴム層には、ブチルゴムが90重量部含まれ、さらに、実施例タイヤ2〜15には、50重量部の層状クレーが含まれる。なお、どのタイヤでも、色ゴム層及び汚染防止ゴム層には老化防止剤は含まれていない。
【0057】
実施例タイヤでは、タイヤ幅方向断面における、タイヤ半径方向外側の色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界線、及び汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線が、それぞれの境界線とタイヤ外表面との交点におけるタイヤ外表面の法線に対し、傾斜角度θAO、θBOだけ傾斜している。ここで、傾斜角度が正の場合は、境界線のタイヤ軸線方向内側がタイヤ回転軸線に向かう方向に傾斜しており、傾斜角度が負の場合は、境界線のタイヤ軸線方向内側がタイヤ回転軸線から離隔する方向に傾斜している。
一方、タイヤ半径方向内側の色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界線、及び汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線は、それぞれの境界線とタイヤ外表面との交点におけるタイヤ外表面の法線に対し、傾斜角度θAI=(−1×θAO)、θBI=(−1×θAO)だけ、タイヤ半径方向外側のそれぞれの境界線とは逆向きに傾斜している。ここで、傾斜角度が正の場合は、境界線のタイヤ軸線方向内側がタイヤ回転軸線から離隔する方向に傾斜しており、傾斜角度が負の場合は、境界線のタイヤ軸線方向内側がタイヤ回転軸線に向かう方向に傾斜するものとする。
なお、比較例タイヤでは、各境界線の該傾斜角度は、いずれも0°である。
【0058】
なお、タイヤ半径方向外側の汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線の、タイヤ半径方向最外点と、ビードトウとの距離をタイヤ断面高さで割った値をrとし、それぞれの実施例タイヤ及び比較例タイヤにおけるrを表1に示す。尚、実施例タイヤ及び比較例タイヤでは、タイヤの最大幅位置において、rが0.5となる。
【0059】
さらに、実施例タイヤ及び比較例タイヤのそれぞれについて、色ゴム層と、汚染防止ゴム層を隔てて配設される黒ゴム層との間の最小距離D(=D)は、表1の通りである。
【0060】
<耐汚染性評価試験>
以上に述べた実施例タイヤおよび比較例タイヤを、製造後に屋外に30日間放置した状態で、色ゴム層の変色が起こるか否かを試験して、耐汚染性を評価した。その結果を表1に示す。なお、色ゴム層に変色が見られなかった場合を○、色ゴム層にやや変色が見られた場合を△で示しており、変色が見られなかった場合には、耐汚染性に優れていることを示している。
【0061】
<耐剥離性評価試験>
実施例タイヤおよび比較例タイヤを、サイズ6JJのリム(JATMA標準規格リム)に組み付けるとともに、空気圧240kPa(JATMA規格の最大空気圧)を充填して、ドラム速度60km/hで10000kmにわたって615kg(JATMA最大荷重)のドラム荷重を負荷するドラム試験を実施し、その結果生じる剥離の発生の有無及び、発生した剥離の周方向のトータル長さを計測することにより、ゴム層間の境界面の耐剥離性を評価した。その結果を表1に示す。
なお、表1の評価結果は、比較例タイヤをコントロールとした指数で表しており、数値が大きいほど耐剥離性に優れることを示している。
【0062】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0063】
表1から、タイヤ幅方向断面において、色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界線と、汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線に、それぞれの境界線とサイド部外表面との交点における、サイド部外表面の法線に対して傾斜角度を設けた実施例タイヤは、比較例のタイヤと比較して、耐剥離性が大幅に向上していることが明らかとなった。
また、汚染防止ゴム層に無機粘土鉱物を配合したり、色ゴム層と、汚染防止ゴム層を隔てて配設される黒ゴム層との間の最小距離Dを1〜5mmとしたりすることで、耐汚染性が向上することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0064】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 サイド部
4a タイヤ最大幅位置
5 ビードコア
6 カーカスプライ
7 インナーライナー
10 タイヤ
11 色ゴム層
11a 色ゴム層の外部露出部分
11b 突起部
12o、12i 汚染防止ゴム層
13o、13i 黒ゴム層
14 カバーゴム層
タイヤ回転軸線
AO、LAI 色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界線とサイド部外表面との交点における、サイド部外表面の法線
AO、LAI 汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線とサイド部外表面との交点における、サイド部外表面の法線
AO、lAI 色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界線
BO、lBI 汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線
θAO、θAI 色ゴム層と汚染防止ゴム層との境界線の傾斜角度
θBO、θBI 汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線の傾斜角度
W 色ゴム層のサイド部外表面へのタイヤ半径方向の露出幅
汚染防止ゴム層と黒ゴム層との境界線のタイヤ半径方向最外位置と、タイヤ回転軸線との距離



【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接地するトレッド部と、前記トレッド部に連なって設けられるサイドウォール部とを具えるタイヤであって、
サイドウォール部に、老化防止剤を含む黒ゴム層と、該黒ゴム層に環状に埋設配置され、黒ゴム層とは異色な色ゴム層と、該色ゴム層の、少なくともタイヤ半径方向の内外側に隣接させて環状に配設され、該色ゴム層と該黒ゴム層との間に介装されて、該黒ゴム層よりも空気透過性の低いゴムからなる汚染防止ゴム層とを具え、
タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及び前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線のそれぞれをともに、
それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側が、タイヤの回転軸線に近接する方向または該回転軸線から離隔する方向に傾斜させて配設するとともに、
該色ゴム層よりもタイヤ半径方向外側のそれぞれの該境界線と、該色ゴム層よりもタイヤ半径方向内側のそれぞれの該境界線とを、該回転軸線に対し、相互に逆方向に傾斜させて配設してなるタイヤ。
【請求項2】
タイヤ幅方向断面内において、タイヤ半径方向外側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線の少なくとも径方向最外側端を、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側に配設してなる、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線と、前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線とのそれぞれを、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対し、10〜60°の範囲内で傾けてなる、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
タイヤ幅方向断面内において、タイヤ半径方向外側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及びタイヤ半径方向外側の前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線をともに、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側が、タイヤの回転軸線側に向かう方向に傾斜させるとともに、
タイヤ半径方向内側の前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線、及びタイヤ半径方向内側の前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線をともに、それぞれの境界線とサイド部外表面とが交わる位置に立てたサイド部外表面の法線に対して、該境界線のタイヤ軸線方向内側がタイヤの回転軸線から離隔する方向に傾斜させてなる、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記汚染防止ゴム層がブチル系ゴムを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記汚染防止ゴム層がさらに無機粘土鉱物を含む、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と前記汚染防止ゴム層との境界線の少なくとも径方向最外側端と、前記汚染防止ゴム層と前記黒ゴム層との境界線の境界線の少なくとも径方向最外側端を、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側で、かつ、ビードトウからタイヤ半径方向外方へ、タイヤ断面高さSHの20%だけ離隔した位置または該位置よりもタイヤ半径方向外側の領域内に配設してなる、請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
タイヤ幅方向断面内において、前記色ゴム層と、前記汚染防止ゴム層を隔てて配設される黒ゴム層との間の最小距離を1〜5mmとしてなる、請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記色ゴム層の少なくとも一部が環状の突起部を具える、請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
環状のカバーゴム層で、前記色ゴム層及び、前記汚染防止ゴム層の少なくとも一部を被覆してなる、請求項1〜9のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記色ゴム層の、サイド部外表面へのタイヤ半径方向の露出幅の平均値を2〜30mmとしてなる、請求項1〜10のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記色ゴム層のタイヤ軸線方向の内端の少なくとも一部をカーカスプライに接触させてなる、請求項1〜11のいずれかに記載のタイヤ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107517(P2013−107517A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254441(P2011−254441)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)