説明

ダイオキシン測定法及びこれに使用する測定装置

【課題】ダイオキシン測定装置とその測定法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の方法は、バイオアフィニティーをベースとし、これには該測定装置とダイオキシン含有物質、または、ダイオキシン様物質の試料を接触させ、測定装置上の生物認識素子とダイオキシン含有物質、または、ダイオキシン様物質の親和性を利用して電極表面に遮蔽効果を発生させることで、テスト前後の電流信号差異の測定、並びに、ダイオキシン含有物質、または、ダイオキシン様物質の標準溶液、及び、その対応する電流信号差値とを比較することにより当該試料内のダイオキシン含有物質、または、ダイオキシン様物質濃度の決定を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオキシン測定法及びこれに使用する測定装置に関り、特に、簡易で迅速、現場での測定を可能とする電気化学式ダイオキシン測定装置及びこれを使用するダイオキシン測定法に関わる。
【背景技術】
【0002】
ダイオキシンは地上最悪の猛毒と言われ、急性毒性を持つため、人類がダイオキシンに暴露されることで生じる病変或いは生理上異常に多くが極微量の暴露である。文献に記載されているものによると、ダイオキシンの毒性には、皮膚毒性、神経毒性、肝臓毒性、腫瘍、生殖毒性等が含まれる。ダイオキシンの発生源には、自然界での発生(例えば、火山活動、森林火災)、工業原料工程(例えば、クロロフェノール類を含有する化合物)の副生成物、特定工業工程における燃焼排出ガス(工業の高温工程、化学製造、電力とエネルギーの利用)及びその他人為的燃却行為(例えば野外焼却、火災、喫煙等)が含まれる。ダイオキシンは大気中に存在するだけでなく、同時に土壌と底泥内にも存在する。ダイオキシンは呼吸と食事で取り込むことにより人類及び動物の健康に影響を及ぼす。しかしながら、ダイオキシンが人体及び動物に取り込む経路は、主に食べ物の摂取から来るもので、主に例えば魚、肉類や牛乳といった高脂肪の食物からである。環境の保全と人体健康に対する防衛に基づいて、ダイオキシンの検出は、すでに現在最も重要な課題となっている。
【0003】
従来のダイオキシン類化合物の測定技術には、主に高分解能ガスクロマトグラフ質量分析装置(HRGC/MS)で分析を行っていた。近年オランダのBDS(Bio Detection Systems)社が、ダイオキシン様物質の測定に用いる新しいバイオアッセイ手法、つまりダイオキシン応答化学の活性化ルシフェラーゼ表示(DR-CALUX(Dioxin Response Chemical Activated Luciferase expression))測定法を開発した。しかしながら、この2種類の主な測定技術は、設備コストが高く、測定時間も長く、また使用における利便性が思わしくないという要因により、現場での測定に直接運用できない。これにより、一式の設備コストが低く、測定時間も短く、且つ使用において利便性があるダイオキシンを迅速に測定できる測定台を開発することで、現場の環境測定と食品の測定に直接運用できる方法及び装置が極めて必要とされてきた。
【0004】
詳細に述べると、現在のダイオキシン測定技術は、主に2種類に分かれ、最も主流及び最も常用されている方法が化学的分析法で、化学的分析法は高分解能ガスクロマトグラフ質量分析装置(HRGC/MS)により各種ダイオキシン様物質を分析し、その主な原理とはダイオキシン類の各化合物間の分子の大きさ、帯電性、質量、極性等の差異を利用し、異なるダイオキシン分子を分離することである。その最大の長所は具体的且つ明確に各ダイオキシン類とその類似物を画定でき、正確性が高く、選択性も高く、分析限界はppt(1兆分の1(parts per trillion))レベルに達し、また国際標準化された毒性等価係数(TEF)を通じて毒性等量(TEQ)に換算でき、常に一般的な測定技術の対照組として使用されることにある。生物検体試料の前処理が非常に困難で、これに加え高分解能ガスクロマトグラフと高分解能質量分析計の購入と管理が難しいことにより、現在世界で公認され正確に環境検体内の微量PCDDs(ポリ塩化ジベンゾ−p−ダイオキシン(Polychlorinated dibenzo-p-dioxins))とPCDFs(オクタクロロジベンゾフラン(Polychlorinated dibenzofurans))を分析する能力のある実験室は非常に少ない。これによりダイオキシン分析は時間が掛かるだけでなく且つ価格も非常に高く、同時に分析結果にについて生物毒性或いは生物間の相互作用についての情報が欠乏している。
【0005】
もう一種類のダイオキシン測定技術はバイオアッセイ法で、この測定技術は、常に細胞内のアリルハイドロカーボン受容体(aryl hydrocarbon receptor、AHR)とダイオキシン類化合物の毒性メカニズムを通じて行う。例えばCALUX分析法は、マウスの肝癌H4IIE細胞株内にホタルルシフェラーゼ遺伝子(luciferase gene)のあるプラスミド(plasmid)をつないでレポーター遺伝子(reporter)とする。ダイオキシン類化合物が細胞核内DNA上のダイオキシン応答配列(dioxin responsive elements、DREs)の遺伝子断片が働いた時、同時にルシフェラーゼ遺伝子も働き、細胞にルシフェラーゼ酵素を発生させ、ルシフェラーゼ酵素がルシフェリンに働きかけて反応を起こさせてルシフェラーゼを発し、最後にルシフェラーゼの強さとダイオキシン毒性で生じたルシフェラーゼ強度を比較すると、ダイオキシンの含有量を推計できる。現在国内環境検査所でもこの方法を利用してダイオキシン汚染物の分析を行っている。その他、AHH/EROD分析法は、細胞内のAHRとダイオキシン類化合物の毒性メカニズムの生成物p450を分析することで、ダイオキシンの含有量を推計する。他のバイオアッセイでは、抗体とダイオキシン類化合物の結合メカニズムを通じて、ダイオキシンの含有量を分析する。例えば酵素免疫測定法(enzyme immunoassay、EIA)及び表面プラズモン共鳴法(surface Plasmon Resonance、SPR)では、ダイオキシンと結合できる抗体を利用して分析を行う。またAHR−DNA結合のゲル遅延(gel retardation of AHR−DNA binding、GRAB)分析法は、ダイオキシン類化合物が誘導するAHRを通じて、放射線標的のDRE上に結合させて分析を行う。Mitsunobu et al.(2004)は、自ら選別したモノクローナル抗体の構築(酵素固定化免疫測定(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay、ELISA))で母乳内のダイオキシン異性体グループを検出し、並びに当該システムの検出範囲は1-100pg/assayの間にあることができ、また検出限界は2、3、7、8-四塩化ダイオキシン(2、3、7、8-tetrachlorodibenzo−p−dioxin、TCDD)と比べて、より更に低い1pg/assayであると指摘した。しかし、やはりELISA試験の前処理時間が長いすぎるという問題を避けることができないため、分析の時間が長すぎてしまう。Nakamura et al.は、ダイオキシン結合ペプチド(peptide)を選別し、ペプチドビーズを蛍光標識のある3、4-dichlorophenoxypropylamineの緩衝液内に浮遊し、更にこれで試料内のダイオキシン濃度を検出する。ダイオキシン濃度が高くなると、蛍光の輝度が低くなり、全体的な検出限界は1nMより小さい。この方法は検出限界が低くないこと以外に、実物試料内のその他物質の阻害が最も主な問題となり、同時に反応時間が長すぎると信号の読み取りももう一つの困難な点である。Nobuaki 氏ら(2003)は金表面プラズモン共鳴法(SPR)で抗体の特異性を結合してダイオキシンの検出メカニズムとする。この方法は必要とする検出時間が極めて短いが、計器の構築が比較的複雑な以外に、全体的な検出限界も低くないため、オンラインにおけるリアルタイムモニタリングに用いることができない。その他、Masaharu氏ら(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、14、137-340)は、AHRのダイオキシン生理反応において腺体活性化に対する役割を利用し、AHRを電極上に固定させ、電気化学の方法でダイオキシン構造の類似物質(β-ナフトフラボン、β−NF)結合前後に出力した電流信号の変化を通じて、ダイオキシン検出システムを構築した。このシステムは必要な作用時間が極めて短(<5min(分))いだけではなく、システムの構造も極めて簡単で、操作も便利である。しかし、残念なことに、システムの感度がやはり足りず、且つAHRの流失問題が存在し、更に金電極自体と電気化学計器の検出方法が高価で複雑すぎるため、商品化の困難性が高いものとなっている。
【0006】
バイオセンサー(Biosensor)による環境の監視測定において、従来の化学計器分析方法と比べ、その最大の特徴は使い捨ての形態として設計でき、同時に試料の前処理ステップを省くことができる。その他にも、その測定設備が非常に簡単であるため、現場で直接操作できる。バイオセンサーの環境測定面において、良く見られる分析物は例えば毒性物質、農薬、環境ホルモン、フェノール類、重金属、微生物、無機燐、ポリ塩化ビフェニル等物質で、その検出限界は0.1ng/Lから0.57mg/Lの間(Mozaz氏ら(2006)Anal Bioanal Chem386:1025-1041)となっている。
【0007】
これにより、本発明は主に簡易で迅速なダイオキシン測定法、及びその方法に使用する電気化学ダイオキシン測定装置を提供することで、該迅速な電気化学式ダイオキシン測定装置を通じて、現場の環境測定と食品の測定に直接運用でき、時間の節約、経済性と現場の迅速な大量のスクリーニングの目的を達することができることにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、簡易で、迅速な電気化学式ダイオキシン測定装置の開発にあり、その主な原理はバイオアフィニティー(bioaffinity)センサーの検出形態を利用し、スクリーン印刷電極(screen−printed−electrode、SPE)と組合せて、生物認識素子(AHR或いはARNT(アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパク(aryl hydrocarbon nuclear translocator)))を物理的或いは化学的方法で電極表面上に固定させ、生物認識素子とダイオキシン類化合物或いはその複合物の親和性結合の発生を利用して、電極表面の生物分子の形状変化或いは厚さを変化することで、遮蔽効果を形成させたことにより、電子伝送速度を変更させ、更に電極上にある電子媒介物と外来基質を通じて酸化還元反応を起こして電流変化を発生し、その電流変化値を測定して、これと反応したダイオキシン類化合物濃度を関係させて、各ダイオキシン類化合物の濃度と電流下降率の関係を求めて得られ、定めた関係式でダイオキシン総量を定量する。これにより、本発明の迅速な電気化学式ダイオキシン測定装置を通じて、時間の節約、経済性と現場の迅速な大量のスクリーニングの目的を達することができることにある。
【0009】
本発明の別の目的は、ダイオキシン測定法を提供することにあり、
(1)生物認識素子及び電子媒介物を電極表面に固定することと、
(2)該電極を基質含有溶液内に置き、第1酸化還元の電流信号を測定することと、
(3)該電極とダイオキシン或いはダイオキシン様物質を含有した試料と接触させて、電極を基質含有溶液内に置き、第2酸化還元の電流信号を測定すること、及び、
(4)第1及び第2酸化還元電流信号の差値を得て、並びにダイオキシン或いはダイオキシン様物質を含有した標準溶液及びその対応する電流信号の差値を比較して、該試料内のダイオキシン或いはダイオキシン様物質の濃度を決定することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において、本発明の電極に使用する材料は特に制限されることなく、本発明の目的を達することができ、不良な結果を具備しないものはいずれも本発明に運用できる。例えば酸化インジウム、ガラス、金、白金、パラジウム、黒鉛及びカーボンブラック等の材料を含むことができる。電極の構造について、平板電極、針電極或いは中空の針電極等の構造を問わず、いずれも本発明に運用することができる。本発明の具体的な実施例において、該電極をスクリーン印刷電極とした。
【0011】
本発明において、電極表面に固定する生物認識素子は特に制限されることなく、ダイオキシン或いはダイオキシン様物質の特異性と結合できるダイオキシンの仲間物質であればよく、好しくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多ペプチド、アリルハイドロカーボン受容体(AHR)及び/或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパク(ARNT)で、更に好適なのはアリルハイドロカーボン受容体及びアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクである。
【0012】
本発明において、電極表面に固定する電子媒介物は特に制限されることなく、下記の基質と酸化還元反応を起こして、電子移行を生じさせることができればよく、好しい電子媒介物はプルシアンブルー(Prussian Blue、potassium hexacyanoferrate)、メルドーラブルー(Meldola Blue、MB、8−dimethylamino−2,3-benzophenoxazine)、p−ベンゾキノン(p−Benzoquinone、p−BQ)、o−フェニレンジアミン(o−phenylenediamine、o-PDA)、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(dichlorophenolindophenol DCPIP)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(3,4-dihydroxybenzaldehyde、3,4-DHB)、ベンジルビオロゲン(benzyl viologen)、及びその混合物で組成した群から選択する。
【0013】
本発明において、該基質は特に制限されることなく、上記の電子媒介物と酸化還元反応を起こして、電子移行を生じさせることができればよく、好しい基質はH2O2、NADH、NADPH及び/或いはその混合物で、更に好適なのがH2O2である。
【0014】
本発明の別の目的はダイオキシン測定装置を提供することにあり、
基板と、
該基板上に位置する参照電極、及び、
該基板上に位置し、且つ、該参照電極と接触せず、作用エリアを含み、該作用エリア内に生物認識素子及び電子媒介物を具備する作用電極を含む。
【0015】
本発明のダイオキシン測定装置において、本発明の電極に使用する材料は特に制限されることなく、本発明の目的を達することができ、不良な結果を具備しないものはいずれも本発明に運用できる。例えば酸化インジウム、ガラス、金、白金、パラジウム、黒鉛及びカーボンブラック等の材料を含むことができる。電極の構造について、平板電極、針電極或いは中空の針電極等の構造を問わず、いずれも本発明に運用することができる。本発明の具体的な実施例において、該電極をスクリーン印刷電極とした。
【0016】
本発明のダイオキシン測定装置において、該生物認識素子は特に制限されることなく、ダイオキシン或いはダイオキシン様物質の特異性と結合できるダイオキシンの仲間物質であればよく、好しくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多ペプチド、アリルハイドロカーボン受容体及び/或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクで、更に好適なのはアリルハイドロカーボン受容体及びアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクである。
【0017】
本発明のダイオキシン測定装置において、該電極表面に固定する電子媒介物は特に制限されることなく、本文内で記載する基質と酸化還元反応を起こして、電子移行を生じさせることができればよく、好しい電子媒介物はプルシアンブルー、メルドーラブルー、p−ベンゾキノン、o−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ベンジルビオロゲン及びその混合物で組成した群から選択し、更に好適なのはプルシアンブルーである。
【0018】
本発明のダイオキシン測定装置において、該電子媒介物とカーボンゲルを適当な比率で混合し基板にスクリーン印刷する。その比率は必要性に応じて調整でき、電子媒介物の比率が高ければ高いほど電流値も大きくなる。
【0019】
本発明のダイオキシン測定装置において、該生物認識素子を例えば物理的に包埋、共有結合等の適当な方法で基板の作用エリアに固定できる。物理的な包埋とは例えばアリルハイドロカーボン受容体或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクとゼラチン、繊維素、合成粘土ラポナイト(Laponite)或いはポリビニルブチラール(PVB)等の適当な溶液を適当な比率で混合した後、適量を取って作用エリア上に固定する。共有結合とは、例えばグルタチオン(Glutathione、GSH)とゼラチン或いは繊維素を適当な比率で混合した後、適量を取って作用エリアに固定し、その後更にアリルハイドロカーボン受容体或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを浸漬或いは滴下方式で該作用エリアに固定する。本発明で発生したアリルハイドロカーボン受容体とアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクはいずれもGST末端を具備し、すでに固定化したグルタチオンと緊密に結合を形成できる。上述の2つの方法では共有結合が好しく、なぜなら共有結合はアリルハイドロカーボン受容体或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクが均しく電極表面に位置するよう確保できるため、有効固定量と結合位の数をアップできる。
【0020】
本発明のダイオキシン測定装置において、適量の生物認識素子を該作用エリア内に固定しなければならない。もしも作用エリア内の生物認識素子の含有量が少な過ぎる場合、電子流動を阻害できないため電流の下降差異を顕著化させることができない。含有量が多すぎる場合、電極表面が始まると同時に緊密すぎとなり、その後、ダイオキシン或いは類ダイオキシン分子を吸着したとしても、やはり電流下降率を顕著化させることができない。アリルハイドロカーボン受容体或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを例にすると、作用エリアに固定する含有量として好しくは0.36ng/mm2〜1.11μg/mm2、更に好適なのが21.43ng/mm2〜0.13μg/mm2である。
【0021】
さらに、本発明の別の目的は、ダイオキシン測定装置を利用するダイオキシン測定法を提供することにあり、該ダイオキシン測定装置には、
基板と、
該基板上に位置する参照電極、及び、
該基板上に位置し、且つ、該参照電極と接触せず、作用エリアを含み、該作用エリア内に生物認識素子及び電子媒介物を具備する作用電極を含む。且つ、
該ダイオキシン測定法には、
(1)該ダイオキシン測定装置を、基質を含有した電気化学の緩衝液内に置き、その電流信号ΔI0を検出することと、
(2)該ダイオキシン測定装置と測定試料を接触させ、また基質を含有した電気化学の緩衝液内に置いてその電流信号ΔI1を検出することと、
(3)ΔI0とΔI1電流信号の差値を測定して得られること及び、
(4)該電流信号の差値とダイオキシン或いはダイオキシン様物質を含有した標準溶液及びその対応する電流信号の差値を比較し、該試料内のダイオキシン或いはダイオキシン様物質の濃度を決定することを含む。
【0022】
本発明のダイオキシン測定法において、本発明はステップ(1)及び(2)で使用する基質は特に制限されることなく、上記の電子媒介物と酸化還元反応を起こして、電子移行を生じさせることができればよく、好しい基質はH2O2、NADH、NADPH及び/或いはその混合物で、更に好適なのがH2O2である。
【0023】
本発明のダイオキシン測定法において、ダイオキシン測定装置の作用電極において、該作用エリア内に含む生物認識素子は特に制限されることなく、ダイオキシン或いはダイオキシン様物質の特異性と結合できるダイオキシンの仲間物質であればよく、好しくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多ペプチド、アリルハイドロカーボン受容体及び/或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクで、更に好適なのはアリルハイドロカーボン受容体及びアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクである。
【0024】
本発明のいずれかの具体的な実施例において、該ダイオキシン測定装置の作用電極の作用エリア内にはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを含む。アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの特異性とアリルハイドロカーボン受容体-ダイオキシン複合物を相互に結合させるため、ステップ(2)は測定試料を過量なアリルハイドロカーボン受容体と反応させ、更に該ダイオキシン測定装置と該測定試料を接触させ、また基質を含有する電気化学の緩衝液内において、その電流信号ΔI1を検出するよう修正できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、時間の節約、経済性と現場の迅速な大量のスクリーニングの目的を達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の目的、特徴及び長所についてさらに理解していただくため、下記の具体的な実施例を介し関連の図面を組み合わせることで、本発明に対する詳細な説明を後記のとおり行うものである。
【実施例1】
【0027】
[アリルハイドロカーボン受容体の調製]
本実施例で使用する培地及び緩衝液を以下のとおりとする。
(1)タンパク質発現に用いる培地は、LB培地、アンピシリン(Ampicillin、Amp)(終濃度100μg/ml)、クロロマイセチン(Cm)(終濃度34μg/ml)。
(2)LB培地:トリプトン(Tryptone)10g/L、酵母抽出物5g/L、NaCl 10g/L。
(3)GST洗浄/結合用緩衝液は140mM NaCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、2.7mM KCll、0.1mM PMSF、pH7.3。
(4)GST溶出用緩衝液は50mM Tris−HCl、10mM還元グルタチオン(glutathione)、0.1mM PMSF、pH8.0。
(5)6Xローディング緩衝液(Loading buffer)は300mM Tris−HCl、pH6.8、12%SDS、0.6%ブロモフェノールブルー(Bromophenol blure)、60%グリセリン、6%βーメルカプトエタノール。
(6)SDS−PAGE電気泳動用緩衝液(Running buffer)は25mM Tris−HCl、pH8.3、250mMグリシン、0.1%SDS。
(7)アリルハイドロカーボン受容体の保存用緩衝液は50mM Tris−HCl、pH7.4、500mM NaCl、1mM DTT、0.1%NP−40、0.1mM PMSF。
【0028】
(a)アリルハイドロカーボン受容体のリガンド結合区のDNAをベクターpGEX-4T1にクローニングする。
NCBIウエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/index.html)に開示されるマウス肝臓のアリルハイドロカーボン受容体遺伝子mRNAに関する文献に基づいてアリルハイドロカーボン受容体タンパク質リガンド結合断片のプライマーを設計し、並びにプライマー前においてXhoIが切断したCTCGAGを加える。次にマウスの肝臓総RNA(Stratagene、Cat#736509、Lot#1010139)を鋳型とし、逆転写酵素でmRNAをcDNAに逆転写し、このcDNAを鋳型とし、PCR方式でアリルハイドロカーボン受容体のリガンド結合断片DNAを大量に増やす。topo TAのクローニングキットステップとおりアリルハイドロカーボン受容体のDNAをtopoベクター上につなぎ、青白選別法による挿入物を有するクローンを選択し、スケールアップ培養した後シークエンシングに送る。シークエンシングが正確なクローンを選択して、スケールアップ培養後、プラスミドDNAを抽出し、XhoIを利用して挿入物を切断し、挿入物をゲル上に精製した後、一つのXhoIで切断したpGEX−-4T1ベクターにつなぎ、並びにRosetta(DE3)plysSコンピテントセル(competent cell)内に形質転換し、Amp/Cmを含有したLB培地上O/Nに塗布する。9個のコロニーを選んで3mlのAmp/Cm抗生物質を含有したLB培地内に添加してスケールアップ培養する。またOD600の約0.8時に終濃度1mM IPTG誘導タンパク質発現を添加し、誘導温度を37度、時間を4時間とする。SDS−PAGEでこの9個のクローンのタンパク質発現をみて正確な発現大きさのクローンを選択し、Amp/Cm抗生物質を含有したLB培地でOD600を約1.0まで培養し、終濃度に10%のグリセリンを添加し、-80度の冷凍庫に入れて保存する。
【0029】
(b)GST−アリルハイドロカーボン受容体タンパク質の大量発現
アリルハイドロカーボン受容体タンパク質を大量発現する前夜に、まず保存菌液を100μl取って10mlのAmp/Cm抗生物質を含有したLB培地に入れて種菌としてO/Nを培養し、当日種菌を1LのAmp/Cm抗生物質を含有したLB培地に添加し、37度でOD600が約0.6にまで培養し、20度のシェイカーに移して温度が安定するまで待った後、終濃度1mM IPTGを添加して16〜20時間を誘導し、誘導が完了した菌液を遠心した後で−80度の冷凍庫に入れて冷凍できる。
【0030】
(c)GSTカラムとゲルろ過カラムでアリルハイドロカーボン受容体タンパク質を精製する。
誘導が完了した菌体を〜100ml PBS緩衝液(0.1mM PMSFを含有する)で均一に溶解し、ホモジナイザーで細胞を破砕させ、菌破壊液を終濃度が0.1%のNP−40及び終濃度300mM NaClに加え、12000rpmで1時間を遠心して不可溶な不純物を取り除き、上澄み液を0.22μmろ過膜でろ過した後、次に上澄み液をGSTカラムに接続するAKTA prime FPLCに導入してから、GST洗浄/結合用緩衝液で洗浄を行い、更にGST溶出用緩衝液でアリルハイドロカーボン受容体タンパク質を樹脂上から吸着画分する。UV280を利用してタンパク質フラクションを追跡し、並びにSDS−PAGEでダブルチェックを行う。この粗精製タンパク質をAmicomフィルターで〜200μlまで濃縮する。粗精製タンパク質をセファクリル(sephacryl)S-200のゲルろ過カラムに接続するAKTA prime FPLCに導入し、アリルハイドロカーボン受容体の保存用緩衝液(store buffer)で溶出し、同時にUV280を利用してタンパク質フラクションを追跡し、且つSDS−PAGEでダブルチェックを行う。この二次精製タンパク質をAmiconフィルターで〜500μlまで濃縮する。
【0031】
(d)タンパク質の定量
Bio−Radタンパク質試験キットの試薬でタンパク質の濃度を測定する。精製したアリルハイドロカーボン受容体タンパク質をBradford法でアリルハイドロカーボン受容体タンパク質の濃度を測定する。ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin、BSA)をタンパク質の標準液とし、また各々0、2、4、6、8、10μg/ml等の異なる濃度に調製し、また被検試料を適当な倍数に希釈し、更に各々Bio−Radタンパク質試験キットの試薬に加えて十分混合し、室温で10分間反応させた後、OD595で光吸収値を測定し、その後更にタンパク質の標準液で得た定量標準曲線を通じて、アリルハイドロカーボン受容体タンパク質の濃度に換算することができ、また各々適量のアリルハイドロカーボン受容体タンパク質を取ってタンパク質のゲル電気泳動分析を行う。
【実施例2】
【0032】
[アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの調製]
本実施例は、実施例1に使用する培地及び緩衝液と同じように行う。
(a)アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクとアリルハイドロカーボン受容体結合区のDNAをベクターpGEX-4T1にクローニングする。
【0033】
NCBIウエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/index.html)に開示されるマウス肝臓のアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクのgene mRNAに関する文献に基づいてアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクのリガンド結合断片のプライマーを設計する。プライマーの設計は以下のとおりとする。フォワードプライマー(Forword primer):5’GGAACTGGCAACACATCTAC3’は、遺伝子配列番号486ヌクレオチド−配列番号506ヌクレオチドに位置する。リバースプライマー(Reversword primer):5’TGTAGGCCGTGGTTCCTGGC3’は、遺伝子配列番号1458ヌクレオチド-配列番号1478ヌクレオチドに位置する。次にマウスの肝臓総RNAを鋳型とし、逆転写酵素でmRNAをcDNAに逆転写し、このcDNAを鋳型とし、PCR方式でアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクのリガンド結合断片DNAを大量に増やす。topo TAのクローニングキットステップとおりアリルハイドロカーボン受容核体移行タンパクのDNAをtopoベクター上につなぎ、青白選別法による挿入物を有するクローンを選択し、スケールアップ培養した後シークエンシングに送る。シークエンシングが正確なクローンを選択して、スケールアップ培養後、プラスミドDNAを抽出し、topoベクター上に既存したEcoRIを利用して挿入物を切断し、挿入物をゲル上に精製した後、一つのEcoRIで切断したpGEX−-4T1ベクターにつなぎ、並びにRosetta(DE3)plysSコンピテントセル内に形質転換し、Amp/Cmを含有したLB培地上O/Nに塗布する。9個のコロニーを選んで3mlのAmp/Cm抗生物質を含有したLB培地内に添加してスケールアップ培養する。またOD600の約0.8時に終濃度1mM IPTG誘導タンパク質発現を添加し、誘導温度を37度、時間を4時間とする。SDS−PAGEでこの9個のクローンのタンパク質発現をみて正確な発現大きさのクローンを選択し、Amp/Cm抗生物質を含有したLB培地でOD600を約1.0まで培養し、終濃度に10%のグリセリンを添加し、-80度の冷凍庫に入れて保存する。
【0034】
(b)GST−アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの大量発現
アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを大量発現する前夜に、まず保存菌液を100μl取って10mlのAmp/Cm抗生物質を含有したLB培地に入れて種菌としてO/Nを培養し、当日種菌を1LのAmp/Cm抗生物質を含有したLB培地に添加し、37度でOD600が約0.6にまで培養し、20度のシェイカーに移して温度が安定するまで待った後、終濃度1mM IPTGを添加して16〜20時間を誘導し、誘導が完了した菌液を遠心した後で−80度の冷凍庫に入れて冷凍できる。
【0035】
(c)GSTカラムとゲルろ過カラムでアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを精製する。
誘導が完了した菌体を〜100ml PBS緩衝液(0.1mM PMSFを含有する)で均一に溶解し、ホモジナイザーで細胞を破砕させ、菌破壊液を終濃度が0.1%のNP−40及び終濃度300mM NaClに加え、12000rpmで1時間を遠心して不可溶な不純物を取り除き、上澄み液を0.22μmろ過膜でろ過した後、次に上澄み液をGSTカラムに接続するAKTA prime FPLCに導入してから、GST洗浄/結合用緩衝液で洗浄を行い、更にGST溶出用緩衝液でアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを樹脂上から吸着画分する。UV280を利用してタンパク質フラクション(fraction)を追跡し、並びにSDS−PAGEでダブルチェックを行う。この粗精製タンパク質をAmicomフィルターで〜200μlまで濃縮する。粗精製タンパク質をsephacryl S-200のゲルろ過カラムに接続するAKTA prime FPLCに導入し、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの保存用緩衝液で溶出し、同時にUV280を利用してタンパク質フラクションを追跡し、且つSDS−PAGEでダブルチェックを行う。この二次精製タンパク質をAmiconフィルターで〜500μlまで濃縮する。
【0036】
(d)タンパク質の定量
Bio−Radタンパク質分析キットの試薬でタンパク質の濃度を測定する。精製したアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクをBradford法でアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの濃度を測定する。ウシ血清アルブミンをタンパク質の標準液とし、また各々0、2、4、6、8、10μg/ml等の異なる濃度に調製し、また被検試料を適当な倍数に希釈し、更に各々Bio−Radタンパク質分析キットの試薬に加えて十分混合し、室温で10分間反応させた後、OD595で光吸収値を測定し、その後更にタンパク質の標準液で得た定量標準曲線を通じて、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの濃度に換算することができ、また各々適量のアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを取ってタンパク質のゲル電気泳動分析を行う。
【実施例3】
【0037】
[測定装置試験片の作製]
本実施例では、スクリーン印刷電極(SPE、泰博(巧瑩)科技股▲分▼有限公司から購入)を用いて本発明の測定装置を作製し、該測定装置100の構造は図1に示すように、PVC材質の基板102と、該基板102上に位置する参照電極104と、該基板102上に位置し且つ該参照電極104とは接触しない作用電極106と、作用電極106上に位置する作用エリア108、及びPVC絶縁層110を含む。スクリーン印刷電極の基材はPVC材質で、スクリーン印刷のカーボンゲルは計3つの手順に分かれ、まず作用エリア108以外のエリアに銀ゲルを塗布し、その後作用エリア108の第1と第2層に純カーボンゲルでスクリーン印刷を行い、第3層は必要性を見て適当な比率のカーボンゲルとプルシアンブルー(比率は必要性に応じて調整でき、プルシアンブルーの比率が高ければ電流値も高くなる)で印刷し、最後に更に青色のPVC絶縁層で覆う。図1で明確に見て取れるように、作用エリア208の面積を拡大する目的は、生物認識素子と電子媒介物の固定量を増加することで、電流の出力信号をアップし、同時に検出限界の下限を引き下げることにある。
【0038】
(a)物理的な包埋
すでにスクリーン印刷、塗膜或いは誘電性ポリマーのプルシアンブルーを施したスクリーン印刷電極試験片を取り、脱イオン水で洗浄した後大気で1時間乾燥させ、アリルハイドロカーボン受容体或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクとゼラチン、繊維素、ラポナイト或いはポリビニルブチラール溶液(6〜9%)等の適当な溶液を適当な比率で混合(通常は体積比1:1)した後、適量(4〜20μL)を取って作用エリア208上(アリルハイドロカーボン受容体或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの固定量は約20ng〜約62.3μg/枚)に固定する。4℃で2時間乾燥させた後、2.5%のグルタルアルデヒド溶液内に10分間漬け、更に脱イオン水で洗浄した後、PBS−KCL−NP40の緩衝液内に保存する。
【0039】
(b)共有結合
すでにスクリーン印刷を施したPBのスクリーン印刷電極試験片を取り、脱イオン水で洗浄した後大気で1時間乾燥させ、グルタチオン(glutathione、GSH)とゼラチン或いは繊維素を適当な比率で混合(通常は体積比1:1)した後、適量(2〜20μL)を取って作用エリア208上に固定する。乾燥後、アリルハイドロカーボン受容体或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを浸漬或いは滴下方式で電極表面に固定する。本発明で発生したアリルハイドロカーボン受容体とアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクはいずれもGST末端を具備し、すでにスクリーン印刷電極表面に固定化したグルタチオンと緊密に結合を形成できる。乾燥後、2.5%のグルタルアルデヒド溶液内に10分間漬け、更に脱イオン水で洗浄した後、PBS−KCL−NP40の緩衝液内に保存する。この方法を物理的な包埋方式と比較すると、その手順は比較的複雑であるが、アリルハイドロカーボン受容体或いはアリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクがいずれも電極表面に位置するよう確保できるため、作用エリアにおける有効固定量と結合位の数をアップさせることができる。
【実施例4】
【0040】
[本発明の測定装置試験片の機能と安定性のテスト]
まず上述の実施例に基づいて作製した本発明の測定装置試験片が電流信号を発生できるか、且つその信号が安定しているかどうかをテストする。図2は異なる重量百分率のプルシアンブルー/カーボンゲル量を固定し、またゼラチンでアリルハイドロカーボン受容体を包埋する本発明の測定装置試験片に異なるH2O2濃度を添加する状態の電流信号値の変化図である。図から分かるように電流信号は添加した基質H2O2とプルシアンブルー濃度の上昇に伴い大きくなる。実施例内で添加したH2O2は確実に電極上のプルシアンブルーにより還元させ、さらに還元の電流信号を発生させることができ、同時に添加量(つまりH2O2とプルシアンブルーの接触量)が変化した時、電流信号もこれに伴って変化することを示した。
【0041】
作製した測定装置試験片の安定性を確認し、同じ測定装置試験片(カーボンゲルとプルシアンブルー比が10:1)について同じ条件で連続して幾度も測定する。操作電圧が-0.2Vのもとにおいて200秒に10mM H2O2を添加した時に何度測定した電流信号を図3に示す。その結果において3度の電流検出差異性が大きくないことを示した。
【実施例5】
【0042】
[ダイオキシンの測定]
(1)本発明の測定装置試験片によるダイオキシンの測定ステップ
1.作製完成し4℃で保存している測定装置の試験片を室温で温度を戻す。
2.電気化学分析装置がAmperometric i−t曲線方法及び設定の条件で検出を行う。検出時のテスト基質は電気化学の緩衝液10mLとし、磁性攪拌棒付きビーカー内に置いて同時撹拌を行う。テスト開始時の平衡電流を9.00×10-7Amp以下にまで引き下げ、10mMの基質H2O2を緩衝液内に加えて電流変化300秒を検出して、ΔI0値を得る。
3.検出を完成した測定装置試験片を緩衝液で撹拌、洗浄すると共に蓋付き試験管内に静かに置く。
4.ダイオキシン標準液と純有機溶剤(DMSO或いはメタノール、アセトン、ノナン)を体積が1:1の比率で混合する。要する標準濃度テスト液(有機溶剤の濃度は0.5-0.2%の間に制御する)を得るため、更に異なる体積のダイオキシン/有機溶剤の標準液を吸い取って2mLの電気化学テスト液内で溶解する。
5.既知の異なるダイオキシン希釈濃度と測定装置試験片を換気キャビネット内において試験を行う。ステップ3の試験管内の測定装置試験片を総体積2mLのダイオキシン溶液内に15分間浸して反応を行わせる。
6.測定装置試験片を取り出して2mLの電気化学緩衝液内に3分間浸し、浸けた測定装置試験片を取り出してきれいな蓋付き試験管内に置いて保存する。
7.反応後並びに攪拌、洗浄した測定装置試験片を電気化学分析装置上でAmperometric i−t曲線方法及びステップ2と同じ条件で該測定装置試験片の2回目の検出を行い、ΔI1値を得て、IR=(ΔI0−ΔI1/ΔI0)×100%で電流下降率を計算し、電流信号の大きさのデータはAmperometric i−t曲線方法内の最後の10秒のデータ平均値を用いる。
【0043】
(2)作用エリア上のアリルハイドロカーボン受容体の有効固定量の増加は電流下降率に対するアップ効果
本発明の測定装置試験片上において徐々にアリルハイドロカーボン受容体の固定量を増加し、本来の20ngから62.3μgにアップして、電流下降率を測定する。表1に異なるアリルハイドロカーボン受容体の固定量において、ダイオキシン濃度と電流下降率の状況を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1を見て分かるとおりアリルハイドロカーボン受容体の固定量が本来の20ng/枚から7.5mg/枚まで徐々にアップした時、試験片上のTCDDと結合できる活性化位置を増加するため、電流下降率が顕著となり、且つ電流下降率はTCDDの濃度のアップに伴い大きくなり、これは更に多くのTCDD分子と試験片上のアリルハイドロカーボン受容体が相互に結合したことを確実に示している。ただし試験片上に固定したアリルハイドロカーボン受容体量が62.3mgにまでアップした時、作用エリア表面がほぼアリルハイドロカーボン受容体に完全に覆われ、この状態では作用エリア表面の有効的なアリルハイドロカーボン受容体の結合位置が幾何阻害により減少するだけでなく、同時に最も外層のアリルハイドロカーボン受容体としてもやはりTCDDと結合できる。しかし、作用エリア表面が元々緊密すぎ、この時アリルハイドロカーボン受容体とTCDDの結合で生じた基質拡散阻害は逆に目立たないため、電流下降率の変化が大きくない。これにより、各測定装置試験片上に1.2mg−7.5mgのアリルハイドロカーボン受容体、つまり21.43ng/mm2〜0.13μg/mm2を固定する場合、好しい電流下降率の測定結果を得られることを示している。
【0046】
(3)ダイオキシン濃度と電流下降率の関係
適当のアリルハイドロカーボン受容体の固定量(1.2mg/枚の試験片)とH2O2添加量(10mM)を選択し、電極の最終製造工程を確認し、異なる濃度のTCDDによって対応の検量線を作製し、その結果を4図4に示す。図4を見て分かるとおり一定の濃度範囲内において、TCDD濃度と電流差値は正比例の関係となった。
【実施例6】
【0047】
[他種類のダイオキシン分子の測定]
実施例5のステップに基づき、他種類のダイオキシン分子のテストを測定し、HxCDF(六塩化ジベンゾフラン)を選択して測定し、アリルハイドロカーボン受容体とTCDDの外のダイオキシン分子間の結合能力を確認し、その結果を図5A及び図5Bに示す。図5A及び図5Bを見て分かるとおりアリルハイドロカーボン受容体はTCDDと結合できる以外に、HxCDFとも結合でき、且つ電流下降の状況は濃度のアップに伴い徐々に大きくなる。
【0048】
以上本発明につき実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、上記の事項はその他タイプの装置に運用できる。明細書の内容は、更に詳細に本発明を説明することを図り、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本文からも分かるとおり、本発明の測定装置はTCDDの検出に用いることができる以外に、その他ダイオキシン/ダイオキシン様物質の検出にも用いることもでき、現行法規のTCDD総量規制の目標を達することができる。その他、本発明の測定装置上のアリルハイドロカーボン受容体の固定量を調整することで、各種濃度範囲に適用する簡易で迅速、現場で測定できるダイオキシン測定装置で、大きな濃度範囲(0-1000ppt)と小さな濃度範囲(0.1-100ppt)のダイオキシン/ダイオキシン様物質の濃度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のダイオキシン測定装置の見取図である。
【図2】異なる重量百分率のPB/カーボンゲル量を固定並びにゼラチンでアリルハイドロカーボン受容体を包埋した本発明測定装置で、異なるH2O2濃度を添加した状態の電流信号値の変化図である。
【図3】アリルハイドロカーボン受容体を塗布した測定装置試験片で3度Amperometric i−t曲線を行った検出の結果である。
【図4】異なる濃度におけるTCDD濃度と電流差値の関係である。
【図5】異なる濃度HxCDFで生じた電流差値である。
【符号の説明】
【0051】
100 測定装置
102 基板
104 参照電極
106 作用電極
108 作用エリア
110 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)生物認識素子、及び、電子媒介物を電極表面に固定することと、
(2)前記電極を基質含有溶液内に置き、第1酸化還元の電流信号を測定することと、
(3)前記電極とダイオキシン、或いは、ダイオキシン様物質を含有した試料と接触させ、並びに、電極を基質含有溶液内に置き、第2酸化還元の電流信号を測定すること、及び、
(4)第1、及び、第2酸化還元の電流信号差値を得て、かつ、ダイオキシン、或いは、ダイオキシン様物質を含有した標準溶液、及び、その対応する電流信号差値と比較し、前記試料内のダイオキシン、或いは、ダイオキシン様物質の濃度を決定すること、
を含むことを特徴とする、ダイオキシン測定法。
【請求項2】
前記生物認識素子は、ダイオキシン仲間物質であることを特徴とする、請求項1に記載のダイオキシン測定法。
【請求項3】
前記生物認識素子は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多ペプチド、アリルハイドロカーボン受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor、AHR)、及び/或いは、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパク(Aryl Hydrocarbon Receptor NuclearTranslocator、ARNT)であることを特徴とする、請求項2に記載のダイオキシン測定法。
【請求項4】
前記生物認識素子は、アリルハイドロカーボン受容体、或いは、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクであることを特徴とする、請求項3に記載のダイオキシン測定法。
【請求項5】
前記電子媒介物は、プルシアンブルー(Prussian Blue、potassium hexacyanoferrate)、メルドーラブルー(Meldola Blue、MB、8−dimethylamino−2,3-benzophenoxazine)、p−ベンゾキノン(p−Benzoquinone、p−BQ)、o−フェニレンジアミン(o−phenylenediamine、o-PDA)、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(dichlorophenolindophenol DCPIP)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(3,4-dihydroxybenzaldehyde、3,4-DHB)、ベンジルビオロゲン(benzyl viologen)、及び、その混合物で組成した群から選択することを特徴とする、請求項1に記載のダイオキシン測定法。
【請求項6】
前記基質はH2O2、NADH、NADPH、及び/或いは、その混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のダイオキシン測定法。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に位置する参照電極、及び、
前記基板上に位置し、且つ、前記参照電極と接触せず、作用エリアを含み、前記作用エリア内に生物認識素子、及び、電子媒介物を具備する作用電極を含むことを特徴とする、ダイオキシン測定装置。
【請求項8】
前記生物認識素子は、ダイオキシン仲間物質であることを特徴とする、請求項7に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項9】
前記生物認識素子は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多ペプチド、アリルハイドロカーボン受容体、及び/或いは、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクであることを特徴とする、請求項8に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項10】
前記生物認識素子は、アリルハイドロカーボン受容体、或いは、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクであることを特徴とする、請求項9に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項11】
前記電子媒介物は、プルシアンブルー、メルドーラブルー、p−ベンゾキノン、o−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ベンジルビオロゲン、及び、その混合物で組成した群から選択することを特徴とする、請求項7に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項12】
前記電子媒介物は、プルシアンブルーであることを特徴とする、請求項11に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項13】
前記作用エリアには、ゼラチン、繊維素、ラポナイト(Laponite)、或いは、ポリビニルブチラールを更に含むことを特徴とする、請求項7に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項14】
前記作用エリアには、グルタチオン(Glutathione、GSH)とゼラチン、或いは、繊維素を更に含むことを特徴とする、請求項7に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項15】
前記作用電極の前記作用エリアは、カーボンゲルを更に含むことを特徴とする、請求項7に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項16】
前記作用エリア内のアリルハイドロカーボン受容体、或いは、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの含有量は、0.36ng/mm2〜1.11μg/mm2であることを特徴とする、請求項7に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項17】
前記作用エリア内のアリルハイドロカーボン受容体、或いは、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの含有量は、21.43ng/mm2〜0.13μg/mm2であることを特徴とする、請求項16に記載のダイオキシン測定装置。
【請求項18】
ダイオキシン測定装置を利用するダイオキシン測定法であって、前記ダイオキシン測定装置には、
基板と、
前記基板上に位置する参照電極、及び、
前記基板上に位置し、且つ、前記参照電極と接触せず、作用エリアを含み、前記作用エリア内に生物認識素子、及び、電子媒介物を具備する作用電極を含み、且つ、
前記ダイオキシン測定法には、
(1)前記ダイオキシン測定装置を、基質を含有した電気化学の緩衝液内に置き、その電流信号ΔI0を検出することと、
(2)前記ダイオキシン測定装置と測定試料を接触させ、また基質を含有した電気化学の緩衝液内に置いてその電流信号ΔI1を検出することと、
(3)ΔI0とΔI1電流信号の差値を測定して得られること、及び、
(4)前記電流信号の差値とダイオキシン、或いは、ダイオキシン様物質を含有した標準溶液、及び、その対応する電流信号の差値を比較し、前記試料内のダイオキシン、或いは、ダイオキシン様物質の濃度を決定するステップを含むことを特徴とする、ダイオキシン測定法。
【請求項19】
前記基質はH2O2、NADH、NADPH、及び/或いは、その混合物であることを特徴とする、請求項18に記載のダイオキシン測定法。
【請求項20】
前記基質はH2O2であることを特徴とする、請求項19に記載のダイオキシン測定法。
【請求項21】
前記測定装置内の作用電極の作用エリア内には、アリルハイドロカーボン受容体を含むことを特徴とする、請求項18に記載のダイオキシン測定法。
【請求項22】
前記測定装置内の作用電極の作用エリア内には、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクを含むことを特徴とする、請求項18に記載のダイオキシン測定法。
【請求項23】
前記ステップ(2)は、測定試料を過量なアリルハイドロカーボン受容体と反応させ、更に、前記ダイオキシン測定装置と前記測定試料を接触させ、また、基質を含有する電気化学の緩衝液内において、その電流信号ΔI1を検出することを特徴とする、請求項18、及び、請求項22に記載のダイオキシン測定法。
【請求項24】
前記電子媒介物は、プルシアンブルー、メルドーラブルー、p−ベンゾキノン、o−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ベンジルビオロゲン、及び、その混合物で組成した群から選択することを特徴とする、請求項18に記載のダイオキシン測定法。
【請求項25】
前記電子媒介物は、プルシアンブルーであることを特徴とする、請求項24に記載のダイオキシン測定法。
【請求項26】
前記作用エリアには、ゼラチン、繊維素、ラポナイト、或いは、ポリビニルブチラールを更に含むことを特徴とする、請求項18に記載のダイオキシン測定法。
【請求項27】
前記作用エリアには、グルタチオンとゼラチン、或いは、繊維素を更に含むことを特徴とする、請求項18に記載のダイオキシン測定法。
【請求項28】
前記作用電極の前記作用エリアは、カーボンゲルを更に含むことを特徴とする、請求項18に記載のダイオキシン測定法。
【請求項29】
前記作用エリア内のアリルハイドロカーボン受容体、或いは、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの含有量は、0.36ng/mm2〜1.11μg/mm2であることを特徴とする、請求項18に記載のダイオキシン測定法。
【請求項30】
前記作用エリア内のアリルハイドロカーボン受容体、或いは、アリルハイドロカーボン受容体核移行タンパクの含有量は、21.43ng/mm2〜0.13μg/mm2であることを特徴とする、請求項29に記載のダイオキシン測定法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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