タクシー表示灯
【課題】 夜間、タクシーの客待ち駐車中に燃料消費を伴わないで点灯させることができるタクシー表示灯を提供する。
【解決手段】 タクシー等の屋根2に設置されてエンジンの始動と連動して点灯する内部の光源55,56により空車等を表示するタクシー表示灯1において、エンジン始動用の二次電池60叉はこれとは別の二次電池160を電源としてスイッチ170を介して点灯する補助光源110を内部に設ける。タクシーの屋根に装着される基盤30と、基盤30に固定される表示灯カバー40とを有し、補助光源110が基盤30叉は表示灯カバー40の内面に着脱自在に装着される。
【解決手段】 タクシー等の屋根2に設置されてエンジンの始動と連動して点灯する内部の光源55,56により空車等を表示するタクシー表示灯1において、エンジン始動用の二次電池60叉はこれとは別の二次電池160を電源としてスイッチ170を介して点灯する補助光源110を内部に設ける。タクシーの屋根に装着される基盤30と、基盤30に固定される表示灯カバー40とを有し、補助光源110が基盤30叉は表示灯カバー40の内面に着脱自在に装着される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシー等の屋根に設置されて点灯により空車等を知らせるタクシー表示灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タクシーの屋根には、タクシー表示灯や方向指示灯の他各種の表示灯が設置されている。タクシー表示灯は、社名表示灯や行灯とも称され、夜間、点灯しているときは空車を、消灯しているときは賃走していることを表示するもので、実空車表示機(スーパーサイン)である。また、非常時には、スイッチを入れると赤く点滅する非常灯の役割も有する。
【0003】
このタクシー表示灯は、夜間、タクシーが路上で客待ち駐車状態においては、空車中を表示することと車両の位置を知らせるため、点灯している必要がある。タクシー表示灯は、エンジンを稼働して車幅灯を点灯することで連動して点灯するようになっている。そのため、夜間の客待ち駐車ではエンジン稼働のままで待機をすることになる。
【0004】
夜間、タクシーがタクシー表示灯を点灯するためにエンジンを稼働して客待ち駐車をすることは、その間にアイドリングによる燃料の消費と排気ガスを放出していることになる。タクシー乗務員の勤務時間の1/3〜1/2は客待ち駐車であるといわれている。環境問題への関心の高まりから、このような長時間のアイドリングによる無駄な燃料の消費と排気ガスの放出は好ましいものではない。
【0005】
タクシー表示灯その他の点灯による発光効率を高める工夫として、下記特許文献に示すように、白熱電球をLED(Light Emitting Diode)とする提案があり、実際にLEDを光源とするタクシー表示灯も市販されている。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3068425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LEDは長寿命で使用する電力量も白熱電球と比較すると少ないものの、点灯のためにエンジンを稼働させる必要がある点では、従来の白熱電球と同じであり、客待ち駐車中にアイドリングの燃料消費が発生する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、夜間、タクシーの客待ち駐車中に燃料消費を伴わないで点灯させることができるタクシー表示灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、タクシー等の屋根に設置されてエンジンの稼働と連動して点灯する光源により空車等を表示するタクシー表示灯において、エンジン始動用の二次電池叉はこれとは別の二次電池を電源としてスイッチを介して点灯する補助光源を内部に設けたことを特徴とするタクシー表示灯を提供する。
【0010】
このタクシー表示灯は、夜間、タクシーの客待ち駐車中に、エンジンを稼働させないで、エンジン始動用の二次電池叉はこれとは別の二次電池に蓄えられていた電気で内部に設けられている補助光源を点灯させて空車であることを外部に表示することができる。賃走するときやエンジンを始動させたときには、スイッチを操作して補助光源を消灯させることができる。そのため、タクシーの客待ち駐車中に燃料消費を伴わないで点灯させることができる。二次電池を予め充電しておき、客待ち駐車中にエンジンを稼働させる代わりに二次電池を使用することにより、アイドリング時間を少なくし、省エネルギーと排ガス放出量の削減が達成される。
【0011】
また、本発明は、上記タクシー表示灯において、タクシーの屋根に装着される基盤と、前記基盤に固定される表示灯カバーとを有し、前記補助光源が前記基盤叉は前記表示灯カバーの内面に着脱自在に装着されることを特徴とするタクシー表示灯を提供する。
【0012】
補助光源は使用中に劣化や破損を生じるものであるが、補助光源が基盤叉は表示灯カバーに着脱自在に装着されることにより、補助光源の交換が容易になる。
【0013】
更に、本発明のタクシー表示灯は、前記補助光源が、永久磁石と強磁性体板の組み合わせで着脱自在に形成されていることが好ましい。
永久磁石を強磁性体板へ磁着させることによって強固に装着することが可能であると共に、簡単に脱離させることが可能になる。
更に、本発明のタクシー表示灯は、補助光源が、前記基盤叉は前記表示灯カバーに接合されている接合基盤と、前記接合基盤に着脱自在に装着され、前記補助光源を保持している補助光源保持部とを有するようにすることが好ましい。
補助光源保持部を接合基盤から脱離させることにより、補助光源の交換が可能になり、交換後、接合基盤に補助光源保持部を装着して使用可能とすることができる。
更に、本発明のタクシー表示灯は、前記接合基盤が、前記表示灯カバーの天井に取り付けられていることが好ましい。
これにより、表示灯カバー上部の空いている内部空間を利用して補助光源を表示灯カバー内に設置することができる。
更に、本発明のタクシー表示灯は、エンジン始動用の二次電池とこれとは別の二次電池とをスイッチで切り替えて電源とすることができることが好ましい。
スイッチで切り替えて、エンジン始動用の二次電池とは別の二次電池を主として電源として用い、エンジン始動用の二次電池は予備の電源として使用する使用方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタクシー表示灯によれば、夜間、タクシーの客待ち駐車中に燃料消費を伴わないで点灯させて空車を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のタクシー表示灯の一実施形態の内部構造を示す一部断面図である。
【図2】本発明のタクシー表示灯の配線例を示す配線図である。
【図3】タクシー屋根のタクシー表示灯と二次電池とスイッチの配置の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明のタクシー表示灯の補助光源を取り外すための挟み工具の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のタクシー表示灯の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明のタクシー表示灯1は、図3に示すように、従来のタクシー表示灯と同一の機能を有し、タクシーの屋根2に設置されてタクシーの種類(社名)の表示、空車と実車(乗客が乗っていること)の区別の表示、非常時の非常灯の機能等を有する。様々な形のタクシー表示灯があり、本実施形態で示したのは、個人タクシー用のタクシー表示灯である。
【0018】
タクシー表示灯1は、図1に示すように、タクシーの屋根2に取り付けられる基盤30と、この基盤30に固定される表示灯カバー40とを有する。基盤30の裏側には、図示しない吸盤やゴム磁石などの装着手段が取り付けられており、タクシーの屋根2に装着することができるようになっている。
【0019】
表示灯カバー40は、基盤30の上に重なって図示しないネジ止め等により基盤30に固定される基台部41を有し、基台部41に内部空間を有するカバー部42が一体化されて形成されている。メタクリル樹脂(PMMA)等の光透過性のプラスチックで形成されているちょうちん形のカバー部42が内部の光源より照射されて表示灯として機能する。基台部41の中央部には、カバー部42の内部空間へ通じるレーストラック形状等の開口部43が開口している。
【0020】
基盤30の中央部における基台部41の開口部43に対応する部分に光源保持部31が突起状に形成され、この光源保持部31に中央の非常灯支持部(ソケット)51を挟んで両側に2つの光源支持部(ソケット)52,53が設置されている。非常灯支持部51には、赤色発光する光源54が、光源支持部52,53にはそれぞれ白色発光する光源55,56がそれぞれ着脱自在に装着される。非常灯支持部51と光源支持部52,53には、それぞれタクシー車内からの電源を供給する電気コード58が接続されている。この電気コード58は、基盤30の下面の側方に設けられた図示しない切欠きからタクシーの屋根2の上をセンターピラーに向かって延伸しており、センターピラー上端から車内へ延伸されている。
【0021】
基盤30と表示灯カバー40の基台部41とを結合している図示しないネジ等を取り外すと、基盤30と表示灯カバー40とが分離し、基盤30に取り付けられている各光源54〜56が露出し、各光源54〜56を交換することができる。光源としては、白熱電球、蛍光灯、LED等を用いることができる。
【0022】
図2の配線図を参照して、これらの赤色光源54と白色光源55,56の点灯・消灯について説明する。赤色光源54は、自動車に搭載され、エンジン始動用の二次電池の鉛蓄電池60と接続され、非常スイッチ61を入れることにより、赤色に点滅し、非常事態であることを表示する。白色光源55,56は、ダイナモとレギュレータを備える定電圧電源供給部62と車幅灯を入れるスイッチと連動するスイッチ63及びタクシーメータと連動するスイッチ64を介して接続されている。定電圧電源供給部62では、ダイナモはエンジン始動により発電を開始し、レギュレータにより一定電圧の電源に変換される。タクシー表示灯1は、夜間に点灯されるため、車幅灯と前照灯を点灯させるスイッチと連動しており、車幅灯を点灯させるとタクシー表示灯1も点灯するようになっている。また、賃走のときにはタクシー表示灯1を消灯させる必要があるため、タクシーメータと連動して、タクシーメータが稼働するときにはタクシー表示灯1を消灯させるようになっている。
【0023】
このような従来のタクシー表示灯では、夜間、タクシーが路上で客待ち駐車状態において、空車中を表示するように点灯させるためにエンジンを稼働させて車幅灯を点灯させなければならない。そのため、夜間の客待ち駐車ではエンジン稼働のままで長時間の待機をすることになり、その間にアイドリングによる燃料の消費と排気ガスを放出していることになる。
【0024】
本発明のタクシー表示灯1は、従来のタクシー表示灯をそのまま用い、表示灯カバー40内部の上部に空き空間が存在することを利用してその空き空間に図1には図示しない二次電池を電源とする図1には図示しないスイッチを介して点灯する補助光源110を設けた構造を有する。
【0025】
図1に示すように、補助光源110を表示灯カバー40の内壁に着脱自在に装着するための補助光源装着部材120がカバー部42の内部に設けられている。補助光源装着部材120は、合成樹脂製や金属製の接合基盤130と中間保持部材140と補助光源保持部150とを有する。接合基盤130は、その上面131でカバー部42に接合して固定される例えば円盤形の部材である。接合基盤130の下面には磁石に磁着する鉄等の強磁性の例えば薄い円板形の強磁性体板132が固定されている。図1のカバー部42は、ちょうちん形の頂部に円筒形の突出部が設けられているため、円板形の接合基盤130はその突出部の天井にそのまま接合できるが、カバー部42がその他の形状であれば、カバー部42の天井やその近辺の形状に合致した形状の接合基盤130を用いてカバー部42の天井等に接合することができる。接合方法は、接着剤、超音波溶着、ネジ止め、粘着剤等を使用できる。カバー部42はメタクリル樹脂で構成されることが多いため、一般には接着剤を用いて接合基盤130をカバー部へ取り付ける。
【0026】
また、中間保持部材140は、接合基盤130に対して装着及び脱着自在に取り付けられる部材であり、接合基盤130とほぼ同じ径を有する円盤状のフランジ部141の下面にフランジ部141より直径が小さい円柱状で周面にネジが設けられているボルト部142がフランジ部141と同軸で一体に設けられている。中間保持部材140のフランジ部141上面には、薄い円盤形の永久磁石143が埋め込まれており、接合基盤130の下面に設けられている強磁性体板132に磁着し、更に取り外すことができるようになっている。
【0027】
補助光源保持部150は、袋ナットの凹型の形状を有し、中間保持部材140のボルト部142にねじ込まれるナットとして機能する周面にネジが設けられた凹み151が設けられている。光源保持部150の下面中央には、補助光源110を装着・脱着可能に保持すると共に、補助光源へ電気を供給する光源支持部(ソケット)111が垂直方向に設置され、補助光源支持部111に電気コード112が電気的に接続されている。また、補助光源保持部150の側面には突起152が一体に設けられ、この突起152に下方に延伸する配線固定棒113の上端部が固定されている。配線固定棒113は、例えば自由な形状に折り曲げできる針金で構成され、本実施形態ではカバー部42の内面の湾曲面に沿った円弧状に形成され、その下端縁はカバー部42の下端近傍に達している。補助光源110と接続されている電気コード112は補助光源支持部111の端子から凹み151の底面に露出され、凹み151の側部に空けられた図示しない通し孔を通って配線固定棒113に結束バンド等で固定されて下方に延伸し、更に、カバー部42の基台部41の空隙部分で折り畳まれて延び代が確保され、基盤30から外部へ延伸し、電気コード58と共にタクシーの屋根2を伝い、車内へと延伸している。配線固定棒113は、垂下する電気コード112を固定して、電気コード112の重量が補助光源装着部材120に加わることを防止することができる。
【0028】
なお、接合基盤130、中間保持部材140及び補助光源保持部150を組み合わせたときの補助光源装着部材120の大きさは、補助光源110を含まずに、横幅が2〜3cm、縦方向の長さが3〜5cm程度と小形であり、ほとんどの種類のタクシー表示灯の中に取り付けることができる。
【0029】
図3に示すように、車内へ延伸された電気コード112は窓枠上部に固定され、フロントピラーの内側を伝ってダッシュボード上面に設置されている二次電池としての充電池(電池ホルダー)160に接続されており、この充電池に近接してダッシュボード上面に充電池160の電源をオン/オフする連動スイッチ170が設置されている。
【0030】
図2の配線図に、補助光源110の電源と連動スイッチ170の配線を示した。補助光源110は、エンジンを始動させる電源の鉛蓄電池60とこの鉛蓄電池60とは別の二次電池(充電池)160の2種類の二次電池を電源として、連動スイッチ170により、電源の切り替えと補助光源110の点灯・消灯ができるようになっている。鉛蓄電池60を電源とするのは、例えば車内灯があり、車内灯の配線を利用して、連動スイッチ170へ配線することができる。
【0031】
補助光源110としては、白熱電球、蛍光灯、白色LED等を用いることができる。また、二次電池160としては、鉛蓄電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等を用いることができる。現在、単三形ニッケル水素充電池が市販されており、家庭電源で簡単に充電可能であり、安価であることから、本発明のタクシー表示灯1の電源として好ましい。二次電池160は、単三形電池ホルダーとすることができる。ニッケル水素電池の電圧は1.2Vであり、複数のニッケル水素充電池を用い、直列と並列を組み合わせて、補助光源110の発光に必要な電圧を得ることができる。単三形を4本使用してもその容積はたばこ一箱分程度であり、ダッシュボード上に容易に設置することができる。
【0032】
連動スイッチ170は、スイッチS1がスイッチS2と連動し、スイッチS1とS2がそれぞれA1とA2に同時に接続され、スイッチS1とS2がそれぞれB1とB2に同時に接続されるようになっている。スイッチS1とS2がそれぞれ何処へも接続されていないときは、蓄電池60と二次電池160の電源が補助光源の回路より外され、補助光源110は消灯している。スイッチS1とS2がそれぞれA1とA2に同時に接続されると、二次電池(電池ホルダー)160の電源が補助光源の回路に挿入され、補助光源110は、二次電池160を光源として点灯する。また、スイッチS1とS2がそれぞれB1とB2に同時に接続されると、鉛蓄電池60が補助光源の回路に挿入され、補助光源110は鉛蓄電池60を電源として点灯する。
【0033】
このように、連動スイッチ170を操作することにより、電源の選択と補助光源の点灯・消灯を行うことができる。例えば、電池ホルダー160に装着した二次電池が補助光源110の点灯で消耗したときは、スイッチ170で切り替えて、鉛蓄電池60を電源として再び点灯させることができる。鉛蓄電池60は、エンジン始動用であるため、バッテリー上がりになるとエンジンを始動させることができなくなってしまう。そのため、二次電池160を主電源として用い、鉛蓄電池60は予備電源として用いることが好ましい。しかし、鉛蓄電池60を主電源として用い、二次電池(電池ホルダー)160を補助電源とすることも勿論可能である。
【0034】
図1に示す補助光源装着部材120は、中間保持部材140のボルト部142に補助光源110を組み込んだ補助光源保持部150の凹み151をねじ込み、中間保持部材140と補助光源保持部150とを一体化させる。そして、カバー部42の天井に接合されている接合基盤130下面に中間保持部材140の上面を接するように近づけると、接合基盤130の下面の強磁性体板132に中間保持部材140の永久磁石143が磁着し、接合基盤130に中間保持部材140が強固に固定される。その結果、補助光源110は、表示灯カバー40の天井に、補助光源保持部150と中間保持部材140と接合基盤130とで構成される補助光源装着部材120を介して着脱自在に装着され、表示灯カバー40の天井から垂直下方へ立つ。カバー部42の基台部41と基盤30とをネジ止め等することにより、タクシーの屋根2に固定されている基盤30に表示灯カバー40を固定することができる。
【0035】
本発明のタクシー表示灯1の使用方法は、まず、夜間乗務を行う前に、予め二次電池160を充電しておく。単三形の充電池ならば、家庭用電源で複数本の同時充電が可能である。充電済の充電池を単三形電池ホルダー160に装填しておく。タクシー表示灯1を点灯するときは、エンジンを始動させずにスイッチS1とS2がそれぞれA1とA2に同時に接続するようにスイッチ170を入れると、補助光源110は二次電池160を電源として点灯し、タクシー表示灯1の点灯により空車中を表示することができる。
【0036】
アイドリング時は意外に燃料を消費し、一分間当たり14ミリリットル程度燃料を消費するといわれている。単にタクシー表示灯1を点灯させるために長時間の客待ち駐車中にエンジンを稼働させることを抑制し、アイドリングによる燃料の消費とCO2削減が達成される。ちなみに、一分間当たり14ミリリットルの燃料消費を抑制することは、炭素換算で9gのCO2削減となる。一日2時間の客待ち駐車を週5日間行うと仮定すると、一台のタクシーの年間の燃料消費量の削減は約437リットル、二酸化炭素の削減量は炭素換算で約2.8トンにもなる。東京都内には個人タクシーだけで約1万8千台が稼働していると言われ、その一割が本発明のタクシー表示灯1に改造したとすると、削減できる燃料は、年間約787,000リットルにも達する。
【0037】
賃走する場合やエンジンを始動させたときには、スイッチ170を操作して補助光源110を消灯させる。消灯しているときに、再度エンジンを停止させて客待ち状態を表示させる必要があるときにはスイッチ170を操作して二次電池160を電源として補助光源を点灯させることができる。汎用されている単三形の充電池を用いれば、家庭用電源から簡単に充電が可能であり、必要であれば、予備の充電池を用意しておけば、充電池(電池ホルダー)160での補助光源の長時間の発光も可能となり、簡便である。例えば、2.5V仕様、駆動電流0.5Aの豆電球を充電容量が2000mAhの単三形ニッケル水素電池を直列に2本使用して発光させる場合、約4時間の発光が可能である。そのため、夜間勤務の8時間の中、3〜4時間を占めると言われている客待ち駐車時間を1回の充電でカバーすることができる。また、予想より二次電池160の消耗が大きいときは、スイッチ170を操作して鉛蓄電池60を電源として補助光源110を点灯させることができる。
【0038】
補助光源110の交換が必要になったときは、表示灯カバー40の基台部41と基盤30とを固定している図示しないネジを取り外すことにより、基盤30から表示灯カバー40を分離することができる。補助光源110に接続されている電気コード112はカバー部42の基台部41の内部で折り畳まれて延び代を確保しているため、表示灯カバー40を基盤30から十分な距離を確保して分離することができる。表示灯カバー40の基台部41に設けられている開口部43は、表示灯カバー40の種類にもよるが、手を差し込めないほど狭い場合が多い。そのため、図4に示すような挟み工具180を用いて、工具先端の円形挟みを表示灯カバー40内に差し込んで、中間保持部材140のフランジ部141を挟み、横にずらせるように押すか、手前に押し下げるように引くと、フランジ部141と接合基盤130との磁着を解除して接合基盤130から中間保持部材140とそれに組み込まれた補助光源保持部150を分離することができる。
【0039】
本発明のタクシー表示灯1は、従来のタクシー表示灯をそのまま用い、表示灯カバー40の空いている上部空間を利用して補助光源装着部材120と補助光源110を内部に配置すると共に、二次電池160とスイッチ170、これらを接続する電気コード112を追加する改造に加えて、鉛蓄電池60も電源とするときは、室内灯の鉛蓄電池60と接続されている電気コードをスイッチまで延伸する改造を行うだけでよい。従来のタクシー表示灯を交換する必要が無く、改造費だけで済み、費用の点でも経済的である。
【0040】
以上説明した本発明のタクシー表示灯の一実施形態の説明では、補助光源を表示灯カバーに取り付けるようにしていたが、基台部の開口部に余裕がある場合は、他の光源と共に基盤に取り付けることもできる。また、永久磁石と鉄板とを用いて接合基盤と中間保持部材とを着脱自在にしていたが、機械的な機構を用いて接合基盤と中間保持部材とを着脱自在にするようにしても良い。更に、接合基盤を表示灯カバーの中に設けるように説明していたが、鉄板等の強磁性体を表示灯カバーの外側に固定し、永久磁石を表示灯カバーの厚みを介して強磁性体に磁着させることも可能である。更に、補助光源保持部と中間保持部材とを分離可能にしているが、分離可能とした理由は電気コードを側方に導くための空間の確保であり、例えば孔を穿設することにより電気コードを側方へ導くことが可能であれば、補助光源保持部と中間保持部材とを一体不可分の一つの部材とすることも可能である。また、接合基盤には強磁性体板を、中間保持部材には永久磁石をそれぞれ固定してあると説明したが、これらを逆にして、接合基盤には永久磁石を、中間保持部材には強磁性体板をそれぞれ固定するようにしてもよい。更に、鉛蓄電池60と二次電池(電池ホルダー)160とを切り替えて電源とすることができるとしているが、いずれかの電池だけを使用するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のタクシー表示灯は、夜間、エンジンを始動させないで空車であることを表示するために点灯させることができるため、タクシーの燃料消費の節減と排気ガス放出の削減を達成し、地球温暖化抑制に寄与できる。
【符号の説明】
【0042】
1 タクシー表示灯
2 屋根
30 基盤
40 表示灯カバー
42 カバー部
60 鉛蓄電池
110 補助光源
112 電気コード
120 補助光源装着部材
130 接合基盤
132 強磁性体板
140 中間保持部材
143 永久磁石
150 補助光源保持部
160 二次電池(単三形電池ホルダー)
170 連動スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシー等の屋根に設置されて点灯により空車等を知らせるタクシー表示灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タクシーの屋根には、タクシー表示灯や方向指示灯の他各種の表示灯が設置されている。タクシー表示灯は、社名表示灯や行灯とも称され、夜間、点灯しているときは空車を、消灯しているときは賃走していることを表示するもので、実空車表示機(スーパーサイン)である。また、非常時には、スイッチを入れると赤く点滅する非常灯の役割も有する。
【0003】
このタクシー表示灯は、夜間、タクシーが路上で客待ち駐車状態においては、空車中を表示することと車両の位置を知らせるため、点灯している必要がある。タクシー表示灯は、エンジンを稼働して車幅灯を点灯することで連動して点灯するようになっている。そのため、夜間の客待ち駐車ではエンジン稼働のままで待機をすることになる。
【0004】
夜間、タクシーがタクシー表示灯を点灯するためにエンジンを稼働して客待ち駐車をすることは、その間にアイドリングによる燃料の消費と排気ガスを放出していることになる。タクシー乗務員の勤務時間の1/3〜1/2は客待ち駐車であるといわれている。環境問題への関心の高まりから、このような長時間のアイドリングによる無駄な燃料の消費と排気ガスの放出は好ましいものではない。
【0005】
タクシー表示灯その他の点灯による発光効率を高める工夫として、下記特許文献に示すように、白熱電球をLED(Light Emitting Diode)とする提案があり、実際にLEDを光源とするタクシー表示灯も市販されている。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3068425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LEDは長寿命で使用する電力量も白熱電球と比較すると少ないものの、点灯のためにエンジンを稼働させる必要がある点では、従来の白熱電球と同じであり、客待ち駐車中にアイドリングの燃料消費が発生する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、夜間、タクシーの客待ち駐車中に燃料消費を伴わないで点灯させることができるタクシー表示灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、タクシー等の屋根に設置されてエンジンの稼働と連動して点灯する光源により空車等を表示するタクシー表示灯において、エンジン始動用の二次電池叉はこれとは別の二次電池を電源としてスイッチを介して点灯する補助光源を内部に設けたことを特徴とするタクシー表示灯を提供する。
【0010】
このタクシー表示灯は、夜間、タクシーの客待ち駐車中に、エンジンを稼働させないで、エンジン始動用の二次電池叉はこれとは別の二次電池に蓄えられていた電気で内部に設けられている補助光源を点灯させて空車であることを外部に表示することができる。賃走するときやエンジンを始動させたときには、スイッチを操作して補助光源を消灯させることができる。そのため、タクシーの客待ち駐車中に燃料消費を伴わないで点灯させることができる。二次電池を予め充電しておき、客待ち駐車中にエンジンを稼働させる代わりに二次電池を使用することにより、アイドリング時間を少なくし、省エネルギーと排ガス放出量の削減が達成される。
【0011】
また、本発明は、上記タクシー表示灯において、タクシーの屋根に装着される基盤と、前記基盤に固定される表示灯カバーとを有し、前記補助光源が前記基盤叉は前記表示灯カバーの内面に着脱自在に装着されることを特徴とするタクシー表示灯を提供する。
【0012】
補助光源は使用中に劣化や破損を生じるものであるが、補助光源が基盤叉は表示灯カバーに着脱自在に装着されることにより、補助光源の交換が容易になる。
【0013】
更に、本発明のタクシー表示灯は、前記補助光源が、永久磁石と強磁性体板の組み合わせで着脱自在に形成されていることが好ましい。
永久磁石を強磁性体板へ磁着させることによって強固に装着することが可能であると共に、簡単に脱離させることが可能になる。
更に、本発明のタクシー表示灯は、補助光源が、前記基盤叉は前記表示灯カバーに接合されている接合基盤と、前記接合基盤に着脱自在に装着され、前記補助光源を保持している補助光源保持部とを有するようにすることが好ましい。
補助光源保持部を接合基盤から脱離させることにより、補助光源の交換が可能になり、交換後、接合基盤に補助光源保持部を装着して使用可能とすることができる。
更に、本発明のタクシー表示灯は、前記接合基盤が、前記表示灯カバーの天井に取り付けられていることが好ましい。
これにより、表示灯カバー上部の空いている内部空間を利用して補助光源を表示灯カバー内に設置することができる。
更に、本発明のタクシー表示灯は、エンジン始動用の二次電池とこれとは別の二次電池とをスイッチで切り替えて電源とすることができることが好ましい。
スイッチで切り替えて、エンジン始動用の二次電池とは別の二次電池を主として電源として用い、エンジン始動用の二次電池は予備の電源として使用する使用方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタクシー表示灯によれば、夜間、タクシーの客待ち駐車中に燃料消費を伴わないで点灯させて空車を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のタクシー表示灯の一実施形態の内部構造を示す一部断面図である。
【図2】本発明のタクシー表示灯の配線例を示す配線図である。
【図3】タクシー屋根のタクシー表示灯と二次電池とスイッチの配置の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明のタクシー表示灯の補助光源を取り外すための挟み工具の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のタクシー表示灯の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明のタクシー表示灯1は、図3に示すように、従来のタクシー表示灯と同一の機能を有し、タクシーの屋根2に設置されてタクシーの種類(社名)の表示、空車と実車(乗客が乗っていること)の区別の表示、非常時の非常灯の機能等を有する。様々な形のタクシー表示灯があり、本実施形態で示したのは、個人タクシー用のタクシー表示灯である。
【0018】
タクシー表示灯1は、図1に示すように、タクシーの屋根2に取り付けられる基盤30と、この基盤30に固定される表示灯カバー40とを有する。基盤30の裏側には、図示しない吸盤やゴム磁石などの装着手段が取り付けられており、タクシーの屋根2に装着することができるようになっている。
【0019】
表示灯カバー40は、基盤30の上に重なって図示しないネジ止め等により基盤30に固定される基台部41を有し、基台部41に内部空間を有するカバー部42が一体化されて形成されている。メタクリル樹脂(PMMA)等の光透過性のプラスチックで形成されているちょうちん形のカバー部42が内部の光源より照射されて表示灯として機能する。基台部41の中央部には、カバー部42の内部空間へ通じるレーストラック形状等の開口部43が開口している。
【0020】
基盤30の中央部における基台部41の開口部43に対応する部分に光源保持部31が突起状に形成され、この光源保持部31に中央の非常灯支持部(ソケット)51を挟んで両側に2つの光源支持部(ソケット)52,53が設置されている。非常灯支持部51には、赤色発光する光源54が、光源支持部52,53にはそれぞれ白色発光する光源55,56がそれぞれ着脱自在に装着される。非常灯支持部51と光源支持部52,53には、それぞれタクシー車内からの電源を供給する電気コード58が接続されている。この電気コード58は、基盤30の下面の側方に設けられた図示しない切欠きからタクシーの屋根2の上をセンターピラーに向かって延伸しており、センターピラー上端から車内へ延伸されている。
【0021】
基盤30と表示灯カバー40の基台部41とを結合している図示しないネジ等を取り外すと、基盤30と表示灯カバー40とが分離し、基盤30に取り付けられている各光源54〜56が露出し、各光源54〜56を交換することができる。光源としては、白熱電球、蛍光灯、LED等を用いることができる。
【0022】
図2の配線図を参照して、これらの赤色光源54と白色光源55,56の点灯・消灯について説明する。赤色光源54は、自動車に搭載され、エンジン始動用の二次電池の鉛蓄電池60と接続され、非常スイッチ61を入れることにより、赤色に点滅し、非常事態であることを表示する。白色光源55,56は、ダイナモとレギュレータを備える定電圧電源供給部62と車幅灯を入れるスイッチと連動するスイッチ63及びタクシーメータと連動するスイッチ64を介して接続されている。定電圧電源供給部62では、ダイナモはエンジン始動により発電を開始し、レギュレータにより一定電圧の電源に変換される。タクシー表示灯1は、夜間に点灯されるため、車幅灯と前照灯を点灯させるスイッチと連動しており、車幅灯を点灯させるとタクシー表示灯1も点灯するようになっている。また、賃走のときにはタクシー表示灯1を消灯させる必要があるため、タクシーメータと連動して、タクシーメータが稼働するときにはタクシー表示灯1を消灯させるようになっている。
【0023】
このような従来のタクシー表示灯では、夜間、タクシーが路上で客待ち駐車状態において、空車中を表示するように点灯させるためにエンジンを稼働させて車幅灯を点灯させなければならない。そのため、夜間の客待ち駐車ではエンジン稼働のままで長時間の待機をすることになり、その間にアイドリングによる燃料の消費と排気ガスを放出していることになる。
【0024】
本発明のタクシー表示灯1は、従来のタクシー表示灯をそのまま用い、表示灯カバー40内部の上部に空き空間が存在することを利用してその空き空間に図1には図示しない二次電池を電源とする図1には図示しないスイッチを介して点灯する補助光源110を設けた構造を有する。
【0025】
図1に示すように、補助光源110を表示灯カバー40の内壁に着脱自在に装着するための補助光源装着部材120がカバー部42の内部に設けられている。補助光源装着部材120は、合成樹脂製や金属製の接合基盤130と中間保持部材140と補助光源保持部150とを有する。接合基盤130は、その上面131でカバー部42に接合して固定される例えば円盤形の部材である。接合基盤130の下面には磁石に磁着する鉄等の強磁性の例えば薄い円板形の強磁性体板132が固定されている。図1のカバー部42は、ちょうちん形の頂部に円筒形の突出部が設けられているため、円板形の接合基盤130はその突出部の天井にそのまま接合できるが、カバー部42がその他の形状であれば、カバー部42の天井やその近辺の形状に合致した形状の接合基盤130を用いてカバー部42の天井等に接合することができる。接合方法は、接着剤、超音波溶着、ネジ止め、粘着剤等を使用できる。カバー部42はメタクリル樹脂で構成されることが多いため、一般には接着剤を用いて接合基盤130をカバー部へ取り付ける。
【0026】
また、中間保持部材140は、接合基盤130に対して装着及び脱着自在に取り付けられる部材であり、接合基盤130とほぼ同じ径を有する円盤状のフランジ部141の下面にフランジ部141より直径が小さい円柱状で周面にネジが設けられているボルト部142がフランジ部141と同軸で一体に設けられている。中間保持部材140のフランジ部141上面には、薄い円盤形の永久磁石143が埋め込まれており、接合基盤130の下面に設けられている強磁性体板132に磁着し、更に取り外すことができるようになっている。
【0027】
補助光源保持部150は、袋ナットの凹型の形状を有し、中間保持部材140のボルト部142にねじ込まれるナットとして機能する周面にネジが設けられた凹み151が設けられている。光源保持部150の下面中央には、補助光源110を装着・脱着可能に保持すると共に、補助光源へ電気を供給する光源支持部(ソケット)111が垂直方向に設置され、補助光源支持部111に電気コード112が電気的に接続されている。また、補助光源保持部150の側面には突起152が一体に設けられ、この突起152に下方に延伸する配線固定棒113の上端部が固定されている。配線固定棒113は、例えば自由な形状に折り曲げできる針金で構成され、本実施形態ではカバー部42の内面の湾曲面に沿った円弧状に形成され、その下端縁はカバー部42の下端近傍に達している。補助光源110と接続されている電気コード112は補助光源支持部111の端子から凹み151の底面に露出され、凹み151の側部に空けられた図示しない通し孔を通って配線固定棒113に結束バンド等で固定されて下方に延伸し、更に、カバー部42の基台部41の空隙部分で折り畳まれて延び代が確保され、基盤30から外部へ延伸し、電気コード58と共にタクシーの屋根2を伝い、車内へと延伸している。配線固定棒113は、垂下する電気コード112を固定して、電気コード112の重量が補助光源装着部材120に加わることを防止することができる。
【0028】
なお、接合基盤130、中間保持部材140及び補助光源保持部150を組み合わせたときの補助光源装着部材120の大きさは、補助光源110を含まずに、横幅が2〜3cm、縦方向の長さが3〜5cm程度と小形であり、ほとんどの種類のタクシー表示灯の中に取り付けることができる。
【0029】
図3に示すように、車内へ延伸された電気コード112は窓枠上部に固定され、フロントピラーの内側を伝ってダッシュボード上面に設置されている二次電池としての充電池(電池ホルダー)160に接続されており、この充電池に近接してダッシュボード上面に充電池160の電源をオン/オフする連動スイッチ170が設置されている。
【0030】
図2の配線図に、補助光源110の電源と連動スイッチ170の配線を示した。補助光源110は、エンジンを始動させる電源の鉛蓄電池60とこの鉛蓄電池60とは別の二次電池(充電池)160の2種類の二次電池を電源として、連動スイッチ170により、電源の切り替えと補助光源110の点灯・消灯ができるようになっている。鉛蓄電池60を電源とするのは、例えば車内灯があり、車内灯の配線を利用して、連動スイッチ170へ配線することができる。
【0031】
補助光源110としては、白熱電球、蛍光灯、白色LED等を用いることができる。また、二次電池160としては、鉛蓄電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等を用いることができる。現在、単三形ニッケル水素充電池が市販されており、家庭電源で簡単に充電可能であり、安価であることから、本発明のタクシー表示灯1の電源として好ましい。二次電池160は、単三形電池ホルダーとすることができる。ニッケル水素電池の電圧は1.2Vであり、複数のニッケル水素充電池を用い、直列と並列を組み合わせて、補助光源110の発光に必要な電圧を得ることができる。単三形を4本使用してもその容積はたばこ一箱分程度であり、ダッシュボード上に容易に設置することができる。
【0032】
連動スイッチ170は、スイッチS1がスイッチS2と連動し、スイッチS1とS2がそれぞれA1とA2に同時に接続され、スイッチS1とS2がそれぞれB1とB2に同時に接続されるようになっている。スイッチS1とS2がそれぞれ何処へも接続されていないときは、蓄電池60と二次電池160の電源が補助光源の回路より外され、補助光源110は消灯している。スイッチS1とS2がそれぞれA1とA2に同時に接続されると、二次電池(電池ホルダー)160の電源が補助光源の回路に挿入され、補助光源110は、二次電池160を光源として点灯する。また、スイッチS1とS2がそれぞれB1とB2に同時に接続されると、鉛蓄電池60が補助光源の回路に挿入され、補助光源110は鉛蓄電池60を電源として点灯する。
【0033】
このように、連動スイッチ170を操作することにより、電源の選択と補助光源の点灯・消灯を行うことができる。例えば、電池ホルダー160に装着した二次電池が補助光源110の点灯で消耗したときは、スイッチ170で切り替えて、鉛蓄電池60を電源として再び点灯させることができる。鉛蓄電池60は、エンジン始動用であるため、バッテリー上がりになるとエンジンを始動させることができなくなってしまう。そのため、二次電池160を主電源として用い、鉛蓄電池60は予備電源として用いることが好ましい。しかし、鉛蓄電池60を主電源として用い、二次電池(電池ホルダー)160を補助電源とすることも勿論可能である。
【0034】
図1に示す補助光源装着部材120は、中間保持部材140のボルト部142に補助光源110を組み込んだ補助光源保持部150の凹み151をねじ込み、中間保持部材140と補助光源保持部150とを一体化させる。そして、カバー部42の天井に接合されている接合基盤130下面に中間保持部材140の上面を接するように近づけると、接合基盤130の下面の強磁性体板132に中間保持部材140の永久磁石143が磁着し、接合基盤130に中間保持部材140が強固に固定される。その結果、補助光源110は、表示灯カバー40の天井に、補助光源保持部150と中間保持部材140と接合基盤130とで構成される補助光源装着部材120を介して着脱自在に装着され、表示灯カバー40の天井から垂直下方へ立つ。カバー部42の基台部41と基盤30とをネジ止め等することにより、タクシーの屋根2に固定されている基盤30に表示灯カバー40を固定することができる。
【0035】
本発明のタクシー表示灯1の使用方法は、まず、夜間乗務を行う前に、予め二次電池160を充電しておく。単三形の充電池ならば、家庭用電源で複数本の同時充電が可能である。充電済の充電池を単三形電池ホルダー160に装填しておく。タクシー表示灯1を点灯するときは、エンジンを始動させずにスイッチS1とS2がそれぞれA1とA2に同時に接続するようにスイッチ170を入れると、補助光源110は二次電池160を電源として点灯し、タクシー表示灯1の点灯により空車中を表示することができる。
【0036】
アイドリング時は意外に燃料を消費し、一分間当たり14ミリリットル程度燃料を消費するといわれている。単にタクシー表示灯1を点灯させるために長時間の客待ち駐車中にエンジンを稼働させることを抑制し、アイドリングによる燃料の消費とCO2削減が達成される。ちなみに、一分間当たり14ミリリットルの燃料消費を抑制することは、炭素換算で9gのCO2削減となる。一日2時間の客待ち駐車を週5日間行うと仮定すると、一台のタクシーの年間の燃料消費量の削減は約437リットル、二酸化炭素の削減量は炭素換算で約2.8トンにもなる。東京都内には個人タクシーだけで約1万8千台が稼働していると言われ、その一割が本発明のタクシー表示灯1に改造したとすると、削減できる燃料は、年間約787,000リットルにも達する。
【0037】
賃走する場合やエンジンを始動させたときには、スイッチ170を操作して補助光源110を消灯させる。消灯しているときに、再度エンジンを停止させて客待ち状態を表示させる必要があるときにはスイッチ170を操作して二次電池160を電源として補助光源を点灯させることができる。汎用されている単三形の充電池を用いれば、家庭用電源から簡単に充電が可能であり、必要であれば、予備の充電池を用意しておけば、充電池(電池ホルダー)160での補助光源の長時間の発光も可能となり、簡便である。例えば、2.5V仕様、駆動電流0.5Aの豆電球を充電容量が2000mAhの単三形ニッケル水素電池を直列に2本使用して発光させる場合、約4時間の発光が可能である。そのため、夜間勤務の8時間の中、3〜4時間を占めると言われている客待ち駐車時間を1回の充電でカバーすることができる。また、予想より二次電池160の消耗が大きいときは、スイッチ170を操作して鉛蓄電池60を電源として補助光源110を点灯させることができる。
【0038】
補助光源110の交換が必要になったときは、表示灯カバー40の基台部41と基盤30とを固定している図示しないネジを取り外すことにより、基盤30から表示灯カバー40を分離することができる。補助光源110に接続されている電気コード112はカバー部42の基台部41の内部で折り畳まれて延び代を確保しているため、表示灯カバー40を基盤30から十分な距離を確保して分離することができる。表示灯カバー40の基台部41に設けられている開口部43は、表示灯カバー40の種類にもよるが、手を差し込めないほど狭い場合が多い。そのため、図4に示すような挟み工具180を用いて、工具先端の円形挟みを表示灯カバー40内に差し込んで、中間保持部材140のフランジ部141を挟み、横にずらせるように押すか、手前に押し下げるように引くと、フランジ部141と接合基盤130との磁着を解除して接合基盤130から中間保持部材140とそれに組み込まれた補助光源保持部150を分離することができる。
【0039】
本発明のタクシー表示灯1は、従来のタクシー表示灯をそのまま用い、表示灯カバー40の空いている上部空間を利用して補助光源装着部材120と補助光源110を内部に配置すると共に、二次電池160とスイッチ170、これらを接続する電気コード112を追加する改造に加えて、鉛蓄電池60も電源とするときは、室内灯の鉛蓄電池60と接続されている電気コードをスイッチまで延伸する改造を行うだけでよい。従来のタクシー表示灯を交換する必要が無く、改造費だけで済み、費用の点でも経済的である。
【0040】
以上説明した本発明のタクシー表示灯の一実施形態の説明では、補助光源を表示灯カバーに取り付けるようにしていたが、基台部の開口部に余裕がある場合は、他の光源と共に基盤に取り付けることもできる。また、永久磁石と鉄板とを用いて接合基盤と中間保持部材とを着脱自在にしていたが、機械的な機構を用いて接合基盤と中間保持部材とを着脱自在にするようにしても良い。更に、接合基盤を表示灯カバーの中に設けるように説明していたが、鉄板等の強磁性体を表示灯カバーの外側に固定し、永久磁石を表示灯カバーの厚みを介して強磁性体に磁着させることも可能である。更に、補助光源保持部と中間保持部材とを分離可能にしているが、分離可能とした理由は電気コードを側方に導くための空間の確保であり、例えば孔を穿設することにより電気コードを側方へ導くことが可能であれば、補助光源保持部と中間保持部材とを一体不可分の一つの部材とすることも可能である。また、接合基盤には強磁性体板を、中間保持部材には永久磁石をそれぞれ固定してあると説明したが、これらを逆にして、接合基盤には永久磁石を、中間保持部材には強磁性体板をそれぞれ固定するようにしてもよい。更に、鉛蓄電池60と二次電池(電池ホルダー)160とを切り替えて電源とすることができるとしているが、いずれかの電池だけを使用するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のタクシー表示灯は、夜間、エンジンを始動させないで空車であることを表示するために点灯させることができるため、タクシーの燃料消費の節減と排気ガス放出の削減を達成し、地球温暖化抑制に寄与できる。
【符号の説明】
【0042】
1 タクシー表示灯
2 屋根
30 基盤
40 表示灯カバー
42 カバー部
60 鉛蓄電池
110 補助光源
112 電気コード
120 補助光源装着部材
130 接合基盤
132 強磁性体板
140 中間保持部材
143 永久磁石
150 補助光源保持部
160 二次電池(単三形電池ホルダー)
170 連動スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タクシー等の屋根に設置されてエンジンの稼働と連動して点灯する内部の光源により空車等を表示するタクシー表示灯において、
エンジン始動用の二次電池叉はこの二次電池とは別の二次電池を電源としてスイッチを介して点灯する補助光源を内部に設けたことを特徴とするタクシー表示灯。
【請求項2】
請求項1記載のタクシー表示灯において、
タクシーの屋根に装着される基盤と、前記基盤に固定される表示灯カバーとを有し、前記補助光源が前記基盤叉は前記表示灯カバーの内面に着脱自在に装着されることを特徴とするタクシー表示灯。
【請求項1】
タクシー等の屋根に設置されてエンジンの稼働と連動して点灯する内部の光源により空車等を表示するタクシー表示灯において、
エンジン始動用の二次電池叉はこの二次電池とは別の二次電池を電源としてスイッチを介して点灯する補助光源を内部に設けたことを特徴とするタクシー表示灯。
【請求項2】
請求項1記載のタクシー表示灯において、
タクシーの屋根に装着される基盤と、前記基盤に固定される表示灯カバーとを有し、前記補助光源が前記基盤叉は前記表示灯カバーの内面に着脱自在に装着されることを特徴とするタクシー表示灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−13585(P2011−13585A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159359(P2009−159359)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【特許番号】特許第4480050号(P4480050)
【特許公報発行日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(597106297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【特許番号】特許第4480050号(P4480050)
【特許公報発行日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(597106297)
【Fターム(参考)】
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