説明

ダイフラクトースアンハイドライド含有経口組成物

【課題】腸内細菌のエクオール産生能を活性化する。
【解決手段】ダイフラクトース アンハイドライドを有効成分として含有する腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物。
【選択図面】 なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エクオールは、代表的なイソフラボンであるダイゼインやゲニステインと比較して、その抗酸化活性、エストロゲン活性が勝っており、更なる保健効果が期待される。エクオールはダイゼインが腸内で腸内細菌により代謝された代謝物であり、腸内細菌のエクオール産生能を活性化することで、体内で利用できるエクオールが増加することが期待される。
一方、ダイフラクトースアンハイドライド(以下DFAと記す)についてはビフィズス菌増殖作用を有すること(特許文献1:特公平3−5788号公報)やカルシウム吸収量を増やすこと(特許文献2:特開平11−43438号公報)、利尿作用をもつこと(特許文献3:特開2003−321371号公報)が知られていたが、エクオールの産生増強作用は知られていなかった。
【0003】
【特許文献1】特公平3−5788号公報
【特許文献2】特開平11−43438号公報
【特許文献3】特開2003−321371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、腸内細菌のエクオール産生能を増強することで、保健効果が期待できる。体内で利用できるエクオールを増やすには、腸内細菌のエクオール産生能を活性化する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、腸内細菌のエクオール産生能を活性化させる手段を鋭意検討する中で、ダイフラクトース アンハイドライド(以下DFAとする)の摂取により、血中のエクオール濃度が上昇することを見出した。すなわち本発明はDFAを有効成分として含有することを特徴とする腸内細菌によるエクオール産生能増強経口組成物に関するものである。
【0006】
即ち、本出願の発明の主な構成は次のとおりである。
(1)ダイフラクトース アンハイドライドを有効成分として含有することを特徴とする腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物。
(2)ダイフラクトース アンハイドライドとダイゼイン及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物。
(3)(1)又は(2)に記載された腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物を含有する医薬又は飲食品。
(4)(1)又は(2)に記載された腸内細菌によるエクオール産生増強用組成物を含有するペット動物用医薬又はペット動物用飼料。
【発明の効果】
【0007】
本発明のDFAを含有する経口組成物は、腸内細菌によるエクオール産生能を増強し、血中のエクオール濃度を上昇させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明でいうDFAとは、公知の物質であって2個のフラクトースが、互いに2点ずつで結合したアンヒドロ化環状二糖である。従来、カラメルなどに存在することが知られていたが、工業的には、イヌリンをイヌリン分解酵素、例えば、Arthrobacter sp.H65−7株が産生するイヌリンフラクトトランスフェラーゼ(EC2.4.1.93)により発酵させたり、レヴァンをArthrobacternicotinovorans GS−9が産生するレヴァンフルクトトランスフェラーゼ(EC2.4.1.10)を発酵させたりすることにより製造することができる。二分子のフラクトースの結合様式の差異により、誘導体が5種類存在し、それぞれ、DFAI、DFAII、DFAIII、DFAIV、DFAVと称される。本発明でいうDFAとは、それら全てをいうが、本発明では、もっぱら、工業的生産の効率、精製してからの安定性などが優れているDFAIII、DFAIVが好ましく使用される。
【0009】
本発明に係る経口組成物は、DFA を有効成分として含有するものであって、医薬品タイプ及び/又は飲食品(ペット動物用飼餌料を含む)タイプの組成物として利用することができる。例えば、ヒト又はペット動物用の医薬品、飲食品、調製粉乳、経腸栄養剤、健康飲食品、飼餌料添加物など、最終的に経口投与可能な形態であれば制限はない。本発明において最も好ましく使用されるのは、DFAとダイゼイン及び/又はその誘導体を大腸まで吸収されずに届けられる形態であり、例えば腸溶性カプセル中に含有させる形態が考えられる。また、有効成分の含有量は、特に限定されない。
【0010】
飲食品タイプの組成物として使用する場合には、DFAをそのまま使用したり、他の食品ないし食品成分と併用したりして、適宜常法に従い使用できる。また、加工にあたっては、熱安定性、酸安定性ともに高いため、通常の食品加工方法がなんら問題なく適用できる。DFAを含有する食品タイプの経口組成物は、粉末、顆粒状、ペースト状、液状、懸濁状、錠剤、カプセル剤など特段の限定は受けない。例えば甘味料、酸味料、ビタミン剤その他ドリンク剤製造に常用される各種成分を用いて、健康ドリンクに製剤化することも例示できる。
【0011】
医薬品タイプの組成物として使用する場合、本有効成分は、種々の形態で投与される。その投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与が例示できる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
その使用量は症状、年令、体重、剤形によって異なるが、通常は、成人に対して、経口投与の場合に1日当たり、体重1kg当たり0.5〜2000mg、好ましくは1〜1000mgの範囲で投与するのがよい。
【0012】
また、本発明のダイゼイン及び/又はその誘導体とは、4’,7-ジヒドロキシイソフラボンとその配糖体、及び/又はそのアセチル化、マロニル化等の修飾を受けた誘導体を示す。特に、本発明に使用するダイゼイン及び/又はその誘導体は、吸収が緩やかで、大腸内まで到達する量が多いと考えられるダイゼイン配糖体であるダイジンが望ましい。また、本発明において使用するダイゼイン及び/又はその誘導体の由来は、化学合成品、植物の抽出物及びその加工品、植物そのもののいずれでも可能である。
【0013】
以下の実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
DFAの腸管内エクオール産生増強作用を調べた。
Wistar-ST系雄ラット(6週齢)27匹を3日間固形飼料で予備飼育した後、体重層別法により各群n=9で3群に分け、それぞれにイソフラボン40%含有食品を0.25%含有した基本飼料(Basal diet群)、基本飼料のスクロースを全体の3%DFAIIIで置換した飼料(DFAIII群)、基本飼料のスクロースを全体の3%フラクトオリゴ糖で置換した飼料(FOS群)を与えて20日間飼育した。20日目に尾静脈より採血を行い、HPLC-UV法で血漿中のエクオール(Equol)濃度を測定した。
【0015】
その結果を表1に示す。表中のa、bは異記号を有する値の間に有意差があることを示す。
この結果から明らかなように、DFAの摂取により、DFAによる血漿中のエクオール(Equol)濃度の上昇が認められた。
【0016】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイフラクトース アンハイドライドを有効成分として含有することを特徴とする腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物。
【請求項2】
ダイフラクトース アンハイドライドとダイゼイン及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物を含有する医薬又は飲食品。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された腸内細菌によるエクオール産生増強用経口組成物を含有するペット動物用医薬又はペット動物用飼料。

【公開番号】特開2006−143623(P2006−143623A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333663(P2004−333663)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】