説明

テオフィリン徐放性微粒子の製造方法

【課題】 原薬の粉砕工程を含まず、再現性良くテオフィリン徐放性微粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】 テオフィリン原薬への乾式コーティングに続いて、湿式コーティングを行う工程を含み、テオフィリン原薬を粉砕する工程を含まない、テオフィリン徐放性微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
医薬品の原薬溶出制御に関しては様々な技術が知られている。例えば、カフェイン原薬に対しカルナバロウを乾式コーティングした後、エチルセルロース-水分散液を含むコーティング液を湿式コーティングして、カフェインの溶出を遅延させる技術が知られている(非特許文献1及び非特許文献2)。しかし、カフェイン自体を徐放化するには至っていない。
【0002】
一方、テオフィリン徐放性微粒子を得るために従来知られている方法(特許文献1及び特許文献2)では、まずテオフィリン原薬を粉砕した後、添加剤を噴霧して造粒する必要があった。次いで、その造粒品に水不溶性のポリマーを湿式コーティングして徐放性の微粒子を得るが、このとき造粒されていない原薬が残っていると、湿式コーティングしても初期の溶出率が高くなってしまい、再現性良く徐放性微粒子を製造することが困難であった。
【0003】
その他、テオフィリン徐放性微粒子を得る方法としては、テオフィリン原薬に対してタルクを混合した後、エチルセルロースを含むコーティング液を原薬に対して63%湿式コーティングする方法が知られている(特許文献3)。しかし、この方法では63%湿式コーティングを行っても薬物放出速度が速く、満足のいくものではなかった。
【0004】
また、テオフィリン原薬に添加剤を混合して乾式造粒した後、腸溶性ポリマー及びエチルセルロース-水分散液を含むコーティング液を湿式コーティングして、テオフィリンが高含量化された小型の錠剤を調製する方法も知られている(特許文献4)。しかし、この方法でも薬物放出速度が速く、かつ、粒子径を小さくするとより多くのポリマーが必要となるなど、不十分であった。
【0005】
なお、エチルセルロースと硬化油を用いたテオフィリン製剤の製造方法として、それらを加熱、溶融後、冷却、成型、乾燥し、その後粉砕する方法が知られている(特許文献5)が、この方法は基本的にはコーティングではなく造粒を行っており、マトリックスタイプの製剤が得られていると考えられる。
【特許文献1】特開2001−106627号公報
【特許文献2】国際公開パンフレットWO03/32998号
【特許文献3】国際公開パンフレットWO01/76607号
【特許文献4】特開2002−179571号公報
【特許文献5】特開平9−20686号公報
【非特許文献1】2003年11月第20回製剤と粒子設計シンポジウム講演要旨集「複合型流動層装置を用いた水溶性原薬への乾式・湿式連続コーティング」
【非特許文献2】2004年1月株式会社パウレック社技術資料「超微粒子コート SFP(スーパーファインプロセッサー)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、テオフィリン徐放性微粒子を製造する方法としては、原薬を粉砕する方法が用いられていたため、再現性良い方法が得られていないというのが現状であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、従来用いられていた原薬の粉砕を行わず、乾式コーティングと湿式コーティングを連続する方法をテオフィリンに応用することにより、単にテオフィリンの溶出を遅延させるだけでなく、再現性良く徐放性微粒子を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明の要旨は以下のとおりである。
1.テオフィリン原薬への乾式コーティングに続いて、湿式コーティングを行う工程を含み、テオフィリン原薬を粉砕する工程を含まない、テオフィリン徐放性微粒子の製造方法。
2.乾式コーティングが、硬化油による乾式コーティングである上記1記載の製造方法。
3.湿式コーティングが、エチルセルロース-水分散液による湿式コーティングである上記1または2に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再現性良くテオフィリン徐放性微粒子を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明に関して詳細に説明する。
【0011】
本発明で使用するテオフィリン原薬は、日本薬局方に記載の無水テオフィリンも使用可能であり、試薬として市販されているものが適宜使用可能である。本発明においてはこの原薬を粉砕することなく、そのままコーティング工程に用いる。
【0012】
乾式コーティングに使用するコーティング剤としては、ステアリン酸、カプリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ウンデカン酸等の脂肪酸および脂肪酸塩類、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ウンデカノール等の高級アルコール、ステアリン、ミリスチン、パルミチン、ラウリン等のグリセリン脂肪酸エステルおよびモノステアリン酸テトラグリセリン、ペンタステアリン酸テトラグリセリン等のポリグリセリン脂肪酸エステル等を含む高級脂肪酸エステル類、硬化油、牛脂、カルナバロウ、サラシミツロウ、マイクロクリスタリンワックス類が挙げられ、これらを混合して用いることも可能である。なかでも、硬化油が好ましいものとして挙げられる。なお、乾式コーティング剤は原薬に対して10重量%前後が好ましい。
【0013】
湿式コーティングに使用するコーティング液としては、エチルセルロース-水分散液が好ましいものとして使用されるが、その他、水分散タイプの水不要性ポリマー(セルロース誘導体[例えば、エチルセルロースのほか、セルロースアセテートフタレート]等)、(メタ)アクリル系重合体[例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸・アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル等]、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートフタレート)も使用可能である。
エチルセルロースとしては、例えば、FMC社製、商品名AquacoatECD、Colorcon社製、商品名Sureleaseが例示され、(メタ)アクリル系重合体としては、degussa社製、商品名EudragitRS30D、商品名EudragitRL30D、商品名EudragitNE30Dが例示され、ポリビニルアセテートとしては、BASF社製、商品名KollicoatSR30Dが例示される。
また本発明においては、これらの2種以上を混合して用いることも可能である。
湿式コーティング液は原薬に対し固形分として10重量%から50重量%、すなわち60重量%未満で良く、このように60重量%未満のコーティング液でも十分な徐放化が可能である。
【0014】
本発明においては、原薬を粉砕することなく、そのまま乾式コーティングし、続いて、湿式コーティングを行う。乾式コーティング及び湿式コーティングはそれぞれ従来使用されている流動層装置で行うことも可能であるし、複合型流動層装置を使用することも可能である。
【0015】
上記のようにして、コーティングを終えた粒子に対し、適宜タルク等を粉添して加熱処理を行い、徐放性微粒子を得ることができる。
【実施例】
【0016】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は特に言及しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
テオフィリン原薬(粒径78μm)に対して11重量%の硬化油を乾式コーティングした後、クエン酸トリエチル3.0重量%、タルク3.0重量%を含むAquacoatECDの13.5重量%水分散液を原薬に対し固形分として33重量%、44重量%及び56重量%湿式コーティングした(粒径122−143μm)。それぞれのコーティング粒子に対し、1重量%のタルクを粉添した後、60℃で3時間加熱処理することで目標の薬物放出性(1回/日投与に適した溶出性)を示す徐放性微粒子を得た。なお、一連の工程はパウレック社の複合型流動層装置SFPを使用した。
湿式コーティング液の固形分濃度:19.5重量%
テオフィリン含量:69%、64%、59%(それぞれ湿式コーティングを33重量%、34重量%、56重量%)
得られた徐放性微粒子の溶出試験結果を図1に示す。これらの結果から十分な徐放性を有する微粒子が得られている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1で得られた徐放性微粒子の溶出試験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テオフィリン原薬への乾式コーティングに続いて、湿式コーティングを行う工程を含み、テオフィリン原薬を粉砕する工程を含まない、テオフィリン徐放性微粒子の製造方法。
【請求項2】
乾式コーティングが、硬化油による乾式コーティングである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
湿式コーティングが、エチルセルロース-水分散液による湿式コーティングである請求項1または2に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−160659(P2006−160659A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353723(P2004−353723)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】