説明

ダンパー

【課題】全長に対するストローク長の割合を向上することができるダンパーを提供する。
【解決手段】シリコンオイルを封入したハウジング11と、ハウジング11に摺動可能に設けられるピストン部16と、ピストン部16と一体をなすロッド12と、アキュムレータ機構20とを有し、ピストン部がハウジング11内をその軸方向に摺動する際に流体抵抗によって制動力を発生させるダンパー10Aであって、アキュムレータ機構20は、ピストン部の往復動領域にオーバーラップさせた状態で配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロッドと一体をなすピストンを流体を封入したハウジング内で摺動させるダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外部から加えられた衝撃を緩衝するダンパーとしては、ロッドと一体をなすピストンを流体を封入したハウジング内で摺動させることにより流体抵抗による制動力を発生させる、いわゆる軸ダンパー(又はピストン式ダンパー)が知られている。
【0003】
このような従来構成のダンパーの一例として、例えば特許文献1に記載されたものがある。このダンパーは、ピストンと、アキュムレータとをハウジング内に直列に配設した構成を有している。このダンパーは、ロッドがハウジングから突出する方向に最大限引き出された状態では、ピストンが上記アキュムレータに度当てされた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4511168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ダンパーに関しては、その設置スペースの縮小といった要請があった。また一方で、その緩衝作用を向上させる等の目的で、ロッドのストローク長を長くすることも要請されていた。従って、これらの要請を満たすために、ロッドの往復動方向におけるダンパーの全長を長くせずにストローク長を長くすること、及びストローク長を短くせずにダンパーを全長方向において小型化することの両方を解決すること、即ちダンパー全長に対するロッドのストローク長の割合を高くすることが課題となっていた。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、全長に対するストローク長の割合を向上することができるダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、流体を封入したハウジングと、前記ハウジングに摺動可能に設けられるピストン部と、前記ピストン部と一体をなすロッドと、アキュムレータ機構とを有するダンパーであって、前記アキュムレータ機構は、前記ピストン部の往復動領域にオーバーラップした状態で配設されていることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、アキュムレータ機構は、ピストン部の往復動領域にオーバーラップした状態で設けられているので、全長が同一である従来構成のダンパーに比べ、ストローク長を長くすることができる。また、ストローク長が同一である従来構成のダンパーに比べ、全長を短くすることができる。即ち、全長に対するストローク長の割合を大きくすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダンパーにおいて、前記アキュムレータ機構は、前記流体の移動に伴い変形する弾性部材と、前記ピストン部の往復動領域上に位置し該ピストン部を収容可能な中空部を有し前記弾性部材を前記ハウジングに固定する固定部材とを備えることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、ピストン部を、その往復動領域上に位置する中空部に収容することができるので、全長が同一の従来構成のダンパーに比べ、中空部の長さ分だけ、ストローク長を長くすることができる。また、ストローク長が同一の従来構成のダンパーに比べ、中空部の長さ分だけ、全長を短くすることができる。即ち、全長に対するストローク長の割合を大きくすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のダンパーにおいて、前記固定部材は、前記弾性部材と対向する壁部に、前記ピストン部の一部が前記中空部に収容された際に、前記ピストン部と前記中空部の内側面とで構成される空間を前記弾性部材側に連通する連通路を備えることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、固定部材に設けられた連通路により、ピストン部の一部が中空部に収容された際に、ピストン部と中空部の内側面との間に残留した流体を弾性部材に送出することができる。このため、ピストン部と中空部との間に流体が残留することで、ピストン部を中空部の内側面に度当てできなくなるようなことがないため、ストローク長を大きくすることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のダンパーにおいて、前記ハウジングは、前記ピストン部が摺動する摺動部を有し、前記アキュムレータ機構は、前記摺動部の径方向外側に設けられ、連通路を介して前記摺動部と連通する蓄圧室と、前記蓄圧室内の流体の移動に伴い変位する弁機構とを備えることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、アキュムレータ機構を、摺動部の外側に設けることができる。このため、ハウジング内にピストン部とアキュムレータ機構とが直列に設けられていた従来構成に比べ、アキュムレータ機構の分だけ、ピストン部の往復動領域が長くなる。このため、従来構成に比べ、ロッドのストローク長をさらに長くすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のダンパーにおいて、前記連通路は、その一部が、前記蓄圧室と前記摺動部とを区画する隔壁の端面によって構成されることを要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、連通路は摺動部の終端に設けられているので、ロッドが最大ストローク長とされた際にも、摺動室内の流体を、連通路を介して蓄圧室側に圧送することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のダンパーにおいて、前記弁機構は、流体の移動に伴い前記摺動部の径方向に変位する弾性部材を備え、前記連通路は、前記ロッドが最大限引き出された際に前記ピストン部が位置する前記摺動部の終端部に設けられるとともに前記弾性部材によって囲まれることを要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、連通路は摺動部の終端に設けられるため、ロッドが最大ストローク長とされた際にも、摺動室内の流体を、連通路を介して蓄圧室側に圧送することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、この発明によれば、全長に対するストローク長の割合を向上することができるダンパーを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明に係るダンパーの第1実施形態を示す斜視図、(b)は(a)に示すダンパーのA−A線における縦断面図。
【図2】同ダンパーに備えられるアキュムレータを一側面側からみた斜視図。
【図3】同ダンパーに備えられるインナーライナーを一側面側からみた斜視図。
【図4】(a)は同ダンパーのストローク長を示す断面図、(b)は従来構成のダンパーのストローク長を示す断面図。
【図5】第2実施形態のダンパーの断面図。
【図6】第3実施形態のダンパーの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るダンパーを具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。本実施形態では、ダンパーを、住宅設備の引出しや扉等の開閉体と、開閉体を開閉可能に固定する固定側部材との間に設けられ、開閉体と固定側部材とが衝突する際の衝撃や騒音を緩衝するものとして説明する。
【0022】
図1(a)に示すように、ダンパー10Aは、樹脂等から形成される略有底円筒状のハウジング11と、先端部をハウジング11から突出させた状態でハウジング11内に移動可能に貫挿された棒状のロッド12とを有する。このロッド12は、樹脂等から形成され、その長さはハウジング11の長手方向の長さよりも長く形成されている。また、ロッド12の先端部は、引出し等の開閉体側に固定され、開閉体の開閉動作に従動して、ハウジング11の中心軸と平行な方向に往復動する。
【0023】
図1(b)に示すように、ハウジング11は、底部13aを有する摺動部としての小径部13と、ハウジング11の開口部14側に設けられた大径部15とを備えている。大径部15は、小径部13の内径及び外径よりも、大きい内径及び外径を有している。また、大径部15の側壁の略中央には、空気孔15aが貫通形成されている。
【0024】
また、ロッド12のうち、ハウジング11に収容された一端には、ピストン部16が外嵌されている。ピストン部16は、ピストン17とスライダ18とを有しており、ピストン17は、ハウジング11の内周面を摺動可能な大きさに形成されている。また、ピストン17には、ロッド12を内嵌するための嵌合孔17aと、シリコンオイルを通過させる孔部17bとがそれぞれ貫通形成されている。
【0025】
また、ピストン17には、二重の筒状構造を有するスライダ18が、その内側に設けられた溝部18aとピストン17の孔部17bとを連通した状態で固定されている。スライダ18の中央には、貫通孔18bが設けられており、この貫通孔18bには、ロッド12の先端を内嵌したピストン17が貫挿されている。また、スライダ18の底部には、シリコンオイルを通過させるオリフィス19が貫通形成され、このオリフィス19は、溝部18aに連通している。また、スライダ18の溝部18aには圧縮ばね18cが収容されており、該圧縮ばね18cは、スライダ18をピストン17に対して離間させる方向に付勢している。従って、ロッド12に大きな外力が加えられない場合には、スライダ18とピストン17との間には隙間Sが設けられた状態となっている。
【0026】
また、ハウジング11の大径部15には、ロッド12がハウジング11内に進入することで生じる大径部15内のシリコンオイルの体積増加分を吸収するアキュムレータ機構20は、エラストマーや樹脂等からなる弾性部材としてのアキュムレータ21と、アキュムレータ21をハウジング11に固定する固定部材としてのインナーライナー25とを備えている。
【0027】
図2に示すように、アキュムレータ21は、第1筒状部21A及び第2筒状部21Bと、各筒状部21A,21Bを連結する可撓部22とを有している。各筒状部21A,21Bはほぼ同一形状であって、その開口部には、径方向内側に突出した環状の突条24が形成されている。このアキュムレータ21は、ハウジング11の大径部15に内嵌可能な大きさとなっている。また可撓部22は、アキュムレータ21の内側と外側との圧力差に応じてハウジング11の径方向と平行な方向に変位可能となっている。
【0028】
図3に示すように、インナーライナー25は、第1フランジ部26及び第2フランジ部27と、それらのフランジ部26,27を連結する軸部28とを備えている。図1(b)に示すように、インナーライナー25は、第1フランジ部26をハウジング11の開口部14側に、第2フランジ部27をハウジング11の底部側に向けて、ハウジング11内に配設される。
【0029】
図1(b)に示すように、第1フランジ部26は、その側面中央に、オイルシール30を固定するための固定穴31を備えている。また、固定穴31の底部には、ロッド12を貫挿するための貫通孔32が形成されている。さらに、第1フランジ部26の外周面には、アキュムレータ21の第1筒状部21Aに設けられた突条24を嵌合するための嵌合溝33が形成されている。
【0030】
図3に示すように、軸部28は、略円筒状に形成され、その端面は、第2フランジ部27の端面と略同一平面上に位置している。また、軸部28上であって、第1フランジ部26との境目には、軸部28の内側と外側とを連通する連通路としての連通孔28aが貫通形成されている。
【0031】
さらに図1(b)に示すように、軸部28は、その内側に中空部35を有している。中空部35は、ピストン部16の往復動領域上に位置し、ピストン部16を収容可能となっている。即ち、図3に示すように、この中空部35の内径φは、ピストン部16の外径とほぼ同一か若干大きく、小径部13の内径と同一か若干大きくなっている。図1(b)に示すように中空部35の軸方向における長さLは、ピストン部16の全長とほぼ同一か、ピストン部16の全長よりも長くなっている。
【0032】
第2フランジ部27は、略円環状をなし、内側に軸部28の一部を収容している。また、軸部28との間に、シリコンオイルを通過させるためのスリット36を備えている。さらに、第2フランジ部27の外周面には、アキュムレータ21の第2筒状部21Bに設けられた突条24を嵌合するための嵌合溝33が形成されている。
【0033】
アキュムレータ21は、インナーライナー25の各嵌合溝33に、各突条24を圧入した状態でインナーライナー25に固定される。アキュムレータ21を固定したインナーライナー25は、ハウジング11の開口部14から大径部15内に内嵌される。その結果、アキュムレータ21の各筒状部21A,21Bが、インナーライナー25の外周面とハウジング11の内側面とに挟持且つ固定され、各筒状部21A,21Bの間の可撓部22は、軸部28とハウジング11の内側面との間で弾性変形可能に配置される。また、アキュムレータ21と大径部15の内側面との間、即ちアキュムレータ21の外側の圧力は、可撓部22が円滑に弾性変形できるように、空気孔15aにより大気圧とされている。
【0034】
また、インナーライナー25の中空部35は小径部13の内径と同一か若干大きいため、インナーライナー25が大径部15に収容されると、小径部13の内側面と中空部35の内側面とは同一面となる。即ち、ピストン部16の往復動領域が、中空部35の長さ分だけ延長され、小径部13の底部13aから中空部35の側端面までとなる。このため、アキュムレータ機構20は、ダンパー10Aの中心軸方向(長手方向)において、このピストン部16の往復動領域とオーバーラップした状態となる。
【0035】
また、上記したように、インナーライナー25の固定穴31には、円環状のオイルシール30が圧入されている。このオイルシール30は、例えばエラストマ等のシール性を有する材料からなり、その中央にロッド12を貫挿可能となっている。このオイルシール30が固定穴31に圧入されることによって、インナーライナー25の貫通孔32からシリコンオイルが漏出することを防止している。またハウジング11の開口部14には、アキュムレータ機構20を大径部15内に固定するキャップ39が固定されている。
【0036】
次に、ダンパー10Aの作用について図4にしたがって説明する。尚、ここではロッド12の先端が、キャビネットの引出しに直接的又は間接的に固定され、ハウジング11がキャビネット本体(いずれも図示略)に固定されている場合を例にして説明する。引出しがキャビネット本体から引き出されると、ロッド12は引出しの移動に従動して、ハウジング11から引き出される方向に移動し、最終的には図4(a)に示すように最大ストローク長となる位置(以下、最大ストローク位置という)に配置される。このとき、ピストン部16は、図4(a)中2点鎖線で示すハウジング11内の底部11a側から、ハウジング11内を摺動し、ロッド12が最大ストローク位置に配置された際には中空部35に収容される。尚、ここでいう「ストローク長」は、ロッド12の先端12aが往復移動可能な片道分の距離をいう。
【0037】
また、ロッド12がハウジング11内に押し込まれることにより、ピストン部16とインナーライナー25との間に移動したシリコンオイルは、インナーライナー25に設けられたスリット36を介して、インナーライナー25及びアキュムレータ21との間に介入する。その結果、アキュムレータ21の可撓部22は、シリコンオイルによる内側からの圧力により、ハウジング11の径方向外側に撓んで変位し、大径部15内のシリコンオイルの体積変化を吸収する。
【0038】
このようにロッド12が最大ストローク位置まで引き出される際、ピストン部16と中空部35との間に介在するシリコンオイルは、軸部28と第1フランジ部26との境目、即ち中空部35の終端部(側端面の近傍)に設けられた連通孔28aを介して中空部35からアキュムレータ21とインナーライナー25との間に圧送される。従って、ピストン部16の一部が中空部35に収容された際には、ピストン部16と中空部35の内側面で構成される空間に残留するシリコンオイルを順次アキュムレータ21側に圧送できるので、ピストン部16を中空部35の側面に当接するまで移動させることができる。
【0039】
最大ストローク位置に配置されたロッド12は、オイルシール30との間に生じる摩擦力により、その位置に保持される。そして、開位置にある引出しが、キャビネット本体に対して押し込まれると、ロッド12の先端12aに、引出しに対して加えられた押圧力が伝達される。ロッド12及びピストン部16は、ハウジング11内のシリコンオイルの流体抵抗に抗して、ストローク長が短くなる方向へ移動する。この際、シリコンオイルの流体抵抗によりロッド12に制動力が発生し、引出しからロッド12に伝達される押圧力が減衰されることで、引出しとキャビネット本体との衝撃や衝突音を緩衝することができる。
【0040】
また、ロッド12が押し込まれて、ピストン部16と中空部35との間の空間が拡大されることにより、該空間の圧力が一時的に低くなり、アキュムレータ21とインナーライナー25との間のシリコンオイルが、連通孔28aを介して、該空間に送出される。これにより、アキュムレータ21の可撓部22の変位が解消される。
【0041】
ピストン部16の移動に伴い、ピストン部16とハウジング11の底部11aとの間に存在するシリコンオイルは、オリフィス19から溝部18a及び孔部17b(図1(b)参照)までの流路と、ピストン部16とスライダ18との間に設けられた隙間S(図1参照)を介して、ピストン部16を挟んだ反対側、即ちピストン部16とインナーライナー25との間に移動する。
【0042】
さらに引出しをキャビネット本体に押し込んでいくと、ピストン部16とハウジング11の底部11aとの間にあるシリコンオイルが僅かとなり、図4(a)中二点鎖線で示すように、ピストン部16がハウジング11の底部11aに度当てされる。このとき、図中左側に2点鎖線で示すように、ロッド12は、最小ストローク長となる位置(以下、最小ストローク位置という)に配置される。最小ストローク位置に配置されたロッド12は、オイルシール30との間に生じる摩擦力により、その位置に保持される。
【0043】
尚、引出しをキャビネット本体へ急激に押し込んだ場合には、ロッド12に圧縮ばね18cの付勢力を上回る押圧力が加わるので、スライダ18がピストン17に押し付けられ、隙間Sが無くなる。その結果、ピストン部16内における圧力損失が増大するため、ロッド12に加わる制動力が増大されて、引出しとキャビネット本体とが勢いよく衝突することを防止することができる。
【0044】
ここで上記ダンパー10Aと従来構成のダンパー100との差異を説明する。図4(b)に示すように、ダンパー10Aの全長と同一の全長を有する従来構成のダンパー100は、ロッド102が最大ストローク位置に配置されると、ピストン部103とインナーライナー104の側面とが度当たりした状態になる。尚、このピストン部103は、上記ピストン部16と同一形状及び同一の大きさである。
【0045】
一方、図4(a)に示すように、本実施形態のダンパー10Aは、ロッド12が最大ストローク位置に配置されると、ピストン部16はインナーライナー25の中空部35に収容される。このため、最小ストローク位置のロッド12の先端12aから最大ストローク位置のロッド12の先端12aまでのストローク長L1は、従来構成のダンパー100の該ストローク長L2に比べ、中空部35の長さL分だけ長くすることができる。このため、ダンパー全長を変えずに、ストローク長を向上したダンパー10Aを得ることができる。
【0046】
また換言すると、上記ダンパー10Aと従来構成のダンパー100とのストローク長L1,L2を同じ長さとした場合、本実施形態のダンパー10Aは、その全長を、従来構成のダンパー100に比べ、ピストン部16の長さ分だけ短くすることができる。このため、ストローク長を変えずに、ダンパー10Aを全長方向(長手方向)に小型化することができる。即ち、ダンパー10Aの全長を長くせずにストローク長を長くすること、及びストローク長を短くせずにダンパー10Aを全長方向において小型化することの両方を満たすことができる。即ちダンパー全長に対するロッド12のストローク長の割合を高くすることができる。
【0047】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1実施形態では、アキュムレータ機構20は、ハウジング11内に、ピストン部16の往復動領域にオーバーラップした状態で設けられているので、全長が同一である従来構成のダンパーに比べ、ストローク長を長くすることができる。また、ストローク長が同一である従来構成のダンパーに比べ、全長を短くすることができる。即ち、全長に対するストローク長の割合を大きくすることができる。
【0048】
(2)第1実施形態では、インナーライナー25に、ピストン部16の往復動領域上に位置しピストン部16を収容可能な中空部35を設けたので、例えば、全長が同一の従来構成のダンパーに比べ、中空部35の長さ分だけ、ストローク長を長くすることができる。
【0049】
(3)第1実施形態では、インナーライナー25は、アキュムレータ21と対向する壁部に、ピストン部16の一部が中空部35に収容された際に、ピストン部16と中空部35の側端面とで構成される空間をアキュムレータ21側に連通する連通孔28aを備える。このため、ピストン部16を最大ストローク位置に配置する際に、ピストン部16と中空部35との間にシリコンオイルが残留することで、ピストン部16を中空部35の内側面に度当てできなくなるようなことを抑制できるため、中空部35のスペースを有効利用してストローク長を大きくすることができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図5にしたがって説明する。尚、第2実施形態は、第1実施形態のアキュムレータ機構の一部を変更したのみの構成であるため、同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
図5に示すように、ダンパー10Bは、略有底筒状のハウジング40を有し、該ハウジング40は、大径部41及び摺動部としての小径部42を備えている。また、ハウジング40の開口部40aには、オイルシール43と、キャップ39とが圧入されている。
【0052】
大径部41は、小径部42の壁部が延長された円筒状の隔壁45によって、ピストン部16が摺動する摺動室46と、大径部41内のシリコンオイルの体積変化を吸収する蓄圧室47とに区画されている。摺動室46の内径は、小径部42の内径と同一であって、蓄圧室47はピストン部16が摺動する領域と直列ではなく、該領域の径方向外側に設けられている。従って、ピストン部16の往復動領域は、小径部42の底部から大径部15のオイルシール43までとなっている。隔壁45は、オイルシール43に当接しない長さに形成され、隔壁45の上端とオイルシール43との間には、連通路としての隙間48が設けられている。即ち、隙間48は、その一部が、摺動室46の終端である隔壁45の端面によって構成されている。
【0053】
また、蓄圧室47には、弁機構が設けられている。弁機構は、円環状の弁体50と圧縮ばね51とを有している。弁体50は、蓄圧室47に内嵌されてロッド12の往復動方向と平行な方向に変位し、圧縮ばね51は、この弁体50と蓄圧室47の底面との間に配設され、図5中2点鎖線で示す原位置に弁体50を付勢する。そして、蓄圧室47内にシリコンオイルが圧送されると、弁体50は、圧縮ばね51の付勢力に抗して隙間48から離間する方向に変位し、蓄圧室47からシリコンオイルが送出されると、圧縮ばね51の付勢力により原位置に戻る。尚、本実施形態では、この蓄圧室47と、弁体50及び圧縮ばね51を有する弁機構とからアキュムレータ機構20が構成される。このアキュムレータ機構20は、上記したピストン部16の往復動領域と、ダンパー10Bの中心軸方向においてオーバーラップした状態で設けられている。
【0054】
次にダンパー10Bの作用について説明する。引出しや扉等の開閉体に直接的又は間接的に連結されたロッド12に、ハウジング40から引き出される方向の力が加わると、小径部42内及び摺動室46内のシリコンオイルが隙間48を介して蓄圧室47へ圧送される。この際、弁体50が、圧縮ばね51の付勢力に抗して押圧される。またロッド12が最大ストローク位置に配置されると、ピストン部16は、オイルシール43の側面に当接する。この際、ピストン部16とオイルシール43との間に存在していたシリコンオイルを、ピストン部16の往復動領域の端部に設けられた隙間48を介して蓄圧室47側へ圧送することができる。
【0055】
また、ロッド12に対しハウジング40に押し込まれる方向の力が伝達されると、上記したようにピストン部16のオリフィス19及び隙間Sを介して、シリコンオイルが大径部41側に押し出され、ロッド12にはシリコンオイルの流体抵抗による制動力が加わる。この際、蓄圧室47内のシリコンオイルは、隔壁45とオイルシール43との間の隙間48を介して摺動室46に流入する。その結果、弁体50は、圧縮ばね51の付勢力により図中2点鎖線で示す原位置に戻る。
【0056】
即ち、第2実施形態では、ピストン部16が摺動する領域の外側にアキュムレータ機構20を設けたので、ピストン部16の往復動領域は、小径部42の底部からオイルシール43までとなる。このため、ダンパー10Bの全長を長くせずにストローク長を長くすること、及びストローク長を短くせずにダンパー10Bを全長方向において小型化することの両方を満たすことができる。
【0057】
従って、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(4)第2実施形態によれば、ハウジング40は、ピストン部16が摺動する小径部42と、小径部42の内側面と同一面上となる内側面を有する摺動室46とを有し、アキュムレータ機構20は、小径部42及び摺動室46の径方向外側に設けられる。このため、ハウジング内にピストン部16とアキュムレータ機構20とが直列に設けられていた従来構成に比べ、ピストン部16の往復動領域が長くなる。このため、ロッド12のストローク長の割合を、従来構成のアキュムレータ分だけ、即ち大径部41の長さと同程度だけ長くすることができる。
【0058】
(5)第2実施形態では、摺動室46と蓄圧室47とを連通する流路の一部を、ピストン部16の摺動する領域の終端である隔壁45の端面によって構成した。このため、ロッド12が最大ストローク位置とされる際に、ピストン部16とオイルシール43との間に残留したシリコンオイルを蓄圧室47側に圧送することができる。従って、ピストン部16はオイルシール43に当接するまで移動可能となるので、摺動室46のスペースを有効に活用することができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図6にしたがって説明する。尚、第3実施形態は、第1実施形態のアキュムレータ機構の一部を変更したのみの構成であるため、同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
ダンパー10Cは、有底円筒状に形成された摺動部としてのハウジング60を有し、該ハウジング60の開口部60aには、オイルシール30が圧入されている。ハウジング60の側壁部であって、オイルシール30とハウジング内側面との境目付近には、該側壁部に貫通形成された連通路としてのスリット64が設けられている。
【0061】
また、ハウジング60の開口部60a側であって径方向外側には、略円筒状の蓄圧部61が固定されている。この蓄圧部61の開口部には、キャップ39が固定されている。蓄圧部61の内側面とハウジング60との間に設けられた空間は、その空間内のシリコンオイルの体積変化を吸収する蓄圧室61aとして機能する。また、蓄圧部61の内側には、2対の突起62が形成されている。
【0062】
蓄圧室61aには、弾性部材としてのアキュムレータ63が設けられている。アキュムレータ63は、第1実施形態のアキュムレータ21とほぼ同じ構成であって、その両端が蓄圧部61の1対の突起62の間に圧入されることにより蓄圧部61に対して固定されている。尚、本実施形態では、この蓄圧部61と、アキュムレータ63とからアキュムレータ機構20が構成される。このアキュムレータ機構20は、上記したピストン部16の往復動領域と、ダンパー10Cの中心軸方向においてオーバーラップした状態で設けられている。
【0063】
次にダンパー10Cの作用について説明する。ロッド12に、ハウジング11から引き出される方向の力が伝達されると、ハウジング60内のシリコンオイルが、スリット64を介して蓄圧室61aへ圧送される。この際、シリコンオイルは、アキュムレータ63とハウジング外周面との間に介入する。その結果、アキュムレータ63の可撓部が、ハウジング60の径方向外側に撓んで変位し、蓄圧室61a内のシリコンオイルの体積変化を吸収する。
【0064】
またロッド12が図5に示すように最大ストローク位置に配置されると、ピストン部16は、オイルシール30に当接する。この際、ピストン部16とオイルシール30との間に存在していたシリコンオイルを、ピストン部16の往復動領域の終端であるハウジング60の終端部に設けられたスリット64を介して蓄圧室61aに圧送することができる。
【0065】
また、ロッド12に対しハウジング11に押し込まれる方向の力が伝達されると、ロッド12には、シリコンオイルの流体抵抗により制動力が発生する。この際、蓄圧室61aのシリコンオイルは、スリット64を介してハウジング60に送出される。その結果、アキュムレータ63の可撓部の撓みが解消される。
【0066】
即ち、第3実施形態では、ピストン部16が摺動する領域の外側にアキュムレータ機構20を設けたので、ロッド12が最大ストローク位置まで移動したとき、ピストン部16の往復動領域は、ハウジング60の底部からオイルシール30までとなる。
【0067】
従って、第3実施形態によれば、第1実施形態の(1)に記載の効果及び第2実施形態の(4)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(6)第3実施形態では、スリット64は、ロッド12が最大ストローク位置に配置された際にピストン部16が位置するハウジング60の終端部に設けられるとともに、その開口がアキュムレータ63によって囲まれる。このため、ロッド12が最大ストローク長とされた際にも、ハウジング60内のシリコンオイルを、スリット64を介して蓄圧室61a側に圧送することができる。
【0068】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ピストン部16は、上記構成に限定されず、単にピストン17のみから構成してもよい。
【0069】
・中空部35は、ピストン部16の少なくとも一部を収容可能であればよい。
・上記実施形態では、弾性部材を、アキュムレータ21,63に具体化したが、フィルム状のダイヤフラム、発泡性樹脂材等、他の形状にしてもよい。
【0070】
・第2実施形態では、蓄圧室47をハウジング40内に設けたが、蓄圧室47を有する部材を、ハウジング40の径方向外側に設けるようにしてもよい。
・第2実施形態では、円環状の弁体50と1つの圧縮ばね51とから弁機構を構成したが、蓄圧室47内に収容された複数の弁体と、これらの弁体に対して設けられた複数の圧縮ばねとから構成するようにしてもよい。また、ロッド12の移動に伴い、弁体50が移動可能な場合には、圧縮ばね51は省略してもよい。
【0071】
・ダンパー10A〜10Cに収容される流体は、シリコンオイルとしたが、粘性抵抗を発生する流体であれば良く、例えば、エステル系のオイルや、不活性ガス等の気体等、他の材料からなる流体を用いることも可能である。
【0072】
・ダンパー10A〜10Cは、キャビネット等の引出しや扉等と、これを固定する固定側部材との間に設けられるダンパーとして説明したが、本発明のダンパーの用途はこれに限定されない。上記開閉体と固定部材とを有するものであれば、上記したキャビネット等の家具や住宅設備の他、自動車、建築物の建具等に用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10A,10B,10C,100…ダンパー、11,40,60…ハウジング、12,102…ロッド、13,42…摺動部としての小径部、16,103…ピストン部、20…アキュムレータ機構、21,63…弾性部材としてのアキュムレータ、25,104…固定部材としてのインナーライナー、28a…連通路としての連通孔、30,43…封止部材としてのオイルシール、35…中空部、45…隔壁、46…摺動部としての摺動室、47,61a…蓄圧室、48…連通路としての隙間、50…弁機構を構成する弁体、51…弁機構を構成する圧縮ばね、64…連通路としてのスリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を封入したハウジングと、前記ハウジングに摺動可能に設けられるピストン部と、前記ピストン部と一体をなすロッドと、アキュムレータ機構とを有するダンパーであって、
前記アキュムレータ機構は、前記ピストン部の往復動領域にオーバーラップした状態で配設されていることを特徴とするダンパー。
【請求項2】
前記アキュムレータ機構は、
前記流体の移動に伴い変形する弾性部材と、
前記ピストン部の往復動領域上に位置し該ピストン部を収容可能な中空部を有し前記弾性部材を前記ハウジングに固定する固定部材とを備える請求項1に記載のダンパー。
【請求項3】
前記固定部材は、前記弾性部材と対向する壁部に、前記ピストン部の一部が前記中空部に収容された際に前記ピストン部と前記中空部の内側面とで構成される空間を前記弾性部材側に連通する連通路を備える請求項2に記載のダンパー。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記ピストン部が摺動する摺動部を有し、
前記アキュムレータ機構は、
前記摺動部の径方向外側に設けられ、連通路を介して前記摺動部と連通する蓄圧室と、前記蓄圧室内の流体の移動に伴い変位する弁機構とを備える請求項1に記載のダンパー。
【請求項5】
前記連通路は、その一部が、前記蓄圧室と前記摺動部とを区画する隔壁の端面によって構成される請求項4に記載のダンパー。
【請求項6】
前記弁機構は、流体の移動に伴い前記摺動部の径方向に変位する弾性部材を備え、
前記連通路は、前記ロッドが最大限引き出された際に前記ピストン部が位置する前記摺動部の終端部に設けられるとともに前記弾性部材によって囲まれる請求項4に記載のダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154368(P2012−154368A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11957(P2011−11957)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】