ダブルバンドル型冷凍機システムおよび熱源システムならびにこれらの制御方法
【課題】温熱負荷から要求される温水流量や冷熱負荷から要求される冷水流量がダブルバンドル型冷凍機の温水ポンプ及び冷水ポンプの定格流量を超えた場合であっても、熱源システム全体の効率を向上させることができるダブルバンドル型冷凍機を提供する。
【解決手段】温熱負荷に対して温熱を出力するボイラH1と、冷熱負荷に対して冷熱を出力する冷専ターボ冷凍機R2と、これらボイラH1及び冷専ターボ冷凍機R2とともに温水および冷水を供給する熱回収ターボ冷凍機R1とを備えた熱源システムにおいて、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a及び熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25aは、熱回収ターボ冷凍機R1の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされている。
【解決手段】温熱負荷に対して温熱を出力するボイラH1と、冷熱負荷に対して冷熱を出力する冷専ターボ冷凍機R2と、これらボイラH1及び冷専ターボ冷凍機R2とともに温水および冷水を供給する熱回収ターボ冷凍機R1とを備えた熱源システムにおいて、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a及び熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25aは、熱回収ターボ冷凍機R1の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルバンドル型冷凍機システムおよび熱源システムならびにこれらの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2に開示されているように、凝縮器に冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機が知られている。このようなダブルバンドル型冷凍機は、温熱負荷需要に対応するために他の温熱出力機(例えば温熱出力専用のボイラ)や、冷熱負荷需要に対応するために他の冷熱出力機(例えば冷熱出力専用とされた冷専ターボ冷凍機)と共に、熱源システムを構成することが多い。このような熱源システムでは、ダブルバンドル型冷凍機に接続された温水ポンプから供給される温水と、他の温熱出力機に接続された温水ポンプから供給される温水とを合流させた温水が温熱負荷に供給される。また、ダブルバンドル型冷凍機に接続された冷水ポンプから供給される冷水と、他の冷熱出力機に接続された冷水ポンプから供給される冷水とを合流させた冷水が冷熱負荷に供給される。一方、温水ポンプや冷水ポンプは、一般に、接続される熱源機(各冷凍機やボイラ)の定格負荷に対応した流量が定格流量とされており、それ以上の流量供給については想定されていない。
このような従来の熱源システムでは、ダブルバンドル型冷凍機の温水ポンプの定格流量を超えた温水流量が温熱負荷から要求された場合には、この温水流量需要を満たすため他の温熱出力機であるボイラを起動させる必要がある。
また、ダブルバンドル型冷凍機の冷水ポンプの定格流量を超えた冷水流量が冷熱負荷から要求された場合には、この冷熱流量需要を満たすため他の冷熱出力機である冷専ターボ冷凍機を起動させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−117069号公報
【特許文献2】特開昭63−233253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、温水流量需要を満たすためにボイラを起動させると、熱源システム全体の効率が低下する。なぜなら、ダブルバンドル型冷凍機としてターボ冷凍機のようにヒートポンプ運転を行う冷凍機を採用した場合にはCOPは1を大きくこえる(ターボ冷凍機では6程度)のに対し、ボイラは化石燃料の燃焼熱を利用するためCOPが1を超えることはないからである。また、ボイラの運転に伴って起動する補機(温水ポンプ等)の消費動力も省エネルギーの観点から無視できない。
また、冷水流量需要を満たすために冷専ターボ冷凍機を起動させると、ダブルバンドル型冷凍機が負担する冷熱出力が相対的に減ることになり、ひいてはダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も低下することになる。ダブルバンドル型冷凍機の温熱出力が低下すると、効率の悪いボイラの温熱出力が相対的に増加することになり、上述の通り熱源システム全体の効率が低下する。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、温熱負荷から要求される温水流量や冷熱負荷から要求される冷水流量がダブルバンドル型冷凍機の温水ポンプ及び冷水ポンプの定格流量を超えた場合であっても、熱源システム全体の効率を向上させることができるダブルバンドル型冷凍機システムおよび熱源システムならびにこれらの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のダブルバンドル型冷凍機システムおよび熱源システムならびにこれらの制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるダブルバンドル型冷凍機システムは、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプとを備え、前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機、及び、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とともに温水および冷水を供給するダブルバンドル型冷凍機システムにおいて、前記温水ポンプおよび/または前記冷水ポンプは、前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされていることを特徴とする。
【0007】
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量を超えた場合であっても、温水ポンプを過流量とすることによって他の温熱出力機(例えばボイラ)の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量を超えた場合であっても、冷水ポンプを過流量とすることによってダブルバンドル型冷凍機の冷熱出力を増大させることにより、他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。この冷熱出力の増大に伴いダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も増大させることにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
以上のように、温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができ、かつ他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の熱源システムは、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機と、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とを備えた熱源システムにおいて、前記温水ポンプおよび/または前記冷水ポンプは、前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされていることを特徴とする。
【0009】
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量を超えた場合であっても、温水ポンプを過流量とすることによって他の温熱出力機(例えばボイラ)の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量を超えた場合であっても、冷水ポンプを過流量とすることによってダブルバンドル型冷凍機の冷熱出力を増大させることにより、他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。この冷熱出力の増大に伴いダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も増大させることにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
以上のように、温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができ、かつ他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のダブルバンドル型冷凍機システムの制御方法は、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプとを備え、前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機、及び、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とともに温水および冷水を供給するダブルバンドル型冷凍機システムの制御方法において、前記温水ポンプは、前記温熱負荷から要求される温水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転され、かつ/または、前記冷水ポンプは、前記冷熱負荷から要求される冷水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転されることを特徴とする。
【0011】
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量を超えた場合であっても、温水ポンプを過流量とすることによって他の温熱出力機(例えばボイラ)の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量を超えた場合であっても、冷水ポンプを過流量とすることによってダブルバンドル型冷凍機の冷熱出力を増大させることにより、他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。この冷熱出力の増大に伴いダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も増大させることにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
以上のように、温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができ、かつ他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の熱源システムの制御方法は、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機と、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とを備えた熱源システムの制御方法において、前記温水ポンプは、前記温熱負荷から要求される温水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転され、かつ/または、前記冷水ポンプは、前記冷熱負荷から要求される冷水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転されることを特徴とする。
【0013】
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量を超えた場合であっても、温水ポンプを過流量とすることによって他の温熱出力機(例えばボイラ)の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量を超えた場合であっても、冷水ポンプを過流量とすることによってダブルバンドル型冷凍機の冷熱出力を増大させることにより、他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。この冷熱出力の増大に伴いダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も増大させることにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
以上のように、温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができ、かつ他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、ボイラ等の他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態であるダブルバンドル型冷凍機を備えた熱源システムの概略構成を示した図である。
【図2】表1の運転状態iを示したグラフである。
【図3】表1の運転状態iiを示したグラフである。
【図4】表1の運転状態vを示したグラフである。
【図5】表1の運転状態iiiを示したグラフである。
【図6】表1の運転状態viiを示したグラフである。
【図7】表1の運転状態iv示したグラフである。
【図8】表1の運転状態ixを示したグラフである。
【図9】表1の運転状態xを示したグラフである。
【図10】表1の運転状態xiを示したグラフである。
【図11】表1の運転状態xiiを示したグラフである。
【図12】表1の運転状態xiiiを示したグラフである。
【図13】表1の運転状態xvを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、ダブルバンドル型とされた熱回収ターボ冷凍機(ダブルバンドル型冷凍機)R1と、冷水出力専用とされた冷専ターボ冷凍機(他の冷熱出力機)R2と、温水出力専用とされたボイラ(他の温熱出力機)H1とを備えた熱源システムが示されている。熱回収ターボ冷凍機R1の温水出力とボイラH1の温水出力は、温水往ヘッダ2及び温水還ヘッダ3を介して共通の温熱負荷50に接続され、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水出力と冷専ターボ冷凍機R2の冷水出力は、冷水往ヘッダ4及び冷水還ヘッダ5を介して共通の冷熱負荷52に接続されている。
【0017】
熱回収ターボ冷凍機R1は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機1aと、ターボ圧縮機1aによって圧縮された高温高圧のガス冷媒を凝縮する凝縮器8aと、凝縮器8aからの液冷媒を膨張させる膨張弁(図示せず)と、この膨張弁によって膨張させられた液冷媒を蒸発させる蒸発器6aとを備えている。ここでターボ圧縮機1aは、一定速回転もしくはインバータによる可変速回転により駆動される。
【0018】
凝縮器8aには、冷却水が流れる冷却水用伝熱管10aが設けられている。冷却水用伝熱管10aは、冷却水配管11aによって冷却塔12aと接続されている。冷却水は、冷却塔12aにおいて外部へと排熱された後に、冷却水配管11aを通って冷却水用伝熱管10aへと導かれ、凝縮器8a内で冷媒から凝縮潜熱を除去する。そして、冷却水は、冷却水配管11aを通って冷却塔12aへと再び導かれる。
冷却水配管11aには、冷却水ポンプ14aが設けられている。この冷却水ポンプ14aは、インバータ駆動によって吐出流量が可変とされている。
【0019】
凝縮器には、温水が流れる温水出力用伝熱管15aが設けられている。温水出力用伝熱管15aは、温水配管17aを介して、温熱負荷50と接続された温水往ヘッダ2及び温水還ヘッダ3に接続されている。温水は、温熱負荷50にて温熱を供給した後、温水還ヘッダ3及び温水配管17aを通って温水出力用伝熱管15aへと導かれ、凝縮器8a内で冷媒から凝縮潜熱を温熱として受け取る。そして、温水は、温水配管17a及び温水往ヘッダ2を通って温熱負荷50へと再び導かれる。
温水配管17aには、温水ポンプ19a(以下「温水P1」ともいう。)が設けられている。この温水ポンプ19aは、インバータ駆動によって吐出流量が可変とされている。さらに、温水ポンプ19aは、定格流量を超えた流量(すなわち過流量)を流すことができるようになっている。ここで、「過流量」とは、次のような意味である。熱源システムは、外部負荷の規模に応じて設計時に熱回収ターボ冷凍機R1の最大負荷(負荷率100%)が決定される。この最大負荷のときに温水ポンプ19aが負担する冷却水流量を定格流量(100%流量)とする。この定格流量を超える流量を過流量という。
【0020】
蒸発器6aには、冷水が流れる冷水出力用伝熱管21aが設けられている。冷水出力用伝熱管21aは、冷水配管23aによって、冷熱負荷52と接続された冷水往ヘッダ4及び冷水還ヘッダ5と接続されている。冷水は、冷水負荷52にて冷熱を供給した後、冷水還ヘッダ5及び冷水配管23aを通って冷水出力用伝熱管21aへと導かれ、蒸発器6a内で冷媒から蒸発潜熱を冷熱として受け取る。そして、冷水は、冷水配管23a及び冷水往ヘッダ4を通って冷熱負荷52へと再び導かれる。冷熱負荷52へ供給される冷水の定格温度としては、例えば7℃とされる。
冷水配管23aには、冷水ポンプ25a(以下「冷水P1」ともいう。)が設けられている。この冷水ポンプ25aは、インバータ駆動によって吐出流量が可変とされている。さらに、冷水ポンプ25aは、定格流量を超えた流量(すなわち過流量)を流すことができるようになっている。ここで、「過流量」とは、次のような意味である。熱源システムは、外部負荷の規模に応じて設計時に熱回収ターボ冷凍機R1の最大負荷(負荷率100%)が決定される。この最大負荷のときに冷水ポンプ25aが負担する冷水流量を定格流量(100%流量)とする。この定格流量を超える流量を過流量という。
【0021】
ボイラH1は、都市ガスや重油等の化石燃料を燃焼させることによって得られる燃焼熱から温熱を得るものである。ボイラH1によって加熱された温水は、温水配管30に設けられた温水ポンプ32によって供給され、温水配管30から温水往ヘッダ2、温熱負荷50、温水還ヘッダ3、温水配管30の順に循環する。この温水ポンプ32は、インバータ駆動によって吐出流量が可変とされている。
【0022】
冷専ターボ冷凍機R2は、凝縮器8bに接続される伝熱管か冷却水用伝熱管10bのみとされ、温水出力用の伝熱管が設けられていない点で熱回収ターボ冷凍機R1と異なり、他は熱回収ターボ冷凍機R1と同様の構成を有している。したがって、対応する機器には同一の数字に“b”の添え字を加えて示し、その説明を省略する。また熱熱回収ターボ冷凍機R1と同様に、ターボ圧縮機1bは、一定速回転もしくはインバータによる可変速回転により駆動される。
冷却水ポンプ14bおよび冷水ポンプ25bは、熱回収ターボ冷凍機R1の冷却水ポンプ14aおよび冷水ポンプ25aと同様に、インバータ駆動とされている。さらに、冷水ポンプ25aは、過流量を流すことができるようになっている。冷水ポンプ25bの過流量は、外部負荷の規模に応じて設計時に熱冷専ターボ冷凍機R2の最大負荷(負荷率100%)が決定され、この最大負荷のときに冷水ポンプ25bが負担する流量を定格流量(100%流量)とし、この定格流量を超える流量とされる。
【0023】
上記構成の熱源システムは、温熱負荷50の温熱需要、冷熱負荷52の冷熱需要に応じて、運転状態が適宜変更される。下表には、温熱負荷、温水流量、冷熱負荷および冷熱流量に応じて運転状態が分類されている。
【表1】
【0024】
同表に示されたi〜xviまでの各セルには、各冷水ポンプ25a,25bや温水ポンプ19aで過流量を用いない場合(比較例)が上段に、過流量を用いる場合(本発明)が下段に示されている。なお、理解の容易のために、熱回収ターボ冷凍機R1およびボイラH1の100%負荷率(定格)での温熱出力は共に同等とし、熱回収ターボ冷凍機R1および冷専ターボ冷凍機R2の100%負荷率(定格)での冷熱出力は共に同等とする。各冷水ポンプ25a,25bの流量についても、定格100%流量での体積流量は同等とし、各温水ポンプ19a,32の定格100%流量での体積流量も同等とする。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではなく、それぞれの温熱定格出力、冷熱定格出力、冷水定格流量および温水定格流量は異なっていても良い。
【0025】
[運転状態i]
まず、表1の運転状態iについて図2を参照して説明する。同図では、熱回収ターボ冷凍機R1の場合が白抜きで示され、冷専ターボ冷凍機R2の場合が黒塗りで示され、ボイラ(温熱専用機)H1が灰色で示されている。この図示方法は、図3以降のグラフについても同様である。
この運転状態は、冷熱負荷の需要が100%以上となっており(図2では120%)、1台のターボ冷凍機では冷熱負荷需要を満たすことができないので、熱回収ターボ冷凍機R1及び冷専ターボ冷凍機R2を共に運転させる必要がある。
冷水流量の需要についても100%以上となっており(図2では200%)、1台の冷水ポンプでは冷水流量需要を満たすことができないので、両冷水ポンプ25a(冷水P1),25b(冷水P2)を共に駆動させる必要がある。
また、温熱負荷の需要も100%以上となっており(図2では140%)、熱回収ターボ冷凍機R1だけでは温熱負荷需要を満たすことができないので、熱回収ターボ冷凍機R1及びボイラH1を共に運転させる必要がある。
温水流量の需要についても100%以上となっており(図2では200%)、1台の温水ポンプでは温水流量需要を満たすことができないので、両温水ポンプ19a(温水P1),32を共に駆動させる必要がある。
【0026】
図2(a)に示されているように、冷水ポンプ25a,25b、温水ポンプ19a(以下、これらを単に「熱媒ポンプ」という場合がある。)の過流量制御を行わない比較例の場合、冷水流量については、200%の冷水流量需要を満たすために、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a及び冷専ターボ冷凍機R2の冷水ポンプ25bを共に定格の100%とする。
冷熱出力については、それぞれ同等に按分して60%ずつとする。
温熱出力については、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力が60%とされているので熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力も60%とされ一方で、ボイラH1の温熱出力は温熱需要の140%を満たすために80%とされる。
温水流量については、熱回収ターボ冷凍機R1及びボイラH1のそれぞれの温熱出力に応じて按分される。
【0027】
これに対して、本発明では、図2(b)に示されているように、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19aを過流量とする。これにより、ボイラH1の温熱出力を40%まで減少させ、これに伴いボイラH1の温水ポンプ32の温水流量も減少させる。このように、温水ポンプ19aの過流量制御によって、ボイラH1の負荷率およびボイラH1の温水ポンプ32の消費動力を減少させることができる。
熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%としたことに伴い、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25aを過流量として冷熱出力100%とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1を効率の高い定格点で運転させることができ、また冷専ターボ冷凍機R2の負荷率および冷水ポンプ25bの消費動力を減少させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)及び温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、熱源システム全体としての効率を向上させることができる。
【0028】
[運転状態ii]
次に、表1の運転状態iiについて図3を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷、冷水流量、温熱負荷については、運転状態iと同様に100%以上となっている。しかし、温水流量の需要については、運転状態iと異なり、100%以下となっている(図3では100%)。
【0029】
この場合には、本発明では図3(b)に示されているように熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力が100%となるまで冷水ポンプ25a(冷水ポンプP1)を過流量とする。このように熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を増加させて100%とすることにより、排熱側となる熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を60%(図3(a)参照)から100%まで増加させることができ、ボイラH1の温熱負荷を減少させることができる。また、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱負荷の増加に伴い温水ポンプ19aの流量も増加させ、ボイラH1の温水ポンプ32の流量を相対的に減少させて消費動力を減少させる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、熱源システム全体としての効率を向上させることができる。
【0030】
[運転状態v]
次に、表1の運転状態vについて図4を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷、温熱負荷、温水流量については、運転状態iと同様に100%以上となっている。しかし、冷水流量の需要については、運転状態iと異なり、100%以下となっている(図4では100%)。
【0031】
この場合には、本発明では図4(b)に示されているように熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19a(温水ポンプP1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を60%(図4(a)参照)から100%まで増加させることができ、ボイラH1の温熱負荷を減少させることができる。また、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)の流量を増加させたことに伴い、ボイラH1の温水ポンプ32の流量を相対的に減少させて消費動力を減少させる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、熱源システム全体としての効率を向上させることができる。
【0032】
[運転状態iii]
次に、表1の運転状態iiiについて図5を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷、冷水流量および温水流量については、運転状態iと同様に100%以上となっている。しかし、運転状態iと異なり、温熱負荷が100%以下となっている(図5では100%)。
【0033】
図5(a)に示すように、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、温熱負荷の需要が100%とされ1台分の温熱出力とされているにもかかわらず、温水流量需要が100%を超え2台分となっているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなくボイラH1も起動させる必要がある。
これに対して、本発明では、図5(b)に示すように、温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19a(温水ポンプP1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで増加させることができ、ボイラH1を停止させることができる。
また、温熱出力を増大したことに伴い、この温熱出力に見合うように冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量として熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を増大させる(図5(b)では100%)。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)及び冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、ボイラH1を停止させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0034】
[運転状態vii]
次に、表1の運転状態viiについて図6を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷および温水流量については100%以上となっているが、温熱負荷および冷水流量が100%以下となっている。
【0035】
図6(a)に示すように、運転状態iiiと同様に、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、温熱出力の需要が100%とされ1台分の温熱出力とされているにもかかわらず、温水流量需要が100%を超え2台分となっているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなくボイラH1も起動させる必要がある。
これに対して、本発明では、図6(b)に示すように、温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19a(温水ポンプP1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで増加させることができ、ボイラH1を停止させることができる。
また、温熱出力を増大したことに伴い、この温熱出力に見合うように熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を増大させる(図6(b)では100%)。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、ボイラH1を停止させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0036】
[運転状態iv]
次に、表1の運転状態ivについて図7を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷および冷水流量については100%以上とされているが、温熱負荷および温水流量が100%以下となっている(図7では100%)。
【0037】
図7(a)に示すように、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、冷水流量需要の200%を満たすために両冷水ポンプ25a,25bの流量を100%ずつとするしかない。このため、熱回収ターボ冷凍機R1及び冷専ターボ冷凍機R2の冷熱出力は同等負荷の運転となり、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで引き上げることができない。したがって、温熱需要は100%とされ1台で賄えるにもかかわらず温熱出力需要を満たすためにボイラH1を運転せざるを得なくなる。
これに対して、本発明では、図7(b)に示すように、冷熱出力が100%となるまで冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで増加させることができ、ボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、ボイラH1を停止させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0038】
[運転状態ix]
次に、表1の運転状態ixについて図8を参照して説明する。
この運転状態は、温熱負荷、冷水流量および温水流量については100%以上となっているが、冷熱負荷が100%以下となっている(図8では100%)。
【0039】
図8(a)に示すように、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、冷熱負荷が100%以下とされ1台で賄えるにもかかわらず、100%以上の冷水流量需要を満たすために両冷水ポンプ25a,25bを駆動する必要がある。このため冷専ターボ冷凍機R2も運転させることになり、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を上げられないため熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が頭打ちとなる。したがって、ボイラH1の温熱出力を減らすことができない。
これに対して、本発明では、図8(b)に示すように、温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とする。これにより、ボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、効率の悪いボイラH1を停止させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0040】
[運転状態x]
次に、表1の運転状態xについて図9を参照して説明する。
この運転状態は、温熱負荷および冷水流量については100%以上となっているが、冷熱負荷および温水流量が100%以下となっている(図9では100%)。
【0041】
図9(a)に示すように、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、冷熱負荷が100%以下とされ1台で賄えるにもかかわらず、100%以上の冷水流量需要を満たすために両冷水ポンプ25a,25bを駆動する必要がある。このため冷専ターボ冷凍機R2も運転させることになり、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を上げられないため熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が頭打ちとなる。したがって、ボイラH1の温熱出力を減らすことができない。
これに対して、本発明では、図9(b)に示すように、冷熱出力が100%となるまで冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とする。これにより、冷専ターボ冷凍機R2を停止させることができる。また、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力の増加に伴い温熱出力も増加させることができるので、ボイラH1の温熱出力を相対的に低下させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、冷専ターボ冷凍機R2を停止させるとともに、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0042】
[運転状態xi]
次に、表1の運転状態xiについて図10を参照して説明する。
この運転状態は、冷水流量および温水流量が100%以上となっているが、冷熱負荷および温熱負荷が100%以下となっている(図10では100%)。
【0043】
図10(a)に示すように、冷熱負荷および温熱負荷がともに100%以下とされそれぞれ1台で賄えるにもかかわらず、冷水流量および温水流量が100%以上とされているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなく冷専ターボ冷凍機R2およびボイラH1も運転させる必要がある。
これに対して、本発明では、図10(b)に示すように、冷水ポンプ25a(冷水P1)及び温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とする。これにより、冷熱負荷を熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことにより冷専ターボ冷凍機R2を停止させることができる。また、「冷熱負荷≧温熱負荷」となっている場合には、図10(b)に示すように、温熱負荷も熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことによりボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)および温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、冷専ターボ冷凍機R2を停止させるとともに、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下(または停止)させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0044】
[運転状態xii]
次に、表1の運転状態xiiについて図11を参照して説明する。
この運転状態は、冷水流量のみが100%以上となっているが、冷熱負荷、温熱負荷および温水流量は100%以下となっている(図11では、それぞれが100%)。
【0045】
図11(a)に示すように、冷熱負荷および温熱負荷がともに100%以下とされそれぞれ1台で賄えるにもかかわらず、冷水流量が100%以上とされているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなく冷専ターボ冷凍機R2も運転させる必要がある。そのため、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を上げられず、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が頭打ちとなる。したがって、ボイラH1も運転させざるを得ない。
これに対して、本発明では、図11(b)に示すように、冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とする。これにより、冷熱負荷を熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことにより冷専ターボ冷凍機R2を停止させることができる。また、「冷熱負荷≧温熱負荷」となっている場合には、図11(b)に示すように、温熱負荷も熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことによりボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、冷専ターボ冷凍機R2を停止させるとともに、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下(または停止)させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0046】
[運転状態xiii]
次に、表1の運転状態xiiiについて図12を参照して説明する。
この運転状態は、温熱負荷および温水流量が100%以上となっているが、冷熱負荷および冷水流量は100%以下となっている(図12では、それぞれが100%)。
【0047】
図12(a)に示すように、冷熱負荷および冷水流量は1台で賄えるにもかかわらず、温熱負荷が100%以上となっているので、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなくボイラH1をも運転させる必要がある。
これに対して、本発明では、図12(b)に示すように、温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで増加させることができ、ボイラH1の温熱出力を相対的に減少させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0048】
[運転状態xv]
次に、表1の運転状態xvについて図13を参照して説明する。
この運転状態は、温水流量のみが100%以上となっているが、冷熱負荷、温熱負荷および冷水流量は100%以下となっている(図13では、それぞれが100%)。
【0049】
図13(a)に示すように、冷熱負荷および温熱負荷がともに100%以下とされそれぞれ1台で賄えるにもかかわらず、温水流量が100%以上とされているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなくボイラH1も運転させる必要がある。
これに対して、本発明では、図13(b)に示すように、温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を上昇させることにより、ボイラH1の温熱出力を相対的に減少させることができる。また、「冷熱負荷≧温熱負荷」となっている場合には、図13(b)に示すように、温熱負荷の全てを熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことによりボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下(または停止)させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0050】
[運転状態vi,viii,xiv,xvi]
表1の運転状態vi,viii,xiv,xviについては、冷水流量および温水流量のいずれもが100%を超えることはないので、熱媒ポンプである冷水ポンプ25a及び温水ポンプ19aを過流量とする必要はない。したがって、これらの運転状態は、従来の運転方法と異なるところがない。
【0051】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量である100%を超えた場合であっても、温水ポンプ19aを過流量とすることによってボイラH1の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる(運転状態i,iii,v,vii,ix,xi,xiii,xv参照)。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量である100%を超えた場合であっても、冷水ポンプ25aを過流量とすることによって熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を増大させ、この冷熱出力の増大に伴い熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力も増大させることにより、ボイラH1の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる(運転状態i,ii,iii,iv,ix,x,xi,xii)。
以上のように、温水ポンプ19aおよび/または冷水ポンプ25aを過流量にて制御することにより、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b ターボ圧縮機
6a,6b 蒸発器
8a,8b 凝縮器
19a 温水ポンプ
25a 冷水ポンプ
R1 熱回収ターボ冷凍機(ダブルバンドル型冷凍機)
R2 冷専ターボ冷凍機(他の冷熱出力機)
H1 ボイラ(他の温熱出力機)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルバンドル型冷凍機システムおよび熱源システムならびにこれらの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2に開示されているように、凝縮器に冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機が知られている。このようなダブルバンドル型冷凍機は、温熱負荷需要に対応するために他の温熱出力機(例えば温熱出力専用のボイラ)や、冷熱負荷需要に対応するために他の冷熱出力機(例えば冷熱出力専用とされた冷専ターボ冷凍機)と共に、熱源システムを構成することが多い。このような熱源システムでは、ダブルバンドル型冷凍機に接続された温水ポンプから供給される温水と、他の温熱出力機に接続された温水ポンプから供給される温水とを合流させた温水が温熱負荷に供給される。また、ダブルバンドル型冷凍機に接続された冷水ポンプから供給される冷水と、他の冷熱出力機に接続された冷水ポンプから供給される冷水とを合流させた冷水が冷熱負荷に供給される。一方、温水ポンプや冷水ポンプは、一般に、接続される熱源機(各冷凍機やボイラ)の定格負荷に対応した流量が定格流量とされており、それ以上の流量供給については想定されていない。
このような従来の熱源システムでは、ダブルバンドル型冷凍機の温水ポンプの定格流量を超えた温水流量が温熱負荷から要求された場合には、この温水流量需要を満たすため他の温熱出力機であるボイラを起動させる必要がある。
また、ダブルバンドル型冷凍機の冷水ポンプの定格流量を超えた冷水流量が冷熱負荷から要求された場合には、この冷熱流量需要を満たすため他の冷熱出力機である冷専ターボ冷凍機を起動させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−117069号公報
【特許文献2】特開昭63−233253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、温水流量需要を満たすためにボイラを起動させると、熱源システム全体の効率が低下する。なぜなら、ダブルバンドル型冷凍機としてターボ冷凍機のようにヒートポンプ運転を行う冷凍機を採用した場合にはCOPは1を大きくこえる(ターボ冷凍機では6程度)のに対し、ボイラは化石燃料の燃焼熱を利用するためCOPが1を超えることはないからである。また、ボイラの運転に伴って起動する補機(温水ポンプ等)の消費動力も省エネルギーの観点から無視できない。
また、冷水流量需要を満たすために冷専ターボ冷凍機を起動させると、ダブルバンドル型冷凍機が負担する冷熱出力が相対的に減ることになり、ひいてはダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も低下することになる。ダブルバンドル型冷凍機の温熱出力が低下すると、効率の悪いボイラの温熱出力が相対的に増加することになり、上述の通り熱源システム全体の効率が低下する。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、温熱負荷から要求される温水流量や冷熱負荷から要求される冷水流量がダブルバンドル型冷凍機の温水ポンプ及び冷水ポンプの定格流量を超えた場合であっても、熱源システム全体の効率を向上させることができるダブルバンドル型冷凍機システムおよび熱源システムならびにこれらの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のダブルバンドル型冷凍機システムおよび熱源システムならびにこれらの制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるダブルバンドル型冷凍機システムは、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプとを備え、前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機、及び、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とともに温水および冷水を供給するダブルバンドル型冷凍機システムにおいて、前記温水ポンプおよび/または前記冷水ポンプは、前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされていることを特徴とする。
【0007】
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量を超えた場合であっても、温水ポンプを過流量とすることによって他の温熱出力機(例えばボイラ)の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量を超えた場合であっても、冷水ポンプを過流量とすることによってダブルバンドル型冷凍機の冷熱出力を増大させることにより、他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。この冷熱出力の増大に伴いダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も増大させることにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
以上のように、温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができ、かつ他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の熱源システムは、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機と、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とを備えた熱源システムにおいて、前記温水ポンプおよび/または前記冷水ポンプは、前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされていることを特徴とする。
【0009】
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量を超えた場合であっても、温水ポンプを過流量とすることによって他の温熱出力機(例えばボイラ)の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量を超えた場合であっても、冷水ポンプを過流量とすることによってダブルバンドル型冷凍機の冷熱出力を増大させることにより、他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。この冷熱出力の増大に伴いダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も増大させることにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
以上のように、温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができ、かつ他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のダブルバンドル型冷凍機システムの制御方法は、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプとを備え、前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機、及び、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とともに温水および冷水を供給するダブルバンドル型冷凍機システムの制御方法において、前記温水ポンプは、前記温熱負荷から要求される温水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転され、かつ/または、前記冷水ポンプは、前記冷熱負荷から要求される冷水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転されることを特徴とする。
【0011】
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量を超えた場合であっても、温水ポンプを過流量とすることによって他の温熱出力機(例えばボイラ)の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量を超えた場合であっても、冷水ポンプを過流量とすることによってダブルバンドル型冷凍機の冷熱出力を増大させることにより、他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。この冷熱出力の増大に伴いダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も増大させることにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
以上のように、温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができ、かつ他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の熱源システムの制御方法は、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機と、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とを備えた熱源システムの制御方法において、前記温水ポンプは、前記温熱負荷から要求される温水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転され、かつ/または、前記冷水ポンプは、前記冷熱負荷から要求される冷水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転されることを特徴とする。
【0013】
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量を超えた場合であっても、温水ポンプを過流量とすることによって他の温熱出力機(例えばボイラ)の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量を超えた場合であっても、冷水ポンプを過流量とすることによってダブルバンドル型冷凍機の冷熱出力を増大させることにより、他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。この冷熱出力の増大に伴いダブルバンドル型冷凍機の温熱出力も増大させることにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる。
以上のように、温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができ、かつ他の冷熱出力機の冷熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
温水ポンプおよび/または冷水ポンプを過流量にて制御することにより、ボイラ等の他の温熱出力機の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態であるダブルバンドル型冷凍機を備えた熱源システムの概略構成を示した図である。
【図2】表1の運転状態iを示したグラフである。
【図3】表1の運転状態iiを示したグラフである。
【図4】表1の運転状態vを示したグラフである。
【図5】表1の運転状態iiiを示したグラフである。
【図6】表1の運転状態viiを示したグラフである。
【図7】表1の運転状態iv示したグラフである。
【図8】表1の運転状態ixを示したグラフである。
【図9】表1の運転状態xを示したグラフである。
【図10】表1の運転状態xiを示したグラフである。
【図11】表1の運転状態xiiを示したグラフである。
【図12】表1の運転状態xiiiを示したグラフである。
【図13】表1の運転状態xvを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、ダブルバンドル型とされた熱回収ターボ冷凍機(ダブルバンドル型冷凍機)R1と、冷水出力専用とされた冷専ターボ冷凍機(他の冷熱出力機)R2と、温水出力専用とされたボイラ(他の温熱出力機)H1とを備えた熱源システムが示されている。熱回収ターボ冷凍機R1の温水出力とボイラH1の温水出力は、温水往ヘッダ2及び温水還ヘッダ3を介して共通の温熱負荷50に接続され、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水出力と冷専ターボ冷凍機R2の冷水出力は、冷水往ヘッダ4及び冷水還ヘッダ5を介して共通の冷熱負荷52に接続されている。
【0017】
熱回収ターボ冷凍機R1は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機1aと、ターボ圧縮機1aによって圧縮された高温高圧のガス冷媒を凝縮する凝縮器8aと、凝縮器8aからの液冷媒を膨張させる膨張弁(図示せず)と、この膨張弁によって膨張させられた液冷媒を蒸発させる蒸発器6aとを備えている。ここでターボ圧縮機1aは、一定速回転もしくはインバータによる可変速回転により駆動される。
【0018】
凝縮器8aには、冷却水が流れる冷却水用伝熱管10aが設けられている。冷却水用伝熱管10aは、冷却水配管11aによって冷却塔12aと接続されている。冷却水は、冷却塔12aにおいて外部へと排熱された後に、冷却水配管11aを通って冷却水用伝熱管10aへと導かれ、凝縮器8a内で冷媒から凝縮潜熱を除去する。そして、冷却水は、冷却水配管11aを通って冷却塔12aへと再び導かれる。
冷却水配管11aには、冷却水ポンプ14aが設けられている。この冷却水ポンプ14aは、インバータ駆動によって吐出流量が可変とされている。
【0019】
凝縮器には、温水が流れる温水出力用伝熱管15aが設けられている。温水出力用伝熱管15aは、温水配管17aを介して、温熱負荷50と接続された温水往ヘッダ2及び温水還ヘッダ3に接続されている。温水は、温熱負荷50にて温熱を供給した後、温水還ヘッダ3及び温水配管17aを通って温水出力用伝熱管15aへと導かれ、凝縮器8a内で冷媒から凝縮潜熱を温熱として受け取る。そして、温水は、温水配管17a及び温水往ヘッダ2を通って温熱負荷50へと再び導かれる。
温水配管17aには、温水ポンプ19a(以下「温水P1」ともいう。)が設けられている。この温水ポンプ19aは、インバータ駆動によって吐出流量が可変とされている。さらに、温水ポンプ19aは、定格流量を超えた流量(すなわち過流量)を流すことができるようになっている。ここで、「過流量」とは、次のような意味である。熱源システムは、外部負荷の規模に応じて設計時に熱回収ターボ冷凍機R1の最大負荷(負荷率100%)が決定される。この最大負荷のときに温水ポンプ19aが負担する冷却水流量を定格流量(100%流量)とする。この定格流量を超える流量を過流量という。
【0020】
蒸発器6aには、冷水が流れる冷水出力用伝熱管21aが設けられている。冷水出力用伝熱管21aは、冷水配管23aによって、冷熱負荷52と接続された冷水往ヘッダ4及び冷水還ヘッダ5と接続されている。冷水は、冷水負荷52にて冷熱を供給した後、冷水還ヘッダ5及び冷水配管23aを通って冷水出力用伝熱管21aへと導かれ、蒸発器6a内で冷媒から蒸発潜熱を冷熱として受け取る。そして、冷水は、冷水配管23a及び冷水往ヘッダ4を通って冷熱負荷52へと再び導かれる。冷熱負荷52へ供給される冷水の定格温度としては、例えば7℃とされる。
冷水配管23aには、冷水ポンプ25a(以下「冷水P1」ともいう。)が設けられている。この冷水ポンプ25aは、インバータ駆動によって吐出流量が可変とされている。さらに、冷水ポンプ25aは、定格流量を超えた流量(すなわち過流量)を流すことができるようになっている。ここで、「過流量」とは、次のような意味である。熱源システムは、外部負荷の規模に応じて設計時に熱回収ターボ冷凍機R1の最大負荷(負荷率100%)が決定される。この最大負荷のときに冷水ポンプ25aが負担する冷水流量を定格流量(100%流量)とする。この定格流量を超える流量を過流量という。
【0021】
ボイラH1は、都市ガスや重油等の化石燃料を燃焼させることによって得られる燃焼熱から温熱を得るものである。ボイラH1によって加熱された温水は、温水配管30に設けられた温水ポンプ32によって供給され、温水配管30から温水往ヘッダ2、温熱負荷50、温水還ヘッダ3、温水配管30の順に循環する。この温水ポンプ32は、インバータ駆動によって吐出流量が可変とされている。
【0022】
冷専ターボ冷凍機R2は、凝縮器8bに接続される伝熱管か冷却水用伝熱管10bのみとされ、温水出力用の伝熱管が設けられていない点で熱回収ターボ冷凍機R1と異なり、他は熱回収ターボ冷凍機R1と同様の構成を有している。したがって、対応する機器には同一の数字に“b”の添え字を加えて示し、その説明を省略する。また熱熱回収ターボ冷凍機R1と同様に、ターボ圧縮機1bは、一定速回転もしくはインバータによる可変速回転により駆動される。
冷却水ポンプ14bおよび冷水ポンプ25bは、熱回収ターボ冷凍機R1の冷却水ポンプ14aおよび冷水ポンプ25aと同様に、インバータ駆動とされている。さらに、冷水ポンプ25aは、過流量を流すことができるようになっている。冷水ポンプ25bの過流量は、外部負荷の規模に応じて設計時に熱冷専ターボ冷凍機R2の最大負荷(負荷率100%)が決定され、この最大負荷のときに冷水ポンプ25bが負担する流量を定格流量(100%流量)とし、この定格流量を超える流量とされる。
【0023】
上記構成の熱源システムは、温熱負荷50の温熱需要、冷熱負荷52の冷熱需要に応じて、運転状態が適宜変更される。下表には、温熱負荷、温水流量、冷熱負荷および冷熱流量に応じて運転状態が分類されている。
【表1】
【0024】
同表に示されたi〜xviまでの各セルには、各冷水ポンプ25a,25bや温水ポンプ19aで過流量を用いない場合(比較例)が上段に、過流量を用いる場合(本発明)が下段に示されている。なお、理解の容易のために、熱回収ターボ冷凍機R1およびボイラH1の100%負荷率(定格)での温熱出力は共に同等とし、熱回収ターボ冷凍機R1および冷専ターボ冷凍機R2の100%負荷率(定格)での冷熱出力は共に同等とする。各冷水ポンプ25a,25bの流量についても、定格100%流量での体積流量は同等とし、各温水ポンプ19a,32の定格100%流量での体積流量も同等とする。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではなく、それぞれの温熱定格出力、冷熱定格出力、冷水定格流量および温水定格流量は異なっていても良い。
【0025】
[運転状態i]
まず、表1の運転状態iについて図2を参照して説明する。同図では、熱回収ターボ冷凍機R1の場合が白抜きで示され、冷専ターボ冷凍機R2の場合が黒塗りで示され、ボイラ(温熱専用機)H1が灰色で示されている。この図示方法は、図3以降のグラフについても同様である。
この運転状態は、冷熱負荷の需要が100%以上となっており(図2では120%)、1台のターボ冷凍機では冷熱負荷需要を満たすことができないので、熱回収ターボ冷凍機R1及び冷専ターボ冷凍機R2を共に運転させる必要がある。
冷水流量の需要についても100%以上となっており(図2では200%)、1台の冷水ポンプでは冷水流量需要を満たすことができないので、両冷水ポンプ25a(冷水P1),25b(冷水P2)を共に駆動させる必要がある。
また、温熱負荷の需要も100%以上となっており(図2では140%)、熱回収ターボ冷凍機R1だけでは温熱負荷需要を満たすことができないので、熱回収ターボ冷凍機R1及びボイラH1を共に運転させる必要がある。
温水流量の需要についても100%以上となっており(図2では200%)、1台の温水ポンプでは温水流量需要を満たすことができないので、両温水ポンプ19a(温水P1),32を共に駆動させる必要がある。
【0026】
図2(a)に示されているように、冷水ポンプ25a,25b、温水ポンプ19a(以下、これらを単に「熱媒ポンプ」という場合がある。)の過流量制御を行わない比較例の場合、冷水流量については、200%の冷水流量需要を満たすために、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a及び冷専ターボ冷凍機R2の冷水ポンプ25bを共に定格の100%とする。
冷熱出力については、それぞれ同等に按分して60%ずつとする。
温熱出力については、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力が60%とされているので熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力も60%とされ一方で、ボイラH1の温熱出力は温熱需要の140%を満たすために80%とされる。
温水流量については、熱回収ターボ冷凍機R1及びボイラH1のそれぞれの温熱出力に応じて按分される。
【0027】
これに対して、本発明では、図2(b)に示されているように、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19aを過流量とする。これにより、ボイラH1の温熱出力を40%まで減少させ、これに伴いボイラH1の温水ポンプ32の温水流量も減少させる。このように、温水ポンプ19aの過流量制御によって、ボイラH1の負荷率およびボイラH1の温水ポンプ32の消費動力を減少させることができる。
熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%としたことに伴い、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25aを過流量として冷熱出力100%とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1を効率の高い定格点で運転させることができ、また冷専ターボ冷凍機R2の負荷率および冷水ポンプ25bの消費動力を減少させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)及び温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、熱源システム全体としての効率を向上させることができる。
【0028】
[運転状態ii]
次に、表1の運転状態iiについて図3を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷、冷水流量、温熱負荷については、運転状態iと同様に100%以上となっている。しかし、温水流量の需要については、運転状態iと異なり、100%以下となっている(図3では100%)。
【0029】
この場合には、本発明では図3(b)に示されているように熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力が100%となるまで冷水ポンプ25a(冷水ポンプP1)を過流量とする。このように熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を増加させて100%とすることにより、排熱側となる熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を60%(図3(a)参照)から100%まで増加させることができ、ボイラH1の温熱負荷を減少させることができる。また、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱負荷の増加に伴い温水ポンプ19aの流量も増加させ、ボイラH1の温水ポンプ32の流量を相対的に減少させて消費動力を減少させる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、熱源システム全体としての効率を向上させることができる。
【0030】
[運転状態v]
次に、表1の運転状態vについて図4を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷、温熱負荷、温水流量については、運転状態iと同様に100%以上となっている。しかし、冷水流量の需要については、運転状態iと異なり、100%以下となっている(図4では100%)。
【0031】
この場合には、本発明では図4(b)に示されているように熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19a(温水ポンプP1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を60%(図4(a)参照)から100%まで増加させることができ、ボイラH1の温熱負荷を減少させることができる。また、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)の流量を増加させたことに伴い、ボイラH1の温水ポンプ32の流量を相対的に減少させて消費動力を減少させる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、熱源システム全体としての効率を向上させることができる。
【0032】
[運転状態iii]
次に、表1の運転状態iiiについて図5を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷、冷水流量および温水流量については、運転状態iと同様に100%以上となっている。しかし、運転状態iと異なり、温熱負荷が100%以下となっている(図5では100%)。
【0033】
図5(a)に示すように、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、温熱負荷の需要が100%とされ1台分の温熱出力とされているにもかかわらず、温水流量需要が100%を超え2台分となっているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなくボイラH1も起動させる必要がある。
これに対して、本発明では、図5(b)に示すように、温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19a(温水ポンプP1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで増加させることができ、ボイラH1を停止させることができる。
また、温熱出力を増大したことに伴い、この温熱出力に見合うように冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量として熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を増大させる(図5(b)では100%)。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)及び冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、ボイラH1を停止させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0034】
[運転状態vii]
次に、表1の運転状態viiについて図6を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷および温水流量については100%以上となっているが、温熱負荷および冷水流量が100%以下となっている。
【0035】
図6(a)に示すように、運転状態iiiと同様に、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、温熱出力の需要が100%とされ1台分の温熱出力とされているにもかかわらず、温水流量需要が100%を超え2台分となっているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなくボイラH1も起動させる必要がある。
これに対して、本発明では、図6(b)に示すように、温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19a(温水ポンプP1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで増加させることができ、ボイラH1を停止させることができる。
また、温熱出力を増大したことに伴い、この温熱出力に見合うように熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を増大させる(図6(b)では100%)。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、ボイラH1を停止させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0036】
[運転状態iv]
次に、表1の運転状態ivについて図7を参照して説明する。
この運転状態は、冷熱負荷および冷水流量については100%以上とされているが、温熱負荷および温水流量が100%以下となっている(図7では100%)。
【0037】
図7(a)に示すように、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、冷水流量需要の200%を満たすために両冷水ポンプ25a,25bの流量を100%ずつとするしかない。このため、熱回収ターボ冷凍機R1及び冷専ターボ冷凍機R2の冷熱出力は同等負荷の運転となり、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで引き上げることができない。したがって、温熱需要は100%とされ1台で賄えるにもかかわらず温熱出力需要を満たすためにボイラH1を運転せざるを得なくなる。
これに対して、本発明では、図7(b)に示すように、冷熱出力が100%となるまで冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで増加させることができ、ボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、ボイラH1を停止させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0038】
[運転状態ix]
次に、表1の運転状態ixについて図8を参照して説明する。
この運転状態は、温熱負荷、冷水流量および温水流量については100%以上となっているが、冷熱負荷が100%以下となっている(図8では100%)。
【0039】
図8(a)に示すように、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、冷熱負荷が100%以下とされ1台で賄えるにもかかわらず、100%以上の冷水流量需要を満たすために両冷水ポンプ25a,25bを駆動する必要がある。このため冷専ターボ冷凍機R2も運転させることになり、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を上げられないため熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が頭打ちとなる。したがって、ボイラH1の温熱出力を減らすことができない。
これに対して、本発明では、図8(b)に示すように、温熱出力が100%となるまで温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とする。これにより、ボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、効率の悪いボイラH1を停止させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0040】
[運転状態x]
次に、表1の運転状態xについて図9を参照して説明する。
この運転状態は、温熱負荷および冷水流量については100%以上となっているが、冷熱負荷および温水流量が100%以下となっている(図9では100%)。
【0041】
図9(a)に示すように、熱媒ポンプの過流量制御を行わない比較例では、冷熱負荷が100%以下とされ1台で賄えるにもかかわらず、100%以上の冷水流量需要を満たすために両冷水ポンプ25a,25bを駆動する必要がある。このため冷専ターボ冷凍機R2も運転させることになり、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を上げられないため熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が頭打ちとなる。したがって、ボイラH1の温熱出力を減らすことができない。
これに対して、本発明では、図9(b)に示すように、冷熱出力が100%となるまで冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とする。これにより、冷専ターボ冷凍機R2を停止させることができる。また、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力の増加に伴い温熱出力も増加させることができるので、ボイラH1の温熱出力を相対的に低下させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、冷専ターボ冷凍機R2を停止させるとともに、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0042】
[運転状態xi]
次に、表1の運転状態xiについて図10を参照して説明する。
この運転状態は、冷水流量および温水流量が100%以上となっているが、冷熱負荷および温熱負荷が100%以下となっている(図10では100%)。
【0043】
図10(a)に示すように、冷熱負荷および温熱負荷がともに100%以下とされそれぞれ1台で賄えるにもかかわらず、冷水流量および温水流量が100%以上とされているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなく冷専ターボ冷凍機R2およびボイラH1も運転させる必要がある。
これに対して、本発明では、図10(b)に示すように、冷水ポンプ25a(冷水P1)及び温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とする。これにより、冷熱負荷を熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことにより冷専ターボ冷凍機R2を停止させることができる。また、「冷熱負荷≧温熱負荷」となっている場合には、図10(b)に示すように、温熱負荷も熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことによりボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)および温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、冷専ターボ冷凍機R2を停止させるとともに、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下(または停止)させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0044】
[運転状態xii]
次に、表1の運転状態xiiについて図11を参照して説明する。
この運転状態は、冷水流量のみが100%以上となっているが、冷熱負荷、温熱負荷および温水流量は100%以下となっている(図11では、それぞれが100%)。
【0045】
図11(a)に示すように、冷熱負荷および温熱負荷がともに100%以下とされそれぞれ1台で賄えるにもかかわらず、冷水流量が100%以上とされているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなく冷専ターボ冷凍機R2も運転させる必要がある。そのため、熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を上げられず、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力が頭打ちとなる。したがって、ボイラH1も運転させざるを得ない。
これに対して、本発明では、図11(b)に示すように、冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とする。これにより、冷熱負荷を熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことにより冷専ターボ冷凍機R2を停止させることができる。また、「冷熱負荷≧温熱負荷」となっている場合には、図11(b)に示すように、温熱負荷も熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことによりボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の冷水ポンプ25a(冷水P1)を過流量とすることにより、冷専ターボ冷凍機R2を停止させるとともに、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下(または停止)させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0046】
[運転状態xiii]
次に、表1の運転状態xiiiについて図12を参照して説明する。
この運転状態は、温熱負荷および温水流量が100%以上となっているが、冷熱負荷および冷水流量は100%以下となっている(図12では、それぞれが100%)。
【0047】
図12(a)に示すように、冷熱負荷および冷水流量は1台で賄えるにもかかわらず、温熱負荷が100%以上となっているので、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなくボイラH1をも運転させる必要がある。
これに対して、本発明では、図12(b)に示すように、温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を100%まで増加させることができ、ボイラH1の温熱出力を相対的に減少させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0048】
[運転状態xv]
次に、表1の運転状態xvについて図13を参照して説明する。
この運転状態は、温水流量のみが100%以上となっているが、冷熱負荷、温熱負荷および冷水流量は100%以下となっている(図13では、それぞれが100%)。
【0049】
図13(a)に示すように、冷熱負荷および温熱負荷がともに100%以下とされそれぞれ1台で賄えるにもかかわらず、温水流量が100%以上とされているため、熱回収ターボ冷凍機R1だけでなくボイラH1も運転させる必要がある。
これに対して、本発明では、図13(b)に示すように、温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とする。これにより、熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力を上昇させることにより、ボイラH1の温熱出力を相対的に減少させることができる。また、「冷熱負荷≧温熱負荷」となっている場合には、図13(b)に示すように、温熱負荷の全てを熱回収ターボ冷凍機R1のみで賄うことによりボイラH1を停止させることができる。
以上のように、熱回収ターボ冷凍機R1の温水ポンプ19a(温水P1)を過流量とすることにより、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低下(または停止)させることができ、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0050】
[運転状態vi,viii,xiv,xvi]
表1の運転状態vi,viii,xiv,xviについては、冷水流量および温水流量のいずれもが100%を超えることはないので、熱媒ポンプである冷水ポンプ25a及び温水ポンプ19aを過流量とする必要はない。したがって、これらの運転状態は、従来の運転方法と異なるところがない。
【0051】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
温熱負荷から要求される温水流量が定格流量である100%を超えた場合であっても、温水ポンプ19aを過流量とすることによってボイラH1の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる(運転状態i,iii,v,vii,ix,xi,xiii,xv参照)。
冷熱負荷から要求される冷水流量が定格流量である100%を超えた場合であっても、冷水ポンプ25aを過流量とすることによって熱回収ターボ冷凍機R1の冷熱出力を増大させ、この冷熱出力の増大に伴い熱回収ターボ冷凍機R1の温熱出力も増大させることにより、ボイラH1の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができる(運転状態i,ii,iii,iv,ix,x,xi,xii)。
以上のように、温水ポンプ19aおよび/または冷水ポンプ25aを過流量にて制御することにより、効率の悪いボイラH1の温熱出力を低減させ、或いは停止させることができるので、熱源システム全体の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b ターボ圧縮機
6a,6b 蒸発器
8a,8b 凝縮器
19a 温水ポンプ
25a 冷水ポンプ
R1 熱回収ターボ冷凍機(ダブルバンドル型冷凍機)
R2 冷専ターボ冷凍機(他の冷熱出力機)
H1 ボイラ(他の温熱出力機)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、
前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、
前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、
を備え、
前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機、及び、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とともに温水および冷水を供給するダブルバンドル型冷凍機システムにおいて、
前記温水ポンプおよび/または前記冷水ポンプは、前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされていることを特徴とするダブルバンドル型冷凍機システム。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、
前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、
前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、
前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機と、
前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機と、
を備えた熱源システムにおいて、
前記温水ポンプおよび/または前記冷水ポンプは、前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされていることを特徴とする熱源システム。
【請求項3】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、
前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、
前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、
を備え、
前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機、及び、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とともに温水および冷水を供給するダブルバンドル型冷凍機システムの制御方法において、
前記温水ポンプは、前記温熱負荷から要求される温水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転され、
かつ/または、
前記冷水ポンプは、前記冷熱負荷から要求される冷水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転されることを特徴とするダブルバンドル型冷凍機システムの制御方法。
【請求項4】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、
前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、
前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、
前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機と、
前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機と、
を備えた熱源システムの制御方法において、
前記温水ポンプは、前記温熱負荷から要求される温水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転され、
かつ/または、
前記冷水ポンプは、前記冷熱負荷から要求される冷水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転されることを特徴とする熱源システムの制御方法。
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、
前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、
前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、
を備え、
前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機、及び、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とともに温水および冷水を供給するダブルバンドル型冷凍機システムにおいて、
前記温水ポンプおよび/または前記冷水ポンプは、前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされていることを特徴とするダブルバンドル型冷凍機システム。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、
前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、
前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、
前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機と、
前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機と、
を備えた熱源システムにおいて、
前記温水ポンプおよび/または前記冷水ポンプは、前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた過流量にて運転可能とされていることを特徴とする熱源システム。
【請求項3】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、
前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、
前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、
を備え、
前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機、及び、前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機とともに温水および冷水を供給するダブルバンドル型冷凍機システムの制御方法において、
前記温水ポンプは、前記温熱負荷から要求される温水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転され、
かつ/または、
前記冷水ポンプは、前記冷熱負荷から要求される冷水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転されることを特徴とするダブルバンドル型冷凍機システムの制御方法。
【請求項4】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、前記凝縮器には冷却水用伝熱管および温水出力用伝熱管が設けられ、前記蒸発器には冷水出力用伝熱管が設けられたダブルバンドル型冷凍機と、
前記温水出力用伝熱管内を流れる温水を温熱負荷へ送水する温水ポンプと、
前記冷水出力用伝熱管内を流れる冷水を冷熱負荷へ送水する冷水ポンプと、
前記温熱負荷に対して温熱を出力する他の温熱出力機と、
前記冷熱負荷に対して冷熱を出力する他の冷熱出力機と、
を備えた熱源システムの制御方法において、
前記温水ポンプは、前記温熱負荷から要求される温水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転され、
かつ/または、
前記冷水ポンプは、前記冷熱負荷から要求される冷水流量が前記ダブルバンドル型冷凍機の定格負荷における定格流量を超えた場合に、該定格流量を超えた過流量にて運転されることを特徴とする熱源システムの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−107829(P2012−107829A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257878(P2010−257878)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(301042686)株式会社三菱地所設計 (24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(301042686)株式会社三菱地所設計 (24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
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