説明

チューブ容器

【課題】一般的に使用されるチューブ容器の形状を大きく変えることなく、また低コストで胴部を二つ折りにした状態を保持可能な構成とする。
【解決手段】合成樹脂製のチューブ容器本体1と、口筒部に装着する有頂筒状のキャップ11を有し、キャップ11から胴部4の上端部にかけての部分に、筒状でピルファープルーフ機能を発揮するシュリンクフィルム12を密着状に外装したチューブ容器において、シュリンクフィルム12は、所定の高さ位置に周方向に周ミシン目Ppを周設して上下に切除部12aと残存部12bに区分され、切除部12aには縦方向に縦ミシン目Pvを形成し、使用開始時には縦ミシン目Pvと周ミシン目Ppを利用して切除部12aだけを切除する構成とし、板状のシール部6を利用して引掛け片7を形成し、この引掛け片7をシュリンクフィルム12の残存部12bに引っ掛けて、胴部4の二つ折り状態を固定保持可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の胴部のスクイズ性を利用して内容物を注出するチューブ容器に関するものである。

【背景技術】
【0002】
チューブ容器の容器本体は、たとえば特許文献1に記載があるように、押出成形したチューブ体や合成樹脂シートを巻回したチューブ体を胴部とし、この胴部の一方の開放端に肩部および口筒部からなるヘッド部を射出成形あるいは圧縮成形によって取り付ける方法、あるいはブロー成形により有底筒状の胴部の上端に肩部を介して口筒部を起立設した壜体を成形し、胴部の下端から底部を切除し、胴部の下端を開口端とする方法により製造されるが、
いずれの場合も、口筒部とは逆側の開放端から内容物を充填後、この開放端を熱シール法や超音波法等により密閉して板状のシール部とし、キャップと組み合せてチューブ容器製品として使用される。
【0003】
図7はチューブ容器本体の一例を示すものであり、この容器本体101は、押出成形した低密度ポリエチレン樹脂製のチューブ体で胴部4を形成し、胴部4の上方開口端に肩部3および口筒部2からなるヘッド部Hを射出成形によって取り付け、下方開口端を熱シール法により密閉して板状のシール部6としたものである。
【0004】
そして、この種のチューブ容器は容器本体の胴部をスクイズ変形可能に柔軟に形成し、そのスクイズ性を利用した注出容器として、クリーム状あるいはジェル状の化粧料、歯磨剤、液状の石鹸、薬品、さらにはマヨネーズ、ドレッシング、ソース等の食品等を充填、収納した製品分野で幅広く、便利に使用されている。
【0005】
ここで、この種のチューブ容器を使用した製品では内容物の残量が少なくなったときには使用毎に下方から上方に向かって胴部を扁平状に扱くようにして、内容物を上部に集めてからスクイズして内容物を注出する必要があり、使い勝手が悪いと云う問題がある。
また、この種のチューブ容器は通常、キャップの上端面を接地部とした倒立姿勢で保管されるが、内容物の残量が少なくなって、胴部が扱きにより扁平になっていると倒立姿勢が崩れて、バランスが取れずに倒れ易くなってしまうと云う問題もある。
【0006】
この点、特許文献1と特許文献2には、内容物の残量が少なくなったとき、胴部の下半分の内容物を扱いて上半分に移動させ後、胴部を二つ折りにし、胴部の下端部に位置する板状のシール部を胴部の上端部に形成した係合突起や、キャップに配設した弾性クリップ板に固定するようにして、二つ折り状態を保持するような構成とし、二つ折りされた胴部をスクイズすることにより少なくなった内容物のスムーズな注出操作性を維持できるようにしたチューブ容器に係る記載がある。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−54589号公報
【特許文献2】実開昭61−5742号公報
【特許文献3】特開2002−160756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上記した特許文献2に記載されるチューブ容器は、胴部の上端部にシール部を係合固定できる突起状の係合部を突設する構成で、この係合部を突設するための特別な工程が必要であり、外観的にも違和感があるものである。
また、特許文献3に記載されるチューブ容器は、口筒部に装着するキャップに弾性クリップ板を配設する構成で、特別な構成のキャップを必要とし、これも通常のチューブ容器に比較すると外観的に違和感のあるものである。
【0009】
そこで本発明は、一般的に使用されるチューブ容器の形状を大きく変えることなく、低コストで胴部を二つ折りにした状態を固定保持することが可能な構成を創出することを課題とし、低コストで使い勝手に優れたチューブ容器を提供することを目的とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決する手段の内、本発明の主たる構成は、
スクイズ変形可能な筒状の胴部を有し、胴部の一方の開口端に口筒部を起立設し、他方の開口端を板状のシール部とした合成樹脂製のチューブ容器本体と、口筒部に装着する有頂筒状のキャップを有し、キャップから胴部の上端部にかけての部分に、筒状でピルファープルーフ機能を発揮するシュリンクフィルムを密着状に外装したチューブ容器において、
シュリンクフィルムは、所定の高さ位置に周方向に周ミシン目を周設して上下に切除部と残存部に区分され、切除部には縦方向に縦ミシン目を形成し、使用開始時には縦ミシン目と周ミシン目を利用して切除部だけを切除する構成とし、
板状のシール部を利用して引掛け片を形成し、
この引掛け片をシュリンクフィルムの残存部に引っ掛けて、胴部の二つ折り状態を固定保持可能に構成する、と云うものである。
【0011】
上記チューブ容器の構成によれば、
内容物を充填したチューブ容器製品の使用開始時には縦ミシン目と周ミシン目を利用してシュリンクフィルムの切除部だけを切除し、残存部は胴部の上端部にリング状に残存させたままで使用する。
使用の途中段階で内容物の残量が少なくなったときには、胴部の下半分の内容物を扱いて上半分に移動させた後、胴部を二つ折りにし、胴部の下端部に位置する板状のシール部に形成された引掛け片をシュリンクフィルムの残存部に引っ掛けることにより、胴部の二つ折り状態を固定保持することができ、二つ折りされた胴部をスクイズすることにより少なくなった内容物をスムーズに注出することが可能となる。
【0012】
ここで、シュリンクフィルムの残存部は胴部の上端部を密着状に外装しているが、胴部がスクイズ変形可能な柔軟性を有する合成樹脂製であること、シュリンクフィルムは柔軟で弾性的な合成樹脂製フィルムで成形されていること、さらにはシール部に形成された引掛け片も薄板状で柔軟性があることが相俟って、引掛け片のシュリンクフィルムの残存部への引掛け操作は容易に達成することが可能である。
また、シュリンクフィルムは上記したように柔軟で弾性的な合成樹脂製フィルムで成形されているので、がたつくことなく、安定した状態で引掛け片の残存部への引掛けによる係合状態を保持することができ、容器の倒立姿勢も安定して維持することができる。
【0013】
また、上記構成では胴部の二つ折り状態の固定保持機構は、いずれもチューブ容器製品には必須な部材、あるいは部位であるピルファープルーフ機能を発揮するシュリンクフィルムとシール部を利用するものであり、固定保持のために特別な突起を形成することなく、また別部材を用意することなく達成でき、低コストで実施が可能である。
また、一般的なチューブ容器の形状とほとんどかわらないので、外観的な違和感なく使用することができる。
【0014】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、シール部を打抜き加工して引掛け片を形成する、と云うものであり、薄板状のシール部の打抜き加工により、引掛け片を簡単な工程で容易に形成することが可能である。
もちろん、引掛け片は打抜き加工だけでなく切削加工等によっても形成することができ、また熱溶着によりシール部を形成する際に同時に引掛け片を打ち抜き加工することもできる。

【発明の効果】
【0015】
本発明のチューブ容器は、チューブ容器製品には必須な部材、あるいは部位であるピルファープルーフ機能を発揮するシュリンクフィルムと板状のシール部を利用して、内容物の残量が少なくなった段階で、胴部の二つ折り状態をがたつきのない状態で容易に固定保持することができるようにしたものであり、
低コストで外観的な違和感もなく使用することができる使い勝手に優れたチューブ容器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のチューブ容器の正面図である。
【図2】図1のチューブ容器の平面図である。
【図3】図1のチューブ容器の胴部を二つ折りし、固定保持した状態を示す正面図である。
【図4】図3の状態の側面図である。
【図5】図3中の、引掛け片の他の引掛け方法を示す正面図である。
【図6】引掛片の他の形状例を示す正面図である。
【図7】従来のチューブ容器の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は本発明によるチューブ容器の一実施例を示すものであり、図1は正面図、図2は平面図、図3は図1のチューブ容器の胴部を二つ折りし、固定保持した状態を示す正面図、そして図4は図3の状態の側面図である。なお図4はキャップ11を取外した状態を示している。
【0018】
このチューブ容器の容器本体1は、押出成形による低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂製の円筒状のチューブ体から成る胴部4の一方の開放端に、テーパー筒状の肩部3および口筒部2からなる同様にLDPE樹脂製のヘッド部Hを射出成形あるいは圧縮成形により溶着状に一体形成し(図4参照)、
また、他方の開放端から内容物を充填した後、この開放端を熱溶着法や超音波法等により扁平状にして板状のシール部6を形成して密閉したものである。
【0019】
そして、ヘッド部Hに有頂筒状のポリプロピレン樹脂製のキャップ11を装着し、さらにキャップ11の頂壁の周縁部から胴部4の上端部にかけての部分に、筒状でピルファープルーフ機能を発揮するポリプロピレン(PP)樹脂製のシュリンクフィルム12を密着状に外装してチューブ容器製品としている。
【0020】
シュリンクフィルム12には、容器本体1の胴部4の上端直下に相当する位置に、周方向に周ミシン目Ppが周設されており、このシュリンクフィルム12を上下に切除部12aと残存部12bに区分するようにしている。
また、上方に位置する切除部12aにはキャップ11の頂壁の周縁部から、周ミシン目Ppに到る範囲に縦方向に一対の縦ミシン目Pvが形成されており、使用開始時には摘み片12t(図2参照)を利用し、まず図1中の白抜き矢印の方向に、縦ミシン目Pvに沿って、さらに周ミシン目Ppに沿ってミシン目を破断し、切除部12aだけを切除する。
一方、残存部12bは胴部4の上端部にリング状に残存させた状態で使用する。
【0021】
容器本体1の下端部には、板状のシール部6を打ち抜き加工し、フック状の引掛け片7が下方に向かって突出状に配設されている。
ここで、引掛け片7を形成するためにシール部6は図中、二点鎖線で示したように、予め通常よりも縦長に成形しておく。
また、熱溶着法や超音波法等により扁平状にして板状のシール部6を形成する際に、同時に引掛け片7を打ち抜き加工することもできる。
【0022】
次に、上記したシュリンクフィルム12の残存部12bと引掛け片7を利用した使用態様を図3と図4を参照して説明する。
内容物の残量が少なくなった際に、図3と図4に示されるように、胴部4の下半分の内容物を扱いて上半分に移動させて、この下半分を図3中の二点鎖線で示したように偏平にした後、位置Bpで図3中に示される白抜き矢印の方向に胴部4を二つ折りにし、引掛け片7をシュリンクフィルム12の残存部12bの上端に引掛けるようにしてこの二つ折り状態を固定保持する。そして二つ折りにされた胴部4をスクイズすることにより少なくなった内容物をスムーズに注出することができる。
【0023】
また、この種のチューブ容器は通常、キャップの上端面を接地部とした倒立姿勢で保管されるが、内容物の残量が少なくなっても、胴部4の二つ折り状態を固定保持することにより、安定してこの倒立姿勢を維持することができる。
【0024】
図3に示した例では、引掛け片7を残存部12bの下端から内側に挿通し、鉤状の先端部を残存部12bの上端で内側から外側に引掛けるようにしている。
ここで、残存部12bは胴部4の上端部を密着状に外装しているが、胴部4はスクイズ変形可能に柔軟性を有する合成樹脂製であること、シュリンクフィルム12は柔軟で弾性的な合成樹脂製フィルムで成形されていること、さらにはシール部に形成された引掛け片7は薄板状で柔軟性があることが相俟って、上記したような引掛け片7の残存部12bへの引掛け操作は容易に達成することができる。
図5で示したように、鉤状の先端部を残存部12bの上端外側から内側に引掛けることもできる。
【0025】
また、シュリンクフィルム12は上記したように柔軟で弾性的な合成樹脂製フィルムで成形されているので、引掛け片7と残存部12との係合状態をがたつきのないように安定した状態で保持することができ、保管時の倒立姿勢も安定して維持することができる。
【0026】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
たとえば、チューブ容器本体について上記実施例では押出成形によるLDPE樹脂製チューブ体を使用する構成としたが、チューブ体はスクイズ変形可能な範疇で、他の合成樹脂製とすることができ、さらにはチューブ体を合成樹脂製シートの巻回したものとすることもでき、この合成樹脂製シートにはアルミラミネートシートを使用することもできる。
また、本実施例ではPP樹脂製のシュリンクフィルムを使用する構成としたが、ポリエチレンテレフタレート樹脂製等、収縮性を有する他の合成樹脂製フィルムを使用することができる。
【0027】
また、引掛け片7の形状は図1に示したようなフック状の形状に限定されるものではなく、外観デザイン性、成形性、引掛け操作のし易さ等を考慮して、さまざまなバリエーションとすることができる。図6には引掛け片7の形状のバリエーションを3つ示した。
(a)はシール部6にスリットSを入れて、逆T字状の引掛け片7を形成した例、(b)は打ち抜き加工により逆T字状の引掛け片7を形成した例、(c)は打ち抜き加工により逆T字状の引掛け片7を形成すると共に、穴8を貫通形成した例であり、穴8を利用して吊り下げた状態で商品陳列することができる。

【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように本発明のチューブ容器は、内容液の残量が少ない状態で胴部を二つ折にした状態を固定保持して使用することができる使い勝手に優れたものであり、スクイズタイプのチューブ容器として幅広い用途での利用展開が期待される。

【符号の説明】
【0029】
1、101;容器本体
2 ;口筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
6 ;シール部
7 ;引掛け片
8 ;穴
11;キャップ
12;シュリンクフィルム
12a;切除部
12b;残存部
12t;摘み片
Bp;位置
H ;ヘッド部
Pv;縦ミシン目
Pp;周設ミシン目
S ;スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクイズ変形可能な筒状の胴部(4)を有し、該胴部(4)の一方の開口端に口筒部を起立設し、他方の開口端を板状のシール部(6)とした合成樹脂製のチューブ容器本体(1)と、前記口筒部(2)に装着する有頂筒状のキャップ(11)を有し、前記キャップ(11)から胴部(4)の上端部にかけての部分に、筒状でピルファープルーフ機能を発揮するシュリンクフィルム(12)を密着状に外装したチューブ容器において、前記シュリンクフィルム(12)は、所定の高さ位置に周方向に周ミシン目(Pp)を周設して上下に切除部(12a)と残存部(12b)に区分され、前記切除部(12a)には縦方向に縦ミシン目(Pv)を形成し、使用開始時には前記縦ミシン目(Pv)と周ミシン目(Pp)を利用して切除部(12a)だけを切除する構成とし、前記板状のシール部(6)を利用して引掛け片(7)を形成し、前記引掛け片(7)をシュリンクフィルム(12)の残存部(12b)に引っ掛けて、該胴部(4)の二つ折り状態を固定保持可能に構成したことを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】
シール部(6)を打抜き加工して引掛け片(7)を形成した請求項1記載のチューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−116485(P2012−116485A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264881(P2010−264881)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】